説明

皮表角層の保湿能改善剤

【課題】 保湿作用を有し、肌荒れの予防・改善に有用である皮表角層の保湿能改善剤を提供する。
【解決手段】 皮表角層の保湿能改善剤にサルナシ(Actinidia aruguta)樹液とグリセリンとを有効成分として含有せしめる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮表角層の保湿能改善剤に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚は様々な外界からの環境変化や刺激から生体を防御する働きを有しており、特に表皮の最外層に位置する角質層は、外界と生体との境界として緩衝作用を担っている。そして、角質層は、生体の様々な活動に対して柔軟に対応するとともに、弾力性、柔軟性、保護機能などを維持するために、適度な水分を必要としている。
【0003】
角質層の水分が外部環境の変化などで失われると、皮膚の弾力性、柔軟性などが損なわれ、皮膚疾患の原因となることが知られている。そのため、角質層の適度な水分を維持し、肌荒れなどの皮膚疾患を予防・改善することが必要となり、従来、保湿効果のある薬剤を肌に塗布して、表皮の保湿力を高めて水分の蒸散を防止する方法が用いられてきた。
【0004】
一方、サルナシ(学名:Actinidia arguta)は、マタタビ科マタタビ属に属する植物で、日本各地の山野に広く分布するつる性の大木である。サルナシは、コクワ、コクワヅル、シラクチヅル、シラクチカズラなどの地方名で呼ばれることもある。
【0005】
サルナシは、他の木にからみついて高くよじ登り、長さが30mに達し、幹の太いものは直径が20cmに達する場合がある。サルナシの葉は、厚く光沢があり、楕円形から広卵形で長さは6〜10cmである。サルナシの果実は、生食されるほか、果実酒としても利用されている。サルナシのつるは丈夫で腐り難いことから、杖などに利用されている。
【0006】
サルナシのつるを切断したときに切り口から出てくる樹液(サルナシ樹液)は、極まれに飲料として利用されている。しかしながら、これまでにサルナシ樹液の化粧料分野への利用に関する研究は全くなされていなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、安全性の高い天然物の中から、入手が容易であり、かつ皮表角層の保湿能改善作用を有する物質を見出し、皮表角層の保湿能改善剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、サルナシ(Actinidia arguta)樹液またはその希釈液、濃縮液若しくは乾燥物とグリセリンとを有効成分として含有することを特徴とする皮表角層の保湿能改善剤を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、肌荒れの予防・改善に有用である皮表角層の保湿能改善剤が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
〔保湿剤〕
本発明の保湿剤は、サルナシ樹液またはその処理物を有効成分として含有する。
【0011】
本発明の保湿剤において、「サルナシ樹液」とは、サルナシの樹木の中に含まれる液を意味し、サルナシ樹液は、例えば、サルナシのつるを切断して、その切り口から出てくる樹液を採取することにより得ることができる。
【0012】
サルナシ樹液の簡便な採取方法としては、例えば、サルナシのつるを切断して、切断した切り口を一升瓶のような先の細いビンに差込み、不純物が混入しないように蓋をした状態で放置する方法が挙げられる。サルナシのつるを切断する際、切断箇所は特に限定されるものではないが、根からある程度離れた箇所、好ましくは根から2m以上離れた箇所を切断することが好ましい。切断箇所が根元すぎるとサルナシを枯らしてしまう恐れがあるからである。
【0013】
サルナシ樹液を採取する時期は、気温が高い時期と低い時期では得られる樹液の量が減少する場合があるが、品質に差はないので、一年中いつの時期に採取してもよい。また、樹液の採取源となるサルナシは、北海道、本州、四国、九州などの日本各地、サハリン、朝鮮半島、中国などに広く分布しており、これらの地域から容易に入手が可能である。
【0014】
本発明の保湿剤において、「サルナシ樹液の処理物」とは、保湿作用を失わせない範囲においてサルナシ樹液に所望の処理を施したものを意味し、サルナシ樹液の処理物の具体例としては、サルナシ樹液の希釈液または濃縮液、サルナシ樹液を乾燥して得られる乾燥物、サルナシ樹液の粗精製物または精製物などが挙げられる。
