説明

硬化性樹脂組成物及びその硬化物

【課題】 パッケージ基板や表面実装型発光ダイオードにおける樹脂絶縁層などに有用な熱伝導性、耐湿性に優れ、希アルカリ水溶液により容易に現像可能な硬化性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 (A)カルボキシル基含有共重合樹脂、(B)活性エネルギー線により硬化する反応基を2個以上有する化合物、(C)光重合開始剤、及び(D)熱伝導率が15W/m・K以上の無機充填材を含有してなり、前記無機充填材(D)の含有率が、固形分中に80質量%以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導性に優れ、希アルカリ水溶液により現像可能な硬化性樹脂組成物及びその硬化物に関し、さらに詳しくは、パッケージ基板や表面実装型発光ダイオードの樹脂絶縁層などに有用な熱伝導性、耐湿性に優れ、希アルカリ水溶液により現像可能な硬化性樹脂組成物及びその硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化、高性能化に伴い、半導体の高密度化、高機能化が求められている。そのため、半導体を実装する回路基板も小型高密度のものが要求されている。その結果、最近では、部品、回路基板の放熱性が大きな課題となっている。
これに対し、放熱性の良い回路基板として、銅やアルミニウムなどの金属板を使用し、この金属板の片面又は両面に、プリプレグや熱硬化性樹脂組成物などの電気絶縁層を介して回路パターンを形成する金属ベース基板が挙げられる(例えば、参考文献1参照)。
しかしながら、かかる金属ベース基板は、電気絶縁層の熱伝導性が悪いために絶縁層を薄くする必要があり、その結果として、絶縁耐圧の問題が生じる場合がある。
【0003】
一方、高密度な半導体チップの実装方法は、表面実装が主流となり、最近では、BGA(ボール・グリッド・アレイ)やCSP(チップ・スケール・パッケージ)等のパッケージ基板が登場してきた。このようなパッケージ基板に用いられるソルダーレジスト組成物(例えば、特許文献2参照。)は、低分子量のエポキシ化合物をベースとしたものであり、熱伝導性に優れた無機充填材を高充填することが困難であり、放熱性に乏しいものであった。
これに対し、半導体上部にヒートシンクを付帯させるという方法も考えられるが、放出される熱の約50%はパッケージ基板に蓄積されるため、依然として、パッケージ基板の放熱性が問題となっている。
【0004】
また、多数の表面実装型発光ダイオードがプッシュボタン表示に用いられている最近の携帯電話などでは、発光ダイオードから発散される熱の大部分が、基板に蓄積するという問題がある。具体的には、例えば、端子部が形成された樹脂絶縁層上に発光ダイオードチップが配置され、その上部にレンズ層を兼ねた封止樹脂でパッケージされている表面実装型発光ダイオードにおいて、前記樹脂絶縁層の放熱性が問題となる。
【0005】
【特許文献1】特開平6−224561号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開平11−288091号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑み開発されたものであり、その主たる目的は、パッケージ基板や表面実装型発光ダイオードにおける樹脂絶縁層などに有用な熱伝導性、耐湿性に優れ、希アルカリ水溶液により容易に現像可能な硬化性樹脂組成物を提供することにある。
さらに、上記硬化性樹脂組成物を活性エネルギー線照射及び/又は熱硬化して得られる耐湿性に優れ、かつ熱伝導率が1W/m・K以上の硬化物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明者らは、前記目的の実現に向け鋭意研究した結果、(A)カルボキシル基含有共重合樹脂、(B)活性エネルギー線により硬化する反応基を2個以上有する化合物、(C)光重合開始剤からなる組成物が、バインダー樹脂成分として優れており、(D)熱伝導率が15W/m・K以上の無機充填材を、固形分中に80質量%以上充填することが可能となり、熱伝導性に優れ、希アルカリ水溶液により現像可能な硬化性樹脂組成物を提供出来ることを見出し、本発明を完成するに至った。
より好適な態様としては、前記カルボキシル基含有共重合樹脂(A)が、下記一般式(I)又は(II)で示される化合物
【化2】



(式中、Rは水素原子又はメチル基、Rは炭素数2〜6の直鎖又は分岐状のアルキレン基、Rは炭素数3〜10のアルキレン基、Rは二塩酸無水物残基を表わす。)

