説明

直動案内ユニット

【課題】 この直動案内ユニットは,潤滑のメンテナンスフリーを達成し,小形で高負荷容量であって摺動を滑らかにして高速摺動を達成し,高タクトヘの対応を可能にする。
【解決手段】リターン路10は軌道路40の位置よりも斜め上部の位置に形成され,リターン路10と軌道路40との間の距離Sが転動体5の直径の2倍以下に形成され,エンドキャップ4にはケーシング3側の面より突出してリターン路10への接続する部分になるリターン路10の端部部分を形成する接続管27が一体構造に形成され,エンドキャップ4に形成された給油口20から延びる給油路54は接続管27に開口している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は,例えば,長尺な軌道レール及び該軌道レール上を転動体を介して相対移動するスライダから構成されている直動案内ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年,潤滑のメンテナンスフリーな直動案内ユニットが各種の機器の摺動部に多く使用されるようになり,バリエーションの拡大による種々の形式の直動案内ユニットに対して潤滑のメンテナンスフリー仕様の適用が求められている。
【0003】
本出願人は,直動案内ユニットとして方向転換路とリターン路とを接続管部で連通したものを開発した。該直動案内ユニットは,ケーシングに形成された挿通孔にリターン路部材と,前記リターン路部材の両端にスペーサの接続管部及びエンドキャップの接続管部とを配設し,両接続管部から成る接続管が方向転換路とリターン路とを良好に接続し,転動体が無限循環路をスムースに転走するように構成されている。また,リターン路を形成するリターン路部材は潤滑剤を担持できる多孔質構造を有する焼結樹脂で形成され,転動体に潤滑剤を供給し続けるように構成されている(例えば,特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−90338号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら,上記直動案内ユニットでは,リターン路は,スライダの袖部に負荷軌道路と平行で水平外側位置に形成されており,スライダの幅が大きい形に形成されていた。そこで,直動案内ユニットとして,近年,従来の転動体の直径よりも大きい転動体を使用し,高負荷容量に対応できる小形の直動案内ユニットに構成されているが,このような小形の直動案内ユニットに対しても潤滑のメンテナンスフリー仕様で給油が可能なものが要求されるようになった。
【0005】
この発明の目的は,上記の課題を解決することであり,従来の小形で高負荷容量の形式であるものに対して,潤滑のメンテナンスフリー仕様を達成したものであり,特に,エンドキャップの構成に工夫を加えることによって,小形で高負荷容量のものに構成し,リターン路を潤滑油供給部材でなるパイプで形成し,より摺動を滑らかにして高速摺動を達成し,高タクトヘの対応を可能なものとし,潤滑剤の漏れがなく,給油が確実に行える直動案内ユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は,長手方向に第1軌道溝が形成された軌道レール及び前記軌道レールに対して相対摺動自在なスライダから成り,前記スライダは,前記第1軌道溝に対向して第2軌道溝が形成され且つ前記第1と第2軌道溝との間に形成された軌道路に隔置して延びる一対のリターン路が形成されたケーシング,前記ケーシングの両端面に取り付けられ且つ前記軌道路と前記リターン路とを連通する方向転換路が形成されたエンドキャップ,並びに前記軌道路,前記リターン路,及び前記方向転換路で構成される循環路を転走する複数の転動体を有する直動案内ユニットにおいて,
前記リターン路は前記軌道路の位置よりも斜め上部の位置に形成され,前記リターン路と前記軌道路との間の距離は前記転動体の直径の2倍以下に形成され,
