説明

移動体通信端末

【課題】 収納場所や設置の向きにかかわらず、着信があった旨の通知に用いる臭いを効率的な向きに出力することができる移動体通信端末を提供する。
【解決手段】 本移動体通信端末(携帯電話機)10は、外壁部から互いに異なる複数の方向に臭いを出力可能な臭い発臭部15等からなる臭い発生手段と、姿勢を検知する加速度センサを有するセンサー部22と、着信があった場合に、センサー部22の検知結果に基づいて上記複数の方向の中から選択された方向に臭いを出力するように臭い発生手段を制御する制御部13とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信ネットワークを介して通信可能な携帯電話機等の移動体通信端末に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯電話機等の移動体通信端末において音声電話やメールの着信を利用者に知らせる着信通知の媒体としては、音、光及び振動が一般的に用いられていた。例えば、音声電話やメールの着信があったときに、予め設定した楽曲や合成音を出力したり、LEDなどを発光させたり、移動体通信端末自体を振動させたりしていた。ところが、移動体通信端末を使用する環境の中には、上記音、光及び振動のよる着信通知には適しない環境があった。例えば、光で着信通知する場合、カバンの中など利用者の視界に入らない場所では着信を利用者に知らせることができない。また、音で着信通知する方法は、コンサート会場などの静寂な場所では使用することができない。更に、振動で着信通知する方法では、カバンの中など利用者の肌身から離した場所に移動体通信端末を収納しておくと、振動が利用者に伝わらず着信を利用者に知らせることができないおそれがある。
そこで、上記音、光及び振動に代わる媒体として臭いを用いて着信を知らせるようにした移動体通信端末が知られている(特許文献1、特許文献2)。
【特許文献1】特開2002−064594号公報
【特許文献2】特開2002−354074号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記公報に開示されている移動体通信端末では、臭いを出力する発臭方向が予め固定されているため、移動体通信端末の収納場所や設置の向き等によっては、出力した臭いを利用者が感じることができず、着信を利用者に知らせることができないおそれがあった。
【0004】
本発明は以上の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、収納場所や設置の向きにかかわらず、着信があった旨の通知に用いる臭いを効率的な向きに出力することができる移動体通信端末を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、通信ネットワークを介して通信可能な移動体通信端末であって、該移動体通信端末の外壁部から互いに異なる複数の方向に臭いを出力可能な臭い発生手段と、該移動体通信端末の姿勢を検知する姿勢検知手段と、着信があった場合に、該姿勢検知手段の検知結果に基づいて該複数の方向の中から選択された方向に臭いを出力するように該臭い発生手段を制御する制御手段とを備えたことを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、請求項1の移動体通信端末において、上記姿勢検知手段は、該移動体通信端末に作用している重力の方向を検知するものであり、上記制御手段は、該姿勢検知手段の検知結果に基づいて、重力の方向とは反対側に位置する上向きの外壁面又は該上向きの外壁面に隣接する側方の外壁面から外側に向かう方向に臭いを出力するように制御することを特徴とするものである。
また、請求項3の発明は、請求項1又は2の移動体通信端末において、上記臭い発生手段は、移動体通信端末における外向きの面の全体を構成する複数の外壁面のそれぞれから臭いを出力可能に構成されていることを特徴とするものである。
また、請求項4の発明は、請求項1の移動体通信端末において、上記制御手段は、着信中に利用者が応答できなかった不在着信があった場合に臭いを出力するように制御することを特徴とするものである。
また、請求項5の発明は、請求項4の移動体通信端末において、上記制御手段は、上記不在着信があった場合に、利用者による着信確認操作が行われるまで所定の時間間隔で上記臭いを繰り返し出力するように制御することを特徴とするものである。
また、請求項6の発明は、請求項4又は5の移動体通信端末において、上記制御手段は、上記不在着信があった場合とともに、上記着信中にも、上記臭いの出力を行うように制御し、該不在着信があった場合に出力する臭いと該着信中に出力する臭いとを互いに異ならせたことを特徴とするものである。
【0006】
