説明

移動体搭載用機器

【課題】移動体への取り付け状態によらず、移動体の移動により移動体の或る軸回りに角速度が発生した場合に、その軸とは異なる軸回りの角速度を精度良く得ることが可能となる移動体搭載用機器を提供する。
【解決手段】重力加速度算出部181が出力する重力加速度と、車体加速度算出部182が出力する車体加速度とに基づき、ジャイロセンサ132のピッチ軸と車体の鉛直軸とのなす角度を算出する取り付け角度算出部183と、ジャイロセンサ132が検出するヨー軸回りの角速度と、取り付け角度算出部183が算出した角度とに基づき、ジャイロセンサ132が検出するピッチ軸回りの角速度に含まれる不要成分を算出し、ジャイロセンサ132が検出するピッチ軸回りの角速度から、算出された不要成分を減算する補正部133と、を備える構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体に搭載可能な移動体搭載用機器に関するものであり、特に、車両などに設置してナビゲーション装置として使用する移動体搭載用機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、据付型のナビゲーション装置よりも機能を簡略化し、本体を小型軽量化することで携帯可能なPND(Portable Navigation Device)と呼ばれる簡易型のナビゲーション装置が普及している。
【0003】
また、PNDは、GPS信号を受信して自らの現在位置を検出するほか、GPS信号が取得できない場合のための補助的手段として、加速度センサやジャイロセンサを内蔵することでGPSよりも正確な現在位置を検出することが可能である。
【0004】
この種のセンサを用いて車両の現在位置を推測する自立航法式の従来技術としては、例えば、特許文献1に開示されている。この特許文献1には、移動体の進行方向に平行に取り付けられた加速度センサで検出された第1の速度と移動体の進行方向に対して所定角度傾斜して取り付けられた加速度センサで検出された第2の加速度とに基づいて移動体が斜面を進行する場合の傾斜角度を正確に算出することができる。
【0005】
ところで、PNDは、車内のダッシュボードへの取り付け、取り外しが容易に行えるため、その取り付け作業はユーザ自らによって行われている。しかしながら、自立航法式に用いられる加速度センサやジャイロセンサ等は、所定の方向を向くように正しい姿勢で取り付けなければ、それぞれの取り付け角度に起因する誤差によって現在位置が正確に検出することができないという問題点があった。
【0006】
そこで、本願出願人は、特願2009−189884号の特許出願において次のようなナビゲーション装置を提案している。
【0007】
このナビゲーション装置では、車両が停車中に加速度センサから出力される出力信号に基づき重力加速度を算出し、車両が加速直進中に加速度センサから出力される出力信号に基づき車体加速度を算出し、算出された重力加速度および車体加速度に基づき車両に対するナビゲーション装置の取り付け角度を算出する。これにより、加速度センサの取り付け角度に関係なく、正確にナビゲーション装置の取り付け角度を算出することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9−101141号公報(段落0019〜段落0026、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そして、上記特願2009−189884号では、車両のY軸(水平方向軸)とナビゲーション装置のY軸(水平方向軸)とのなす角度が算出できるので、この算出された角度から求められる補正定数を用いてジャイロセンサのピッチ軸出力を補正することができる。
【0010】
しかし、車両がカーブ路面を走行する際、車両のヨー軸(鉛直方向軸)回りに角速度が発生し、ナビゲーション装置の取り付け状態により車両のZ軸(鉛直方向軸)とナビゲーション装置のY軸(水平方向軸)とが直交していない場合は、車両のヨー軸回りの角速度による不要成分がジャイロセンサのピッチ軸出力に含まれてしまう。上記特願2009−189884号では、この不要成分については考慮されていなかったので、上記補正を行っても精度が悪化する場合があった。
【0011】
