説明

硫酸化ポリマーを含んで成る画像形成可能要素

硫酸化ポリマーを含む画像形成可能要素、およびこれらの画像形成可能要素から平版印刷版として有用な画像を調整する方法を開示する。この要素は熱的に画像形成され、水または湿し水溶液において現像され、結果としてアルカリ性現像液は必要としない。これらは印刷機上で画像形成され、湿し水溶液を用いて現像することができ、結果として別個の露光装置に取付ける必要がない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は硫酸化ポリマーに関する。特に本発明は、硫酸化ポリマーと平版印刷版前駆体におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の「湿潤」平版印刷では、親水性表面上にインク受容領域(画像領域として知られている)が作成される。表面を水分で濡らしインクを適用すると、親水性領域が水を保持してインクをはじき、インク受容領域はインクを受容して水をはじく。インクは材料の表面に転写され、そこで画像が再現される。典型的にはインクはまず、中間ブランケットに転写され、これは次にインクを材料の表面に転写し、ここで画像が再現される。
【0003】
平版印刷版前駆体として有用な画像形成可能要素は典型的には、基板の親水性表面に適用された画像形成可能層を含む。画像形成可能層は1つ以上の放射線感受性成分を含み、これは好適な結合剤中に分散される。あるいは放射線感受性成分はまた、結合物質でもよい。画像形成後、画像形成層の画像形成領域または非画像形成領域は好適な現像物質で除去されて、下の基板の親水性表面を露出させる。画像形成領域が除去されると前駆体は、ポジ型である。逆に、画像形成されていない領域が除去されると前駆体はネガ型である。各場合で、残る画像形成可能層(すなわち、画像領域)はインク受容性であり、現像工程により露出される親水性表面の領域は水および水溶液(典型的には貯蔵容器溶液)を受容し、インクをはじく。
【0004】
紫外線および/または可視光線による画像形成可能要素の通常の画像形成は、透明な領域と不透明の領域を有するマスクを介して行われる。画像形成はマスクの透明な領域の下の領域に行われるが、不透明な領域の下の領域では画像形成は起きない。しかし印刷業界では、マスクを介する画像形成の必要の無い直接デジタル画像形成がますます重要になってきている。平版印刷版の調製のための画像形成可能要素が、赤外線レーザーで使用するために開発されている。熱画像形成可能要素は、例えばShimazu、米国特許第6,294,311号、米国特許第6,352,812号、および米国特許第6,593,055号;Patel、米国特許第6,352,811号;Savariar-Hauck、米国特許第6,358,669号、米国特許第6,528,228号;West、米国特許第6,090,532号;Parsons、米国特許第6,280,899号;McCullough、米国特許公開公報第2002/0136961号;および国際公開99/21715号パンフレット;Haley、米国特許第5,372,907号;Nguyen、米国特許第5,919,601号;Kobayashi、米国特許第5,965,319号;Busman、米国特許第5,763,134号;および国際公開00/17711号パンフレットに開示されている。
【0005】
画像形成された画像形成可能要素は典型的には、これら平版印刷版に変換するために現像剤中で処理する必要がある。現像剤は典型的にはアルカリ性水溶液であり、これはまた多量の有機溶媒を含有する。pHが高く有機溶媒が存在するために、多量の現像剤の廃棄は高価であり、また環境問題を引き起こす場合がある。現像剤中での画像形成された画像形成可能要素の処理はまた、例えば現像剤のコスト、処理装置のコスト、および処理を実施するためのコストのような追加のコストが必要になる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
オンプレス(機上)現像可能な平版印刷版前駆体は、画像形成後に印刷機上に直接取り付けることができ、開始の印刷機操作中にインクおよび/または湿し水を用いて現像することができる。これらの前駆体は、印刷機に取付ける前の別個の現像工程を必要としない。印刷機上で前駆体が画像形成され且つ現像されるオンプレス画像形成は、別個の画像形成装置に前駆体を取付けることを排除する。従って、水および/または湿し水中で現像できる平版印刷版前駆体として有用な画像形成可能要素に対するニーズが存在する。現像は、別個の現像工程を避けるためにオンプレス(印刷機上)で実施できることが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、印刷版前駆体として有用な画像形成可能要素である。本要素は、基板上に画像形成可能層を含んで成り、画像形成可能層は光熱変換物質と、硫酸基を含む硫酸化ポリマーとを含む。
【0008】
硫酸基は、芳香族基および/もしくはアルキル基に、ならびに/またはポリマー骨格の一部および/または当該ポリマー骨格のペンダント基の一部である基に結合されることができる。ある態様において硫酸化ポリマーは、硫酸化フェノール樹脂である。フェノール基は、ポリマー骨格にペンダント基として存在するか、ポリマー骨格の一部であるか、またはその両方でもよい。別の態様において硫酸化ポリマーの硫酸基は、ポリマー骨格のペンダント基であるアルキル基に結合しているか、ポリマー骨格に結合しているか、またはその両方である。
【0009】
画像形成可能要素は、高いpHを有し、そして/または有機溶媒を含有する従来の現像剤中での現像を必要としない。これらは、水で現像でき、または現像剤として湿し水および/またはインクを使用してオンプレスで現像することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
特に明記しない場合は、以下の明細書と特許請求の範囲において、硫酸化ポリマー、赤外線吸収剤、光熱変換物質、界面活性剤、コーティング溶媒、および同様の用語は、かかる物質の混合物も包含する。熱画像形成は、熱体(例えばサーマルヘッド)または赤外線により画像形成することをいう。特に明記しない場合は、すべてのパーセントは重量パーセントである。
【0011】
画像形成可能要素は、硫酸化ポリマーと光熱変換物質とを含む画像形成可能層を含む。硫酸化は、ポリマーまたはポリマーに変換されるモノマーに硫酸エステル基を導入するプロセスを意味する。典型的には硫酸化は、例えば後述の方法によりヒドロキシル基を硫酸基に変換することを含む。硫酸基とは、硫酸エステル基を意味し、これは酸型(-OSO3H)および/または塩型(-OSO3-X+)となることができる。硫酸化ポリマーおよび硫酸化樹脂は、硫酸基、典型的にはポリマーの反復単位の少なくとも一部が硫酸基(硫酸エステル基)に変換されているポリマーを意味する。
【0012】
アリール基(すなわち、硫酸化フェノール性ヒドロキシル基を生成する)またはアルキル基(すなわち、硫酸化脂肪族ヒドロキシル基を生成する)に結合される硫酸基。硫酸基がアルキル基(例えば、硫酸基に変換される脂肪族ヒドロキシル基)に結合している場合、アルキル基はポリマーの主鎖(ポリマー骨格)の一部であるかまたはポリマーの主鎖のペンダント基となることができる。硫酸基がアリール基(例えば、フェノール基は硫酸基に変換される)に結合している場合、アリール基はポリマーの主鎖(ポリマー骨格)の一部であるかまたはポリマーの主鎖のペンダント基となることができる。硫酸基を含むポリマーの反復単位は、ポリマーの反復単位にランダムに散在されているか、またはさらに規則的(例えば、セグメント化ポリマーまたはブロック共重合体)に配置されることができる。
【0013】
硫酸基は、酸型(-OSO3H)および/または対イオン(X+)との塩型(-OSO3-X+)、またはその両方となることができる。有用な対イオン(X+)には、ナトリウム;カリウム;アンモニウム;置換アンモニウム、好ましくは1〜12個の炭素原子を含有するもの、例えばメチルアンモニウム、ジメチルアンモニウム、トリメチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、エチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、メチルジエチルアンモニウム、ジメチルエチルアンモニウム、2-ヒドロキシエチルアンモニウム、ジ-(2-ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリ-(2-ヒドロキシエチル)アンモニウム、2-ヒドロキシエチル-ジメチルアンモニウム;n-プロピルアンモニウム、ジ-(n-プロピル)アンモニウム、トリ-(n-プロピル)アンモニウム、トリ-(n-プロピル)メチルアンモニウム、およびテトラ-(n-プロピル)アンモニウム、;ピリジニウム;イオドニウム;スルホニウム;およびジアゾニウムが含まれる。
【0014】
硫酸化ポリマーは、前駆体ポリマーの硫酸化により調製することができる。前駆体ポリマーは、硫酸基に変換できるヒドロキシル基を有する。これは、重合後にヒドロキシル基またはヒドロキシル基に変換できる基(例えばアセテート)を有するモノマーをホモ重合することにより、またはかかるモノマーを他のモノマーとヘテロ重合することにより調製することができる。かかるモノマーの例には以下が含まれる:
【0015】
【化1】

