説明

皮膚外用剤

【課題】優れたメラニン生成抑制作用を有する植物抽出物を有効成分とする安全性の高い美白剤及びメラニン生成抑制剤、並びにそれを配合した皮膚外用剤を提供。
【解決手段】イソマツ科植物のゴニオリモン・スペシオスム、オミナエシ科植物のパトリニア・シビリカ、バラ科植物のスピラエア・アクイレギイフォリア、キク科植物のアジャニア・アチレオイデス、ユキノシタ科植物のパルナシア・パルストリス、シソ科植物のシムス・ゴビカス、キンポウゲ科植物のトロリウス・アシアティカス、及びキク科植物のアルクトゲロン・グラミネウムからなる群より選択される一種又は二種以上の植物の抽出物を配合した美白剤及びメラニン生成抑制剤、並びに皮膚外用剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は植物抽出物を有効成分とする美白剤およびメラニン生成抑制剤に関し、さらにこれを含む皮膚外用剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
皮膚のしみ・そばかすなどの色素沈着は、ホルモンの異常や紫外線、皮膚局所の炎症が原因となってメラニンが過剰に形成され、これが皮膚内に沈着するものと考えられている。皮膚の色素沈着の原因となるこのメラニンは、表皮基底層にある色素細胞(メラノサイト)内のメラノソームと呼ばれる小器官において生成され、生成したメラニンは周囲角化細胞(ケラチノサイト)に取り込まれる。このメラノサイト内におけるメラニンは、チロシンが酵素チロシナーゼの作用によりドーパキノンを経て酵素的または非酵素的な酸化反応により黒色のメラニンへと変化して生成されるものである。
上記のような色素沈着の予防・改善を目的として美白作用を有する物質、すなわち、メラニン生成を抑制する物質が主に用いられており、例えば、ビタミンCを大量に経口投与する方法、グルタチオン等を注射する方法、あるいは、コウジ酸、ビタミンC及びその誘導体、システイン等を軟膏、クリーム、ローション等の形態で局所に塗布する方法などが知られている。
しかしながら、これらの化合物はハイドロキノンを除いてはその効果の発現がきわめて緩慢であるため、皮膚色素沈着の改善効果が十分でない。一方、ハイドロキノンは効果が認められるが、感作性があるため一般の使用が制限されている。そこでその安全性を向上させるため、高級脂肪酸のモノエステルやアルキルモノエーテルなどにする試み(特許文献1参照)がなされている。
しかしながら、このような高級脂肪酸のモノエステル類は体内の加水分解酵素によって分解されるため必ずしも安全であるとはいい難く、またエーテル類も安全性の面で充分に満足するものが得られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭58−154507号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明者らは種々の植物抽出物についてメラニン生成抑制効果を調べた結果、これまでにかかる効果を有することが知られていなかった特定の植物抽出物が優れたメラニン生成抑制作用を有していることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、イソマツ科(Plumbaginaceae)植物のゴニオリモン スペシオスム(Goniolimon speciosum)、オミナエシ科(Valerianaceae)植物のパトリニア シビリカ(Patrinia sibirica)、バラ科(Rosaceae)植物のスピラエア アクイレギイフォリア(Spiraea aquilegiifolia)、キク科(Asteraceae)植物のアジャニア アチレオイデス(Ajania achilleoides)、ユキノシタ科(Saxifragaceae/Parnassiaceae)植物のパルナシア パルストリス(Parnassia palustris)、シソ科(Lamiaceae)植物のシムス ゴビカス(Thymus gobicus)、キンポウゲ科(Ranunculaceae)植物のトロリウス アシアティカス(Trollius asiaticus)、及びキク科(Asteraceae)植物のアルクトゲロン グラミネウム(Arctogeron gramineum)からなる群より選択される一種又は二種以上の植物の抽出物を配合することを特徴とする皮膚外用剤である。
【0006】