本発明は、移動体への取り付け状態によらず、移動体の移動により移動体の或る軸回りに角速度が発生した場合に、その軸とは異なる軸回りの角速度を精度良く得ることが可能となる移動体搭載用機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために本発明は、
移動体に搭載される移動体搭載用機器であって、
3軸方向の加速度を検出する加速度検出部と、
第1の軸および第2の軸回りの角速度を検出する角速度検出部と、
前記移動体が停止状態にある際に前記加速度検出部から出力される出力信号と、前記移動体が加速または減速で直進移動している状態にある際に前記加速度検出部から出力される出力信号とに基づき、前記第1の軸と前記移動体の前記第2の軸に対応する軸とのなす角度を算出する角度算出部と、
前記角速度検出部が検出する前記第2の軸回りの角速度と、前記角度算出部が算出した角度とに基づき、前記角速度検出部が検出する前記第1の軸回りの角速度に含まれる不要成分を算出する不要成分算出部と、
前記角速度検出部が検出する前記第1の軸回りの角速度から、前記不要成分算出部が算出した不要成分を減算する不要成分除去部と、
を備えた構成とする。
【0013】
このような構成によれば、移動体搭載用機器の移動体への取り付け状態によらず、移動体の移動により移動体の第2軸に対応する軸回りに角速度が発生した場合に、角速度検出部が検出する第1の軸回りの角速度に含まれる不要成分を算出し、角速度検出部が検出する第1の軸回りの角速度から算出された不要成分を除去するので、移動体の第1の軸に対応する軸回りの角速度を精度良く得ることが可能となる。
【0014】
また、上記構成において、例えば、前記第1の軸は、水平軸(ピッチ軸)であり、前記第2の軸は、鉛直軸(ヨー軸)であるようにすればよい。
【0015】
これにより、移動体搭載用機器の移動体への取り付け状態によらず、移動体の移動により移動体の鉛直軸回りに角速度が発生した場合に、移動体の水平軸回りの角速度を精度良く得ることが可能となる。
【0016】
また、上記いずれかの構成において、前記移動体が停止状態にある際に前記加速度検出部から出力される出力信号と、前記移動体が加速または減速で直進移動している状態にある際に前記加速度検出部から出力される出力信号とに基づき、前記第2の軸と前記移動体の前記第2の軸に対応する軸とのなす角度を算出する第2の角度算出部を備え、
前記不要成分算出部は、前記第2の角度算出部が算出した角度に基づき、前記角速度検出部が検出する前記第2の軸回りの角速度を補正し、補正結果と前記角度算出部が算出した角度とに基づき不要成分を算出する構成としてもよい。
【0017】
このような構成によれば、補正により、移動体の第2軸に対応する軸回りの角速度を精度良く得ることができ、結果、算出される不要成分の精度を向上させることが可能となる。
【0018】
また、上記いずれかの構成の移動体搭載用機器は、例えば、携帯型の車載用ナビゲーション装置とすると好適である。携帯型の車載用ナビゲーション装置は、ユーザ自身が車両に取り付けるので取り付けが不正確になりやすい。しかし、本発明であれば、車両への取り付け状態によらず、車両の移動により車両の第2軸に対応する軸回りに角速度が発生した場合に、車両の第1の軸に対応する軸回りの角速度を精度良く得ることが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の移動体搭載用機器によれば、移動体への取り付け状態によらず、移動体の移動により移動体の或る軸回りに角速度が発生した場合に、その軸とは異なる軸回りの角速度を精度良く得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態に係るナビゲーション装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態に係る重力加速度算出処理に関するフローチャートである。
【図3】本発明の実施形態に係る車体加速度算出処理に関するフローチャートである。
【図4】本発明の実施形態に係る取り付け角度算出処理に関するフローチャートである。
【図5】ナビゲーション装置の車体への取り付け状態の一例を示す図である。
【図6】車体のY軸(水平軸)とZ軸(鉛直軸)を説明する図である。