【0016】
(式中、Rは水素またはアルキル基、典型的にはメチルであり;R'はCOR基、すなわちOR'はエステル基、典型的にはアセテートである)。
【0017】
前駆体ポリマーが、前駆体モノマーと1つ以上の他の重合可能なモノマーとを重合することにより調製される時、任意の他の重合可能なモノマーを使用して共重合体を生成してもよいが、ただし生じる硫酸化ポリマーはまだ本発明で機能することが条件である。代表的な他の重合可能なモノマーには、例えばアクリル酸;アクリル酸エステル、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、およびアクリル酸ブチル;メタクリル酸;メタクリル酸エステル、例えばメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、およびメタクリル酸ブチル;メタクリルアミド類およびアクリルアミド類、メタクリルアミド、アクリルアミド、およびp-アミノ安息香酸のアクリルアミドとメタクリルアミド;メタクリロニトリル;アクリロニトリル;無水マレイン酸;マレイン酸アミド;マレイン酸イミド、例えばN-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、およびN-ベンジルマレイミド;イタコン酸;無水イタコン酸;イタコン酸エステル;イタコン酸アミド;イタコン酸イミド、クロトン酸、無水クロトン酸、クロトン酸エステル、クロトン酸アミド;クロトン酸イミド、フマル酸、フマル酸エステル、フマル酸アミド、アルファ、ベータ−不飽和ラクトン、アルファ、ベータ−不飽和ラクタム、アルファ、ベータ−不飽和炭化水素;ビニルエステル、例えば酢酸ビニル;アルファ、ベータ−不飽和ケトン、例えばメチルビニルケトン;およびスチレンおよび置換スチレンがある。
【0018】
ビニルエステル(例えば酢酸ビニル)が使用される時、得られるポリマーまたは共重合体中のエステル基は加水分解によりヒドロキシル基に変換される。生じるヒドロキシル基はペンダント基にではなくポリマーの主鎖に結合するであろう。好ましくは前駆体ポリマーが共重合体である時、ポリマーを構成する少なくとも30モル%の反復単位は、硫酸基に変換されるヒドロキシル基、または硫酸基に変換することができるヒドロキシルに変換することができる基(例えばアセテート)を含むポリマーを含む。硫酸化ポリマーにおいて、ポリマーを構成する少なくとも30モル%の反復単位は、ヒドロキシル基または硫酸基を含む。
【0019】
前駆体ポリマーはフリーラジカル重合のような方法により調製されることができ、これは当業者に公知であり、例えば「巨大分子(Macromolecules)」(第2版)の第20章と21章、H.G. Elias編、プレヌム(Prenum)、ニューヨーク、1984、に記載されている。有用なフリーラジカル開始剤は、過酸化ベンゾエートのような過酸化物、ヒドロペルオキシドクミルのようなヒドロペルオキシド類、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)のようなアゾ化合物である。好適な溶媒には、反応物に不活性であり反応に悪影響を与えない液体がある。代表的な溶媒には、例えばエステル、例えば酢酸エチルおよび酢酸ブチル;ケトン、例えばメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルプロピルケトン、およびアセトン;アルコール、例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、およびブタノール;エーテル、例えばジオキサンおよびテトラヒドロフラン、およびこれらの混合物がある。
【0020】
有機化合物を硫酸化するための方法は、例えばJacobson, 米国特許第6,448,435号、および「硫酸化と硫酸化法(Sulfation and Sulfation Processes)、N.C. Foster (ケミトン社(The Chemithon Corporation))、1997)に記載されている。ヒドロキシ含有ポリマーを硫酸化する方法は、Schweiger, 米国特許第4,177,345号;Tyler, 米国特許第4,318,815号;およびMyers. 米国特許第5,750,656号に記載されている。
【0021】
硫酸化ポリマーは、例えばヒドロキシル含有ポリマー樹脂を有機溶媒中で硫酸化剤と反応させてヒドロキシル基を硫酸基に変換することにより調製してもよい。代表的な硫酸化剤には、例えば三酸化イオウ(SO3);クロロスルホン酸(ClSO3H);スルファミン酸(H2NSO3H);三酸化イオウ−ピリジン錯体;三酸化イオウトリアルキルアミン錯体(例えば、三酸化イオウ−トリメチルアミン錯体、三酸化イオウ−トリエチルアミン錯体);三酸化イオウ/トリアリールアミン錯体;および三酸化イオウ/N,N-ジメチルホルムアミド錯体がある。
【0022】
硫酸化ポリマーを得るための硫酸化剤とポリマーとの反応において、反応はポリマーのすべてのヒドロキシル基より少ないものが硫酸化されるように制御される。置換されるヒドロキシ基の数を制御する1つの特に有用な方法は、反応で使用される硫酸化剤の量を制限することである。
【0023】
他の従来法も硫酸化ポリマーを調製するのに、好適なものとなることができる。例えば硫酸化ポリマーを、硫酸化モノマーを使用してホモ重合によりまたは共重合により、例えば上記の方法を使用して、または通常はヒドロキシ基により占有されるいくつかの部位に保護基を含むポリマーを硫酸化することにより調製することができる。
【0024】
硫酸化度(硫酸基を含む反復単位の数の尺度)は、ポリマー中のヒドロキシル基を含む単位の総数に対するポリマー中の硫酸基を含む単位の数の比として定義される。例えば硫酸化度0.25は、ポリマーのヒドロキシル基の25%が硫酸化されており、すなわちポリマー中のヒドロキシル基と硫酸基の総数の少なくとも25%が硫酸基であることを示す。
【0025】
典型的には硫酸化度は0.25またはそれ以上、好ましくは約0.3またはそれ以上、およびさらに好ましくは約0.5またはそれ以上、すなわちポリマー中のヒドロキシル基と硫酸基の総数の少なくとも50%は硫酸基である。塩型の硫酸化ポリマー(すなわち、主に-SO3-X+基を含む)は、酸型の硫酸化ポリマー(すなわち、主に-OSO3H基を含む)より、画像形成可能要素での使用により適している。
【0026】
フェノール樹脂は、ポリマー骨格の一部として、ポリマー骨格のペンダント基として、またはその両方として、ヒドロキシ置換芳香環(フェノール基)を含む構造を有するポリマー物質である。フェノール樹脂は、複数のフェノール性ヒドロキシル基をポリマー骨格上またはペンダント基上に有する。ノボラック樹脂、レゾール樹脂、ペンダントフェノールを含有するアクリル樹脂、およびポリビニルフェノール樹脂は、好適なフェノール樹脂である。フェノール基がポリマー骨格の一部であるフェノール樹脂は一般に、置換または非置換フェノールとアルデヒドまたはケトンとの縮合反応により作成される。縮合反応の調製経路に依存して、種々の構造と性質を有する一連のフェノール樹脂が形成される。フェノール樹脂の調製に使用される触媒の種類と反応物のモル比が、その分子構造を決定し、従って樹脂の物性を決定する。
【0027】
ノボラック樹脂は市販されており、当業者に公知である。これらは典型的には、触媒の存在下でフェノール(例えば、フェノール、m-クレゾール、o-クレゾール、p-クレゾールなど)とアルデヒド(例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒドなど)またはケトン(例えばアセトン)との縮合反応により調製される。代表的なノボラック樹脂には、例えばフェノール−ホルムアルデヒド樹脂、クレゾール−ホルムアルデヒド樹脂、フェノール−クレゾール−ホルムアルデヒド樹脂、p-t-ブチルフェノール−ホルムアルデヒド樹脂、およびピロガロール−アセトン樹脂がある。特に有用なノボラック樹脂は、m-クレゾール、m-クレゾールとp-クレゾールとの混合物、またはフェノールとホルムアルデヒドを反応させて、通常の条件下で、典型的には約2:1〜1:1のフェノール対アルデヒドまたはケトン、好ましくは約2:1〜約5:4のモル比で反応させることにより調製される。ノボラック樹脂は公知であり、例えばKubo、米国特許第4,308,368号;Nishioka, 米国特許第4,845,008号;Hirai, 米国特許第5,437,952号;DeBoer, 米国特許第5,491,046号;Mizutani, 米国特許第5,143,816号;およびEngebrecht, 英国特許第1,546,633号に記載されている。
【0028】
レゾール樹脂は、フェノール化合物とアルデヒドとの反応により得られるが、ノボラック樹脂を製造する条件とは異なる条件下で得られる。レゾール樹脂は、フェノール反応物とアルデヒド反応物とのアルカリ触媒反応により得られる。レゾール樹脂の調製において、フェノール反応物モル数とアルデヒド反応物モル数との比は1未満でなければならない。レゾール樹脂を調製するのに一般に1:1未満〜約1:3のモル比が使用される。ホルムアルデヒドから得られるレゾール樹脂は、反応性メチロール(-CH2OH)基を含有する。
【0029】
ある態様において硫酸化フェノール樹脂は、平均分子量が約1kDa〜約500kDaであることが特徴である。
【0030】
1つの硫酸化フェノール樹脂は、構造AとBで示される反復単位を含む:
【0031】
【化2】

【0032】
(式中、R1、R2、R3、およびR4はそれぞれ独立に水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルカリール、またはアラルキルである;およびX+は、陽性荷電対イオンである)。この硫酸化フェノール樹脂について、m(硫酸化度)は、B単位の数(すなわち、硫酸化フェノール単位)とA単位の数とB単位の数の合計(すなわち、フェノール型単位の総数)との比として定義される。
【0033】
「アルキル」は、1〜約20個の炭素原子、または好ましくは1〜約12個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖の飽和炭化水素置換基を意味する。かかる置換基の例には、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソアミル、およびヘキシルがある。アルキル置換基は、1つ以上の置換基、例えばアルコキシ、ヒドロキシル、アミノ、ハロ、ニトロ、アシル、シアノ、カルボキシ、またはチオアルキルで置換される。アルケニルおよびアルキニルは、1〜約20個の炭素原子、または好ましくは1〜約12個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖の不飽和炭化水素置換基を意味する。アルケニル置換基は、炭素鎖中に2重結合を含み、アルキニル置換基は3重結合を含む。アルケニルおよびアルキニル置換基はまた、置換可能な位置で1つ以上の置換基(例えば、アルコキシ、ヒドロキシル、アミノ、ハロ、ニトロ、アシル、シアノ、カルボキシ、またはチオアルキル)で置換されることができる。
【0034】
アリールは、1、2または3個の環(かかる環はペンダント基として一緒に結合しているかまたは縮合していてもよく、例えばフェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、インダンおよびビフェニルである)を含有する炭素芳香族系を意味する。アリール置換基はまた、1つ以上の置換基、例えばアルキル、ハロアルキル、アルコキシ、ヒドロキシル、アミノ、ハロ、ニトロ、アルキルアミノ、アシル、シアノ、カルボキシ、チオアルキル、アルコキシカルボニルで置換されていてもよい。置換可能な位置でアルキル置換基を含むアリール置換基を、本明細書においてアルカリール、例えばベンジル、ジフェニルメチル、トリフェニルメチル、フェニルエチル、およびジフェニルエチルという。
【0035】
ある態様においてR1、R3およびR4は水素であり、R2はメチルである(すなわち、該ポリマーはクレゾール/ホルムアルデヒドノボラック樹脂である)。別の態様においてmは約0.25(すなわち、1つのB単位対3つのA単位)〜1.0(すなわち、すべてB単位)の範囲である。別の態様においてmは約0.5より大きい。
【0036】
他の硫酸化フェノール樹脂は、構造AとBで示される反復単位を含むポリマーであり、R1、R2、R3、およびR4、およびmは上記で定義したものであり、X+は、リチウムイオン、カリウムイオン、およびナトリウムイオンよりなる群から選択される陽性イオンである。他の硫酸化フェノール樹脂は、構造AとBで示される反復単位を含むポリマーであり、R1、R2、R3、およびR4、およびmは上記で定義したものであり、X+は、アンモニウム、アルキルアンモニウム、アリールアンモニウム、環状アンモニウム、ピロリジニウム、ピリジニウム、ジアゾニウム、スルホニウム、およびヨードニウムよりなる群から選択される陽性イオンである。Newman、米国特許第4,708,925号;およびOohashi、米国特許出願公開第2002/006824号に記載のジアゾニウム、スルホニウム、およびヨードニウムも使用される。特に対イオンX+はアンモニウムである。
【0037】
ある態様において硫酸化フェノール樹脂は、かなり水溶性である。例えば1グラムの水溶性硫酸化フェノール樹脂は、室温で約100mlまたはそれ以下の水に溶解される。さらに好ましくは少なくとも約3〜約15グラムまたはそれ以上の水溶性硫酸化フェノール樹脂は、室温で100mlの水に容易に溶解される。本発明のある水溶性硫酸化フェノール樹脂について、硫酸化度は約0.25またはそれ以上、好ましくは約0.3またはそれ以上、最も好ましくは約0.5またはそれ以上である。
【0038】
硫酸化フェノール樹脂の水溶液は、中性〜塩基性pHで維持するのがよい。硫酸化フェノール樹脂水溶液のpHが5未満、特に4未満の場合、硫酸化フェノール樹脂は溶液中で安定ではなく、分解して沈殿物を形成する。フェノール樹脂の溶解度のpH依存性についての考察は、Flanagin, Macromolecules 32, 5337 (1999)を参照されたい。溶液のpHは、従来法(適当量の酸、塩基、または緩衝液を加えることを含む)により調整することができる。
【0039】
熱感受性組成物のある態様において、硫酸化フェノール樹脂は熱感受性組成物の少なくとも約50重量%を占める。別の態様において硫酸化フェノール樹脂は、熱感受性組成物の少なくとも70重量%、少なくとも80重量%、少なくとも90%、または少なくとも95重量%を占める。
【0040】
硫酸化フェノール樹脂を含む熱感受性組成物は、結合剤または放射線吸収成分のような成分を含むことができる。
【0041】
熱または光感受性組成物について多くの結合剤が当該分野で公知である。ポリマー結合剤が好適である。例えば水溶性結合剤が使用される。好適な水溶性結合剤には、例えばポリビニルピロリドン、ポリ(ビニルアルコール)、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリビニルイミダゾール、ポリエチレンイミン、ポリ(エチルオキサゾリン)、ゼラチン、デンプン、デキストリン、アミロゲン、アラビアゴム、寒天、アルギン、カラゲニン、フコイダン、ラミナラン、コーンハルガム(corn hull gum)、ガッチゴム、カラヤゴム、ローカストビーンガム、ペクチン、グアールガム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびカルボキシメチルセルロースがある。
【0042】
水溶性ではない結合剤も好適である。いくつかの好適な非水溶性結合剤には、例えばポリビニルピロリドン/酢酸ビニル共重合体およびポリビニルピロリドン/カプロラクタムビニル共重合体がある。
【0043】
熱感受性組成物が結合剤を含む場合、結合剤は、熱感受性組成物の約30重量%以下、好ましくは約20重量%以下、さらに好ましくは約10重量%以下、最も好ましくは約5重量%以下を含む。
【0044】
画像形成可能層は、赤外線吸収剤(光熱変換物質として知られている)を含む。光熱変換物質は放射線を吸収して、これを熱に変換する。光熱変換物質は熱体を用いる画像形成には必要ではないが、光熱変換物質を含有する画像形成可能要素を、熱体(例えば、サーマルヘッドまたは一連のサーマルヘッド)で画像形成してもよい。
【0045】
光熱変換物質は、放射線を吸収してこれを熱に変換する任意の物質となることができる。好適な物質には、例えば色素と顔料がある。好適な顔料には、例えばカーボンブラック、ヘリオゲングリーン、ニグロシン塩基、酸化鉄(III)、酸化マンガン、プルシアンブルー、およびパリスブルーがある。低コストと、広範囲のピーク発光波長を有する画像形成装置で使用することを可能にする広い吸収バンドのために、1つの有用な顔料はカーボンブラックである。顔料粒子のサイズは、顔料を含有する層の厚さ以下である。好ましくは粒子のサイズは、層の厚さの半分またはそれ以下である。
【0046】
光熱変換物質は、適切な吸収スペクトルを有する色素でもよい。色素、特に750nm〜1200nmの範囲に高い吸光係数を有する色素が好ましい。好適な同様の例には、以下のクラスの色素がある:メチン、ポリメチン、シアニン、アリールメチン、ヘミシアニン、ストレプトシアニン、スクアリリウム、ピリリウム、オキソノール、ナフトキノン、アントラキノン、ポルフィリン、アゾ、クロコニウム、トリアリールアミン、チアゾリウム、インドリウム、オキサゾリウム、インドシアニン、インドトリカルボシアニン、オキサトリカルボシアニン、フタロシアニン、チオシアニン、チアトリカルボシアニン、メロシアニン、クリプトシアニン、ナフタロシアニン、ポリアニリン、ポリチオフェン、カルコゲノピリロアリーリデン、およびビス(カルコゲノピリロ)ポリメチン、ポリピロール、オキシインドリジン、ピロゾリンアゾ、およびオキサジンクラス。吸収性色素は多くの刊行物、例えばNagasaka, 欧州特許第0,823,327号;DeBoer, 米国特許第4,973,572号;Jandrue, US Patent No. 5,244,771号;およびChapman, 米国特許第5,401,618号に開示されている。有用な吸収性色素の例には以下がある:ADS-830AおよびADS-1064(アメリカンダイソース(American Dye Source)、モントリオール、カナダ)、EC2117(FEW、ウォルフェン(Wolfen)、ドイツ)、シナソルブIR99およびシナソルブIR165(グレンデールプロテクティブテクノロジー(Glendale Protective Technology)、エポライトIV-62BとエポライトIII-178(エポリン(Epolin))、PINA-780(アライドシグナル(Allied Signal))、スペクトラIR 830AとスペクトラIR840A(スペクトラカラーズ(Spectra Colors))、およびIR色素A。その構造を以下に示す:
【0047】
【化3】

