直進型及び回転型ロボットの制御装置
【課題】高精度な位置決めが要求される工作機械等において、比較的単純な構造を保ちつつ、迅速かつ高精度な位置決めを実現する直進型及び回転型ロボットの制御装置を提供する。
【解決手段】H無限大制御理論に基づく制御系であって、制御器は数式的に以下の3つの部分に分かれる。1)モータの速度が定常誤差なく追従できるように設計された速度制御器。2)速度制御ループを含めたモータに対して設計されたH∞角度制御器。3)ゲイン可変のフィードフォーワード制御器。制御対象の伝達関数に積分要素が含まれた場合における適切な制御が可能となる。
【解決手段】H無限大制御理論に基づく制御系であって、制御器は数式的に以下の3つの部分に分かれる。1)モータの速度が定常誤差なく追従できるように設計された速度制御器。2)速度制御ループを含めたモータに対して設計されたH∞角度制御器。3)ゲイン可変のフィードフォーワード制御器。制御対象の伝達関数に積分要素が含まれた場合における適切な制御が可能となる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高精度な位置決めが要求される工作機械等において、可動体の位置決め制御を行う直進型及び回転型ロボットの制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、試料を載置したステージテーブルを、2次元平面内で互いに直交するX方向およびY方向に沿って移動させる移動ステージ装置(X−Yステージ装置ともいう)は、各種工作機械等に利用されている。2次元平面内を移動させる移動ステージ装置では、X軸制御機構、Y軸制御機構が必要であり、これら2軸を制御する際に互いの軸方向のクロストーク(一方の軸を変位させた時に他方の軸が僅かに変位する現象)を回避する必要がある。そのため、従来、X軸ステージとY軸ステージとを積み重ねた2段構造にすることがなされている。X軸ステージとY軸ステージとを積み重ねた2段構造の装置では、下側のステージは上側のステージの重量を支持することとなり、移動動作に大きな負荷が掛かることとなって、最高移動速度を低く抑えたり、駆動機構を大型にしたりする必要がある等の問題があり、時間当たりの処理量に大きな制約を生じたり、機械のコストが過大になるという問題を生じていた。
【0003】
また、例えば、2軸フライス盤などのステージテーブル上の対象物を加工する装置では、刃の切り込み深さ、移動速度、加工対象物の材質などにより負荷が絶えず変化するという問題がある。
【0004】
このように、ステージ装置で様々な仕事を正確、迅速に行う為には、ステージの移動距離を要求される速度で精密に制御しなければならない。しかし、作業目的に応じて、移動ピッチ、負荷の重量、機械の固体差など様々な要因が変化する。また機械の組み合わせ使用の場合、外乱トルクも発生する。これらに対して、従来の制御法では一律にひとつの制御則で全ての状況に対応することができない。そのために、上記の要因が変化するたび、制御パラメータの調節が必要不可欠である。また、作業環境による機械の振動モードの変化、外乱トルクなどの影響も制御精度の向上を妨げる。
【0005】
こうした問題に対し、従来、機械的構造を改良して上記の問題を解消しようとする試みがなされてきた。例えば、特許文献1(特開2002−22868号公報)では、ベースと外枠フレーム(ステージ)との間に中間部材(中間フレーム)を配設し、さらに、ベースと中間部材との間にX方向に変位可能な弾性ヒンジを配置し、中間部材と外枠フレーム(ステージ)との間にY方向に変位可能な弾性ヒンジを配置し、コンパクトな構成で、高速かつ高精度の制御を可能としたX−Yステージの支持構造が開示されている(特許文献1参照)。これによれば、X方向及びY方向へ外枠フレーム(ステージ)を駆動するリニアモータなどの適宜の駆動手段を設けることにより、外枠フレーム(ステージ)をX−Y平面内における任意の方向へ微小駆動することができる。
【0006】
特許文献1に記載されたX−Yステージの支持構造は、弾性ヒンジを用いるとともに、ベースに対して、中間部材や弾性ヒンジが左右前後対称あるいは点対称となるように取り付けられており、その結果、Z方向、X軸回転(θx)、Y軸回転(θy)、Z軸回転(θz)については、「剛体」として機能するようにして、クロストークが発生しないようにしてある。
【0007】
一方、X方向及びY方向へ外枠フレームを駆動するリニアモータなどの適宜の駆動手段を設けることが記載されているが、これら駆動手段の外枠フレームへの取り付け位置についても、外枠フレームの重量バランスがX軸方向に左右対称、Y軸方向に前後対称になるように配慮して取り付けることが、クロストークを生じないようにするためには必要となる。しかしながら、実際には、X方向に1つの駆動手段が左右いずれか一辺に取り付けられ、Y方向に1つの駆動手段が前後いずれか一辺に取り付けられることにより重量バランスが非対称になる。駆動手段が非対称に取り付けられる結果、X方向またはY方向のリニアモータが駆動されると、Z軸回転が生じてクロストークが発生することとなる。
【0008】
【特許文献1】特開2002−22868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、高精度な位置決めが要求される工作機械等において、比較的単純な構造を保ちつつ、迅速かつ高精度な位置決めを実現する直進型ロボットの制御装置を提供することを目的とする。なお、本発明の動作原理は、角度制御においても同様に適用できる。従って、本発明は比較的単純な構造を保ちつつ、迅速かつ高精度な位置決めを実現する回転型ロボットの制御を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明では、上記の課題を達成するために、H無限大制御理論に基づく制御系の新しい形態を提案する。
従来においても、H無限大制御理論に基づく制御は考えられていた。図5に示すのがそのような制御システムの構成である。ここで、制御器は数式的に以下の3つの部分に分かれる。
1)モータの速度が定常誤差なく追従できるように設計された速度制御器
2)速度制御ループを含めたモータに対して設計されたH∞角度制御器
3)ゲイン可変のフィードフォーワード制御器
【0011】
まず、上述諸問題を解決するために、達成すべき制御性能を整理する。
(i)基本性能:目標位置信号に対する定常誤差を解消する。ステップ外乱トルクに対する定常誤差を解消する。
(ii)ロバスト性:負荷の重量、機械の固体差、振動モータ変化があっても一定の制御性能が維持できる。
(ii)追従性:応答プロセスの中に、オーバーシュートと応答遅れを最
小限に抑える。
(iv)H無限大制御器の設計方法:上述制御性能を達成するH無限大制御器の設計方式を確立する。
【0012】
上述(i)は制御系の基本性能である。これに対して、制御系の構造上、位置制御ループが1型(一つの積分)であれば、目標位置信号に対する定常誤差零の要求を満たすことができる。一般にモータの運動特性より、モータトルクから位置までの伝達関数には構造的に積分要素が含まれるので、位置制御器(下で述べるH∞制御器)でシステムが安定であれば、要求を満たすことができる。外乱トルクに対しても定常誤差が零であるためには、位置制御ループを2型(2個の積分)にすることもあるが、応答特性に大きなオーバーシュートを引き起こす可能性が大きい。そのためここでは、速度制御ループを位置制御ループの内部に構成することで問題を解決する。その速度制御ループに、一つの積分を含むような速度制御(例えばPI制御)であればよい。