【図7】加速度センサのXa軸と車体の3軸との関係を説明する図である。
【図8】本発明の実施形態に係る車体のヨー軸およびピッチ軸回りの角速度を算出する処理に関するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面を用いて詳細に説明する。但し、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための移動体搭載用機器として車両に搭載されるナビゲーション装置を例示するものであって、本発明をこのナビゲーション装置に特定することを意図するものではなく、特許請求の範囲に示した技術思想に含まれるその他の実施形態の移動体搭載用機器にも等しく適用し得るものである。なお、ナビゲーション装置としては、携帯型であるPNDが好適である。
【0022】
まず、図1を参照して、本発明の実施形態に係るナビゲーション装置の構成について説明する。図1は、本発明の実施形態に係るナビゲーション装置の構成を示すブロック図である。
【0023】
ナビゲーション装置10は、制御部100、通信部110、GPS測位部120、自立航法測位部130、経路探索部140、経路案内部150、表示部160、入力部170、算出部180、記憶部190を備えて構成される。
【0024】
制御部100は、CPU100a、RAM100b、ROM100cからなるプロセッサで構成され、RAM100bまたはROM100cに記憶されているプログラムをCPU100aにおいて実行することによってナビゲーション装置10の各部の動作を制御統括する。また、制御部100は、後述する加速度センサ131とジャイロセンサ132からの信号に基づき、ナビゲーション装置10を搭載した車体が停車中であること、あるいは加速直進走行中であることを判断する。
【0025】
通信部110は、制御部100の制御により、このナビゲーション装置10と通信可能な情報提供サーバ(図示せず)との間で地図データといった各種情報の送受信を行う。
【0026】
GPS測位部120は、地球上空を周回している複数のGPS衛星からの時刻情報を含む電波を受信し、それをもとにナビゲーション装置10を搭載した車体の現在位置情報を算出するものである。
【0027】
自立航法測位部130は、加速度センサ131とジャイロセンサ132を備えて構成される。
【0028】
加速度センサ131が車体に対して正しい姿勢で設置された場合、加速度センサ131によって、車体の進行方向(X軸方向とする)への加速度と、車体の水平方向(Y軸方向とする)への加速度と、車体の鉛直方向(Z軸方向とする)への加速度とが検出される。
【0029】
ジャイロセンサ132が車体に対して正しい姿勢で設置されている場合、ジャイロセンサ132によって、Y軸(ピッチ軸)回りに車体が回転する際の角速度と、Z軸(ヨー軸)回りに車体が回転する際の角速度が検出される。
【0030】
また、自立航法測位部130は、車体に対して正しい姿勢でナビゲーション装置10が設置されていない場合に生じる車体と加速度センサ131の各軸のずれを補正したり、ジャイロセンサ132からの出力を補正したりするための補正部133を備えている。補正部133による補正処理については後で詳細に説明する。
【0031】
経路探索部140は、入力部170の操作により出発地点や目的地点が指定されると、記憶部190の地図記憶部192に記憶されている道路データを参照し、出発地点から目的地点に至るまでの案内経路を探索し、案内経路データを作成するものである。経路探索部140によって探索された案内経路は、制御部100によって、表示部160に現在位置周辺の地図画像と共に表示され、目的地点までの案内に用いられる。
【0032】
経路案内部150は、経路探索部140によって探索された案内経路データと、GPS測位部120によって検出された現在位置とを比較し、現在位置において必要とされるガイダンスを図示しないスピーカなどから音声出力する。
【0033】
表示部160は、LCDなどのディスプレイパネルから構成される表示画面を備えた表示ユニットであり、地図画像や案内経路、現在位置などを表示する。
【0034】
入力部170は、操作ボタンやタッチパネルなどにより構成され、ナビゲーション装置10の各種機能を操作したり、所要の数値や文字を入力したりするものである。