【0048】
画像形成可能要素が水または湿し水で現像される場合、水に溶解する赤外線吸収性化合物が好適である。式Iの水溶性N-アルキル硫酸赤外線吸収性シアニン化合物を画像形成可能層で使用することができる。
【0049】
【化4】

【0050】
(式中、Rは水素、またはRは1つ以上のアルキル、置換または非置換アラルキル、アルコキシ、カルボキシ、ニトロ、シアノ、トリフルオロメチル、アシル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、もしくはハロゲン基であるか、またはRは置換または非置換ベンゾ基を形成するのに必要な原子である:
【0051】
Aは(CH2)n;ここでnは1〜5であり;好ましくは2〜4である;
Yは、O、S、NR'、またはC(R')2であり、ここでR'は水素またはアルキルであり;好ましくはメチルである;
Zは、水素、ハロゲン、アルキル、置換または非置換アラルキル;置換または非置換アロキシル、置換または非置換チオアロキシル、または置換または非置換ジフェニルアミノであり;
mはゼロまたは1であり;
Xは陽イオン、好ましくはナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、または置換アンモニウムである。
Yは好ましくはSまたはC(CH3)2である)。
【0052】
これらの赤外線吸収剤組成物の調製は、米国特許出願第10/736,364号に記載されている。例えばトリエチルアンモニウム塩は、以下の方法により調製される:
【0053】
【化5】

