説明

発光装置

【課題】 発光特性の優れた白色に発光する蛍光体を提供すること、歩留りが極めて少なく高輝度の発光特性を示す蛍光体を提供すること。
【解決手段】 第1の発光スペクトルの少なくとも一部を変換し、前記第1の発光スペクトルと異なる領域に第2の発光スペクトルを少なくとも1以上有している、基本構成元素に少なくとも窒素を含有する窒化物蛍光体の製造方法であって、アンモニア雰囲気中で焼成が行われる工程(P9)を有することを特徴とする窒化物蛍光体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光表示管、ディスプレイ、PDP、CRT、FL、FED及び投写管等、特に、青色発光ダイオード又は紫外発光ダイオードを光源とする発光特性に極めて優れた白色の発光装置等に使用される窒化物蛍光体及びその製造方法等に関する。また、本願発明に係る窒化物蛍光体を有する白色の発光装置は、店頭のディスプレイ用の照明、医療現場用の照明などの蛍光ランプに使用することができる他、携帯電話のバックライト、発光ダイオード(LED)の分野などにも応用することができる。
【背景技術】
【0002】
公知の白色に発光する発光装置は、可視光領域の長波長側の発光が得られにくいため、やや黄色を帯びた白色に発光する発光装置となっていた。しかし、店頭のディスプレイ用の照明や、医療現場用の照明などおいては、やや赤みを帯びた白色に発光する発光装置が、強く求められている。
【0003】
青色発光ダイオードを光源に用いた白色に発光する蛍光体として、すでに知られている(例えば、特許文献1参照)。この蛍光体は、MSi:Eu(Mは、Ca、Sr、Ba、Znのグループからなるアルカリ土類金属を少なくとも1つ以上含有する。Zは、Z=2/3X+4/3Yで表される)で表される組成を有する蛍光体である。この蛍光体は、可視光領域における250nm〜450nmの短波長を吸収し、450nm〜500nm以上の波長で強く反射する。従って、この蛍光体は、可視光の藍色、青色から青緑色の短波長を吸収するため、緑色、黄色、赤色などの波長側で、強く反射する。この特性を利用して、たとえば青色発光ダイオードと組み合わせることにより、やや赤みを帯びた白色光が得られるという性質を持つ。
【0004】
【特許文献1】国際公開番号01/40403
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1に係る発明の蛍光体は、有用な発光特性を有するものの、製造しにくいという欠点がある。また、発光輝度が低いという欠点がある。上記特許文献1の出願明細書に記載されている実施例に従って、ほぼ同一条件下で数回、試験を行った。発明の実施の形態に記載する表1に、試験結果を示す。
【0006】
試験1は、特許文献1に基づき、配合、焼成を行った結果である。Ca、Si、Euの配合比は、Ca:Si:Eu=2:5:0.2である。この配合比により、水素(3.75%)及び窒素(400l/h)の混合気体雰囲気下、1200℃〜1400℃(特許文献1では、1300℃〜1575℃)で焼成を行った。他の試験操作、焼成条件は、特許文献1と同様である。この試験1より製造された蛍光体は、肉眼で観察したところ、一部のみしか発光していなかった。また、試験1より製造された蛍光体の輝度は低く、発光ダイオードと組み合わせて発光させるには、不十分であった。
【0007】
以上に鑑みて、本発明は、第1の発光スペクトルの一部を変換し、第1の発光スペクトルと異なる領域に第2の発光スペクトルを有する発光輝度の高い蛍光体を提供すること、具体的には、光源に紫外から青色領域の発光スペクトルを有する発光ダイオードを使用し、該発光ダイオードからの発光スペクトルを変換し、白色に発光する発光特性の優れた蛍光体を提供することを目的とする。また、歩留りが極めて高く高輝度の発光特性を示す蛍光体の安定した製品の提供を図ること、及び、製造効率の良好な製造方法を提供することを目的とする。さらに、青色発光ダイオードと該蛍光体とを組み合わせて白色に発光する発光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、第1の発光スペクトルを持つ光を発する半導体発光素子と、前記第1の発光スペクトルの光の少なくとも一部を吸収し、前記第1の発光スペクトルと異なる第2の発光スペクトルの光を発する蛍光体と、を有する発光装置であって、前記蛍光体は、第1の蛍光体と第2の蛍光体とを有し、前記第1の蛍光体は、黄色から赤色領域に前記第2の発光スペクトルの光を発する窒化物蛍光体であり、前記第2の蛍光体は、前記第1の蛍光体よりも短波長側に発光色を有する蛍光体であり、前記発光装置は電球色に近い発光特性を示す発光装置に関する。
【0009】
前記窒化物蛍光体は、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Zn、Cd、HgのII価からなる群より選ばれる少なくとも1種と、C、Si、Ge、Sn、Ti、Zr、HfのIV価からなる群より選ばれる少なくとも1種と、Nと、Eu、Cr、Mn、Pb、Sb、Ce、Tb、Pr、Sm、Tm、Ho、Er、Yb、Ndからなる群より選ばれる少なくとも一種の賦活剤と、を有する結晶性を持つ蛍光体であることが好ましい。
【0010】
前記第2の蛍光体は、青色又は緑色、黄色のいずれかに発光色を持つこともできる。
【0011】
前記半導体発光素子は、360nm〜550nmに発光ピーク波長を有しており、前記半導体発光素子の発光ピーク波長の強度よりも前記蛍光体の発光ピーク波長の強度の方が大きい。
【発明の効果】
【0012】
これにより電球色に近い発光装置を製造することができるという極めて重要な技術的意義を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、第1の発光スペクトルの少なくとも一部を変換し、前記第1の発光スペクトルと異なる領域に第2の発光スペクトルを少なくとも1以上有している、基本構成元素に少なくとも窒素を含有する窒化物蛍光体の製造方法であって、アンモニア雰囲気中で焼成が行われる工程を有することを特徴とする窒化物蛍光体の製造方法に関する。