を構成成分として含むカルボキシル基含有共重合樹脂である。また、前記活性エネルギー線により硬化する反応基を2個以上有する化合物(B)が、エチレン性不飽和結合を2個以上有する化合物(B−1)であり、かつ、前記光重合開始剤(C)が、光ラジカル重合開始剤(C−1)であることが、光硬化性の点から好ましい。さらに、前記前記無機充填材(D)が、酸化アルミニウムであることが、熱伝導性、低価格化の面から好ましい。
また、本発明の硬化性樹脂組成物の第二の態様としては、上記組成物に、更に、(E)熱硬化性成分を含有する光硬化性・熱硬化性組成物が提供される。この好適な態様においては、前記熱硬化性成分(E)が、分子中の2個以上のオキシラン環を有する多官能エポキシ樹脂(E−1)である。
さらに他の態様としては、上記硬化性樹脂組成物を活性エネルギー線照射及び/又は熱硬化して得られる熱伝導率が1W/m・K以上の硬化物が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明の硬化性樹脂組成物に用いられカルボキシル基含有共重合樹脂(A)は、共重合樹脂であるため、有機溶剤等で希釈しても、高い粘性を維持することができ、これにより、熱伝導性に優れた無機充填材を高充填することが可能となり、熱伝導性、耐湿性に優れた硬化物を提供することが可能となった。
このような硬化性樹脂組成物は、発熱量の多い半導体チップを搭載したパッケージ基板のソルダーレジストとして、好適に用いることができ、熱信頼性の高いパッケージ基板を提供することができる。
また、携帯電話などに用いられている表面実装型発光ダイオードを搭載した基板や表面実装型発光ダイオードにおける樹脂絶縁層として用いることにより、熱信頼性の高い電子機器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の硬化性樹脂組成物の基本的な態様は、(A)カルボキシル基含有共重合樹脂、(B)活性エネルギー線により硬化する反応基を2個以上有する化合物、(C)光重合開始剤、及び(D)熱伝導率が15W/m・K以上の無機充填材を含有してなり、前記無機充填材(D)の含有率が、固形分中に80質量%以上であることを特徴としている。さらに、耐熱性を向上させるために、(E)熱硬化性成分を含有してもよい。
【0010】
以下、本発明の硬化性樹脂組成物の各構成成分について詳しく説明する。
まず、カルボキシル基含有共重合樹脂(A)は、分子中にカルボキシル基を有する公知慣用の共重合樹脂が使用できる。さらに、分子中にエチレン性不飽和結合を併せ持つ共重合樹脂が、光硬化性や耐現像性の面からより好ましく、使用できる。
具体的には、下記に列挙するようなカルボキシル基含有共重合樹脂が挙げられる。
【0011】
(1)(メタ)アクリル酸などの不飽和カルボン酸と、それ以外の不飽和二重結合を有する化合物の1種類以上との共重合することにより得られるカルボキシル基含有共重合樹脂、
(2)(メタ)アクリル酸などの不飽和カルボン酸と、それ以外の不飽和二重結合を有する化合物の1種類以上との共重合体に、グリシジル(メタ)アクリレートや3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレートなどのエポキシ基と不飽和二重結合を有する化合物や(メタ)アクリル酸クロライドなどによって、エチレン性不飽和基をペンダントとして付加させることによって得られる感光性のカルボキシル基含有共重合樹脂、
(3)グリシジル(メタ)アクリレートや3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート等のエポキシ基と不飽和二重結合を有する化合物と、それ以外の不飽和二重結合を有する化合物との共重合体に、(メタ)アクリル酸などの不飽和カルボン酸を反応させ、生成した二級の水酸基に多塩基酸無水物を反応させて得られる感光性のカルボキシル基含有共重合樹脂、
(4)無水マレイン酸などの不飽和二重結合を有する酸無水物と、それ以外の不飽和二重結合を有する化合物との共重合体に、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどの水酸基と不飽和二重結合を有する化合物を反応させて得られる感光性のカルボキシル基含有共重合樹脂、
(5)ポリビニルアルコー誘導体などの水酸基含有共重合ポリマーに、多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有樹脂、
(6)さらに上記カルボキシル基含有樹脂に、グリシジル(メタ)アクリレートや3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレートなどのエポキシ基と不飽和二重結合を有する化合物を反応させて得られる感光性のカルボキシル基含有共重合樹脂等が挙げられる。