【0035】
算出部180は、重力加速度算出部181、車体加速度算出部182、取り付け角度算出部183を備えて構成される。各部による算出処理については後で詳細に説明する。
【0036】
記憶部190は、取り付け角度記憶部191、地図記憶部192を備えて構成される。取り付け角度記憶部191は、取り付け角度算出部183によって算出された車体の3軸と加速度センサの3軸のそれぞれのなす角度を記憶する。
【0037】
地図記憶部192には、各道路の交差点や分岐点などの結節点をノードとし、それぞれのノード間を結ぶ経路をリンクとした道路ノードデータと道路リンクデータを含む道路データが記憶されている。道路ノードデータには、道路ノードの番号、位置座標、接続リンク本数、交差点名称などが含まれる。また、道路リンクデータには起点および終点となる道路ノードの番号、道路種別、リンク長(リンクコスト)、所要時間、車線数、車道幅などが含まれる。道路リンクデータにはさらに、リンク属性として橋、トンネル、踏切、料金所などのデータが付与される。道路種別は、高速道路や有料道路の別および国道や都道府県道などの別を含む情報である。
【0038】
また、地図記憶部192には、道路データの他、地図画像を見やすく表示するためにベクター形式で記憶された背景画像データを含んでいてもよい。道路データと背景画像データを含む地図画像データは、制御部100により、ナビゲーション装置10を使用する際に、ナビゲーション装置10の現在位置を含む所定範囲が地図記憶部192から抽出され、現在位置を示す現在位置マークや案内経路の画像と重ね合わされて表示部160に表示される。
【0039】
次に、本発明に係るナビゲーション装置10における重力加速度および車体加速度の算出処理に関して図2および図3に示すフローチャートを用いて説明する。なお、車体加速度とは、重力加速度込みでの車両の加速度である。
【0040】
まず、ステップS21で、制御部100は、加速度センサ131とジャイロセンサ132からの信号に基づき、ナビゲーション装置10を搭載した車両が停車中であるか否かの判定を行い、停車中でない場合には(ステップS21のN)、停車するまでステップS21の処理が繰り返される。
【0041】
車両が停車中であると判定されると(ステップS21のY)、ステップS22に進み、制御部100の制御により、重力加速度算出部181が、加速度センサ131から0.1s毎に検出される加速度(即ち、重力加速度)をバッファ181aにバッファリングする。
【0042】
そして、ステップS23で、重力加速度算出部181は、バッファリングされた加速度のサンプル数が所定の10個になったか否かを判定し、所定数になっていない場合は(ステップS23のN)、ステップS22に戻り、一方、所定数になっている場合は(ステップS23のY)、ステップS24に進む。なお、サンプル数の所定数は特に10個に限定されることはない。
【0043】
ステップS24で、重力加速度算出部181は、バッファ181aにバッファリングされた10個の加速度を相加平均することにより、重力加速度平均値を算出し、算出された重力加速度平均値を重力加速度算出部181において算出された重力加速度として取り付け角度算出部183に出力し、ステップS25に進む。ステップS25で、重力加速度算出部181は、バッファ181aをクリアし、処理はステップS31(図3)に進む。
【0044】
ステップS31で、制御部100は、加速度センサ131とジャイロセンサ132からの信号に基づき、ナビゲーション装置10を搭載した車両が加速直進走行中であるか否かの判定を行い、車両が加速直進走行中であると判定された場合は(ステップS31のY)、ステップS32に進む。
【0045】
ステップS32で、制御部100の制御により、車体加速度算出部182が、加速度センサ131から0.1s毎に検出される加速度をバッファ182aにバッファリングする。
【0046】
そして、ステップS33で、車体加速度算出部182は、バッファリングされた加速度のサンプル数が所定の10個になったか否かを判定し、所定数になっていない場合は(ステップS33のN)、ステップS31に戻り、一方、所定数になっている場合は(ステップS33のY)、ステップS34に進む。
【0047】