前記エンドキャップには前記ケーシング側へ突出して前記リターン路へ接続し且つ前記リターン路の端部を形成する接続管が一体構造に形成され,前記エンドキャップに形成された給油口から延びる給油路は前記接続管に開口して形成されていることを特徴とする直動案内ユニットに関する。
【0007】
また,前記ケーシングに形成された前記リターン路は,前記ケーシングに形成された嵌挿孔に嵌挿された潤滑剤含浸可能なパイプと前記嵌挿孔の両端に位置する前記エンドキャップの前記接続管とが連通して形成されている。
【0008】
また,前記エンドキャップは,前記方向転換路の外周溝が幅方向両側にそれぞれ形成されたエンドキャップ本体と前記エンドキャップ本体に嵌入され且つ前記方向転換路の内周溝が幅方向両側にそれぞれ形成されたスペーサとで構成されている。
【0009】
前記エンドキャップを構成する前記エンドキャップ本体は,前記方向転換路を構成する前記外周溝を形成する一対の第1方向転換路部,前記第1方向転換路部に連通して前記リターン路の一部を形成する前記接続管を構成する一対の第1接続管部,及び前記第1方向転換路部を互いに連繋すると共に前記第1接続管部を互いに連繋する上部から構成されている。
【0010】
前記エンドキャップを構成する前記スペーサは,前記方向転換路を前記第1方向転換路部と共働して構成する前記内周溝を形成する一対の第2方向転換路部,前記第2方向転換路部に連通して前記リターン路の一部を形成する前記接続管を前記第1接続管部と共働して構成する一対の第2接続管部,及び前記第2方向転換路部を互いに連繋すると共に前記第2接続管部を互いに連繋するブリッジ部から構成されている。
【0011】
また,この直動案内ユニットは,前記エンドキャップ本体に形成された嵌合凹部に前記スペーサの前記ブリッジ部が嵌入し,前記エンドキャップ本体の前記嵌合凹部に接して形成された嵌合凹状段部に前記スペーサの前記第2方向転換路部が嵌入し,前記スペーサは前記エンドキャップ本体に位置決めして配設されている。
【0012】
また,この直動案内ユニットにおいて,前記接続管は前記エンドキャップ本体の前記第1接続管部と前記スペーサの前記第2接続管部とがそれぞれ合体して形成され,また,前記スペーサの前記第2接続管部は前記給油路を形成するため前記接続管の半円より大きく形成されている。また,前記スペーサの前記第2接続管部は,前記接続管の全円周の53%〜62%に形成される。
【0013】
この直動案内ユニットにおいて,前記給油口は前記エンドキャップ本体に形成され,前記エンドキャップ本体の前記上部には前記給油口と連通して延びる第1油溝が形成され,前記スペーサの前記ブリッジ部には前記第1油溝に対向する第2油溝が形成され,前記第1油溝と前記第2油溝が合体して前記給油路が形成されている。
【0014】
この直動案内ユニットでは,前記軌道レールは断面矩形状に形成されて前記第1軌道溝が前記軌道レールの長手方向両側面に形成されており,前記スライダは前記軌道レールに跨架して相対摺動自在である。また,前記エンドキャップは,前記ケーシングの色とは異なる色の青色に着色された合成樹脂材から形成されている。
【発明の効果】
【0015】
この直動案内ユニットは,断面矩形状で長手状でなる軌道レールに転動体を介して摺動自在なスライダが跨架しているものであり,スライダはケーシングの両端に方向転換路を有するエンドキャップを配設され,方向転換路は軌道レール及びケーシングの軌道構間に形成された軌道路と軌道路に平行にケーシングに形成されたリターン路とを連通し,特に,軌道路中心とリターン路中心との間の距離が転動体直径の2倍以下の小さな構成であり,更に,リターン路の位置を軌道路よりも斜め上部に配設して幅を小さく構成した狭隘形の構造に構成されている。この直動案内ユニットは,特に,軌道路とリターン路とが接近してエンドキャップに形成した方向転換路の形成スペースが小さいながらも給油孔から給油される潤滑剤を確実に給油できるように構成されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下,図面を参照して,この発明による直動案内ユニットの実施例を説明する。