これらカルボキシル基含有共重合樹脂(A)の構成成分として、下記一般式(I)又は(II)で示される化合物














【化3】



(式中、Rは水素原子又はメチル基、Rは炭素数2〜6の直鎖又は分岐状のアルキレン基、Rは炭素数3〜10のアルキレン基、Rは二塩酸無水物残基を表わす。)

を含んでいるカルボキシル基含有共重合樹脂(A−1)が、前記無機充填材(D)を高充填するときのバインダー樹脂として好ましい。
なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート、メタクリレート及びそれらの混合物を総称する用語で、他の類似の表現についても同様である。
【0012】
上記カルボキシル基含共重合樹脂(A)の固形分酸価は、40〜200mgKOH/gの範囲であり、より好ましくは80〜120mgKOH/gの範囲である。カルボキシル基含有共重合樹脂の酸価が40mgKOH/g未満であるとアルカリ現像が困難となり、一方、200mgKOH/gを超えると現像液による露光部の溶解が進むために、必要以上にラインが痩せたり、場合によっては、露光部と未露光部の区別なく現像液で溶解剥離してしまい、正常なレジストパターンの描画が困難となるので好ましくない。
また、このようなカルボキシル基含有共重合樹脂(A)の重量平均分子量は、2,000〜50,000、好ましくは、5,000〜20,000の範囲が望ましい。重量平均分子量が、2,000未満の場合、塗膜の指触乾燥性が低下し、硬化物の耐衝撃性が得られ難くなるので好ましくない。一方、重量平均分子量が、50,000を超えた場合、現像性が低下するので好ましくない。
【0013】
次に、前記活性エネルギー線により硬化する反応基を2個以上有する化合物(B)としては、(B−1)エチレン性不飽和結合を2個以上有する化合物、オキシラン環やオキセタン環などのカチオン重合性の環状エーテール化合物、カルコンや桂皮酸エステルなどの光二量化する化合物などが挙げられる。これらの中で、光硬化性、保存安定性の面から、
エチレン性不飽和結合を2個以上有する化合物(B−1)が好ましい。
【0014】
上記エチレン性不飽和結合を2個以上有する化合物(B−1)は、光硬化して、上記カルボキシル基含有共重合樹脂(A)を希アルカリ水溶液に対して不溶化するために使用するものである。その代表的なものとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールアジペートジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、EO変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらの中で、特に耐現像性の面から、二官能以上、好ましくは三官能以上の(メタ)アクリレートが好ましい。
【0015】
これらのエチレン性不飽和結合を2個以上有する化合物(B−1)の配合量としては、前記カルボキシル基含有共重合樹脂(A)100質量部に対して、5〜100質量部が好ましく、特に好ましくは10〜50質量部である。(B−1)成分が5質量部未満の場合、十分な硬化性が得られず、設計通りの導波路形状が得られなくなる。一方、100質量部を超えた場合、指触乾燥性が悪くなり、好ましくない。
【0016】
本発明に用いられる前記光重合開始剤(B)としては、活性エネルギー線照射により、活性基を発生する化合物、例えば光ラジカル重合開始剤(C−1)、光カチオン重合開始剤、光アニオン重合開始剤などが挙げられる。これらの中で、光ラジカル重合開始剤(C−1)が、光硬化性、保存安定性、硬化物の電気特性等から好ましい。
【0017】
上記光ラジカル重合開始剤(C−1)としては、公知慣用のもの、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾインとベンゾインアルキルエーテル類;アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン等のアセトフェノン類;2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1等のアミノアセトフェノン類;2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−ターシャリーブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン等のアントラキノン類;2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;ベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