請求項1の移動体通信端末では、着信があった場合に、姿勢検知手段の検知結果に基づいて、臭い発生手段が臭いを出力することができる複数の方向の中から、着信通知に適する臭いの出力方向を選択することができる。このように選択された方向に臭いを出力することにより、収納場所や設置の向きにかかわらず、着信があった旨の通知に用いる臭いを効率的な向きに出力することができる。
請求項2の移動体通信端末では、重力の方向とは反対側に位置する上向きの外壁面、又はその上向きの外壁面に隣接する側方の外壁面から外側に向かう方向に臭いを出力する。このような上向きの外壁面や側方の外壁面から外側に向かう方向は、下向きの外壁面から外側に向かう方向に比して、臭いの出力を遮る障害物が存在する確率が低いため、着信があった旨の通知に用いる臭いをより効率的な向きに出力することができる。
請求項3の移動体通信端末では、その傾きにかかわらず、臭いを出力可能な外壁面が、臭いの出力を遮る障害物が存在する確率が低い上方や側方に位置することになる。従って、移動体通信端末の設置の向きにかかわらず、上記効率的な向けへの臭いの出力をより確実に行うことができる。
ここで、移動体通信端末における外向きの面の全体で形成される形状が直方体のような形状をしている場合は、外向きの面の全体が6つの外壁面で構成されるため、これらの6つの外壁面のそれぞれから臭いを出力可能に構成するのが好ましい。また、折畳み方式やスウィーベル方式の移動体通信端末のように外向きの外壁面が変わるような場合は、収納したり机等の上に設置したりするときに外向きになる複数の外壁面それぞれから臭いを出力可能に構成する。また、外向きになる可能性がある複数の外壁面のすべてから臭いを出力可能に構成してもよい。
請求項4の移動体通信端末では、着信中に利用者が応答できなかった不在着信があった場合に臭いを出力することにより、移動体通信端末の表示等を確認することなく、上記不在着信があったことを利用者に知らせることができる。しかも、光、音及び振動のいずれかを出力して不在着信があったことを知らせる場合は、利用者が気付きやすいように上記光などを頻繁に出力して電源を消費する必要があり、低消費電力化を図ることが難しい。これに対し、臭いを出力する場合は、その出力した臭いがしばらくの間消失しないので、出力する頻度が少なくて済み、低消費電力化を図ることができる。
請求項5の移動体通信端末では、利用者による着信確認操作がすぐに行われないような場合に、上記不在着信があったことを通知する臭いが消失してしまうのを防止し、上記不在着信を利用者に確実に知らせることができる。
請求項6の移動体通信端末では、不在着信があった場合に出力する臭いと、着信中に出力する臭いとを互いに異ならせることにより、不在着信があったことと現在着信中であることとを容易に識別することができる。
【0007】
なお、上記「着信」には、音声電話の着信やメールの着信のほか、情報提供サーバ等から自動受信した各種情報の着信も含まれる。
また、上記「移動体通信端末」としては、PDC(Personal Digital Cellular)方式、GSM(Global System for Mobile Communication)方式、TIA(Telecommunications Industry Association)方式等の携帯電話機、IMT(International Mobile Telecommunications)−2000で標準化された携帯電話機、TD−SCDMA(Time Division Synchronous Code Division Multiple Access)方式の一つであるTD−SCDMA(MC:Multi Carrier)方式の携帯電話機、PHS(Personal Handyphone System)、自動車電話機等の通話機能を有する電話機が挙げられる。また、この「移動体通信端末」としては、上記電話機のほか、通話機能を有するPDA(Personal Digital Assistance)等の通信端末も挙げられる。
【発明の効果】
【0008】
請求項1乃至6の発明によれば、移動体通信端末の収納場所や設置の向きにかかわらず、着信があった旨の通知に用いる臭いを効率的な向きに出力することができるという効果がある。
特に、請求項2の発明によれば、臭いの出力を遮る障害物が存在する確率が低い上向きの外壁面や側方の外壁面から外側に向かう方向に臭いを出力することにより、着信があった旨の通知に用いる臭いをより効率的な向きに出力することができるという効果がある。
特に、請求項3の発明によれば、移動体通信端末の設置の向きに関わらず、上記効率的な向けへの臭いの出力をより確実に行うことができるという効果がある。
特に、請求項4の発明によれば、移動体通信端末の表示等を確認することなく、上記不在着信があったことを利用者に知らせることができるとともに低消費電力化を図ることができるという効果がある。
