説明

秘密サブモジュールを有する電子回路

本発明は、電子回路の残部に接続されるサブモジュールアセンブリ(2)を含む電子回路であって、前記サブモジュールアセンブリは、−機能を実行すると共にスキャンチェーンを有する秘密サブモジュール(4)と、−入力信号を前記スキャンチェーンにもたらすためのパターン発生器(5)及び前記スキャンチェーンからの出力信号を検査するための署名レジスタ(6)を含む組込自己テスト回路とを含む電子回路に関する。サブモジュールを秘密に保つため、スキャンチェーンは前記回路の残部に接続されていない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子回路、特に秘密(シークレット)サブモジュール(secret sub-module)を有する電子回路に関する。
【0002】
ディジタル回路のサブモジュールは、鍵(キー(key))及びアルゴリズムのような秘密要素を含み得る。これらの要素は全製品寿命、すなわち製造、分配(配送)、及び最終用途の間、秘密に保持される必要がある。従来テスト技術は、サブモジュールのオペレーション(動作)のモードへの外部接続(アクセス)を可能にするため、特にテスティングはクリティカルステップになる。当該従来技術は、回路の全ての内部レジスタのダウンロードを可能にする構造(ストラクチュラル)スキャンテスト(structural scan test)及びサブモジュールが、動作中に受信し得るような刺激(stimuli)を受信すると共に、期待出力信号を入力信号につなげる(リンクする)ことによってサブモジュールの機能そのものについての情報を暴露する(明らかにする)各信号を出力する機能(ファンクション)用途向けのテスト(functional application-like test)を含んでいる。
【背景技術】
【0003】
古典的な構造スキャンテストを扱う場合、回避されるべきことに、全ての回路内部レジスタのダウンロードが考慮される。それ故にこのような技術を使用することにより、ハッカー(hacker)は秘密サブモジュールのコンテンツにアクセスすることが可能になる。機能用途向けのテストに関して、回路に、自身の終了アプリケーションにおいて受信しているような刺激が送信されている。この場合、テストパターンは、“秘密モジュールをどのように使用するか”及び“期待結果は何か”についての情報を含んでいる。それ故に、少なくとも自身の秘密機能(秘密鍵(secret keys))の部分が暴露される。従ってテストオペレーションは機密事項にならない。
【0004】
米国特許第US 2002/0069387号公報は、例えば決定(論的)論理組込自己(ビルトインセルフ)テスト(deterministic logic built-in self test (DLBIST))回路によってテストされる低い機密保護(confidentiality)レベルのサブモジュールを開示している。サブモジュールを自己テストすることにより、複雑な集積回路上で外部テストを実行するために必要となる技術的な要求仕様の低減が可能になるため、当該自己テスティングソリューションは有用である。更に、このような回路が従来の構造スキャンテストによってスキャン(走査)されるとき、サブモジュールの特性に関する情報はなおも暴露され得る。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、テスティングの間、サブモジュールが少なくとも部分的に秘密に保持される回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、電子回路の残部(残り(rest))に接続されるサブモジュールアセンブリ(sub-module assembly)を含む電子回路であって、前記サブモジュールアセンブリは、
− 所与の機能を実行すると共に少なくとも一つのスキャンチェーン(scan chain)を有するサブモジュールと、
− テストモードにおいて入力信号を前記スキャンチェーンにもたらすためのパターン発生器及び前記スキャンチェーンからの出力信号を検査するための署名レジスタ(signature register)を含み、前記出力信号は前記入力信号から前記サブモジュールによって生成される組込自己テスト回路と
を含む電子回路において、前記スキャンチェーンは前記回路の残部に接続されていない電子回路を提供する。
【0007】
アセンブリによって単独に生成される入力信号でサブモジュールを自己テストし、それによって出力信号は回路の残部に達することが防止されることにより、テスティングの間、サブモジュールは少なくとも部分的に秘密に保持され得る。
【0008】
