説明

磁気式エンコーダを搭載した電動機

【課題】冷却ファンのカバー上にエンコーダを取り付けると、エンコーダのカバーが吸気口を塞いでしまい、その裏側には冷却封が流れないため風量の低下、電動機の冷却が部分的に不均一になり、電動機の温度上昇を招く。従来の方法では、エンコーダ本体を吸気口から離して設置し通風面積を確保したり、電動機を低発熱の設計とする手段が取られているが、いずれも電動機寸法が大きくなる手段であり、電動機の設置スペースの増大につながっていた。
【解決手段】磁気式エンコーダを搭載した電動機において、回転円板7を中空のリングとし、回転円板7の内周に凹凸を設けることでエンコーダの磁気センサ8が冷却風の吸気口9を塞ぐことがなく、電動機外周に流れる風量を均一にし電動機が部分的に熱くなることがなく、効率良く冷却することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転検出器付き電動機であり検出手段として磁気式エンコーダを使用している電動機の構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
磁気式エンコーダは他の方式の光学式エンコーダと比べて信頼性が高い、回転体が単純で強度に優れ高速回転に適しているなどの利点があり、車両用電動機や工作機械主軸用電動機に広く利用されている。
【0003】
磁気式エンコーダは検出円板が電動機の軸に取り付けられて回転し、外周に設けられた凹凸を磁気変化として近接設置された磁気センサが検出し、電動機の角度位置情報として上位制御装置へ送信する。制御装置は電動機の角度と回転速度を常に知ることができるため、電動機の位置決めや速度制御を高精度で行なうことができるので、電動機の制御には欠かせないものになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−10436号公報
【特許文献2】特開2008−306922号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
磁気式エンコーダは回転円板を電動機の軸に取り付ける。円板の外周には凹凸があり、それを読み取れるように円板の外側に磁気センサを電動機のフレーム部材に固定して取り付ける。
【0006】
磁気式エンコーダの磁気センサの保護と回転体に人体が触れることを防ぐ目的で、カバーが取り付けられている。電動機には発熱を冷却する冷却ファンが電動機の軸に取り付けられており、磁気式エンコーダは冷却ファンの後方の軸に取り付けられる。冷却ファンのカバーには吸気口が設けられており、電動機の軸の回転により冷却ファンも回転し、電動機の後方より空気を吸い込み、電動機の表面に冷却風を流して電動機を冷却する。
【0007】
冷却ファンのカバー上にエンコーダを取り付けると、エンコーダのカバーが吸気口を塞いでしまい、その裏側には冷却封が流れないため風量の低下、電動機の冷却が部分的に不均一になり、電動機の温度上昇を招く。
【0008】
この課題を解決するために従来の方法では、エンコーダ本体を吸気口から離して設置し通風面積を確保し、あるいは、電動機を低発熱の設計とする手段が取られているが、いずれも電動機寸法が大きくなる手段であり、電動機の設置スペースの増大につながっていた。
【0009】
電動機の大きさとエンコーダの大きさの関係のバランスが悪い例として、電動機の外径よりもエンコーダ部分が飛び出している形態の場合、エンコーダの寸法に合わせて設置されるスペースを確保する必要がある。
【0010】
また、電動機全体が円筒のケースに収まって設置されるような場合は、電動機の外径より飛び出しているエンコーダが電動機取り付けの際の障害となるため、電動機本体をケースに一旦組み付けた後、エンコーダを後付けするといった手段が取られ、組立て性が悪いという課題があった。
【0011】
別の手段として、回転円板の直径を小さくしてエンコーダを電動機の外径より出っ張らないようにする手段があるが、回転円板外周の凹凸の数は円板の直径に比例するため、直径を小さくすれば一回転当たりの凹凸の数が少なくなり、角度分解能が小さくなってしまい、位置決め精度が悪化してしまう問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の磁気式エンコーダを搭載した電動機は、回転軸に取り付けられた回転円板の内周に凹凸の検出溝があり、前記回転円板の内側に磁気センサが設置されていることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の磁気式エンコーダを搭載した電動機は、更に、冷却ファンカバーの前面に、吸気口よりも小径の保護カバーが設置され、前記回転軸の前方に設けられたエンコーダの回転円板が、前記保護カバー内で回転可能に配置され、前記保護カバー内には、エンコーダの磁気センサが軸中心から半径方向に向かって配置されることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の磁気式エンコーダを搭載した電動機は、更に、エンコーダの回転円板は、冷却ファンカバー内に配置される冷却ファンに直接設置され、前記冷却ファンカバーに直接配置された保護カバー6にエンコーダの磁気センサと共に配置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、エンコーダとそれを保護するカバーが電動機の中心に集まっており、エンコーダが電動機の吸気口を塞ぐことがなく、電動機外周に流れる風量を均一にすることができ電動機が部分的に熱くなることがなく効率良く冷却することできるので、電動機の小型化することができる。