この発明による直動案内ユニットは,本出願人に係る前掲特開2003−90338号公報に開示された直動案内ユニットを改善したものであり,ボールの転動体5を従来のものより大きく形成して高負荷容量に構成し,リターン路をケーシング3の中心側へ形成して狭隘タイプに形成して小形の構造に構成し,エンドキャップ4に設けた接続管27をケーシング3の嵌挿孔9に嵌挿してパイプ6に連通させて転動体5を循環路でスムーズに転走させ,エンドキャップ本体7とスペーサ8とで給油路54を形成して転動体5への給油を確実にしたものになっている。また,ケーシング3に形成された嵌挿孔9に潤滑剤含浸可能なパイプ6が嵌挿され,潤滑のメンテナンスフリーを達成した構造に構成されている。
【0017】
図1〜図3に示すように,この直動案内ユニットは,長手方向両側面48に軌道溝11が形成された断面矩形状で長手状の軌道レール1に転動体5を介してスライダ2が摺動自在に跨架したものである。軌道レール1は,ベース,機台,他の部材等の機器に軌道レール1を取り付けるため,取付け用孔17が形成されている。スライダ2は,ワーク,他の部材等をスライダ2に取り付けるため,取付け用ねじ孔18が形成されている。スライダ2は,軌道溝11に対向する軌道溝12と軌道溝12に平行に延びるリターン路10が形成されたケーシング3,ケーシング3の両端に配設された方向転換路30を有するエンドキャップ4,エンドキャップ4の端面に配設されたエンドシール14,及び軌道レール1に形成された軌道溝11とケーシング3の軌道溝12とで形成された軌道路40を転動する転動体5から構成されている。エンドキャップ4とエンドシール14とは,それらに形成された通孔23に固定ねじ55を通してケーシング3のねじ穴22に螺入することによって,ケーシング3に固定される。ケーシング3は,幅方向両側の一対の袖部16とそれらを連繋する上部15とから下面側が凹部46に形成されている。また,エンドキャップ4は,ケーシング3の袖部16に対応する一対の袖部52とそれらを連繋する上部51とから下面側が凹部47に形成されている。スライダ2は,軌道レール1にケーシング3の凹部46とエンドキャップ4の凹部47とが跨がって摺動自在に組み込まれている。
【0018】
この直動案内ユニットは,上記の構成において,特に,軌道路40の中心OK とリターン路10の中心OR との間の距離Sが転動体5の直径の2倍以下の小さなものに形成され,更に,リターン路10の位置を軌道路40よりも斜め上部に配設して幅方向の長さを小さく構成した狭隘形の構造に構成されていることを特徴としている。更に,この直動案内ユニットは,図2に示すように,軌道路40の中心OK ,リターン路の中心OR ,中心間距離Sとして,中心間距離Sは,転動体5の直径の2倍以下であり,この実施例でば,Dwを転動体直径とすると,S=1.84Dwに構成されている。リターン路10は,軌道路40の位置よりも中心側へ傾く斜め上部の位置でケーシング3の上面49側,言い換えれば,他の機器(図示せず)をケーシング3に取り付けるための取付面側に偏倚して形成されている。従って,スライダ2は,幅方向に限りなく小さな形状に構成でき,それによってスライダ2そのものがコンパクトになって小形なものに構成されている。
【0019】
また,この直動案内ユニットは,潤滑のメンテナンスフリーの仕様でなり,ケーシング3の嵌挿孔9に潤滑剤を含浸できるパイブ6が挿入され,パイプ6の内壁,言い換えれば通し孔がリターン路10に形成され,具体的には,リターン路10の主要部分である中央部分に形成されたものになっている。
【0020】
パイプ6は,多孔質構造の焼結樹脂から構成されている。パイプ6は,例えば,超高分子量ポリエチレン等の合成樹脂微粒子を加熱成形して押し固めた状態で多孔質構造に形成されたものになっており,自体が強度を有し,高精度で耐摩耗性にも優れ,多孔構造の目詰まりも生じることなく,潤滑剤の吸収,保持,及び供給に優れたものになっている。従って,パイプ6内のリターン路10を通過する転動体5に潤滑剤を長期にわたって供給できるものになっている。
【0021】