【0015】
サルナシ樹液の精製は、活性の向上や脱色・脱臭などを目的として行ない、具体的な精製方法はその目的に応じて適宜選択し得る。サルナシ樹液の精製方法としては、例えば、処理活性炭処理、吸着樹脂処理、イオン交換樹脂処理などが挙げられる。
【0016】
サルナシ樹液またはその処理物は保湿作用を有するので、そのままでも保湿剤として使用することができるが、常法に従って製剤化して使用することもできる。製剤化する場合、保存や取扱いを容易にするために、薬学的に許容され得るキャリアーその他任意の助剤を添加することができる。サルナシ樹液またはその処理物は、製剤化により液剤などの任意の剤形とすることができる。
【0017】
サルナシ樹液またはその処理物は、そのまま放置しておくと腐敗、菌の繁殖などが生じるおそれがあるので、エタノール、パラオキシ安息香酸エステルまたはその塩、安息香酸またはその塩、サリチル酸またはその塩、ソルビン酸またはその塩、デヒドロ酢酸またはその塩、イソプロピルメチルフェノール、オルトフェニルフェノール、クレゾール、フェノキシエタノールなどの防腐剤を適宜配合することができる。
【0018】
本発明の保湿剤を肌に適用することにより、肌の保湿効果が得られ、肌荒れなどの皮膚疾患を予防および/または改善することができる。
【0019】
〔皮膚化粧料〕
本発明の皮膚化粧料は、サルナシ樹液またはその処理物を有効成分として含有する。
本発明の皮膚化粧料において、「サルナシ樹液」および「サルナシ樹液の処理物」は、前記と同義であり、前記と同様にして採取することができる。
【0020】
サルナシ樹液またはその処理物は保湿作用を有するので、皮膚化粧料に配合するのに好適である。なお、サルナシ樹液は特有の匂いを有しているが、不快なものではないので、そのまま皮膚化粧料の原料として利用することができる。
【0021】
サルナシ樹液またはその処理物を皮膚化粧料に配合することにより、皮膚化粧料に保湿作用を付与することができる。サルナシ樹液またはその処理物を配合し得る皮膚化粧料の具体例としては、軟膏、クリーム、乳液、ローション、パック、ファンデーションなどが挙げられる。
【0022】
本発明の皮膚化粧料は、サルナシ樹液またはその処理物を、その生理活性を妨げないような任意の主剤、助剤に配合したものであってもよいし、サルナシ樹液またはその処理物を主成分とするものであってもよい。本発明の皮膚化粧料には、本発明の保湿剤を配合してもよい。
【0023】
サルナシ樹液またはその処理物を配合して皮膚化粧料を製造する際には、任意の助剤を添加して軟膏、クリーム、乳液、ローション、パック、ファンデーションなどの任意の剤形に製剤化することができる。
【0024】
本発明の皮膚化粧料におけるサルナシ樹液またはその処理物の配合量は、サルナシ樹液またはその処理物を配合する化粧料の種類などによって適宜調整し得るが、皮膚化粧料全体量の通常3〜99重量%であり、好ましくは5〜95重量%である。配合量が3重量%より少ないと保湿効果が十分に得られにくく、配合量が99重量%を超えると保存安定性が低下してしまう。
【0025】
本発明の皮膚化粧料には、必要に応じて任意の薬効成分、生理活性物質などを併せて配合することができる。本発明の皮膚化粧料において、サルナシ樹液またはその処理物とともに構成成分として利用可能なものとしては、水性成分、油性成分、粉末成分、界面活性剤、保湿剤、色剤、香料、防腐剤、抗酸化剤、紫外線カット剤、キレート剤、抗炎症剤、美白成分などを例示でき、具体的には以下のものを例示することができる。なお、サルナシ樹液とともに以下の構成成分を併用した場合、サルナシ樹液と併用された構成成分との間の相乗作用が、通常期待される以上の優れた使用効果をもたらすことがある。
【0026】
収斂剤:クエン酸またはその塩類、酒石酸またはその塩類、乳酸またはその塩類、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム・カリウム、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム、アラントインジヒドロキシアルミニウム、パラフェノールスルホン酸亜鉛、硫酸亜鉛、チユエキス、エイジツエキス、ハマメリスエキス、ゲンノショウコエキス、チャカテキン類、ガイヨウエキス、オドリコソウエキス、オトギリソウエキス、ダイオウエキス、ヤグルマソウエキス、スギナエキス、キズタエキス、キューカンバーエキス、マロニエエキス、サルビアエキス、メリッサエキスなど。