;又はキサントン類;(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−ペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、エチル−2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルフォスフィネイト等のフォスフィンオキサイド類などが挙げられ、これら公知慣用の光ラジカル重合開始剤(C−1)は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0018】
これら光ラジカル重合開始剤(C−1)の配合量は、前記カルボキシル基含有共重合樹脂(A)100質量部に対して、0.1〜30質量部、好ましくは、2〜20質量部の割合で含まれることが好ましい。光ラジカル重合開始剤(C−1)の配合量が、カルボキシル基含有共重合樹脂(A)100質量部に対して、0.1質量部未満の場合、光硬化性や作業性が低下するので好ましくない。一方、30質量部を超えた場合、塗膜特性が低下するので、好ましくない。
【0019】
本発明の硬化性樹脂組成物の特徴である熱伝導率が15W/m・K以上の無機充填材(D)としては、用途により異なるが、熱伝導率が約15W/m・Kとなる純度92%以上の酸化アルミニウム(Al)、窒化ホウ素(BN)、窒化アルミニウム(AlN)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化亜鉛(ZnO)などの絶縁性を有する化合物や、銅(Cu)粉、銀(Ag)粉などの導電性を有する金属粉が挙げられる。これらの中で、本願の目的であるパッケージ基板や表面実装型発光ダイオードにおける絶縁層に用いられる無機充填材(D)としては、耐薬品性に優れる酸化アルミニウム(Al)、窒化ホウ素(BN)、窒化アルミニウム(AlN)があげられ、特に、酸化アルミニウムが好適に用いられる。
これら無機充填材(D)の粒径としては、30μm以下、好ましくは20μm以下である。さらに、これらは、最密充填となるような粒度分布を持つ2種類以上の粒径のものを配合することが好ましい。無機充填材(D)の粒径が30μmを超えた場合、塗膜表面から、無機充填材(D)が脱落したり、無機充填材(D)の配合割合が低下するので、好ましくない。
このような熱伝導率が15W/m・K以上の無機充填材(D)の配合量としては、固形物(硬化物)中に、80質量%以上、好ましくは90質量%以上である。上記無機充填材(D)の配合量が、80質量%未満の場合、放熱材料として充分な熱伝導率が得られなくなるので、好ましくない。
【0020】
本発明の硬化性樹脂組成物は、硬化物の耐熱性を向上させるために、(E)熱硬化性成分を配合しても良い。上記熱硬化性成分としては、分子中の2個以上のオキシラン環を有する多官能エポキシ樹脂(E−1)、分子中の2個以上のオキセタン環を有する多官能オキセタン化合物、熱硬化性ポリイミド樹脂、メラミン樹脂などが挙げられる。
これらの中で、多官能エポキシ樹脂(E−1)が、硬化性、保存安定性、硬化塗膜特性の面から、好ましく用いられる。
【0021】
上記多官能エポキシ樹脂(E−1)としては、公知慣用のエポキシ化合物、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAのノボラック型エポキシ樹脂などのグリシジルエーテル化合物;テレフタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、ダイマー酸ジグリシジルエステルなどのグリシジルエステル化合物;トリグリシジルイソシアヌレート、N,N,N’,N’−テトラグリシジルメタキシレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラグリシジルビスアミノメチルシクロヘキサン、N,N−ジグリシジルアニリンなどのグリシジルアミン化合物;ポリブタジエンなどの不飽和結合を持つ樹脂を酸化して得られるエポキシ化ポリブタジエンなどが挙げられる。さらに、グリシシル(メタ)アクリレートの共重合樹脂などが使用できる。
【0022】
これらの多官能エポキシ化合物(E−1)は、単独又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。そのの配合量は、前記カルボキシル基含有共重合樹脂(A)のカルボキシル基1当量に対して、0.6〜2.0当量、好ましくは、0.8〜1.5当量となる範囲である。多官能エポキシ化合物の配合量が、上記範囲より少ない場合、カルボキシル基が残り、耐熱性、耐アルカリ性などが低下するので、好ましくない。一方、上記範囲を超えた場合、低分子量の多官能エポキシ樹脂が残存することにより、塗膜の強度などが低下するので、好ましくない。
