説明

盗難車両・偽装ナンバー車両の追跡システム

【課題】盗難車両、偽装ナンバー車両の追跡システムにおいては、個人情報の送受信が含
まれているために、個人情報の情報漏洩が課題となる。
【解決手段】まず、盗難車両、偽装ナンバー車両から無線ICタグの情報が陸運局に送付
されるが、無線ICタグは個人情報に結び付くIDを持っているが、それのみを盗聴され
ても数字の羅列であるため、個人情報の漏洩は防げる。また、陸運局サーバから警察局サ
ーバへ車両の所有者の情報送信は、暗号化ソフトにより暗号化し送信されているため、個
人情報の漏洩は防げる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、盗難車両・偽装ナンバー車両を特定及び追跡する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来盗難車両・偽装ナンバー車両の追跡システムとしては、特許文献1のものが知られ
ている。特許文献1で示すように車両ナンバープレート認識システムに監視、特に、車載
機のカメラで自車のナンバープレートを撮影して、不正ナンバープレートの使用を情報収
集センターに通報する。また、前記情報を情報収集センターから警察に通報するという車
両ナンバープレート認識システムがある。
【0003】
【特許文献1】特開2003−58980号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来のシステムでは、盗難車、偽装車両を発見した場合、情報収集センターを通し
て警察に通報は可能である。しかしながら、盗難車、偽装車両を追跡するためのリアルタ
イムな車両位置情報の提供が不可能である。また小型カメラが車両の外にあるため、衝撃
が加わると撮影角度が変わり、正しくナンバープレートを撮影できなり、誤った情報を伝
達してしまう。さらに、盗難車両、偽装車両が移動した拠点を記録できないため追跡情報
等が全くないという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の盗難車両、偽装ナンバー車両の追跡システムは、
無線ICタグとGPS装置を備えた車両と、車両情報登録DBを有する陸運局サーバと盗
難届情報DBを有する警察署サーバで構成する。上記車両には、車両内部に無線ICタグ
と無線ICタグリーダを搭載し、また車両にGPS装置を搭載し、GPS装置と連携する
処理・記憶装置により移動拠点(住所)を蓄積する。上記無線ICタグ情報は車両情報登
録時に陸運局の車両情報登録DBに予め格納されるものとする。車両搭載処理・記憶装置
は無線ICタグ情報を上記陸運局のサーバと送受信し、陸運局のサーバは車両情報登録D
Bから該当車両の所有者情報を抽出し、警察署サーバに送付する。警察署サーバは前記情
報が上記盗難届情報DBに存在した場合、上記車両搭載処理・記憶装置と情報を送受し、
車両位置情報の送付を依頼する。これにより第1の課題であるリアルタイムでの場所特定
が可能となる。また上記車両搭載処理・記憶装置は、一定時間毎に移動拠点を登録し、上
記警察署サーバに送信し、警察署サーバは追跡登録DBに情報を格納する。これにより第
2の課題である盗難車、偽装車両の移動した場所を記録として残すことが可能となる。
(1)車両内部に無線ICタグと無線ICタグリーダを搭載する。
(2)車両にGPS装置を搭載する。
(3)移動拠点(住所)を蓄積する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の盗難車両・偽装ナンバー車両の追跡システムは、盗難車、偽装車両をリアルタ
イムで追跡が可能である利点がある。また、盗難車両・偽装ナンバー車両の移動拠点を警
察の登録DBに蓄積して犯人追跡に利用可能という利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図を用いて説明する。図1は盗難車
両・偽装ナンバー車両の追跡システムのシステム構成図である。
【0008】
図1の1はナンバープレートを表す。ナンバープレートは、車両の前後に取り付けてら
れており、中には無線ICタグ2が埋め込まれている。この無線ICタグ入りのナンバー
プレートは、陸運局にて車両登録時に配布されるものとする。
【0009】
無線ICタグ2は前後ナンバープレートに1つずつ、2つ存在し、同じIDを持ってい
ることとする。
【0010】
図1の車載機9は上記無線ICタグリーダ3、演算装置4、制御装置5、メモリ6、通
信装置7、GPS受信機8とを備え、車両のエンジンが起動すると共に、車載機9に電源
