説明

瞬時電圧低下保護装置

【課題】商用交流電源の電圧変動が大きな国・地域で使用される場合でも、電解コンデンサの充放電の繰り返しの頻度を下げ、その長寿命化と小容量化を図る。
【解決手段】入力交流電圧が定格の90%〜80%の範囲のときには、第2半導体スイッチ31のみをオンし、オートトランス30で入力交流電圧が10%昇圧された交流電圧(端子B出力)を負荷2に印加する。入力交流電圧が定格の110%以上であるときには、第3半導体スイッチ32のみをオンし、オートトランス30で入力交流電圧が10%降圧された交流電圧(端子C出力)を負荷2に印加する。それにより、電解コンデンサ17の蓄積電力を用いずに定格の90〜110%程度の交流電圧で時間制限なく負荷2を駆動できる。入力交流電圧が定格の80%未満に下がったならば、全スイッチをオフしてインバータ18で直流/交流変換動作を行わせ、短時間、代替交流電力を負荷2に供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、商用交流電源から負荷に供給される交流電力の電圧が一時的に低下した場合、或いは一時的に停電が発生した場合に、代わりに負荷に交流電力を供給する瞬時電圧低下保護装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、商用交流電源から負荷に供給される交流電力の電圧が短時間低下した場合或いは短時間遮断された場合に、これに代えて交流電力を負荷に供給するための瞬時電圧低下保護装置が広く利用されている(例えば特許文献1〜3など参照)。
【0003】
図4は従来の瞬時電圧低下保護装置の概略構成図である。この装置の入力端11は商用交流電源1に接続され、出力端12は負荷2に接続される。この装置は、3種のスイッチ、即ち、電磁リレー14、双方向サイリスタ15、及び半導体スイッチ16が並列に接続された切替部13と、電圧低下保護用の直流電力を蓄える電解コンデンサ17と、交流/直流、直流/交流の双方向の電力変換が可能なインバータ18と、該インバータ18による高周波の矩形波からなる擬似正弦波交流出力をフィルタリングするフィルタ19と、主として電解コンデンサ17の自然放電による電圧低下を補うための補充電部20と、入力交流電圧(例えば100V)を検知する入力電圧検知部21と、補充電部20を駆動する補充電駆動部22と、インバータ18を駆動するインバータ駆動部23と、切替部13における各スイッチのオン・オフを切り替える切替駆動部24と、入力電圧検知部21により得られた電圧値に基づいて、所定のアルゴリズムに従って補充電駆動部22、インバータ駆動部23、切替駆動部24をそれぞれ制御する制御部25と、を備える。図示しないが、インバータ18は電力用FETなどの半導体スイッチング素子がブリッジ状に接続された回路を備える。また、補充電部20は、1次側巻線に入力交流電力が供給される変圧トランス、該トランスの2次側巻線に接続された整流回路などを含む。
【0004】
この瞬時電圧低下保護装置の基本的な動作は次の通りである。
制御部25は入力電圧検知部21で得られる電圧値を常時監視し、この電圧値が正常な範囲に収まっている場合には、切替部13中の少なくとも1つのスイッチをオンさせて商用交流電源1から供給される交流電力をそのまま出力端12から出力し、負荷2へと供給する。また、制御部25は、インバータ駆動部23を介しインバータ18で交流/直流変換(図4中で右方から入力される交流電力を直流電力に変換して左方へ出力する)動作を行わせることにより、或いは、補充電駆動部22を介し補充電部20を動作させることにより、電解コンデンサ17をほぼフルに充電する。なお、切替部13における各スイッチの使い分けについては本願の趣旨ではないので説明を省略する(詳しくは特許文献2参照)。また、電解コンデンサ17を充電する際のインバータ18と補充電部20との使い分けについても本願の趣旨ではないので説明を省略する(詳しくは特許文献1参照)。
【0005】