【0023】
本発明の硬化性樹脂組成物は、さらに高充填化を容易にするために、(F)湿潤・分散剤を添加することが好ましい。このような湿潤・分散剤(F)としては、カルボキシル基、水酸基、酸エステルなどの無機充填材(D)と親和性のある極性基を有する化合物や高分子化合物、例えばリン酸エステル類などの酸含有化合物や、酸基を含む共重合物、水酸基含有ポリカルボン酸エステル、ポリシロキサン、長鎖ポリアミノアマイドと酸エステルの塩などを用いることができる。市販されている湿潤・分散剤(F)で特に好適に用いることができるものとしては、Disperbyk(登録商標)−101、−103、−110、−111、−160、−171、−174、−190、−300、Bykumen(登録商標)、BYK−P105、−P104、−P104S、−240(いずれもビック・ケミー社製)、EFKA−ポリマー150、EFKA−44、−63、−64、−65、−66、−71、−764、−766、N(いずれもエフカ社製)が挙げられる。
このような湿潤・分散剤(F)の配合量は、前記無機充填材(D)100質量部当り0.01〜5質量部が適当である。湿潤・分散剤(F)の配合量が上記範囲よりも少な過ぎると湿潤・分散剤添加の効果が得られず、組成物の高充填化することが困難となる。一方、上記範囲よりも過剰に配合すれば、光硬化しない成分の割合が増加することから、塗膜の強度が低下したり、組成物の揺変性増大の要因となるので好ましくない。
【0024】
本発明の硬化性樹脂組成物には、必要に応じて、粘度調整のために有機溶剤を添加してもよい。前記有機溶剤としては、例えばメチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、炭酸プロピレン等のエステル類;オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素類;石油エーテル、石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤などの有機溶剤が使用できる。これらの有機溶剤は、単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
これら有機溶剤の配合量は、特に限定されるものでは無く、塗布方法に応じて、適宜調整すれば良いが、一般的に組成物中に50質量%以下、好ましくは30質量%以下である。有機溶剤の含有量が多いと、無機充填材(D)の沈降スピードが上がり、保存安定性が低下するので、好ましくない。
【0025】
本発明の硬化性樹脂組成物は、さらに必要に応じて、フタロシアニン・ブルー、フタロシアニン・グリーン、アイオジン・グリーン、ジスアゾイエロー、クリスタルバイオレット、酸化チタン、カーボンブラック、ナフタレンブラックなどの公知慣用の着色剤、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、t−ブチルカテコール、ピロガロール、フェノチアジンなどの公知慣用の熱重合禁止剤、微粉シリカ、有機ベントナイト、モンモリロナイトなどの公知慣用の増粘剤、シリコーン系、フッ素系、高分子系などの消泡剤及び/又はレベリング剤、イミダゾール系、チアゾール系、トリアゾール系等のシランカップリング剤などのような公知慣用の添加剤類を配合することができる。
【0026】
本発明の硬化性樹脂組成物は、例えば前記有機溶剤で塗布方法に適した粘度に調整し、基材上に、ディップコート法、フローコート法、ロールコート法、バーコーター法、スクリーン印刷法、カーテンコート法等の方法により塗布し、約60〜100℃の温度で組成物中に含まれる有機溶剤を揮発乾燥(仮乾燥)させることにより、タックフリーの塗膜を形成できる。また、上記組成物をプラスチックフィルム上に塗布し、乾燥させてフィルムとして巻き取ったものを基材上に張り合わせることにより、樹脂絶縁層を形成できる。その後、接触式(又は非接触方式)により、パターンを形成したフォトマスクを通して選択的に活性光線により露光し、未露光部を希アルカリ水溶液(例えば0.3〜3%炭酸ソーダ水溶液)により現像してレジストパターンが形成される。さらに、例えば約140〜180℃の温度に加熱して熱硬化させることにより、前記カルボキシル基含有共重合樹脂(A)のカルボキシル基と、分子中に2個以上のオキシラン環を有する多官能エポキシ樹脂(E−1)のエポキシ基が反応し、耐熱性などの諸特性に優れた硬化塗膜を形成することができる。
【0027】