【0054】
赤外線吸収剤の量は一般に、画像形成可能層で画像形成波長で少なくとも0.05の光学密度、好ましくは約0.5〜少なくとも約2から3の光学密度を与えるのに充分なものである。当業者に公知のように特定の光学密度を与えるのに必要な化合物の量は、それが存在する層の厚さと、ベールの法則(Beer's law)を使用して画像形成のための使用される波長での赤外線吸収剤の吸光係数とから決定することができる。光熱変換物質は典型的には、画像形成可能層の総重量の約0.1〜25重量%の画像形成可能層を含む。光熱変換物質が顔料である時、これは好ましくは画像形成可能層の約10〜約20重量%を含む。光熱変換物質が色素である時、赤外線吸収剤は典型的には画像形成可能層の約2〜約15重量%を含む。
【0055】
画像形成可能層はまた、他の成分、例えば画像形成可能組成物および画像形成可能層の通常成分である色素や界面活性剤を含んでもよい。例えばコーティング補助物質として界面活性剤が画像形成可能層中で存在してもよい。画像形成および/または現像された要素の視覚的検査を補助するために、色素が存在してもよい。プリントアウト色素は、処理中に画像形成領域を非画像形成領域から区別する。コントラスト色素は、現像された画像形成可能要素中の画像形成領域から非画像形成領域を区別する。好ましくはこれらの色素は画像形成放射線を吸収しない。他の通常の成分には、例えば分散剤、殺生物剤、可塑剤、粘度改質剤またはレオロジー改質剤、消泡剤、保存剤、抗酸化剤、およびこれらの組合せがある。追加の結合剤、例えば水溶性結合剤(例えばポリビニルピロリドン)も存在してもよい。
【0056】
基板は支持体を含み、これは平版印刷版として有用な画像形成可能要素を調製するのに通常使用される任意の物質となることができる。この支持体は好ましくは、強く、安定で可撓性を有する。これは、使用条件下での構造変化に抵抗し、色の記録はフルカラー画像で記録される。典型的にはこれは任意の自立式材料であり、例えばポリマーフィルム(例えばポリエチレンテレフタレートフィルム)、セラミックス、金属、もしくは硬いペーパー、またはこれらの任意の材料の積層体となることができる。金属支持体は、アルミニウム、亜鉛、チタン、およびこれらの合金を包含する。
【0057】
典型的にはポリマーフィルムは、1つまたは両方の表面にサブコーティングを含んで、表面特性を改質して表面の親水性を増強し、以後の層への接着を改良し、ペーパー基板の平面性を改良する、などをする。この層の性質は、基板と以後の層の組成とに依存する。下塗り層材料の例は、接着促進物質、例えばアルコキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、グリシドキシプロピルトリエトキシシランおよびエポキシ機能性ポリマー、ならびに写真フィルムで使用されるポリエステルベース上で使用される通常の下塗り物質である。
【0058】
アルミニウム支持体の表面は、当該分野で公知の方法(物理的砂目立て、電気化学研磨、化学研磨、および陽極酸化処理)により処理される。基板は、印刷の摩耗に耐える充分な厚さであり、印刷中のシリンダーの周りを包むのに充分な薄さであるのがよく、典型的には約100μm〜約600μmである。典型的には基板は、アルミニウム支持体と画像形成可能層との間に中間層を含んでなる。中間層は、アルミニウム支持体を、例えばケイ酸塩、デキストリン、ヘキサフルオロケイ酸、リン酸塩/フッ化物、ポリビニルリン酸(PVPA)、リン酸ビニル共重合体、または水溶性ジアゾ樹脂で処理することにより形成することができる。
【0059】
支持体の裏面は(すなわち画像形成可能層と反対側)は、静電気防止剤および/またはスリップ層またはマット層でコーティングされて、画像形成可能要素の取り扱いと「触感」を改善する。
【0060】
画像形成可能要素は、従来法を使用して基板の親水性表面上に画像形成可能層を適用することにより調製することができる。画像形成可能層は、従来法、例えばコーティングまたは積層により適用することができる。典型的には画像形成可能層の成分は、コーティング溶媒、例えば水または水と有機溶媒(例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、および/またはアセトン)との混合物に溶解して、生じる混合物を従来法、例えばスピンコーティング、バーコーティング、グラビアコーティング、ダイコーティング、スロットコーティング、またはローラーコーティングによりコーティングされる。コーティング後、層を乾燥させてコーティング溶媒を除去する。得られた要素は、周囲温度または高温、例えばオーブン中で約65℃で約20秒間風乾することができる。あるいは得られた画像形成可能要素を、要素上に暖かい空気を吹き付けることにより乾燥してもよい。画像形成可能層のコーティング重量は、典型的には約0.5g/m2〜約2.5g/m2、好ましくは約1g/m2〜約1.5g/m2である。
【0061】
要素は、画像形成可能要素により吸収される波長領域で調節された近赤外または赤外線を放出するレーザーまたは一連のレーザーで熱により画像形成することができる。赤外線、特に約800nm〜約1200nmの範囲の赤外線は、典型的には画像形成のために使用される。画像形成は、約830nm、約1056nm、または約1064nmで放出するレーザーで都合よく行われる。好適な市販の画像形成装置には、クレオ(CREO)(商標)トレンドセッター(Trendsetter)(クレオ(CREO)、バーナビー(Burnaby)、ブリティッシュコロンビア、カナダ)、スクリーンプレートライト(Screen PlateRite)モデル4300、モデル8600、およびモデル8800(スクリーン(Screen)、ロリングメドーズ(Rolling Meadows)、シカゴ、イリノイ州、アメリカ合衆国)およびガーバークレセント(Gerber Crescent)42T(ガーバー(Gerber))がある。
【0062】
あるいは画像形成可能要素は、熱体、例えばサーマル印刷ヘッドを有する通常の装置を使用して熱的に画像形成することができる。好適な装置には、少なくとも1つのサーマルヘッドがあるが、通常は、サーマルファックス機と昇華プリンター、GS618-400サーマルプロッター(オヨインストルメンツ(Oyo Instruments)、ヒューストン、テキサス州、アメリカ合衆国)、またはモデルVP-3500サーマルプリンター(セイコーシャアメリカ(Seikosha America)、マーワー(Mahwah)、ニュージャージー州、アメリカ合衆国)で使用されるTDKモデルNo.LV4316のようなサーマルヘッドアレイがある。
【0063】
画像形成は画像形成された要素を作成し、これは画像形成領域と相補的な非画像形成領域の潜像を含む。印刷版または印刷フォームを生成するための画像形成要素の現像は、画像形成領域を除去して下層の基板の親水性表面を露出させることにより、潜像を画像に変換する。画像形成要素は、水性液体(例えば水または湿し水)を用いて、印刷機上または通常の洗浄/ガム装置中で洗浄される。この工程は、画像形成領域を除去するが、相補的な非画像形成領域を除去しない。
【0064】
画像形成された画像形成可能要素は水の中で現像してもよい。蒸留水または脱イオン水が使用することができるが、画像形成可能要素は典型的には水道水で現像することができる。水道水による現像は典型的には、オンプレスではなく別の現像処理機で行われるが、水が使用される場合は高価な高pH現像剤を調製し処理する必要はない。さらには、水の中で画像形成された画像形成可能要素を現像するのに簡単な現像処理機が必要なだけであり、高価な現像処理機は必要ではない。
【0065】
あるいは、画像形成された画像形成可能要素は、画像形成後に直接印刷機に取付けることができ、開始の印刷中に湿し水で現像される。印刷機に取付ける前に、別個の現像工程は必要無い。これは、現像処理機と現像剤を用いる別個の現像工程を排除し、こうして印刷プロセスを単純化し、必要な高価な装置の量を減少させる。画像形成された画像形成可能要素は、平版印刷機の感光板シリンダー上に取付けられ、プレスシリンダーを回転し要素を湿し水と接触させることにより、湿し水で現像される。
【0066】
多くの水性湿し水が当該分野で公知である。湿し水は例えば、Matsumoto、米国特許第5,720,800号;Archer、米国特許第5,523,194号;Chase、米国特許第5,279,648号;Bondurant、米国特許第5,268,025号、5,336,302号、および5,382,298号;Egberg、米国特許第4,865,646号;およびDaugherty、米国特許第4,604,952号に開示されている。水(典型的には脱イオン水)以外の水性湿し水の代表的な成分には、pH緩衝化システム、例えばリン酸およびクエン酸緩衝液;不感脂化物質、例えばデキストリン、アラビアゴム、およびカルボキシメチルセルロースナトリウム;界面活性剤と湿潤剤、例えばスルホン酸アリールおよびアルキル、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、およびアルコールとフェノールのポリエチレンオキシド誘導体;保湿剤、例えばグリセリンおよびソルビトール;低沸点溶媒、例えばエタノールおよび2-プロパノール;金属イオン封鎖剤、例えばボラックス、ヘキサメタリン酸ナトリウム、およびエチレンジアミン四酢酸の塩;殺生物剤、例えばイソチアゾリノン誘導体;および消泡剤がある。湿し水の代表的なpH範囲は、枚葉紙印刷機について約3.7〜約6.7、およびウェブ印刷機について約7.0〜約9.6である。
【0067】
通常の湿潤プレス平版印刷では、湿し水と次のインクは印刷感光板に適用される。統合インク/湿し系を有する印刷機について、インクと湿し水は、種々の印刷機ローラーで乳化した後に、インクと湿し水のエマルジョンとして感光板に転写される。しかし本発明ではインクと湿し水は、感光板の必要に応じて任意の組合せまたは配列で適用することができる。
【0068】
オンプレス画像形成について、画像形成可能要素は平版印刷機シリンダーにのせられて画像形成され、画像形成された画像形成可能要素はオンプレスで初期印刷操作中に湿し水で現像される。これは、画像形成可能要素(または、多色印刷のための複数の要素)が、コンピューター作成デジタル画像形成情報に従って感光板シリンダー上で直接画像形成されるコンピューター対印刷機応用に特に適しており、最小の処理または処理無しで、通常の印刷シートに直接印刷される。オンプレス画像形成は、例えばクイックマスター(Quickmaster)DI46-4印刷機(ハイデルベルガードルックマキネン(Heidelberger Druckmaschinen)、ヘイデルベルグ、ドイツ)で行われる。
【0069】
産業上の利用可能性
本発明の画像形成可能要素は、水で、またはオンプレスで現像剤として湿し水を使用して現像することができ、こうして水性アルカリ性現像剤の使用に関連するコストを回避することができる。画像形成可能要素が画像形成され平版印刷版が形成されると、その表面上の画像に湿し水と次に平版印刷インクを適用することにより印刷が行われる。湿し水は非画像形成領域(すなわち、画像形成と現像プロセスにより露出された親水性基体の表面)により取り上げられ、インクは画像形成領域(すなわち現像プロセスにより除去されない領域)により取り上げられる。次にインクは、オフセット印刷ブランケットを使用して直接または間接に好適な受容物質(例えば、布、ペーパー、金属、ガラスまたはプラスチック)に転写されて、その上に所望の画像印刷を提供する。
【0070】
本発明の有益な性質は以下の例を参照して理解されるが、これは本発明を例示するものであってこれを限定するものではない。
【実施例】
【0071】
これらの例では「コーティング溶液」は、コーティングされる溶媒と添加剤の混合物を意味するが、一部の添加剤は溶液ではなく懸濁液中にあり、「総固体」はコーティング溶液中の非揮発性物質の総量を意味するが、一部の添加剤は周囲温度で非揮発性液体でもよい。特に明記しない場合は、記載のパーセントはコーティング溶液中の固体総量に基づく重量パーセントである。
【0072】
用語
AP樹脂:アセトン−ピロガロールフェノール樹脂(クラリアント(Clariant)、ブリグネ(Brignais)、フランス)
DMF:N,N'-ジメチルホルムアミド
フィッシャー塩基:1,3,3-トリメチル-2-メチレンインドリン;CAS#118-12-7(ティーシーアイアメリカ(TCI America)、ポートランド、オレゴン州、アメリカ合衆国)
中間体A:2-クロロ-1-ホルミル-3-ヒドロキシルメチレンシクロヘキセン
中間体B:2,3,3-トリメチル-(3-スルファプロピル)インドレニウム、内部塩
IR色素A:2-[2-[2-クロロ-3-[[1,3-ジヒドロ-1,1-ジメチル-3-(3-スルホプロピル)-2H-ベンズ[e]インドール-2-イリデン]エチリデン]-1-シクロヘキセン-1-イル]エテニル]-1,1-ジメチル-3-(3-スルホプロピル)-1H-ベンズ[e]インドリウム、内部塩(イーストマンコダック(Eastman Kodak)、ローチェスター、ニューヨーク州、アメリカ合衆国)
IR色素B:2-[2-[2-クロロ-3-[[1,3-ジヒドロ-3,3-ジメチル-1-(3-スルファプロピル)-2H-インドール-2-イリデン]エチリデン]-1-シクロヘキセン-1-イル]エテニル]-3,3-ジメチル-1-(3-スルファプロピル)-3H-インドリウム、内部塩、N,N-ジエチル-1-エチルアミン(1:1)を有する化合物
IR色素C:2-[2-[2-クロロ-3-[[1,3-ジヒドロ-3,3-ジメチル-1-(3-スルファプロピル)-2H-インドール-2-イリデン]エチリデン]-1-シクロヘキセン-1-イル]エテニル]-3,3-ジメチル-1-(3-スルファプロピル)-3H-インドリウム、内部塩、ナトリウム(1:1)を有する化合物
【0073】
IR色素D:下記の構造参照
IR色素E:4-[5-(4,6,6-トリシアノ-5-(4-カルボキシフェニル)-2,4-ヘキサジエニリデン)-2-(4,6,6-トリシアノ-5-(4-カルボキシフェニル)-1,3,5-ヘキサトリエニル)-1-シクロペンテン-1-イル]-1-ピペラジンカルボン酸、エチルエステル、N,N-ジエチルエタンアミン(1:3)を有する化合物
IR色素F:下記の構造参照
IR色素G:2-[2-[2-クロロ-3-[[1,3-ジヒドロ-1,1-ジメチル-3-(3-スルホプロピル)-2H-ベンズ[e]インドール-2-イリデン]エチリデン]-1-シクロヘキセン-1-イル]エテニル]-1,1-ジメチル-3-(3-スルホプロピル)-1H-ベンズ[e]インドリウム、内部塩
IR色素H:赤外線吸収色素(シバーヘグナー北アメリカ(Siber Hegner North America)、ボルチモア、メリーランド州、アメリカ合衆国、カタログ番号SH820WS)
LB-6564:フェノール/クレゾールノボラック樹脂(ベークライトエージー(Bakelite AG)、サザンプトン、英国)
【0074】
ロジン(LODYNE)(商標)103A:フルオロ界面活性剤(チバスペシャルティケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals)、タリイタウン(Tarrytown)、ニューヨーク、アメリカ合衆国)
ロジン(LODYNE)(商標)S-228M:陰イオン性界面活性剤、フルオロおよびシリコーン界面活性剤の混合物(チバスペシャルティケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals)、タリイタウン(Tarrytown)、ニューヨーク、アメリカ合衆国)
m-TMI:3-イソプロペニル-アルファ、アルファ-ジメチルベンジルイソシアネート
N-13:ノボラック樹脂;100% m-クレゾール;分子量13,000(イーストマンコダック(Eastman Kodak)、ローチェスター、ニューヨーク州、アメリカ合衆国)
ポリアクリルアミド:ポリアクリルアミド(分子量約10kDa)(シグマ−アルドリッチ(Sigma-Aldrich)、ミルウォーキー、ウィスコンシン州、アメリカ合衆国)
ポリアクリル酸:ポリアクリル酸(分子量約2kDa)(シグマ−アルドリッチ(Sigma-Aldrich)、ミルウォーキー、ウィスコンシン州、アメリカ合衆国)
ポリ(ビニルアルコール):88%ポリ(ビニルアルコール)(分子量約13kDa〜約23kDa)(シグマ−アルドリッチ(Sigma-Aldrich)、ミルウォーキー、ウィスコンシン州、アメリカ合衆国)
ポリ(ビニルアルコール):75%ポリ(ビニルアルコール)(分子量約9kDa〜約10kDa)(シグマ−アルドリッチ(Sigma-Aldrich)、ミルウォーキー、ウィスコンシン州、アメリカ合衆国)
【0075】
PP-1:ポリ(4-ヒドロキシルスチレン)、分子量=23,000(ヘキスト(Hoechst))
PP-2:60:40 ポリ(スチレン-co-アリルアルコール)、分子量=2,200(アルドリッチ(Aldrich)、ミルウォーキー、ウィスコンシン州、アメリカ合衆国)
PP-3:共重合体、下記の構造参照(コクサンケミカル(Kokusan Chemical)、東京、日本)
PP-4:共重合体、下記の構造参照(コダックポリクロームグラフィクス(Kodak Polychrome Graphics)、群馬、日本)
PP-9:ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)、分子量=300,000(サイエンティフックポリマープロダクツ(Scientific Polymer Products)、オンタリオ、ニューヨーク州、アメリカ合衆国)
PP-10:ポリ(2-ヒドロキシプロピルメタクリレート)、分子量=300,000(サイエンティフックポリマープロダクツ(Scientific Polymer Products)、オンタリオ、ニューヨーク州、アメリカ合衆国)
PVP K15:ポリビニルピロリドン(分子量約6kDa〜約15kDa)、約30%の固体を有する淡黄色の水溶液として供給される(アイエスピーテクノロジーズ(ISP Technologies)、ウェイン(Wayne)、ニュージャージー州、アメリカ合衆国)
【0076】
PVP K30:ポリビニルピロリドン(分子量約40kDa〜約80kDa)、固体として供給される(アイエスピーテクノロジーズ(ISP Technologies)、ウェイン(Wayne)、ニュージャージー州、アメリカ合衆国)
PVP K60:ポリビニルピロリドン(分子量約240kDa〜約450kDa)、約49%の固体を有する淡黄色の水溶液として供給される(アイエスピーテクノロジーズ(ISP Technologies)、ウェイン(Wayne)、ニュージャージー州、アメリカ合衆国)
PVP K90:ポリビニルピロリドン(分子量約900kDa〜約1500kDa)、21.6%の固体を有する黄色の水溶液として供給される(アイエスピーテクノロジーズ(ISP Technologies)、ウェイン(Wayne)、ニュージャージー州、アメリカ合衆国)
ピリジン−SO3錯体:硫酸化剤(アルドリッチ(Aldrich)、ミルウォーキー、ウィスコンシン州、アメリカ合衆国)
【0077】
基板A:ポリ(ビニルホスホン)酸の溶液で電解研磨され、陽極酸化処理された0.3mm厚のアルミニウムシート
基板B:ポリ(ビニルホスホン)酸(PVPA)で電解研磨され、陽極酸化処理された0.3mm厚のアルミニウムシート
THF:テトラヒドロフラン
バゾ(VAZO)(商標)-64:アゾビスイソブチリロニトリル(デュポン(DuPont)、ウィルミントン、デラウェア州、アメリカ合衆国)
【0078】
【化6】