商用交流電源1からの交流電圧が低下したり短時間停電が起こったりして入力電圧検知部21で得られる電圧値が正常な範囲を外れると、制御部25は電圧値が異常に低下したと判断し、切替駆動部24を介して切替部13の全スイッチをオフさせて出力端12を入力端11から切り離すとともに、インバータ駆動部23を介してインバータ18に直流/交流変換(図4中で左方から入力される直流電力を交流電力に変換して右方へ出力する)動作を実行させる。これにより、電解コンデンサ17に蓄えられていた直流電力が交流電力に変換され、商用交流電源1からの入力交流電力に代えて、出力端12から負荷2に代替交流電力が供給される。このときに出力端12から出力される交流電圧の電圧値は、インバータ18中の各スイッチング素子を駆動するために制御部25からインバータ駆動部23に供給されるPWM制御信号のパルス幅により調整される。
【0006】
負荷2として一般的な機器や装置を想定すると、多くの場合、定格入力電圧の許容変動下限は−10%程度である。そこで、従来の瞬時電圧低下保護装置において典型的には、商用交流電源1からの入力交流電圧が定格入力電圧(例えば100V)よりも10%以上低下したときに電圧保護動作(つまり代替交流電力の供給)を開始し、1秒程度の期間、その電圧保護を継続できるように装置仕様が定められている。通常発生する電圧瞬時低下では1秒以内に電圧は回復するし、また1回電圧瞬時低下が起こったあとに電解コンデンサ17の蓄積直流電力が十分に回復する前に再び電圧瞬時低下が起こることは稀である。したがって、少なくとも日本国内での使用においては、多くの場合、上記のような装置仕様で問題は起こらない。
【0007】
しかしながら、従来の瞬時電圧低下保護装置では次のような問題がある。
即ち、上述したように日本国内においては商用交流電源の電圧の安定性はかなり高いものの、一部の国においては商用交流電源からの交流電圧の変動(揺らぎ)が日常的に頻繁に発生している。また同一国の中でも地方・地域によっては、入力交流電圧が定格入力電圧から±10%以上変動するようなことが比較的高い頻度で起こる。
【0008】
そうした国や地域において上記瞬時電圧低下保護装置を使用した場合、入力交流電圧が定格入力電圧から10%以上低下すると、その度に電解コンデンサに蓄積されていた直流電力を利用した電圧保護(代替交流電力の出力)が実行される。そのため、電解コンデンサのフル充電−急速放電の繰り返しが高い頻度で起こり、電解コンデンサ自体の寿命が短くなる。こうした事態は装置の信頼性の低下につながるほか、電解コンデンサの頻繁な交換が必要となるため運転コストを増大させることになる。
【0009】
また当然のことながら、瞬時電圧低下ではない日常的な電圧変動によって電解コンデンサに蓄えていた直流電力を放出してしまった後、充電が完了する前に再び電圧変動に伴う電圧低下や実際の瞬時電圧低下が起こると、装置仕様で定めていた時間(例えば1秒間)に亘る電圧保護が行えなくなって負荷の運転が停止するおそれがある。そうした事態を避けるためには、予め搭載する電解コンデンサの容量を大きくしておいて電圧保護可能な時間を延ばす必要がある。しかしながら、そうした大容量の電解コンデンサの使用は装置の大幅なコスト上昇につながる。
【0010】
一方、従来の一般的な瞬時電圧低下保護装置では、入力交流電圧が定格入力電圧から10%以上上昇した場合にはその電圧がスルーされて負荷に印加されることになる。そのため、接続されている負荷が、例えば入力交流電圧が定格入力電圧から10%以上高くなった場合に自動的に運転を停止するような機能を有する場合には、入力交流電圧が定格入力電圧から10%以上大きくなる度に運転が停止することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2008−54468号公報
【特許文献2】特開2008−54483号公報
【特許文献3】特開2009−112128号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、商用交流電源からの交流電圧の変動が大きな場所(国、地域等)においても、負荷の運転が停止する状況をできるだけ減らすことができ、また電解コンデンサ等の蓄電部の充放電の頻度を減らすことにより、装置の信頼性を高めるとともに運転コスト及び装置自体のコストを抑えることができる瞬時電圧低下保護装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために成された本発明は、直流電力を蓄えるための蓄電手段と、商用交流電源から供給される交流電力を直流電力に変換して前記蓄電手段を充電するとともに、該蓄電手段から放出された直流電力を交流電力に変換する双方向インバータ手段と、を具備し、商用交流電源から負荷に供給される交流電圧が一時的に低下したときに、それに代えて前記蓄電手段に蓄えられている直流電力を利用して前記双方向インバータ手段により負荷に交流電力を供給する瞬時電圧低下保護装置において、
