説明

発振回路

【課題】発振周波数精度が高い発振回路を提供する。
【解決手段】発振回路1は、基準電流を発生する基準抵抗RE1と、基準抵抗RE1と別個に設けられ、基準抵抗RE1に電流を供給するオペアンプAMP1と、基準抵抗RE1に印加する基準電圧VREFを決定する基準電圧発生回路24と、定電圧VREGを発生する定電圧回路21とを有し、基準電流と定電圧VREGとに基づいて発振周波数を定める集積回路2と、基準抵抗RE1の温度依存性と同じ温度依存性となるように、基準電圧発生回路24の出力する基準電圧VREFの温度依存性を設定する設定レジスタ25と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は発振回路に関し、特に、発振周波数の精度を改善した発振回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、チップ上にCR発振回路(あるいはリングオシレータ等)を内蔵し、クロック信号を内蔵発振回路から供給するMCU(マイクロコントローラ)等の集積回路が知られている。
【0003】
CR発振回路は、水晶振動子、あるいはセラミック振動子を使用した発振回路に比べ、より起動時間が短いというメリットが存在する。また、発振回路の停止と起動を頻繁に繰り返すような場合においては、発振回路の起動時の待ち時間、この期間の消費電力を削減することが、総合的なシステムの性能向上の観点から望ましい場合がある。
【0004】
このような背景、目的のために、各種のCR発振回路が提案されている(例えば特許文献1〜7参照)。
図12は、従来のCR発振回路の構成を示す図である。
【0005】
図12に示すCR発振回路80は、インバータINV81、INV82、INV83と、容量CT81と、抵抗RT81とを有している。
図13は、図12に示す回路の動作時の各部の波形を示す図である。
【0006】
図13に示すように、ノードN81、ノードN82、ノードN83の波形はCMOS回路の一般的な出力波形、矩形波となる。ノードN84の波形は、ノードN82との容量カップリングによりノードN82の電位変化の時刻にノードN84の電位が容量結合によりノードN82と同じ方向に変化し、その後緩やかにノードN83の電位により充放電される波形となる。
【0007】
CR発振回路80によれば、容量CT81と抵抗RT81を用いることで、電源電圧に依存しない発振周波数を実現することには成功している。
しかし、発振周波数の精度に改善の余地があることも指摘されている。具体的には、抵抗RT81が温度に依存する場合、発振周波数変動を抑制することが難しいという欠点がある。抵抗RT81を例えばチップ内部に集積した場合、抵抗RT81の温度依存性を小さくすることは実際上困難である。
【0008】
この問題を改善するために、以下の回路が提案されている。
図14は、従来のCR発振回路の他の構成を示す図である。
図14の回路の動作を簡単に説明する。
【0009】
CR発振回路90は、インバータINV91、INV92、INV93と、容量C91と、容量C92と、NMOSトランジスタMN91、MN92と、PMOSトランジスタMP91、MP92と、バイアス発生回路91と、一定電圧を供給する定電圧回路92とを有している。また、図14中、IP91、IN91は電流源を、N91、N92、N93はCR発振回路90内部のノードを、VCCは+の電源(例えば3V)を、GNDはGND電位(0V)を、CIP91はIP91の制御信号を、CIP92はIN91の制御信号を、VREGは定電圧回路92の出力電圧を、OSCOはCR発振回路90の出力を示している。
【0010】
CR発振回路90は、容量C92の一端を、一定電圧を電源とするインバータ(NMOSトランジスタMP92、MN92)で駆動し、ノードN91の信号振幅を温度によらず一定に制御している。周波数を温度に依存しないように設計するために、電流源IP91、IN91の電流を温度に依存せず一定とするように回路を構成する。
【0011】
CR発振回路90では、バイアス発生回路は全てチップ上に集積化され、温度に依存しない電流を発生するために、以下に説明するような回路構成が採用されている。
一定電流を発生させるために、抵抗に電流を流して発生する電位と基準電圧をフィードバック制御により一致させる。オンチップ抵抗の温度依存性を考慮して基準電圧に温度依存性を持たせる。温度が上昇して抵抗値が大きくなる場合には、基準電圧も温度とともに大きくなるような正の温度依存性を持たせ、抵抗の温度依存性を、基準電圧の温度依存性で相殺し、電流が温度に依存しないように設計する。
【0012】
このような回路により発振周波数が、温度、電源電圧に対して一定となるような発振回路が提供されていた。
【特許文献1】特開昭53−103793号公報
【特許文献2】特開昭57−133715号公報
【特許文献3】特開昭63−182909号公報
【特許文献4】特開平9−275320号公報
【特許文献5】特開平11−135725号公報
【特許文献6】特開2000−13193号公報
【特許文献7】特開2005−217762号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかし、従来の技術には以下のような問題があった。
CR発振回路90では、抵抗の温度依存性を予め設計した内蔵基準電圧の温度依存性で相殺するように構成されている。しかしながら、内蔵抵抗が複雑な温度依存性を持っている場合、例えば1次式で温度特性を近似した場合に、誤差が大きくなる。このため、抵抗の温度特性を2次式で近似する必要がある場合や、サンプル毎に温度特性が大きく変わる場合等には、内蔵抵抗の温度依存性を、内蔵基準電圧の温度依存性で相殺することが困難となるという問題がある。