【0079】
【化7】

【0080】
硫酸化ポリマーの合成のための一般的方法
1. アンモニウムイオンを含有する硫酸化ポリマーの合成
本例は、アンモニウムイオンを含有する硫酸化ポリマーの合成のための一般的方法を記載する(硫酸化ポリマー1A、2A、3A、4A、5A、6A、7A、8A、9A、および10A)。
【0081】
5.0〜10.0gの前駆体ポリマー、2.0〜8.0gのピリジン−SO3錯体、および25〜100gのピリジンを、磁気攪拌棒を備えた250mlのフラスコに加え、反応混合物を室温で18時間攪拌した。反応混合物から溶媒をデカントし、粘性残渣を2〜10mlの30%水酸化アンモニウム水溶液で30分間攪拌した。ポリマーを600〜1,000mlの2-プロパノール、テトラヒドロフラン、アセトン、またはジエチルエーテルで沈殿させ、ろ別した。生じたポリマーを20〜100gの水に溶解し、溶液をさらなる使用のために保存した。
【0082】
2. ピリジニウムイオンを含有する硫酸化ポリマーの合成
本例は、ピリジニウムイオンを含有する硫酸化ポリマーの合成のための一般的方法を記載する(硫酸化ポリマー3B、4B、5B、および8B)。
【0083】
5.0〜10.0gの前駆体ポリマー、2.0〜8.0gのピリジン−SO3錯体、および25〜100gのピリジンを、磁気攪拌棒を備えた250mlのフラスコに加え、反応混合物を室温で18時間攪拌した。反応混合物から溶媒をデカントし、粘性残渣を600〜1,000mlの2-プロパノール、テトラヒドロフラン、アセトン、またはジエチルエーテルで沈殿させ、ろ別した。生じたポリマーを20〜100gの水または水/アルコールに溶解し、溶液をさらなる使用のために保存した。
【0084】
3. テトラメチルアンモニウムイオンを含有する硫酸化ポリマーの合成
本例は、テトラメチルアンモニウムイオンを含有する硫酸化ポリマーの合成のための一般的方法を記載する(例えば、3C、4C、および5C)。
【0085】
5.0〜10.0gの前駆体ポリマー、2.0〜8.0gのピリジン−SO3錯体(アルドリッチ(Aldrich)、ミルウォーキー、ウィスコンシン州、アメリカ合衆国)、および25〜100gのピリジンを、磁気攪拌棒を備えた250mlのフラスコに加え、反応混合物を室温で18時間攪拌した。反応混合物から溶媒をデカントし、生成物を2〜10mlの25%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液で30分間攪拌した。次に反応混合物を600〜1,000mlの2-プロパノールまたはテトラヒドロフランで沈殿させ、生じたポリマーをさらなる使用のために20〜100gの水(または水/アルコール)に溶解した。
あるいは、これらのポリマーの硫酸化剤としてスルファミン酸を使用してもよい。
【0086】
4. ナトリウムイオンを含有する硫酸化ポリマーの合成
本例は、ナトリウムイオンを含有する硫酸化ポリマーの合成のための一般的方法を記載する(例えば、6Bおよび7B)。
【0087】
5.0〜10.0gの前駆体ポリマー、2.0〜8.0gのピリジン−SO3錯体、および25〜100gのピリジンを、磁気攪拌棒を備えた250mlのフラスコに加え、反応混合物を室温で18時間攪拌した。溶媒をデカント後、ポリマーを10〜20mlの10%水酸化ナトリウムで30分間攪拌した。次に反応混合物を600〜1,000mlのイソプロピルアルコールまたはテトラヒドロフランで沈殿させ、生じたポリマーをさらなる使用のために20〜100gの水(または水/アルコール)に溶解した。
【0088】
例1
本例は前駆体ポリマー5(PP-5)の合成を例示する。
【0089】
【化8】

【0090】
600gの2-メトキシエタノール、49.9gのヒドロキシエチルメタクリレート、32.8gのスチレン、7.5gのブチルメタクリレート、7.7gのメタクリル酸、1.96gのバゾ(VAZO)(商標)-64、および0.245gのドデシルメルカプタンを、加熱マントル、温度コントローラー、機械攪拌棒、冷却器、窒素入り口、および滴下ロートを備えた2リットルの四つ口フラスコに充填した。反応混合物を窒素下で80℃に加熱した。149.6gのヒドロキシエチルメタクリレート、98.3gのスチレン、22.4gのブチルメタクリレート、23.0gのメタクリル酸、3.90gのバゾ(VAZO)(商標)-64、および0.73gのドデシルメルカプタンを、2時間かけて加え、次に追加の0.98gのバゾ(VAZO)(商標)-64を加えた。反応混合物を80℃でさらに2時間加熱し、追加の0.98gのバゾ(VAZO)(商標)-64を加えた。反応混合物をさらに4時間加熱し、室温まで冷却させた。ポリマー変換は>98%であった。粘度は不揮発分40%で550cpsであった。酸価は50.0であった。
【0091】
空気駆動ミキサーを使用して4000rpmでポリマーを水/氷混合物中で沈殿させた。生成物をろ別し、オーブン中で約49℃(120°F)で一晩乾燥させた。
【0092】
例2
本例は前駆体ポリマー6(PP-6)の合成を例示する。
【0093】
【化9】

【0094】
モノマー1の合成:50.23gのm-TMIを、加熱マントル、温度コントローラー、機械攪拌棒、冷却器、および窒素入り口を備えた500mlの四つ口フラスコに充填した。反応混合物を窒素下で30℃に加熱した。次に234.2gのジメチルアセトアミドと27.82gのp-アミノフェノールの混合物を30℃で加えた。2時間後、温度をゆっくり40℃に上げた。反応の進行を、2275cm-1でのNCO吸収の消失により追跡した。
【0095】
【化10】

【0096】
前駆体ポリマー6の合成:210.0gのジメチルアセトアミド、120gのモノマー1(25%不揮発分)、48.87gのN-フェニルマレイミド、および21.0gのメタクリルアミドを、500mlの四つ口フラスコに充填した。反応混合物を60℃に加熱した。反応混合物に窒素を1時間通過させ、次に反応の残りの時間反応混合物上で窒素雰囲気を維持した。0.135gのバゾ(VAZO)(商標)-64を加え、反応混合物を58〜60℃で2時間維持した。この段階でポリマーへの変換は、不揮発部ベースで約94%であった。さらに0.3gのバゾ(VAZO)(商標)-64を加え、温度を80℃に上げた。ポリマー変換は数時間後、同じままであった。粘度は不揮発分25%で50cpsであった。
【0097】
空気駆動ミキサーを使用して4000rpmでポリマーを水/氷混合物中で沈殿させた。生成物をろ別し、オーブン中で約49℃(120°F)で一晩乾燥させた。
【0098】
例3
本例は前駆体ポリマー7(PP-7)の合成を例示する。
【0099】
【化11】

【0100】
300.0gのジメチルアセトアミド、30.0gのヒドロキシエチルメタクリレート、48.87%のN-フェニルマレイミド、および21.0gのメタクリルアミドを、加熱マントル、温度コントローラー、機械攪拌棒、冷却器、および窒素入り口を備えた1リットルの四つ口フラスコに充填した。反応混合物を60℃に加熱した。反応混合物に窒素を1時間通過させ、次に反応の残りの時間反応混合物上で窒素雰囲気を維持した。0.135gのバゾ(VAZO)(商標)-64を加え、反応混合物を58〜60℃で2時間維持した。この段階でポリマーへの変換は、不揮発分パーセントベースで約80%であった。さらに0.3gのバゾ(VAZO)(商標)-64を加え、さらに2時間温度を80℃に上げた。ポリマー変換は>98%で粘度は不揮発分25%で275cpsであった。
【0101】
空気駆動ミキサーを使用して4000rpmでポリマーを水/氷混合物中で沈殿させた。生成物をろ別し、オーブン中で約49℃(120°F)で一晩乾燥させた。
【0102】
例4
本例は前駆体ポリマー8(PP-8)の合成を例示する。
【0103】
【化12】

【0104】
例3の方法を繰り返したが、ただし50.0gのヒドロキシエチルメタクリレート、35.0gのN-フェニルマレイミドおよび15.0gのメタクリルアミドを使用した。
【0105】
例5
本例は2-クロロ-1-ホルミル-3-ヒドロキシメチレンシクロヘキセン(中間体A)の合成を例示する。
【0106】
【化13】