本発明は、イソマツ科(Plumbaginaceae)植物のゴニオリモン スペシオスム(Goniolimon speciosum)、オミナエシ科(Valerianaceae)植物のパトリニア シビリカ(Patrinia sibirica)、バラ科(Rosaceae)植物のスピラエア アクイレギイフォリア(Spiraea aquilegiifolia)、キク科(Asteraceae)植物のアジャニア アチレオイデス(Ajania achilleoides)、ユキノシタ科(Saxifragaceae/Parnassiaceae)植物のパルナシア パルストリス(Parnassia palustris)、シソ科(Lamiaceae)植物のシムス ゴビカス(Thymus gobicus)、キンポウゲ科(Ranunculaceae)植物のトロリウス アシアティカス(Trollius asiaticus)、及びキク科(Asteraceae)植物のアルクトゲロン グラミネウム(Arctogeron gramineum)からなる群より選択される一種又は二種以上の植物の抽出物を配合することを特徴とする美白用皮膚外用剤である。
【0007】
本発明は、イソマツ科(Plumbaginaceae)植物のゴニオリモン スペシオスム(Goniolimon speciosum)、オミナエシ科(Valerianaceae)植物のパトリニア シビリカ(Patrinia sibirica)、バラ科(Rosaceae)植物のスピラエア アクイレギイフォリア(Spiraea aquilegiifolia)、キク科(Asteraceae)植物のアジャニア アチレオイデス(Ajania achilleoides)、ユキノシタ科(Saxifragaceae/Parnassiaceae)植物のパルナシア パルストリス(Parnassia palustris)、シソ科(Lamiaceae)植物のシムス ゴビカス(Thymus gobicus)、キンポウゲ科(Ranunculaceae)植物のトロリウス アシアティカス(Trollius asiaticus)、及びキク科(Asteraceae)植物のアルクトゲロン グラミネウム(Arctogeron gramineum)からなる群より選択される一種又は二種以上の植物の抽出物を含むことを特徴とする美白剤である。
【0008】
本発明は、イソマツ科(Plumbaginaceae)植物のゴニオリモン スペシオスム(Goniolimon speciosum)、オミナエシ科(Valerianaceae)植物のパトリニア シビリカ(Patrinia sibirica)、バラ科(Rosaceae)植物のスピラエア アクイレギイフォリア(Spiraea aquilegiifolia)、キク科(Asteraceae)植物のアジャニア アチレオイデス(Ajania achilleoides)、ユキノシタ科(Saxifragaceae/Parnassiaceae)植物のパルナシア パルストリス(Parnassia palustris)、シソ科(Lamiaceae)植物のシムス ゴビカス(Thymus gobicus)、キンポウゲ科(Ranunculaceae)植物のトロリウス アシアティカス(Trollius asiaticus)、及びキク科(Asteraceae)植物のアルクトゲロン グラミネウム(Arctogeron gramineum)からなる群より選択される一種又は二種以上の植物の抽出物を含むことを特徴とするメラニン生成抑制剤である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の皮膚外用剤および美白用皮膚外用剤は、これまで外用剤に配合されてはいなかった植物抽出物を用いるものであり、メラニン生成抑制作用を有しており、日焼け後の色素沈着・しみ・そばかす・肝斑等の淡色化、美白に優れた効果を有すると共に、安全性にも優れたものである。
【0010】
本発明の美白剤およびメラニン生成抑制剤は、優れたメラニン生成抑制作用を有しており、日焼け後の色素沈着・しみ・そばかす・肝斑等の淡色化、美白に優れた効果を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】Goniolimon speciosumメタノール抽出物のメラニン生成抑制作用の測定結果を示す図である。
【図2】Patrinia sibiricaメタノール抽出物のメラニン生成抑制作用の測定結果を示す図である。
【図3】Spiraea aquilegiifoliaメタノール抽出物のメラニン生成抑制作用の測定結果を示す図である。
【図4】Ajania achilleoidesメタノール抽出物のメラニン生成抑制作用の測定結果を示す図である。
【図5】Parnassia palustrisメタノール抽出物のメラニン生成抑制作用の測定結果を示す図である。
【図6】Thymus gobicusメタノール抽出物のメラニン生成抑制作用の測定結果を示す図である。
【図7】Trollius asiaticusメタノール抽出物のメラニン生成抑制作用の測定結果を示す図である。
【図8】Arctogeron gramineumメタノール抽出物のメラニン生成抑制作用の測定結果を示す図である。
