説明

磁場測定プローブ

磁場を測定するプローブは、選択された測定軸に沿う磁場を感知する少なくとも一個の磁気抵抗または磁気誘導センサを備える。プローブは、その選択された測定軸が平行かつ、選択された測定軸に関して横方向に、互いにオフセットされるように、一つの場所において互いが固定して接続された少なくとも二個の磁気抵抗センサ14、16を備え、プローブは、その選択された測定軸に沿う各センサにより測定された磁場を表わす信号を提供するために、各磁気抵抗または磁気誘導センサに固有な出力端子を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、選択された測定軸に沿う磁場を感知する、少なくとも一個の磁気抵抗または磁気誘導センサを備える磁場を測定するプローブに関する。
【背景技術】
【0002】
磁気抵抗センサ、より正確にはGMR(巨大磁気抵抗:Giant Magnetic Resistor)タイプ、またはTMR(トンネル磁気抵抗:Tunneling Magneto Resistance)タイプのセンサを使用して、操作中に、電子回路により生成される磁場を測定することが考えられている。これらは、MTJ(磁気トンネル接合:Magnetic Tunnel Junction)、およびSDT(スピン依存トンネル:Spin Dependent Tunneling)として知られている。
【0003】
このタイプの磁気抵抗センサは、それが設置された磁場に従って抵抗が変化する電子素子である。
【0004】
現在知られている設備においては、分析対象の電子回路上に設置された磁気抵抗センサは、処理チェーンに接続されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、磁気抵抗センサにより、操作中に電子回路により、ある一つの点で生成された磁場を表わす値が得られる。このタイプのプローブでは、回路を正確に特徴付けることはできず、特に、回路の構造を正確に決定することができず、特に、回路が備えるトラックの位置を正確に決定することができない。
【0006】
本発明の目的は、回路により生成される磁場と共に、回路に関連する他の情報を得ることができる測定プローブを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的のため、本発明は、上記のタイプの磁場を測定するプローブに関し、その選択された測定軸が平行かつ、その選択された測定軸に関して横方向に、互いにオフセットされるように、一つの場所においてお互いが固定して接続された少なくとも二個の磁気抵抗または磁気誘導センサを備え、プローブは、その選択された測定軸に沿う各センサにより測定された磁場を表現する信号を提供するために、各磁気抵抗または磁気誘導センサに固有な出力端子を備えることを特徴とする。
【0008】
具体的な実施形態によれば、測定プローブは、一つ以上の下記の特徴を備える。
【0009】
少なくとも二対の磁気抵抗または磁気誘導センサを備え、それぞれの同じ対のセンサは、平行かつ、その選択された測定軸に関して横方向に、互いにオフセットされた選択された測定軸を有し、分離した二対のセンサの選択された測定軸は、角度に関してオフセットされている。
【0010】
三個のセンサを一つの組(三個組)として、三つの組として分布された少なくとも九個の磁気抵抗または磁気誘導センサを備え、同じ三個組の三個のセンサは、平行かつ、その選択された測定軸に関して横方向に互いにオフセットされた選択された軸を有し、分離した三個組のセンサの選択された測定軸は角度に関してオフセットされている。
【0011】
プローブのすべての磁気抵抗または磁気誘導センサは、二つの層に従って分布されている。
【0012】
異なる層のセンサの選択された測定軸は、角度に関してオフセットされている。
【0013】
同じ層のセンサは、平行な選択された測定軸を有する。
【0014】
プローブのすべての磁気抵抗または磁気誘導センサは、同じ層上に分布されている。
【0015】
本発明は更に、動作中に電子回路を分析する装置に関し、上記に定義された少なくとも一つのプローブと、各磁気抵抗または磁気誘導センサに固有の処理チェーンと、種々の処理チェーンからの信号を処理する手段を備え、処理手段は、平行かつ、二つの磁気抵抗または磁気誘導センサを隔てる距離において、互いに横方向にオフセットされた選択された測定軸を有する二つの磁気抵抗または磁気誘導センサにより測定された場の値間の差の比の数値を求めるのに適している。
【0016】
変形例においては、
平行かつ、二つの磁気抵抗または磁気誘導センサを隔てる距離において、横方向にオフセットされた選択された測定軸を有する二つの磁気抵抗または磁気誘導センサにより測定された場の値間の差の比を表示する手段を備え、装置は、手で持つ、および手動で移動させるのに適している。
【0017】