【0107】
80mlのDMFを、機械攪拌棒、窒素入り口、冷却器、温度計および均圧追加ロートをを備えた500mlの丸底フラスコに入れた。フラスコを氷水浴中で冷却し、反応温度を1時間10〜15℃に維持しながら、DMFに74mlのオキシ塩化リンをゆっくり加えた。添加終了後、反応混合物を30分間室温まで暖めた。反応温度を1時間40〜50℃に維持しながら、20gのシクロヘキサノンと100mlのDMFの混合物をゆっくりフラスコに加えた。混合物を水浴中で3時間55℃に加熱し、次に600gの氷と400gの水との混合物中にゆっくり注いだ。反応混合物を約15時間攪拌後、沈殿物をろ過し、中性のろ液を得られるまで水で洗浄した。生じた黄色固体を採取し、周囲温度で暗所で一晩乾燥させた。収率は26gであった。
【0108】
例6
2,3,3-トリメチル-(3-スルファプロピル)インドレニウム、内部塩の調製(中間体B)
【0109】
【化14】

【0110】
冷却器と攪拌棒とを備えた500mlのフラスコで、16gの2,3,3-トリメチルインドレニン(ティーシーアイアメリカ(TCI America))を15gの1,3-プロパンジオール環状硫酸塩(アルドリッチ(Aldrich))と混合した。混合物を油浴中で100℃で14時間加熱した。反応混合物を室温まで冷却後、トルエンをデカントし、橙色の固体残渣を500mlのアセトンと3時間攪拌した。懸濁物をろ過し、3×30mlのアセトンで洗浄した。生成物を周囲温度で乾燥した。収率:16.6g。
【0111】
プロトンNMR(DMSO-d6中):δ 1.53 (6H, s), 2.20 (2H, ペンテット)、2.85 (3H, s), 3.88 (2H, t), 4.56 (2H, t)および7.50-8.00 (4H, m)。
【0112】
例7
2-[2-[2-クロロ-3-[[1,3-ジヒドロ-3,3-ジメチル-1-(3-スルファプロピル)-2H-インドール-2-イリデン]エチリデン]-1-シクロヘキセン-1-イル]エテニル]-3,3-ジメチル-1-(3-スルファプロピル)-3H-インドリウム、内部塩、N,N-ジエチル-1-エチルアミンを有する化合物(1:1)[色素B]の合成
【0113】
【化15】

【0114】
0.3gのトリエチルアミンと0.2gの無水酢酸を、5gのDMFに溶解した。DMF溶液に0.59gの中間体Bと0.18gの中間体Aとを加えた。混合物を室温で1時間攪拌すると、色が暗い緑色になった。さらにリジン0.3gのトリエチルアミンと0.2gの無水酢酸を加え、反応混合物を一晩攪拌した。水−氷浴中で反応混合物を0〜5℃に冷却後、生じた沈殿物をろ別し、30mlの酢酸エチルで洗浄し、真空下で乾燥した。収率:0.40g。
【0115】
プロトンNMR(DMSO-d6中):δ 1.16 (9H, t), 1.68 (12H, s), 1.83 (2H, m), 2.02 (4H, m), 2,74 (4H, m), 3.10 (6H, m), 3.87 (4H, t), 4.26 (4H, t), 6.41 (2H, d), 7.2-7.8 (8H, m), 8.26 (2H, d) および8.85 (1H, br)。
【0116】
例8
2-[2-[2-クロロ-3-[[1,3-ジヒドロ-3,3-ジメチル-1-(3-スルファプロピル)-2H-インドール-2-イリデン]エチリデン]-1-シクロヘキセン-1-イル]エテニル]-3,3-ジメチル-1-(3-スルファプロピル)-3H-インドリウム、内部塩、ナトリウム(1:1)を有する化合物[色素C]の合成
【0117】
【化16】

【0118】
例3で生成した2.0gの色素を、20mlの水、30mlのメタノールおよび1gの酢酸ナトリウムと1時間攪拌した。固体をろ別し、10mlの水で洗浄し、次に10mlのメタノールで洗浄して、室温で一晩乾燥した。収率:1.8g.
プロトンNMR(DMSO-d6中):δ 1.69 (12H, s), 1.84 (2H, m), 2.03 (4H, m), 2.75 (4H, m), 3.89 (4H, t), 4.27 (4H, t), 6.42 (2H, d), 7.2-7.8 (8H, m)および8.28 (2H, d)。
【0119】
例9
本例は、画像形成可能要素中の硫酸化ポリマーの評価を例示する。硫酸化ポリマーの調製のための一般的方法に従って、以下の硫酸化ポリマーを調製した。
【0120】
【化17】

【0121】
【化18】

【0122】
【化19】

【0123】
【化20】

【0124】
画像形成可能層のためのコーティング溶液を表1に示すように調製した。記載の成分以外に試料は微量(<0.01%)のロジン(LODYNE)(商標)S-228Mを含有した。9-3、9-4、9-5、および9-8を除いて、各コーティング溶液を電気化学研磨し、陽極酸化処理し、線巻棒を使用してポリビニルリン酸(PVPA)アルミニウム基板で後処理した。基板上の画像形成可能層からなる生じる画像形成可能要素を、ラナー(Ranar)コンベイヤーオーブンで約76℃で約1分間乾燥した。9-3、9-4、9-5、および9-8はそれぞれ、試料コーター(スロットコーティング装置)からコーティングし、得られた画像形成可能要素を回転ドラム上で乾燥した。画像形成可能層の乾燥コーティング用量は0.5〜2.0g/m2であった。
【0125】
画像形成可能要素のそれぞれを、クレオ(CREO)(商標)トレンドセッター(Trendsetter)3244×イメージセッター(クレオサイテックス(CreoScitex)、バーナビー(Burnaby)、ブリティッシュコロンビア、カナダ)にのせ、830nmのレーザーで12Wの出力と210〜50rpmのドラム速度範囲(画像形成エネルギー130〜550mJ/cm2)で画像形成した。各画像形成された画像形成可能要素を水道水または湿し水で現像して、非画像形成領域を除去した。
【0126】
【表1】