【0013】
上述(ii)は、制御対象と環境の変動に対するロバスト的性質である。このために、H∞制御理論に基づき、ロバスト安定性とロバストパフォーマンスを持たせるH∞制御器を設計する。すなわち、速度制御ループ(閉ループ)を含んだモータを対象に、位置制御器として設計し、その出力は速度ループへの目標信号として与える。これによって、システム全体のロバスト安定性が保証され、ロバストパフォーマンスも実現できる。
【0014】
上述(iii)は、主にロボット動作中の加速、減速時に起こりやすい応答遅れ、またはオーバーシュートに対する抑制性能である。これに対して、フィードフォーワード(FF)制御器を設置し、目標信号と測定したモータ速度に基づき、モータの速度制御ループへ目標信号の補正量として与える。フィードフォーワード制御器のゲインは制御対象の速度変化に応じて変化(速度が上がるとき大きく、下がるとき小さく)するように設計し、ある上限を超えない範囲で、補正された目標速度信号を与えることによって、制御対象の加速時の遅れと減速時のオーバーシュートを抑えることができる。
【0015】
最後に、(iv)はH∞制御器の設計方法に関する技術である。制御対象の伝達関数に積分要素が含まれたとき、H無限大制御問題の標準形の条件を満たさなくなり、解が存在しない、即ち、H無限大制御器が設計できないことが知られている。本発明者らは、このような難点を回避するための方法を提案する。すなわち、本発明には以下の装置が含まれる。
【0016】
[1]ベースに対して移動可能に支持され、位置制御装置による制御の下で、対象物を少なくとも1つの駆動手段により1軸以上の方向に移動させる直進型ロボットの制御装置において、
前記位置制御装置が、
前記制御対象に駆動信号を出力する速度制御器と、
前記制御対象の速度情報を前記速度制御器に帰還させる速度フィードバック手段と、 前記制御対象と、前記速度制御器と、前記速度フィードバック手段とを含み、さらに、前記速度制御器が1つの積分を含む1型の速度制御系を一般化プラントとし、目標位置指令と前記制御対象の駆動位置情報とに基づいて速度指令を出力するH無限大制御器と、前記制御対象の駆動位置情報を前記H無限大制御器に帰還させる位置フィードバック手段と、前記目標位置指令に基づき所定の侶号を出力し、前記H無限大制御器の速度指令の出力に前記所定の信号を加えて前記一般化プラントに入力信号として入力するように設けられたフィードフォワード制御器とを備える、位置制御装置であることを特徴とする直進型ロボットの制御装置。
[2]前記フィードフォワード制御器は、前記制御対象の速度情報に基づいて、前記所定の信号のゲインを変化させるように構成されている、前記1に記載の直進型ロボットの制御装置。
[3]前記フィードフォワード制御器は、前記制御対象が目標位置近傍で前記所定速度から減速を開始した場合に、前記制御対象の所定速度からの速度低下に応じて前記所定の信号のゲインを減少させるように構成されている前記2に記載の直進型ロボットの御制御装置。
[4]駆動装置として互いに直交するX方向およびY方向に駆動するX方向アクチュエータとY方向アクチュエータとを備えた前記1〜3のいずれかに記載の直進型ロボットの制御装置。
[5]ベースに対して移動可能に支持され、角度制御装置による制御の下で、対象物を少なくとも1つの駆動手段により1軸以上の周囲に回転させる回転型ロボットの制御装置において、
前記角度制御装置が、
前記制御対象に駆動信号を出力する角速度制御器と、
前記制御対象の角速度情報を前記角速度制御器に帰還させる角速度フィードバック手段と、前記制御対象と、前記角速度制御器と、前記角速度フィードバック手段とを含み、さらに、前記角速度制御器が1つの積分を含む1型の角速度制御系を一般化プラントとし、目標角度指令と前記制御対象の駆動角度情報とに基づいて角速度指令を出力するH無限大制御器と、前記制御対象の駆動角度情報を前記H無限大制御器に帰還させる角度フィードバック手段と、前記目標角度指令に基づき所定の侶号を出力し、前記H無限大制御器の角度指令の出力に前記所定の信号を加えて前記一般化プラントに入力信号として入力するように設けられたフィードフォワード制御器とを備える、角度制御装置であることを特徴とする回転型ロボットの制御装置。
【発明の効果】
【0017】
本発明の装置によれば、パラメータの切り替えが必要なくなり、かつステップ状外乱に対する定常誤差も無くし、機械の振動を抑制する効果も得られる。また、簡便な構造で迅速かつ高精度な制御が可能になるので、生産性の向上及び製造コストの低減を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明が提案する直進型ロボット制御装置の一般形を示すブロック図である。
【図2】図2は、本発明の直進型ロボット制御装置の一実施態様を示すブロック図である。
【図3】図3は、H無限大制御器を設計するに当たって、上述重み関数W1とW2を含めた一般化システムを示すブロック図である。
【図4】図4は、各制御系における入出力を示す模式図である。
【図5】図5は本発明の第2の実施形態示すブロック図である。
【図6】図6は、フィードフォワード制御器における可変ゲインの一例を示すグラフである。
【図7】図7は本発明の位置制御装置における、目標位置信号rをステップ状変化するときの出力信号yの時間応答曲線である。
【図8】図8は、従来型の位置制御装置における、目標位置信号rをステップ状変化するときの出力信号yの時間応答曲線である。
【図9】図9は、時間[μsec]をとり、目標位置指令rに対する応答(上図:検出位置情報y)及び(下図:偏差ey[rad])を示すグラフである。
【図10】図10は、図9の円Aで示す範囲を拡大したグラフである。
【図11】図11は、図9に示す制御器に対応する実施例において、ノミナルプラントP0(s)(図5参照)が変動した場合の応答を示すグラフである。
【図12】図12はフィードフォワード制御器の出力信号fを速度制御器20(図5参照)の出力信号に加えた比較例(背景技術において説明した特許文献2に対応する比較例)において、ノミナルプラントP0(s)(図5参照)が変動した場合の応答を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明について説明する。なお、本発明において直進型ロボットは、n軸リニア搬送ロボットやn次元プロッタ、n軸フライスなどを含む。ここで、nは1以上の整数であり、好ましくは2及び3である。また、回転型ロボットは、多関節ロボットを含む。これらの位置・角度を同時に制御することもできる。なお、以下の説明において、直進型ロボットの制御装置を単に「位置制御装置」、回転型ロボットの制御装置を単に「回転制御装置」ともいう。
【0020】
図1は、本発明が提案する位置制御装置100の一般形である。
位置制御装置100は、外部から入力された目標信号(目標位置信号又は目標角度信号)rと、エンコーダなど制御対象の位置(又は角度)信号に基づき、制御対象への駆動信号を出力するように構成される。また、位置制御装置100はサーボモータ200を駆動する。
サーボモータ200は、例えば、ステージ装置の1つの軸上でステージや搬送物を移動させるためのものであり、外部から入力された目標信号は、例えば、ステージ装置における目標位置であり、制御対象の位置(又は角度)は、例えば、計測器やセンサなどによる直接または間接の測定値である。