【0027】
殺菌・抗菌剤:安息香酸、安息香酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸エステル、塩化ジステアリルメチルアンモニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化アルキルジアミノエチルグリシン液、塩酸クロルヘキシジン、オルトフェニルフェノール、感光素101号、感光素201号、サリチル酸、サリチル酸ナトリウム、ソルビン酸、ハロカルバン、レゾルシン、パラクロロフェノール、フェノキシエタノール、ビサボロール、ヒノキチオール、メントール、キトサン、キトサン分解物、チユエキス、クジンエキス、エンメイソウエキス、ビワエキス、ウワウルシエキス、ホップエキス、ユッカエキス、アロエエキス、ケイヒエキス、ガジュツエキスなど。
【0028】
美白剤:アスコルビン酸およびその誘導体、イオウ、胎盤抽出物、エラグ酸およびその誘導体、コウジ酸およびその誘導体、グルコサミンおよびその誘導体、アゼラインおよびその誘導体、アルブチンおよびその誘導体、ヒドロキシケイヒ酸およびその誘導体、グルタチオン、アルニカエキス、オウゴンエキス、センキュウエキス、ソウハクヒエキス、サイコエキス、ボウフウエキス、ハマボウフウエキス、マンネンタケ菌糸体培養物またはその抽出物、ギムネマエキス、シナノキエキス、モモ葉エキス、エイジツエキス、クジンエキス、チユエキス、トウキエキス、ヨクイニンエキス、カキ葉エキス、ダイオウエキス、ボタンピエキス、ハマメリスエキス、マロニエエキス、オトギリソウエキス、オドリコソウエキス、油溶性カンゾウエキス(カンゾウ疎水性フラボノイド、グラブリジン、グラブレン、リコカルコンA)など。
【0029】
紫外線吸収剤:β−イソプロピルフラノン誘導体、ウロカニン酸、ウロカニン酸エチル、オキシベンゾン、オキシベンゾンスルホン酸、テトラヒドロキシベンゾフェノン、ジヒドロキシジメトキシベンゾフェノン、ジヒドロキシベンゾフェノン、シノキサート、ジイソプロピルケイヒ酸メチル、メトキシケイヒ酸オクチル、パラアミノ安息香酸グリセリル、パラジメチルアミノ安息香酸アミル、パラジメチル安息香酸オクチル、パラアミノ安息香酸、パラアミノ安息香酸エチル、ブチルメトキシジベンゾイルメタン、酸化チタン、β−カロチン、γ−オリザノール、コメヌカエキス、アロエエキス、カバノキエキス、シラカンバエキス、カミツレエキス、コゴメグサエキス、セイヨウサンザシエキス、ヘンナエキス、チョウチグルミエキス、マロニエエキス、イチョウ葉エキス、カミツレエキス、セイヨウサンザシエキス、油溶性カンゾウエキスなど。
【0030】
保湿剤:セリン、グリシン、スレオニン、アラニン、コラーゲン、加水分解コラーゲン、ビドロネクチン、フィブロネクチン、ケラチン、エラスチン、ローヤルゼリー、コンドロイチン硫酸、ヘパリン、グリセロリン脂質、グリセロ糖脂質、スフィンゴリン脂質、スフィンゴ糖脂質、リノール酸またはそのエステル類、エイコサペンタエン酸またはそのエステル類、ペクチン、アルゲコロイド、ビフィズス菌発酵物、乳酸発酵物、酵母抽出物、レイシ菌糸体培養物またはその抽出物、小麦胚芽油、アボガド油、米胚芽油、ホホバ油、ダイズリン脂質、γ−オリザノール、ビロウドアオイエキス、ヨクイニンエキス、ジオウエキス、タイソウエキス、カイソウエキス、キダチアロエエキス、ゴボウエキス、マロニエエキス、マンネンロウエキス、アルニカエキス、小麦フスマ、コメヌカエキスなど。
【0031】
細胞賦活剤:リボフラビンまたはその誘導体、ピリドキシンまたはその誘導体、ニコチン酸またはその誘導体、パントテン酸またはその誘導体、α−トコフェロールまたはその誘導体、アルニカエキス、ニンジンエキス、オタネニンジンエキス、エゾウコギエキス、ヘチマエキス(サポニン)、シコンエキス、シラカンバエキス、オオバクエキス、ボタンピエキス、シャクヤクエキス、ムクロジエキス、ベニバナエキス、アシタバエキス、ビワ葉エキス、ヒキオコシエキス、ユキノシタエキス、黄杞エキス、サルビアエキス、ニンニクエキス、マンネンロウエキスなど。
【0032】