【0014】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、温度特性のサンプル毎の違いが大きい場合においても発振周波数精度が高い発振回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明では上記問題を解決するために、マイクロコントローラに搭載される発振回路において、基準電流を発生する基準抵抗と、前記基準抵抗と別個に設けられ、前記基準抵抗に電流を供給するオペアンプ回路と、前記基準抵抗に印加する基準電圧を決定する基準電圧発生回路と、定電圧を発生する定電圧回路とを有し、前記基準電流と前記定電圧とに基づいて発振周波数を定める集積回路と、前記基準抵抗の温度依存性と同じ温度依存性となるように、前記基準電圧発生回路の出力する前記基準電圧の温度依存性を設定するレジスタと、を有することを特徴とする発振回路が提供される。
【0016】
このような発振回路によれば、集積回路の外部に設けられた基準抵抗により、基準電流が発生される。基準電圧発生回路により、基準抵抗に基準電圧が加えられる。レジスタにより、基準抵抗の温度依存性と同じ温度依存性となるように、基準電圧発生回路の出力基準電圧の温度依存性が設定される。温度に依存しない基準電流と定電圧をもとに発振周波数が定められる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、集積回路の外部に基準抵抗を設けることで、集積回路の内部に基準抵抗を設ける場合に比べ、温度依存性の小さい抵抗素子を使用することが可能になる。また、その温度依存性も1次式で近似できるような抵抗素子を選ぶことができる。
【0018】
また、基準電圧の温度依存性を設定するレジスタを設けることにより、温度に依存しない一定電流を発生することができる。また、基準電圧の温度依存性を設定するレジスタに基準抵抗毎に値を設定することで、サンプル毎に基準抵抗の温度依存性が異なる場合でも、それにあわせて基準電圧の温度依存性を設定することができるので、抵抗素子の温度特性のサンプル毎の違いが大きい場合でも安定して基準電流を発生できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、第1の実施の形態の発振回路を示す回路図である。
発振回路1は、SIP(System In Package)で構成されており、その内部に集積回路2と、基準抵抗RE1と、設定レジスタ25とを有している。
【0020】
集積回路2は、容量(コンデンサ)C1、C2と、インバータINV1、INV2、INV3と、定電圧回路21と、定電流源22、バイアス発生回路23と、PMOSトランジスタMP2と、NMOSトランジスタMN2と、NMOSトランジスタMN4と、オペアンプAMP1と、基準電圧発生回路24とを有している。
【0021】
基準抵抗RE1は、集積回路2の外部に設けられており、パッドPAD1を介して集積回路2に電気的に接続されている。
集積回路2において、インバータINV1の入力のノードをノードN1、インバータINV1の出力のノードをノードN2、インバータINV3の出力のノードをノードN3、PMOSトランジスタMP2およびNMOSトランジスタMN2のドレインのノードをノードN4とする。
【0022】
インバータINV1の入力は、容量C2の一端側に接続されている。インバータINV1は、容量C2の一端の電圧が閾値電圧Vth以上のとき、GND電圧を出力する。
インバータINV1は、容量C2の一端側の電圧が閾値電圧Vthより小さいとき、供給されている電源電圧VCCを出力する。
【0023】
インバータINV2の入力は、インバータINV1の出力に接続されている。インバータINV2は、インバータINV1から出力される矩形波の発振信号を反転して発振回路1の出力OSCOとして出力する。
【0024】
PMOSトランジスタMP2、NMOSトランジスタMN2のゲートは、それぞれインバータINV1の出力に接続されている。PMOSトランジスタMP2のバックゲートとソースとが接続され、定電圧回路21に接続されている。PMOSトランジスタMP2のドレインは、NMOSトランジスタMN2のドレインと接続され、容量C2の他端側に接続されている。NMOSトランジスタMN2のソースは、GNDに接続されている。
【0025】
PMOSトランジスタMP2、NMOSトランジスタMN2は、インバータを構成しており、インバータINV1から出力される電圧に応じて、容量C2の他端側を定電圧回路21またはGNDの一方に接続する。インバータINV1から出力される電圧が電圧GND(L状態)のとき、PMOSトランジスタMP2はONし、容量C2の他端側は定電圧回路21に接続される。インバータINV1から出力される電圧が電圧VDD(H状態)のとき、NMOSトランジスタMN2はONし、容量C2の他端側はGNDに接続される。
【0026】
定電圧回路21は、供給されている電源電圧および温度の変動の影響を受けることなく、一定の定電圧VREGを出力する。これによって、容量C2の他端側には、容量C2の他端側が定電圧回路21に接続されると、電源電圧および温度の影響を受けない定電圧VREGが供給される。
【0027】
インバータINV3の入力は、インバータINV1の出力に接続されている。インバータINV3の出力は、定電流源22に接続されている。インバータINV3は、インバータINV1の出力を反転して、定電流源22に出力する。
【0028】