ここで、塗膜を光硬化させるための照射光源としては、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ又はメタルハライドランプが適当である。その他、レーザー光線なども露光用活性光源として利用し、直接描画することができる。
また、上記現像に用いられる希アルカリ水溶液としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア、アミン類などのアルカリ水溶液が使用でき、特に、炭酸ナトリウムが好ましい。
【実施例】
【0028】
次に本発明の実施例及び比較例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明が以下の実施例に限定されるものでないことは言うまでもない。なお、以下において「部」及び「%」とあるのは、特に断りのない限り全て「質量部」及び「質量%」を表わす。
【0029】
<合成例1>(カルボキシル基含有共重合樹脂Aの合成)
攪拌機、温度計、還流冷却管、滴下ロートおよび窒素導入管を備えた2リットルセパラブルフラスコに、ジエチレングリコールジメチルエーテル900g、およびt−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート[日本油脂(株)製パーブチルO]21.4gを仕込み、90℃に昇温後、メタクリル酸309.9g、メタクリル酸メチル116.4g、及び一般式(I)で示されるラクトン変性2−ヒドロキシエチルメタクリレート[ダイセル化学工業(株)製プラクセルFM1]109.8gをビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート[日本油脂(株)製パーロイルTCP]21.4gと共にジエチレングリコールジメチルエーテル中に3時間かけて滴下し、さらに6時間熟成することによってカルボキシル基含有共重合樹脂溶液を得た。反応は、窒素雰囲気下で行った。
次に上記カルボキシル基含有共重合樹脂溶液に、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート[ダイセル化学(株)製サイクロマーA200]363.9g、ジメチルベンジルアミン3.6g、ハイドロキノンモノメチルエーテル1.80gを加え、100℃に昇温し、撹拌することによってエポキシの開環付加反応を行った。16時間後、固形分酸価=108.9mgKOH/g、重量平均分子量=25,000(スチレン換算)のカルボキシル基含有共重合樹脂を、53.8wt%(不揮発分)含む溶液を得た。以下、この反応溶液をA−1ワニスと称す。
【0030】
<比較合成例1>(カルボキシル基含有樹脂の合成)
温度計、撹拌器、滴下ロート、及び還流冷却器を備えたフラスコに、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エピクロンN−680、大日本インキ化学工業社製、エポキシ当量=210)210gとカルビトールアセテート96.4gを量り取り、加熱溶解した。次に、重合禁止剤としてハイドロキノン0.1gと、反応触媒としてトリフェニルホスフィン2.0gを加えた。この混合物を95〜105℃に加熱し、アクリル酸72gを徐々に滴下し、酸価が3.0mgKOH/g以下になるまで、約16時間反応させた。この反応生成物を、80〜90℃まで冷却し、テトラヒドロフタル酸無水物76.1gを加え、赤外吸光分析により、酸無水物の吸収ピーク(1780cm−1)が無くなるまで、約6時間反応させた。この反応液に、出光石油化学社製の芳香族系溶剤イプゾール#150 96.4gを加え、希釈した後、取り出した。このようにして得られたカルボキシル基含有樹脂溶液は、不揮発分=65wt%、固形物の酸価78mgKOH/gであった。以下、この反応溶液をR−1ワニスと称す。
【0031】
実施例1〜3及び比較例1、3
前記合成例で得られたA−1ワニス及びR−1ワニスを用いた表1に示す配合成分を、3本ロールミルで混練し、硬化性樹脂組成物を得た。各硬化性組成物の特性評価結果を、表2に示す。
【0032】
【表1】


【0033】
【表2】


*:高充填でのインキ化が出来なかった。
なお、上記表2中の性能試験の方法は以下の通りである。
【0034】
性能評価:
(1)熱伝導率
上記各実施例及び比較例の組成物を、試験基板上にスクリーン印刷で乾燥塗膜が約40
μmとなるように全面塗布し、80℃で20分乾燥した。室温まで冷却した後、オーク製作所製の露光装置(メタルハライドランプ7KW2灯)にて減圧下、コダック製ステップタブレットNo.2で約6段となる露光量で全面露光した後、30℃の1wt%NaCO水溶液をスプレー圧0.2MPaの条件で60秒間現像を行った。
このようにして得られた硬化塗膜の25〜125℃での熱伝導率を、レーザーフラッシュ法により測定した。