決定論理BIST技術は完全回路にもたらされず、サブブロックにのみもたらされるため、この解決策は有利になる。更に、決定論理BIST技術は、通常意図されること、すなわちテスト費用低減のために使用されないが、当該技術は秘密モジュールについての高レベルの機密保護を保証するために使用される。当該技術により、当該モジュールは、通常の平均的なセキュリティレベル環境においてテストされ得るより広範なシステム・オン・チップ回路において組み込まれ得る。
【0009】
すなわち、この経済的な解決策は、秘密サブブロックのコンテンツが読み出され得ないこと、又は外側から直接アクセスされ得ないことの何れも保証する。
【0010】
有利なことに、前記サブモジュールは入力ピンを含んでおり、前記入力ピンは、回路の残部の通常(レギュラ)スキャンテスティングとサブモジュールの自己テスティングとの両方によってアクセス可能なセルを絶縁分離することによって回路の残部から絶縁分離されている。
【0011】
これらの特徴は、サブモジュールと回路の残部との相互接続を可能にする。
【0012】
有利なことに、前記絶縁分離セルは、署名レジスタへの未知の値(不明な値)の伝播を防止する。
【0013】
これらの特徴により、組込自己テストの生成の流れ(フロー)は回路の残部と適合する。
【0014】
有利なことに、前記パターン発生器は、回路の残部からスキャン入力信号を含んでおらず、前記スキャン出力信号が署名分析器(アナライザ)(signature analyzer)に排他的(独占的)に出力されるサブモジュールにテストパターンをもたらす。
【0015】
これらの特徴は、サブモジュールの自己テスティングを可能にする。
【0016】
有利なことに、前記組込自己テスト回路は、決定論理組込自己テスト回路になり、前記パターン発生器は、
− 擬似ランダムテストパターンを生成するための手段と、
− 前記擬似ランダムテストパターンを決定論的テストサンプルに変換するためのビット修正回路と
を含む。
【0017】
これらの特徴は、より完全な欠陥カバレジを可能にする。
【0018】
本発明のこれら及び他の態様は、図に関して以下に記載された実施例から明らかであり、これらの実施例を参照して説明される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1は回路1に記載の概略図を表す。回路1は、例えばスマートカード、オーディオ/ビデオ/ブロードキャストアクセスモジュール(audio/video/broadcasting access module)、及びSIM(“subscriber identity module”)カード等のようなディジタル集積回路である。
【0020】
回路1は、秘密サブモジュール4を内蔵する組込自己テスト及びサブモジュールアセンブリ2を含んでいる。回路3の残部は低機密レベルであってもよく、テスト制御ブロック14を含んでいる。組込自己テスト及びサブモジュールアセンブリ2は、回路においてアルゴリズムを実現すると共に、入力及び出力ピンPI, PO, 及びPIOによって回路の残部と対話する秘密サブモジュール4を含んでいる。当該アルゴリズムが、製造、分配、及び最終用途を含む回路の使用期間の間、秘密に保持されることは重要である。特にテスティングの間、サブモジュールのコンテンツ及びある入力信号に対する当該サブモジュールの応答が何れかの第三者(third party)によってアクセスされ得ることは回避されるべきである。
【0021】
いかなる種類の組込自己テスト回路も本発明の範囲内で使用され得るが、アセンブリ2は、決定論理組込自己テスト(又はDLBIST)回路としてここに表されている組込自己テスト(又は“BIST")回路を含む。決定論理組込自己テスト回路は、テストパターンをサブモジュールに発生するためのパターン発生器5、サブモジュールからの出力信号を検査するための署名分析器6、及びBISTの動作を制御するためのBIST制御器7を含む。
【0022】
BISTのパターン発生器5は、テストパターンの擬似ランダムシーケンスをサブモジュール4にもたらすための線形フィードバックシフトレジスタ(又は"LFSR")9を含む。更に、パターン発生器5は、決定論的テストパターンをサブモジュール4にもたらすためにLFSR9の出力を修正するためのビット修正回路10及び11を含み得る。DLBISTの場合、このようなビット修正回路は、例えばLFSR9の出力部とサブモジュール4の入力部との間に接続される一連の論理ゲート11、例えばXOR(排他的論理和)ゲートとLFSR9とに接続されるビットフリッピング機能(又は"BFF")回路10を含み得る。ビット修正回路10及び11は、BIST制御器(コントローラ)7の状態とLFSR9の状態との両方によって、それらを決定論的にするように選択されているあるビット位置においてLFSR9によって生成されるパターンを修正する。BFF回路10は、新たな決定論的なパターンが生成される一方、既に検出された欠陥(fault)を検出するのに十分なある古いパターンは不変状態を保持する態様で各々の反復を用いてBFFを向上させる反復アルゴリズムを実行する。
