説明

発振装置、半導体装置、電子機器、時計、及び、振動子発振回路

【課題】発振装置において、発振安定化容量として用意されたキャパシタを有効活用する。
【解決手段】発振装置は、定電圧を生成する定電圧生成回路と、振動子発振回路と、第1のキャパシタを備える。振動子発振回路は、振動子を発振させるための回路であって、振動子の一端に接続される第1の接続ノードと、定電圧生成回路により生成された定電圧が供給される定電圧供給ノードと、を有する。第1のキャパシタは、第1の接続ノードと定電圧供給ノードのいずれかに選択的に接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発振装置、半導体装置、電子機器、時計、及び、振動子発振回路に関する。
【背景技術】
【0002】
定電圧を生成する定電圧生成回路と、生成された定電圧により水晶などの振動子を発振させる発振回路とを含んで構成される発振装置が知られている(例えば、特許文献1、2)。このような発振装置では、振動子の両端と電源との間に発振安定化容量としてキャパシタを配置するのが一般的である。発振安定化容量の大きさを調整することにより、発振周波数、発振安定性、消費電流などの発振特性を調整することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−538358号公報
【特許文献2】特開平4−1998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術では、発振安定化容量を調整する具体的手段は、何ら開示されておらず、発振安定化容量の調整を容易に行うと共に、発振安定化容量として用意されたキャパシタを有効活用することが求められていた。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、発振装置において、発振安定化容量として用意されたキャパシタを有効活用することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明の第1の態様は、発振装置を提供する。第1の態様に係る発振装置は、定電圧を生成する定電圧生成回路と、振動子を発振させるための回路であって、前記振動子の一端に接続される第1の接続ノードと、前記定電圧生成回路により生成された定電圧が供給される定電圧供給ノードと、を有する振動子発振回路と、前記第1の接続ノードと前記定電圧供給ノードのいずれかに選択的に接続される第1のキャパシタと、を備える。
【0007】
第1の態様に係る発振装置によれば、第1のキャパシタは、第1の接続ノードに接続することにより発振安定化容量として用いることができ、発振安定化容量として用いない場合には定電圧供給ノードに接続することにより定電圧の安定化容量として用いることができる。この結果、本発振装置は、第1のキャパシタを無駄にすることなく、有効活用することができる。
【0008】
第1の態様に係る発振装置において、前記振動子発振回路は、さらに、前記振動子の他端に接続される第2の接続ノードを有し、前記発振装置は、さらに、前記第2の接続ノードと前記定電圧供給ノードのいずれかに選択的に接続される第2のキャパシタを備えも良い。こうすれば、第2のキャパシタは、第2の接続ノードに接続することにより発振安定化容量として用いることができ、発振安定化容量として用いない場合には定電圧供給ノードに接続することにより定電圧の安定化容量として用いることができる。この結果、本発振装置は、第2のキャパシタを無駄にすることなく、有効活用することができる。
【0009】
第1の態様に係る発振装置において、前記第1のキャパシタは、複数個備えられ、複数の前記第1のキャパシタのうち、前記振動子の負荷容量の調整のために選択されたキャパシタは前記第1の接続ノードに接続され、前記負荷容量の調整のために選択されないキャパシタは前記定電圧供給ノードに接続されても良い。こうすれば、複数の第1のキャパシタの一部または全部を選択して第1の接続ノードに接続することにより、発振安定化容量を容易に調整することができる。さらに、複数の第1のキャパシタのうち、発振安定化容量として使用しないキャパシタを定電圧供給ノードに接続することにより定電圧の安定化容量として用いることができる。この結果、本発振装置は、発振安定化容量の調整を容易にすると共に、第1のキャパシタを有効活用することができる。
【0010】
第1の態様に係る発振装置において、前記第2のキャパシタは、複数個備えられ、複数の前記第2のキャパシタのうち、前記振動子の負荷容量の調整のために選択されたキャパシタは前記第2の接続ノードに接続され、前記負荷容量の調整のために選択されないキャパシタは前記定電圧供給ノードに接続されても良い。こうすれば、複数の第2のキャパシタの一部または全部を選択して第2の接続ノードに接続することにより、発振安定化容量を容易に調整することができる。さらに、複数の第2のキャパシタのうち、発振安定化容量として使用しないキャパシタを定電圧供給ノードに接続することにより定電圧の安定化容量として用いることができる。この結果、本発振装置は、発振安定化容量の調整を容易にすると共に、第2のキャパシタを有効活用することができる。