特に、請求項5の発明によれば、利用者による着信確認操作がすぐに行われないような場合でも不在着信を利用者に確実に知らせることができるという効果がある。
特に、請求項6の発明によれば、不在着信があったことと現在着信中であることとを容易に識別することができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を移動体通信端末としての携帯電話機に適用した実施形態について説明する。
図1は本発明の実施形態に係る携帯電話機10の一構成例を模式的に示すブロック図である。図2は、その携帯電話機10の外観図である。この携帯電話機10は、アンテナ11と、通信手段としての無線部12と、制御手段としての制御部13と、記憶手段としてのメモリ部14とを備える。また、携帯電話機10は、発臭部15と、電磁弁16と、音源部17と、音出力手段としてのスピーカ部18と、音入力手段としてのマイク19と、表示手段としての表示部20と、操作手段としてのキー操作部21とを備える。上記発臭部15、電磁弁16、及び図示しない配管等により、外部に所定の臭いを出力する臭い発生手段が構成されている。さらに、携帯電話機10は、姿勢検知手段としてのセンサー部22と、計時手段としてのタイマー部23と、電池部24とを備える。
【0010】
アンテナ11は、空中線として携帯電話10の高周波の送受信を基地局に対して行う。無線部12は、アンテナ11で受信された高周波信号を復調したり、送信すべき音声を高周波に変調したりするなどの所定の信号処理を行い、得られた送信する信号をアンテナ11に送る。これらのアンテナ11及び無線部12は、音声電話の通信のほか、他の携帯電話機とメールのやり取りを行ったり、移動体通信ネットワークである携帯電話通信網からゲートウェイサーバを介してインターネット等の外部の通信ネットワークに接続し、インターネット上での電子メールのやり取り等を行ったりするための通信も行う。また、アンテナ11及び無線部12は、携帯電話通信網を介して、ダウンロードサーバが提供するアプリケーションプログラムをダウンロードしたり、現在位置の位置情報を含む配信情報を受信したりするための通信も行う。
【0011】
上記無線部12で復調された音声信号は、音源部17でアナログ音声信号に変換され、スピーカ部18に送られ、音声として利用者に伝えられる。逆に、マイク部19でアナログ電気信号に変換された音声信号は、音源部17でデジタル信号化され、制御部13に送られる。
【0012】
制御部13は、CPU、ROM等で構成され、各部を制御する。メモリ部14は、RAM、ROM等で構成され、メモリダイヤルやファンクション機能の設定に必要な各々の機能項目を設定する設定画面、臭いの種類、現在の携帯電話の傾き、時刻等のデータを記憶する。
【0013】
表示部20は、液晶等を用いた表示パネルであり、制御部13の制御によって設定画面等の表示をする。また、この表示部20は、携帯電話通信網を介して受信したメールやWebページを表示したり、音声電話、メール、その他の情報を着信したことを知らせるための着信通知画像を表示したりする。
【0014】
キー操作部21は、データ入力キー(テンキー、*キー、#キー)211、通話開始キー212、終話キー213、スクロールキー214、多機能キー215等の複数のキーから構成されている。このキー操作部21は、利用者が通話相手先の電話番号を入力したり、通話の開始や終了を指示したりするときに操作される。また、キー操作部21は、利用者がメールの文字データを入力したり、メール送信を指示したり、各種メニュー画面上で特定のメニューを選択したりするときに操作される。また、キー操作部21のキー操作に応じて制御部13でメモリ部14からデータ等を読み出し、表示部20上に表示する。
【0015】
タイマー部23は制御部13に対して時計情報を提供し、電池部24は各部に電源を供給する。その他、バイブ等の振動部、LED(発光ダイオード)等の発光部、サウンダ等の発音部を備えていてもよい。
【0016】
図3は、発臭部15の一構成例を示す概略構成図である。上記臭い発生手段を構成する発臭部15は、出力対象の所定の臭いを発生する部分である。この発臭部15は、例えば図示のように、複数の種類の臭いの要素それぞれが詰められた臭いカートリッジ容器151と、複数の臭いの要素から選択されたものが混合される混合部(チャンバ)152と、この混合部152で混合された臭いを含む気体を外部に出力(噴出)するための気流発生手段としての電動ファン153とを備えている。混合部(チャンバ)152と各臭いカートリッジ容器151との間には、制御部13で開閉制御可能な図示しないシャッタが設けられている。どのシャッタを開いてどのような臭いを合成して出力するかを指定する臭い合成用データは、他の各種データと関連付けてメモリ部14に記憶されている。例えば、着新中の場合と着信中に利用者が応答できなかった不在着信があった場合とで異なる臭いを出力するように、臭い識別データや各シャッタの開閉制御データを、着信中及び不在着信の識別データと関連付けて保存しておく。また、音声電話やメールの発信元ごとに出力する臭いを異ならせるように、各通信先リスト情報(メモリダイヤル情報)の一項目として、臭い識別データや各シャッタの開閉制御データを保存しておくてもよい。また、上記臭い識別データや各シャッタの開閉制御データを、音声電話、メール、配信情報などの発信元から取得するようにしてもよい。