【図9】アルブチンのメラニン生成抑制作用の測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の最良の実施形態について説明する。
本発明の皮膚外用剤に用いられるイソマツ科(Plumbaginaceae)植物のゴニオリモン スペシオスム(Goniolimon speciosum)、オミナエシ科(Valerianaceae)植物のパトリニア シビリカ(Patrinia sibirica)、バラ科(Rosaceae)植物のスピラエア アクイレギイフォリア(Spiraea aquilegiifolia)、キク科(Asteraceae)植物のアジャニア アチレオイデス(Ajania achilleoides)、ユキノシタ科(Saxifragaceae/Parnassiaceae)植物のパルナシア パルストリス(Parnassia palustris)、シソ科(Lamiaceae)植物のシムス ゴビカス(Thymus gobicus)、キンポウゲ科(Ranunculaceae)植物のトロリウス アシアティカス(Trollius asiaticus)、及びキク科(Asteraceae)植物のアルクトゲロン グラミネウム(Arctogeron gramineum)はいずれもモンゴル、中国、ロシア、日本などに生育する植物である。
【0013】
上記植物のうち、スピラエア アクイレギイフォリア(Spiraea aquilegiifolia)については、同属植物としてシモツケが挙げられ、このシモツケが配合された美白化粧料が知られている(特開平8−92056号公報)。
このように、本発明で用いられる植物は同属植物で公知のものは一部知られているものの、同一種の植物はいずれも知られておらず、今回初めて見出されたものである。
【0014】
本発明に用いられる植物抽出物は、上記植物の葉、地下茎を含む茎、根、果実、植物全草等を抽出溶媒と共に浸漬または加熱還流した後、濾過し、濃縮して得られる。本発明に用いられる抽出溶媒は、通常抽出に用いられる溶媒であれば何でもよく、特に水、メタノール、エタノール等のアルコール類、含水アルコール類、アセトン、酢酸エチルエステル等の有機溶媒を単独あるいは組み合わせて用いることができるが、特にメタノール、エタノール、1,3−ブチレングリコール等のアルコール類、含水アルコールを用いることが好ましい。
本発明の美白剤およびメラニン生成抑制剤は上記植物抽出物を含むものであるが、上記植物を単独で用いた植物抽出物であっても、あるいは混合して用いた植物抽出物であっても良い。
これらの植物は、自生したものであっても、あるいは栽培された植物であってもよい。
【0015】
各植物の好ましい抽出部位としては、ゴニオリモン スペシオスム(Goniolimon speciosum)は根、パトリニア シビリカ(Patrinia sibirica)、トロリウス アシアティカス(Trollius asiaticus)は花部、スピラエア アクイレギイフォリア(Spiraea aquilegiifolia)は茎及び葉、アジャニア アチレオイデス(Ajania achilleoides)、アルクトゲロン グラミネウム(Arctogeron gramineum)は茎、葉及び花部が好ましい。パルナシア パルストリス(Parnassia palustris)、シムス ゴビカス(Thymus gobicus)は全草から抽出するのが好ましい。但し、それぞれの植物は、葉、花、茎、根、果実等、他の部位の抽出物も用いることが出来る。
【0016】
なお、本発明の美白剤およびメラニン生成抑制剤は、実質的に上記植物抽出物の一種または二種以上からなる配合原料であるが、他の成分を含んでいてもよい。この美白剤およびメラニン生成抑制剤が皮膚外用剤に配合されて、本発明の皮膚外用剤が提供される。
【0017】
本発明の皮膚外用剤における上記植物抽出物の配合量は外用剤全量中、乾燥物残分として0.0001〜10.0質量%、好ましくは0.0003〜5.0質量%であり、さらに好ましくは0.0003〜0.03質量%である。0.0001質量%未満であると本発明でいう効果が乏しくなる傾向にあり、10.0質量%を超えると製剤化が難しいので好ましくない。また、5.0質量%を超えて配合してもさほど大きな効果の向上はみられない。
【0018】
本発明の皮膚外用剤は、本発明による美白剤あるいはメラニン生成抑制剤を皮膚外用剤の基剤に配合して製造される。本発明の皮膚外用剤は、上記必須成分以外に、通常化粧品や医薬品等の皮膚外用剤に用いられる成分、例えば、その他の美白剤、保湿剤、酸化防止剤、油性成分、紫外線吸収剤、界面活性剤、増粘剤、アルコール類、粉末成分、色材、水性成分、水、各種皮膚栄養剤等を必要に応じて適宜配合することができる。
【0019】