【0014】
公知の蛍光体の製造方法は、よく精製された母体、賦活剤などの原料を混合した後、モリブデンるつぼに入れ、炉中で焼成する工程を経る。本発明は、この公知の蛍光体の製造方法と、ほぼ同一の工程を経ることができるが、異なる工程を経ることもできる。
【0015】
特許文献1では、焼成の工程を、水素(3.75%)及び窒素(400l/h)の混合気体雰囲気下で行っているが、本発明は、アンモニア雰囲気中で行っている。本発明に係る製造方法を用いることにより、歩留りが極めて高く高輝度の発光特性を示す蛍光体を得ることが可能である。
【0016】
比較例と本発明の実施例との比較結果を、表2及び表3([発明の実施の形態]で詳述する。)に示す。表2及び表3では、比較例と本発明の実施例とを、焼成の工程を除いて、同一条件で焼成を行っている。比較例は、水素及び窒素雰囲気中で焼成を行い、本発明の実施例は、アンモニア雰囲気中で焼成を行っている。その結果、比較例に対して本発明の実施例の輝度は、18%も高い。この18%もの輝度の向上があったことは、極めて優れた効果を示し、技術的意義がある。また、エネルギー効率が17.6%も向上している。さらに、量子効率が20.7%向上している。これらの結果から、本発明に係る製造工程を経ることにより、歩留りが極めて高く高輝度の発光特性を示す蛍光体の安定した製品の供給を図ることができ、また、製造効率の極めて良好な窒化物蛍光体の製造方法を提供することができることが証明された。さらに、温度特性の極めて良好な窒化物蛍光体を提供することができる。
【0017】
本発明に係る焼成の工程は、1200℃〜1600℃の範囲の温度条件で焼成を行うことが好ましい。より好ましくは、1200℃〜1400℃の範囲である。本発明に係る焼成の工程は、1200℃〜1400℃の範囲で、数時間焼成を行う1段階の焼成工程を経ることが好ましいが、700℃〜1000℃で数時間、第1の焼成を行い、さらに、昇温を行い1200℃〜1400℃で数時間、第2の焼成を行う2段階の焼成工程を経ることもできる。
【0018】
前記窒化物蛍光体は、黄から赤領域に第2の発光スペクトルを少なくとも1以上有していることが好ましい。これにより、青色発光ダイオードと組み合わせて白色に発光する蛍光体を製造することができるからである。より好ましくは580nm〜630nmの波長を示す黄−赤色領域に第2の発光スペクトルが少なくとも1以上存在していることが好ましい。
【0019】
前記焼成は、窒化ホウ素材質のるつぼを用いて焼成を行っていることが好ましい。特許文献1では、モリブデンるつぼを使用している。モリブデンるつぼは、発光を阻害したり、反応系を阻害したりするおそれがある。一方、本発明における窒化ホウ素るつぼを使用する場合は、発光を阻害したり反応系を阻害したりすることがないため、極めて高純度の窒化物蛍光体を製造することができるからである。また、窒化ホウ素るつぼは、水素窒素中では、分解するため、特許文献1の合成方法では、使用することができない。
【0020】
前記窒化物蛍光体は、L(2/3X+4/3Y):Z(Lは、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Zn、Cd、HgのII価からなる群より選ばれる少なくとも1種以上を含有する。Mは、C、Si、Ge、Sn、Ti、Zr、HfのIV価からなる群より選ばれる少なくとも1種以上を含有する。Zは、賦活剤である。)で表される基本構成元素を少なくとも含有することが好ましい。これにより高輝度、高エネルギー効率、高量子効率の窒化物蛍光体を提供することができる。窒化物蛍光体中は、L(2/3X+4/3Y):Zで表される基本構成元素の他に、原料中に含まれる不純物も残存する。例えば、Co、Mo、Ni、Cu、Feなどである。これらの不純物は、発光輝度を低下させたり、賦活剤の活性を阻害したりする原因にもなるため、できるだけ系外に除去することが好ましい。
【0021】
前記窒化物蛍光体は、L(2/3X+4/3Y):Z(Lは、Mg、Ca、Sr、BaのII価からなる群より選ばれる少なくとも1種以上を含有する。Mは、Siである。Zは、賦活剤である。)で表される基本構成元素を少なくとも含有することが好ましい。この窒化物蛍光体は、第1の発光スペクトルに400nm〜460nmの波長を有する青色発光ダイオードを使用して、本発明に係る窒化物蛍光体に照射すると560nm〜680nm付近にピーク波長を有し、白色に発光する蛍光体を製造することができるからである。
【0022】
Lの窒化物、Mの窒化物及びZの化合物を混合する工程を有していることが好ましい。これにより歩留りが極めて少なく、製造効率の極めて良好な窒化物蛍光体を製造することができるからである。該混合する工程は、焼成前に行うことが好ましいが、焼成中、焼成後に混合し再焼成してもよい。原料または合成中間体であるLの窒化物、Mの窒化物及びZの化合物の配合比率が、Lの窒化物:Mの窒化物:Zの化合物=1.80〜2.20:4〜6:0.01〜0.10であることが好ましい。これにより、より均一な蛍光体を得ることが可能である。
【0023】
前記Zで表される賦活剤は、Euであることが好ましい。L(2/3X+4/3Y):Zで表される基本構成元素の賦活剤にEuを用いることにより、250nm〜480nm付近の第1の発光スペクトルを吸収するからである。この吸収により第1の発光スペクトルと異なる領域に第2の発光スペクトルを有することができるからである。特に、青色発光ダイオードと本発明の窒化物蛍光体とを組み合わせることにより、白色に発光する蛍光体を提供することができる。
【0024】