図4〜図6に示すように,エンドキャップ4は,ケーシング3の両端面50に取り付けられ且つ軌道路40とリターン路10とを連通する方向転換路30が幅方向両側に形成され,リターン路10へ接続する部分が背面32より突出して接続管27が一体構造に形成され,ケーシング3の嵌挿孔9の両端部にそれぞれ嵌挿して配設されるものになっている。図14に示すように,ケーシング3の嵌挿孔9には,パイプ6とパイプ6の両端にエンドキャップ4の接続管27が連通して配設され,パイプ6と接続管27との内径孔がリターン路10に形成される。接続管27の長さdは,エンドキャップ4の背面32から転動体5の直径Dwの半分以上,この実施例では,0.56Dwに長く形成されており,転動体5が接続管27をスムーズに転走するように形成されている。
【0022】
エンドキャップ4は,軌道路40側になるエンドキャップ4の凹部47の内側へと突出しているすくい爪25が形成され,すくい爪25が軌道レール1の軌道溝11に嵌入して軌道路40と方向転換路30とを連通し,転動体5を滑らかに案内するものになっている。エンドキャップ4の中央には,潤滑剤を供給するために,グリースニップル19等を取り付けるねじ穴21,及びねじ穴21に続き給油口20が形成されている。エンドキャップ4の正面には,保持バンド13を係止するバンド溝24が形成されている。また,エンドキャップ4は,合成樹脂製でなり,例えば,青色(例えば,アクアブルーと呼ぶ)に着色されており,潤滑のメンテナンスフリーと共に高精度な摺動可能なものを,他の製品との区別が明確になるように形成されている。
【0023】
図7及び図8に示すように,エンドキャップ4におけるエンドキャップ本体7には,幅方向両側に方向転換路30を構成する方向転換路部38Eに外周溝35が形成されている。方向転換路30は,転動体5を軌道路40の中心OK からリターン路10の中心OR へ,又はリターン路10の中心OR から軌道路40の中心OK へ180°半円弧状に案内するものになり,方向転換路部38Eに形成された外周溝35は,半円弧状でなる方向転換路30の外周側部分になり,凹曲面凹円弧状の形状に形成されている。また,エンドキャップ本体7には,スペーサ8を嵌入する嵌合凹部33及び嵌合凹状段部34が形成されている。嵌合凹部33及び嵌合凹状段部34は,エンドキャップ本体7の背面32,言い換えれば,ケーシング3の端面50への設置面と,スペーサ8の背面32とが面一になる深さに形成されている。エンドキャップ本体7に形成された嵌合凹状段部34は,エンドキャップ本体7に形成された嵌合凹部33に接して形成され,しかも嵌合凹部33よりも深い位置まで切り下がって段部に形成されている。エンドキャップ4は,エンドキャップ本体7の嵌合凹部33にスペーサ8のブリッジ部36が嵌合し,エンドキャップ本体7の嵌合凹状段部34にスペーサ8の接続管部37Sに対応して反対側に突出する方向転換路部38Sを構成する突出部53が嵌合し,それによってスペーサ8がエンドキャップ本体7に位置決めされてフィット状態に嵌合して組み込まれる。また,突出部53は,方向転換路30を形成する方向転換路部38Sとなって内周溝41の壁面を構成している。
【0024】
また,エンドキャップ本体7に形成された嵌合凹部33には,中央の給油孔即ち給油口20から延びて方向転換路30のリターン路10側の接続管部28に隣接した位置の給油路部37Eに開口する油溝42が形成されている。また,エンドキャップ本体7には,嵌合凹部に接して,方向転換路30の両側にスペーサ8の方向転換路部38Sが嵌入する嵌合凹状段部34が形成されている。エンドキャップ本体7には,背面32より突出し,外周溝35に連通して接続管27の構成部分になる接続管部28が形成されている。接続管部28は,給油路部37Eを形成するために,接続管27の半円より小さく形成されている。エンドキャップ4(具体的には,エンドキャップ本体7)の下面には,ケーシング3の下面及びエンドキャップ4の下面と軌道レール1との隙間をシールするため下面シール(図示無し)を取り付けるためのフック26が形成されている。