【0016】
エンコーダが電動機の外径よりも出っ張るということがないので、エンコーダを後付けする必要がなく、組立て性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は本発明の電動機の一実施例を示す図である。
【図2】図2は本発明の電動機の他の実施例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0019】
図1は本発明の実施例1の電動機を示している。図1において、1は固定子枠、2はエンドブラケット、3は回転軸、4は冷却ファン、5は冷却ファンカバー、6は保護カバー、7はエンコーダ(回転円板)、8はエンコーダ(磁気センサ)、9は吸気口を示している。
【0020】
電動機の固定子枠1に接続されたエンドブラケット2に、電動機の回転軸3が回転可能に軸支され、回転軸3には冷却ファン4が取り付けられていて、回転軸3の回転に伴い冷却ファン4が回転する。冷却ファン4を覆う冷却ファンカバー5の前面には、円環状の吸気口9が設けられており、冷却ファン4の回転により、吸気口5から空気が電動機内部に流入して空冷を行う。
【0021】
実施例1の電動機では、冷却ファンカバー5の前面に、吸気口5よりも小径の保護カバー6が設けられ、回転軸3の前方に設けられたエンコーダの回転円板7が、保護カバー6内で回転可能に配置される。また、保護カバー6内には、エンコーダの磁気センサ8が軸中心から半径方向に向かって配置される。
【0022】
エンコーダの回転円板7の円筒部の内周には、凹凸の検出溝が設けられており、エンコーダの回転円板7の回転時に、エンコーダの磁気センサ8が、円筒部の内周の凹凸の検出溝を検出して、電動機の回転速度を検出する。
【0023】
実施例1では、上記構造により、エンコーダ(回転円板)7とエンコーダ(磁気センサ)とを、冷却ファンカバー5の吸気口からの空気の吸入を妨げることなく、更にコンパクトに配置することができる。
【実施例2】
【0024】
図2は本発明の実施例2の電動機を示している。図2において、1は固定子枠、2はエンドブラケット、3は回転軸、4は冷却ファン、5は冷却ファンカバー、6は保護カバー、7はエンコーダ(回転円板)、8はエンコーダ(磁気センサ)、9は吸気口を示している。
【0025】
実施例1では、保護カバー6が冷却ファンカバー5の前方に配置され、エンコーダ(回転円板)7とエンコーダ(磁気センサ)8とが、保護カバー6内に配置されるのに対して、実施例2では、エンコーダ(回転円板)7は、冷却ファンカバー5内に配置される冷却ファン4に直接設置され、冷却ファンカバー5に直接配置された保護カバー6内にエンコーダ(磁気センサ)8と共に配置される。
【0026】
実施例2では、上記構造により、エンコーダ(回転円板)7とエンコーダ(磁気センサ)とを、冷却ファンカバー5の吸気口からの空気の吸入を妨げることなく、更にコンパクトに配置することができる。
【符号の説明】
【0027】
1 固定子枠
2 エンドブラケット
3 回転軸
4 冷却ファン
5 冷却ファンカバー
6 保護カバー
7 エンコーダの回転円板
8 エンコーダの磁気センサ
9 吸気口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気式エンコーダを搭載した電動機において、
回転軸に取り付けられた回転円板の内周に凹凸の検出溝があり、前記回転円板の内側に磁気センサが設置されていることを特徴とする磁気式エンコーダを搭載した電動機。
【請求項2】
請求項1に記載の磁気式エンコーダを搭載した電動機において、
冷却ファンカバーの前面に、吸気口よりも小径の保護カバーが設置され、前記回転軸の前方に設けられたエンコーダの回転円板が、前記保護カバー内で回転可能に配置され、前記保護カバー内には、エンコーダの磁気センサが軸中心から半径方向に向かって配置されることを特徴とする磁気式エンコーダを搭載した電動機。
【請求項3】
請求項1に記載の磁気式エンコーダを搭載した電動機において、
エンコーダの回転円板は、冷却ファンカバー内に配置される冷却ファンに直接設置され、前記冷却ファンカバーに直接配置された保護カバーにエンコーダの磁気センサと共に配置されることを特徴とする磁気式エンコーダを搭載した電動機。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−125201(P2011−125201A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−283269(P2009−283269)
【出願日】平成21年12月14日(2009.12.14)
【出願人】(502129933)株式会社日立産機システム (1,140)
【Fターム(参考)】