【0035】
(2)感度
上記各実施例及び比較例の組成物を、ガラスエポキシ基板上にスクリーン印刷で全面塗布し、80℃で20分乾燥し、室温まで放冷した後、コダック製ステップタブレットNo.2(21段)をフォトマスクとして用い、オーク製作所製の露光装置(メタルハライドランプ7KW2灯)にて減圧下、露光(365nmの紫外線の積算光量計で200mJ/cm、及び600mJ/cm)し、30℃の1%NaCO水溶液をスプレー圧0.2MPaで1分間現像し、残った硬化塗膜の段数を目視で確認した。
【0036】
(3)耐酸性
前記の熱伝導率測定と同様に、回路形成されたガラスエポキシ基板上にスクリーン印刷で全面塗布し、上記と条件で基板を作製し基板を、常温の10vol%の硫酸水溶液に、所定時間(10分間、30分間)浸漬し、水洗後、セロハン粘着テープによるピールテストを行い、レジストの剥がれ・変色について評価した。
○ ; 全く変化が認められないもの
△ ; ほんの僅か変化したもの
× ; 塗膜に、剥がれがあるもの
【0037】
(4)吸水率
前記の熱伝導率測定と同様に、予め質量を測定したガラス板に、上記各実施例及び比較例の組成物をスクリーン印刷で全面塗布し、上記の条件で評価サンプルを得た。これを室温まで冷却した後、評価サンプルの質量を測定した。次に、この評価サンプルを常温の純水に24時間浸漬した後、表面に付着した水分を拭き取り、評価サンプルの質量を測定し、下記算出式により硬化物の吸水率を求めた。
吸水率=(W2−W1)/(W1−Wg)
ここで、W1は評価サンプルの質量、W2は吸水後の評価サンプルの質量、Wgはガラス板の質量である。
【0038】
(5)線膨張係数
前記の熱伝導率測定と同様に、硬化物単体を評価サンプとし、TMA法によりα1(Tg以下の線膨張係数)を測定した。
【0039】
表2に示す結果から明らかな如く、本発明の硬化性樹脂組成物によれば、熱伝導性に優れた無機充填材を高充填することが可能となり、熱伝導性、耐湿性に優れた硬化物を得ることが出来る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)カルボキシル基含有共重合樹脂、(B)活性エネルギー線により硬化する反応基を2個以上有する化合物、(C)光重合開始剤、及び(D)熱伝導率が15W/m・K以上の無機充填材を含有してなり、前記無機充填材(D)の含有率が、固形分中に80質量%以上であることを特徴とするアルカリ現像可能な硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記カルボキシル基含有共重合樹脂(A)が、下記一般式(I)又は(II)で示される化合物
【化1】



(式中、Rは水素原子又はメチル基、Rは炭素数2〜6の直鎖又は分岐状のアルキレン基、Rは炭素数3〜10のアルキレン基、Rは二塩酸無水物残基を表わす。)

を構成成分として含むカルボキシル基含有共重合樹脂(A−1)であることを特徴とする請求項1記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記活性エネルギー線により硬化する反応基を2個以上有する化合物(B)が、エチレン性不飽和結合を2個以上有する化合物(B−1)であり、かつ前記光重合開始剤(C)が、光ラジカル重合開始剤(C−1)であることを特徴とする請求項1又は2に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記無機充填材(D)が、酸化アルミニウムであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
更に、(E)熱硬化性成分を含有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
前記熱硬化性成分(E)が、分子中の2個以上のオキシラン環を有する多官能エポキシ樹脂(E−1)であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
前記請求項1乃至6のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物を活性エネルギー線照射及び/又は熱硬化して得られる熱伝導率が1W/m・K以上の硬化物。

【公開番号】特開2006−337481(P2006−337481A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−159205(P2005−159205)
【出願日】平成17年5月31日(2005.5.31)
【出願人】(591021305)太陽インキ製造株式会社 (327)
【Fターム(参考)】