【0017】
また、発臭部15には、携帯電話機10の外側の面全体を構成する平面状の複数の外壁面10A〜10Fに先端が位置する複数のノズル管154A〜154Fが連結されている。各ノズル管154A〜154Fの途中には、ノズル先端への気流をオン・オフする電磁弁16が設けられている。各ノズル管154A〜154Fが混合部152に直接連結されている場合には、各ノズル管と混合部16との間の各連結部に電磁弁を設けてもよい。上記電磁弁16をオンすると、その電磁弁16が設けられているノズル管の先端から臭いを選択的に出力(噴出)することができる。
【0018】
なお、本実施形態では、上記電磁弁16は、センサー部22で求めた携帯電話10の傾き情報等の姿勢検知結果に基づいて、利用者が認識しやすい最適な方向(例えば上方、又は、上方及び側方)に臭いを出力するように制御部13でオン・オフ制御される。
【0019】
図4は、携帯電話機10の臭いを出力可能な外壁面及びその臭いの出力方向の一例を模式的に示した斜視図である。本実施形態の携帯電話機10では、携帯電話機がどのような姿勢をとったとしても利用者が臭いを認識しやすい上方や側方等の最適な方向に臭いを出力できるように、6つの外壁面10A〜10Fそれぞれから外側に向かう方向(図中のA〜Fの方向)に臭いを出力可能に構成されている。上記発臭部15で発生した臭いは、上記ノズル管154A〜154Fを通り、外壁面10A〜10Fに露出するように設けられた図示しないノズル先端から出力(噴出)させることできる。
【0020】
図5は、携帯電話機10上に定義される座標X,Y,Zと、センサー部で検知される加速度αX,αY,αZの方向とを示す説明図である。センサー部22は、互いに直交する座標X,Y,Zに沿った方向に生じる携帯電話機10の加速度を検知することにより、携帯電話機10に作用している重力の方向を検知するものである。このセンサー部22は、キー操作部21が設けられたおもて面10Aに対して平行な面内で互いに直交する2方向(X軸方向及びY軸方向)それぞれに沿った加速度αX,αYと、X軸及びY軸と直交するZ軸方向に沿った加速度αZとを検出する3軸の加速度センサーを有している。この加速度センサーは、携帯電話機20の内部に設けられた図示しない回路基板上に実装されており、上記加速度αX,αY,αZを検出できる公知のものを用いることができる。また、センサー部22は、3軸の加速度センサーとともに、携帯電話機10の姿勢をより精度よく検知できるように地磁気センサー等の他のセンサーを補助的に備えてよい。
【0021】
図6(a)〜(c)は、携帯電話機10の傾きと臭いの出力(噴出)方向との関係の一例を模式的に示す説明図である。
図6(a)は、キー操作部21が設けられたおもて面10A(図4参照)が重力と直交する水平方向に平行な場合を示している。この場合、センサー部22はZ軸方向の加速度αZの出力値として、−1g(g:重力加速度)に対応する値を出力する。そして、おもて面10Aから外側に向かう上方を向いたAの方向に臭いが出力(噴出)される。
また、図6(b)は、側面10E側(図4参照)が上側になるように携帯電話機が多少傾いた場合を示している。この場合、センサー部22は、Z軸方向の加速度αZの出力値として、−1gと−(sin45°×g)との間の範囲内の加速度に対応する値を出力し、X軸方向の加速度αXの出力値として、0gと(sin45°×g)との間の範囲内の加速度に対応する値を出力する。そして、上方を向いた方向から多少傾いているが、おもて面10Aから外側に向かうAの方向に、臭いが出力(噴出)される。
また、図6(c)は、側面10E側が上側になるように携帯電話機が更に傾いた場合を示している。この場合、センサー部22は、Z軸方向の加速度αZの出力値として、0gと−(sin45°×g)との間の範囲内の加速度に対応する値を出力し、X軸方向の加速度αXの出力値として、1gと(sin45°×g)との間の範囲内の加速度に対応する値を出力する。そして、上方を向いた方向から多少傾いているが、側面10Eから外側に向かうE方向に、臭いが出力(噴出)される。
【0022】