ステップS34で、車体加速度算出部182は、バッファ182aにバッファリングされた10個の加速度を相加平均することにより、車体加速度平均値を算出し、算出された車体加速度平均値を車体加速度算出部182において算出された車体加速度として取り付け角度算出部183に出力し、処理は完了となる(エンド)。
【0048】
また、ステップS31で、車両は加速直進走行中ではないと判定されると(ステップS31のN)、ステップS35に進み、車体加速度算出部182は、バッファリング中であるか否かを判定する。そして、バッファリング中であれば(ステップS35のY)、ステップS36に進み、車体角速度算出部182は、バッファ182aをクリアし、ステップS21(図2)に戻る。一方、バッファリング中でなければ(ステップS35のN)、ステップS21(図2)に戻る。
【0049】
なお、加速直進走行中ではなく、減速直進走行中の加速度をバッファリングして平均値を算出してもよい。
【0050】
次に、車体に対するナビゲーション装置10の取り付け角度算出処理について説明する。
【0051】
取り付け角度算出部183は、重力加速度算出部181から出力される重力加速度AG*(AGX,AGY,AGZ)と車体加速度算出部182から出力される車体加速度AGD* (AGDX ,AGDY ,AGDZ )とに基づいて、車体に対するナビゲーション装置10の取り付け角度を算出する。
【0052】
即ち、図5で示すように、車体20の互いに直交する3軸をX軸、Y軸、Z軸(ここで、X軸は車体の進行方向と同じ軸、Y軸は車体の水平軸、Z軸は車体の鉛直軸)とし、加速度センサ131が、ナビゲーション装置10の互いに直交するXa軸、Ya軸、Za軸に配置されているとすると、取り付け角度算出部183は、車体20の3軸(X軸、Y軸、Z軸)と加速度センサ131の3軸(Xa軸、Ya軸、Za軸)との間の各軸のズレ(角度θ* )を算出する。
【0053】
ここで、図5で示すように、
X軸とXa軸のなす角をθxax、
X軸とYa軸のなす角をθyax、
X軸とZa軸のなす角をθzax 、
とする。同様に、
Y軸とXa軸のなす角をθxay、
Y軸とYa軸のなす角をθyay、
Y軸とZa軸のなす角をθzay、
とし、
Z軸とXa軸のなす角をθxaz、
Z軸とYa軸のなす角をθyaz、
Z軸とZa軸のなす角をθzaz、
とする。そして以下に説明する手順によって各θ*を算出する。
【0054】
まず、車体20の3軸のうちのX軸は、図5で示すように、車体の進行方向と同じ軸であるため、このX軸の方向ベクトルXは、車両が加速しているときの動的加速度AD*と平行となる。このため、X軸の方向ベクトルXは、車両が停止しているときに加速度センサ131が検出している重力加速度AG*と、車両が加速直進走行しているときに加速度センサ131が検出している車体加速度AGD* とに基づいて、下式(3)のように表わされる。
【0055】
X=AD*=AGD* −AG* ・・・(3)
ここで、
G*=(AGX,AGY,AGZ
GD* =(AGDX ,AGDY ,AGDZ
であるので、X=(Xx,Xy,Xz)とすれば、
Xx=AGDX −AGX
Xy=AGDY −AGY
Xz=AGDZ −AGZ
となる。
【0056】
次に、車体20のY軸は、図6(a)で示すように、車体加速度AGD* と重力加速度AG*の2つのベクトルを含む平面に垂直なベクトルとなるため、この法線ベクトルYは、ベクトルの外積として下式(4)のように表わされる。
【0057】
Y=AG*×AGD* ・・・(4)
ここで、Y=(Yx,Yy,Yz)とすれば、
Yx=AGY・AGDZ −AGDY ・AGZ
Yy=AGZ・AGDX −AGDZ ・AGX
Yz=AGX・AGDY −AGDX ・AGY
となる。
【0058】
さらに、車体20のZ軸は、図6(b)で示すように、上記で求めた車体のX軸とY軸の2つのベクトルを含む平面に垂直なベクトルとなるため、この法線ベクトルZは、ベクトルの外積として下式(5)のように表わされる。
【0059】
Z=X×Y ・・・(5)
ここで、Z=(Zx,Zy,Zz)とすれば、
Zx=Xy・Yz−Yy・Xz
Zy=Xz・Yx−Yz・Xx
Zz=Xx・Yy−Yx・Xy
となる。
【0060】
このように、車体20の3軸(X軸、Y軸、Z軸)が算出されると、加速度センサ131の3軸(Xa軸、Ya軸、Za軸)とのなす角を求める。ここで、A=(Ax,Ay,Az)、B=(Bx,By,Bz)の2つのベクトルのなす角は、余弦定理を用いて、