消炎・抗アレルギー剤:アズレン、アラントイン、アミノカプロン酸、インドメタシン、塩化リゾチーム、イプシロンアミノカプロン酸、オキシベンゾン、グリチルリチン酸またはその誘導体、グリチルレチン酸またはその誘導体、感光素301号、感光素401号、塩酸ジフェンヒドラミン、トラネキサム酸またはその誘導体、アデノシンリン酸、エストラジオール、エスロン、エチニルエストラジオール、コルチゾン、ヒドロコルチゾン、プレドニゾロン、プロゲステロン、コルチコステロン、アルニカエキス、インチンコウエキス、サンシシエキス、ジュウヤクエキス、セイヨウトチノキエキス、カンゾウエキス、トウキエキス、ヨモギエキス、ワレモコウエキス、リンドウエキス、サイコエキス、センキュウエキス、ボウフウエキス、セイヨウノコギリソウエキス、オウレンエキス、シソエキスなど。
【0033】
抗酸化・活性酸素消去剤:ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、没食子酸プロピル、バイカリン、バイカレイン、スーパーオキサイドディスムターゼ、カタラーゼ、ローズマリーエキス、メリッサエキス、オウゴンエキス、エイジツエキス、ビワ葉エキス、ホップエキス、ハマメリスエキス、シャクヤクエキス、セージエキス、キナエキス、カミツレエキス、ユーカリエキス、シソエキス、イチョウ葉エキス、タイムエキス、カルダモンエキス、キャラウェイエキス、ナツメグエキス、メースエキス、ローレルエキス、クローブエキス、ターメリックエキス、ヤナギタデエキスなど。
【0034】
油脂類:大豆油,アマニ油,キリ油,ゴマ油,ヌカ油,綿実油,菜種油,サフラワー油,トウモロコシ油,オリーブ油,椿油,アーモンド油,ヒマシ油,落花生油,カカオ油,モクロウ,ヤシ油,パーム核油,牛脂,ミンク油,卵黄油,ホホバ油,月見草油、馬油。
【0035】
ロウ類:カルナウバロウ,キャンデリラロウ,蜜ロウ,サラシ蜜ロウ,鯨ロウ,セラックス,ラノリン類。
【0036】
炭化水素類:流動パラフィン,ワセリン,マイクロクリスタリンワックス,セレシン,スクワラン,ポリエチレン末。
【0037】
脂肪酸類:ステアリン酸,リノール酸,ラウリン酸,ミリスチン酸,パルミチン酸,ヘベニン酸,ラノリン酸,オレイン酸,ウンデシレン酸,イソステアリン酸。
【0038】
アルコール類:ラウリルアルコール,セチルアルコール,ステアリルアルコール,ラノリンアルコール,水添ラノリンアルコール,オレイルアルコール,ヘキサデシルアルコール,2−オクチルドデカノール,グリセリン,ソルビトール,プロピレングリコール,1,3−ブチレングリコール,エチレングリコールおよびその重合体,ブドウ糖,白糖,コレステロール,フィトステロール,セトステアリルアルコール。
【0039】
エステル類:オレイン酸デシル,ステアリン酸ブチル,ミリスチン酸ミリスチル,ラウリン酸ヘキシル,パルミチン酸イソプロピル,ミリスチン酸イソプロピル,ミリスチン酸オクチルドデシル,ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル,ジオレイン酸プロピレングリコール,フタル酸ジエチル,モノステアリン酸プロピレングリコール,モノステアリン酸エチレングリコール,モノステアリン酸グリセリン,トリミリスチン酸グリセリン,酢酸ラノリン,乳酸セチル。
【0040】
界面活性剤:陰イオン性界面活性剤,陽イオン性界面活性剤,両イオン性界面活性剤,非イオン性界面活性剤。
【0041】
香料:メントール,カルボン,オイゲノール,アネトール,ハッカ油,スペアミント油,ペパーミント油,ユーカリ油,アニス油。
【0042】
本発明の皮膚化粧料を肌に適用することにより、肌の保湿効果が得られ、肌荒れなどの皮膚疾患を予防および/または改善することができる。
【実施例】
【0043】
以下に実施例を示し、本発明をさらに詳細に説明する。
〔製造例1〕
サルナシのつるの根から2メートルのところを切断し、切り口をビンに入れてサルナシ樹液を採取した。夕方6時から翌朝6時までの12時間で、直径約5センチメートルのつるから5リットルのサルナシ樹液が、また、直径約3センチメートルのつるから5リットルのサルナシ樹液が採取できた。
【0044】
〔試験例1〕
5%サルナシ樹液(以下「試料1」という。)、40%サルナシ樹液(以下「試料2」という。)、1%グリセリン(以下「試料3」という。)、精製水(以下「試料4」という。)を、それぞれ10μlずつ、直径8ミリメートルのペーパーディスク(東洋製作所製、重量約0.017g)に滴下し、これを試験室内(室温24℃、湿度68%)に放置した状態で、1分ごとに0〜8分の重量を測定した。
0分の重量を100%として、各時間における各試料の水分残存率(%)を求めた。
各時間における各試料の水分残存率(%)を表1に示す。
【0045】
[表1]