【0021】
図2は、本発明の制御装置の第1の実施態様である(第1の実施態様は位置制御装置であり、第2の実施態様は回転制御装置である。以下の説明では、基本的に第1の実施態様について説明するが、第2の実施態様は、位置を角度、速度を角速度で読み替えればよい(必要であればこれらに従い他の文言も読み替える))。
【0022】
位置制御装置100は一つの積分を含む(1型)速度制御器20と、H無限大制御器10とFF制御器30との3つの制御器を有する。
【0023】
速度制御器20はモータの速度vが目標速度Vrに追従するように設計する。設計に当たっては、モータの駆動トルクTから速度vまでの伝達関数Po(s)を用いて、ステップ目標信号に対して定常誤差なく追従するように設計する。Po(s)は入力信号Tと出力信号vの同定実験データより得られた数値モデルである場合も、物理原理によるモデルである場合も同じである。サーボモータの物理モデルは一般にPo (s)=1/(Js+DL)として、モータと負荷を併せたノミナル(変動しない)特性を表す。ここで、Jはサーボモータ200の慣性モーメントおよびサーボモータ200に駆動される機構の慣性モーメントの換算値の和である。Dは摩擦係数である。このような速度制御器は例えばPI補償器のように一つの積分要素を含めたものでよい。この場合、速度制御器の伝達関数は(As+B)/sとなる。なお、ここで1/sは積分要素である。
【0024】
続いてH無限大制御器10を位置(角度)制御器として設計する。この場合の制御対象は、速度制御器を含めた速度閉ループと速度情報vを位置(角度)情報に変換する積分要素1/sと直列結合した拡大プラントP(s)である。
【0025】
H無限大制御理論においては、拡大したプラントのノミナルな性質だけでなく、不確かさ(負荷変動やモータ個体差によるモデル誤差)と外乱に強いロバスト安定性を持つ制御器K(s)の設計ができる。このために、フィードバックシステムの安定性を満たすと共に、外乱の影響を受けにくいことを評価する感度関数
【数1】
を小さく抑えることと、モデル変動に対するロバスト安定性に関わる相補感度関数
【数2】
を小さく抑えることが必要である。
【0026】
しかし、S+T=1より、上述SとTの両方を自由に小さくすることができないため、異なる周波数領域にSとTをそれぞれ小さくすることで両立を図る。感度を小さくしたい周波数領域(低周波領域)において、その周波数領域に大きな値をとる関数W1(s)を決め、また相補感度関数Tを小さくしたい周波数領域(高周波領域)に大きな値をとる関数W2(s)を決め、
【数3】
となるように制御器K(s)を求める。図3はH無限大制御器を設計するに当たって、上述重み関数W1とW2を含めた一般化システムを示す。
【0027】
重みつき感度関数
【数4】
は図3-1の信号wからZ1までの伝達関数、重みつき相補感度関数
【数5】
は信号wからZ2までの伝達関数となる。図3-1を図3-2のように書き換えると、一般化プラント表現が得る。この一般化プラントに対して、信号wから出力z1及びz2への伝達関数
【数6】
の無限大ノルム
【数7】
が所定の値γより小さく、かつK(s)、P(s)を繋がる閉ループシステムが安定であるように制御器K(s)を求めることによって、ロバスト性を持つ位置制御器が設計される。
【0028】
上述制御器K(s)の設計に当たって、H無限大制御理論による標準問題の解を適用するが、図2に示した拡大プラントPの伝達関数に積分要素1/sを含めているので、図3−2で示す一般化プラントの状態空間表現におけるH無限大標準問題に必要な前提条件
【数8】
を満たさない。このような場合、通常に解が存在しないという判断が出される。本発明はこの問題を回避するため、拡大プラントの伝達関数を
【数9】
と表し、
【数10】
について、積分器を内蔵するH無限大制御器
【数11】
をまず求める。
【0029】
このために、重み関数
【数12】
を
【数13】
のように積分を一つ含むような伝達関数として与える。即ち位置制御ループが安定でかつ
伝達関数
【数14】
の無限大ノルム
【数15】
が所定の値γより小さいという条件を満たすように
【数16】
を求める。この時、求めた
【数17】
は必ず積分が内蔵する。続いて
【数18】
を
【数19】
のように分離し、積分要素
【数20】
を除いた
【数21】
を得る。
【0030】
ここで、
【数22】
であることから、
【数23】
はもとのシステム図2のH無限大制御器となる。
最後に、フィードフォーワード(FF)制御器について説明する。FF制御器の実施形態は2種類可能である。図2は第1の実施形態である。FF制御器30は、目標位置指令により、速度制御器へ、目標速度の補正量fを出力する。この場合、FF制御器30の機能は伝達関数
【数24】
で表す。これによって、応答速度の向上を図る。
【0031】
従来型のFF制御信号は直接制御対象(モータ)へ入力することであるが、その場合は、モータの特性変動の影響を受けやすく、FF制御の効果が低減するという問題点がある。本発明では、FF信号をH無限大制御器の出力信号に加えることによって、モデル誤差の影響を受けずに、FF制御の効果を高めることができる。
【0032】
図5は本発明の第2の実施形態である。FF制御器430はFF制御器30の基に、制御対象の速度信号もフィードバックする。ここでは
【数25】
の係数
【数26】
は一定の上限を設けて、速度信号vによって変化する。すなわち、
【数27】
となる。
【0033】
図6は可変ゲイン
【数28】
のイメージである。これによって、モータ加速時の応答遅れと減速時のオーバーシュートを低減する効果が高められる。
【0034】
具体的な計算・指示はコンピュータなどの計算・指示手段により行い、FF制御その他の制御部の構成要素は、当業者に知られている任意の構成を用いることができる。装置全体の機械的・電気的構成は、例えば、n軸リニア搬送装置であれば、上記制御部を除いて従来のn軸リニア搬送装置と同様の構成を用いることができる。
【0035】
実施例
以下、本発明によるリニア搬送装置について、位置制御装置の効果について説明する。
【0036】
図7は位置制御装置100に基づいた設計した位置制御結果であり、目標位置信号rをステップ状変化するときの出力信号yの時間応答曲線である。図8−1、図8−2に示す従来型制御の結果と明らかな有意差を示している。すなわち、負荷条件を変えたステップ応答性能に関して、従来型では、本発明と同等の応答性を持たせると大きなオーバーシュートを示し、その割合は、負荷が小さいほど大きくなる(図8−1)。また、オーバーシュートを押さえると応答性が悪くなり、その程度は、高負荷ほど大きくなる(図8−2)。
【0037】
次に、図9および図10は、フィードフォーワード効果を確認するために行った実験である。ここで、図9の上側のグラフは、縦軸にサーボモータの出力軸の回転角度[rad]、横軸に時間[μsec]をとり、目標位置指令rに対する応答(検出位置情報y)を示している。また、図9の下側のグラフは、縦軸に目標位置指令rに対する偏差ey[rad]、横軸に時間[μsec]をとり、上側のグラフに対応する各時刻における偏差eyの発生量を示している。図10のグラフは、縦軸と横軸の拡大率が等しくないため、縦に引き伸ばされたグラフとなっている。この実施例は、位置制御装置400(即ちフィードフォワード制御は第2実行態430)を用いた構成である。図9に示すように、サーボモータ200の出力軸の目標位置を回転角度94.25[rad]とし、0〜200[μsec]の加速領域と、200〜600[μsec]の一定角速度領域と、600〜800[μsec]の減速(位置決め)領域を含むように目標位置指令rを入力した例を示している。