A・B=|A||B|cosθ
より、
θ=cos-1{A・B/(|A||B|)}
として求めることができる。ただし、
A・B=AxBx+AyBy+AzBz
|A|=√(Ax2 +Ay2 +Az2
|B|=√(Bx2 +By2 +Bz2
が成立する。
【0061】
したがって、例えば、車体20のX軸と加速度センサ131のXa軸とのなす角θxaxは、下式(6)のように表わされる。
【0062】
θxax=cos-1{X・Xa/(|X||Xa|)} ・・・(6)
ここで、
X=(Xx,Xy,Xz)、 Xa=(a,0,0) ただし、aは任意の定数
となるので、式(6)は、
θxax=cos-1{Xx/√(Xx2 +Xy2 +Xz2 )} ・・・(7)
となる。ただし、
Xx=AGDX −AGX
Xy=AGDY −AGY
Xz=AGDZ −AGZ
したがって、車体20のY軸およびZ軸と加速度センサ131のXa軸とのなす角θx
ay、θxazは、それぞれ、
θxay=cos-1{Yx/√(Yx2 +Yy2 +Yz2 )} ・・・(8)
θxaz=cos-1{Zx/√(Zx2 +Zy2 +Zz2 )} ・・・(9)
となる。
【0063】
また、車体20のY軸と加速度センサ131のYa軸とのなす角θyayは、
Y=(Yx,Yy,Yz)、Ya=(0,b,0) ただし、bは任意の定数
となるので、下式(10)のように表わされる。
【0064】
θyay=cos-1{Yy/√(Yx2 +Yy2 +Yz2 )} ・・・(10)
同様に、車体20のZ軸およびX軸と加速度センサ131のYa軸とのなす角θyaz、θyaxは、それぞれ、
θyaz=cos-1{Yz/√(Yx2 +Yy2 +Yz2 )} ・・・(11)
θyax=cos-1{Yx/√(Yx2 +Yy2 +Yz2 )} ・・・(12)
となる。ただし、
Yx=AGY・AGDZ −AGDY ・AGZ
Yy=AGZ・AGDX −AGDZ ・AGX
Yz=AGX・AGDY −AGDX ・AGY
さらに、車体20のZ軸と加速度センサ131のZa軸とのなす角θzazは、
Z=(Zx,Zy,Zz)、Ya=(0,0,c) ただし、cは任意の定数
となるので、下式(13)のように表わされる。
【0065】
θzaz=cos-1{Zz/√(Zx2 +Zy2 +Zz2 )} ・・・(13)
同様に、車体20のX軸およびY軸と加速度センサ131のZa軸とのなす角θzax、θzayは、それぞれ、
θzax=cos-1{Zx/√(Zx2 +Zy2 +Zz2 )} ・・・(14)
θzay=cos-1{Zy/√(Zx2 +Zy2 +Zz2 )} ・・・(15)
となる。ただし、
Zx=Xy・Yz−Yy・Xz
=(AGDY −AGY)・(AGX・AGDY −AGDX ・AGY
−(AGZ・AGDX −AGDZ ・AGX)・(AGDZ −AGZ
Zy=Xz・Yx−Yz・Xx
=(AGDZ −AGZ)・(AGY・AGDZ −AGDY ・AGZ
−(AGX・AGDY −AGDX ・AGY)・(AGDX −AGX
Zz=Xx・Yy−Yx・Xy
=(AGDX −AGX)・(AGZ・AGDX −AGDZ ・AGX
−(AGY・AGDZ −AGDY ・AGZ)・(AGDY −AGY
このように、車体20の3軸(X軸、Y軸、Z軸)と加速度センサ131の3軸(Xa軸、Ya軸、Za軸)との間の各軸のなす角(ズレ角度)θ* は、取り付け角度算出部183によって、重力加速度算出部181から出力される重力加速度AG*=(AGX,AGY,AGZ)と、車体加速度算出部182から出力される車体加速度AGD* =(AGDX ,AGDY ,AGDZ )とから算出される。
【0066】
図4に、取り付け角度算出部183によるナビゲーション装置10の車体に対する取り付け角度算出処理に関するフローチャートを示す。
【0067】
まず、ステップS41で、取り付け角度算出部183は、重力加速度算出部181から算出された重力加速度が入力され、かつ、車体加速度算出部182から算出された車体加速度が入力されたか否かを判定し、両者が入力されるまでステップS41を繰り返す。
【0068】