a)商用交流電源から与えられる入力交流電圧を入力として、該入力交流電圧が所定割合昇圧された第1交流電圧、及び該入力交流電圧が所定割合降圧された第2交流電圧を取り出すための電圧調整手段と、
b)前記入力交流電圧、前記電圧調整手段による第1交流電圧、該電圧調整手段による第2交流電圧、前記双方向インバータ手段による直流/交流変換により生成される代替交流電圧のいずれかを選択的に出力するための切替手段と、
c)前記入力交流電圧を検知して該電圧が定格入力電圧より低い第1判定電圧よりも低いか否か、該第1判定電圧より低い第2判定電圧よりも低いか否か、及び定格入力電圧より高い第3判定電圧よりも低いか否か、を判定する入力電圧判定手段と、
d)前記入力電圧判定手段により、入力交流電圧が第1判定電圧以上で第3判定電圧よりも低いと判定されたときには入力交流電圧を負荷に出力し、前記入力交流電圧が第1判定電圧よりも低く第2判定電圧以上であると判定されたときには第1交流電圧を負荷に出力し、前記入力交流電圧が第3判定電圧以上であると判定されたときには第2交流電圧を負荷に出力し、前記入力交流電圧が第2判定電圧よりも低いと判定されたときには前記双方向インバータ手段を作動させて代替交流電力を負荷に出力するように、前記切替手段及び前記双方向インバータ手段を制御する制御手段と、
を備えることを特徴としている。
【0014】
定格入力電圧とは、本装置が正常に動作するように規定された入力交流電圧の標準値であり、通常は許容変動範囲の中心値である。一般的には国内では100V又は200V、国外では110V、220V、240Vなどである。
【0015】
上記電圧調整手段は例えばオートトランスを用いた構成とすることができる。
【0016】
また、例えば第1判定電圧は定格入力電圧に対して−10%程度低い電圧(つまり定格入力電圧の約90%の電圧)、第2判定電圧は定格入力電圧に対して−15〜−25%程度低い電圧(つまり定格入力電圧の約75〜85%の範囲内の所定電圧)、第3判定電圧は定格入力電圧に対して10%程度高い電圧(つまり定格入力電圧の約110%の電圧)に設定しておくとよい。即ち、定格入力電圧が100Vである場合には、第1判定電圧は約90V、第2判定電圧は約75〜85V、第3判定電圧は約110Vとしておくとよい。また、電圧調整手段は入力交流電圧を10〜15%程度昇圧した電圧を第1交流電圧とし、入力交流電圧を10〜15%程度降圧した電圧を第2交流電圧とするとよい。
【0017】
本発明に係る瞬時電圧低下保護装置では、商用交流電源から供給される入力交流電圧が第1判定電圧よりも下がった場合でも第2判定電圧以上であれば、双方向インバータ手段は動作せず、蓄電手段に蓄えられている直流電力は使用されない。このときには、電圧調整手段により入力交流電圧電圧が昇圧された第1交流電圧が切替手段により選択され、負荷に出力される。それによって、出力電圧は入力交流電圧よりも昇圧分だけ嵩上げされる。一方、商用交流電源から供給される入力交流電圧が第3判定電圧以上になった場合には、電圧調整手段により入力交流電圧が降圧された第2交流電圧が切替手段で選択され、負荷に出力される。それによって、出力電圧は降圧分だけ入力交流電圧よりも低くなる。これにより、第3判定電圧よりも大きくなるような入力電圧変動、或いは、第1判定電圧よりも小さくなるような入力電圧変動が起こった場合でも、そうした電圧変動の影響を受けることなく、負荷に対して該負荷の運転が可能な程度の交流電圧を供給し続けることができる。
【0018】