【0038】
図9に示すように、目標位置指令rに対する応答は、200〜600[μsec]の一定角速度領域において位置偏差が0となっている。上記のように1型の制御系では、ランプ入力に相当する一定角速度領域において定常偏差が発生する(図4の(d)参照)ので、位置偏差が略0となるという本実施例の結果は、FF制御器430によるゲイン補償によって偏差を減少させていることを示している。また、目標位置(94.25 [rad])近傍(図9の破線で囲まれた領域A)における位置決め挙動を見ると、オーバーシュートも発生していない。詳細には、目標位置(94.25 [rad])近傍の700〜900[μsec]の範囲(図9の破線で囲まれた領域A)を拡大した図10に示すように、サーボモータ200の出力軸の回転角度(実線)が位置指令(破線)に対して、遥かに下回る過減衰の応答を示しながら、約800[μsec]付近で目標位置(94.25 [rad])に偏差0で収束していることが分かる。このような僅かな過減衰を示す特性は、特にオーバーシュートの発生が問題となる産業用ロボットの駆動制御に用いられる位置制御装置の特性としては、望ましい目標追従特性である。以上から、フィードフォワード第2実施形態による位置制御装置400を用いた制御系が位置決め制御において良好な制御特性を示していると言える。
【0039】
更に、図11および図12を参照して、図9および図10に示した実験結果に基づき、ノミナルプラントP0(s)が変動した場合の効果について説明する。
図11は、図9に示した制御器400に対応する実施例において、ノミナルプラントP0(s)(図5参照)が変動した場合の応答を示している。図12はフィードフォワード制御器の出力信号fを速度制御器20(図5参照)の出力信号に加えた比較例(背景技術において説明した特許文献2に対応する比較例)において、ノミナルプラントP0(s)(図5参照)が変動した場合の応答を示している。ここで、図11および図12の上側のグラフは、縦軸にサーボモータの出力軸の回転角度[rad]、横軸に時間[μsec]をとり、目標位置指令rに対する応答(検出位置情報y)を示している。また、図11および図12の下側のグラフは、縦軸に目標位置指令rに対する偏差ey[rad]、横軸に時間[μsec]をとり、上側のグラフに対応する各時刻における偏差eyの発生量を示している。
【0040】
図11に示すように、前述の第2実施形態に対応する実施例では、ノミナルプラントP0(s)が変動した場合においても、200〜600[μsec]の一定角速度領域において位置指令と検出位置との間の位置偏差が0となっている。ここで、図12に示す比較例度領域において定常偏差が発生する(図4の(d)参照)ので、位置偏差が略0となるという本実施例の結果は、FF制御器430によるゲイン補償によって偏差を減少させていることを示している。また、目標位置(94.25 [rad])近傍(図9の破線で囲まれた領域A)における位置決め挙動を見ると、オーバーシュートも発生していない。詳細には、目標位置(94.25 [rad])近傍の700〜900[μsec]の範囲(図9の破線で囲まれた領域A)を拡大した図10に示すように、サーボモータ200の出力軸の回転角度(実線)が位置指令(破線)に対して、遥かに下回る過減衰の応答を示しながら、約800[μsec]付近で目標位置(94.25 [rad])に偏差0で収束していることが分かる。このような僅かな過減衰を示す特性は、特にオーバーシュートの発生が問題となる産業用ロボットの駆動制御に用いられる位置制御装置の特性としては、望ましい目標追従特性である。以上から、位置制御装置400を用いた制御系が位置決め制御において良好な制御特性を示していると言える。
なお、ここでは位置制御について説明したが、角度制御についても同様である。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の直進型及び回転型ロボットの制御装置は、例えば単軸ロボット、多軸ロボット、多関節ロボットに用いることができる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、高精度な位置決めが要求される工作機械等において、可動体の位置決め制御を行う直進型及び回転型ロボットの制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、試料を載置したステージテーブルを、2次元平面内で互いに直交するX方向およびY方向に沿って移動させる移動ステージ装置(X−Yステージ装置ともいう)は、各種工作機械等に利用されている。2次元平面内を移動させる移動ステージ装置では、X軸制御機構、Y軸制御機構が必要であり、これら2軸を制御する際に互いの軸方向のクロストーク(一方の軸を変位させた時に他方の軸が僅かに変位する現象)を回避する必要がある。そのため、従来、X軸ステージとY軸ステージとを積み重ねた2段構造にすることがなされている。X軸ステージとY軸ステージとを積み重ねた2段構造の装置では、下側のステージは上側のステージの重量を支持することとなり、移動動作に大きな負荷が掛かることとなって、最高移動速度を低く抑えたり、駆動機構を大型にしたりする必要がある等の問題があり、時間当たりの処理量に大きな制約を生じたり、機械のコストが過大になるという問題を生じていた。
【0003】
また、例えば、2軸フライス盤などのステージテーブル上の対象物を加工する装置では、刃の切り込み深さ、移動速度、加工対象物の材質などにより負荷が絶えず変化するという問題がある。
【0004】
このように、ステージ装置で様々な仕事を正確、迅速に行う為には、ステージの移動距離を要求される速度で精密に制御しなければならない。しかし、作業目的に応じて、移動ピッチ、負荷の重量、機械の固体差など様々な要因が変化する。また機械の組み合わせ使用の場合、外乱トルクも発生する。これらに対して、従来の制御法では一律にひとつの制御則で全ての状況に対応することができない。そのために、上記の要因が変化するたび、制御パラメータの調節が必要不可欠である。また、作業環境による機械の振動モードの変化、外乱トルクなどの影響も制御精度の向上を妨げる。
【0005】
こうした問題に対し、従来、機械的構造を改良して上記の問題を解消しようとする試みがなされてきた。例えば、特許文献1(特開2002−22868号公報)では、ベースと外枠フレーム(ステージ)との間に中間部材(中間フレーム)を配設し、さらに、ベースと中間部材との間にX方向に変位可能な弾性ヒンジを配置し、中間部材と外枠フレーム(ステージ)との間にY方向に変位可能な弾性ヒンジを配置し、コンパクトな構成で、高速かつ高精度の制御を可能としたX−Yステージの支持構造が開示されている(特許文献1参照)。これによれば、X方向及びY方向へ外枠フレーム(ステージ)を駆動するリニアモータなどの適宜の駆動手段を設けることにより、外枠フレーム(ステージ)をX−Y平面内における任意の方向へ微小駆動することができる。
【0006】