その他、エデト酸二ナトリウム、エデト酸三ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、グルコン酸等の金属封鎖剤、カフェイン、タンニン、ベラパミル、トラネキサム酸およびその誘導体、甘草抽出物、グラブリジン、火棘の果実の熱水抽出物、各種生薬、酢酸トコフェロール、グリチルリチン酸およびその誘導体またはその塩等の薬剤、ビタミンC、アスコルビン酸リン酸マグネシウム、アスコルビン酸グルコシド、アルブチン、コウジ酸、ルシノール、エラグ酸、カモミラ等の他の美白剤、グルコース、フルクトース、マンノース、ショ糖、トレハロース等の糖類なども適宜配合することができる。
【0020】
本発明の皮膚外用剤とは、医薬品、医薬部外品、化粧品等の分野にて、皮膚に適用され
る組成物を意味する。その剤型は本発明の効果が発揮される限り限定されない。例えば軟膏、クリーム、乳液、ローション、パック、浴用剤等、従来皮膚外用剤に用いるものであればいずれでもよく、剤型は特に問わない。
【実施例】
【0021】
本発明について以下に実施例を挙げてさらに詳述するが、本発明はこれによりなんら限定されるものではない。配合量は特記しない限り質量%で示す。
実施例に先立ち、本発明の植物抽出物のメラニン生成抑制効果に関する試験方法とその結果について説明する。抽出に用いた植物はいずれもモンゴル産の植物を使用した。
【0022】
1.植物抽出物の調製
(1)Goniolimon speciosum 抽出液
Goniolimon speciosum の根8.3gを、室温で1週間50mlのメタノールに浸漬した。ついで、ろ紙ろ過により得た抽出液より溶媒を留去し、メタノール抽出物537mgを得た。この抽出物をDMSOに2質量%溶かし、この溶液を希釈して濃度を調整し、以下の実験に使用した。
(2)Patrinia sibirica 抽出液
Patrinia sibirica の茎、葉を含む花部1.1gを、室温で1週間20mlのメタノールに浸漬した。ついで、ろ紙ろ過により得た抽出液より溶媒を留去し、メタノール抽出物336mgを得た。この抽出物をDMSOに2質量%溶かし、この溶液を希釈して濃度を調整し、以下の実験に使用した。
(3)Spiraea aquilegiifolia 抽出液
Spiraea aquilegiifolia の茎葉部10.1gを、室温で1週間80mlのメタノールに浸漬した。ついで、ろ紙ろ過により得た抽出液より溶媒を留去し、メタノール抽出物1.48gを得た。この抽出物をDMSOに2質量%溶かし、この溶液を希釈して濃度を調整し、以下の実験に使用した。
(4)Ajania achilleoides 抽出液
Ajania achilleoides の茎、葉を含む花部2.1gを、室温で1週間30mlのメタノールに浸漬した。ついで、ろ紙ろ過により得た抽出液より溶媒を留去し、メタノール抽出物351mgを得た。この抽出物をDMSOに2質量%溶かし、この溶液を希釈して濃度を調整し、以下の実験に使用した。
(5)Parnassia palustris 抽出液
Parnassia palustris の全草4.5gを室温で1週間30mlのメタノールに浸漬した。ついで、ろ紙ろ過により得た抽出液より溶媒を留去し、メタノール抽出物550mgを得た。この抽出物をDMSOに2質量%溶かし、この溶液を希釈して濃度を調整し、以下の実験に使用した。
(6)Thymus gobicus 抽出液
Thymus gobicus の全草10.0gを室温で1週間80mlのメタノールに浸漬した。ついで、ろ紙ろ過により得た抽出液より溶媒を留去し、メタノール抽出物884mgを得た。この抽出物をDMSOに2質量%溶かし、この溶液を希釈して濃度を調整し、以下の実験に使用した。
(7)Trollius asiaticus 抽出液
Trollius asiaticus の花部1.5gを室温で1週間30mlのメタノールに浸漬した。ついで、ろ紙ろ過により得た抽出液より溶媒を留去し、メタノール抽出物259mgを得た。この抽出物をDMSOに2質量%溶かし、この溶液を希釈して濃度を調整し、以下の実験に使用した。
(8)Arctogeron gramineum 抽出液
Arctogeron gramineum の地上部10.1gを室温で1週間100mlのメタノールに浸漬した。ついで、ろ紙ろ過により得た抽出液より溶媒を留去し、メタノール抽出物746mgを得た。この抽出物をDMSOに2質量%溶かし、この溶液を希釈して濃度を調整し、以下の実験に使用した。
【0023】
2.細胞培養法
マウスB16メラノーマ培養細胞を使用した。10%FBSおよびα―MSH(10nM)を含むイーグルMEM培地中でCO2インキュベーター(5%二酸化炭素)内、37℃の条件下で培養した。培養24時間後に試料溶液を終濃度(抽出物の乾燥残分換算濃度)で0.001、0.003質量%になるように添加し、さらに3日間培養を続け、以下の方法でメラニン生成量及び細胞数を測定した。