【0011】
第1の態様に係る発振装置において、前記選択的な接続は、マスク処理による配線により実行されても良い。また、第1の態様に係る発振装置は、さらに、スイッチ回路を備え、前記選択的な接続は、前記スイッチ回路を切り替えることにより実行されても良い。こうすれば、第1のキャパシタを、発振安定化容量として用いるか、定電圧安定化容量として用いるかを容易に選択可能になる。
【0012】
本発明の第2の態様は、定電圧生成回路により生成された定電圧により動作し、振動子を発振させる振動子発振回路を提供する。第2の態様に係る振動子発振回路は、前記振動子の一端に接続される第1の接続ノードと、前記定電圧生成回路により生成された定電圧が供給される定電圧供給ノードと、前記第1の接続ノードと前記定電圧供給ノードのいずれかに選択的に接続される第1のキャパシタと、を備える。
【0013】
第2の態様に係る振動子発振回路によれば、第1の態様に係る発振装置と同様の作用・効果を得ることができる。また、第2の態様に係る振動子発振回路は、第1の態様に係る発振装置と同様に種々の態様にて実現され得る。
【0014】
本発明は、上記態様のほか、種々の態様にて実現され得る。例えば、本発明は、上記態様に係る発振装置を含む半導体装置として実現される。また、本発明は、上記態様に係る発振装置または半導体装置を含み、前記発振装置の発振出力を用いて、動作基準信号を生成する電子機器、あるいは、上記態様に係る発振装置または該半導体装置を含み、前記発振装置の発振出力を用いて、時刻基準信号を生成する時計として実現される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】発振装置の概略構成を示す説明図である。
【図2】レギュレータの内部構成を示す説明図である。
【図3】水晶発振回路の内部構成を示す説明図である。
【図4】配線が変更された水晶発振回路の例を示す図である。
【図5】第2実施例における水晶発振回路の構成を示す図である。
【図6】スイッチ回路の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施態様について、図面を参照しつつ、実施例に基づいて説明する。
【0017】
A.第1実施例:
・発振装置の構成:
図1〜図3を参照して、第1実施例における発振装置について説明する。図1は、発振装置の概略構成を示す説明図である。図2は、レギュレータの内部構成を示す説明図である。図3は、水晶発振回路の内部構成を示す説明図である。図1に示すように、発振装置100は、基準電圧生成回路230と、レギュレータ210と、水晶発振回路110と、制御回路220とを含んでいる。
【0018】
基準電圧生成回路230は、基準電圧Vrefを生成する回路である。基準電圧生成回路230は、高電位側電源VDと低電位側電源VSとが供給され、高電位側電源VDと低電位側電源VSとの電位差を用いて、上記基準電圧Vrefを生成する。基準電圧生成回路230は、バンドギャップリファレンス回路などの周知の構成を用いることができる。基準電圧Vrefは、レギュレータ210に供給される。
【0019】
レギュレータ210は、基準電圧生成回路230から供給される基準電圧Vrefを参照して、定電圧VRを生成する定電圧生成回路である。定電圧VRは、水晶発振回路110に供給される。図2に示すように、レギュレータ210は、差動増幅回路2101と、出力回路2102とを備えている。
【0020】
差動増幅回路2101は、定電流源として機能するNチャネル電界効果トランジスタM21と、差動対を構成する2つのNチャネル電界効果トランジスタM22およびM23と、カレントミラーを構成する2つのPチャネル電界効果トランジスタM24およびM25とを含んでいる。以下では、Nチャネル電界効果トランジスタをnトランジスタと表記し、Pチャネル電界効果トランジスタをpトランジスタと表記する。
【0021】
nトランジスタM21のゲートには、上述した基準電圧Vrefが入力され、この結果、定電流I1が生成される。定電流I1は、本実施例では、5〜12nA(ナノアンペア)に設定されている。
【0022】
出力回路2102は、定電流源として機能するnトランジスタM31と、ダイオード接続されたpトランジスタM32と、出力用トランジスタとして機能するpトランジスタM33とを含んでいる。3つのトランジスタM31〜M33は、低電位側電源VSの供給ノードと高電位側電源VDの供給ノードとの間に、低電位側電源VS側から符号の順に直列に配置されている。nトランジスタM31のゲートには、上述した基準電圧Vrefが入力され、この結果、定電流I2が生成される。定電流I2は、本実施例では、50nAに設定されている。