が供給され、各装置が起動することとする。
【0011】
無線ICタグリーダ3は、エンジンが駆動し、電源が供給されると同時に、2の無線I
Cタグ情報を取得する機能を備える。また、取得した情報を車両内のGPS受信機8と連
携する車載機9の制御装置5に送信する機能を備える。
車載機9の演算装置4は、制御装置5から命令を受け、無線ICタグリーダ3からの2つ
の無線ICタグ情報を取得し、比較する機能を備える。また演算装置4は、GPS受信機
8からの車両位置情報とメモリ6に記憶した警察DB情報を比較する機能を備える。
【0012】
制御装置5は、無線ICタグリーダ3から送付されたデータを、演算装置4に比較する
よう命令を出す機能と、演算装置4の比較結果を受け、一致している場合は通信装置7に
陸運局サーバ12へデータを送信するよう命令を出す機能と、演算装置4の比較結果を受
け、不一致している場合は、GPS受信機8に車両の位置情報取得指示と車載機9の通信
装置7に警察サーバ13へ警察DB情報送信依頼をするよう命令を出す機能を備える。
【0013】
車載機9のメモリ6には、警察署の名前とサーバの通信アドレスと住所と電話番号との
組と、陸運局の名前とサーバの通信アドレスと住所と電話番号との組とを記憶している。
メモリ6は、制御装置5からの命令を受け、警察署、陸運局の情報を演算装置4に渡す。
【0014】
車載機9の通信装置7は、制御装置5からの指示により警察サーバ13と情報を送受す
る機能と、制御装置5からの指示により無線ICタグ情報を陸運局サーバ12に送信する
機能とを備える。車載機9と連携するGPS受信機8は通常のGPS機能を備えていれば
良く、制御装置5から車両の現在位置の取得命令を受け、現在位置を取得する機能を備え
る。
【0015】
ここで車載機9を備える車両10であるが、車両はアルミも含んだ化合物で構成されて
いるため、無線ICタグの輻輳読み込みの心配は不要である。
【0016】
陸運局には陸運局サーバ12と、サーバ12と連携して車両と情報を送受したりオペレ
ータが情報を入出力する陸運局端末11とを備える。陸運局端末11は、OS111と、
トランザクション処理ソフト112、Webアプリケーションソフト113、DBクライ
アントソフト114、暗号化ソフト115を備え、車両10の通信装置7より、無線IC
タグ情報を受信し、陸運局サーバ12に送信する。陸運局サーバ12はサーバOS120
と、無線ICタグ情報関連付けソフト121と、トランザクション処理ソフト122と、
Webアプリケーションソフト123、DB管理ソフト124、暗号化ソフト125と、
登録DB126とを備え、Webアプリケーションソフト123は上記無線ICタグ情報
と登録DB126を照合し、車両の所有者を特定する。陸運局サーバ12の登録DB12
6には、無線ICタグを含んだナンバープレートを配布する前に、無線ICタグ情報関連
付けソフト121により車両の所有者と無線ICタグ情報を関連付けて、DB管理ソフト
124により情報を格納しておく。陸運局サーバ12は、特定した車両の所有者情報を暗
号化ソフト125により暗号化して、陸運局端末11から警察署サーバ13に送信する。
【0017】
警察署には警察署サーバ13と、サーバ13と連携して陸運局及び車両と情報を送受し
たりオペレータが情報を入出力する警察署端末14とを備える。警察署端末14は、OS
141と、トランザクション処理ソフト142、Webアプリケーションソフト143、
DBクライアントソフト144、暗号化ソフト145を備え、陸運局端末11から情報を
受信し、また警察署サーバ13が発信する車両位置情報の送付依頼を車両10に送付し、
また後述する警察DB138の内容を暗号化ソフト145により暗号化して車両に送付す
る。警察署サーバ13は、サーバOS130と、無線ICタグ情報関連付けソフト131
と、トランザクション処理ソフト132と、Webアプリケーションソフト133、DB
管理ソフト134、暗号化ソフト135と、盗難届DB136、移動拠点の追跡登録DB
137、警察DB138とを備える。警察署サーバ13のWebアプリケーションソフト
133には、陸運局端末11から受信した車両の所有車情報を盗難届DB136と照合す
る機能と、情報が一致した場合に車両10に対し車両位置情報の送付依頼を端末14に送
付する機能と、車両10から端末14を通して受信した位置情報を一定時間、例えば30
分毎に移動拠点の追跡登録DB137に登録する機能とを備える。
【0018】
図2に上記無線ICタグ2内に格納する情報の例を示す。無線ICタグ2内には少なく
ともICタグの識別情報と固有IDとを備える。無線ICタグとしては、例えばμチップ
