説明

発光モジュール

【課題】その部品点数の削減、及び小型化を達成できる発光モジュールを提供する。
【解決手段】半導体レーザ15、半導体レーザの光をモニタする受光素子14b、半導体レーザを駆動するレーザ駆動回路14a、及び受光素子のモニタ出力によりレーザ駆動回路を制御する制御回路14cを備えた発光モジュール10であって、受光素子、レーザ駆動回路及び制御回路は、半導体製造プロセスを経て製造された半導体回路基板14に集積されており、半導体レーザは、半導体回路基板の受光素子にて半導体レーザの光をモニタ可能な位置に搭載されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体レーザ、受光素子、レーザ駆動回路、及びレーザ駆動回路を制御する制御回路を備えた発光モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の発光モジュールは、光トランシーバの信号源や光ファイバ増幅用の励起源として用いられる。詳しくは、発光モジュールは半導体レーザ(LD:Laser Diode)を備えており、電気信号を光信号に変換し、この光信号を送出する。また、半導体レーザは、その波長が1.31μmや1.51μmの光信号を送出するタイプが高速光通信で最も利用されている。
【0003】
半導体レーザは、発光モジュールの外部温度などによってその光出力が変化する。このため、光出力をモニタ用のフォトダイオード(PD:Photo Diode、以下、モニタ用PDという)で監視することが行われている(例えば、特許文献1参照)。
具体的には、端面発光型の半導体レーザがヒートシンクを介してキャリア上に搭載されており、その前方光が光ファイバに向けて出射される。
【0004】
一方、モニタ用PDが半導体レーザの後方に設置されている。このモニタ用PDは、その受光面が半導体レーザの後端面に対して平行となるように配置され、半導体レーザのチップ高さ方向に沿って延びたサブマウントに実装されている。また、発光モジュールの外部には半導体レーザの駆動を制御する制御回路等が配置されている。
つまり、モニタ用PDが半導体レーザの後方光をモニタし、このモニタ結果を発光モジュールの外部に出力してから再び発光モジュールの内部に導き、半導体レーザの駆動電流にフィードバックし、半導体レーザからの光出力を外部温度によらずに所望の大きさに制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−113931号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
発光モジュールは、モニタ用PDを実装するサブマウントを要しており、モニタ用PDを設置するためのスペース、すなわち、上記半導体レーザのチップ高さ方向の大きなスペースが常に必要になる。このため、上述した発光モジュールでは、その部品点数の削減や小型化の要求に対応できないという問題がある。
半導体レーザの制御回路等が発光モジュールの外部回路に設けられた場合は、発光モジュール内の半導体レーザやモニタ用PDとその外部の制御回路とを電気的に接続する端子や配線の数を減らすことができない。
【0007】
また、この制御回路等を半導体レーザとともに発光モジュール内のキャリア上に一体的に搭載するような場合も、部品点数は依然として減らないし、さらに、この制御回路等に関係する電子部品の実装作業も必要になる。
本発明は、上述した実状に鑑みてなされたもので、その部品点数の削減、及び小型化を達成できる発光モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による発光モジュールは、半導体レーザ、半導体レーザの光をモニタする受光素子、半導体レーザを駆動するレーザ駆動回路、及び受光素子のモニタ出力によりレーザ駆動回路を制御する制御回路を備えた発光モジュールであって、受光素子、レーザ駆動回路及び制御回路は、半導体製造プロセスを経て製造された半導体回路基板に集積されており、半導体レーザは、半導体回路基板の受光素子にて半導体レーザの光をモニタ可能な位置に搭載されていることを特徴とする。なお、半導体レーザは、半導体回路基板に実装されてもよい。
【0009】
また、半導体回路基板との間で熱交換可能な温調ユニットを備えており、半導体レーザ、受光素子、レーザ駆動回路及び制御回路は、温調ユニットによる温度制御下で動作するように構成してもよい。
また、半導体レーザ及び受光素子は、半導体回路基板に複数対設けられていてもよい。