センサが設けられた磁場分析装置であって、処理手段は、センサの各対に対して、平行かつ、二つの磁気抵抗または磁気誘導センサを隔てる距離において、横方向にオフセットされた選択された測定軸を有する二つの磁気抵抗または磁気誘導センサにより測定された場の値間の差の比の数値を求めることができ、処理手段は、数値が求められた比の間の差から、電流の少なくとも一つの成分を計算することができる。
【0018】
電流の少なくとも一つの計算された成分を表示する手段を備え、装置は、手で持つ、および手動で移動させるのに適している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明は、単に例としてのための下記の記述を読み、図を参照することにより、より良く理解されるであろう。
【0020】
図1は、回路において、単一方向に流れる電流を測定する携帯装置を示している。
【0021】
装置は、ペンに形状および寸法がおおよそ対応している軸Z−Zを有する細長い道具の形状をしている。従って、その軸Z−Zを回路の面に関して垂直にして、回路上を手動で移動させるのに適している。
【0022】
本装置は、その一端に、軸Z−Zに関して直交する二つの平行面に配設されている二個の磁気抵抗センサ14と16を備えるプローブ12を備えている。図において、二個のセンサは、軸Z−Zに沿って連続して配設されている。実際は、磁気スクリーニングの潜在的な問題を避けるために、軸Z−Zの一つの側と他の側において、二個のセンサがわずかに横方向にオフセットされていると有利である。
【0023】
プローブ12の構造は、その後に続く図を参照して、詳細に記述される。
【0024】
各磁気抵抗センサは、矢印により図示される選択された測定軸を有している。センサの抵抗は、この選択された測定軸に沿う磁場の成分により、実質的に影響される。
【0025】
本発明によれば、二個のセンサ14と16の選択された測定軸はお互いに平行である。この例では、これらの軸は、装置の軸X−Xに平行に延伸し、装置の縦方向の軸Z−Zに関して直交している。
【0026】
装置10は、二個のセンサを供給する手段18を備える。この手段は、後に続く図を参照して詳細に記述される。
【0027】
同様に、プローブ12は、各センサ14と16に固有な出力端子を備え、それにより、センサにより測定された磁場を表わす信号の受信が可能になる。
【0028】
各センサ14と16は、センサからの信号を処理する特別な処理チェーン20と22に接続される。この処理チェーンは、処理チェーン20と22の出力において得られた磁場の成分を表わす信号を処理できる。装置は更に、データ処理部24に制御される表示画面26を備える。
【0029】
画面26は、二個のセンサ14と16を介して延伸する縦方向Z−Zに関する装置の軸X−Xに沿う磁場の成分で、dBx/dzと示される導関数の値を表示することができる。
【0030】
本発明に係る装置10は、下記のように動作する。処理チェーンの出力において、Bx1とBx2と示される、方向X−Xにおける磁場の成分の二つの値が得られる。この値は、センサ14と16の位置における場に対応する。この二つの測定値と、軸Z−Zに沿って測定された、センサ14と16を隔てる既知の距離に基づいて、データ処理部24は、Z2およびZ1を、軸Z−Zに沿うセンサ14と16の位置としたときの、dBx/dz=Bx2−Bx1/z1−z2の比に基づいて、方向Z−Zに関する方向X−Xにおける磁場成分の導関数dBx/dzの数値を決定する。
【0031】
二つの方向X−XおよびZ−Zに関して直交する、方向Y−Yにおける回路を流れるJyと示される電流の値はdBx/dzに等しく、データ処理部24により計算された値は、この電流値になる。この電流値は画面26上に表示される。
【0032】
図2では、センサ12と14を備える集積回路108のみが示されている。更に、センサ14に対しては、同一の処理回路が使用されているので、センサ12と関連する処理回路20のみが示されている。
【0033】
図2に示すように、磁気抵抗センサ12は、所定値を有する三個の他の固定抵抗302、303、および304を備えるウェストン(Weston)ブリッジ301に集積されている。これらの四個の抵抗は、ウェストンブリッジの構造でそれ自体が知られているように、ループを形成するために直列に接続されている。ウェストンブリッジの対抗する二つの端子は、プローブ100の測定出力112Aおよび112Bを形成する。ウェストンブリッジの他の二つの端子114Aおよび114Bは、ウェストンブリッジへの電力供給入力を形成する。これらは、所定の周波数、例えば、160kHzに等しい周波数の正弦波信号を生成する生成器116の端子に接続されている。
【0034】
更に、それ自体が知られているように、測定プローブは、交番電圧の外部電源120に接続されている巻線118を備える。巻線118は、磁気抵抗センサの領域において、センサのヒステリシスを削減するために、磁気抵抗センサの領域において分極場を形成するのに適している。
