説明

移動体検出装置

【課題】異常を検出する検出回路を別途設けることなく異常検出機能をもたせることのできる移動体検出装置を提供する。
【解決手段】周波数faの送波信号を発振する第1の発振回路1aと、周波数fbの基準信号を発振する第2の発振回路1bと、超音波を送波する送波器3と、反射波を受波して受波信号を出力する受波器4と、送波信号又は基準信号の何れか一方の信号と受波信号とを混合することでドップラー信号を得る位相検波回路5と、位相検波回路5に入力される送波信号及び基準信号を切り換える周波数選択回路2と、ドップラー信号を信号処理して移動物体Oを検知して検出信号を出力する検知回路8と、移動体検出モード及び異常検出モードを有し、移動体検出モードでは送波信号を位相検波回路5に入力するとともに異常検出モードでは基準信号を位相検波回路5に入力するように周波数選択回路2を制御する制御回路9とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波や電波などの連続エネルギ波を監視空間に放射し、監視空間内の物体の移動により生じる反射波の周波数偏移を検出することにより、監視空間内において移動する物体の存在を検出する移動体検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の車両盗難並びに車上盗難が増加しているため、駐車中の車両に不審者が侵入した場合に警報音を鳴動する車載用盗難警報装置が普及してきており、かかる車載用盗難警報装置には監視空間(車内)における移動物体(人)の存否を検出するために移動体検出装置が搭載されている。この種の移動体検出装置は、所定周波数の連続エネルギ波(例えば、超音波)を監視空間内に放射しておき、監視空間内に存在する物体の移動に伴ってドップラー効果として生じる反射波の周波数偏移を検出するように構成されている。
【0003】
以下、このような移動体検出装置の従来例について図4を用いて説明する。発振回路10が発振する所定周波数の送波信号で送波器11を駆動することにより、発振回路10の発振周波数と同周波数の超音波が監視空間に送波され、監視空間内に存在する物体Oに超音波が反射して生じる反射波を受波器12で受波する。受波器12では受波した反射波を受波信号Einに変換し、この受波信号Einを第1及び第2の位相検波回路13a,13bにそれぞれ入力して発振回路10の発振周波数と同周波数の基準信号Eo,Eo’と混合する。ここで、一方の基準信号Eoは移相回路17の出力であって、両基準信号Eo,Eo’の位相が互いに異なるように設定される。したがって、第1及び第2の位相検波回路13a,13bの出力にビート信号として得られる一対のドップラー信号E,E’も位相が互いに異なったものとなる。ドップラー信号E,E’はそれぞれローパスフィルタ14a,14bで高調波成分が除去された後にコンパレータ15a,15bにおいて信号の正負に対応した2値信号(以下、「軸符号信号」と呼ぶ。)X,Yに変換される。
【0004】
軸符号信号X,Yはそれぞれ2値(ハイレベルとローレベル)を有していることから、両者の組み合わせにより4つの状態を表すことができるのであり、これら4状態はドップラー信号E,E’を基本軸とするベクトル平面の4つの象限のうちで、受波信号Einに対応するベクトルがどの象限に存在しているかを示すことになる。したがって、ドップラー信号E,E’の極性の組み合わせにより4つの状態(正正、正負、負負、負正)を考えれば、ベクトル平面上の各象限(第1象限乃至第4象限)と上記各状態とが一対一に対応することになる。このベクトルは、受波信号Einの基準信号Eo,Eo’に対する周波数偏移に応じてベクトル平面内の象限を移動し、周波数が低くなるか高くなるか、即ち、物体Oが遠ざかるか近付くかに応じて、象限を右回りもしくは左回りに移動するのである。
【0005】
そこで、この従来例では、象限信号発生回路16a、メモリ16b、転移方向検出回路16c、演算回路16d、閾値回路16eで検知回路16を構成し、以下のような処理を行っている。但し、検知回路16をマイコンで構成し、マイコンにおいてプログラムを実行することで上記各回路の機能を実現することも可能である。
【0006】