【0023】
差動増幅回路2101は、第1の入力端に入力された電圧と、第2の入力端に入力された電圧との差分を増幅して出力する回路である。差動増幅回路2101の第1の入力端であるnトランジスタM22のゲートには、基準電圧Vrefが入力される。差動増幅回路2101の第2の入力端であるnトランジスタM23のゲートには、nトランジスタM31のドレイン電圧FBが入力される。差動増幅回路2101の出力であるpトランジスタM24のドレイン電圧は、出力回路2102のpトランジスタM33のゲートに入力される。この結果、基準電圧Vrefと、出力回路2102におけるnトランジスタM31のドレイン電圧FBが同じになるように、pトランジスタM33のドレイン電流が制御される(Vref=FB)。この結果、出力回路2102の出力ノード(pトランジスタM33のソース)から出力される定電圧VRは、基準電圧VrefにpトランジスタM32のソース−ドレイン電圧Vdsを加えた値に設定される(VR=Vref+Vds)。
【0024】
なお、レギュレータ210は、キャパシタC2、C3、C4を含んでいる。キャパシタC2は、基準電圧Vrefの安定化容量として、基準電圧の入力ノードと低電位側電源VSの供給ノードの間に配置されている。キャパシタC3は、位相補償容量として、差動増幅回路2101の出力ノード(pトランジスタM24のドレイン、pトランジスタM33のゲート)と、出力用トラインジスタの出力ノード(pトランジスタM33のソース)との間に配置されている。キャパシタC4は、定電圧VRの安定化容量として、定電圧VRの出力ノードと低電位側電源VSの供給ノードとの間に配置されている。
【0025】
定電圧VRの大きさは、定電圧制御トランジスタ(図2に示す回路におけるpトランジスタM32)の選択により、所望のレベルに設定される。本実施例では、定電圧VRは、後述する水晶発振回路110の発振停止電圧VIにマージンとして0.2V程度を加えた大きさに設定される。
【0026】
水晶発振回路110は、水晶振動子500を発振させる回路である。水晶発振回路110は、定電圧VRと低電位側電源VSとが供給され、定電圧VRを用いて発振駆動される。水晶発振回路110は、インバータ1101と、フィードバック回路1102とを含んで構成される。フィードバック回路1102は、水晶振動子500の一端との接続ノードであるゲート端子111、水晶振動子500の他端との接続ノードであるドレイン端子112と、帰還抵抗Rfと、出力抵抗Rdと、位相補償用のキャパシタCacを含んでいる。フィードバック回路1102は、インバータ1101のドレイン出力の位相を、180度反転してインバータ1101のゲートへフィードバック入力する。インバータ1101は、ドレインが互いに接続された一対のpトランジスタM41、nトランジスタM42を含む。インバータ1101は、低電位側電源VSの供給ノードと定電圧VRの供給ノードとの間に配置され、両者の電位差により電力供給を受け駆動される。以上の構成の水晶発振回路110は、インバータ1101に定電圧VRが印加されると、インバータ1101を構成するトランジスタ対が交互にオンオフ駆動され、最終的には水晶振動子500が安定した発振動作を行うようになる。これにより、この水晶発振回路110の出力ノード(インバータ1101のドレイン)からは、所定の周波数をもつ発振信号FSが出力されることになる。
【0027】
さらに、水晶発振回路110は、4つのキャパシタCG1〜CG4と、4つのキャパシタCD1〜CD4とを備えている。キャパシタCG1は、ゲート端子111と低電位側電源VSの供給ノードとの間に発振安定化容量として配置されている。キャパシタCD1は、ドレイン端子112と低電位側電源VSの供給ノードの間に発振安定化容量として配置されている。
【0028】
3つのキャパシタCG2〜CG4と、3つのキャパシタCD2〜CD4は、定電圧VRの供給ノードと低電位側電源VSの供給ノードとの間に接続されている。従って、これらのキャパシタCG2〜CG4、CD2〜CD4は、図2におけるキャパシタC4と同様に定電圧VRの安定化容量として機能する。
【0029】
さらに、水晶発振回路110が形成された半導体装置には、3つのキャパシタCG2〜CG4の定電圧VRの供給ノードと接続されている側の一端を、ゲート端子111と接続する配線を形成できるように配線スペースが設けられている。図3において、波線で示す配線経路は、かかる配線スペースを概念的に示している。また、3つのキャパシタCG2〜CG4の該一端と定電圧VRの供給ノードとを接続している配線は、半導体装置上において切断可能な位置に配置されている。