一方、入力交流電圧が第2判定電圧よりも下がった場合には、単なる電圧変動ではなく、瞬時電圧低下や停電の可能性が高い。そこで、この場合には、制御手段は双方向インバータ手段を直流/交流変換動作させ、蓄電手段に蓄えられている直流電力を用いた代替交流電力を発生させる。同時に切替手段により、入力交流電圧、第1交流電圧、及び第2交流電圧の供給線路を遮断し、双方向インバータ手段による代替交流電圧を負荷に供給する。なお、これは従来の瞬時電圧低下保護装置における代替交流電力の供給と同様である。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る瞬時電圧低下保護装置によれば、商用交流電源から供給される交流電圧が定格入力電圧の例えば75〜90%程度にまで下がった場合に、蓄電手段の蓄積電力を利用した瞬時電圧低下保護ではなく、オートトランス等による電圧変動補償機能を利用して負荷が正常に運転可能であるような電力を負荷に供給し続けることができる。また、商用交流電源から供給される交流電圧が定格入力電圧の例えば110〜130%程度にまで上がった場合でも、電圧変動補償機能を利用して負荷が正常に運転可能である電力を供給し続けることができる。それにより、商用交流電源の電圧変動が大きな場所で使用される場合であっても、負荷の運転停止に至る事態を減らすことができる。
【0020】
また本発明に係る瞬時電圧低下保護装置によれば、日常的な電圧変動のために蓄電手段からの放電が行われることを回避できるので、蓄電手段の放電及びその後のフル充電の発生頻度を下げることができる。それによって、例えば電解コンデンサ等の、充放電の繰り返しによって性能劣化が引き起こされるような蓄電手段の寿命を延ばすことができ、装置の信頼性を高めることができる。また、蓄電手段の劣化に伴う該手段の交換の頻度を下げ、運転コストを引き下げることができる。
【0021】
さらにまた本発明に係る瞬時電圧低下保護装置によれば、上述したように代替交流電力を供給するための蓄電手段の放電の頻度が下がるため、実際に瞬時電圧低下が起こった場合に蓄電手段が十分に充電されていないといった状況を減らすことができる。それ故に、過分な直流電力を常時保持するために蓄電手段の容量を増加する必要がなく、比較的小容量の蓄電手段を使用しながら必要十分な電圧保護を提供することができる。それによって、装置コストを引き下げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施例である瞬時電圧低下保護装置の概略ブロック構成図。
【図2】本実施例の瞬時電圧低下保護装置における動作フローチャート。
【図3】本実施例の瞬時電圧低下保護装置における入力電圧変動時の動作の説明図。
【図4】従来の瞬時電圧低下保護装置の一実施例の概略ブロック構成図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る瞬時電圧低下保護装置の一実施例について、添付図面を参照して説明する。
図1は本実施例による瞬時電圧低下保護装置の概略ブロック構成図である。既に説明した図4の従来装置と同じ構成要素については同じ符号を付し、詳しい説明を省略する。
【0024】
図1に示すように、本実施例の瞬時電圧低下保護装置において、図4に示した従来装置の切替部13に相当するとともに本発明における切替手段に相当する切替部13は、電磁リレー14、双方向サイリスタ15、第1半導体スイッチ16のほかに、一端が共通に接続された第2半導体スイッチ31及び第3半導体スイッチ32を含む。入力端11と切替部13との間には、本発明における電圧調整手段に相当するオートトランス30が配置されている。このオートトランス30は、入力端11に印加された入力交流電圧がそのまま印加される端子Aと、端子Aに印加された入力交流電圧に対して10%昇圧された電圧を出力する端子Bと、端子Aに印加された入力交流電圧に対して10%降圧された電圧を出力する端子Cと、を有する。双方向サイリスタ15及び第1半導体スイッチ16の一端はオートトランス30の端子Aに接続され、第2半導体スイッチ31の一端はオートトランス30の端子Bに接続され、第3半導体スイッチ32の一端はオートトランス30の端子Cに接続されている。切替部13に含まれる、電磁リレー14、双方向サイリスタ15、第1乃至第3半導体スイッチ16、31、32はそれぞれ、切替駆動部33から与えられる制御信号によりオン・オフ(導通・非導通)が切り替えられる。
【0025】