象限信号発生回路16aでは、上述した信号処理により、上記ベクトル平面上において受波信号Einが存在する象限を検出して対応する象限信号Qを出力し、同時に受波信号Einが各象限の境界線を越えて転移するときに転移信号Zを発生する。象限信号Qは4状態を表せることができればよいことから、2ビット以上あればよい。また、象限信号Qは、転移信号Zの発生毎にメモリ16bに一時的に記憶されると同時に、転移方向検出回路16cにも入力される。ここで、メモリ16bに記憶される象限信号Qは転移信号Zの発生毎に更新される。
【0007】
転移方向検出回路16cでは、受波信号Einに対応するベクトルが隣接する象限(第1乃至第4象限)に転移して転移信号Zが発生するのに伴って象限信号発生回路16aから入力された現在の象限信号Q(即ち、転移後の象限信号Q)と、前回の転移信号Zの発生に伴ってメモリ16bに記憶されていた前回の象限信号Q(即ち、転移前の象限信号Q)とが比較され、象限が右回りに転移したか左回りに転移したかが判定される。ここで、転移方向検出回路16cの出力としては、受波信号Einに対応するベクトルが原点を中心として反時計回りに象限の境界線(基本軸)を横切る場合に加算、時計回りに象限の境界線を横切る場合に減算を指示する方向信号が出力されるように設定しておく。こうして、転移方向検出回路16cの出力である方向信号が得られるとメモリ16bの内容は更新される。転移方向検出回路16cの出力である方向信号と象限検出回路16aの出力である転移信号Zとは演算回路16dに入力され、演算回路16dでは、転移信号Zが発生するたびに転移方向検出回路16cの出力信号を読み込み、演算回路16dに記憶されている値に対して方向信号が反時計回りなら1を加え、時計回りなら1を引くようにする。したがって、受波信号Einに対応するベクトルが第1象限から第2象限、第3象限を順に通過して第4象限に至る軌跡を描いて移動した場合、演算回路16dの初期値が0であれば、最終値は3になる。こうして、演算回路16dの出力値の絶対値が閾値回路16eに予め設定されている閾値を越えると、閾値回路16eは検出信号を送出する。検出信号は報知器駆動回路18に入力され、移動物体Oの存在が適宜報知器により報知される。
【0008】
上記構成によれば、超音波を送出して反射波の周波数偏移を検出するのであるから、送波信号の周波数をfo、物体の移動速度をv、超音波の伝播速度をcとすれば、ドップラー信号E,E’の周波数Δfは、|Δf|≒2vfo/cとなり(一般に、v≪c)、ドップラー信号E,E’の周波数は物体の移動速度vに比例することになる。また、物体が単位距離だけ移動したときに発生するドップラー信号E,E’の波数Nは、N=2fo/cとなるから、超音波の伝播速度cと送波周波数foとが一定であれば、物体の移動速度vとは無関係に波数Nは一定となる。したがって、受波信号Einに対応するベクトルのベクトル平面での象限転移の回数も一定となる。つまり、上述のように4象限で表せば、象限転移の回数は4×N回となり、物体の移動距離に比例することになる。また、象限の転移の向きは物体の移動する向きを表すから、象限の転移が生じたときに転移の向きに応じて転移回数を加減算すれば、物体の移動距離と向きとを知ることができる。換言すれば、監視空間内での物体Oの移動距離が閾値回路16eの判定基準となり、物体Oが監視空間内で移動する速度には関係なく、物体の移動を検出することで、監視空間内に物体が存在していると判断する。
【0009】
ところで、上記従来例のような移動体検出装置に用いられる送波器3及び受波器4から成る超音波センサにおいて、超音波の送波信号や受波信号の感度低下を検知して異常動作状態を知らせる手段を備えたものが例えば特許文献1に開示されている。このように、装置が正常に動作しているか否かを検出する異常検出機能を移動体検出装置に設けることは一般的に行われている。
【特許文献1】特開平5−232241号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記従来例では、例えば信号線の断線を検知する信号断線検出機能などの想定される異常に応じた異常検出機能を実現するためには、各異常検出用の検出回路を別途設ける必要があるという問題があった。
【0011】