【0025】
図9及び図13に示すように,スペーサ8は,幅方向両側に設けられた方向転換路30を構成するための方向転換路部38S,及び各々の方向転換路部38Sを掛け渡すように連結したブリッジ部36から構成されている。スペーサ8の方向転換路部38Sには,エンドキャップ本体7の外周溝35と対向して方向転換路30の内周側部分になる凹曲面で凸状円弧の内周溝41が形成されている。スペーサ8の方向転換路部38Sは,ブリッジ部36よりも凸状に突出して突出部53に形成されている。スペーサ8には,背面32より突出し,内周溝41に連通して接続管27の構成部分になる接続管部29が形成されている。スペーサ8の接続管部29は,給油路部37Sを形成するために,半円より大きく,この実施例では円周の略62%の円弧に形成されている。スペーサ8の接続管部29は,エンドキャップ4の大きさ等を考慮して,具体的には,接続管27の円周の53〜62%の円弧で形成され,それによって転動体5の高速循環にも影響ない範囲に設定される。スペーサ8のブリッジ部36には,エンドキャップ本体7の給油孔即ち給油口20及びエンドキャップ本体7の油溝42に対向して油溝43が形成されている。スペーサ8の油溝43は,方向転換路部38Sに隣接して給油路部37Sとして接続管部29に開口している。また,エンドキャップ4に形成される方向転換路30は,エンドキャップ本体7にスペーサ8が嵌入して合体することによって,エンドキャップ本体7の外周溝35とスペーサ8の内周溝41とが整合して構成されている。また,エンドキャップ4に形成される接続管27は,エンドキャップ本体7にスペーサ8が嵌入して合体してエンドキャップ本体7の接続管部28とスペーサ8の接続管部29とが整合して構成されている。
【0026】
この直動案内ユニットは,上記のように構成されており,スライダ2について,スペーサ8はエンドキャップ本体7の嵌合凹部33に嵌入してエンドキャップ4を構成し,エンドキャップ本体7の外周溝35とスペーサ8の内周溝41とが合体して方向転換路30が形成され,更に,エンドキャップ本体7の接続管部28とスペーサ8の接続管部29とが合体して円筒状の接続管27が形成され,接続管27の内面がリターン路10の端部になるリターン路部31を形成している。リターン路部31は,エンドキャップ本体8の接続管部28の内面39Eとスペーサ8の接続管部29の内面39Sとが整合することによって形成されている。図13には,スペーサ8に形成された内周溝41の底面44及び方向転換路30の中心軌跡45が示されている。
【0027】
また,エンドキャップ本体7の油溝42とスペーサ8の油溝43とが合体して給油路54が形成されている。給油路54は,給油口20から接続管27に開口,この実施例では,方向転換路30とリターン路10との接続部に開口してなり,潤滑剤の漏れがなく確実に給油できるものになっている。給油口20から給油された潤滑剤は,油溝42と油溝43との整合で形成される給油路54を通って接続管27の開口部から出て,方向転換路30,リターン路10,及び転動体5に塗布され,潤滑剤が塗布された転動体5が軌道路40に転走して軌道路40に供給される。また,潤滑剤が塗布された転動体5がリターン路10を転走することによって,リターン路10を形成する多孔質構造のパイプ6に余分な潤滑剤が吸収され,貯留し長期にわたり潤滑剤を供給できるものになっている。また,スペーサ8の方向転換路部38Sは,エンドキャップ本体7の嵌合凹状段部34に嵌合される。更に,方向転換路30は,図13に示すように,図10のE矢視で見て,方向転換路30の中心軌跡45は,軌道路40及びリターン路10への入口部分はカーブがゆるく,その入口部分から奥にカーブを急激に変化した複合カーブに形成され,軌道路40とリターン路10との間の距離Sが小さいにもかかわらず,転動体5の方向転換をスムースに構成している。また,ブリッジ部36は,外形が台形状に形成され,省スペースで成形し易いものになっている。
【0028】