さらに、半導体回路基板は、その母材がシリコンで構成され、受光素子は、ゲルマニウムで構成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、半導体回路基板が受光素子、レーザ駆動回路、及び制御回路を取り込んだ集積回路であり、発光モジュールの部品点数の削減、及び発光モジュールの小型化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明による発光モジュールを含む光トランシーバのブロック図である。
【図2】本発明による発光モジュールのブロック図である。
【図3】本発明による発光モジュールの外観等を示す図である。
【図4】本発明による半導体回路基板等の一例を説明する図である。
【図5】本発明による半導体レーザの実装例を説明する図である。
【図6】本発明による発光モジュールの他の例を説明する図である。
【図7】本発明による半導体回路基板等の他の例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図により本発明の実施の形態を説明する。図1は光トランシーバ1のブロック図であり、本実施例の光トランシーバ1は、発光モジュール(TOSA:Transmitter Optical Sub-Assembly)2、受光モジュール(ROSA:Receiver Optical Sub-Assembly)3、コントローラ6、CDR(Clock Data Recovery)7,8を備える。
【0013】
コントローラ6は、ホスト装置側の光トランシーバ1の外部回路や外部電源等(図示省略)との通信を行っており、CDR7には送信用の電気信号がホスト装置側から入力される。CDR7はこの電気信号のデータを復元し、データ復元後の電気信号を発光モジュール(以下、図1,2の説明ではTOSAという)2に向けて出力する。
一方、受光モジュール(以下、図1,2の説明ではROSAという)3には、光ファイバを介して光学的に接続された外部からの光信号が入力され、ROSA3はこの光信号に基づいて受信用の電気信号を生成する。
【0014】
ROSA3で生成された電気信号は、電圧信号への変換などを経てCDR8に向けて出力される。CDR8はこの受信用の電気信号のデータを復元し、データ復元後の電気信号をホスト装置側に向けて出力する。なお、これらコントローラ6やCDR7,8は、TOSA2やROSA3に電気的に接続された光トランシーバ1の配線基板(図示省略)に搭載されている。
【0015】
上述のTOSA2は、図2に示すように、LDドライバ(LDD:Laser Diode Driver)4と半導体レーザ(LD)5とからなる。このLDドライバ4が本発明の半導体回路基板に相当し、後述のように集積回路で構成されている。また、本実施例のLDドライバ4は、LD駆動回路4a、受光素子4b、及びAPC回路からなる制御回路4cを有する。
【0016】
受光素子4bには、半導体レーザ5からの光出力の一部が受光される。その詳細については後述するが、受光素子4bはモニタ用PDの機能を有しており、半導体レーザ5から出射される光の強度をモニタし、その光信号を変換した電気信号がAPC回路からなる制御回路4cに出力される。
APC回路からなる制御回路4cは、受光素子4bで受光した光信号及びコントローラ6からの指令に基づいてLD駆動回路4aに向けて制御信号を出力する。
【0017】
LD駆動回路4aは、上記のAPC回路からなる制御回路4cからの制御信号及びCDR7からの電気信号に基づいて半導体レーザ5を駆動するための電気信号を決定する。
この決定された電気信号は、LD駆動電流(バイアス電流及び変調電流)として半導体レーザ5に帰還・供給される。半導体レーザ5は、当該電気信号から光信号を生成し、この生成した光信号を光ファイバに向けて出力する。
【0018】
次に、TOSAを構成する発光モジュールの一例を説明する。図3(A)は発光モジュールの外観を示し、図3(B)はその部分断面を示している。この図3において、10は発光モジュール、11はパッケージ、12はスリーブ、13は蓋部材、14は半導体回路基板、15は半導体レーザ、16はレンズ部品、17は電気配線部、21,22はキャリアを示す。
【0019】
発光モジュール10は、金属製又はセラミック製のパッケージ11にスリーブ12を連結した形状で形成されている。
パッケージ11は、例えば、矩形の箱型状に形成され、その一端面にスリーブ12を備えている。なお、この一端面は約5mm四方程度の大きさで構成される。
スリーブ12は、光ファイバを結合保持するためのものであり、その内壁部分が光ファイバの挿入をガイド可能に構成されている。