前記Lと前記Zとは、L:Z=1:0.001〜1のモル比の関係を有することが好ましい。L(2/3X+4/3Y):Zで表される基本構成元素中のZの配合割合を上記範囲にすることにより、高輝度の窒化物蛍光体を得ることができる。また、温度特性が良好な窒化物蛍光体を提供することができる。より好ましくは、L:Z=1:0.003〜0.05のモル比の関係である。この範囲の時に、高輝度で、温度特性の良好な窒化物蛍光体を提供することができるからである。また、原料のEuの化合物が高価であるため、Euの化合物の配合比率を減少することにより、より低廉な蛍光体を製造することが可能である。
【0025】
本発明は、第1の発光スペクトルの少なくとも一部を変換し、前記第1の発光スペクトルと異なる領域に第2の発光スペクトルを少なくとも1以上有している、基本構成元素に少なくとも窒素を含有する窒化物蛍光体であって、前記窒化物蛍光体は、前記窒化物蛍光体の製造方法から製造されている窒化物蛍光体であることを特徴とする窒化物蛍光体に関する。これにより高輝度、高エネルギー効率、高量子効率などの発光特性を示す窒化物蛍光体を提供することができる。また、温度特性の極めて良好な窒化物蛍光体を提供することができる。
【0026】
本発明は、第1の発光スペクトルを有する半導体発光素子と、前記第1の発光スペクトルの少なくとも一部を変換し、前記第1の発光スペクトルと異なる領域に第2の発光スペクトルを少なくとも1以上有している、基本構成元素に少なくとも窒素を含有する窒化物蛍光体と、を少なくとも有する発光装置であって、前記窒化物蛍光体は、前記窒化物蛍光体の製造方法から製造されている窒化物蛍光体であることを特徴とする発光装置に関する。これにより半導体発光素子と、発光特性の極めて優れた蛍光体とを組み合わせることにより、青、緑、赤の他、種々の色を発光することができる発光装置を提供することができる。特に市場の要望が大きい、やや赤みを帯びた白色に発光する発光装置を提供することができる。
【0027】
本発明の窒化物蛍光体の一例であるアルカリ土類金属系窒化ケイ素蛍光体は、可視光領域における250nm〜450nmの短波長を吸収し、580nm〜650nmの長波長にて反射が行われる。たとえば、青色発光ダイオードを、本発明のアルカリ土類金属系窒化ケイ素蛍光体に照射することにより、やや赤みを帯びた白色の発光装置を製造することができる。青色発光ダイオードとして、公知のYAl12蛍光体を用いると、青色領域の可視光と、黄―橙色領域の可視光とが、組み合わされて、白色領域の可視光を供給することができる。
【0028】
以上のことから、本発明は、高輝度、高エネルギー効率、高量子効率などの発光特性の優れた窒化物蛍光体およびその製造方法を提供すること、また、発光が常に行われる安定した発光装置を提供すること、及び、製造効率の良好な窒化物蛍光体の製造方法を提供することが可能であるという技術的意義を有する。
【0029】
本発明は、第1の発光スペクトルの一部を変換し、第1の発光スペクトルと異なる領域に第2の発光スペクトルを有する発光輝度の高い蛍光体を提供すること、具体的には、光源に紫外から青色領域の発光スペクトルを有する発光ダイオードを使用し、該発光ダイオードからの発光スペクトルを変換し、白色に発光する発光特性の優れた蛍光体を提供することができる。また、歩留りが高く、高輝度の発光特性を示す蛍光体の安定した製品の提供を図ること、及び、製造効率の良好な製造方法を提供することができる。さらに、青色発光ダイオードと該蛍光体とを組み合わせて白色に発光する発光装置を提供することができる。このように、本発明は、従来解決されなかった課題を解決するものであり、極めて優れた技術的意義を有する。
【0030】
<実施の形態>
以下、本発明に係る窒化物蛍光体及びその製造方法、発光装置を、発明の実施の形態及び実施例を用いて説明する。だたし、本発明は、この実施の形態及び実施例に限定されない。相対的に比較するため、セリウムで付活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット蛍光物質(以下、YAGという。)を用いる。
【0031】
まず、図1を用いて、本発明に係る窒化物蛍光体およびその製造方法を説明する。
【0032】
原料のLを粉砕する(P1)。原料のLは、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Zn、Cd、HgのII価からなる群より選ばれる少なくとも1種以上を含有する。特に、原料のLは、Be、Mg、Ca、Sr、Baのグループからなるアルカリ土類金属が好ましく、さらにアルカリ土類金属単体が好ましいが、2以上含有するものでもよい。原料のLは、イミド化合物、アミド化合物などを使用することもできる。原料のLは、アルゴン雰囲気中、グローブボックス内で粉砕を行う。粉砕により得られたアルカリ土類金属は、平均粒径が約0.1μmから15μmであることが好ましいが、この範囲に限定されない。Lの純度は、2N以上であることが好ましいが、これに限定されない。より混合状態を良くするため、金属のL、金属のM、金属の賦活剤のうち少なくとも1以上を合金状態としたのち、窒化し、粉砕後、原料として用いることもできる。
【0033】
原料のSiを粉砕する(P2)。基本構成元素L(2/3X+4/3Y):ZのMは、C、Si、Ge、SnのIV価からなる群より選ばれる少なくとも1種以上を含有する。原料のMは、イミド化合物、アミド化合物などを使用することもできる。Mのうち、安価で扱いやすいため、Siを用いて製造方法を説明するが、これに限定されない。Si、Si、Si(NHなども使用することができる。Siも、原料のLと同様に、アルゴン雰囲気中、若しくは、窒素雰囲気中、グローブボックス内で粉砕を行う。Si化合物の平均粒径は、約0.1μmから15μmであることが好ましい。Siの純度は、3N以上であることが好ましい。
【0034】
次に、原料のLを窒素雰囲気中で窒化する(P3)。この反応式を、[化1]に示す。
【0035】
【化1】