と呼ばれる記憶媒体のようなものを使用する。このμチップは128ビットの情報量を保
有することができ、1038桁まで登録することが可能であり、世界の車保有者量よりも
圧倒的に多いため、車保有者毎に固有のIDを割当ることが可能である。ここで上記固有
IDの割当ては、車両の生産工場にて任意の番号付けを実施することを想定する。この場
合、固有IDとナンバープレートの所有者とを関連付けるために、陸運局で陸運局サーバ
12の登録DB126に固有IDとナンバープレートの所有者=車両の所有者の情報を対
応付けて格納する処理を実施することとする。なお中古車の場合、ナンバープレートは外
されないまま店頭に展示されるため、中古車販売の場合には購入者の情報を販売業者が陸
運局に送付し、陸運局で陸運局サーバ12の登録DB126に存在する無線ICタグ情報
を抽出し、新たな車両所有者の情報と対応付けて登録DB126の対象レコードを変更す
る必要がある。
【0019】
図3に上記登録DB126の情報例を示す。陸運局サーバ12の登録DB126には購
入者氏名、電話番号、住所、車両番号が、まず登録されている。初期値ではこの対象レコ
ードの無線ICタグ数値項目は空である。そこに、陸運局サーバ12の無線ICタグ情報
関連付けソフト121により上記無線ICタグ内の固有IDの数値を入力して、DB管理
ソフト124により登録DB126の対象レコードを更新する。
【0020】
図4に警察署内部に設置する警察署サーバ13が備える盗難届DB136、移動拠点の
追跡登録DB137、警察DB138の情報例を示す。盗難届DB136には、車の盗難
被害にあった人の、氏名、電話番号、住所、車両番号を登録する。この盗難届DB136
の情報を陸運局サーバ12から送付されてきた情報と比較して、合致するか否かが判断さ
れる。移動拠点の追跡登録DB137には、購入者氏名、電話番号、住所と、対応付けて
一定時間毎の移動拠点の住所、即ちその時間の車両位置を格納する。移動拠点の追跡登録
DB137情報の内、購入者氏名、電話番号、住所は、上記陸運局サーバ12から送付さ
れてきた情報が盗難届DB136の情報と合致した、即ち盗難車である場合に、Webア
プリケーションソフト133が盗難届DB136の情報からこれらの情報を取得して格納
する。また一定時間毎の移動拠点の住所は、一定時間毎に移動拠点の追跡登録DB137
に追加登録していく。
【0021】
警察DB138には、警察署名、警察署住所、警察署電話番号を含む情報を登録する。
このDBには必要に応じて警察署に関わる他の情報を登録しても良い。上記陸運局サーバ
12から警察署サーバ13に送付されてきた情報が盗難被害(車両の無線ICタグ情報が
不一致)の場合、警察署サーバ13のWebアプリケーションソフト133は警察DB1
38を検索して、送付された車両位置情報と近い住所の警察署情報を抽出し、車載機9に
送信する。
【0022】
図5に盗難車両・偽装ナンバー車両の追跡システムの処理フローを示す。
車両10のエンジン起動時に、無線ICタグリーダ3、演算装置4、制御装置5、メモリ
6、通信装置7、GPS通信装置8に電源が供給される。
【0023】
電源供給時のみに無線ICタグリーダ3が無線ICタグ2の情報を読み取る。
【0024】
読み取った情報は制御装置5に送信され、制御装置5は演算装置4に、前記情報と前記
情報の比較命令を送信する。
【0025】
演算装置4において、無線ICタグ2の情報を比較した結果、一致した場合は一致した
フローの説明を通り進む。一致しなかった場合は、不一致のフローの説明を進む。
<一致した場合>
制御装置5から通信装置7に対して無線ICタグ2の情報を陸運局へ送信するように命
令をだす。通信装置7から無線ICタグ2の情報を陸運局端末11に送付する。陸運局端
末11は無線ICタグ2の情報と一致するデータを探す命令を陸運局サーバ12に送信す
る。陸運局サーバにて一致したデータを警察署サーバ13に送信する。
【0026】
警察署サーバ13は送付データが盗難届DBにあるか検索する。なかった場合は適正な
自動車と判断され処理は終了する。逆に一致するデータがあった場合は、警察署端末14
から車両位置情報の送付依頼を通信装置7に送付する。通信装置7は前記依頼を制御装置
5に送信する。制御装置5はGPS受信装置8に現在の車両位置取得する命令を出す。命
令を受信したGPS受信装置8は車両位置情報を取得し制御装置5に送信する。制御装置
5は通信装置7に車両位置情報を警察署端末14に送付するよう命令する。命令を受けた
通信装置7は車両位置情報を警察署端末14に送付する。