【0020】
一方、電気配線部17は、パッケージ11のうちスリーブ12とは反対側の面に設置されており、光トランシーバの配線基板との電気接続のための端子が設けられている。なお、このパッケージ11の外部では、電気配線部17と光トランシーバの配線基板とがフレキシブル基板(FPC)等を介して電気接続される。
パッケージ11の内部には、図3(B)に示すように、半導体レーザ15や平板状の半導体回路基板14、さらに、平板状の第1のキャリア21と第2のキャリア22などが収納される。なお、このパッケージ11の内部において、半導体回路基板14と上記電気配線部17とはワイヤボンディングによって電気接続される。そして、パッケージ11の上方が金属製又はセラミック製の蓋部材13で閉塞されると、半導体回路基板14、半導体レーザ15、第1,2のキャリア21,22などが気密封止される。
【0021】
これら第1,2のキャリア21,22には、半導体レーザ15の放熱性を考慮した熱伝導性の良い半導体材、例えば、窒化アルミニウム等のセラミック、若しくはタングステン銅合金や鉄ニッケルコバルト合金を用いることができる。
なお、第1のキャリア21は第2のキャリア22の上に載置され、この第2のキャリア22が高さ用のスペーサとして機能し、パッケージ11の底面に載置される。
【0022】
また、図4(A)に示すように、上記第2のキャリア22の代わりに、半導体レーザ15や半導体回路基板14などの温度を調整する電子冷却装置(TEC:Thermo Electric Coolers)等の温調ユニット24が搭載されていてもよい。さらに、他にパッケージ11内には、光信号の反射戻り光を阻止するアイソレータ等が実装されていてもよい。
【0023】
第1のキャリア21の上には、図3や図4に示すように、半導体レーザ15とレンズ部品16とが配置される。そこで、上記のように温調ユニット24を第2のキャリアに代えて搭載した場合には、第1のキャリア21には温度センサであるサーミスタを実装、或いは、サーミスタを半導体回路基板14の内部に設置して半導体レーザ15や半導体回路基板14の温度を測定するようにしてもよい。
【0024】
レンズ部品16は、図3(B)に示すように、スリーブ12や上記光ファイバの先端に近接した位置に配置され、例えば、半田材を用いて第1のキャリア21に直接に接合されている。
これに対し、半導体レーザ15は、例えば、半導体回路基板14を介して第1のキャリア21の上に配置される。
【0025】
具体的には、半導体回路基板14は、図4にも示すように、半導体レーザ15を実装する実装面30や、実装面30の反対側にて第1のキャリア21に対向する裏面33を有している。そして、実装面30には、LD実装領域31がレンズ部品16に近接する位置に設けられており、半導体レーザ15は、例えば、半田材等を用いてLD実装領域31に実装される。
【0026】
半導体レーザ15には、例えば、端面発光(エッジエミット)型を用いることができる。半導体レーザ15は、略直方体形状のチップで構成され、図5(A)に示すように、上記半田材等を介してLD実装領域31に接合する下面電極15c、下面電極15cの反対側にてチップの上面に位置しワイヤ接続する上面電極のパッド15e、上記レンズ部品に対向する前端面15aや、この前端面15aの反対側に位置する後端面15b等を有する。これら前端面15a及び後端面15bは、図5(A)に示すように、チップの高さ方向(「H」で示す方向)に沿って延びている。
【0027】
このため、半導体レーザ15は、実装面30の面方向、換言すれば、チップの高さ方向に対して直交する方向に沿って光を出射し、前端面15aからは上記レンズ部品に向けた前方光が、後端面15bからは前方光とは反対方向に向けた後方光がそれぞれ出力される。これら前端面15aや後端面15bからの光は出射して僅かながら拡散する。
なお、図4に示すレンズ部品16の第1のキャリア21上への実装、半導体レーザ15の半導体回路基板14上への実装に用いられる半田材には、金ゲルマニウム半田、金錫半田、錫銀銅半田などが使用される。
【0028】
半導体レーザ15の放熱性を鑑みれば、上記のような半田材を用いることが望ましいが、半導体レーザ15の半導体回路基板14上への実装には、接着剤を用いることも可能である。或いは、半導体レーザ15は、フリップチップ実装やワイヤボンディングにより、半導体回路基板14に電気接続されてもよい。前者のフリップチップ実装は、例えば、下面電極15cに形成した半田バンプを介してLD実装領域31に接合しており、この実装によれば、半導体レーザ15の実装及び電気接続を同時に行え、作業効率を向上させることができる。