II価のLを、窒素雰囲気中、600℃〜900℃、約5時間、窒化する。これにより、Lの窒化物を得ることができる。Lの窒化物は、高純度のものが好ましいが、市販のもの(高純度化学製)も使用することができる。
【0036】
原料のSiを、窒素雰囲気中で窒化する(P4)。この反応式を、[化2]に示す。
【0037】
【化2】

ケイ素Siも、窒素雰囲気中、800℃〜1200℃、約5時間、窒化する。これにより、窒化ケイ素を得る。本発明で使用する窒化ケイ素は、高純度のものが好ましいが、市販のもの(宇部製)も使用することができる。
【0038】
Lの窒化物Lを粉砕する(P5)。Lの窒化物を、アルゴン雰囲気中、若しくは、窒素雰囲気中、グローブボックス内で粉砕を行う。
【0039】
同様に、窒化ケイ素Siについても、粉砕を行う(P6)。
【0040】
また、同様に、Euの化合物Euも、粉砕を行う(P7)。基本構成元素L(2/3X+4/3Y):ZのZは、賦活剤であり、Eu、Cr、Mn、Pb、Sb、Ce、Tb、Pr、Sm、Tm、Ho、Erからなる群より選ばれる少なくとも一種以上を含有する。Zのうち、赤色領域で発光を行うEuを用いて本発明に係る製造方法を説明するが、これに限定されない。Euの化合物として、酸化ユウロピウムを使用するが、窒化ユウロピウムなども使用可能である。このほか、原料のZは、イミド化合物、アミド化合物を用いることもできる。酸化ユウロピウムは、高純度のものが好ましいが、市販のもの(信越製)も使用することができる。粉砕後のアルカリ土類金属の窒化物、窒化ケイ素、及び酸化ユウロピウムの平均粒径は、約0.1μmから15μmであることが好ましい。
【0041】
上記粉砕を行った後、L、Si、Euを混合する(P8)。これらの混合物は、酸化されやすいため、Ar雰囲気中、又は、窒素雰囲気中、グローブボックス内で、混合を行う。
【0042】
最後に、L、Si、Euの混合物をアンモニア雰囲気中で、焼成する(P9)。焼成により、目的とするLSi:Euで表される蛍光体を得ることができた(P10)。この焼成による反応式を、[化3]に示す。
【0043】
【化3】

ただし、目的とする蛍光体の組成を変更することにより、各混合物の配合比率は、適宜変更することができる。[化3]において、酸素が本発明に係る窒化物蛍光体に含有されているが、本発明の目的を達成することができるため、窒化物蛍光体には、基本構成元素L(2/3X+4/3Y):Zを含有していれば良い。
【0044】
焼成は、管状炉、小型炉、高周波炉、メタル炉などを使用することができる。焼成温度は、1200℃から1600℃の範囲で焼成を行うことができるが、好ましくは、1200℃から1400℃の焼成温度が好ましい。窒化ホウ素(BN)材質のるつぼ、ボートを使用することが好ましい。窒化ホウ素材質のるつぼの他に、アルミナ(Al)材質のるつぼを使用することもできる。アルミナ材質のるつぼを使用した場合でも、アンモニア雰囲気中で、発光を阻害することがないからである。
【0045】
以上の製造方法を使用することにより、目的とする蛍光体を得ることが可能である。
【0046】
以下、本発明に係る窒化物蛍光体、LSi:Eu、本発明に係る窒化物蛍光体の製造方法において、その合成中間体であるLの窒化物、Mの窒化物、Zの化合物について説明する。Lの窒化物として窒化アルカリ土類金属、Mの窒化物として窒化ケイ素、Zの化合物として酸化ユウロピウムを例に挙げて説明するがこれに限定されない。
【0047】
本発明の窒化物蛍光体のZは、希土類元素であるユウロピウムEuを発光中心とする。ユウロピウムは、主に2価と3価のエネルギー準位を持つ。本発明の窒化物蛍光体は、母体のアルカリ土類金属系窒化ケイ素に対して、Eu2+を賦活剤として用いる。Eu2+は、酸化されやすく、3価のEuの組成で市販されている。しかし、市販のEuでは、Oの関与が大きく、良好な蛍光体が得られにくい。そのため、EuからOを、系外へ除去したものを使用することが好ましい。たとえば、ユウロピウム単体、窒化ユウロピウムを用いることが好ましい。
【0048】
原料のII価のLも、酸化されやすい。たとえば、市販のCaメタルでは、Oが0.66%、Nが0.01%含有されている。このCaメタルを製造工程において、窒化するため、市販(高純度化学製)の窒化カルシウムCaを購入し、O及びNを測定したところ、Oが1.46%、Nが16.98%であったが、開封後、再度密閉して2週間静置したところ、Oが6.80%、Nが13.20%と変化していた。また、別の市販の窒化カルシウムCaでは、Oが26.25%、Nが6.54%であった。このOは、不純物となり、発光劣化を引き起こすため、極力、系外へ除去することが好ましい。このため、800℃で、8時間、窒素雰囲気中で、カルシウムの窒化を行った。この結果、窒化カルシウム中の、Oを0.67%まで減少させたものが得られた。このときの窒化カルシウム中のNは、15.92%であった。
[比較例]
【0049】
以下、本発明の特徴を明確にするため、公知のアルカリ土類金属系窒化ケイ素蛍光体CaSi:Euを製造し、測定を行った。試験結果を、表1に示す。
【0050】
【表1】