特許文献1に記載されたX−Yステージの支持構造は、弾性ヒンジを用いるとともに、ベースに対して、中間部材や弾性ヒンジが左右前後対称あるいは点対称となるように取り付けられており、その結果、Z方向、X軸回転(θx)、Y軸回転(θy)、Z軸回転(θz)については、「剛体」として機能するようにして、クロストークが発生しないようにしてある。
【0007】
一方、X方向及びY方向へ外枠フレームを駆動するリニアモータなどの適宜の駆動手段を設けることが記載されているが、これら駆動手段の外枠フレームへの取り付け位置についても、外枠フレームの重量バランスがX軸方向に左右対称、Y軸方向に前後対称になるように配慮して取り付けることが、クロストークを生じないようにするためには必要となる。しかしながら、実際には、X方向に1つの駆動手段が左右いずれか一辺に取り付けられ、Y方向に1つの駆動手段が前後いずれか一辺に取り付けられることにより重量バランスが非対称になる。駆動手段が非対称に取り付けられる結果、X方向またはY方向のリニアモータが駆動されると、Z軸回転が生じてクロストークが発生することとなる。
【0008】
【特許文献1】特開2002−22868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、高精度な位置決めが要求される工作機械等において、比較的単純な構造を保ちつつ、迅速かつ高精度な位置決めを実現する直進型ロボットの制御装置を提供することを目的とする。なお、本発明の動作原理は、角度制御においても同様に適用できる。従って、本発明は比較的単純な構造を保ちつつ、迅速かつ高精度な位置決めを実現する回転型ロボットの制御を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明では、上記の課題を達成するために、H無限大制御理論に基づく制御系の新しい形態を提案する。
従来においても、H無限大制御理論に基づく制御は考えられていた。図5に示すのがそのような制御システムの構成である。ここで、制御器は数式的に以下の3つの部分に分かれる。
1)モータの速度が定常誤差なく追従できるように設計された速度制御器
2)速度制御ループを含めたモータに対して設計されたH∞角度制御器
3)ゲイン可変のフィードフォーワード制御器
【0011】
まず、上述諸問題を解決するために、達成すべき制御性能を整理する。
(i)基本性能:目標位置信号に対する定常誤差を解消する。ステップ外乱トルクに対する定常誤差を解消する。
(ii)ロバスト性:負荷の重量、機械の固体差、振動モータ変化があっても一定の制御性能が維持できる。
(ii)追従性:応答プロセスの中に、オーバーシュートと応答遅れを最
小限に抑える。
(iv)H無限大制御器の設計方法:上述制御性能を達成するH無限大制御器の設計方式を確立する。
【0012】
上述(i)は制御系の基本性能である。これに対して、制御系の構造上、位置制御ループが1型(一つの積分)であれば、目標位置信号に対する定常誤差零の要求を満たすことができる。一般にモータの運動特性より、モータトルクから位置までの伝達関数には構造的に積分要素が含まれるので、位置制御器(下で述べるH∞制御器)でシステムが安定であれば、要求を満たすことができる。外乱トルクに対しても定常誤差が零であるためには、位置制御ループを2型(2個の積分)にすることもあるが、応答特性に大きなオーバーシュートを引き起こす可能性が大きい。そのためここでは、速度制御ループを位置制御ループの内部に構成することで問題を解決する。その速度制御ループに、一つの積分を含むような速度制御(例えばPI制御)であればよい。
【0013】
上述(ii)は、制御対象と環境の変動に対するロバスト的性質である。このために、H∞制御理論に基づき、ロバスト安定性とロバストパフォーマンスを持たせるH∞制御器を設計する。すなわち、速度制御ループ(閉ループ)を含んだモータを対象に、位置制御器として設計し、その出力は速度ループへの目標信号として与える。これによって、システム全体のロバスト安定性が保証され、ロバストパフォーマンスも実現できる。
【0014】
上述(iii)は、主にロボット動作中の加速、減速時に起こりやすい応答遅れ、またはオーバーシュートに対する抑制性能である。これに対して、フィードフォーワード(FF)制御器を設置し、目標信号と測定したモータ速度に基づき、モータの速度制御ループへ目標信号の補正量として与える。フィードフォーワード制御器のゲインは制御対象の速度変化に応じて変化(速度が上がるとき大きく、下がるとき小さく)するように設計し、ある上限を超えない範囲で、補正された目標速度信号を与えることによって、制御対象の加速時の遅れと減速時のオーバーシュートを抑えることができる。
【0015】
最後に、(iv)はH∞制御器の設計方法に関する技術である。制御対象の伝達関数に積分要素が含まれたとき、H無限大制御問題の標準形の条件を満たさなくなり、解が存在しない、即ち、H無限大制御器が設計できないことが知られている。本発明者らは、このような難点を回避するための方法を提案する。すなわち、本発明には以下の装置が含まれる。
【0016】
[1]ベースに対して移動可能に支持され、位置制御装置による制御の下で、対象物を少なくとも1つの駆動手段により1軸以上の方向に移動させる直進型ロボットの制御装置において、
前記位置制御装置が、
前記制御対象に駆動信号を出力する速度制御器と、
前記制御対象の速度情報を前記速度制御器に帰還させる速度フィードバック手段と、 前記制御対象と、前記速度制御器と、前記速度フィードバック手段とを含み、さらに、前記速度制御器が1つの積分を含む1型の速度制御系を一般化プラントとし、目標位置指令と前記制御対象の駆動位置情報とに基づいて速度指令を出力するH無限大制御器と、前記制御対象の駆動位置情報を前記H無限大制御器に帰還させる位置フィードバック手段と、前記目標位置指令に基づき所定の侶号を出力し、前記H無限大制御器の速度指令の出力に前記所定の信号を加えて前記一般化プラントに入力信号として入力するように設けられたフィードフォワード制御器とを備える、位置制御装置であることを特徴とする直進型ロボットの制御装置。
[2]前記フィードフォワード制御器は、前記制御対象の速度情報に基づいて、前記所定の信号のゲインを変化させるように構成されている、前記1に記載の直進型ロボットの制御装置。
[3]前記フィードフォワード制御器は、前記制御対象が目標位置近傍で前記所定速度から減速を開始した場合に、前記制御対象の所定速度からの速度低下に応じて前記所定の信号のゲインを減少させるように構成されている前記2に記載の直進型ロボットの御制御装置。
[4]駆動装置として互いに直交するX方向およびY方向に駆動するX方向アクチュエータとY方向アクチュエータとを備えた前記1〜3のいずれかに記載の直進型ロボットの制御装置。
[5]ベースに対して移動可能に支持され、角度制御装置による制御の下で、対象物を少なくとも1つの駆動手段により1軸以上の周囲に回転させる回転型ロボットの制御装置において、
前記角度制御装置が、
前記制御対象に駆動信号を出力する角速度制御器と、
前記制御対象の角速度情報を前記角速度制御器に帰還させる角速度フィードバック手段と、前記制御対象と、前記角速度制御器と、前記角速度フィードバック手段とを含み、さらに、前記角速度制御器が1つの積分を含む1型の角速度制御系を一般化プラントとし、目標角度指令と前記制御対象の駆動角度情報とに基づいて角速度指令を出力するH無限大制御器と、前記制御対象の駆動角度情報を前記H無限大制御器に帰還させる角度フィードバック手段と、前記目標角度指令に基づき所定の侶号を出力し、前記H無限大制御器の角度指令の出力に前記所定の信号を加えて前記一般化プラントに入力信号として入力するように設けられたフィードフォワード制御器とを備える、角度制御装置であることを特徴とする回転型ロボットの制御装置。