【0029】
一方、後者のワイヤボンディングを用いる場合でも、インダクタンス成分の増加を低減することが可能となる。例えば、実装面30上に設置されるパッド(図示しない)を図5(A)に示す半導体レーザ15のパッド15eに近接して設けることができる。このため、これら各パッド間のワイヤ長が短くなってワイヤのインダクタンスによる高周波信号の劣化を抑制できるからである。
【0030】
ところで、本発明における半導体回路基板14は、半導体製造プロセスを経て製造されており、LD実装領域31は半導体回路基板14の実装面30上に配置されるのに対し、図2で説明した受光素子4b、LD駆動回路4aやAPC回路からなる制御回路4cは半導体回路基板14に一体にて作り込まれている。
図4や図5(A)の構造例に示すように、例えば、受光素子14bは、実装面30の面方向に沿って受光面32が得られるように実装面30上に形成される。また、その位置は、図5に示す半導体レーザ15の後端面15bからの光が受光可能な位置に形成される。
【0031】
上記端面発光型の半導体レーザ15からの光は、1/eの強度が約30°の出射角度となる。このため図5(A)に示すように、後端面15bから受光素子14bまでの距離L、チップの高さ(より厳密に言えば発光層までの高さ)Hとすると、受光素子14bの位置を求めることができる。つまり、Ltanθ≧H、かつ、θ=30°を満たせばよく、後端面15bから受光素子14bまでの距離LはH/tan(30°)以上に設定される。
【0032】
LD駆動回路14aやAPC回路からなる制御回路14cも、半導体製造プロセスにより形成される。LD駆動回路14aや制御回路14cは、例えば、受光素子14bを挟んでLD実装領域31の位置とは反対側に設けられ、導電材で構成された配線パターンが実装面30上に形成されている。
【0033】
受光素子14bとAPC回路からなる制御回路14cは半導体回路基板14の内部などで電気接続され、また、LD駆動回路14aと半導体レーザ15は、図5(A)に二点鎖線で示すワイヤW、或いは半導体回路基板14の内部などで電気接続されている。
ここで、本実施例の半導体回路基板14は、その母材がシリコン若しくは窒化ガリウムなどの熱伝導性の良い半導体材で構成される。これは、半導体レーザ15の放熱性を考慮したものである。
【0034】
半導体回路基板14の母材としては、ガリウム砒素(熱伝導率:55W/m・K)、リン化インジウム(熱伝導率:70W/m・K)、シリコン(熱伝導率:150W/m・K)、窒化ガリウム(熱伝導率:200W/m・K)等を想定できるが、半導体レーザ15で発生した熱が効率良く拡散するには、シリコンや窒化ガリウムのような熱伝導性の良い半導体材で構成するのが望ましい。
【0035】
しかし、上記シリコンを半導体回路基板14の母材に選択した場合(図5(A)にシリコン基板14dと示す)には、受光素子14bをゲルマニウムで構成するようにしてもよい。
具体的には、シリコンに対してゲルマニウムを添加、換言すれば、シリコン基板14d上にゲルマニウム製の受光素子14bを設けており、pn接合に属するPD、若しくは高抵抗のi層(空乏層)を有したpin構造に属するPDを形成することができる。
当該ゲルマニウムは高速動作するICでも用いられる材料であり、上記受光素子14bは、半導体製造に関する特殊な工程を新たに設定することもなく形成可能である。
【0036】
ここで、図5(A)では、半導体レーザ15を半導体回路基板14上に直接実装した例を説明した。しかし、本発明は、半導体レーザ15からの光が受光素子14bで受光される限り、受光素子14b、LD駆動回路14aや制御回路14cを半導体回路基板14に一体形成すれば足り、半導体レーザ15は、半導体回路基板14上に実装されていなくてもよい。
【0037】
例えば、図5(B)に示すように、半導体レーザ15を実装したLD用キャリア18と半導体回路基板14とを別個に設けるようにする。この図5(B)の構造は、図1,2で説明したLDドライバ4や半導体レーザ5に機能面のみならず、構造面でも一致することになるが、LD用キャリア18は、例えば、半導体レーザ15の放熱性を考慮した熱伝導性の良い材料で構成され、シリコン基板14dとほぼ同じ高さを有しており、第1のキャリア21に配置されている。
【0038】
図6は、1つのパッケージ内に複数の半導体レーザを搭載した、波長多重の発光モジュールの例を示す図である。図6(A)は発光モジュールの外観を、図6(B)はその部分断面をそれぞれ示している。