入力電圧検知部21により検知される電圧値情報を受けて、インバータ駆動部23、切替駆動部33をそれぞれ制御する制御部40は、入力電圧判定部41、インバータ制御部42、切替制御部43などを機能ブロックとして含む。この制御部40は例えばCPU、ROM、RAMなどを含むマイクロコンピュータを中心に構成され、ROMに予め格納された制御プログラムを実行することにより上記各機能ブロックの機能が達成される。この実施例では、入力電圧検知部21及び入力電圧判定部41が本発明における入力電圧判定手段に相当し、インバータ制御部42及び切替制御部43が本発明における制御手段に相当する。
【0026】
図2は本実施例の瞬時電圧低下保護装置における動作フローチャート、図3は本実施例の瞬時電圧低下保護装置における電圧保護動作の説明図である。図3(a)は商用交流電源1から入力端11に入力される入力交流電圧、(b)は本実施例の瞬時電圧低下保護装置において(a)に示した入力交流電圧に対してそれぞれ出力端12から出力される交流電圧、(c)は例えば図4に示した従来の瞬時電圧低下保護装置において(a)に示した入力交流電圧に対してそれぞれ出力端12から出力される交流電圧、を模式的に示したものである。
【0027】
図2、図3を参照しつつ、図1に示した本実施例の瞬時電圧低下保護装置における特徴的な動作を説明する。なお、ここでは、定格入力電圧が100Vである場合について具体的な電圧値を挙げて説明するが、定格入力電圧がこれに限らず、例えば110V、200V、220V、240Vなど、適宜の値でよいことは当然である。
【0028】
本装置の作動時には図2にフローチャートで示す動作が繰り返される。即ち、制御部40において入力電圧判定部41は、入力電圧検知部21からその時点で入力端11に与えられている入力交流電圧の電圧値情報を読み込み(ステップS1)、電圧値が定格入力電圧の110%である110V(本発明における第3判定電圧に相当)以上であるか否かを判定する(ステップS2)。ステップS2でNoと判断されると、次に、上記電圧値が定格入力電圧の90%である90V(本発明における第1判定電圧に相当)未満で且つ定格入力電圧の80%である80V(本発明における第2判定電圧に相当)以上であるか否かを判定する(ステップS3)。ステップS3でNoと判断されると、次に、上記電圧値が定格入力電圧の80%である80V(上述のように第2判定電圧に相当)未満であるか否かを判定する(ステップS4)。
【0029】
ステップS2、S3及びS4でいずれもNoと判定された場合には、入力交流電圧は定格入力電圧の90%以上110%未満の範囲である90V以上110V未満の範囲に入っている(ステップS5)。そこで、この場合には商用交流電源1からの交流電力の供給は正常であると判断し、切替制御部43は、切替駆動部33を介して切替部13の第1半導体スイッチ16、双方向サイリスタ15、電磁リレー14のいずれか又は複数を導通状態とする。これにより、オートトランス30の端子Aに印加された電圧、つまり商用交流電源1から入力端11に供給された交流電力は、そのまま出力端12にスルーされ、入力交流電圧(但し、切替部13を経ることによる電圧降下を除く)が負荷2に供給される(ステップS6)。
【0030】
この場合、図3(b)の[A]及び[D]に示すように、入力交流電圧の変動に応じて負荷2に供給される交流電圧は最大で定格入力電圧から±10%変動するが、一般に、負荷2である各種機器の入力電圧変動の許容範囲は定格入力電圧に対し±10%程度であり、上記のように当該装置から出力される交流電圧が10%程度変動しても負荷2の運転には支障はない。もちろん、入力電圧変動の許容範囲がより狭い(例えば±5%以内)負荷が使用されることが分かっている場合には、入力電圧判定部41における判定基準を変更すればよい。
【0031】
また、制御部40においてインバータ制御部42は図示しない充電電圧検知部により電解コンデンサ17の充電電圧をモニタし、その充電電圧が所定電圧よりも低い場合には、電解コンデンサ17を急速充電するためにインバータ駆動部23を介してインバータ18を作動させ、入力交流電力を直流電力に変換して電解コンデンサ17を充電する。なお、電解コンデンサ17の充電電圧の低下が自然放電による程度の小さな低下である場合には、インバータ18の交流/直流変換動作による急速充電ではなく、補充電部20による比較的緩慢な充電を行う。これは従来と同様である。このような充電により、入力交流電力が供給されている場合には、電解コンデンサ17はほぼフルに充電された状態が維持される。