【発明の効果】
【0017】
本発明の装置によれば、パラメータの切り替えが必要なくなり、かつステップ状外乱に対する定常誤差も無くし、機械の振動を抑制する効果も得られる。また、簡便な構造で迅速かつ高精度な制御が可能になるので、生産性の向上及び製造コストの低減を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明が提案する直進型ロボット制御装置の一般形を示すブロック図である。
【図2】図2は、本発明の直進型ロボット制御装置の一実施態様を示すブロック図である。
【図3】図3は、H無限大制御器を設計するに当たって、上述重み関数W1とW2を含めた一般化システムを示すブロック図である。
【図4】図4は、各制御系における入出力を示す模式図である。
【図5】図5は本発明の第2の実施形態示すブロック図である。
【図6】図6は、フィードフォワード制御器における可変ゲインの一例を示すグラフである。
【図7】図7は本発明の位置制御装置における、目標位置信号rをステップ状変化するときの出力信号yの時間応答曲線である。
【図8】図8は、従来型の位置制御装置における、目標位置信号rをステップ状変化するときの出力信号yの時間応答曲線である。
【図9】図9は、時間[μsec]をとり、目標位置指令rに対する応答(上図:検出位置情報y)及び(下図:偏差ey[rad])を示すグラフである。
【図10】図10は、図9の円Aで示す範囲を拡大したグラフである。
【図11】図11は、図9に示す制御器に対応する実施例において、ノミナルプラントP0(s)(図5参照)が変動した場合の応答を示すグラフである。
【図12】図12はフィードフォワード制御器の出力信号fを速度制御器20(図5参照)の出力信号に加えた比較例(背景技術において説明した特許文献2に対応する比較例)において、ノミナルプラントP0(s)(図5参照)が変動した場合の応答を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明について説明する。なお、本発明において直進型ロボットは、n軸リニア搬送ロボットやn次元プロッタ、n軸フライスなどを含む。ここで、nは1以上の整数であり、好ましくは2及び3である。また、回転型ロボットは、多関節ロボットを含む。これらの位置・角度を同時に制御することもできる。なお、以下の説明において、直進型ロボットの制御装置を単に「位置制御装置」、回転型ロボットの制御装置を単に「回転制御装置」ともいう。
【0020】
図1は、本発明が提案する位置制御装置100の一般形である。
位置制御装置100は、外部から入力された目標信号(目標位置信号又は目標角度信号)rと、エンコーダなど制御対象の位置(又は角度)信号に基づき、制御対象への駆動信号を出力するように構成される。また、位置制御装置100はサーボモータ200を駆動する。
サーボモータ200は、例えば、ステージ装置の1つの軸上でステージや搬送物を移動させるためのものであり、外部から入力された目標信号は、例えば、ステージ装置における目標位置であり、制御対象の位置(又は角度)は、例えば、計測器やセンサなどによる直接または間接の測定値である。
【0021】
図2は、本発明の制御装置の第1の実施態様である(第1の実施態様は位置制御装置であり、第2の実施態様は回転制御装置である。以下の説明では、基本的に第1の実施態様について説明するが、第2の実施態様は、位置を角度、速度を角速度で読み替えればよい(必要であればこれらに従い他の文言も読み替える))。
【0022】
位置制御装置100は一つの積分を含む(1型)速度制御器20と、H無限大制御器10とFF制御器30との3つの制御器を有する。
【0023】
速度制御器20はモータの速度vが目標速度Vrに追従するように設計する。設計に当たっては、モータの駆動トルクTから速度vまでの伝達関数Po(s)を用いて、ステップ目標信号に対して定常誤差なく追従するように設計する。Po(s)は入力信号Tと出力信号vの同定実験データより得られた数値モデルである場合も、物理原理によるモデルである場合も同じである。サーボモータの物理モデルは一般にPo (s)=1/(Js+DL)として、モータと負荷を併せたノミナル(変動しない)特性を表す。ここで、Jはサーボモータ200の慣性モーメントおよびサーボモータ200に駆動される機構の慣性モーメントの換算値の和である。Dは摩擦係数である。このような速度制御器は例えばPI補償器のように一つの積分要素を含めたものでよい。この場合、速度制御器の伝達関数は(As+B)/sとなる。なお、ここで1/sは積分要素である。
【0024】
続いてH無限大制御器10を位置(角度)制御器として設計する。この場合の制御対象は、速度制御器を含めた速度閉ループと速度情報vを位置(角度)情報に変換する積分要素1/sと直列結合した拡大プラントP(s)である。
【0025】
H無限大制御理論においては、拡大したプラントのノミナルな性質だけでなく、不確かさ(負荷変動やモータ個体差によるモデル誤差)と外乱に強いロバスト安定性を持つ制御器K(s)の設計ができる。このために、フィードバックシステムの安定性を満たすと共に、外乱の影響を受けにくいことを評価する感度関数
【数1】
を小さく抑えることと、モデル変動に対するロバスト安定性に関わる相補感度関数
【数2】
を小さく抑えることが必要である。
【0026】
しかし、S+T=1より、上述SとTの両方を自由に小さくすることができないため、異なる周波数領域にSとTをそれぞれ小さくすることで両立を図る。感度を小さくしたい周波数領域(低周波領域)において、その周波数領域に大きな値をとる関数W1(s)を決め、また相補感度関数Tを小さくしたい周波数領域(高周波領域)に大きな値をとる関数W2(s)を決め、
【数3】
となるように制御器K(s)を求める。図3はH無限大制御器を設計するに当たって、上述重み関数W1とW2を含めた一般化システムを示す。
【0027】
重みつき感度関数
【数4】
は図3-1の信号wからZ1までの伝達関数、重みつき相補感度関数
【数5】
は信号wからZ2までの伝達関数となる。図3-1を図3-2のように書き換えると、一般化プラント表現が得る。この一般化プラントに対して、信号wから出力z1及びz2への伝達関数
【数6】
の無限大ノルム
【数7】
が所定の値γより小さく、かつK(s)、P(s)を繋がる閉ループシステムが安定であるように制御器K(s)を求めることによって、ロバスト性を持つ位置制御器が設計される。
【0028】
上述制御器K(s)の設計に当たって、H無限大制御理論による標準問題の解を適用するが、図2に示した拡大プラントPの伝達関数に積分要素1/sを含めているので、図3−2で示す一般化プラントの状態空間表現におけるH無限大標準問題に必要な前提条件
【数8】
を満たさない。このような場合、通常に解が存在しないという判断が出される。本発明はこの問題を回避するため、拡大プラントの伝達関数を
【数9】
と表し、
【数10】
について、積分器を内蔵するH無限大制御器
【数11】
をまず求める。
【0029】
このために、重み関数
【数12】
を
【数13】
のように積分を一つ含むような伝達関数として与える。即ち位置制御ループが安定でかつ