定電流源22は、供給されている電源電圧および温度の変動によって影響を受けない一定の電流を、インバータINV3を介した、インバータINV1から出力される電圧に応じて、容量C2の一端に流入し、または、容量C2の一端から流出する。定電流源22は、インバータINV1から出力される電圧が電圧VDDのとき、容量C2に一定の電流を流入する。インバータINV1から出力される電圧が電圧GNDのとき、容量C2から一定の電流を流出する。
【0029】
定電流源22は、PMOSトランジスタMP1、NMOSトランジスタMN1およびこれらに電流を供給する電流源を構成するPMOSトランジスタMP3、NMOSトランジスタMN3を有している。PMOSトランジスタMP1、NMOSトランジスタMN1のゲートは、それぞれインバータINV3の出力に接続されている。PMOSトランジスタMP1のドレインは、NMOSトランジスタMN1のドレインに接続され、容量C1の一端側に接続されている。
【0030】
PMOSトランジスタMP3は、電源電圧VCCとPMOSトランジスタMP1のソースとの間に接続されている。PMOSトランジスタMP3は、バイアス発生回路23のバイアス制御によって、電源電圧および温度の変動によって影響を受けない一定の電流Ipを、PMOSトランジスタMP1を介し容量C2の一端側に流入する。NMOSトランジスタMN3は、GNDとNMOSトランジスタMN1のソースとの間に接続されている。NMOSトランジスタMN3は、バイアス発生回路23のバイアス制御によって、電源電圧および温度の変動によって影響を受けない一定の電流Inを、NMOSトランジスタMN1を介して容量C2の一端側から流出する。
【0031】
インバータINV1から電源電圧VCCが出力されたとき、インバータINV3からは電圧GND(L状態)が出力される。これによって、定電流源22のPMOSトランジスタMP1がONし、容量C2の一端側に一定の電流Ipが流入する。インバータINV1からL状態が出力されたとき、インバータINV3からはH状態が出力される。これによって、定電流源22のNMOSトランジスタMN1がONし、容量C2の一端側から一定の電流Inが流出する。
【0032】
なお、ノードN1とGND間に生ずる容量C1にも電流Ipが流入する。また、容量C1から電流Inが流出する。
バイアス発生回路23は、PMOSトランジスタMP3、NMOSトランジスタMN3が電源電圧および温度の影響を受けずに一定の電流を出力するように、PMOSトランジスタMP3、NMOSトランジスタMN3をバイアス制御する。
【0033】
定電圧回路21により一定電圧を発生し、インバータを構成するPMOSトランジスタMP2、NMOSトランジスタMN2に供給することで、容量C2のインバータ出力に接続される部分の振幅は、温度に依存せず一定となる。バイアス電位PB1、NB1により、PMOSトランジスタMP1、NMOSトランジスタMN1に流れる電流を、温度に依存せず一定になるように制御すると、ノードN1の振幅が一定であることから、発振周波数は温度に依存せず一定となる。
【0034】
一方、バイアス発生回路23の図1中左側には、オペアンプAMP1の出力NG4の電位に応じてONするNMOSトランジスタMN4が設けられている。
オペアンプAMP1は、基準抵抗RE1に接続されるノードNVRの電位と基準電圧発生回路24が発生する基準電圧VREFとが一致するようフィードバック制御を行う。基準電圧VREFよりノードNVRの電位が高い電位となると、オペアンプAMP1の出力NG4の電位は低くなる。これにより、ノードNVRの電位は低くなる。逆に基準電圧VREFの電位よりノードNVRの電位が低くなると、オペアンプAMP1の出力NG4の電位は高くなる。これにより、ノードNVRの電位は高くなる。結局、ノードNVRの電位と基準電圧VREFの電位は、ほぼ等しくなる。
【0035】
基準抵抗RE1に基準電圧VREFが印加されると、そのときの電流(基準電流)が、NMOSトランジスタMN4に流れる。この基準電流をバイアス発生回路23に与えることにより、バイアス発生回路23は、この基準電流に基づいて、バイアス電位PB1、NB1を発生する。これにより、PMOSトランジスタMP1、NMOSトランジスタMN1に流れる電流を、温度に依存せず一定に制御する。
【0036】
設定レジスタ25は、基準抵抗RE1の部品選定が終わった後、または、基準抵抗RE1の部品実装が終わった後、基準電圧発生回路24の基準電圧VREFの温度依存性を設定するために設けられている。設定レジスタ25に設定すべき値は、例えば予め不揮発性メモリ等に記憶しておき、電源投入後の初期化の処理で、設定レジスタ25に値が設定される。
【0037】
図2および図3は、基準抵抗の温度依存性と基準電圧の温度依存性設定の関係を示す図である。
基準抵抗RE1の温度依存性が正(温度とともに抵抗値が増加)の場合には、図2に示すように、基準電圧VREFの温度依存性も正とする。基準抵抗RE1の温度依存性が負(温度とともに抵抗値が減少)の場合には、図3に示すように、基準電圧VREFの温度依存性も負とする。
【0038】
基準電流は、基準電圧VREFを基準抵抗RE1の抵抗値で割った値となるので、基準抵抗RE1の抵抗の温度依存性に合わせて、適切に基準電圧VREFの温度依存性を設定することで、基準電流の温度変化をほとんど「0」とすることができる。基準抵抗RE1の部品毎に温度依存性が異なっても、それにあわせて設定レジスタ25に値を設定することで、従来回路に対して、基準電流の温度に対する安定性を改善することができる。
【0039】
次に、バイアス発生回路23の構成について説明する。