本発明は、上記の点に鑑みて為されたもので、異常を検出する検出回路を別途設けることなく異常検出機能をもたせることのできる移動体検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1の発明は、上記目的を達成するために、所定周波数の送波信号を発振する第1の発振手段と、送波信号と異なる所定周波数の基準信号を発振する第2の発振手段と、第1の発振手段から出力する送波信号により振幅が周期的に変化する連続エネルギ波を監視空間に送波する送波手段と、連続エネルギ波が監視空間に存在する物体に反射して生じる反射波を受波して受波信号を出力する受波手段と、送波信号又は基準信号の何れか一方の信号と受波信号とを混合することで両信号の位相差に応じたドップラー信号を得る位相検波手段と、ドップラー信号を信号処理して監視空間における移動物体を検知して検出信号を出力する検知手段と、位相検波手段に入力される送波信号及び基準信号を切り換える信号切換手段と、移動体を検出する移動体検出モード及び装置が正常に動作しているか否かを検出する異常検出モードを有し、移動体検出モードでは送波信号を位相検波手段に入力するとともに異常検出モードでは基準信号を位相検波手段に入力するように信号切換手段を制御する制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0013】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、送波信号の周波数と基準信号の周波数との差を想定される移動物体の速度に応じた値に設定したことを特徴とする。
【0014】
請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において、第1の発振手段及び第2の発振手段はマイコンから構成され、マイコンに組み込まれたタイマ機能を用いて送波信号及び基準信号を発振させることを特徴とする。
【0015】
請求項4の発明は、請求項1乃至3の何れか1項の発明において、制御手段は、少なくとも移動体検出モードで制御を行う前に異常検出モードで制御を行うことを特徴とする。
【0016】
請求項5の発明は、請求項1乃至4の何れか1項の発明において、送波手段は複数であって、第1の発振手段と各送波手段とをそれぞれ接続する複数の経路を切り換える経路切換手段を備え、制御手段は、異常検出モードにおいて前記経路を順に切り換えるように経路切換手段を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の発明によれば、異常検出モードにおいて基準信号を位相検波手段に入力するように制御することで、監視空間に物体が存在しない場合、若しくは物体が静止している場合においても擬似的にドップラー信号を得ることができ、装置が正常に動作しているか否かを検出することができる。したがって、異常を検出する検出回路を設けることなく異常検出機能をもたせることができる。
【0018】
請求項2の発明によれば、送波信号の周波数と基準信号の周波数との差を通常使用時における送波信号の周波数と受波信号の周波数との差に近づけることができるので、装置を構成する回路を大幅に変更することなく異常検出機能をもたせることができる。
【0019】
請求項3の発明によれば、送波手段ごとに発振器を用意する等してハードウェアを大幅に変更する必要が無く、マイコンにおけるソフトウェアの変更のみで異常検出機能をもたせることができる。
【0020】
請求項4の発明によれば、移動体の検出動作を行う前に異常があるか否かを検出することができるので、装置が正常に動作するか否かを確認する作業を要することなく装置を使用することができる。
【0021】
請求項5の発明によれば、送波手段を複数設けることで監視空間を広げる、若しくは監視空間における死角を低減することができ、また、異常検出モードにおいて送波手段毎に異常があるか否かを検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明に係る移動体検出装置の各実施形態について説明する。また、以下の説明では従来例と同様に連続エネルギ波として超音波を用いているが、超音波の代わりに電波を用いる場合にも本発明の技術思想は適用可能である。
【0023】
(実施形態1)