そして、重力加速度および車体加速度が入力されると(ステップS41のY)、ステップS42で、取り付け角度算出部183は、入力された重力加速度AG*および車体加速度AGD*に基づき、車両の進行方向と平行な車体のX軸となるベクトルXを算出する。
【0069】
それから、ステップS43に進み、取り付け角度算出部183は、入力された重力加速度AG*および車体加速度AGD*に基づき、この2つのベクトルを含む平面に垂直な車体のY軸となる法線ベクトルYを算出する。
【0070】
さらに、ステップS44で、取り付け角度算出部183は、算出されたベクトルXとベクトルYに基づき、この2つのベクトルを含む平面に垂直な車体のZ軸となる法線ベクトルZを算出する。
【0071】
そして、ステップS45で、取り付け角度算出部183は、車体の3軸(X軸、Y軸、Z軸)と加速度センサ131の3軸(Xa軸、Ya軸、Za軸)との間の各軸のなす角(ズレ角度)θ*を算出し、算出されたズレ角度θ*を取り付け角度記憶部191に記憶させる。取り付け角度記憶部191に記憶されたズレ角度θ*は、補正部133によって加速度センサ131の3軸からの出力を車体の3軸の出力へと変換を行う際の補正に用いられる。
【0072】
ここで、加速度センサ131の3軸の出力を車体20の3軸に変換する補正について説明する。例えば、図7で示すように、加速度センサ131のXa軸にのみXaなる加速度があると仮定すると、車体の3軸では、
X=Xa・cosθxax、Y=Xa・cosθxay、Z=Xa・cosθxaz
と表わすことができる。
【0073】
同様に、Ya軸にのみYa、Za軸にのみZaなる加速度があるときは、それぞれ、
X=Ya・cosθyax、Y=Ya・cosθyay、Z=Ya・cosθyaz
X=Za・cosθzax、Y=Za・cosθzay、Z=Za・cosθzaz
したがって、取り付け角度記憶部191に記憶された車体20の3軸と加速度センサ131の3軸のそれぞれのなす角θ* に基づいて、A=(Xa,Ya,Za)なる加速度を加速度センサ131により検出したとすると、車体の3軸方向では加速度(X,Y,Z)は
X=Xa・cosθxax+Ya・cosθyax+Za・cosθzax
Y=Xa・cosθxay+Ya・cosθyay+Za・cosθzay
Z=Xa・cosθxaz+Ya・cosθyaz+Za・cosθzaz
と表わされる。
【0074】
これは下式(16)のように整理することができ、加速度センサ131の3軸から車体の3軸への変換を行うことができるため、取り付け角度のずれを補正することができる。
【数1】

【0075】
また、補正部133は、車体に対して正しい姿勢でナビゲーション装置10が設置されていない場合に生じるジャイロセンサ132からの出力誤差を補正する。これについて、図8に示すフローチャートも用いて説明する。
【0076】
ここで、車体のZ軸とジャイロセンサ132の鉛直軸(ヨー軸)とのなす角度をθzAveとすると、ジャイロセンサ132のヨー軸出力の補正定数Jyは、
Jy=1/cos|θzAve|
と表わされる。ここで、θzAveは、即ち、θzazであると言えるので、補正部133は、取り付け角度算出部191に記憶されたθzazに基づき補正定数Jyを算出する(ステップS81)。そして、補正部133は、ジャイロセンサ132のヨー軸出力に補正定数Jyを乗じて、車体のヨー軸回りの角速度ωyを算出する(ステップS82)。
【0077】
また、車体のZ軸とジャイロセンサ132の水平軸(ピッチ軸)とのなす角度をθzpとすると、車体のヨー軸回りの角速度ωyにより、ωy×cosθzpで表される不要成分がジャイロセンサ132のピッチ軸出力に含まれてしまう。θzpは、即ち、θyazと言えるので、補正部133は、上記算出されたωyと、取り付け角度算出部191に記憶されたθyazに基づき、不要成分を算出する(ステップS83)。そして、補正部133は、ジャイロセンサ132のピッチ軸出力から算出された不要成分を減算して、不要成分を取り除く(ステップS84)。
【0078】
ここで、車体のY軸とジャイロセンサ132の水平軸(ピッチ軸)とのなす角度をθyAveとすると、ジャイロセンサ132のピッチ軸出力の補正定数Jpは、
Jp=1/cos|θyAve|