【0035】
同様に、磁気抵抗センサ14もまた、三個の抵抗306、307、および308を備えるウェストンブリッジ305に集積され、第2巻線309は、ヒステリシスを削減するために、磁気抵抗センサ14の領域において分極場を形成するために設けられる。上記のように、ウェストンブリッジおよび巻線は、簡略化のために図示していないが、特別な電力供給手段に接続されている。
【0036】
センサ14に接続される回路は同一であるため、磁気抵抗センサ12からの信号を処理する回路のみが下記で記述される。
【0037】
測定プローブの出力112Aおよび112Bは、処理チェーン20に接続される。
【0038】
これらは、出力端子112Aおよび112Bがそれぞれその入力に接続される、二つのハイパスフィルタ124Aおよび124Bにより減算器を形成する、差動増幅段122に、入力において接続される。
【0039】
差動増幅段122は、例えば、100に等しい利得を生成するように構成される。
【0040】
ハイパスフィルタは、コンデンサ126を備えるRC型の受動フィルタであり、その一つの端子は、抵抗128により接地されている。
【0041】
差動増幅段は、適切であれば、どんな既知のタイプであってよく、例えば、そのフィードバックループに抵抗132が設けられている演算増幅器130を備えており、演算増幅器の反転および非反転入力は、二個の入力抵抗134によりフィルタ124Aおよび124Bの出力に接続されている。演算増幅器の非反転端子は、入力電圧を固定する抵抗136により接地されている。
【0042】
差動増幅段122の出力は、測定プローブからの磁場を表現する信号の所定の周波数成分を分離するための手段138の入力に接続される。決定される場の成分の周波数は、FIと示される。この周波数は、例えば、160kHzに等しい。
【0043】
図2に示す実施形態において、これらの分離手段138は、分離される周波数成分の周波数FIを中心とするバンドパス型の能動選択フィルタを備える。この周波数は、回路Cの励起周波数と等しい。
【0044】
このフィルタは、非反転端子が接地されている演算増幅器140を備える。フィルタの反転端子は、入力抵抗142により、差動増幅段122の出力に接続されている。演算増幅器140のフィードバックループは、それ自身がコイル148に直列に接続されている抵抗146に並列に接続されたコンデンサ144を備える。
【0045】
出力において、選択フィルタ138は、二つの受動ローパスフィルタ152および154が続く、BAT型のダイオード150を有し、二つのフィルタはそれぞれ、出力端子がコンデンサ158により接地された抵抗により形成されている。
【0046】
処理チェーン20により、磁気抵抗センサにより検出された磁場の周波数成分が、非常に簡単な回路により得られるようになる。
【0047】
磁場を測定する装置の動作中、磁気抵抗センサ12の抵抗値は、センサの選択された測定軸に沿う磁場の大きさに従って変化する。出力端子112Aおよび112Bにおいて測定された信号の振幅は、このように磁場に従って変化する。
【0048】
この二つのハイパスフィルタ124Aおよび124Bが、外部環境の結果である干渉周波数のフィルタ処理をもたらす。
【0049】
差動増幅段122は、大きさが、二つの端子122Aおよび122Bの間の電位差に比例する信号を、出力において生成する。回路Cの励起周波数に中心がある選択フィルタ138は、この周波数に対する場の周波数成分の分離をもたらす。
【0050】
二つのローパスフィルタ152および154は、干渉成分の抑制を可能にする新しいフィルタ処理操作をもたらす。
【0051】
出力段160を、無負荷センサの端子において測定された、連続電圧値を出力するように有利に追加することができる。このため、差動増幅器が再び使用される。前述の出力信号は、差動増幅器の反転入力に加えられ、一方、連続基準電圧は、非反転入力に加えられる。
【0052】
基準電圧の制御は、この第2差動増幅器の出力においてゼロを測定するように調整可能な抵抗の値を調整することにより行われる。測定は、回路Cを分極化することなく、センサを磁気的に(ヒステリシスサイクルにおいてオフセットするために)分極化することにより行われる。
【0053】
処理チェーンからの信号は、データ処理部により受信される。
【0054】
このように、処理チェーンが、磁場の測定値および、より正確には、磁場の成分を非常に迅速に得ることを可能にしていることは理解されよう。
【0055】
図3および図4は、本発明に係る測定装置の構成変形例である。これらの実施形態において、図2と同一の、または類似の要素は、同じ参照番号で示してある。
【0056】
これらの二つの構成変形例において、処理チェーンのみが、差動増幅段122の下流で使用される手段のため、異なっている。
【0057】