比較例1は、公知の蛍光体CaSi:Euである。原料の配合比率は、窒化カルシウムCa:窒化ケイ素Si:酸化ユウロピウムEu=4:5:0.2である。この3化合物原料を、BNるつぼに入れ、1400℃、水素/窒素雰囲気下、小型炉で5時間、焼成を行った。温度は、室温から5時間かけて1400℃まで、徐々に加熱し、1400℃で5時間焼成を行った後、さらに5時間かけて室温まで、徐々に冷却を行った。この結果、体色が橙色、発光も橙色の蛍光体粉末が得られたが、肉眼観察を行ったところ、発光輝度が極めて低かった。
【0051】
比較例2〜5について、炉、焼成温度、雰囲気、形状の焼成の条件を変えて、焼成を行った。比較例2〜4は、水素/窒素雰囲気下で焼成を行っている。比較例2〜4の条件下で得られた窒化物蛍光体は、肉眼観察で、極めて発光輝度が低かった。比較例5では、水素雰囲気中で焼成を行ったが、肉眼観察で発光が行われていなかった。これらの試験を繰り返し行った場合でも、同様の試験結果が得られた。
【0052】
<比較試験>
本発明の作用効果を明確にするため、雰囲気の違い以外は、同条件で焼成を行った。その結果を、表2及び表3に示す。図2は、実施例2及び比較例6を、Ex=460nmで励起したときの発光スペクトルを示す図である。
【0053】
【表2】

【0054】
【表3】

実施例1及び比較例6は原料の配合比率は、窒化カルシウムCa:窒化ケイ素Si:酸化ユウロピウムEu=1.97:5:0.03である。この3化合物原料を、BNるつぼに入れ、室温から徐々に昇温を行い約800℃で3時間、焼成を行い、さらに徐々に昇温を行い約1350℃で5時間、焼成を行い、焼成後、ゆっくりと5時間をかけて室温まで冷却した。比較例6は、水素/窒素雰囲気中で焼成を行った。実施例1のアンモニアの流量を1とした場合に、比較例6の水素/窒素の流量は、水素:窒素=0.1:3の割合である。一方、実施例1は、アンモニア雰囲気中で焼成を行った。
【0055】
表2及び表3並びに図2から明らかなように、比較例6の発光輝度は、59.9%であるのに対し、実施例1の発光輝度は、77.9%と、18%も発光輝度が向上した。この発光輝度の違いは、発光効率の観点から、極めて重要な意義を持つ。比較例6のエネルギー効率は、57.1%であるのに対し、実施例1のエネルギー効率は、74.7%と、17.6%も向上した。さらに、比較例6の量子効率は、57.3%であるのに対し、実施例1の量子効率は、78.0%と、20.7%も向上した。このように、雰囲気を変えることにより、極めて顕著な発光特性を得ることができた。こうした発光特性の向上は、より鮮やかな白色に発光する発光材料を提供することができる。また、発光特性の向上は、エネルギー効率を高めるため、省電力化も図ることができる。
【0056】
さらに実施例2では、実施例1と比較して焼成パターンの違い以外は、同条件で焼成を行った。実施例2の焼成パターンは、室温から徐々に昇温を行い約1350℃で5時間、焼成を行い、ゆっくりと5時間かけて室温まで冷却した。このとき発光輝度は、82.0%と、比較例6と比べて22.1%も向上した。また、エネルギー効率は、78.8%と、比較例6と比べて21.7%も向上した。さらに、量子効率は、79.1%と、比較例6と比べて21.8%も向上した。さらに、室温を100として被測定ロットの相対輝度変化で温度特性を見てみると、比較例6では、温度200℃では62.8であるのに対し、実施例2は、同温度で67.1と、高い数値を示した。また300℃では、比較例6の18.2に対し、実施例2の23.5と、高い数値を示した。この温度特性は、発光素子の表面に該窒化物蛍光体を設けたとき、窒化物蛍光体の組成が変化せずに、高い発光特性を示しているかを表すものであり、温度特性が高いものほど安定であることを示している。表2及び表3の結果から本発明に係る窒化物蛍光体の方が、比較例6よりも温度特性が良好であり、信頼性が高いことが明確である。このように、比較例6と比べて極めて顕著な発光特性を示した。これにより従来解決されていなかった発光特性の向上を、極めて容易に図ることができる。
【0057】
<実施例2〜4>
表4及び5は、本発明に係る窒化物蛍光体の実施例2〜4を示す。また、図3乃至5は、実施例2〜4の発光特性を示したものである。図3は、実施例2〜4を、Ex=460nmで励起したときの発光スペクトルを示す図である。図4は、実施例2〜4の励起スペクトルを示したものである。図5は、実施例2〜4の反射スペクトルを示したものである。
【0058】
【表4】

【0059】
【表5】

実施例2〜4は、本発明に係る窒化物蛍光体L(2/3X+4/3Y):Zの化学的特性や物理的特性を調べた結果である。窒化物蛍光体L(2/3X+4/3Y):Zには、(Ca1−tEuSiである。実施例2〜4は、賦活剤ZにEuを用いており、該Euの配合割合tを変更したものである。実施例2は、0.015、実施例3は、0.005、実施例4は、0.03、Euを含有している。焼成条件は、実施例2と同様で、室温から徐々に昇温を行い約1350℃で5時間、焼成を行い、ゆっくりと5時間かけて室温まで冷却した。
【0060】
実施例2は、実施例3とを比較すると温度特性が高いことが明確である。一般に使用されている発光素子は100℃〜150℃の温度範囲まで温度上昇するため、発光素子の表面に窒化物蛍光体を形成しようとする場合は、該温度範囲で安定であることが好ましい。その観点から実施例3は、極めて温度特性が良好であるため、優れた技術的意義を有する。
【0061】
実施例4は、実施例2と比較すると発光輝度が高く、量子効率も高い。従って、実施例4は、極めて良好な発光特性を示す。
【0062】
<実施例5〜7>
表6は、本発明に係る窒化物蛍光体の実施例5〜7を示す。
【0063】
【表6】