【0024】
3.細胞増殖、メラニン量測定
試験物質溶液添加から3日後に培地を吸引除去した後、10%のアラマブルー溶液を含むE−MEM培地を添加して、37℃で反応させた。30分後に励起波長544nm、測定波長590nmで蛍光を測定し、その値を細胞数の相対値として、試験物質無添加群(溶媒のみ添加)に対する試験物質添加群の細胞数比率(%細胞数)を算出した。%細胞数が高いほど細胞毒性が低いことを意味し、80%未満のとき「毒性あり」と判断した。
その後、培地を吸引除去し、バッファー(リン酸緩衝液50mM、pH6.8)にて3回洗浄した後、2M NaOHを添加して細胞を溶解し、475nmの吸光度を測定した。この値をメラニン量の相対値として、試験物質無添加群(溶媒のみ添加)に対する試験物質添加群のメラニン量比率(%)を算出した。メラニン量比率が低いほどメラニン生成抑制効果が高いことを意味する。各植物抽出物を用いたメラニン量比率(%)の結果を図1〜8に表示した。図1〜8はコントロールのメラニン量を基準とし、各植物抽出物を添加した場合のメラニン量をコントロールに対する百分率で示したものである。植物抽出物を含まない溶媒のみを添加した場合をコントロールとした。また、参考例として、すでにメラニン生成抑制作用のあることが知られているアルブチンについても上記と同様の試験を行った。その結果を図9に示す。
【0025】
図1〜8からわかるように、 Goniolimon speciosum、Patrinia sibirica、Spiraea aquilegiifolia、Ajania achilleoides、Parnassia palustris、Thymus gobicus、Trollius asiaticus、及び Arctogeron gramineumの各抽出物にアルブチンと同等またはそれ以上の優れたメラニン生成抑制作用が認められた。細胞増殖については、試験したすべての試料において「毒性なし」の結果であった。
【0026】
以下に、本発明の皮膚外用剤の処方例を挙げる。本発明はこの処方例によって何ら限定されるものではなく、特許請求の範囲によって特定されるものであることはいうまでもない。
【0027】
配合例1(美白用クリーム)
α−オレフィンオリゴマー 10 質量%
ワセリン 1
マイクロクリスタリンワックス 3
デカメチルシクロペンタシロキサン 5
グリセリン 10
ジプロピレングリコール 2
1,3−ブチレングリコール 2
エリスリトール 2
スクワラン 1
グリセリン脂肪酸エステルエイコサン二酸縮合物 0.1
イソステアリン酸 1
2−エチルヘキサン酸セチル 5
塩化ナトリウム 0.5
ヘキサメタリン酸ナトリウム 0.05
グリチルレチン酸ステアリル 0.05
コウボエキス 0.1
本美白剤(Ajania achilleoides エタノール抽出物乾燥物残分) 1
リン酸L−アスコルビルマグネシウム 2
酢酸トコフェロール 0.5
チオタウリン 0.1
DL−ピロリドンカルボン酸ナトリウム 1
ウコンエキス 0.1
エデト酸3ナトリウム 0.1
ジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライト 2
カルボキシメチルセルロースナトリウム 0.1
パラベン 適量
精製水 残余
香料 適量
【0028】
配合例2(日中用クリーム)
メチルフェニルポリシロキサン 5 質量%
ステアリルアルコール 2
グリセリン 5
ジプロピレングリコール 5
ソルビット液(70%) 5
ステアリン酸 1.5
パルミチン酸 1
テトラ2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリット 4
自己乳化型モノステアリン酸グリセリン 1
水酸化カリウム 0.15
オクチルメトキシシンナメート 6
ワセリン 2
本美白剤(Goniolimon speciosum ヘキサン抽出物乾燥物残分) 0.001
1,3−ブチレングリコール 4
スクワラン 3
クエン酸ナトリウム 0.1
アセチル化ヒアルロン酸ナトリウム 0.1
キサンタンガム 0.2
ベントナイト 1
パラベン 適量
精製水 残余
香料 適量
【0029】
配合例3(乳液)
デカメチルシクロペンタシロキサン 15 質量%
トリメチルシロキシケイ酸 5
ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体 5
グリセリン 5
1,3−ブチレングリコール 5
マルチトール液 2
マカデミアナッツ油 2
スクワラン 2
ヒドロキシステアリン酸コレステリル 0.5
2−エチルヘキサン酸セチル 2