【0030】
同様にして、水晶発振回路110が形成された半導体装置には、3つのキャパシタCD2〜CD4の定電圧VRの供給ノードと接続されている側の一端を、ドレイン端子112と接続可能なように配線スペースが設けられている。図3において、波線で示す配線経路は、かかる配線スペースを概念的に示している。また、3つのキャパシタCD2〜CD4の該一端と定電圧VRの供給ノードとを接続している配線は、半導体装置上において切断可能な位置に配置されている。
【0031】
このようなキャパシタCG2〜CG4、CD2〜CD4の一端の配線の形成および配線の切断は、処理しない部分にハードマスクやレジストマスクを施した上での配線材料(例えば、アルミ、銅)の蒸着処理およびエッチング処理、すなわち、いわゆるマスク処理により行われる。このようなマスク処理により配線を変更することにより、キャパシタCG2〜CG4の一端は、ゲート端子111と定電圧VRの供給ノードのいずれかに選択的に接続され、キャパシタCD2〜CD4の一端は、ドレイン端子112と定電圧VRの供給ノードのいずれかに選択的に接続される。
【0032】
図4を参照して、具体例を説明する。図4は、配線が変更された水晶発振回路110の例を示す図である。図4では、キャパシタCG2〜CG4のうちのキャパシタCG2、CG3は、ゲート端子111に接続されて、水晶発振回路110の発振安定化容量として使用されている。一方、キャパシタCG2〜CG4のうちのキャパシタCG4は、定電圧VRの供給ノードに接続されて、定電圧VRの安定化容量として使用されている。また、キャパシタCD2〜CD4のうちのキャパシタCD2は、ドレイン端子112に接続されて、水晶発振回路110の発振安定化容量として使用されている。一方、キャパシタCD2〜CD4のうちのキャパシタCD3、CD4は、定電圧VRの供給ノードに接続されて、定電圧VRの安定化容量として使用されている。図4において、丸印を付した配線は、マスク処理によって追加された配線を示し、×印を付した配線はマスク処理によって切断された配線を示している。キャパシタCG2〜CG4、CD2〜CD4のうち発振安定化容量として使用されるキャパシタを減らし、発振安定化容量を小さくすると水晶発振回路110の消費電流を抑制することができる。逆に、キャパシタCG2〜CG4、CD2〜CD4のうち発振安定化容量として使用されるキャパシタを増やし、発振安定化容量を大きくすると水晶発振回路110の発振動作の安定性を向上することができる。また、発振安定化容量の調整により、発振周波数の微調整を行うことができる。
【0033】
以上の説明から解るように、本実施例におけるキャパシタCG2〜CG4は、特許請求の範囲における第1のキャパシタまたは第2のキャパシタに対応する。また、本実施例におけるキャパシタCD2〜CD4は、キャパシタCG2〜CG4が特許請求の範囲における第1のキャパシタに対応する場合には、特許請求の範囲における第2のキャパシタに対応し、キャパシタCG2〜CG4が特許請求の範囲における第2のキャパシタに対応する場合には、特許請求の範囲における第1のキャパシタに対応する。
【0034】
水晶発振回路110には、用いられる水晶振動子500の特性、インバータ1101の特性、キャパシタCG、CDなどにより定まる発振停止電圧VIが存在する。定電圧VRが、発振停止電圧VIを下回ると、水晶発振回路110の発振動作が停止してしまう。一方で、水晶発振回路110の消費電力は、定電圧VRが大きいほど大きくなる。従って、レギュレータ210から水晶発振回路110に供給される定電圧VRは、発振停止電圧VIより大きく、かつ、できるだけ小さな値に設定することが望ましい。本実施例では、上述したように定電圧VRは、水晶発振回路110の発振停止電圧VIにマージンとして0.2V程度を加えた大きさに設定されている。
【0035】
制御回路220は、発振信号FSが入力され、発振信号FSを分周あるいは逓倍して、所望の周波数を有するクロック信号を生成する。発振装置100が生成したクロック信号は、例えば、発振装置100が搭載されている電子機器の中央処理装置(CPU)600に供給される。中央処理装置600は、例えば、供給されたクロック信号を、中央処理装置600自身あるいは中央処理装置600が制御する他の回路や半導体装置の動作基準信号として用いる。あるいは、中央処理装置600は、例えば、供給されたクロック信号を、時刻基準信号として用いて、時計機能、時間計測機能を実現する。発振装置100が搭載される電子機器としては、例えば、携帯電話、ノートパソコンなどのモバイル機器、ビデオ、DVD、ゲーム機器、パソコンなどの家電製品がある。本実施例では、発振装置100は、半導体製造技術を用いて半導体装置として形成される。発振装置100は、中央処理装置600と同一の半導体装置として形成されても良いし、中央処理装置600とは別体の半導体装置として形成され、中央処理装置600とインターフェースを介して接続されても良い。