図4は、バイアス発生回路の構成を示す回路図である。
バイアス発生回路23は、PMOSトランジスタMP4〜MP11と、NMOSトランジスタMN5、MN6とを有している。
【0040】
基準電流がNMOSトランジスタMN4に流れ、PMOSトランジスタMP4がダイオード接続されているので、バイアス発生回路23に接続されているノードN4の電位は、基準電流を流せる分、VCCから低い電位となる。ノードN4の電位は、PMOSトランジスタMP5、PMOSトランジスタMP7、PMOSトランジスタMP9それぞれのゲート電位となっているので、これらのPMOSトランジスタは、PMOSトランジスタMP4とカレントミラー回路を構成する。
【0041】
電流の絶対値を調整するための制御信号CMR1、CMR2、CMR3は、それぞれカレントミラー回路にミラー比(PMOSトランジスタMP4に流れる電流とNMOSトランジスタMN5に流れる電流の比)を変更するための信号として働く。
【0042】
次に、制御信号CMR1、CMR2、CMR3が全て「L」(Lowレベル)の場合のバイアス発生回路23の動作を説明し、その後、制御信号CMR1、CMR2、CMR3を使って、ミラー比を変更することによる効果を説明する。
【0043】
制御信号CMR1、CMR2、CMR3が全て「L」の場合、PMOSトランジスタMP6、PMOSトランジスタMP8、PMOSトランジスタMP10はONするので、PMOSトランジスタMP5、PMOSトランジスタMP7、PMOSトランジスタMP9に流れる各電流が、NMOSトランジスタMN5に流れる。NMOSトランジスタMN5はダイオード接続されているので、このときのゲート電位が、定電流源22のNMOSトランジスタNM3のバイアス電位NB1として供給される。
【0044】
NMOSトランジスタMN6にはNMOSトランジスタMN5と同じ電流が流れるのでPMOSトランジスタMP11にも、NMOSトランジスタMN5と同じ電流が流れ、このときのゲート電位が定電流源22のPMOSトランジスタMP3のバイアス電位PB1として供給される。NMOSトランジスタMN4に流れる基準電流は温度に依存しないので、バイアス電位PB1、NB1をゲートに与えたMOSトランジスタに流れる電流も温度によらず一定となる。
【0045】
ここまでは、基準電流の温度依存性に注目して説明をすすめた。ところで、集積回路2の発振周波数は、電流の値と、容量の値に依存する。容量C1、容量C2はチップ内部にLSI製造工程を経て作製されるので、その容量の絶対値のばらつきが大きい場合がある。基準電流を温度に対して一定に制御することで、発振周波数を温度によらずに一定に制御することはできるが、その周波数の絶対値は容量の絶対値に依存する。従って、発振周波数の絶対値をある所望の値に制御するためには、他の機構が必要となる。
【0046】
制御信号CMR1、CMR2、CMR3は、この周波数の絶対値を所望の値に調整するために使用される。製造過程で容量の絶対値が大きくなった場合には電流の値を大きくし、容量の絶対値が小さくなった場合には、電流の値を小さく調整することで、発振周波数の絶対値を調整することができる。制御信号CMR1、CMR2、CMR3の一部を、例えば「H」(Highレベル)とすることで、NMOSトランジスタMN5に供給する電流をそのゲート幅Wの比により変化させることができる。図4では、図を簡単にするために、制御信号CMR1、CMR2、CMR3とそれに関連するMOSトランジスタだけを図示したが、同様の考え方で、必要なミラー比の変更を行う回路を容易に構成することができる。
【0047】
次に、基準電圧発生回路24の回路構成について説明する。
図5は、基準電圧発生回路の構成を示す回路図である。
基準電圧発生回路24は、PMOSトランジスタMP12〜30と、オペアンプAMP2、AMP3と、PNPトランジスタQ1、Q2と抵抗RI1、RI2、RI3とを有している。また、制御信号CTC2〜CTC9は、それぞれ基準電圧VREFの温度依存性を制御するための信号を示している。
【0048】
基準電圧発生回路24の動作を説明する。
バンドギャップ回路では、順バイアスされたpn接合の電位と、絶対温度(T)に比例する電圧(以下、「PTAT(Proportional To Absolute Temperature)電圧」と言う)を加算することで、温度に依存しない基準電圧VREFを得る。順バイアスされたpn接合の電位は(pn接合の電位を1次式で近似すれば、あるいは、1次式で近似できる範囲内では)、CTAT(Complementary To Absolute Temperature)であることが知られており、この順バイアスされたpn接合の電位に(適切な)PTAT電圧を加算することで、ほぼ温度に依存しない基準電圧が得られることが知られている。
【0049】
同様の原理で、所望の温度依存性を持った基準電圧を発生することができる。まず、基準電圧発生回路24のPMOSトランジスタMP12、MP13に流れる電流が、絶対温度に比例する電流となることを説明する。
【0050】
PNPトランジスタのベース、エミッタ間電圧あるいはpn接合の順方向電圧(以下、「電圧Vbe」という)と絶対温度Tとの関係は、概略、式(1)となることが知られている。
【0051】
Vbe=Veg−aT・・・(1)
ここで、Veg:シリコンのバンドギャップ電圧、約1.2V、a:電圧Vbeの温度依存性、約2mV/℃、T:絶対温度であり、温度依存性aの値はバイアス電流により異なるが、実用領域で、概略2mV/℃程度となることが知られている。
【0052】
また、PNPトランジスタのエミッタ電流IEと電圧Vbeとの関係は、概略、式(2)となることが知られている。