二つの場合において、所定周波数に対する磁場の周波数成分を分離する手段は、差動増幅段122からの信号と基準信号の合成を可能にし、その周波数FCが、励起回路により加えられた回路動作周波数f以上である乗算回路180を備える。乗算器の使用により、周波数(160kHz)の選択に柔軟性が出てくる。
【0058】
図3の実施形態において、分離手段はアナログ乗算回路180を備え、その一つの入力は、差動増幅段122の出力において接続され、他の入力は、基準周波数Fが、分離される周波数成分の所定周波数FIを超える、正弦波電圧生成器182に接続される。
【0059】
抵抗186およびコンデンサ188により構成されるローパスフィルタ184は、乗算回路の出力において設けられる。有利なことであるが、出力回路において得られるフィルタ処理済の信号と、Vrefと示される、加えられた基準信号との比較のために、ローパスフィルタ184の出力において減算回路190が設けられる。減算回路は、フィードバックループに適切な抵抗194を有し、電圧Vrefがその非反転端子に加えられる、演算増幅器192を備える。
【0060】
図2の実施形態と同様に、出力段160は、減算回路の出力において配設される。
【0061】
具体的な実施形態によれば、電圧源182は、ウェストンブリッジ301を供給する電圧源116により形成される。
【0062】
本実施形態においては、センサの電力供給周波数は、得ようとする周波数成分の周波数と同一である。
【0063】
図6の実施形態において、所定の周波数成分を分離する手段は、差動増幅段122の出力において得られる信号と、基準信号の乗算をもたらすデジタルプロセッサにより形成される。
【0064】
図4に示されるように、抵抗202とコンデンサ204から構成されるローパスフィルタ200が、差動増幅段の出力において設けられる。アナログ/デジタル変換器206は、信号をデジタル化することを確実にするために、フィルタ200の出力において接続される。
【0065】
更に、処理チェーンは上記のように、これもまた182と示される正弦基準電圧源を含む。アナログ/デジタル変換器208は、この電圧源182の出力において接続される。アナログ/デジタル変換器は、受信した信号の周波数よりも遥かに高いサンプリング周波数を有する。これは、例えば、500kHzを超える。
【0066】
DSP型の回路のような高速プロセッサ210が、処理チェーンに設けられる。それは、二つのアナログ/デジタル変換器206と208からの信号を、入力において受信し、二つの信号の乗算をもたらすようにプログラムされる。
【0067】
乗算された信号は、このように、データ処理部24に送られる。
【0068】
この場合、この二つの信号の乗算はプロセッサ210により実行される。図3および図4の出力段160により実行される減算操作もまた、プロセッサ210によりもたらされる。
【0069】
図5は、本発明に係る装置の構成変形例を示している。この図において、図1と同一または類似の素子は、同一な参照番号で示されている。
【0070】
本実施形態において、600と示され、図6において拡大して示されるプローブは、三つの対として分布される六個の磁気抵抗センサを備え、同じ対のセンサは、互いに平行な選択された測定軸を有している。三つのセンサ対の選択された測定軸は、互いに直交し、このように、三つの主空間方向に延伸している。
【0071】
同一の対のセンサは、その共通の選択された測定軸に関して横方向に、互いにオフセットされている。
【0072】
本実施形態において、四個のセンサ602、604、606、608は、第1集積回路上に配設され、他の二個のセンサ610と612は、第1集積回路と直交して配設された他の集積回路上に配設されている。
【0073】
センサ602、606、604、608は、二つの平行面に沿って分布されている。
【0074】
図1の実施形態と同様に、センサ602と604は、軸Z−Zに沿ってオフセットされ、その選択された測定軸は、軸X−Xに沿って延伸している。同様に、センサ606と608は軸Z−Zに沿ってオフセットされているが、その選択された測定軸は、軸X−XおよびZ−Zに関して直交する軸Y−Yに沿って延伸している。
【0075】
最後に、センサ610と612は、軸X−Xに沿ってオフセットされており、その選択された測定軸は、軸Z−Zに平行である。
【0076】
図5に示されるように、各センサは、測定装置の特別な処理チェーン20と22に関連付けられており、六つの処理チェーンの出力は、装置のデータ処理部24に接続されている。
【0077】
本実施形態において、データ処理部24は、各方向X−X、Y−Y、およびZ−Zにおける磁場成分の変分値を計算するのに適している。
【0078】
それぞれ、dBx、dBy、dBzと示される各変分は、同じ対の二個のセンサの間で行われた場の測定の値間の差として定義される。
【0079】
更に、データ処理部24は、場の変分の絶対値の計算を可能にし、この絶対値は、|dB|=√dB2x+dB2y+dB2zにより決定される。
【0080】