この直動案内ユニットは,上記のように構成されているので,小形で高負荷容量の直動案内ユニットに構成され,リターン路10を潤滑油供給部材でなるパイプ6で形成し,より摺動を滑らかにして高速摺動及び高タクトヘの対応を可能なものとし,潤滑剤の漏れがなく給油が確実に行えるものである。この直動案内ユニットは,軌道路40とリターン路10とが接近して方向転換路30の形成スペースが小さいながらも給油口20から給油される潤滑剤を確実に給油できるように構成したものになっている。
【産業上の利用可能性】
【0029】
この発明による直動案内ユニットは,測定・検査装置,医療機器,マイクロマシーン,各種の組立装置,半導体製造装置等の各種の機械装置の摺動部に組み込まれて使用される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】この発明による直動案内ユニットの実施例を示す部分断面を含む斜視図である。
【図2】図1の直動案内ユニットを構成するスライダにおけるケーシングを示し,ケーシングの嵌挿孔にリターン路を形成するパイプが挿通して配設されている状態を示す正面図である。
【図3】図2のケーシングを示す側面図である。
【図4】図1の直動案内ユニットを構成するスライダにおけるエンドキャップを示す正面図である。
【図5】図4のエンドキャップを示し,エンドキャップ本体にスペーサが嵌合された状態を示す背面図である。
【図6】図5のエンドキャップを示す側面図である。
【図7】図5に示すエンドキャップからスペーサを取り外したエンドキャップ本体を示す背面図である。
【図8】図7のエンドキャップ本体のA−A断面を示す断面図である。
【図9】図5に示すエンドキャップから取り外したスペーサを示す背面図である。
【図10】図9のスペーサを示す正面図である。
【図11】図10のスペーサを示す平面図である。
【図12】図10のスペーサのB−B断面を示す断面図である。
【図13】図10のスペーサのE矢視を示す側面図である。
【図14】図1の直動案内ユニットを構成するスライダについて,ケーシングとエンドキャップとの組み立て状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0031】
1 軌道レール
2 スライダ
3 ケーシング
4 エンドキャップ
5 転動体
6 パイプ
7 エンドキャップ本体
8 スペーサ
9 嵌挿孔
10 リターン路
11 軌道溝(第1軌道溝)
12 軌道溝(第2軌道溝)
20 給油口
27 接続管
28 接続管部(第1接続管部)
29 接続管部(第2接続管部)
30 方向転換路
32 背面
33 嵌合凹部
34 嵌合凹状段部
35 外周溝
36 ブリッジ部
37E 給油路部(第1給油路部)
37S 給油路部(第2給油路部)
38E 方向転換路部(第1方向転換路部)
38S 方向転換路部(第2方向転換路部)
40 軌道路
41 内周溝
42 油溝(第1油溝)
43 油溝(第2油溝)
48 側面
50 端面
51 上部
54 給油路
Dw 転動体直径
OR リターン路中心
OK 軌道路中心
S OR とOK との間の距離
d 接続管の長さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に第1軌道溝が形成された軌道レール及び前記軌道レールに対して相対摺動自在なスライダから成り,前記スライダは,前記第1軌道溝に対向して第2軌道溝が形成され且つ前記第1と第2軌道溝との間に形成された軌道路に隔置して延びる一対のリターン路が形成されたケーシング,前記ケーシングの両端面に取り付けられ且つ前記軌道路と前記リターン路とを連通する方向転換路が形成されたエンドキャップ,並びに前記軌道路,前記リターン路,及び前記方向転換路で構成される循環路を転走する複数の転動体を有する直動案内ユニットにおいて,
前記リターン路は前記軌道路の位置よりも斜め上部の位置に形成され,前記リターン路と前記軌道路との間の距離は前記転動体の直径の2倍以下に形成され,