表6における実施例5は、Ca1.8Si:Eu0.2である。原料の配合比率は、窒化カルシウムCa:窒化ケイ素Si:酸化ユウロピウムEu=1.8:5:0.2である。
Ca(高純度化学製) 1.284g
Si(宇部製) 3.376g
Eu(信越製) 0.339g
この3化合物原料を、BNるつぼに入れ、1200℃から1350℃、アンモニア雰囲気下、管状炉で5時間、焼成を行った。温度は、室温から5時間かけて1350℃まで、徐々に加熱し、5時間焼成を行った後、さらに5時間かけて室温まで、徐々に冷却を行った。アンモニアガスは、2l/minの割合で、終始流し続けた。この結果、体色が橙色、発光も橙色の窒化物蛍光体粉末が得られた。この蛍光体粉末は、肉眼観察において、蛍光体粉末全体が、橙色に発光している。このように、蛍光体全体が均一に発光が行われているため、製造効率の向上、安定した窒化物蛍光体の提供、製造コストの低廉を図ることができる。
【0064】
実施例6は、蛍光体Ca1.96Eu0.04Siである。原料の配合比率は、窒化カルシウムCa:窒化ケイ素Si:酸化ユウロピウムEu=1.96:5:0.04である。
Ca(高純度化学製) 2.888g
Si(宇部製) 6.971g
Eu(信越製) 0.140g
この3化合物原料も、実施例5と同様の試験方法で、焼成を行った。この結果、実施例5と同様、体色が橙色、発光も橙色の蛍光体粉末が得られた。
【0065】
実施例7は、蛍光体Ca1.985Eu0.015Siである。原料の配合比率は、窒化カルシウムCa:窒化ケイ素Si:酸化ユウロピウムEu=1.98:5:0.02である。
Ca(高純度化学製) 2.930g
Si(宇部製) 7.000g
Eu(信越製) 0.070g
この3化合物原料も、実施例5と同様の試験方法で、焼成を行った。この結果、実施例5と同様、体色が橙色、発光も橙色の蛍光体粉末が得られた。また本実施例7により得られた窒化物蛍光体は、肉眼観察において、発光輝度が、比較例よりも向上していた。さらに、本実施例7により得られた蛍光体は、実施例6とほぼ同様の、発光輝度を示した。
【0066】
<実施例6及び7により得られた蛍光体の測定結果>
代表例として実施例6及び7の窒化物蛍光体の測定を行った。試験結果を、図6から図9に示す。図6は、実施例6及び7を、Ex=400nmで励起したときの発光スペクトルを示す図である。図7は、実施例6及び7を、Ex=460nmで励起したときの発光スペクトルを示す図である。図8は、実施例6及び7の反射率を示す図である。図9は、実施例6及び7の励起スペクトルを示す図である。
【0067】
波長400nmの可視光領域の光を、実施例6及び7の窒化物蛍光体に照射した。図6において、実施例6及び7の窒化物蛍光体は、610nmで最も発光している。
【0068】
波長460nmの可視光領域の光を、実施例6及び7の窒化物蛍光体に照射した。図7において、実施例6は、620nmで最も発光し、実施例7は、610nmで最も発光している。このように、実施例7に対し実施例6は、長波長側にシフトしていることから、より赤色に発光する。この460nmは、公知の青色発光ダイオードの発光波長のうち、最も発光輝度の高い波長であるため、青色と黄−赤発光スペクトルと組み合わせることにより、やや赤みを帯びた白色の窒化物蛍光体を製造することができる。反射率は、実施例7の窒化物蛍光体の方が、実施例6の窒化物蛍光体よりも高反射特性を示す。実施例6及び7のいずれの窒化物蛍光体も、可視光領域の短波長側の光は、吸収している。励起スペクトルは、実施例6の窒化物蛍光体の方が、実施例7の窒化物蛍光体よりも、高い励起スペクトルを示す。
【0069】
この図6〜9より、黄−赤可視光領域での発光が確認された。
【0070】
<実施例8及び9>
実施例8は、蛍光体Sr1.97Eu0.03Siである。原料の配合比率は、窒化カルシウムSr:窒化ケイ素Si:酸化ユウロピウムEu=1.97:5:0.03である。この3化合物原料を、BNるつぼに入れ、管状炉で、800℃〜1000℃で3時間焼成し、その後、1250℃〜1350℃で5時間焼成を行い、5時間かけて室温まで、徐々に冷却を行った。アンモニアガスは、1l/minの割合で、終始流し続けた。この結果、体色がピンク、365nmの光照射を行うと、肉眼でピンクに発光している窒化物蛍光体が得られた。実施例8の窒化物蛍光体の200℃における温度特性は、87.7%と極めて高い温度特性を示している。表7及び表8は、本発明に係る窒化物蛍光体の実施例8及び9を示す。
【0071】
【表7】