【0032】
電圧変動のために入力交流電圧が80V以上90V未満の範囲の電圧まで下がるとステップS3でYesと判定され、切替制御部43は切替駆動部33を介して切替部13の第2半導体スイッチ31を導通状態とし、他のスイッチを非導通状態とする。これにより、オートトランス30の端子Bと出力端12とが第2半導体スイッチ31を経て接続され、入力交流電圧から10%昇圧された交流電圧が負荷2に印加される(ステップS8)。例えば入力交流電圧が85Vまで低下すると、オートトランス30の端子Bには約93.5Vの交流電圧が現れるから、これが出力端12から負荷2に印加される。即ち、入力交流電圧が定格入力電圧の80%以上90%未満である場合には、図3(b)の[B]に示すように、入力交流電圧が10%分嵩上げされた交流電圧が負荷2に印加される。
【0033】
同じく電圧変動のために入力交流電圧が110V以上に上がるとステップS2でYesと判定され、切替制御部43は切替駆動部33を介して切替部13の第3半導体スイッチ32を導通状態とし、他のスイッチを非導通状態とする。これにより、オートトランス30の端子Cと出力端12とが第3半導体スイッチ32を経て接続され、入力交流電圧から10%降圧された交流電圧が負荷2に印加される(ステップS7)。例えば入力交流電圧が115Vまで上昇すると、オートトランス30の端子Cには約103.5Vの交流電圧が現れるから、これが出力端12から負荷2に印加される。即ち、入力交流電圧が定格入力電圧の110%以上である場合には、図3(b)の[E]に示すように、入力交流電圧が10%分引き下げられた交流電圧が負荷2に印加される。
【0034】
以上のように、入力交流電圧が定格入力電圧の80%以上90%未満の範囲及び110%以上である場合には、電解コンデンサ17に蓄積されている直流電力やインバータ18が使用されることなく、負荷2の運転が支障なく継続されるような交流電力が負荷2に供給され続ける。したがって、商用交流電源1における電圧変動が比較的大きいような場所であっても、負荷2の運転が停止することがない。
【0035】
一方、入力交流電圧が80V未満にまで下がると、ステップS4でYesと判定され、従来装置と同様の瞬時電圧低下保護動作が実行される(ステップS9)。即ち、切替制御部43は切替駆動部33を介して切替部13のスイッチを全てオフさせ、出力端12を入力端11から、つまり商用交流電源1やオートトランス30から切り離す。ほぼ同時に、インバータ制御部42はインバータ駆動部23を介して、電解コンデンサ17に保持されていた直流電力を用いて目標交流電圧(例えば定格入力電圧の90%)となるような代替交流電力を生成するべく、インバータ18を直流/交流変換動作させる。これにより、入力交流電力やオートトランス30の出力電圧に代えて、電解コンデンサ17、インバータ18、フィルタ19から代替交流電力が、出力端12を経て負荷2に供給される。したがって、図3(b)の[C]に示すように、瞬時電圧低下や瞬停により入力交流電圧が定格入力電圧の80%未満に下がっても、負荷2へ出力される交流電圧は例えば定格入力電圧の90%に維持される。ただし、このときには電解コンデンサ17に蓄えていた直流電力が消費されるため、この直流電力量に相当する時間だけ、例えば0.5〜1秒程度の期間だけ、負荷2に交流電力が供給されることになる。
【0036】
上記のように入力交流電圧が80V未満にまで下がった状態からその電圧が80V以上に回復すれば、切替部13のうちの少なくとも1つのスイッチは導通され、上述したように入力交流電圧又はオートトランス30で昇圧若しくは降圧された交流電圧が負荷2に供給されることになる。
【0037】
図3(c)に示すように、従来の瞬時電圧低下保護装置では、入力交流電圧が定格入力電圧の90%未満に下がると即座に電解コンデンサ17に保持されていた直流電力を用いた代替交流電力の供給が実施される。そのため、例えば入力交流電圧の変動(揺らぎ)が大きい(±10%以上)場合には頻繁に電解コンデンサ17の放電・充電が行われることになる。また、入力交流電圧の変動のために電解コンデンサ17の蓄積電力が減じた又は零になった直後(充電がされる前)に電圧瞬時低下が起こると、電圧保護が行えずにすぐに負荷2の運転が停止することになる。
【0038】