【0027】
警察署端末14は30分間隔で、車両位置情報の送付依頼を出すと共に、登録DBに3
0分間の移動拠点を登録する。
<不一致の場合>
制御装置5からGPS通信装置8に車両位置情報取得命令を出し、通信装置7に警察D
B内容を送信するよう命令を出す。
【0028】
GPS通信装置8は車両位置情報を取得し、制御装置5に車両位置情報を送信する。通
信装置7は警察DB内容を取得し、制御装置5に送信する。
【0029】
制御装置5は取得した車両位置情報と警察DB内容を演算装置4に比較させ、もっとも
近い警察署を選び出すよう命令する。
【0030】
演算装置4では、車両位置情報を比較して「市」「区」まで比較して、最も近い警察署
を選びだし、制御装置5に送信する。
【0031】
制御装置5では、通信装置7から無線ICタグ2の情報を陸運局端末11に送付するよ
う命令を出す。命令を受けた通信装置7は陸運局端末11に無線ICタグ2の情報を送信
する。陸運局端末11は無線ICタグ2の情報をもとに、登録DB126から購入者のレ
コードを探し出す。
【0032】
探し出したレコードを陸運局サーバ12から警察署サーバ13に送信する。
【0033】
警察署サーバ13は盗難届DB136に登録すると共に、被害者に連絡する。
【0034】
警察署サーバ13において、盗難車両、偽装ナンバー車両の移動拠点の追跡登録DB1
37を30分ごとに追跡して登録する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】盗難車両・偽装ナンバー車両の追跡システムの構成図。
【図2】無線ICタグ内に格納する情報の例。
【図3】登録DBの情報例。
【図4】警察署サーバが備えるDBの情報例。
【図5】盗難車両・偽装ナンバー車両の追跡システムの処理フロー。
【符号の説明】
【0036】
1…ナンバープレート、2…無線ICタグ、3…無線ICタグリーダ、4…演算装置、
5…制御装置、6…メモリ、7…通信装置、8…GPS受信機、9…車載機、10…車両
、11…陸運局端末、12…陸運局サーバ、126…登録DB、13…警察署サーバ、1
4…警察署端末、136…盗難届DB、137…移動拠点の追跡登録DB、138…警察
DB。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車載機と陸運局と警察署からなる盗難車両、偽装ナンバー車両の追跡システムにおいて
、車両に搭載している正規のナンバープレートに対応する任意の番号の記憶方法と、正規
のナンバープレートに取り付けられた無線ICタグの任意IDの比較手段と、リアルタイ
ムに車両の現在位置を把握する手段と、車載機側通信機手段を備え、陸運局側では、車載
機より受信した無線ICタグの任意IDと、陸運局DBに登録された、購入者氏名、電話
番号、住所、車両番号のレコードを結びつける手段と、前記レコードを警察署に送付する
手段を備え、警察署側では、盗難届けDBと前記レコードを比較する手段と、車載機より
警察署の住所送信依頼に対応するために警察署DBと情報送信手段を備えたことを特徴と
する盗難車両、偽装ナンバー車両の追跡システム。
【請求項2】
前記車載機のナンバープレートに付けられた無線ICタグの任意IDを無線ICタグリ
ーダにより読み取り、比較する手段の装備を特徴とする請求項1記載の盗難車両、偽装ナ
ンバー車両の追跡システム。
【請求項3】
前記車載機にリアルタイムで車両の現在位置を把握する手段を備えたことを特徴とする
盗難車両、偽装ナンバー車両の追跡システム。
【請求項4】
陸運局側では、車載機より受信した無線ICタグの任意IDと、陸運局DBに登録され
た、購入者氏名、電話番号、住所、車両番号のレコードを結びつける手段と前記レコード
を警察署に送付する手段を備えたことを特徴とする盗難車両、偽装ナンバー車両の追跡シ
ステム。
【請求項5】
警察署側では、盗難届DBと前記レコードを比較する手段と、車載機より警察署の住所
送信依頼に対応するために警察署DBと情報送信手段を備えたことを特徴とする盗難車両
、偽装ナンバー車両の追跡システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−110327(P2009−110327A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−282631(P2007−282631)
【出願日】平成19年10月31日(2007.10.31)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】