【0036】
以上説明した本実施例によれば、キャパシタCG2〜CG4の一端は、ゲート端子111と定電圧VRの供給ノードのいずれかに選択的に接続可能に構成されている。また、キャパシタCD2〜CD4の一端は、ドレイン端子112と定電圧VRの供給ノードのいずれかに選択的に接続可能に構成されている。従って、水晶振動子500の種類などに応じて、発振安定化容量を微調整可能である。さらに、本実施例によれば、発振安定化容量として使用しないキャパシタを定電圧VRの安定化容量として使用することにより、キャパシタを無駄なく活用することができる。定電圧VRの安定化容量が大きいほど、レギュレータ210の出力である定電圧VRが安定し、発振装置100の耐ノイズ性が向上する。
【0037】
B.第2実施例:
図5および図6を参照して、第2実施例について説明する。第2実施例における発振装置において、第1実施例と異なる点は、水晶発振回路の構成である。その他の構成は、第1実施例と同様であるので、その説明を省略する。図5は、第2実施例における水晶発振回路の構成を示す図である。図6は、スイッチ回路の構成を示す図である。第2実施例における水晶発振回路110aが、第1実施例における水晶発振回路110と異なる点は、図5に示すように、スイッチ回路SWa、SWbが設けられている点である。SWaは、外部から(例えば、制御回路220から)の制御信号に応じてキャパシタCG2〜CG4の一端を、ゲート端子111と定電圧VRの供給ノードのいずれかに選択的に接続する。SWbは、外部から(例えば、制御回路220から)の制御信号に応じてキャパシタCD2〜CD4の一端を、ドレイン端子112と定電圧VRの供給ノードのいずれかに選択的に接続する。
【0038】
スイッチ回路SWaは、図6に示すように、制御信号によってオンとオフが切り替えられるスイッチとして機能するトランスミッションゲートTG02〜TG04、TG12〜TG13とを備えている。トランスミッションゲートTG02〜TG04、TG12〜TG13は、図6に示すようにnトランジスタとpトランジスタとを並列に接続し、各トランジスタのゲートに互いに位相が反転された制御信号を供給するように構成されている。
【0039】
トランスミッションゲートTG02は、キャパシタCG2とゲート端子111との間に配置され、トランスミッションゲートTG12は、キャパシタCG2と定電圧VRの供給ノードとの間に配置されている。トランスミッションゲートTG02のnトランジスタのゲートには、制御信号SE2が入力され、トランスミッションゲートTG12のnトランジスタのゲートには、制御信号SE2の反転信号XSE2が入力される。この結果、制御信号SE2がハイである場合には、キャパシタCG2はゲート端子111に接続され、水晶発振回路110の発振安定化容量として使用される。一方、制御信号SE2がローである場合には、キャパシタCG2は定電圧VRの供給ノードに接続され、定電圧VRの安定化容量として使用される。同様の構成により、キャパシタCG3は、制御信号SE3およびその反転信号XSE3に従って、切り替えられるトランスミッションゲートTG03、TG13により、ゲート端子111と定電圧VRの供給ノードとに選択的に接続される(図6)。また、キャパシタCG4は、制御信号SE4およびその反転信号XSE4に従って、切り替えられるトランスミッションゲートTG04、TG14により、ゲート端子111と定電圧VRの供給ノードとに選択的に接続される(図6)。スイッチ回路SWbは、スイッチ回路SWaと同様な仕組みにより構成されているので、その詳細は省略する。
【0040】
以上説明した第2実施例によれば、第1実施例と同様の作用・効果に加えて、以下の作用・効果を奏する。すなわち、マスク処理を行うことなく、制御信号により容易にキャパシタCG2〜CG4、CD2〜CD4の用途(発振安定化容量あるいは定電圧安定化容量)を切り替えることができる。
【0041】
C.変形例:
上記実施例では、水晶振動子を用いる水晶発振回路110が用いられているが、これに限られない。例えば、セラミック振動子を用いる発振回路を用いても良いし、水晶やセラミック振動子などの機械的な共振デバイスに基づいたもの以外にも、RC (抵抗、コンデンサ)発振器のような電気的位相シフト回路を振動子として用いたものを用いても良い。
【0042】
上記実施例では、図1に示すように、発振装置100の出力であるクロック信号は、中央処理装置600に出力されるが、これに限られない。例えば、腕時計を始めとする時計に発振装置100を搭載する場合には、発振信号FSを分周して得られた1Hzのクロック信号を、時刻基準信号として、時計の秒針、分針、時針を回転駆動するステップモータの駆動コイルに出力することとしても良い。