方向X−XとY−Yにおける二個のセンサの二つの面を使用することで、装置の軸Z−Zに関して直交する面において電流が求まる。dBx/dzとdBy/dzという対におけるセンサ間の差分場測定により、マックスウェル(Maxwell)の方程式による電流のベクトル表現であるJxおよびJyを導出することが可能になる。これは電流が、装置の軸に関して直交する面のみを流れるときは、dBz/dyとdBz/dxはゼロになるからである。
【0081】
図7に示される設備710は、動作中に集積回路を分析するためのものである。
【0082】
この設備は、実質的に、集積回路Cを支持するプレート712と、FCで示される所定周波数で集積回路を励起する回路714と、操作中に回路Cにより生成される磁場を分析するための装置716と、磁場を分析する装置716の出力において得られる結果を処理するための手段718とを備える。更に、設備は、動作中に集積回路を観察する手段720を備える。これらの手段は、それ自体既知であり、詳細は記述しない。
【0083】
回路Cが設置されるプレート712はミュー合金のプレートにより形成されるか、または回路から離れた、その下方において、磁場に対してバリアを形成するミュー合金を備える。回路Cはミュー合金のケースに閉じ込めると有利である。
【0084】
励起回路714は、例えば、所定周波数FCにおいて電力を回路に供給できる周波数生成器により形成される。この励起周波数FCは、例えば、160kHzである。
【0085】
分析手段716は、操作アーム722を備え、操作アームの自由端には、測定プローブ724であって、そのプローブの位置における磁場に特有な値を決定できる測定プローブ724が設けられている。
【0086】
操作アーム722は、互いに直交する三方向の移動を可能にし、回路に関してのプローブの位置を正確に知ることができる、それ自体既知のプローブを移動させる機構726に接続されている。
【0087】
更に、分析手段716は、プローブ724が接続されて、プローブからの信号を処理するための処理チェーン728を備える。これらの処理チェーンは、図2、図3、および図4を参照して記述したものと同一である。この処理チェーンは、処理手段718に接続されて、処理手段に、プローブ724により測定される磁場の、一つ以上の処理された値を提供する。
【0088】
処理手段718は、例えば、処理チェーン728の出力において接続される入力カードを備える、PCタイプのコンピュータにより形成される。更に、分析手段716が、より正確には、移動手段726、処理チェーン728、および励起回路714の制御を可能にする制御カードを備える。
【0089】
処理手段718は、磁場、特に、励起回路714、移動手段726、および処理チェーン728の分析のための手段716の制御を可能にするソフトウェアモジュールを備える。また、フィールド分析手段からの信号を処理するためのソフトウェアモジュールも更に備える。
【0090】
特に、処理手段718は、図8に示されるアルゴリズムを実行でき、アルゴリズムの各ステップに対して、ソフトウェアモジュールが提供される。
【0091】
動作中に電子回路を分析するために、回路の図に基づいて、回路のモデル化を最初に、ステップ750の間に行うことができる。このモデル化は、例えば、ベクトル型であるが、適切であれば、どんなソフトウェア手段を使用しても実行できる。このモデル化は、回路Cを構成する種々のトラックおよび種々の電子構成要素の場所を決定するように意図されている。
【0092】
このモデル化が完了すると、回路操作のシミュレーションがステップ752の間に実行される。回路上の磁場の特徴は、回路の各ポイントにおいて、このシミュレーションにより、特にマックスウェルの方程式を適用することにより決定される。このように、回路の各要素に対して、そこを流れる電流、およびBx、By、およびBzと示される磁場の三個の成分が、回路の直上に位置する測定点で、および測定プローブ724により占められる、異なる所定の場所に対して決定される。
【0093】
モデル化およびシミュレーションステップと平行して、処理手段718は、シミュレーションの間、それぞれの適切な測定点において、フィールド分析手段716を使用して、磁場の有効測定を制御する。
【0094】
ステップ760の間、フィールド分析手段716は、最初、初期化され較正される。その正しい動作もまた検証される。更に、基準測定が、それが生成する磁場の成分が既知である較正用のテスト片について実行される。
【0095】
種々の測定点の取得は、ステップ762の間に実行される。このステップは、動作中に磁場C上のいくつかの所定測定点において、磁場の少なくとも一つの成分の測定を実行することを含む。この目的のため、プローブが、回路の表面を、例えば、ブーストロフェドン型の経路に従って走査するために、移動手段726の制御のもとに移動される。測定値をそれぞれ取得する前に、測定プローブを測定点において停止させるので、測定の結果は、プローブの移動により影響されない。