以下、本発明に係る移動体検出装置の実施形態1について図面を用いて説明する。本実施形態は、図1に示すように、周波数faの送波信号を発振する第1の発振手段である第1の発振回路1aと、送波信号と異なる周波数fbの基準信号を発振する第2の発振手段である第2の発振回路1bと、第1の発振回路1aからの送波信号を受けて監視空間に超音波を送波する送波手段である送波器3と、超音波が監視空間に存在する物体Oに反射して生じる反射波を受波して受波信号を出力する受波手段である受波器4と、送波信号又は基準信号の何れか一方の信号と受波信号とを混合することで両信号の位相差に応じたドップラー信号を得る位相検波手段である位相検波回路5と、位相検波回路5に入力される送波信号及び基準信号を切り換える信号切換手段である周波数選択回路2と、ドップラー信号から不要な高調波成分を除去するローパスフィルタ6と、ドップラー信号を所定の基準値と比較することで2値信号に変換するコンパレータ7と、2値信号を演算処理する演算回路8aと、演算回路8aの演算結果に基づいて監視空間における物体Oを検知して検出信号を出力する閾値回路8bと、移動物体Oを検出する移動体検出モード及び装置が正常に動作しているか否かを検出する異常検出モードを有し、移動体検出モードでは送波信号を位相検波回路5に入力するとともに異常検出モードでは基準信号を位相検波回路5に入力するように周波数選択回路2を制御する制御手段である制御回路9とを備える。尚、演算回路8a及び閾値回路8bで検知手段である検知回路8を構成する。
【0024】
以下、本実施形態の通常時、即ち移動体検出モードの動作について説明する。先ず、第1の発振回路1aからの周波数faの送波信号を受けて送波器3から同周波数の超音波が監視空間に送波され、監視空間内に存在する物体Oに超音波が反射して生じる周波数f’aの反射波を受波器4で受波し、同周波数の受波信号を位相検波回路5に出力する。位相検波回路5は、第1の発振回路1aから周波数選択回路2を介して出力される送波信号と受波信号とを混合することで両信号の位相差に応じたドップラー信号を出力する。位相検波回路5から出力されたドップラー信号は、ローパスフィルタ6において不要な高調波成分が除去された後にコンパレータ7で2値信号に変換され、該2値信号は演算回路8aに出力される。演算回路8aでは、2値信号を演算処理して物体Oの移動速度を求め、得られた移動速度が所定値を超えた場合に監視空間内に移動物体Oが存在すると閾値回路8bにおいて判断して検出信号を出力する。
【0025】
ここで、移動体検出モードにおいて物体Oが監視空間に存在しない、若しくは物体Oが静止している場合には、位相検波回路5で混合される受波信号及び送波信号の周波数が同一であるためにドップラー信号を得ることができない。そこで、本実施形態では、移動体検出モードの他に異常検出モードを設け、異常検出モードにおいて送波信号と異なる周波数fbの基準信号を位相検波回路5に入力するように周波数選択回路2を制御することで、位相検波回路5において互いに異なる周波数の信号を混合して擬似ドップラー信号を得て、擬似ドップラー信号を演算回路8aで演算処理した結果を所定の閾値と比較することで装置が正常に動作しているか否かを検出することができる。即ち、擬似ドップラー信号の演算結果が所定の閾値と一致する場合には装置が正常に動作していると判断することができ、擬似ドップラー信号の演算結果が所定の閾値と一致しない場合には、装置を構成する回路の何れかの箇所で断線等の異常があると判断することができる。
【0026】
上述のように、異常検出モードにおいて基準信号を位相検波回路5に入力するように周波数選択回路2を制御することで、監視空間に物体Oが存在しない場合、若しくは物体Oが静止している場合においても擬似的にドップラー信号を得ることができ、装置が正常に動作しているか否かを検出することができる。したがって、異常を検出する検出回路を設けることなく異常検出機能をもたせることができる。
【0027】
尚、送波信号の周波数faと基準信号の周波数fbとの差を想定される移動物体Oの速度に応じた値に設定するのが望ましい。このように設定することで、送波信号の周波数faと基準信号の周波数fbとの差を通常使用時における送波信号の周波数faと受波信号の周波数f’aとの差に近づけることができるので、ローパスフィルタ6、コンパレータ7、演算回路8a、閾値回路8bといった装置を構成する回路を大幅に変更することなく上記の異常検出機能をもたせることができる。以下、具体例について説明する。送波信号の周波数をfa、物体Oの移動速度をv、超音波の伝播速度をcとすれば、反射波の周波数f’aは、f’a=fa・(c+v)/(c−v)で表される。したがって、例えば送波信号の周波数が40kHzの超音波を用いて1m/sで移動する物体Oを検出したい場合には、反射波の周波数f’aが約40.23kHzとなるので、送波信号の周波数faと基準信号の周波数fbとの差を230Hz程度にするのが望ましい(超音波の伝播速度cが345m/sの場合)。