前記エンドキャップには前記ケーシング側へ突出して前記リターン路へ接続し且つ前記リターン路の端部を形成する接続管が一体構造に形成され,前記エンドキャップに形成された給油口から延びる給油路は前記接続管に開口して形成されていることを特徴とする直動案内ユニット。
【請求項2】
前記リターン路は,前記ケーシングに形成された嵌挿孔に嵌挿された潤滑剤含浸可能なパイプと前記嵌挿孔の両端に位置する前記エンドキャップの前記接続管とが連通して形成されていることを特徴とする請求項1に記載の直動案内ユニット。
【請求項3】
前記エンドキャップは,前記方向転換路の外周溝が幅方向両側にそれぞれ形成されたエンドキャップ本体と前記エンドキャップ本体に嵌入され且つ前記方向転換路の内周溝が幅方向両側にそれぞれ形成されたスペーサとで構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の直動案内ユニット。
【請求項4】
前記エンドキャップ本体は,前記方向転換路を構成する前記外周溝を形成する一対の第1方向転換路部,前記第1方向転換路部に連通して前記リターン路の一部を形成する前記接続管を構成する一対の第1接続管部,及び前記第1方向転換路部を互いに連繋すると共に前記第1接続管部を互いに連繋する上部から構成されていることを特徴とする請求項3に記載の直動案内ユニット。
【請求項5】
前記スペーサは,前記方向転換路を前記第1方向転換路部と共働して構成する前記内周溝を形成する一対の第2方向転換路部,前記第2方向転換路部に連通して前記リターン路の一部を形成する前記接続管を前記第1接続管部と共働して構成する一対の第2接続管部,及び前記第2方向転換路部を互いに連繋すると共に前記第2接続管部を互いに連繋するブリッジ部から構成されていることを特徴とする請求項4に記載の直動案内ユニット。
【請求項6】
前記エンドキャップ本体に形成された嵌合凹部に前記スペーサの前記ブリッジ部が嵌入し,前記エンドキャップ本体の前記嵌合凹部に接して形成された嵌合凹状段部に前記スペーサの前記第2方向転換路部が嵌入し,前記スペーサは前記エンドキャップ本体に位置決めして配設されていることを特徴とする請求項5に記載の直動案内ユニット。
【請求項7】
前記接続管は前記エンドキャップ本体の前記第1接続管部と前記スペーサの前記第2接続管部とがそれぞれ合体して形成され,前記スペーサの前記第2接続管部は前記給油路を形成するため前記接続管の半円より大きく形成されていることを特徴とする請求項5又は6に記載の直動案内ユニット。
【請求項8】
前記スペーサの前記第2接続管部は,前記接続管の全円周の53%〜62%に形成されることを特徴とする請求項7に記載の直動案内ユニット。
【請求項9】
前記給油口は前記エンドキャップ本体に形成され,前記エンドキャップ本体の前記上部には前記給油口と連通して延びる第1油溝が形成され,前記スペーサの前記ブリッジ部には前記第1油溝に対向する第2油溝が形成され,前記第1油溝と前記第2油溝が合体して前記給油路が形成されていることを特徴とする請求項4〜8のいずれか1項に記載の直動案内ユニット。
【請求項10】
前記軌道レールは断面矩形状に形成されて前記第1軌道溝が前記軌道レールの長手方向両側面に形成されており,前記スライダは前記軌道レールに跨架して相対摺動自在であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の直動案内ユニット。
【請求項11】
前記エンドキャップは,前記ケーシングの色とは異なる色の青色に着色された合成樹脂材から形成されていることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の直動案内ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−32724(P2007−32724A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−217550(P2005−217550)
【出願日】平成17年7月27日(2005.7.27)
【出願人】(000229335)日本トムソン株式会社 (96)
【Fターム(参考)】