【0096】
各測定値の実際の取得は下記に示される。
【0097】
ステップ762もまた、回路Cが動作中でないときに、周囲の磁場の成分を各測定点において測定するために、測定点の取得を提供するが、これは有利ではあるが、必ずしも必要ではない。
【0098】
ステップ764の間、各測定点に対して取得された信号は、特に測定の結果であるエラーとズレを訂正するために処理され、これらのエラーとズレは、ステップ760の間に基準テスト片から取得されたデータの表との比較に関連する技術により訂正される。
【0099】
ステップ764の間、一つ以上の方向において、Bx、By、Bzと示される場の測定値からの値が計算され、特にdBx/dy、dBx/dz、dBy/dz、dBy/dx、dBz/dz、およびdBz/dyと示される三方向における場の成分の空間的な変分が計算される。
【0100】
更に、測定点の下の電流における電流の大きさおよび方向の特徴は、Jを電流ベクトルとし、Bを磁場ベクトルとしたときのマックスウェルの法則J=Rot B、を適用とすることにより決定される。
【0101】
ステップ766の間、信号処理ステップ764からの値と、ステップ752の間に実行されたシミュレーションに従って得られた値が、回路の実際の操作が正しいか否かを推測し、理論上の回路と、動作中の実際の回路間のズレの領域を決定するために比較される。
【0102】
測定ヘッド724は、図9に示されるように、例えば、プローブ1000により構成される。このプローブは、対で、三つの直交する方向における場の異なる測定を行うのに適している。
【0103】
このタイプのプローブは、九個のセンサを備える。これら九個のセンサは、三個のセンサを一つの組(三個組)とする三つの組として分布され、同一の三個組のセンサは、互いが平行に配設された選択された測定軸を有している。これらのセンサは、三個組を特徴付ける選択された測定軸に関して直交する二つの方向において、互いが更にオフセットされている。
【0104】
より正確にいえば、図9に示す例において、三つのセンサ1002A、1002B、1002Cは、軸X−Xに平行に配設された、選択された測定軸を有している。これらのセンサ1002Aと1002Bは、軸X−Xに沿って互いにオフセットされており、一方、センサ1002Aと1002Bは、軸X−Xに沿ってオフセットされている。同様に、センサ1004A,1004B,1004Cは、軸Y−Yに平行な、選択された測定軸を有し、センサ1004Cは、軸X−Xに沿って、センサ1004Aからオフセットされ、一方、センサ1004Bは、軸Z−Zに沿ってセンサ1004Aからオフセットされている。最後に、三個のセンサ1006A、1006B、1006Cは、軸X−Xに平行に延伸する測定軸を有し、センサ1006Aと1006Bは、軸Z−Zと、軸Y−Yに沿ってそれぞれ、センサ1006Aに関してオフセットされている。
【0105】
図7と図8を参照して記述した設置において、各センサは特別な処理チェーンに接続され、九個の場の値が、処理手段718に供給される。更に、処理手段718にとって、この三個組のセンサの選択された測定軸に関して直交する方向において、同一の三個組の種々のセンサを隔てる距離は既知である。このように、各測定点に対して、処理手段は、センサにより測定された成分より、各方向における磁場の各成分の変分を決定する。これらの異なる変分に基づいて、Jx、Jy、Jzと示される種々の成分が、テストされている回路Cを流れる電流の三つの直交する方向X−X、Y−Y、Z−Zにおいて、下記の比を使用して計算される。
【0106】
x=dBz/dy−dBy/dz
y=dBx/dz−dBz/dx
z=dBy/dx−dBx/dy
このタイプの装置では、回路を流れる電流が、各測定点に対して、精度よく決定できると思われる。測定点を乗算することで、テストされている回路の構造を再構築でき、その動作を精度よく分析できる。
【0107】
図10は、図7の変形例を示す。本実施形態においては、測定ヘッド724は、行と列の形態で、規則的に配設されたセンサのセットを備えるマトリックス1100により置き換えられている。このセンサのマトリックスにより、シリコンウェーハ1102により搬送される集積回路のセットのテストが可能になり、回路は、横に並べて配設される。センサのマトリックスは、行と列に分布されたセンサのセットを備え、それぞれは、ウェーハ1102に属する、テストされる回路に対応している。
【0108】
センサのセットは図11に部分的に示されている。そのようなセンサのセットは、例えば、それ自身が行と列に配設された5000の磁気抵抗センサを備えている。これらのセンサのそれぞれは、特別な処理回路により分析装置に接続されている。センサのセットは、選択された測定軸が、互いに直交する二つの方向において互いに平行に配設されているセンサを備えている。これらの直交する方向は、テスト対象の回路の全体面に平行な面において延伸している。回路の主面に関して直交する電流成分は、一般的にほとんど関心の対象とならない。