伝達関数
【数14】
の無限大ノルム
【数15】
が所定の値γより小さいという条件を満たすように
【数16】
を求める。この時、求めた
【数17】
は必ず積分が内蔵する。続いて
【数18】
を
【数19】
のように分離し、積分要素
【数20】
を除いた
【数21】
を得る。
【0030】
ここで、
【数22】
であることから、
【数23】
はもとのシステム図2のH無限大制御器となる。
最後に、フィードフォーワード(FF)制御器について説明する。FF制御器の実施形態は2種類可能である。図2は第1の実施形態である。FF制御器30は、目標位置指令により、速度制御器へ、目標速度の補正量fを出力する。この場合、FF制御器30の機能は伝達関数
【数24】
で表す。これによって、応答速度の向上を図る。
【0031】
従来型のFF制御信号は直接制御対象(モータ)へ入力することであるが、その場合は、モータの特性変動の影響を受けやすく、FF制御の効果が低減するという問題点がある。本発明では、FF信号をH無限大制御器の出力信号に加えることによって、モデル誤差の影響を受けずに、FF制御の効果を高めることができる。
【0032】
図5は本発明の第2の実施形態である。FF制御器430はFF制御器30の基に、制御対象の速度信号もフィードバックする。ここでは
【数25】
の係数
【数26】
は一定の上限を設けて、速度信号vによって変化する。すなわち、
【数27】
となる。
【0033】
図6は可変ゲイン
【数28】
のイメージである。これによって、モータ加速時の応答遅れと減速時のオーバーシュートを低減する効果が高められる。
【0034】
具体的な計算・指示はコンピュータなどの計算・指示手段により行い、FF制御その他の制御部の構成要素は、当業者に知られている任意の構成を用いることができる。装置全体の機械的・電気的構成は、例えば、n軸リニア搬送装置であれば、上記制御部を除いて従来のn軸リニア搬送装置と同様の構成を用いることができる。
【0035】
実施例
以下、本発明によるリニア搬送装置について、位置制御装置の効果について説明する。
【0036】
図7は位置制御装置100に基づいた設計した位置制御結果であり、目標位置信号rをステップ状変化するときの出力信号yの時間応答曲線である。図8−1、図8−2に示す従来型制御の結果と明らかな有意差を示している。すなわち、負荷条件を変えたステップ応答性能に関して、従来型では、本発明と同等の応答性を持たせると大きなオーバーシュートを示し、その割合は、負荷が小さいほど大きくなる(図8−1)。また、オーバーシュートを押さえると応答性が悪くなり、その程度は、高負荷ほど大きくなる(図8−2)。
【0037】
次に、図9および図10は、フィードフォーワード効果を確認するために行った実験である。ここで、図9の上側のグラフは、縦軸にサーボモータの出力軸の回転角度[rad]、横軸に時間[μsec]をとり、目標位置指令rに対する応答(検出位置情報y)を示している。また、図9の下側のグラフは、縦軸に目標位置指令rに対する偏差ey[rad]、横軸に時間[μsec]をとり、上側のグラフに対応する各時刻における偏差eyの発生量を示している。図10のグラフは、縦軸と横軸の拡大率が等しくないため、縦に引き伸ばされたグラフとなっている。この実施例は、位置制御装置400(即ちフィードフォワード制御は第2実行態430)を用いた構成である。図9に示すように、サーボモータ200の出力軸の目標位置を回転角度94.25[rad]とし、0〜200[μsec]の加速領域と、200〜600[μsec]の一定角速度領域と、600〜800[μsec]の減速(位置決め)領域を含むように目標位置指令rを入力した例を示している。
【0038】
図9に示すように、目標位置指令rに対する応答は、200〜600[μsec]の一定角速度領域において位置偏差が0となっている。上記のように1型の制御系では、ランプ入力に相当する一定角速度領域において定常偏差が発生する(図4の(d)参照)ので、位置偏差が略0となるという本実施例の結果は、FF制御器430によるゲイン補償によって偏差を減少させていることを示している。また、目標位置(94.25 [rad])近傍(図9の破線で囲まれた領域A)における位置決め挙動を見ると、オーバーシュートも発生していない。詳細には、目標位置(94.25 [rad])近傍の700〜900[μsec]の範囲(図9の破線で囲まれた領域A)を拡大した図10に示すように、サーボモータ200の出力軸の回転角度(実線)が位置指令(破線)に対して、遥かに下回る過減衰の応答を示しながら、約800[μsec]付近で目標位置(94.25 [rad])に偏差0で収束していることが分かる。このような僅かな過減衰を示す特性は、特にオーバーシュートの発生が問題となる産業用ロボットの駆動制御に用いられる位置制御装置の特性としては、望ましい目標追従特性である。以上から、フィードフォワード第2実施形態による位置制御装置400を用いた制御系が位置決め制御において良好な制御特性を示していると言える。
【0039】
更に、図11および図12を参照して、図9および図10に示した実験結果に基づき、ノミナルプラントP0(s)が変動した場合の効果について説明する。
図11は、図9に示した制御器400に対応する実施例において、ノミナルプラントP0(s)(図5参照)が変動した場合の応答を示している。図12はフィードフォワード制御器の出力信号fを速度制御器20(図5参照)の出力信号に加えた比較例(背景技術において説明した特許文献2に対応する比較例)において、ノミナルプラントP0(s)(図5参照)が変動した場合の応答を示している。ここで、図11および図12の上側のグラフは、縦軸にサーボモータの出力軸の回転角度[rad]、横軸に時間[μsec]をとり、目標位置指令rに対する応答(検出位置情報y)を示している。また、図11および図12の下側のグラフは、縦軸に目標位置指令rに対する偏差ey[rad]、横軸に時間[μsec]をとり、上側のグラフに対応する各時刻における偏差eyの発生量を示している。
【0040】
図11に示すように、前述の第2実施形態に対応する実施例では、ノミナルプラントP0(s)が変動した場合においても、200〜600[μsec]の一定角速度領域において位置指令と検出位置との間の位置偏差が0となっている。ここで、図12に示す比較例度領域において定常偏差が発生する(図4の(d)参照)ので、位置偏差が略0となるという本実施例の結果は、FF制御器430によるゲイン補償によって偏差を減少させていることを示している。また、目標位置(94.25 [rad])近傍(図9の破線で囲まれた領域A)における位置決め挙動を見ると、オーバーシュートも発生していない。詳細には、目標位置(94.25 [rad])近傍の700〜900[μsec]の範囲(図9の破線で囲まれた領域A)を拡大した図10に示すように、サーボモータ200の出力軸の回転角度(実線)が位置指令(破線)に対して、遥かに下回る過減衰の応答を示しながら、約800[μsec]付近で目標位置(94.25 [rad])に偏差0で収束していることが分かる。このような僅かな過減衰を示す特性は、特にオーバーシュートの発生が問題となる産業用ロボットの駆動制御に用いられる位置制御装置の特性としては、望ましい目標追従特性である。以上から、位置制御装置400を用いた制御系が位置決め制御において良好な制御特性を示していると言える。