【0028】
また、上記の第1の発振回路1a及び第2の発振回路1bの構成としては、例えば複数の発振器から成る構成、若しくは1つの発振器と周波数コンバータを用意し、周波数コンバータによって周波数を変換して互いに異なる周波数を発振させる構成等が考えられるが、これらの場合には従来の装置のハードウェアを大幅に変更する必要がある。そこで、本実施形態では上記の第1の発振回路1a、第2の発振回路1b、周波数選択回路2、演算回路8a、閾値回路8b、制御回路9をマイコンで構成し、マイコンにおいてプログラムを実行することで上記各回路の機能を実現している。したがって、マイコンに組み込まれたタイマ機能を利用することで第1の発振回路1a及び第2の発振回路1b、並びに周波数選択回路2を実現できるので、ハードウェアを大幅に変更せずにソフトウェアを変更するだけで上記の異常検出機能を実現することができる。
【0029】
ところで、本実施形態のような移動体検出装置は、例えば自動車の車両に設置されて駐車時における移動体の検出に用いられ、常時移動体の検出を行うとバッテリが上がってしまうことから、間欠動作をさせるのが一般的である。この場合、制御回路5において移動体検出モードで制御を行う前に異常検出モードで制御を行うようにすることで、装置を使用する度に上記異常検出機能が働くため、装置が正常に動作するか否かを確認する作業を要することなく装置を使用することができる。尚、装置を長時間連続動作させる場合には、所定の時間毎に異常検出モードで制御させるようにすることで定期的に異常検出機能を働かせるようにしても構わない。
【0030】
更に、図2に示すように、従来例の構成に第1の発振回路1a及び第2の発振回路1b、第1の周波数選択回路2a及び第2の周波数選択回路2b、制御回路9を設けることで上記異常検出機能をもたせる構成であっても構わない。従来例では、演算回路16dや閾値回路16e等の回路から成る検知回路16をマイコンで構成しているので、マイコンに組み込まれたタイマT1で第1の発振回路1a及び第1の周波数選択回路2aを、タイマT2で第2の発振回路1b及び第2の周波数選択回路2bを構成するとともに、制御回路9をプログラムで実行するように構成し、位相回路17と位相検波回路13bに入力する信号ラインをタイマT2用のポートに繋ぎかえるだけで上記異常検出機能を実現することができる。
【0031】
尚、本実施形態の異常検出機能は、例えば自動車の車両等の閉空間では静止している物体Oが近くに存在するために好適に使用することができる。本実施形態の異常検出機能を開空間で使用する場合には、送波器3からの超音波の一部が直接受波器4に回り込むように送波器3に指向性をもたせる、若しくは送波器3が受波器4と対向するように送波器3を回動させる可動機構を送波器3に備えるのが望ましい。
【0032】
(実施形態2)
以下、本発明に係る移動体検出装置の実施形態2について図面を用いて説明する。但し、本実施形態の基本的な構成は実施形態1と共通であるので、共通する部位には同一の番号を付して説明を省略するものとする。本実施形態は、図3に示すように、送波器3として第1の送波器3a,第2の送波器3b,第3の送波器3bを設けるとともに、受波器4として第1の受波器4a、第2の受波器4bを設けることで監視空間を広げる、若しくは監視空間における死角を低減する構成となっている。各送波器3a,3b,3cは、後述する経路切換手段である経路切換回路Bを介して第1の発振回路1aと接続されている。また、各受波器4a,4bには、それぞれ位相検波回路5、ローパスフィルタ6、コンパレータ7、演算回路8a等が接続されており、各位相検波回路5にそれぞれ周波数選択回路2を介して送波信号又は基準信号が入力されるようになっている。
【0033】