【0127】
良好な画像を達成するための最小露光エネルギーは、例9-1〜9-16では160〜550mJ/cm2で変動した。例9-2と9-17については画像は観察されなかった。例9-18、9-19および9-20については、非常に弱い画像が形成されたが、画像形成領域はインクを受容しないであろう。
【0128】
例10
本例は、硫酸化ノボラック樹脂の調製を例示する。
ノボラックA − 以下の方法により調製される硫酸化ノボラック樹脂の水溶液。LB6564(6g、0.05mol)をジメチルホルムアミド(20g)に溶解した。SO3−ピリジン錯体(4g、0.025mol)とピリジン(2g、0.025mol)を加え、混合物を室温で一晩攪拌した。5mlの30%水酸化アンモニウムを加えると、これは発熱反応を引き起こし、溶液の曇りが起きた。得られた溶液を30分間攪拌した。100mlのテトラヒドロフランを加えると、沈殿物が生成した。沈殿物混合物を30秒間攪拌し、次に10分間放置した。テトラヒドロフラン溶媒をデカントして除去し、10mlのアセトンを加えて沈殿物を洗浄した。アセトンをデカントして除去し、沈殿物を窒素流で乾燥した。固体の沈殿物を水に溶解して15重量%溶液を作成した。
【0129】
硫酸化ノボラック樹脂の水溶液を、pH約7で維持した。本明細書に記載の実験と同様の実験で、pHが約8より大きい場合、または特に約9より大きい場合、露光エネルギーに無関係に水現像中に、硫酸化ノボラックを含有する画像形成可能層は溶解してしまうことが観察された。画像形成された画像形成可能層で潜像が見られたが、画像形成可能層の画像形成領域と非画像形成領域の両方とも洗い流された。
【0130】
一方ノボラック溶液のpHが5未満の場合、または特に4未満の場合、硫酸化ノボラック樹脂は溶液中で安定ではない、分解されたかまたは沈殿物を生成した。
【0131】
この方法を使用して、フェノール樹脂出発物質上の理論的に100%の利用可能なヒドロキシル基が-OSO3-(NH4)+に変換された。
【0132】
ノボラックB − 1.5g(0.009mol)のSO3−ピリジン錯体を使用した以外は、ノボラックAの方法を使用して調製された硫酸化ノボラック樹脂の水溶液(15重量%)。フェノール樹脂出発物質上の理論的に37.5%の利用可能なヒドロキシル基が-OSO3-(NH4)+に変換された。
【0133】
ノボラックC − 2.0g(0.013mol)のSO3−ピリジン錯体を使用した以外は、ノボラックAの方法を使用して調製された硫酸化ノボラック樹脂の水溶液(15重量%)。フェノール樹脂出発物質上の理論的に50%の利用可能なヒドロキシル基が-OSO3-(NH4)+に変換された。
【0134】
ノボラックD − 水酸化アンモニウムの代わりに5mlの水酸化カリウム溶液を使用した以外は、ノボラックAの方法を使用して調製された硫酸化ノボラック樹脂の水溶液(15重量%)。フェノール樹脂出発物質上の理論的に100%の利用可能なヒドロキシル基が-OSO3-K+に変換された。
【0135】
ノボラックX − LB6564をN-13樹脂で置換し、3.0g(0.019mol)のSO3−ピリジン錯体を使用した以外は、ノボラックAの方法を使用して調製された硫酸化ノボラック樹脂の水溶液(16.7重量%)。この方法を使用して、フェノール樹脂出発物質上の理論的に75%の利用可能なヒドロキシル基が-OSO3-(NH4)+に変換された。
【0136】
ノボラックY − LB6564樹脂をN-13樹脂で置換した以外は、ノボラックAの方法を使用して調製された硫酸化ノボラック樹脂の水溶液(16.5重量%)。フェノール樹脂出発物質上の理論的に100%の利用可能なヒドロキシル基が-OSO3-(NH4)+に変換された。
【0137】
例11
本例は、硫酸化ノボラック樹脂の調製を例示する。
【0138】
例11A
本例は、アンモニウム対イオンを用いる硫酸化フェノール樹脂の調製を例示する。
磁気攪拌棒を備えた250mlのフラスコに、10.0gのN-13、8.0gのピリジン-SO3錯体、および50gのピリジンを混合し、混合物を室温で18時間攪拌した。次に反応混合物から溶媒をデカントした。生成物を10mlの30%水酸化アンモニウム水溶液と30分間攪拌した。生じた硫酸化フェノール樹脂を600mlのイソプロピルアルコールで沈殿させた。
【0139】
次に沈殿物を100gの水に溶解して17重量%の水溶液を得た。水溶液中の硫酸化フェノール樹脂を約7またはそれ以上のpHで維持した。硫酸化樹脂は中性または塩基性条件下で安定であるが、酸性条件に暴露されると分解する。
【0140】
使用される試薬の量をベースに、理論的硫酸化度(すなわち、100%置換を仮定する)は約0.60であった。沈殿物のイオウ含量は約7.8重量%であり、これは硫酸化度が約0.40であることを示唆した。この結果は、反応がやや不完全であるか、またはピリジン-SO3錯体が硫酸化反応前に部分的に分解していることを示す。
【0141】
例11B
本例は、ピリジニウム対イオンによる硫酸化フェノール樹脂の調製を例示する。
磁気攪拌棒を備えた250mlのフラスコに、10.0gのN-13、8.0gのピリジン-SO3錯体、および50gのピリジンを混合し、混合物を室温で18時間攪拌した。次に反応物から溶媒をデカントした。次に、得られたポリマーを50mlのイソプロピルアルコールで3回洗浄し、次に85gの水に溶解して26.7重量%の水溶液を得た。水溶液中の硫酸化フェノール樹脂を約7またはそれ以上のpHで維持した。
【0142】
例11C
本例は、アンモニウム対イオンによる硫酸化フェノール樹脂の調製を例示する。
50.0gのピリジン-SO3錯体を、36.0gのLB6564フェノール樹脂と120gのDMFとを含有する溶液に加えた。この溶液を室温で約20時間攪拌した。60mlの28%水酸化アンモニウム水溶液を加え、混合物をさらに2時間攪拌した。次に135mlのメタノールを加え、混合物をさらに2時間攪拌した。
【0143】
生じた曇った懸濁物をろ過し、1.5リットルのアセトンをろ液に攪拌しながら加えて硫酸化フェノール樹脂を沈殿させた。アセトンをデカントし、残った沈殿物を窒素ガス流で乾燥後、沈殿物を100mlの水に溶解して24.3重量%の水溶液を生成した。水溶液中の硫酸化フェノール樹脂を約7またはそれ以上のpHで維持した。
【0144】
例11D
本例は、アンモニウム対イオンによる硫酸化フェノール樹脂の調製を例示する。
25.0gのピリジン-SO3錯体を、18.0gのN-15と60gのDMFとを含有する溶液に加えた。この溶液を室温で約20時間攪拌した。次に30mlの28%水酸化アンモニウム水溶液を加え、混合物をさらに2時間攪拌した。次に70mlのメタノールを加え、混合物をさらに2時間攪拌した。
【0145】
生じた曇った懸濁物をろ過し、800mlのアセトンをろ液に攪拌しながら加えて硫酸化フェノール樹脂を沈殿させた。アセトンをデカントし、沈殿物を窒素ガス流で乾燥後、沈殿物を150mlの水に溶解して12.8重量%の水溶液を生成した。水溶液中の硫酸化フェノール樹脂を約7またはそれ以上のpHで維持した。
【0146】
例11E
本例は、アンモニウム対イオンによる硫酸化フェノール樹脂の調製を例示する。
磁気攪拌棒を備えた250mlのフラスコに、5.0gのAP樹脂、4.0gのピリジン-SO3錯体、および40gのピリジンを混合し、混合物を室温で18時間攪拌した。次に反応物から溶媒をデカントした。
【0147】
反応生成物を5mlの30%水酸化アンモニウム水溶液で0.5時間攪拌した。得られた硫酸化フェノール樹脂を350mlのTHFで沈殿させた。次に沈殿物を30gの水に溶解して21重量%の水溶液を得た。
【0148】
例12
本例は、硫酸化ノボラック樹脂を含有する画像形成可能要素の調製と画像形成を例示する。
【0149】
例12A
例11Aの硫酸化フェノール樹脂の9.8gの17重量%水溶液、40gの水、0.4gのIR色素G、および0.1gの10%ロジン(LODYNE)(商標)103Aを組合せてコーティング溶液を調製した。基板Bを熱回転ドラム上にのせ、コーティング溶液を接触させ、これをポンプで基板に送った。画像形成可能層上に約2分間65.5℃の熱空気を吹き付けて、コーティングされた基板を乾燥した。画像形成可能層の乾燥コーティング重量は約0.86g/cm2であった。
【0150】
得られた画像形成可能要素を、12Wの出力の830nmの赤外線レーザー光と210〜50rpm(画像形成エネルギー130〜540mJ/cm2に対応する)の範囲のドラム速度を有するクレオ(CREO)(商標)トレンドセッター(Trendsetter)上で画像形成した。画像形成された画像形成可能要素を水道水で現像して、画像形成可能層の非露光領域を除去した。得られた画像の解像度は、175ライン/インチで少なくとも2〜98%であり、良好な画像を達成するための最小露光エネルギーは約250mJ/cm2であった。
【0151】
第2の画像形成可能要素を250mJ/cm2で画像形成し、次に直接エービーディック(A.B. Dick)9870複写印刷機(エービーディック(A.B. Dick)、ナイルズ(Niles)、イリノイ州、アメリカ合衆国)にのせた。印刷機にバンサンラバーベース(Van Son Rubber Base)黒インク(バンサンインク(Van Son Ink)、ニメオラ(Mineola)、ニューヨーク州、アメリカ合衆国)を充填した。水性湿し水は、水に約23.5ml/l(3オンス/ガロン)のバーンリトエッチ(Varn Litho Etch)142W(バーンインターナショナル(Varn International)、アジソン、イリノイ州、アメリカ合衆国)、と約23.5ml/l(3オンス/ガロン)のバーンピーエーアール(Varn PAR)(アルコール代替物)を含有した。画像形成された画像形成可能要素を湿し水中で現像して、印刷可能な平版印刷版を得た。少なくとも250枚の良好なプリントを印刷した印刷版が得られた。
【0152】
例12B
例11Aで調製した硫酸化フェノール樹脂の9.8gの17重量%水溶液、35gの水、5gのイソプロピルアルコール、0.4gのIR色素E、および0.1gの10%ロジン(LODYNE)(商標)103Aを組合せてコーティング溶液を調製した。例12Aのようにコーティングを基板Bにコーティングした。画像形成可能層の乾燥コーティング重量は約0.86g/cm2であった。
【0153】
得られた画像形成可能要素を、例12Aのように250mJ/cm2で画像形成し、直接エービーディック(A.B. Dick)印刷機にのせ、湿し水で現像した。現像した版は、良好な品質の少なくとも250枚のコピーを印刷した。
【0154】
例12C
例11Bで調製した硫酸化フェノール樹脂の2.5gの26.7重量%水溶液、7.5gの水、0.075gのIR色素G、および0.02gの10%ロジン(LODYNE)(商標)103Aを組合せてコーティング溶液を調製し、線巻棒を使用して基板Bにコーティングした。画像形成可能要素を、100℃でラナー(Ranar)コンベヤーオーブン(ラナーマヌファクチャリング社(Ranar fg. Co. Inc.)、エルセグンド(Dl Segundo)、カリホルニア州)中で約1分間乾燥した。画像形成可能層の乾燥コーティング重量は約1.0g/m2であった。
【0155】
得られた画像形成可能要素を例12Aのように210〜50rpm(露光エネルギー130〜550mJ/cm2に対応する)の範囲のドラム速度で画像形成し、例12Aのように現像した。良好な画像を達成するための最小露光エネルギーは約200mJ/cm2であった。
【0156】
例12D
例11Cで調製した硫酸化フェノール樹脂の13.5gの24.3重量%水溶液、37.5gの水、0.25gのIR色素G、および0.1gの10%ロジン(LODYNE)(商標)103Aを組合せてコーティング溶液を調製し、例12Aに記載のように基板Bにコーティングした。画像形成可能層の乾燥コーティング重量は約0.86g/m2であった。
【0157】
得られた画像形成可能要素を、12Wの出力で250〜60rpm(例12Aに記載のように露光エネルギー110〜500mJ/cm2に対応する)の範囲のドラム速度で画像形成した。得られた画像形成可能要素を、ヘビーデューティオーブン(Heavy Duty Oven)(ウィスコンシンオーブン社(Wisconsin Oven Corp.)、イーストトロイ、ウィスコンシン州)中で約133℃(272°F)で約2分間プレ加熱し、例12Aに記載のように水道水中で現像した。得られた画像の解像度は、175ライン/インチで少なくとも2〜98%であり、良好な画像を達成するための最小露光エネルギーは約150mJ/cm2のようであった。
【0158】
第2の実験で、画像形成された画像形成可能要素をプレ加熱無しで水道水中で現像した。プレ加熱無しで良好な画像を達成するための最小露光エネルギーは約550mJ/cm2であった。
【0159】
例12E
例11Dで調製した硫酸化フェノール樹脂の3.3gの12.8重量%水溶液、6.7gの水、0.075gのIR色素G、および0.02gの10%ロジン(LODYNE)(商標)103Aを組合せてコーティング溶液を調製し、例12Cに記載のように基板Bにコーティングした。画像形成可能層の乾燥コーティング重量は約1.0g/m2であった。
【0160】
得られた画像形成可能要素を、12Wの出力で210〜50rpm(露光エネルギー130〜550mJ/cm2に対応する)の範囲のドラム速度で画像形成し、約143℃(290°F)でプレ加熱し、例12Dに記載のように水道水中で現像した。良好な画像を達成するための最小露光エネルギーは約160mJ/cm2であった。
【0161】
第2の実験で、画像形成された画像形成可能要素をプレ加熱無しで水道水中で現像した。プレ加熱無しで良好な画像を達成するための最小露光エネルギーは約550mJ/cm2であった。
【0162】
例12F
例1Eで調製した硫酸化樹脂の2.86gの21重量%水溶液、7.2gの水、0.05gのIR色素G、および0.01gの10%ロジン(LODYNE)(商標)103Aを組合せてコーティング溶液を調製し、例12Cに記載のように基板Bにコーティングした。画像形成可能層の乾燥コーティング重量は約0.8g/m2であった。
【0163】
得られた画像形成可能要素を、12Wの出力で250〜60rpm(露光エネルギー110〜500mJ/cm2に対応する)の範囲のドラム速度で画像形成し、例12Aに記載のように現像した。得られた画像の解像度は、175ライン/インチで少なくとも2〜97%であり、良好な画像を達成するための最小露光エネルギーは約400mJ/cm2のようであった。
【0164】
例13
例13Aと13B
コーティング溶液は表2のように調製した。充分量の水を使用して、約1.5g/m2の乾燥コーティング重量を得た。各コーティング溶液を線巻棒を使用して基板Bの上にコーティングした。画像形成可能層の乾燥コーティング重量は約1.5g/m2であった。
【0165】
【表2】

【0166】
得られた画像形成可能要素を室温で48時間エージングした後、クレオ(CREO)(商標)トレンドセッター(Trendsetter)を用いて830nmの赤外線レーザー光で内部試験パターン(15.5Wレーザー出力、ドラム速度117、100、87、77および70rpm、これは画像形成エネルギー300、350、400、450および500mJ/cm2に対応する)を使用して画像形成した。潜像が観察された。
【0167】
画像形成された画像形成可能要素を冷水道水中に20秒間浸し、濡れた綿パッドでさらに10秒間こすり、乾燥した。画像形成可能層の露光されなかった領域が除去され、親水性アルミニウム基板が現れた。両方の成分13Aと13Bの最適露光エネルギーは400mJ/cm2であった。400mJ/cm2の解像度は、150ライン/インチで少なくとも2〜98%であった。
【0168】
例13Aの印刷版を、湿ったはぎれを使用して印刷インクを適用することにより手で墨入れした。インクは版の緑のコーティングに優先的に付着した。アルミニウム基板上に水が保持された。
【0169】
例13Aを2回繰り返したが、画像形成された画像形成可能要素はオーブン中で1分間と3分間乾燥させた。各場合に結果は、例13Aの結果と同じであった。
【0170】
例13Aをさらに2回繰り返したが、コーティングと画像形成の時間はそれぞれ24時間と72時間であった。72時間エージングした画像形成可能要素は、上記と同じ結果を与えた。24時間のみエージングした画像形成可能要素は、400mJ/cm2の画像形成エネルギーで2〜98%の解像度を達成しなかった。画像形成可能層の画像形成領域のほとんどは、水道水により除去された。
【0171】
例13C
この比較例は、低分子量を有する水溶性結合剤が、有用な画像形成可能層となるべき水または液体現像剤に対する充分な耐性を与えないことを示す。
【0172】
水性コーティング溶液を表3に従って調製した。充分量の水を使用して、約1.5g/m2の画像形成可能層について乾燥コーティング重量を得た。
【0173】
【表3】