IE=I0exp(qVbe/kT)・・・(2)
ここで、IE:PNPトランジスタのエミッタ電流あるいはダイオードの電流、I0:定数(面積に比例)、q:電子の電荷、k:ボルツマン定数である。
【0053】
オペアンプAMP2による負帰還により、オペアンプAMP2の電圧利得が十分大きい場合には、オペアンプAMP2の非反転入力端子に接続されているノードIMの電位と、反転入力端子に接続されているノードIPの電位とが(ほぼ)等しくなって回路が安定する。
【0054】
例えば、PMOSトランジスタMP12のゲート幅WとPMOSトランジスタMP13のゲート幅Wとを等しく設計しておくと、PNPトランジスタQ1とPNPトランジスタQ2に流れる電流の大きさの比は、1:1となる。
【0055】
PNPトランジスタQ2のエミッタ面積は、PNPトランジスタQ1のエミッタ面積の10倍とし(図5のPNPトランジスタQ1、Q2に添えられた「×1」、「×10」は、このエミッタ面積の相対関係を示す。)、PNPトランジスタQ1のベース、エミッタ間電圧Vbe1、PNPトランジスタQ2のベース、エミッタ間電圧Vbe2は、式(2)より、式(3)、式(4)に示す関係があることがわかる。
【0056】
I=I0exp(qVbe1/kT)・・・(3)
I=10×I0exp(qVbe2/kT)・・・(4)
両辺それぞれを割り算し、Vbe1−Vbe2=ΔVbeと表わすと、式(5)、式(6)が得られる。
【0057】
10=exp(qVbe1/kT−qVbe2/kT)・・・(5)
ΔVbe=(kT/q)ln(10)・・・(6)
つまり、PNPトランジスタQ1とPNPトランジスタQ2の各ベース、エミッタ間電圧の差、ΔVbeは、PNPトランジスタQ1とPNPトランジスタQ2の電流密度比10の対数(ln(10))と熱電圧(kT/q)で表わされる。このΔVbeが、抵抗RI1の両端の電位差に等しいので、抵抗RI1には、ΔVbe/RI1の電流が流れる(抵抗RI1の抵抗値もRI1で表すものとする)。
【0058】
従って、PMOSトランジスタMP12(およびPMOSトランジスタMP13)に流れる電流IMP12は、式(7)で表わされる。
IMP12=ΔVbe/RI1=(kT/q)ln(10)(1/RI1)・・・(7)
式(7)と図5から明らかなように、PMOSトランジスタMP12、MP13に流れる電流は絶対温度に比例した電流となる。
【0059】
次に図5のPMOSトランジスタMP22に流れる電流が、絶対温度に比例して減少する電流となることを説明する。
オペアンプAMP3の負帰還により、オペアンプAMP3の反転入力端子に接続されているノードIPの電位と、非反転入力端子に接続されているノードNR2の電位とは、ほぼ等しい電位となって回路が安定する。ノードNR2の電位がノードIPの電位となるので、抵抗RI2には、PNPトランジスタQ1のベース、エミッタ間電圧Vbe1が加わる。抵抗RI2に流れる電流は、PMOSトランジスタMP22にも流れるので、PMOSトランジスタMP22に流れる電流IMP22は、式(8)で表される(抵抗RI2の抵抗値もRI2で表すものとする)。
【0060】
IMP22=Vbe1/RI2・・・(8)
電圧Vbeは式(1)より、絶対温度に比例して減少するので、式(8)より、PMOSトランジスタMP22に流れる電流は絶対温度に比例して減少することがわかる。
【0061】
PMOSトランジスタMP12のゲート電位は、PMOSトランジスタMP14〜MP17のゲート電位と共通なので、PMOSトランジスタMP14〜MP17にも絶対温度に比例して増加する電流が流れようとする。
【0062】
PMOSトランジスタMP22のゲート電位は、PMOSトランジスタMP23〜MP26のゲート電位と共通なので、PMOSトランジスタMP23〜MP26にも絶対温度に比例して減少する電流が流れようとする。
【0063】
制御信号CTC2〜CTC9が、それぞれゲートに加えられたPMOSトランジスタMP18〜MP21、PMOSトランジスタMP27〜MP30は、これらの電流源として働くPMOS(PMOSトランジスタMP14〜MP17、PMOSトランジスタMP23〜MP26)の電流をON/OFFするスイッチとして働く。
【0064】
PMOSトランジスタMP18〜MP21およびPMOSトランジスタMP27〜MP30のドレインは、すべて基準電圧VREFに接続されているので、PMOSトランジスタMP14〜MP17およびPMOSトランジスタMP23〜MP26の電流は、すべて基準電圧VREFに流れ、抵抗RI3により電圧に変換される。
【0065】
つまり、制御信号CTC2〜CTC9を制御することで、絶対温度に比例して増加する電流(PTAT電流)と、絶対温度に比例して減少する電流(CTAT電流)を足し合わせ、その加算の割合を変化させることができる。
【0066】
よって、絶対温度に比例して増加する電流が多い場合には、基準電圧VREFの温度依存性は正となる。絶対温度に比例して増加する電流が少ない場合には、基準電圧VREFの温度依存性は負となる。制御信号CTC2〜CTC9を「L」とすることで、電流を基準電圧VREFに流し込むよう制御することができる。
【0067】
このような動作原理により、任意の温度依存性を持った基準電圧VREFを発生することができる。図5では、説明を分かりやすくするために、制御信号とPMOSトランジスタとが、絶対温度に比例して増加する電流と、絶対温度に比例して減少する電流について4つの場合を示したが、必要な調整精度、範囲が得られるように、図5の回路の構成を拡張、変更してもよい。
【0068】