経路切換回路Bは、各送波器3a,3b,3cと第1の発振回路1aとを全て接続する、若しくは個々の送波器3a,3b,3cと第1の発振回路1aとを接続する経路のうち何れか1つの経路に切り換えるものである。ここで、移動体検出モードにおいては、各送波器3a,3b,3cと第1の発振回路1aとを全て接続することで各送波器3a,3b,3cを同時に動作させてもよいが、異常検出モードにおいては、各送波器3a,3b,3cが同時に動作していると信号が混在するために何れの送波器3a,3b,3cの系統に異常があるのか検出することができない。そこで、異常検出モードにおいては、例えば第1の送波器3a,第2の送波器3b,第3の送波器3cの順に経路を切り換えるように経路切換回路Bを制御することで、送波器3a,3b,3c毎に異常があるか否かを検出することができる。尚、受波器4a,4bを切り換えて移動物体Oの検出を行う場合には、受波器4a,4bにも経路切換回路Bを接続することで受波器4a,4b毎に異常があるか否かを検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係る移動体検出装置の実施形態1を示すブロック図である。
【図2】同上の他の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明に係る移動体検出装置の実施形態2を示すブロック図である。
【図4】従来の移動体検出装置を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0035】
1a 第1の発振回路(第1の発振手段)
1b 第2の発振回路(第2の発振手段)
2 周波数選択回路(信号切換手段)
3 送波器(送波手段)
4 受波器(受波手段)
5 位相検波回路(位相検波手段)
8 検知回路(検知手段)
8a 演算回路
8b 閾値回路
9 制御回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定周波数の送波信号を発振する第1の発振手段と、送波信号と異なる所定周波数の基準信号を発振する第2の発振手段と、第1の発振手段から出力する送波信号により振幅が周期的に変化する連続エネルギ波を監視空間に送波する送波手段と、連続エネルギ波が監視空間に存在する物体に反射して生じる反射波を受波して受波信号を出力する受波手段と、送波信号又は基準信号の何れか一方の信号と受波信号とを混合することで両信号の位相差に応じたドップラー信号を得る位相検波手段と、ドップラー信号を信号処理して監視空間における移動物体を検知して検出信号を出力する検知手段と、位相検波手段に入力される送波信号及び基準信号を切り換える信号切換手段と、移動体を検出する移動体検出モード及び装置が正常に動作しているか否かを検出する異常検出モードを有し、移動体検出モードでは送波信号を位相検波手段に入力するとともに異常検出モードでは基準信号を位相検波手段に入力するように信号切換手段を制御する制御手段とを備えたことを特徴とする移動体検出装置。
【請求項2】
前記送波信号の周波数と基準信号の周波数との差を想定される移動物体の速度に応じた値に設定したことを特徴とする請求項1記載の移動体検出装置。
【請求項3】
前記第1の発振手段及び第2の発振手段はマイコンから構成され、マイコンに組み込まれたタイマ機能を用いて送波信号及び基準信号を発振させることを特徴とする請求項1又は2記載の移動体検出装置。
【請求項4】
前記制御手段は、少なくとも移動体検出モードで制御を行う前に異常検出モードで制御を行うことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の移動体検出装置。
【請求項5】
前記送波手段は複数であって、第1の発振手段と各送波手段とをそれぞれ接続する複数の経路を切り換える経路切換手段を備え、制御手段は、異常検出モードにおいて前記経路を順に切り換えるように経路切換手段を制御することを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の移動体検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−281890(P2009−281890A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−134718(P2008−134718)
【出願日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】