塩化ジステアリルジメチルアンモニウム 0.2
L−アスコルビン酸硫酸エステル2ナトリウム 0.1
α-トコフェロール 2−L−アスコルビン酸リン酸ジエステルカリウム 0.1
酢酸トコフェロール 0.05
魚コラーゲン 0.4
コンドロイチン硫酸ナトリウム 0.01
ヒアルロン酸ナトリウム 0.1
エデト酸三ナトリウム 0.05
ジパラメトキシ桂皮酸モノ−2−エチルヘキサン酸グリセリル 0.05
ケイ酸アルミニウムマグネシウム 0.3
本メラニン生成抑制剤(Patrinia sibirica アセトン抽出物乾燥物残分) 0.003
パラベン 適量
精製水 残余
【0030】
配合例4(美白化粧水)
エタノール 10 質量%
ジプロピレングリコール 1
ポリエチレングリコール1000 1
ポリオキシエチレンメチルグルコシド 1
ホホバ油 0.01
トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル 0.1
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 0.2
ジイソステアリン酸ポリグリセリル 0.15
N−ステアロイル−L−グルタミン酸ナトリウム 0.1
クエン酸 0.05
クエン酸ナトリウム 0.2
水酸化カリウム 0.4
グリチルリチン酸ジカリウム 0.1
塩酸アルギニン 0.1
L−アスコルビン酸 2−グルコシド 2
本メラニン生成抑制剤 0.001
(Spiraea aquilegiifolia エタノール抽出物乾燥物残分)
トラネキサム酸 1
エデト酸三ナトリウム 0.05
パラメトキシ桂皮酸2−エチルヘキシル 0.01
ジブチルヒドロキシトルエン 適量
パラベン 適量
海洋深層水 3
精製水 残余
香料 適量
【0031】
配合例5(化粧水)
エチルアルコール 5.0 質量%
グリセリン 1.0
1,3−ブチレングリコール 5.0
ポリオキシエチレン(30)フィトステロール 0.1
セスキイソステアリン酸ソルビタン 0.033
スクワラン 0.25
イソステアリン酸 0.25
ヘキサメタリン酸ナトリウム 0.03
トリメチルグリシン 1.0
ポリアスパラギン酸ナトリウム 0.1
α−トコフェロール 2−L−アスコルビン酸リン酸ジエステルカリウム 0.1
チオタウリン 0.1
緑茶エキス 0.1
西洋ハッカエキス 0.1
イリス根エキス 0.1
本メラニン生成抑制剤 0.1
(Goniolimon speciosum70%1,3−ブチレングリコール抽出液乾燥物残分)
EDTA3ナトリウム 0.1
クエン酸 0.2
クエン酸ナトリウム 0.8
フェノキシエタノール 適量
精製水 残余
香料 適量
【0032】
配合例6(ファンデーション)
ジメチルポリシロキサン 15 質量%
デカメチルシクロペンタシロキサン 20
ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体 5
高分子量アミノ変性シリコーン 0.1
グリセリン 5
1,3−ブチレングリコール 10
パルミチン酸 0.5
マカデミアナッツ油脂肪酸コレステリル 0.1
塩化ジステアリルジメチルアンモニウム 0.2
アルキル変性シリコン樹脂被覆黄酸化鉄 2
アルキル変性シリコン樹脂被覆ベンガラ 1
アルキル変性シリコン樹脂被覆黒酸化鉄 0.3
アルキル変性シリコン樹脂被覆酸化チタン 10
アルキル変性シリコン樹脂被覆酸化タルク 1.5
シリコーン被覆紡錘状酸化チタン 3
L−グルタミン酸ナトリウム 0.5
酢酸DL−α−トコフェロール 0.1
パラオキシ安息香酸エステル 適量
トリメトキシケイヒ酸メチルビス(トリメチルシロキシ)シリルイソペンチル 0.1
ジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライト 1.5
球状ナイロン末 1
本美白剤(Ajania achilleoides 酢酸エチル抽出物乾燥物残分) 0.0003
精製水 残余
香料 適量
【0033】
配合例7(マスク)
ワセリン 6 質量%
ベヘニルアルコール 2.5
グリセリン 10
マルチトール液 2
ポリエチレングリコール1500 12
スクワラン 10
ベヘニン酸カリウム 2
ヒドロキシステアリン酸コレステリル 0.1
モノイソステアリン酸 N−アルキレン(20−30)グリコール 3
2−エチルヘキサン酸セチル 4
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 0.3
モノステアリン酸グリセリン 2
酸化チタン 1
ヘキサメタリン酸ナトリウム 0.1
L−アルギニン 0.1
ビタミンEアセテート 0.1
ニンジンエキス 0.1
本美白剤(Ajania achilleoides 50%エタノール抽出物乾燥物残分) 0.0005