また、制御信号CTC2〜CTC9は、例えば、設定レジスタ25の値をもとに発生すればよい。
<変形例>
次に、バイアス発生回路23の変形例について説明する。
【0069】
図6は、図4に示すバイアス発生回路の変形例を示す図である。
バイアス発生回路23では、基本的な機能を説明するための回路部分だけを図示したが、バイアス発生回路23aは、発振回路1をスタンバイまたは停止する機能を備える回路である。
【0070】
バイアス発生回路23aには、バイアス発生回路23に比べ、PMOSトランジスタMP31、MP32が追加されている。PMOSトランジスタMP31のゲート信号PDXを「L」、PMOSトランジスタMP32のゲート信号PDを「H」とすることで、基準抵抗RE1に電流が流れないよう制御することができる。ゲート信号PDXが「L」になると、PMOSトランジスタMP31がONとなる。一方、PMOSトランジスタMP32はOFFするので、PMOSトランジスタMP4のゲート電位は電源電圧VCCとなり、PMOSトランジスタMP4がOFFする。これにより基準抵抗RE1に電流が流れなくなる。このとき、オペアンプAMP1、基準電圧発生回路24も必要に応じて停止させることが望ましい。
【0071】
ゲート信号PDXが「H」、ゲート信号PDが「L」になると、PMOSトランジスタMP31がOFF、PMOSトランジスタMP32がONとなる。これにより、PMOSトランジスタMP4のゲートは、PMOSトランジスタMP4のドレインに接続されるので、バイアス発生回路23と同様に動作する。
【0072】
以上説明したように、本実施の形態の発振回路1によれば、集積回路2が、外部に設けた基準抵抗RE1と基準電圧VREFとに基づいて、基準電流を発生する。
基準抵抗RE1を集積回路2の外部に設けたことにより、チップ内蔵の集積回路プロセスで製造した抵抗の温度依存性が複雑な依存性を持つ従来回路の欠点を回避することができる。LSIプロセスで製造した抵抗の絶対値の変動が大きいという問題、さらに、絶対値の変動が大きいので、温度依存性のサンプル毎のばらつきも大きいという問題を回避することができる。
【0073】
基準抵抗RE1を集積回路2の外部に設けることで、基準抵抗RE1の絶対値のばらつきは改善されるが、発振回路1の製造時に、または、発振回路1の設計時に、基準抵抗RE1の温度依存性を知ることはできない。このために、基準抵抗RE1の部品選定が終わった後、または、基準抵抗RE1の部品実装が終わった後、基準電圧VREFの温度依存性を設定レジスタ25により設定するようにした。これにより、発振回路1毎の基準抵抗RE1の値を調整することができ、基準電圧VREFの温度依存性を調整することが可能となる。よって、従来回路に比べ、温度に対してより安定な基準電流を発生することが可能となるので、この基準電流をもとに発振周波数を決定する集積回路2の発振周波数の温度依存性をより小さくすることができる。
【0074】
基準電流の温度依存性を小さくするためには、基準抵抗RE1の温度と、基準電圧VREFを発生する回路の温度とがほぼ等しいのが好ましく、できるだけ発振回路1が搭載されるチップに近い部分に実装することが望ましいが、本実施の形態では、集積回路2が搭載されるチップと同一のパッケージ内に基準抵抗RE1を実装するSIPとしたので、チップの製造プロセスの制約を受けることなく、基準抵抗RE1の抵抗値の精度、温度依存性のばらつきを改善でき、かつ、温度の一致も望める。
【0075】
なお、本実施の形態では、一例として、基準電流発生回路をオペアンプAMP1とNMOSトランジスタMN4とで構成する例を示したが、この部分の回路構成は特に限定されず、各種の変形が可能である。
【0076】
次に、第2の実施の形態の発振回路について説明する。
以下、第2の実施の形態の発振回路について、前述した第1の実施の形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0077】
第2の実施の形態の発振回路は、基準電圧発生回路および定電圧回路の構成が、第1の実施の形態の発振回路1と異なっている。具体的には、第2の実施の形態の発振回路は、基準電圧発生回路を用いてバンドギャップ電圧(温度に依存しない一定電圧)を発生する。また、第2の実施の形態の定電圧回路は、このバンドギャップ電圧を用いて定電圧VREGを作成する。
【0078】
図7は、第2の実施の形態の基準電圧発生回路を示す図である。
基準電圧発生回路24aは、基準電圧発生回路24に素子を追加してバンドギャップ回路出力も同時に発生する回路である。具体的には、基準電圧発生回路24aには、基準電圧発生回路24に比べ、PMOSトランジスタMP33、MP34および抵抗RI4が追加されている。
【0079】
第1の実施の形態にて説明したように、基準電圧発生回路24のオペアンプAMP2の出力AMPO2をゲート電位とするPMOSトランジスタMP14〜MP17には、絶対温度に比例して増加する電流(PTAT電流)が流れる。一方、オペアンプAMP3の出力AMPO3をゲート電位とするPMOSトランジスタMP23〜MP26には、絶対温度に比例して減少する電流(CTAT電流)が流れる。
【0080】
PMOSトランジスタMP33とPMOSトランジスタMP34とにより、これらPTAT電流と、CTAT電流を抵抗RI4に流し込み、電流を加算し、電圧に変換することで、バンドギャップ電圧VBGRを発生することが可能となる。PTAT電流とCTAT電流の割合を適切に選ぶことで、絶対温度に比例して増加する成分と絶対温度に比例して減少する成分が相殺し、温度に依存しない一定電流を得ることができる。これを抵抗RI4で電圧に変換するので、温度によらないバンドギャップ電圧VBGRを出力電位として得ることができる。