【0174】
例13Aのように基板をコーティングし、基板上の画像形成可能層からなる得られた画像形成可能要素をオーブン中で100℃で10分間乾燥して、印刷版前駆体を得た。
【0175】
前駆体を室温で48時間エージング後、例13Aのように画像形成した。潜像が観察された。水で現像すると、画像形成可能層の画像形成領域と非画像形成領域の両方が除去された。
【0176】
例13D
例13Cの操作を繰り返したが、水性コーティング溶液を調製するのに表4に記載の成分を使用した。充分量の水を使用して約1.5g/m2の画像形成可能層についてコーティング重量を得た。
【0177】
【表4】

【0178】
例13Aのようにエージングと画像形成をした後、潜像が観察された。画像形成された前駆体を冷水道水中に20秒間浸し、濡れた綿パッドでさらに10秒間こすり、乾燥すると、画像が現像された。最適露光エネルギーは450mJ/cm2であった。
【0179】
例13E〜13H
例13Aの操作を繰り返したが、水性コーティング溶液を調製するのに表5に記載の成分を使用した。充分量の水を使用して約1.5g/m2の画像形成可能層についてコーティング重量を得た。
【0180】
【表5】

【0181】
例13Aのようにエージングと画像形成をした後、潜像が観察された。画像形成された前駆体を冷水道水中に20秒間浸し、濡れた綿パッドでさらに10秒間こすり、乾燥すると、画像が現像された。最適露光エネルギーは450mJ/cm2であった。
【0182】
画像形成された前駆体を例13Aのように現像すると、画像形成可能層の非露光領域が除去され、親水性アルミニウム基板が現れた。例13Fと13Hについて、最適露光エネルギーは450mJ/cm2であった。例13Eと13Gについて、最適露光エネルギーは500mJ/cm2であった。
【0183】
例13E〜13Hを繰り返したが、コーティングと画像形成との時間は96時間であった。画像形成と現像後、結果は同じであった。
【0184】
例13I〜13K
例13Aの操作を繰り返したが、水性コーティング溶液を調製するのに表6に記載の成分を使用した。充分量の水を使用して約1.5g/m2の画像形成可能層についてコーティング重量を得た。
【0185】
【表6】

【0186】
例13Aのようにエージングと画像形成をした後、潜像が観察された。画像形成された前駆体を例13Aに記載のように現像すると、画像が形成された。各例について最適露光エネルギーは550mJ/cm2であった。
【0187】
例13Lと13M、比較例13N、および例13Oと13Q
例13Aの操作を繰り返したが、水性コーティング溶液を調製するのに表7に記載の成分を使用した。充分量の水を使用して約1.5g/m2の画像形成可能層についてコーティング重量を得た。
【0188】
【表7】

【0189】
例13Aのようにエージングと画像形成をした後、潜像が観察された。画像形成された前駆体を例13Aに記載のように現像すると、画像が形成された。例13Lと13Pについて、最適露光エネルギーは400mJ/cm2であった。例13Mと13Qについて、最適露光エネルギーは450mJ/cm2であった。例13Oについて、最適露光エネルギーは350mJ/cm2であった。比較例13Nでは、最適露光は見つからず、画像形成された前駆体は水中で完全に現像されなかった。
【0190】
例14
本例は、水溶性結合剤を含む画像形成可能層を有する印刷版前駆体および画像形成された印刷版の調製を例示する。
【0191】
例14A〜14E
例13Aの操作を繰り返したが、水性コーティング溶液を調製するのに表8に記載の成分を使用した。充分量の水を使用して約1.5g/m2の画像形成可能層についてコーティング重量を得た。
【0192】
【表8】

【0193】
例13Aのようにエージングと画像形成をした後、潜像が観察された。画像形成された各前駆体を冷水道水中に20秒間浸し、濡れた綿パッドでさらに10秒間こすり、乾燥すると、画像が現像された。最適露光エネルギーは450mJ/cm2であった。例4Aについて、最適露光エネルギーは300mJ/cm2であった。例4Bと4Cについて、最適露光エネルギーは350mJ/cm2であった。例4Dについて、最適露光エネルギーは400mJ/cm2であった。例4Eについて、最適露光エネルギーは450mJ/cm2であった。
【0194】
例14F〜14H、比較例I、および例14Jと14L
例13Aの操作を繰り返したが、水性コーティング溶液を調製するのに表9に記載の成分を使用した。充分量の水を使用して約1.5g/m2の画像形成可能層についてコーティング重量を得た。
【0195】
【表9】

【0196】
例14F、14G、14J、14Kおよび14Lを48時間エージングし、印刷版前駆体を例13Aに記載のように画像形成させた。潜像が観察された。画像形成された各前駆体を冷水道水中に20秒間浸し、濡れた綿パッドでさらに10秒間こすり、乾燥すると、画像が現像された。例14Fについて、最適露光エネルギーは500mJ/cm2であった。例14Gと14Lについて、最適露光エネルギーは300mJ/cm2であった。例14Jと14Kについて、最適露光エネルギーは350mJ/cm2であった。
【0197】
例14Hと比較例14Iは、画像形成前にエージングしなかった。印刷版前駆体を例13Aに記載のように画像形成した。潜像が観察された。画像形成された各前駆体を冷水道水中に20秒間浸し、濡れた綿パッドでさらに10秒間こすり、乾燥すると、画像が現像された。
【0198】
例14Hで作成された印刷版をエービーディック(A.B. Dick)印刷機にのせた。これは少なくとも250枚の良好な品質の印刷を与えた。比較例14Iで作成された印刷版をエービーディック(A.B. Dick)印刷機にのせた。インクと湿し水を版の表面に適用すると、湿し水中で画像が溶解し、画像は残らず、印刷を作成することができなかった。
【0199】
例14M〜14Q
例13Aの操作を繰り返したが、水性コーティング溶液を調製するのに表10に記載の成分を使用した。充分量の水を使用して約1.5g/m2の画像形成可能層についてコーティング重量を得た。
【0200】
【表10】

【0201】
例13Aに記載のようにエージングと画像形成の後に、潜像が観察された。画像形成された各前駆体を冷水道水中に20秒間浸し、濡れた綿パッドでさらに10秒間こすり、乾燥すると、画像が現像された。例14Mと14Nについて、最適露光エネルギーは250mJ/cm2であった。例14Oと14Pについて、最適露光エネルギーは400mJ/cm2であった。例14Qについて、最適露光エネルギーは300mJ/cm2であった。
【0202】
例14Rと14S
例13Aの操作を繰り返したが、水性コーティング溶液を調製するのに表11に記載の成分を使用した。充分量の水を使用して約1.5g/m2の画像形成可能層についてコーティング重量を得た。
【0203】
【表11】

【0204】
例13Aに記載のようにエージングと画像形成の後に、潜像が観察された。画像形成された各前駆体を冷水道水中に20秒間浸し、濡れた綿パッドでさらに10秒間こすり、乾燥すると、画像が現像された。例14Rについて、最適露光エネルギーは350mJ/cm2であった。比較例14Sについて、最適露光は見つからず、画像形成された前駆体は水中で完全に現像されなかった。
【0205】
例14Tと14W
例13Aの操作を繰り返したが、水性コーティング溶液を調製するのに表12に記載の成分を使用した。充分量の水を使用して約1.5g/m2の画像形成可能層についてコーティング重量を得た。
【0206】
【表12】

【0207】
例13Aに記載のようにエージングと画像形成の後に、潜像が観察された。画像形成された各前駆体を冷水道水中に20秒間浸し、濡れた綿パッドでさらに10秒間こすり、乾燥すると、画像が現像された。例4T〜4Wについて、最適露光エネルギーは400mJ/cm2であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に画像形成可能層を含んでなる画像形成可能要素であって、画像形成可能層が光熱変換物質と、硫酸基を含む硫酸化ポリマーとを含む画像形成可能要素。
【請求項2】
硫酸基がアリール基に結合されている、請求項1記載の要素。
【請求項3】
硫酸化ポリマーが硫酸化ノボラック樹脂である、請求項2記載の要素。
【請求項4】
硫酸基がアルキル基に結合されている、請求項1記載の要素。
【請求項5】
硫酸化ポリマーが、
1) メチルメタクリレート、アクリロニトリル、メタクリルアミド、およびCH2=C(CH3)-CO2-(CH2)2-NH-CO-NH-p-C6H4-OHの硫酸化共重合体;
2) アクリロニトリル、メタクリルアミド、N-フェニルマレイミド、CH2=C(CH3)-CO-NH-p-C6H4-CO2H、およびCH2=C(CH3)-CO2-(CH2)2-NH-CO-NH-p-C6H4-OHの硫酸化共重合体;または
3) ブチルメタクリレート、スチレン、ヒドロキシエチルメタクリレート、およびメタクリル酸の硫酸化共重合体
である請求項1記載の画像形成可能要素。
【請求項6】
硫酸化ポリマーが、ヒドロキシル基と硫酸基とを含み、ヒドロキシル基と硫酸基との合計の少なくとも50%が硫酸基である、請求項1〜5のいずれかに記載の画像形成可能要素。
【請求項7】
ポリマーを構成する反復単位の少なくとも30モル%が、ヒドロキシル基または硫酸基を含む、請求項1〜6のいずれかに記載の画像形成可能要素。
【請求項8】
画像を形成する方法であって、
請求項1〜7のいずれかに記載の画像形成可能要素を熱的に画像形成し、画像形成可能層中に画像形成領域と相補的な非画像形成領域とを含む画像形成された画像形成可能要素を作製する工程;および
画像形成された画像形成可能要素を水性液体または湿し水で現像し、画像形成領域を除去して画像を形成する工程、
を含む方法。
【請求項9】
現像が印刷機上で行われる、請求項8の方法。
【請求項10】
画像形成が印刷機上で行われる、請求項9の方法。

【公表番号】特表2007−528807(P2007−528807A)
【公表日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−518713(P2006−518713)
【出願日】平成16年6月29日(2004.6.29)
【国際出願番号】PCT/US2004/020866
【国際公開番号】WO2005/005146
【国際公開日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【出願人】(598108641)コダック ポリクロウム グラフィクス リミティド ライアビリティ カンパニー (10)
【Fターム(参考)】