ベントナイト 0.5
パラオキシ安息香酸エステル 適量
精製水 残余
香料 適量
【0034】
配合例8(化粧水)
エチルアルコール 5.0 質量%
グリセリン 1.0
1,3−ブチレングリコール 5.0
ポリオキシエチレン(30)フィトステロール 0.1
セスキイソステアリン酸ソルビタン 0.033
スクワラン 0.25
イソステアリン酸 0.25
ヘキサメタリン酸ナトリウム 0.03
トリメチルグリシン 1.0
ポリアスパラギン酸ナトリウム 0.1
α−トコフェロール 2−L−アスコルビン酸リン酸ジエステルカリウム 0.1
チオタウリン 0.1
緑茶エキス 0.1
西洋ハッカエキス 0.1
イリス根エキス 0.1
本美白剤(Parnassia palustris 酢酸エチル抽出物乾燥物残分) 0.0001
EDTA3ナトリウム 0.1
クエン酸 0.2
クエン酸ナトリウム 0.8
フェノキシエタノール 適量
精製水 残余
香料 適量
【0035】
配合例9(乳液)
デカメチルシクロペンタシロキサン 15 質量%
トリメチルシロキシケイ酸 5
ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体 5
グリセリン 5
1,3−ブチレングリコール 5
マルチトール液 2
マカデミアナッツ油 2
スクワラン 2
ヒドロキシステアリン酸コレステリル 0.5
2−エチルヘキサン酸セチル 2
塩化ジステアリルジメチルアンモニウム 0.2
L−アスコルビン酸硫酸エステル2ナトリウム 0.1
α-トコフェロール 2−L−アスコルビン酸リン酸ジエステルカリウム 0.1
酢酸トコフェロール 0.05
魚コラーゲン 0.4
コンドロイチン硫酸ナトリウム 0.01
ヒアルロン酸ナトリウム 0.1
エデト酸三ナトリウム 0.05
ジパラメトキシ桂皮酸モノ−2−エチルヘキサン酸グリセリル 0.05
ケイ酸アルミニウムマグネシウム 0.3
本メラニン生成抑制剤(Thymus gobicus抽出物乾燥物残分) 0.003
パラベン 適量
精製水 残余
【0036】
配合例10(美白用クリーム)
α−オレフィンオリゴマー 10 質量%
ワセリン 1
マイクロクリスタリンワックス 3
デカメチルシクロペンタシロキサン 5
グリセリン 10
ジプロピレングリコール 2
1,3−ブチレングリコール 2
エリスリトール 2
スクワラン 1
グリセリン脂肪酸エステルエイコサン二酸縮合物 0.1
イソステアリン酸 1
2−エチルヘキサン酸セチル 5
塩化ナトリウム 0.5
ヘキサメタリン酸ナトリウム 0.05
グリチルレチン酸ステアリル 0.05
コウボエキス 0.1
本メラニン生成抑制剤(Trollius asiaticus エタノール抽出物乾燥物残分) 0.1
リン酸L−アスコルビルマグネシウム 2
酢酸トコフェロール 0.5
チオタウリン 0.1
DL−ピロリドンカルボン酸ナトリウム 1
ウコンエキス 0.1
エデト酸3ナトリウム 0.1
ジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライト 2
カルボキシメチルセルロースナトリウム 0.1
パラベン 適量
精製水 残余
香料 適量
【0037】
配合例11(美白化粧水)
エタノール 10 質量%
ジプロピレングリコール 1
ポリエチレングリコール1000 1
ポリオキシエチレンメチルグルコシド 1
ホホバ油 0.01
トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル 0.1
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 0.2
ジイソステアリン酸ポリグリセリル 0.15
N−ステアロイル−L−グルタミン酸ナトリウム 0.1
クエン酸 0.05
クエン酸ナトリウム 0.2
水酸化カリウム 0.4
グリチルリチン酸ジカリウム 0.1
塩酸アルギニン 0.1
L−アスコルビン酸 2−グルコシド 2
本メラニン生成抑制剤(Arctogeron gramineum アセトン抽出物乾燥物残分) 0.001
トラネキサム酸 1
エデト酸三ナトリウム 0.05
パラメトキシ桂皮酸2−エチルヘキシル 0.01
ジブチルヒドロキシトルエン 適量
パラベン 適量
海洋深層水 3
精製水 残余