【0081】
次に、第2の実施の形態の定電圧回路について説明する。
図8は、第2の実施の形態の定電圧回路を示す回路図である。
定電圧回路21aは、基準電圧発生回路24aから得られたバンドギャップ電圧VBGRから定電圧VREGを発生する回路であり、オペアンプAMP4と、PMOSトランジスタMP35と、抵抗RF1、RF2とを有している。
【0082】
定電圧回路21aは、オペアンプAMP4のフィードバック制御により、バンドギャップ電圧VBGRの電位とノードDIVO1の電位とが等しくなって回路が安定するので、抵抗RF1、RF2の比を設計することで、定電圧VREGの電位を所望の値とすることができる。
【0083】
この第2の実施の形態の発振回路によれば、第1の実施の形態の発振回路1と同様の効果が得られる。
そして、第2の実施の形態の発振回路によれば、基準電圧発生回路24にわずかな回路素子を追加する回路構成とすることで、基準電圧VREFを発生する回路とバンドギャップ電圧VBGRを発生する回路とを一体化した基準電圧発生回路24aが得られる。これにより、回路素子数を少なくできるので、集積回路を構成するために必要な回路の占有面積を低減することができる。
【0084】
なお、基準電圧発生回路24aでは、PMOSトランジスタMP33とPMOSトランジスタMP34だけで、電流を加算したが、基準電圧VREFを発生する回路部分と同じように、レジスタ設定により加算割合を調整することで、バンドギャップ電圧が設計値からずれた場合の補正も可能となり、設定レジスタ25とは別に、バンドギャップ電圧の補正のためのレジスタを設けることも有用である。
【0085】
次に、本発明の発振回路の基準電圧発生回路とバンドギャップ回路の考え方について説明する。
図9は、本発明の発振回路の基準電圧発生回路とバンドギャップ回路の考え方を示すブロック図である。なお、図9の発振回路1bは、発振回路1と同様の部分については同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0086】
基準電圧発生回路24bは、絶対温度に比例して増加する電圧VPTATを発生するPTAT電圧発生回路241と、絶対温度に比例して減少する電圧VCTATを発生するCTAT電圧発生回路242と、所望の割合でVPTATと電圧VCTATとを加算する加算割合設定回路243とを有している。また、集積回路2bは、基準電圧発生回路24bの外部に設けられ、加算割合設定回路243と同機能を有する加算割合設定回路27を有している。
【0087】
加算割合設定回路243は、電圧VPTATおよび電圧VCTATを係数倍し、加算することで基準電圧VREFを発生する。
加算割合設定回路27は、電圧VPTATおよび電圧VCTATを係数倍し、加算することでバンドギャップ電圧VBGRを発生する。
【0088】
加算割合設定回路243および加算割合設定回路27の各係数は、設定レジスタ25に設定した値で制御される制御信号CTC1により制御される。
バンドギャップ電圧VBGRに基づいて、定電圧回路21bは、定電圧VREGを発生する。基準電圧VREFは、オペアンプAMP1に供給され、基準電流を発生し、バイアス発生回路23を経て、回路内に供給される。
【0089】
このように、PTAT電圧発生回路241とCTAT電圧発生回路242とを、バンドギャップ回路とVREF発生回路で、共用することで回路素子の削減が達成される。図9のような考え方を具体化する回路であれば、素子数削減の効果が得られ、トランジスタレベルの回路構成は図7にて示した基準電圧発生回路24aに限らない。
【0090】
次に、第3の実施の形態の発振回路について説明する。
図10は、第3の実施の形態の発振回路を示す回路図である。
以下、第3の実施の形態の発振回路1cについて、前述した第1の実施の形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0091】
発振回路1cは、基準電流を発生する部分のフィードバック回路の構成が第1の実施の形態の発振回路1と異なっている。
発振回路1cは、NMOSトランジスタMN4の代わりにPMOSトランジスタMP36とPMOSトランジスタMP37とを有し、オペアンプAMP1の代わりにオペアンプAMP5を有している。また、バイアス発生回路23の代わりにバイアス発生回路23cを有している。
【0092】
オペアンプAMP5は、オペアンプAMP1と異なり、その反転入力端子に基準電圧VREFが印加されている。
発振回路1cは、オペアンプAMP5により、基準抵抗RE1のノードNVRの電位と基準電圧VREFとが一致するようフィードバック制御する。基準電圧VREFよりノードNVRの電位が高くなると、オペアンプAMP5の出力ノードPG36の電位は高くなる。出力ノードPG36の電位が高くなるので、PMOSトランジスタMP36の電流は減少し、ノードNVRの電位は低くなる。逆に基準電圧VREFの電位よりノードNVRの電位が低くなると、オペアンプAMP5の出力ノードPG36の電位は低くなる。出力ノードPG36の電位が低くなると、PMOSトランジスタMP36の電流は増加し、ノードNVRの電位は高くなる。結局、ノードNVRの電位と基準電圧VREFの電位とは、ほぼ等しくなる。
【0093】
PMOSトランジスタMP36に流れる電流を、例えば、カレントミラーを構成するPMOSトランジスタMP37でバイアス発生回路23cに供給することで、基準電流に基づいて、集積回路2cのバイアス電位を発生することができる。
【0094】