【0043】
以上、本発明の実施例および変形例について説明したが、本発明はこれらの実施例および変形例になんら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において種々の態様での実施が可能である。
【符号の説明】
【0044】
100…発振装置
110、110a…水晶発振回路
111…ゲート端子
112…ドレイン端子
210…レギュレータ
220…制御回路
230…基準電圧生成回路
500…水晶振動子
600…中央処理装置
1101…インバータ
1102…フィードバック回路
2101…差動増幅回路
2102…出力回路
SWa、SWb…スイッチ回路
C2〜C4…キャパシタ
CD1〜CD4…キャパシタ
CG1〜CG4…キャパシタ
Cac…キャパシタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発振装置であって、
定電圧を生成する定電圧生成回路と、
振動子を発振させるための回路であって、前記振動子の一端に接続される第1の接続ノードと、前記定電圧生成回路により生成された定電圧が供給される定電圧供給ノードと、を有する振動子発振回路と、
前記第1の接続ノードと前記定電圧供給ノードのいずれかに選択的に接続される第1のキャパシタと、を備え、
前記第1のキャパシタは、複数個備えられ、
複数の前記第1のキャパシタのうち、前記振動子の負荷容量の調整のために選択されたキャパシタは前記第1の接続ノードに接続され、前記負荷容量の調整のために選択されないキャパシタは前記定電圧供給ノードに接続される発振装置。
【請求項2】
請求項1に記載の発振装置において、
前記振動子発振回路は、さらに、前記振動子の他端に接続される第2の接続ノードを有し、
前記発振装置は、さらに、前記第2の接続ノードと前記定電圧供給ノードのいずれかに選択的に接続される第2のキャパシタを備える発振装置。
【請求項3】
請求項2に記載の発振装置において、
前記第2のキャパシタは、複数個備えられ、
複数の前記第2のキャパシタのうち、前記振動子の負荷容量の調整のために選択されたキャパシタは前記第2の接続ノードに接続され、前記負荷容量の調整のために選択されないキャパシタは前記定電圧供給ノードに接続される発振装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の発振装置において、
前記選択的な接続は、マスク処理による配線により実行される発振装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の発振装置は、さらに、
スイッチ回路を備え、
前記選択的な接続は、前記スイッチ回路を切り替えることにより実行される発振装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の発振装置を含む半導体装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の発振装置、または、請求項6に記載の半導体装置を含み、前記発振装置の発振出力を用いて、動作基準信号を生成する電子機器。
【請求項8】
請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の発振装置、または、請求項6に記載の半導体装置を含み、前記発振装置の発振出力を用いて、時刻基準信号を生成する時計。
【請求項9】
定電圧生成回路により生成された定電圧により動作し、振動子を発振させる振動子発振回路であって、
前記振動子の一端に接続される第1の接続ノードと、
前記定電圧生成回路により生成された定電圧が供給される定電圧供給ノードと、
前記第1の接続ノードと前記定電圧供給ノードのいずれかに選択的に接続される第1のキャパシタと、を備え、
前記第1のキャパシタは、複数個備えられ、
複数の前記第1のキャパシタのうち、前記振動子の負荷容量の調整のために選択されたキャパシタは前記第1の接続ノードに接続され、前記負荷容量の調整のために選択されないキャパシタは前記定電圧供給ノードに接続される振動子発振回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−227938(P2012−227938A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−135607(P2012−135607)
【出願日】平成24年6月15日(2012.6.15)
【分割の表示】特願2007−79491(P2007−79491)の分割
【原出願日】平成19年3月26日(2007.3.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】