【0072】
【表8】

実施例9は、蛍光体Sr1.4Ca0.6Si:Euである。実施例9は、実施例8と同様の焼成条件で焼成を行った。図10は、実施例9を、Ex=460nmで励起したときの発光スペクトルを示す図である。図10から明らかなように、Ex=460nmの発光スペクトルの光を照射したところ、II価のSrを単独で用いたときよりも、SrとCaを組み合わせたときの方が、長波長側にシフトした。発光スペクトルのピークは、655nmである。これにより、青色発光素子と実施例9の蛍光体とを組み合わせると赤みを帯びた白色に発光する蛍光体を得ることができる。また、実施例9の蛍光体Sr1.4Ca0.6Si:Euの量子効率は、86.7%と、良好である。
【0073】
<他の実施例>
窒化物蛍光体の種々の実施例を示す。本発明に係る窒化物蛍光体は、L(2/3X+4/3Y):Zで表される窒化物蛍光体である。該窒化物蛍光体の基本構成元素である、Lは、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Zn、Cd、HgのII価からなる群より選ばれる少なくとも1種以上を含有し、Mは、C、Si、Ge、SnのIV価からなる群より選ばれる少なくとも1種以上を含有し、Zは、賦活剤である。賦活剤Zは、Euが好ましいが、Cr、Mn、Pb、Sb、Ce、Tb、Sm、Pr、Tm、Ho、Erなども使用することができる。
【0074】
窒化物蛍光体は、SrSi:Eu、BaSi:Eu、MgSi:Eu、ZnSi:Eu、SrSi10:Eu、BaSi10:Eu、MgSi10:Eu、ZnSi10:Eu、SrGe:Eu、BaGe:Eu、MgGe:Eu、ZnGe:Eu、SrGe10:Eu、BaGe10:Eu、MgGe10:Eu、ZnGe10:Eu、Sr1.8Ca0.2Si:Eu、Ba1.8Ca0.2Si:Eu、Mg1.8Ca0.2Si:Eu、Zn1.8Ca0.2Si:Eu、Sr0.8Ca0.2Si10:Eu、Ba0.8Ca0.2Si10:Eu、Mg0.8Ca0.2Si10:Eu、Zn0.8Ca0.2Si10:Eu、Sr0.8Ca0.2Ge10:Eu、Ba0.8Ca0.2Ge10:Eu、Mg0.8Ca0.2Ge10:Eu、Zn0.8Ca0.2Ge10:Eu、Sr0.8Ca0.2SiGeN10:Eu、Ba0.8Ca0.2SiGeN10:Eu、Mg0.8Ca0.2SiGeN10:Eu、Zn0.8Ca0.2SiGeN10:Eu、SrSi:Pr、BaSi:Pr、SrSi:Tb、BaGe10:Ceなどが製造できる。但し、本発明は、この窒化物蛍光体に限定されるものでない。
【0075】
<発光装置1>
図11は、本発明に係る発光装置1を示す図である。
【0076】
LEDチップは、発光層として発光ピークが青色領域にある460nmのInGaN系半導体層を有する半導体発光素子1を用いる。該半導体発光素子1には、p型半導体層とn型半導体層とが形成されており(図示しない)、該p型半導体層とn型半導体層には、リード電極2へ連結される導電性ワイヤ4が形成されている。リード電極2の外周を覆うように絶縁封止材3が形成され、短絡を防止している。半導体発光素子1の上方には、パッケージ5の上部にあるリッド6から延びる透光性の窓部7が設けられている。該透光性の窓部7の内面には、本発明に係る窒化物蛍光体8がほぼ全面に塗布されている。
【0077】
半導体発光素子1で青色に発光した発光スペクトルは、反射板で反射した間接的な発光スペクトルと、半導体発光素子1から直接射出された発光スペクトルとが、本発明の窒化物蛍光体8に照射され、白色に発光する蛍光体となる。本発明の窒化物蛍光体8に、緑色系発光蛍光体SrAl:Eu、YSiO:Ce,Tb、MgAl1119:Ce,Tb、SrAl1225:Eu、(Mg、Ca、Sr、Baのうち少なくとも1以上)Ga:Eu、青色系発光蛍光体Sr(POCl:Eu、(SrCaBa)(POCl:Eu、(BaCa)(POCl:Eu、(Mg、Ca、Sr、Baのうち少なくとも1以上)Cl:Eu,Mn、(Mg、Ca、Sr、Baのうち少なくとも1以上)(POCl:Eu,Mn、赤色系発光蛍光体YS:Eu、LaS:Eu、Y:Eu、GaS:Euなどをドープすることにより、所望の発光スペクトルを得ることができる。
【0078】
以上のようにして形成された発光ダイオードを用いて白色LEDランプを形成すると、歩留まりは99%である。このように、本発明である発光ダイオードを使用することで、量産性良く発光装置を生産でき、信頼性が高く且つ色調ムラの少ない発光装置を提供することができる。
【0079】
<発光装置2>
図12は、本発明に係る発光装置2を示す図である。図13は、本発明に係る発光装置2の発光スペクトルを示す図である。図14は、本発明に係る発光装置2の色度座標を示す図である。
【0080】
発光装置2は、サファイア基板11の上部に積層された半導体層12と、該半導体層12に形成された電極から延びるワイヤで導電接続されたリードフレームと、該サファイア基板11と半導体層12とから構成される半導体発光素子の外周を覆うように設けられた本発明に係る窒化物蛍光体14と、該窒化物蛍光体14及びリードフレーム13の外周面を覆うエポキシ樹脂15と、から構成されている。
【0081】
サファイア基板11上にダブルへテロ構造の窒化物半導体層12が形成され、その窒化物半導体層12の同一平面側に正電極と負電極とが形成された350μm角の半導体発光素子を多数用意する。前記半導体層12には、発光層が設けられており、この発光層から出力される発光ピークは、青色領域にある460nmの発光スペクトルを有する。この該サファイア基板11と半導体層12とから構成される半導体発光素子は、公知の半導体発光素子を用いることもできるが、GaN組成の半導体発光素子を用いることが好ましい。
【0082】
次に、この半導体発光素子をダイボンダーにセットし、カップが設けられたリードフレーム13にフェイスアップしてダイボンドする。ダイボンド後、リードフレーム13をワイヤーボンダーに移送し、半導体発光素子の負電極をカップの設けられたリードフレーム13aに金線でワイヤーボンドし、正電極をもう一方のリードフレーム13bにワイヤーボンドする。
【0083】
次に、モールド装置に移送し、モールド装置のディスペンサーでリードフレーム13のカップ内に窒化物蛍光体14を注入する。
【0084】
窒化物蛍光体14注入後、予めエポキシ樹脂15が注入されたモールド型枠の中にリードフレーム13を浸漬した後、型枠をはずして樹脂を硬化させ、図12に示すような砲弾型のLEDとする。
【0085】
発光装置2の窒化物蛍光体14は、本発明に係る窒化物蛍光体8aを使用する。半導体層12に電流を流すと、460nmで励起する発光スペクトルを有する青色LEDが発光し、この発光スペクトルを、半導体層12を覆う窒化物蛍光体8aが変換を行い、前記発光スペクトルと異なる発光スペクトルを有する。これにより赤みを帯びた白色に発光する発光装置2を得ることができる。
【0086】
表9及び表10は、本発明に係る発光装置2の発光特性を示す。図14、表9及び表10は、本発明に係る発光装置2の比較対象として、YAGの蛍光体を用いた発光装置の測定結果も併せて示す。
【0087】
【表9】