【0023】
秘密サブモジュール4の自己テスティングに加えて、BISTを構成する回路もテストされなければならず、当該回路がいかなる秘密情報も含まないときにスキャンされてもよい。回路3の残部に含まれるテスト制御ブロック14はLFSR9と、サブモジュール4は自己テストされるべきか、又はBISTはスキャンされるべきかどうかにそれぞれ依存してLOAD_BGW信号又はSCAN_EN信号の値をとり得るスキャンイネーブル信号seを備えるBIST制御器7及び署名分析器6とをもたらしている。
【0024】
自己テスティングの間、テスト制御ブロックはLBIST_TEST信号をBIST制御器7のbist_run入力部に送信する。スキャンイネーブル信号seはそれから、LOAD_BGWに接続され、LFSR及びMISRを初期化するために1にセットされる。サブモジュール4は、テストパースキャン(test-per-scan)の態様で自身のスキャンチェーンを介してテストパターンを受信する。従来技術において、被テストサブモジュール4は、パターン発生器5によって生成されるパターンからの多重化信号(multiplexed signal)としてのスキャンチェーン入力信号cut_si(0,1,…,n) 及びグローバル(全体)スキャンテスティング(global scan testing)の間にチップ3の残部からくる外部入力信号si(0,1,…,n)を受信し得る。従来技術において、scan_access_select信号の状態に応じて、マルチプレクサ13はサブモジュール4に、全体回路1に対してスキャンテストが実行されるときに外部入力信号si(0,1,…,n)をもたらすか、又は自己テスティングのときにパターン発生器5の出力部からの信号をもたらす。
【0025】
本発明によれば、マルチプレクサ13(及び従ってサブモジュール4のスキャンチェーン)は、前記外部入力信号si(0,1,…,n)を受信するように接続されない。これは、scan_access_select信号をLBIST_TESTに接続することによっても得られ得る。スキャンチェーン入力信号cut_si(0,1,…,n)は、唯一のパターン発生器5によってもたらされる。サブモジュール4のいくつかのスキャンチェーンが秘密でない場合、当然のことながら、当該スキャンチェーンは従来態様で接続され続ける。
【0026】
一旦LFSR9と署名分析器6との両方が初期化されると、テスト制御ブロックは信号LOAD_BGWを1から0に切り換える(トグルする)と共に、BIST制御器7はそれから、その後の動作(オペレーション)を制御する。BISTは、秘密サブモジュール4をテストするため、好適な数のサイクルに対して実行される。
【0027】
スキャンチェーン入力信号cut_si(0,1,…,n)から、サブモジュール4はスキャンチェーン出力信号cut_so(0,1,…,n)を署名分析器6に出力する。本発明によれば、サブモジュール4のスキャンチェーンは、通常の実現態様と異なり、回路3の残部に接続されず、出力信号so(0,1,…,n)は回路3の残部に送信されず、応答の評価のために、署名分析器6に単独で送信される。署名分析器6は例えば、サブモジュールが外乱なしで動作させられる場合、与えられた所定の値を有する署名をもたらす多重入力信号レジスタ(Multiple-Input Signal Register)(又は"MISR")になる。しかるべき場合、パターンカウンタpat_cntはテストを完了(終了)させ、LOAD_BGWは、MISRから署名をシフトするため、テスト制御ブロック14によっていつでも1にスイッチバックされ得る。外乱の場合、当該値は、サブモジュール4の機能又は構造の何れも暴露しないso_bist信号として回路3の残部に出力される。
【0028】
サブモジュール4のスキャンチェーンを回路3の残部から分離することによって、サブモジュール4は、自身の専用DLBISTモード以外の他のいかなるテストモードにおいても読み出しアクセス可能にならず、書き込みアクセス可能にもならない。それ故にテスティングの間にさえも、当該サブモジュールは秘密に保持される。
【0029】
BISTの生成フローは、未知の値が署名分析器6に伝播され得ない態様で回路3の残部と互換可能になる。これは、例えばテスティングの間、規定されていない状態を有するサブモジュール出力信号のビットがMISRに達することを阻止(ブロック)するマスキング論理素子(要素)(masking logic element)によって実行され得る。これは、サブモジュール4の入力ピンPI及びPIO上に、コアテストアクショングループ(Core Test Action Group (CTAG))によって開発されている絶縁分離セル(アイソレーションセル(isolation cell))12を加えることによって実行され得る。これらの絶縁分離セルはサラウンド(周囲)スキャンチェーン(surround scan chain)を形成する。当該セルは動作モードにおいて回路1に対して透明(トランスペアレント(transparent))であり、サブモジュールにアクセスするためにスキャン可能なフリップフロップを含んでおり、回路の残部とサブモジュールとの間の簡単な相互接続テストを可能にする。