【0109】
このマトリックスが、集積回路のウェーハの磁場画像を迅速に取得するために使用される。あるサイズのマトリックスに対して、センサは、一つが方向Xで、他方が方向Yである二つの面上に分布される。
【0110】
上記と同一な第2マトリックスを、90度回転して使用すると有利である。下方の面、好ましくは、面Xはこのようにして面Yになり、上方の面は面Xになる。これら二つのマトリックスを使用して、ある二つの高度Zにおける場Xおよび場Yを測定するアセンブリが提供される。二つの高度間で、差分による方法でこれらの測定値を組み合わせることで、マックスウェルの方程式に従う電流の式が得られる。
【0111】
図11の実施形態において、センサマトリックスは、二つのスーパーインポーズされた層1202と1204を備える。各層は、磁気抵抗センサの規則的なネットワークを備えている。第1層のセンサ1206は、その選択された測定軸が平行に配設され、センサは、互いに直交する行と列に分布されている。同様に、第2層は、選択された測定軸が互いに平行で、第1層のセンサの測定軸に関して直交しているセンサ1208を備える。
【0112】
二つの層の上において、センサは、その選択された測定軸に関して直交し、既知の所定ピッチのセンサを搬送する層の面において延伸する方向において、互いに等間隔に分離されている。このように、問題の例においては、各センサの領域において、処理手段が下記の比に基づいて、回路の主面を流れる電流成分jxおよびjyを決定する。
【0113】
x=−dBy/dz
y=−dBx/dz
これらの値を得るために、マトリックスが、テスト対象の回路に関する方向Z−Zにおける等間隔に分離した場所に連続的に運び込まれる。測定は、間隔dzで分離されているこれらの二つの場所において行われ、測定された値を減算することにより、量dByとdBxが計算される。
【0114】
図12は、本発明に係るプローブの他の実施形態を示しており、このプローブは、図10のセンサマトリックス1100のセンサのセットを構成している。
【0115】
本実施形態において、超伝導材料の同じ層1302上において、種々の磁気抵抗センサが規定される。各センサは、規則的な形状を有し、磁気抵抗素子は、図において四角形で示されているセンサの中心部のみにより形成されている。
【0116】
このプローブは、第1方向X−Xにおいて配設されている選択された測定軸を有するセンサの複数の行と、選択された測定軸が、軸Y−Yに沿って延伸するセンサの行を交互に配設することにより構成されている。より正確には、軸X−Xに平行な選択された測定軸を有する磁気抵抗センサ1304の五つの行が、軸X−Xに沿って順々に配設されている。センサは、互いの行同士が磁気抵抗センサの長さ、つまり選択された測定軸に関して直交するような長さの5分の1に等しい距離だけオフセットされている。選択された測定軸が他の測定方向に向けられている、1306で示されるセンサの行は、同じ軸に沿って、厳密に揃えられた磁気抵抗センサの整列により構成されている。
【0117】
この構成は、磁気抵抗センサの規則的な特質を考慮している。長方形の中心に位置する能動場測定素子に関する長方形のサイズに従って、比率1/5は修正される。
【0118】
第1マトリックスの上の面において平行となるように第2マトリックスを配設すると有利である。この第2マトリックスは、同様な方法で構成されるが、軸Y−Yに沿うセンサのセットは、軸X−Xに沿うセンサのセットと、軸Y−Yに沿うセンサの上方の軸X−Xに沿うセンサの上方に置かれる。このようにして、二つの面の間の、軸X−Xに沿うセンサ間の差分の測定値が走査後に得られる。差分の測定は、ある位置における下方の面の軸X−Xに沿うセンサと、同じ位置における上方の面の軸X−Xに沿うセンサの二つの測定の間の対において行われる。走査後は、すべての点において、二つの面(二つの高度z)上の場BXとBYの測定値により、全面が覆われる。
【0119】
変形例において、磁気抵抗センサは、磁気誘導センサと置き換えられる。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】集積回路を分析するための携帯装置の斜視図である。
【図2】本発明に係る磁場を測定する装置の第1実施形態の模式図である。
【図3】測定装置の構成変形例の図2と同様な図である。
【図4】測定装置の構成変形例の図2と同様な図である。
【図5】本発明に係るプローブの構成変形例の斜視模式図である。
【図6】設備の斜視図である。
【図7】集積回路を分析するための設備の斜視図である。
【図8】図7の設備の操作を説明するフローチャートである。
【図9】三つの空間的方向において磁場の変分を測定するのに適した九個のセンサを有するプローブの三次元的表現の図である。
【図10】集積回路のセット用のテスト設備を示す図である。