と表わされる。ここで、θyAveは、即ち、θyayであると言えるので、補正部133は、取り付け角度算出部191に記憶されたθyayに基づき補正定数Jpを算出する(ステップS85)。そして、補正部133は、上記不要成分の減算結果に算出された補正定数Jpを乗じて、車体のピッチ軸回りの角速度ωpを算出する(ステップS86)。
【0079】
このように算出される車体のピッチ軸回りの角速度ωpは、車体のZ軸とジャイロセンサ132の水平軸(ピッチ軸)とのなす角θzpが90度とならない場合に、車両がカーブ路面を走行するなどして車体のヨー軸回りの角速度が発生することにより現れる不要成分を考慮して算出されるので、高精度なものとなる。
【0080】
これにより、例えば、制御部100が、補正部133が出力する車体のピッチ軸回りの角速度ωpに基づき、車両が上方の高速道路を走行しているか下方の一般道路を走行しているか判定する場合に、判定精度を向上させることができる。
【0081】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の趣旨の範囲内であれば、実施形態は様々に変更が可能である。
【符号の説明】
【0082】
10 ナビゲーション装置
100 制御部
110 通信部
120 GPS測位部
130 自立航法測位部
131 加速度センサ
132 ジャイロセンサ
133 補正部
140 経路探索部
150 経路案内部
160 表示部
170 入力部
180 算出部
181 重力加速度算出部
182 車体加速度算出部
183 取り付け角度算出部
181a、182a バッファ
190 記憶部
191 取り付け角度記憶部
192 地図記憶部
20 車体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に搭載される移動体搭載用機器であって、
3軸方向の加速度を検出する加速度検出部と、
第1の軸および第2の軸回りの角速度を検出する角速度検出部と、
前記移動体が停止状態にある際に前記加速度検出部から出力される出力信号と、前記移動体が加速または減速で直進移動している状態にある際に前記加速度検出部から出力される出力信号とに基づき、前記第1の軸と前記移動体の前記第2の軸に対応する軸とのなす角度を算出する角度算出部と、
前記角速度検出部が検出する前記第2の軸回りの角速度と、前記角度算出部が算出した角度とに基づき、前記角速度検出部が検出する前記第1の軸回りの角速度に含まれる不要成分を算出する不要成分算出部と、
前記角速度検出部が検出する前記第1の軸回りの角速度から、前記不要成分算出部が算出した不要成分を減算する不要成分除去部と、
を備えたことを特徴とする移動体搭載用機器。
【請求項2】
前記第1の軸は、水平軸(ピッチ軸)であり、前記第2の軸は、鉛直軸(ヨー軸)であることを特徴とする請求項1に記載の移動体搭載用機器。
【請求項3】
前記移動体が停止状態にある際に前記加速度検出部から出力される出力信号と、前記移動体が加速または減速で直進移動している状態にある際に前記加速度検出部から出力される出力信号とに基づき、前記第2の軸と前記移動体の前記第2の軸に対応する軸とのなす角度を算出する第2の角度算出部を備え、
前記不要成分算出部は、前記第2の角度算出部が算出した角度に基づき、前記角速度検出部が検出する前記第2の軸回りの角速度を補正し、補正結果と前記角度算出部が算出した角度とに基づき不要成分を算出する、ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の移動体搭載用機器。
【請求項4】
前記移動体搭載用機器は、携帯型の車載用ナビゲーション装置であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の移動体搭載用機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−112591(P2011−112591A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−271163(P2009−271163)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(000214892)三洋電機コンシューマエレクトロニクス株式会社 (1,582)
【Fターム(参考)】