【0030】
上記のように、DLBIST及びサラウンドスキャンチェーンを構成する回路もテストされなければならず、当該回路はいかなる秘密情報も含まれないときにスキャンされてもよい。そうするため、SCAN_EN信号が、DLBISTのスキャンを可能にするためにテスト制御ブロック14からパターン発生器5、署名分析器6、及びBIST制御器7に入力される。それから、入力BISTスキャンチェーンsi_bistがLFSR 9に入力され、対応する出力BISTスキャンチェーンso_bistがMISR 6から読み出される。
【0031】
従って、絶縁分離セルによってもたらされるサラウンドスキャンチェーンは、回路の残部がテストされるときの通常スキャンテストモードと、サブモジュール4のみがテストされるときのDLBISTモードとの両方でアクセス可能な唯一のチェーンになる。
【0032】
サブモジュール4の周りにDLBISTをインストールするために必要とされる簡単な設計オーバヘッドの場合、製品の寿命を通じてサブモジュール4は秘密に保持される。
【0033】
本解決策は、スマートカード、オーディオ/ビデオ/ブロードキャストアクセスモジュール、又はSIMカード等のような秘密のモジュールを含む何れのディジタル集積回路に適用されてもよい。
【0034】
単語“有する”及びその語形変化の用法は、請求項に記載される構成要素以外に構成要素又はステップの存在を排除するものではない。構成要素又はステップに先行する冠詞“a”又は“an”の使用は、複数の構成要素又はステップの存在を排除するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明による回路の概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子回路の残部に接続されるサブモジュールアセンブリを含む電子回路であって、前記サブモジュールアセンブリは、
− 所与の機能を実行すると共に少なくとも一つのスキャンチェーンを有するサブモジュールと、
− テストモードにおいて入力信号を前記スキャンチェーンにもたらすためのパターン発生器及び前記スキャンチェーンからの出力信号を検査するための署名レジスタを含み、前記出力信号は前記入力信号から前記サブモジュールによって生成される組込自己テスト回路と
を含む電子回路において、前記スキャンチェーンは前記回路の残部に接続されていない電子回路。
【請求項2】
前記サブモジュールは入力ピンを含み、前記入力ピンは、前記回路の残部の通常スキャンテスティングと前記サブモジュールの自己テスティングとの両方によってアクセス可能な絶縁分離セルによって前記回路の残部から絶縁分離される請求項1に記載の電子回路。
【請求項3】
前記絶縁分離セルは、未知の値の前記署名レジスタへの伝播を防止する請求項2に記載の電子回路。
【請求項4】
前記パターン発生器は、前記回路の残部からのスキャン入力信号を含まない前記サブモジュールにテストパターンをもたらし、前記スキャン出力信号は、署名分析器に排他的に出力される請求項1に記載の電子回路。
【請求項5】
前記組込自己テスト回路は、決定論理組込自己テスト回路であり、前記パターン発生器は、
− 擬似ランダムテストパターンを生成するための手段と、
− 前記擬似ランダムテストパターンを決定論的テストサンプルに変換するためのビット修正回路と
を含む請求項1に記載の電子回路。

【図1】
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【公表番号】特表2007−506088(P2007−506088A)
【公表日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−526724(P2006−526724)
【出願日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【国際出願番号】PCT/IB2004/002988
【国際公開番号】WO2005/029105
【国際公開日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(501344315)コニンクリユケ フィリップス エレクトロニクス エヌ.ブイ. (174)
【Fターム(参考)】