なお、ここでは位置制御について説明したが、角度制御についても同様である。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の直進型及び回転型ロボットの制御装置は、例えば単軸ロボット、多軸ロボット、多関節ロボットに用いることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースに対して移動可能に支持され、位置制御装置による制御の下で、対象物を少なくとも1つの駆動手段により1軸以上の方向に移動させる直進型ロボットの制御装置において、
前記位置制御装置が、
前記制御対象に駆動信号を出力する速度制御器と、
前記制御対象の速度情報を前記速度制御器に帰還させる速度フィードバック手段と、 前記制御対象と、前記速度制御器と、前記速度フィードバック手段とを含み、さらに、前記速度制御器が1つの積分を含む1型の速度制御系を一般化プラントとし、目標位置指令と前記制御対象の駆動位置情報とに基づいて速度指令を出力するH無限大制御器と、前記制御対象の駆動位置情報を前記H無限大制御器に帰還させる位置フィードバック手段と、前記目標位置指令に基づき所定の侶号を出力し、前記H無限大制御器の速度指令の出力に前記所定の信号を加えて前記一般化プラントに入力信号として入力するように設けられたフィードフォワード制御器とを備える、位置制御装置であることを特徴とする直進型ロボットの制御装置。
【請求項2】
前記フィードフォワード制御器は、前記制御対象の速度情報に基づいて、前記所定の信号のゲインを変化させるように構成されている、請求項1に記載の直進型ロボットの制御装置。
【請求項3】
前記フィードフォワード制御器は、前記制御対象が目標位置近傍で前記所定速度から減速を開始した場合に、前記制御対象の所定速度からの速度低下に応じて前記所定の信号のゲインを減少させるように構成されている請求項2に記載の直進型ロボットの御制御装置。
【請求項4】
駆動装置として互いに直交するX方向およびY方向に駆動するX方向アクチュエータとY方向アクチュエータとを備えた請求項1〜3のいずれかに記載の直進型ロボットの制御装置。
【請求項5】
ベースに対して移動可能に支持され、角度制御装置による制御の下で、対象物を少なくとも1つの駆動手段により1軸以上の周囲に回転させる回転型ロボットの制御装置において、
前記角度制御装置が、
前記制御対象に駆動信号を出力する角速度制御器と、
前記制御対象の角速度情報を前記角速度制御器に帰還させる角速度フィードバック手段と、前記制御対象と、前記角速度制御器と、前記角速度フィードバック手段とを含み、さらに、前記角速度制御器が1つの積分を含む1型の角速度制御系を一般化プラントとし、目標角度指令と前記制御対象の駆動角度情報とに基づいて角速度指令を出力するH無限大制御器と、前記制御対象の駆動角度情報を前記H無限大制御器に帰還させる角度フィードバック手段と、前記目標角度指令に基づき所定の侶号を出力し、前記H無限大制御器の角度指令の出力に前記所定の信号を加えて前記一般化プラントに入力信号として入力するように設けられたフィードフォワード制御器とを備える、角度制御装置であることを特徴とする回転型ロボットの制御装置。
【請求項1】
ベースに対して移動可能に支持され、位置制御装置による制御の下で、対象物を少なくとも1つの駆動手段により1軸以上の方向に移動させる直進型ロボットの制御装置において、
前記位置制御装置が、
前記制御対象に駆動信号を出力する速度制御器と、
前記制御対象の速度情報を前記速度制御器に帰還させる速度フィードバック手段と、 前記制御対象と、前記速度制御器と、前記速度フィードバック手段とを含み、さらに、前記速度制御器が1つの積分を含む1型の速度制御系を一般化プラントとし、目標位置指令と前記制御対象の駆動位置情報とに基づいて速度指令を出力するH無限大制御器と、前記制御対象の駆動位置情報を前記H無限大制御器に帰還させる位置フィードバック手段と、前記目標位置指令に基づき所定の侶号を出力し、前記H無限大制御器の速度指令の出力に前記所定の信号を加えて前記一般化プラントに入力信号として入力するように設けられたフィードフォワード制御器とを備える、位置制御装置であることを特徴とする直進型ロボットの制御装置。
【請求項2】
前記フィードフォワード制御器は、前記制御対象の速度情報に基づいて、前記所定の信号のゲインを変化させるように構成されている、請求項1に記載の直進型ロボットの制御装置。
【請求項3】
前記フィードフォワード制御器は、前記制御対象が目標位置近傍で前記所定速度から減速を開始した場合に、前記制御対象の所定速度からの速度低下に応じて前記所定の信号のゲインを減少させるように構成されている請求項2に記載の直進型ロボットの御制御装置。
【請求項4】
駆動装置として互いに直交するX方向およびY方向に駆動するX方向アクチュエータとY方向アクチュエータとを備えた請求項1〜3のいずれかに記載の直進型ロボットの制御装置。
【請求項5】
ベースに対して移動可能に支持され、角度制御装置による制御の下で、対象物を少なくとも1つの駆動手段により1軸以上の周囲に回転させる回転型ロボットの制御装置において、
前記角度制御装置が、
前記制御対象に駆動信号を出力する角速度制御器と、
前記制御対象の角速度情報を前記角速度制御器に帰還させる角速度フィードバック手段と、前記制御対象と、前記角速度制御器と、前記角速度フィードバック手段とを含み、さらに、前記角速度制御器が1つの積分を含む1型の角速度制御系を一般化プラントとし、目標角度指令と前記制御対象の駆動角度情報とに基づいて角速度指令を出力するH無限大制御器と、前記制御対象の駆動角度情報を前記H無限大制御器に帰還させる角度フィードバック手段と、前記目標角度指令に基づき所定の侶号を出力し、前記H無限大制御器の角度指令の出力に前記所定の信号を加えて前記一般化プラントに入力信号として入力するように設けられたフィードフォワード制御器とを備える、角度制御装置であることを特徴とする回転型ロボットの制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
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【図4】
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【図6】
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【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−203589(P2012−203589A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−66785(P2011−66785)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(504196300)国立大学法人東京海洋大学 (83)
【出願人】(591038185)第一電気株式会社 (9)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(504196300)国立大学法人東京海洋大学 (83)
【出願人】(591038185)第一電気株式会社 (9)
【Fターム(参考)】
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