試 料 0分 1分 2分 3分 4分 5分 6分 7分 8分
1 100 94.9 93.9 89.0 87.0 81.0 79.7 76.0 73.5
2 100 95.1 94.3 92.5 90.0 88.8 85.2 82.0 81.0
3 100 94.6 92.4 86.6 82.0 77.7 73.0 69.8 66.8
4 100 93.7 89.4 83.0 79.9 74.9 71.9 68.0 65.7
【0046】
表1に示すように、5%サルナシ樹液(試料1)および40%サルナシ樹液(試料2)の水分残存率(%)は、1%グリセリン(試料3)および精製水(試料4)の水分残存率(%)よりも大きく、このことから、サルナシ樹液が保湿作用を有することが確認された。また、40%サルナシ樹液(試料2)の水分残存率(%)は、5%サルナシ樹液(試料1)の水分残存率(%)よりも大きく、このことから、サルナシ樹液の保湿作用はその濃度に依存して増強されることが確認された。すなわち、サルナシ樹液の濃度を調節することにより所望の保湿作用を得ることができることが確認された。
【0047】
〔試験例2〕
6名の皮膚健常人の上腕部に毎日、30日間にわたって表2に示す組成(重量%)の本発明品a、bおよび比較品c、dを各々0.3g塗布し、1日目の塗布前後、塗布2時間後および塗布8時間後、並びに3日目、7日目、15日目および30日目の各塗布前にコンダクタンス値(単位:μS)を測定した。
コンダクタンス値の測定は、皮表角層水分量測定装置(Skin Surface Hygrometer)IB-355(IBS社製)を用いて行なった。なお、この装置では、高周波を用いた交流電流に対するコンダクタンス値(伝導度)を測定することにより表層の角層の水分測定を可能となる。すなわち、高周波電流は物の表面を流れ易く、またコンダクタンス値と水分含有量の間には密接な相関関係があるので、これにより表層の角層の水分含有量を鋭敏かつ迅速に知ることができる。
測定環境は、室温(20℃)、湿度65%で、6名の平均値を測定値とした。各時間におけるコンダクタンス値(μS)を表3に示す。
【0048】
[表2]
本発明品 比較品

流動パラフィン 11.0 11.0 11.0 11.0
固形パラフィン 4.0 4.0 4.0 4.0
オリーブ油 1.5 1.5 1.5 1.5
セタノール 3.0 3.0 3.0 3.0
自己乳化型モノステアリン酸グリセリン 3.0 3.0 3.0 3.0
モノステアリン酸(POE20)グリセリン 2.0 2.0 2.0 2.0
パラオキシ安息香酸メチル 0.2 0.2 0.2 0.2
サルナシ樹液 5.0 5.0 なし なし
グリセリン なし 20.0 なし 20.0
精製水 残部 残部 残部 残部
【0049】
[表3]
測 定 時 間 本発明品a 本発明品b 比較品c 比較品d
1日目 塗布前 68 63 62 61
塗布後 174 398 141 405
2時間後 160 299 97 225
8時間後 115 249 60 195
3日目 120 201 62 114
7日目 122 221 61 111
15日目 120 223 64 97
30日目 125 233 68 76
【0050】
表3に示すように、サルナシ樹液を配合せずにグリセリンを配合した比較品dは、サルナシ樹液もグリセリンも配合しない比較品cよりも短時間における保湿効果は優れているものの、長時間にわたる保湿効果は十分ではなかった。これに対して、グリセリンを配合せずにサルナシ樹液を配合した本発明品aは、比較品cおよびdよりも長時間にわたる保湿効果に優れていた。特に、サルナシ樹液とグリセリンをともに配合した本発明品bは、長時間にわたって保湿効果が高レベルで持続された。多価アルコール以外の保湿成分をサルナシ樹液に配合した場合にも同様の結果が得られた(結果示さず)。
【0051】
〔配合例1〕
以下の組成の乳液を常法により製造した。
ホホバオイル 4.0g
オリーブオイル 2.0g
スクワラン 2.0g
セタノール 2.0g
モノステアリン酸グリセリル 2.0g
ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O.) 2.5g
オレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.) 2.0g
1,3−ブチレングリコール 3.0g
パラオキシ安息香酸メチル 0.15g
香料 0.05g
製造例1のサルナシ樹液 5.0g