この図6において、40は発光モジュール、41はパッケージ、42はスリーブ、43は蓋部材、45は半導体回路基板、46は第1レンズ部品、47は電気配線部、48は光合波器、49は第2レンズ部品、51〜53はキャリア、15は半導体レーザを示す。
【0039】
この実施例の発光モジュール40は、中心波長が異なる半導体レーザ15を複数(例えば4個)搭載し、光合波器48を用いて1本の光ファイバに光結合させるもので、波長の異なる複数の信号光を伝搬できるため、伝送速度の高速化を実現できる。
発光モジュール40は、図3で説明した発光モジュール10と同様に、パッケージ41にスリーブ42を連結した形状で形成される。
【0040】
また、パッケージ41は、図6(A)に示すように、例えば、矩形の箱型状に形成され、パッケージ41の内部には、半導体レーザ15や平板状の半導体回路基板45、さらに、平板状の第1のキャリア51、第2のキャリア52、第3のキャリア53などが収納される。
詳しくは、第1〜3のキャリア51〜53も図3で説明した第1,2のキャリア21,22と同様に、熱伝導性の良い半導体材が用いられるが、当該実施例では、第1,3のキャリア51,53は第2のキャリア52の上に並んで載置され、この第2のキャリア52がパッケージ41の底面に載置される。
【0041】
なお、この実施例のパッケージ41内、例えば、図7に示すように、第2のキャリア52の代わりに、半導体レーザ15や半導体回路基板45などの温度を調整する温調ユニット54が搭載されるのが好適である。特に、波長多重通信に用いる発光モジュール40においては、半導体レーザ15の発振波長を正確に制御する必要がある。
図6(B)や図7に示すように、この実施例の第1のキャリア51の上には、半導体回路基板45を介して計4個の半導体レーザ15が1列状で並設される。波長多重通信に用いる発光モジュール40の場合には、第1のキャリア51上に温度センサを実装、或いは、温度センサを半導体回路基板45の内部に実装して半導体レーザ15や半導体回路基板45の温度を測定するのが望ましい。
【0042】
図7に示すように、半導体回路基板45は、半導体レーザ15を実装する実装面を有している。この実装面は、計4個の受光素子14bや、LD駆動回路14aやAPC回路からなる制御回路14cを備えており、図3で説明した実装面30と同様に、受光素子14bは半導体レーザ15とLD駆動回路14aやAPC回路からなる制御回路14cとの間に配置されている。
また、これら隣り合う半導体レーザ15の間隔は、それぞれ出射した光が隣接の受光素子14bに受光されないように離間した位置に設定される。
【0043】
そして、上述した温調ユニット54は、第1のキャリア51を介して間接的に半導体回路基板45に当接して熱交換可能であり、半導体回路基板45の搭載部品、詳しくは、半導体レーザ15、受光素子14b及び、LD駆動回路14aやAPC回路からなる制御回路14cを温度制御下で動作させる。
一方、第3のキャリア53の上には、これら半導体レーザ15と対をなす計4個の第1レンズ部品46が1列状で並設され、第1レンズ部品46は各半導体レーザ15から出射された波長の異なる信号光をそれぞれ集光する。
【0044】
また、この第3のキャリア53の上には、各第1レンズ部品46からの信号光を光導波路48aで導波して合成する光合波器48、この光合波器48で合波された信号光を光ファイバに光結合する1個の第2レンズ部品49が実装されている。なお、この実施例のパッケージ41内においても、光信号の反射戻り光を阻止するアイソレータ等が実装されていてもよい。
【0045】
以上のように、上記各実施例によれば、半導体回路基板が受光素子、LD駆動回路やAPC回路からなる制御回路を取り込んだ集積回路であり、従来のようなモニタ用PDを実装するサブマウントが不要になる。また、モニタ用PDを設置するためのスペース、モニタ用PDの受光面が半導体レーザの後端面に平行となるようなチップ高さ方向のスペースを省略でき、発光モジュールの薄型化に寄与する。
【0046】
さらに、LD駆動回路やAPC回路からなる制御回路も半導体回路基板に半導体製造プロセスによってまとめられているので、発光モジュール、具体的にはパッケージの内部と外部とを電気的に接続する端子や配線の数が従来に比して少なくて済む。これらの構成により、発光モジュールの部品点数の削減、及び発光モジュールの小型化を達成できる。
しかも、従来のような制御回路等を単に内蔵させた場合に必要になる電子部品の実装作業も省略できる。
【0047】
また、半導体回路基板は、熱伝導性の良い半導体材で構成しており、半導体レーザで発生した熱は効率良く拡散する。よって、半導体レーザの温度上昇による特性変動を効果的に抑制できる。