【0088】
【表10】

本発明に係る発光装置2の窒化物蛍光体8aは、実施例2の窒化物蛍光体と、樹脂と、セリウムで付活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット蛍光物質(以下、YAGという。)とを混合したものを用いる。これらの重量比は、樹脂:YAG:実施例2の窒化物蛍光体=25:6:3である。一方、青色半導体発光素子とYAGの蛍光体との組み合わせの発光装置の蛍光体は、樹脂:YAG=25:6の重量比で混合している。本発明に係る発光装置2は、発光ピークが青色領域にある460nmのInGaN系半導体層を有する半導体発光素子1(以下、青色LEDという。)を用いる。青色LEDの発光スペクトルを、窒化物蛍光体8aが変換し、やや赤みを帯びた白色に発光する発光装置2を得ることができる。
【0089】
本発明に係る発光装置2と青色LEDとYAGの蛍光体とを用いた発光装置とを比較する。このYAGの蛍光体は、ピーク波長が463.47nmであるのに対し、窒化物蛍光体8aのピーク波長は、596.00nmと異なる位置に発光スペクトルを有している。色度座標においても、YAGの蛍光体を用いた発光装置は、色調x=0.348、色調y=0.367で表され比較的青白く発光する白色である。一方、窒化物蛍光体8aを用いた発光装置2は、色調x=0.454、色調y=0.416で表される赤みを帯びた白色である。色温度は、2827.96Kであり、電球色に近い発光特性を有している。また、演色性においても、窒化物蛍光体8aを用いた発光装置2は、YAGの蛍光体を用いた発光装置とほぼ同様な演色性を示している。さらに、本発明に係る発光装置2は、24.87lm/Wという高い発光効率を有している。
【0090】
このことから、電球色に近い発光装置を製造することができるという極めて重要な技術的意義を有する。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明の窒化物蛍光体は、蛍光表示管、ディスプレイ、PDP、CRT、FL、FED及び投写管等、特に、青色発光ダイオード又は紫外発光ダイオードを光源とする発光装置等に利用することができる。また、発光装置は、店頭のディスプレイ用の照明、医療現場用の照明などの蛍光ランプに使用することができる他、携帯電話のバックライト、発光ダイオード(LED)の分野などにも応用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明に係る蛍光体の製造方法を示す図である。
【図2】実施例2及び比較例6を、Ex=460nmで励起したときの発光スペクトルを示す図である。
【図3】実施例2〜4を、Ex=460nmで励起したときの発光スペクトルを示す図である。
【図4】実施例2〜4の励起スペクトルを示したものである。
【図5】実施例2〜4の反射スペクトルを示したものである。
【図6】実施例6及び7を、Ex=400nmで励起したときの発光スペクトルを示す図である。
【図7】実施例6及び7を、Ex=460nmで励起したときの発光スペクトルを示す図である。
【図8】実施例6及び7の反射率を示す図である。
【図9】実施例6及び7の励起スペクトルを示す図である。
【図10】実施例9を、Ex=460nmで励起したときの発光スペクトルを示す図である。
【図11】本発明に係る発光装置1を示す図である。
【図12】本発明に係る発光装置2を示す図である。
【図13】本発明に係る発光装置2の発光スペクトルを示す図である。
【図14】本発明に係る発光装置2の色度座標を示す図である。
【符号の説明】
【0093】
P1 原料のLを粉砕する。
P2 原料のSiを粉砕する。
P3 原料のLを、窒素雰囲気中で窒化する。
P4 原料のSiを、窒素雰囲気中で窒化する。
P5 Lの窒化物Lを粉砕する
P6 窒化ケイ素Siについて、粉砕を行う。
P7 Euの化合物Euについて、粉砕を行う。
P8 L、Si、Euを混合する。
P9 L、Si、Euの混合物をアンモニア雰囲気中で、焼成する。
P10 LSi:Euで表される蛍光体を得ることができる。
1 半導体発光素子
2 リード電極
3 絶縁封止材
4 導電性ワイヤ
5 パッケージ
6 リッド
7 透光性の窓部
8 本発明の蛍光体
11 サファイア基板
12 半導体層
13、13a、13b リードフレーム
14 窒化物蛍光体8a
15 エポキシ樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の発光スペクトルを持つ光を発する半導体発光素子と、前記第1の発光スペクトルの光の少なくとも一部を吸収し、前記第1の発光スペクトルと異なる第2の発光スペクトルの光を発する蛍光体と、を有する発光装置であって、
前記蛍光体は、第1の蛍光体と第2の蛍光体とを有し、
前記第1の蛍光体は、黄色から赤色領域に前記第2の発光スペクトルの光を発する窒化物蛍光体であり、
前記第2の蛍光体は、前記第1の蛍光体よりも短波長側に発光色を有する蛍光体であり、
前記発光装置は電球色に近い発光特性を示すことを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記窒化物蛍光体は、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Zn、Cd、HgのII価からなる群より選ばれる少なくとも1種と、C、Si、Ge、Sn、Ti、Zr、HfのIV価からなる群より選ばれる少なくとも1種と、Nと、Eu、Cr、Mn、Pb、Sb、Ce、Tb、Pr、Sm、Tm、Ho、Er、Yb、Ndからなる群より選ばれる少なくとも一種の賦活剤と、を有する結晶性を持つ蛍光体であることを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記第2の蛍光体は、青色又は緑色、黄色のいずれかに発光色を持つことを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項4】
前記半導体発光素子は、360nm〜550nmに発光ピーク波長を有しており、前記半導体発光素子の発光ピーク波長の強度よりも前記蛍光体の発光ピーク波長の強度の方が大きいことを特徴とする請求項1に記載の発光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−189254(P2007−189254A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−90905(P2007−90905)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【分割の表示】特願2002−80879(P2002−80879)の分割
【原出願日】平成14年3月22日(2002.3.22)
【出願人】(000226057)日亜化学工業株式会社 (993)
【Fターム(参考)】