これに対し本実施例の瞬時電圧低下保護装置では、瞬時電圧低下や停電以外の入力交流電圧変動に対しては、電解コンデンサ17の蓄積電力が使用されることは殆どない。そのため、電解コンデンサ17の頻繁な放電・充電は行われず、それ故に電解コンデンサ17の寿命を延ばすことができる。また、瞬時電圧低下時に電圧保護が行えないおそれも低く、さらに電解コンデンサ17の容量も小さくて済むので装置コストも引き下げることができる。
【0039】
なお、上記実施例は本発明の一例であり、本願発明の趣旨の範囲で適宜、変形、修正、追加を行っても本願特許請求の範囲に包含されることは明らかである。
例えば、上記実施例で挙げた90%、80%、110%といった数値、つまり第1乃至第3判定電圧の値や、+10%、−10%といったオートトランス30における電圧増加割合、電圧減少割合の数値は単に一例であり、使用環境や目的などを考慮した装置仕様に応じて適宜変更することができることは当然である。
【符号の説明】
【0040】
1…商用交流電源
2…負荷
11…入力端
12…出力端
13…切替部
14…電磁リレー
15…双方向サイリスタ
16…第1半導体スイッチ
17…電解コンデンサ
18…インバータ
19…フィルタ
20…補充電部
21…入力電圧検知部
22…補充電駆動部
23…インバータ駆動部
24…切替駆動部
25…制御部
30…オートトランス
31…第2半導体スイッチ
32…第3半導体スイッチ
33…切替駆動部
40…制御部
41…入力電圧判定部
42…インバータ制御部
43…切替制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電力を蓄えるための蓄電手段と、商用交流電源から供給される交流電力を直流電力に変換して前記蓄電手段を充電するとともに、該蓄電手段から放出された直流電力を交流電力に変換する双方向インバータ手段と、を具備し、商用交流電源から負荷に供給される交流電圧が一時的に低下したときに、それに代えて前記蓄電手段に蓄えられている直流電力を利用して前記双方向インバータ手段により負荷に交流電力を供給する瞬時電圧低下保護装置において、
a)商用交流電源から与えられる入力交流電圧を入力として、該入力交流電圧が所定割合昇圧された第1交流電圧、及び該入力交流電圧が所定割合降圧された第2交流電圧を取り出すための電圧調整手段と、
b)前記入力交流電圧、前記電圧調整手段による第1交流電圧、該電圧調整手段による第2交流電圧、前記双方向インバータ手段による直流/交流変換により生成される代替交流電圧のいずれかを選択的に出力するための切替手段と、
c)前記入力交流電圧を検知して該電圧が定格入力電圧より低い第1判定電圧よりも低いか否か、該第1判定電圧より低い第2判定電圧よりも低いか否か、及び定格入力電圧より高い第3判定電圧よりも低いか否か、を判定する入力電圧判定手段と、
d)前記入力電圧判定手段により、入力交流電圧が第1判定電圧以上で第3判定電圧よりも低いと判定されたときには入力交流電圧を負荷に出力し、前記入力交流電圧が第1判定電圧よりも低く第2判定電圧以上であると判定されたときには第1交流電圧を負荷に出力し、前記入力交流電圧が第3判定電圧以上であると判定されたときには第2交流電圧を負荷に出力し、前記入力交流電圧が第2判定電圧よりも低いと判定されたときには前記双方向インバータ手段を作動させて代替交流電力を負荷に出力するように、前記切替手段及び前記双方向インバータ手段を制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする瞬時電圧低下保護装置。
【請求項2】
請求項1に記載の瞬時電圧低下保護装置であって、
前記電圧調整手段はオートトランスを用いたものであることを特徴とする瞬時電圧低下保護装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−125085(P2012−125085A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−275257(P2010−275257)
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【出願人】(392026888)京都電機器株式会社 (43)
【Fターム(参考)】