さらに、半導体回路基板がシリコンで構成された場合には、その吸収波長は0.19μm〜1.10μmとなり(1μm=1×10−6m)、高速光通信で最も利用される波長1.31μmや1.51μmの光に対する感度が低下してしまう。しかし、上記実施例のように、受光素子をゲルマニウムで形成することで、その吸収波長は0.40μm〜1.70μmとなる。よって、半導体レーザからの光を確実に受光でき、利用可能性の高い発光モジュールを提供できる。
【0048】
さらにまた、半導体レーザを実装した半導体回路基板は、温調ユニットとの間で熱交換可能に構成することができ、半導体レーザ、受光素子及びLD駆動回路やAPC回路からなる制御回路は、発光モジュールの外部温度などが変化してもその影響を受けないようにすることができる。
半導体回路基板の搭載部品を略一定の温度制御下で動作可能になれば、特に高温環境下で生ずる消費電力の増加が回避され、発光モジュールの低消費電力化を図ることができる。また、従来のような半導体レーザに接触するヒートシンクなどの放熱部材が不要になるし、さらに、温度変化に伴う特性変動への配慮が不要になれば、半導体レーザや半導体回路基板の設計も容易になり、発光モジュールのより一層の低廉化に寄与する。
【0049】
また、図6や図7を用いて説明したように、LD駆動回路14aやAPC回路からなる制御回路14cの他、複数対の半導体レーザ15や受光素子14bを半導体回路基板45の同じ実装面に集約しているので、波長多重通信に用いる発光モジュール40のような半導体レーザ15の高密度実装などの要求が特に高い場合にも、発光モジュール40の部品点数の削減や小型化を達成できる。
【符号の説明】
【0050】
1…光トランシーバ、2,10,40…発光モジュール、3…受光モジュール、4,14,45…LDD,半導体回路基板、4a,14a…LD駆動回路、4b,14b…受光素子、4c,14c…制御回路、5,15…半導体レーザ、6…コントローラ、7…CDR、8…CDR、11,41…パッケージ、12,42…スリーブ、13,43…蓋部材、14d…シリコン基板、15a…前端面、15b…後端面、15c…下面電極、15e…上面電極のパッド、16…レンズ部品、17,47…電気配線部、18…LD用キャリア、21,51…第1キャリア、22,52…第2キャリア、24,54…温調ユニット、30…実装面、31…LD実装領域、32…受光面、33…裏面、46…第1レンズ部品、48…光合波器、48a…光導波路、49…第2レンズ部品、53…第3キャリア。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体レーザ、該半導体レーザの光をモニタする受光素子、前記半導体レーザを駆動するレーザ駆動回路、及び前記受光素子のモニタ出力により前記レーザ駆動回路を制御する制御回路を備えた発光モジュールであって、
前記受光素子、前記レーザ駆動回路及び前記制御回路は、半導体製造プロセスを経て製造された半導体回路基板に集積されており、前記半導体レーザは、前記半導体回路基板の前記受光素子にて前記半導体レーザの光をモニタ可能な位置に搭載されていることを特徴とする発光モジュール。
【請求項2】
前記半導体レーザは、前記半導体回路基板に実装されていることを特徴とする請求項1に記載の発光モジュール。
【請求項3】
前記半導体回路基板との間で熱交換可能な温調ユニットを備えており、前記半導体レーザ、前記受光素子、前記レーザ駆動回路及び前記制御回路は、前記温調ユニットによる温度制御下で動作することを特徴とする請求項1又は2に記載の発光モジュール。
【請求項4】
前記半導体レーザ及び前記受光素子は、前記半導体回路基板に複数対設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の発光モジュール。
【請求項5】
前記半導体回路基板は、その母材がシリコンで構成され、前記受光素子は、ゲルマニウムで構成されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の発光モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−110138(P2013−110138A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−251375(P2011−251375)
【出願日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】