図11は、第3の実施の形態のバイアス発生回路の構成を示す回路図である。
オペアンプAMP5のフィードバック制御により、PMOSトランジスタMP36には基準電圧VREFと基準抵抗RE1とで決定される基準電流が流れる。このときPMOSトランジスタMP36に基準電流を流すために必要な出力ノードPG36のゲート電位が定まるので、カレントミラー回路により、この基準電流をミラー比により調整し、また、NMOSトランジスタNM5のバイアス電位に変換することで、バイアス電位PB1、NB1を発生することができる。
【0095】
PMOSトランジスタMP36のゲート電位(出力ノードPG36の電位)は、PMOSトランジスタMP5、MP7、MP9のゲートにそれぞれ供給されているので、制御信号CMR1、CMR2、CMR3を制御することで、NMOSトランジスタMN5に流れる電流を調整でき、これにより発振回路1cの発振周波数の絶対値を調整することができる。
【0096】
この第3の実施の形態の発振回路1cによれば、第1の実施の形態の発振回路1と同様の効果が得られる。
以上、本発明の発振回路を、図示の実施の形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、本発明に、他の任意の構成物や工程が付加されていてもよい。
【0097】
また、本発明は、前述した各実施の形態のうちの、任意の2以上の構成(特徴)を組み合わせたものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】第1の実施の形態の発振回路を示す回路図である。
【図2】基準抵抗の温度依存性と基準電圧の温度依存性設定の関係を示す図である。
【図3】基準抵抗の温度依存性と基準電圧の温度依存性設定の関係を示す図である。
【図4】バイアス発生回路の構成を示す回路図である。
【図5】基準電圧発生回路の構成を示す回路図である。
【図6】図4に示すバイアス発生回路の変形例を示す図である。
【図7】第2の実施の形態の基準電圧発生回路を示す図である。
【図8】第2の実施の形態の定電圧回路を示す回路図である。
【図9】本発明の発振回路の基準電圧発生回路とバンドギャップ回路の考え方を示すブロック図である。
【図10】第3の実施の形態の発振回路を示す回路図である。
【図11】第3の実施の形態のバイアス発生回路の構成を示す回路図である。
【図12】従来のCR発振回路の構成を示す図である。
【図13】図12に示す回路の動作時の各部の波形を示す図である。
【図14】従来のCR発振回路の他の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0099】
1、1b、1c 発振回路
2、2b、2c 集積回路
21、21a、21b 定電圧回路
22 定電流源
23、23a、23c バイアス発生回路
24、24a、24b 基準電圧発生回路
25 設定レジスタ
27、243 加算割合設定回路
241 PTAT電圧発生回路
242 CTAT電圧発生回路
AMP1〜AMP5 オペアンプ
C1、C2 容量
INV1〜INV3 インバータ
MN1〜NM4 NMOSトランジスタ
MP1〜MP3 PMOSトランジスタ
N1〜N4 ノード
PAD1 パッド
RE1 基準抵抗

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロコントローラに搭載される発振回路において、
基準電流を発生する基準抵抗と、
前記基準抵抗と別個に設けられ、前記基準抵抗に電流を供給するオペアンプ回路と、前記基準抵抗に印加する基準電圧を決定する基準電圧発生回路と、定電圧を発生する定電圧回路とを有し、前記基準電流と前記定電圧とに基づいて発振周波数を定める集積回路と、
前記基準抵抗の温度依存性と同じ温度依存性となるように、前記基準電圧発生回路の出力する前記基準電圧の温度依存性を設定するレジスタと、
を有することを特徴とする発振回路。
【請求項2】
前記オペアンプ回路は、前記基準抵抗の一端の電位と、前記基準電圧発生回路が出力する前記基準電圧との電位とを一致させるようにフィードバック制御を行い、
前記レジスタに設定した値により、前記基準抵抗の温度依存性と前記基準電圧発生回路の温度依存性とを一致させ、
前記基準電圧を、前記基準抵抗の抵抗値で除した値の基準電流を発生し、
前記基準電流と、一定の信号振幅を備える容量とにより前記発振周波数を決定することを特徴とする請求項1記載の発振回路。
【請求項3】
絶対温度に比例して増加する電圧を発生するPTAT電圧発生回路と、
絶対温度に比例して減少する電圧を発生するCTAT電圧発生回路と、をさらに有し、
前記定電圧回路は、前記PTAT電圧発生回路の出力と、前記CTAT電圧発生回路の出力を温度依存性が0になるような割合で加算し、前記基準電圧発生回路は、前記PTAT電圧発生回路の出力と、前記CTAT電圧発生回路の出力を温度依存性が0になるような割合で加算し、前記PTAT電圧発生回路の出力と前記CTAT電圧発生回路の出力の加算の割合を前記レジスタで決定することを特徴とする請求項1記載の発振回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−252414(P2008−252414A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−90053(P2007−90053)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(308014341)富士通マイクロエレクトロニクス株式会社 (2,507)
【Fターム(参考)】