【図11】マトリックス測定プローブの第1実施形態の模式図である。
【図12】マトリックス測定プローブの第2実施形態の模式図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
選択された測定軸に沿う磁場を感知する少なくとも一個の磁気抵抗または磁気誘導センサを備える、磁場を測定するプローブであって、その選択された測定軸が平行かつ、選択された測定軸に関する横方向において、互いにオフセットされるように、一つの場所においてお互いが固定して接続された少なくとも二個の磁気抵抗または磁気誘導センサ(14、16)を備え、前記プローブは、その選択された測定軸に沿う各センサにより測定された磁場を表わす信号を提供するために、各磁気抵抗または磁気誘導センサに固有な出力端子を備える測定プローブ。
【請求項2】
少なくとも二対の磁気抵抗または磁気誘導センサ(602,604、606、610、612)を備え、それぞれの同じ対の前記センサは、平行かつ、その選択された測定軸に関して横方向に互いにオフセットされた選択された軸を有し、二つの分離した対の前記センサの前記選択された測定軸は、角度に関してオフセットされている請求項1に記載の測定プローブ。
【請求項3】
三個のセンサを一つの組(三個組)として、三つの組として分布された少なくとも九個の磁気抵抗または磁気誘導センサ(1002A、1002B、1002C、1004A、1004B、1004C、1006A、1006B、1006C)を備え、同じ三個組の三個のセンサは、平行かつ、その選択された測定軸に関して横方向に互いにオフセットされた選択された測定軸を有し、分離した三個組の前記センサの前記選択された測定軸は角度に関してオフセットされている請求項2に記載の測定プローブ。
【請求項4】
前記プローブのすべての前記磁気抵抗または磁気誘導センサ(602、604、606、608、1206、1208)は、二つの層(1202、1204)に従って分布されている請求項3に記載の測定プローブ。
【請求項5】
異なる層の前記センサの前記選択された測定軸は、角度に関してオフセットされている請求項4に記載の測定プローブ。
【請求項6】
同じ層の前記センサ(1206、1208)は、平行な選択された測定軸を有する請求項5に記載の測定プローブ。
【請求項7】
前記プローブの全ての前記磁気抵抗または磁気誘導センサ(1304、1306)は、同じ層上に分布されている請求項1から6のいずれかに記載の測定プローブ。
【請求項8】
動作中の電子回路を分析する装置であって、請求項1から7のいずれかに記載の少なくとも一つのプローブ(12)と、各磁気抵抗または磁気誘導センサ(14、16)に固有な処理チェーン(20、22)と、種々の処理チェーンからの信号を処理する手段(24、26)とを備え、処理手段は、平行かつ、二つの磁気抵抗または磁気誘導センサを隔てる距離において、互いに横方向にオフセットされた前記選択された測定軸を有する前記二つの磁気抵抗または磁気誘導センサにより測定された場の値間の差の比の数値を求めるのに適している装置。
【請求項9】
平行かつ、二つの磁気抵抗または磁気誘導センサを隔てる距離において、横方向にオフセットされた選択された測定軸を有する前記二つの磁気抵抗または磁気誘導センサにより測定された場の値間の差の比を表示する手段を備え、手で持つ、および手動で移動させるのに適している請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記処理手段は、センサ(602、604、606、608)の各対に対して、平行かつ、二つの磁気抵抗または磁気誘導センサを隔てる距離に、横方向にオフセットされた選択された測定軸を有する前記二つの磁気抵抗または磁気誘導センサにより測定された場の値間の差の比の数値を求めることができ、前記処理手段は、前記数値が求められた比の間の差から、電流の少なくとも一つの成分を計算できる、請求項2に記載のセンサが設けられた請求項8に記載の装置。
【請求項11】
前記電流の少なくとも一つの計算された成分を表示する手段(26)を備え、前記装置は、手で持つ、および手動で移動させるのに適している請求項10に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2007−508535(P2007−508535A)
【公表日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−530430(P2006−530430)
【出願日】平成16年10月8日(2004.10.8)
【国際出願番号】PCT/FR2004/002562
【国際公開番号】WO2005/036194
【国際公開日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【出願人】(505152457)サントル ナシオナル デチュード スパシアル (12)
【Fターム(参考)】