精製水 残部(全量を100gとする)
【0052】
〔配合例2〕
以下の組成の化粧水を常法により製造した。
グリセリン 3.0g
1,3−ブチレングリコール 3.0g
オレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.) 0.5g
パラオキシ安息香酸メチル 0.15g
クエン酸 0.1g
クエン酸ソーダ 1.0g
香料 0.05g
製造例1のサルナシ樹液 40.0g
精製水 残部(全量を100gとする)
【0053】
〔配合例3〕
以下の組成のクリームを常法により製造した。
流動パラフィン 5.0g
サラシミツロウ 4.0g
セタノール 3.0g
スクワラン 10.0g
ラノリン 2.0g
ステアリン酸 1.0g
オレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.) 1.5g
モノステアリン酸グリセリル 3.0g
1,3−ブチレングリコール 6.0g
パラオキシ安息香酸メチル 1.5g
香料 0.1g
製造例1のサルナシ樹液 5.0g
精製水 残部(全量を100gとする)
【0054】
〔配合例4〕
以下の組成のパックを常法により製造した。
ポリビニルアルコール 15.0g
ポリエチレングリコール 3.0g
プロピレングリコール 7.0g
エタノール 10.0g
パラオキシ安息香酸エチル 0.05g
香料 0.05g
製造例1のサルナシ樹液 5.0g
精製水 残部(全量を100gとする)
【0055】
〔配合例5〕
以下の組成のシャンプーを常法により製造した。
ポリオキシエチレン(3E.O.) ラウリン酸モノエタノール アミド硫酸トリエタノールアミン 12.0g
ラウリン酸アミドプロピルベタイン 4.0g
エチレングリコールジステアレート 2.0g
ジメチルポリシロキサン(n=1200) 1.5g
安息香酸ナトリウム 0.3g
香料 適量
製造例1のサルナシ樹液 2.0g
精製水 残部(全量を100gとする)
【0056】
〔配合例6〕
以下の組成の養毛剤を常法により製造した。
POE(5)オレイルエーテル 1.2g
プロピレングリコール 1.5g
ニコチン酸ベンジル 0.5g
ピリドキシン 0.1g
オウバクエキス 0.5g
パルミチン酸イソプロピル 2.0g
エタノール 50.0g
サルナシ樹液 0.5g
精製水 残部(全量を100gとする)
【0057】
〔配合例7〕
以下の組成の浴用剤を常法により製造した。
無水硫酸ナトリウム 50.0g
炭酸水素ナトリウム 47.0g
トウヒ油 0.9g
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 0.6g
色素 0.5g
サルナシ樹液 1.0g
【0058】
〔配合例8〕
以下の組成の石鹸を常法により製造した。
牛脂 22.0g
ヤシ油 10.0g
ヒマシ油 4.0g
オリーブ油 4.0g
エチルアルコール 20.0g
精製水 20.0g
水酸化ナトリウム 6.0g
砂糖 9.0g
グリセリン 3.0g
香料 1.0g
染料 少量
金属イオン封鎖剤 少量
サルナシ樹液 1.0g
【0059】
〔配合例9〕
以下の組成の洗顔クリームを常法により製造した。
ステアリン酸 19.0g
パルミチン酸 13.0g
ミリスチン酸 12.0g
ラウリン酸 6.0g
オレイルアルコール 4.0g
ポリオキシエチレン還元ラノリン 2.0g
香料 0.2g
パラオキシ安息香酸メチル 0.2g
濃グリセリン 2.0g
水酸化カリウム 7.0g
サルナシ樹液 5.0g
精製水 残部(全量を100gとする)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サルナシ(Actinidia arguta)樹液またはその希釈液、濃縮液若しくは乾燥物とグリセリンとを有効成分として含有することを特徴とする皮表角層の保湿能改善剤。

【公開番号】特開2006−249101(P2006−249101A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−174247(P2006−174247)
【出願日】平成18年6月23日(2006.6.23)
【分割の表示】特願2003−273609(P2003−273609)の分割
【原出願日】平成12年11月7日(2000.11.7)
【出願人】(300039281)パーソナルコスメディック株式会社 (1)
【Fターム(参考)】