香料 適量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソマツ科(Plumbaginaceae)植物のゴニオリモン スペシオスム(Goniolimon speciosum)、オミナエシ科(Valerianaceae)植物のパトリニア シビリカ(Patrinia sibirica)、バラ科(Rosaceae)植物のスピラエア アクイレギイフォリア(Spiraea aquilegiifolia)、キク科(Asteraceae)植物のアジャニア アチレオイデス(Ajania achilleoides)、ユキノシタ科(Saxifragaceae/Parnassiaceae)植物のパルナシア パルストリス(Parnassia palustris)、シソ科(Lamiaceae)植物のシムス ゴビカス(Thymus gobicus)、キンポウゲ科(Ranunculaceae)植物のトロリウス アシアティカス(Trollius asiaticus)、及びキク科(Asteraceae)植物のアルクトゲロン グラミネウム(Arctogeron gramineum)からなる群より選択される一種又は二種以上の植物の抽出物を配合することを特徴とする皮膚外用剤。
【請求項2】
イソマツ科(Plumbaginaceae)植物のゴニオリモン スペシオスム(Goniolimon speciosum)、オミナエシ科(Valerianaceae)植物のパトリニア シビリカ(Patrinia sibirica)、バラ科(Rosaceae)植物のスピラエア アクイレギイフォリア(Spiraea aquilegiifolia)、キク科(Asteraceae)植物のアジャニア アチレオイデス(Ajania achilleoides)、ユキノシタ科(Saxifragaceae/Parnassiaceae)植物のパルナシア パルストリス(Parnassia palustris)、シソ科(Lamiaceae)植物のシムス ゴビカス(Thymus gobicus)、キンポウゲ科(Ranunculaceae)植物のトロリウス アシアティカス(Trollius asiaticus)、及びキク科(Asteraceae)植物のアルクトゲロン グラミネウム(Arctogeron gramineum)からなる群より選択される一種又は二種以上の植物の抽出物を配合することを特徴とする美白用皮膚外用剤。
【請求項3】
イソマツ科(Plumbaginaceae)植物のゴニオリモン スペシオスム(Goniolimon speciosum)、オミナエシ科(Valerianaceae)植物のパトリニア シビリカ(Patrinia sibirica)、バラ科(Rosaceae)植物のスピラエア アクイレギイフォリア(Spiraea aquilegiifolia)、キク科(Asteraceae)植物のアジャニア アチレオイデス(Ajania achilleoides)、ユキノシタ科(Saxifragaceae/Parnassiaceae)植物のパルナシア パルストリス(Parnassia palustris)、シソ科(Lamiaceae)植物のシムス ゴビカス(Thymus gobicus)、キンポウゲ科(Ranunculaceae)植物のトロリウス アシアティカス(Trollius asiaticus)、及びキク科(Asteraceae)植物のアルクトゲロン グラミネウム(Arctogeron gramineum)からなる群より選択される一種又は二種以上の植物の抽出物を含むことを特徴とする美白剤。
【請求項4】
イソマツ科(Plumbaginaceae)植物のゴニオリモン スペシオスム(Goniolimon speciosum)、オミナエシ科(Valerianaceae)植物のパトリニア シビリカ(Patrinia sibirica)、バラ科(Rosaceae)植物のスピラエア アクイレギイフォリア(Spiraea aquilegiifolia)、キク科(Asteraceae)植物のアジャニア アチレオイデス(Ajania achilleoides)、ユキノシタ科(Saxifragaceae/Parnassiaceae)植物のパルナシア パルストリス(Parnassia palustris)、シソ科(Lamiaceae)植物のシムス ゴビカス(Thymus gobicus)、キンポウゲ科(Ranunculaceae)植物のトロリウス アシアティカス(Trollius asiaticus)、及びキク科(Asteraceae)植物のアルクトゲロン グラミネウム(Arctogeron gramineum)からなる群より選択される一種又は二種以上の植物の抽出物を含むことを特徴とするメラニン生成抑制剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−265179(P2010−265179A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−115205(P2009−115205)
【出願日】平成21年5月12日(2009.5.12)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】