以上のように、図6(a)〜(c)の例の場合は、携帯電話機10のおもて面の傾き角度の閾値として45°が設定され、この閾値を境にして臭いの出力(噴出)方向が切り換わる。なお、上記傾き角度の閾値は45°に限定されるものではない。例えば、上記傾き角度の閾値として30°及び60°を設定してよい。また、この場合、上記傾き角度が30°〜60°の範囲では、A及びEの両方向に臭いを出力するようにしてもよい。
【0023】
図7は、携帯電話機10が更にいろいろな向きに傾いたときに検知される加速度αX,αYの値と臭いの出力(噴出)方向A〜Fとの関係の一例を模式的に示す説明図である。図7中のハッチングを付した領域は、携帯電話機10のおもて面10A又は裏面10F(図4参照)が水平面に平行な場合又は水平面から45°の範囲内で傾いている場合を示している。この場合、X軸方向及びY軸方向それぞれの加速度の値にかかわらず、おもて面10Aから外向きのA方向、又は裏面10Fから外向きのF方向に、臭いが出力される。
一方、携帯電話機10のおもて面10A又は裏面10Fが水平面から45°〜90°の範囲内で傾いている場合は、更に、X軸方向及びY軸方向それぞれの加速度αX,αYの値に応じて臭いの出力方向が切り換えられる。具体的には、図7のハッチング領域の周囲に位置する円環状の白抜き領域に示すように、加速度αX,αYの値に応じて、臭いの出力方向がB方向,C方向,D方向及びE方向の間で切り換えられる。加速度αX,αYの値の取り得る範囲は、−1g〜−(sin45°×g)の範囲、及び(sin45°×g)〜1gの範囲である。
【0024】
表1は、上記臭いの出力方向(噴出方向)A〜Fと、その切り換えの判定に用いるセンサー部22の検知値の条件との間の関係をまとめた一覧表である。なお、表1の例では、上記傾き角度の閾値が45°の場合について示しているが、前述のように上記傾き角度の閾値は45°に限定されるものではない。例えば、上記傾き角度の閾値として30°及び60°を設定してよい。また、表2のように、重力の方向又はその方向に一番近い方向から臭いを出力せずに、他の5面の全て又は一部から外向きの方向から臭いを出力するようにしてもよい。
【0025】
【表1】

【0026】
【表2】

【0027】
図8は、上記構成の携帯電話機10において音声電話又はメールを受信した着信時に臭いを出力するときの動作例を示すフローチャートである。この動作例では、携帯電話機10が音声電話又はメールを受信すると、その着信を制御部13が認識する(S101)。次に、制御部13は、センサー部22の加速度の検知結果に基づいて、携帯電話機10の傾きを確認し、例えば前述の加速度検知条件に基づいて臭いを出力する方向を選択する(S102)。次に、制御部13は、上記選択された方向から、着信通知用に予め設定された所定の臭い1を出力するように所定の電磁弁16だけを開放するように制御する(S103)。これにより、上記携帯電話機10の傾きに基づいて選択された所定の方向から、着信通知用に臭い1を出力することができる(S104)。
【0028】
図9は、上記構成の携帯電話機10において音声電話又はメールを受信した着信時及び不在着信の状態のときに臭いを出力するときの動作例を示すフローチャートである。着信時の臭いの出力動作(S201〜S204)については、上記図8の場合と同様であるので、説明を省略する。この動作例では、携帯電話機10が音声電話を着信し、その着信中に利用者が応答できなかった不在着信があった場合、制御部13は、着信終了を認識すると(S205)、上記着信中の臭い出力のときに選択された方向から、不在着信用に予め設定された所定の臭い2を出力するように所定の電磁弁16だけを開放するように制御する(S206)。これにより、不在着信があった場合には、上記着信中の臭い1とは異なる臭い2を出力することができる(S207)。
【0029】
図10は、上記構成の携帯電話機10において不在着信の状態のときに臭いを所定の間隔で繰り返し出力するときの動作例を示すフローチャートである。着信時の臭い1の出力動作及び不在着信時の1回目の臭い2の出力動作(S301〜S207)については、上記図9の場合と同様であるので、説明を省略する。この動作例では、着信中に利用者が応答できなかった不在着信が長く続くような場合を想定している。制御部13は、上記不在着信時の1回目の臭い2を出力した後、タイマー部23からの出力に基づいて、タイマカウントを開始する(S308)。次に、制御部13は、予め設定した所定の設定時間が経過したと判断したら(S309)、再度、臭い2を出力するように所定の電磁弁16だけを開放するように制御する(S210)。上記臭い2の繰り返し出力間隔の設定時間は、例えば臭い2が消失すると予想される時間に設定される。上記臭い2の繰り返し出力は、利用者が臭い2に気付いて上記音声電話やメールの着信を確認する操作を受け付けるまで継続される(S312)。
【0030】
以上、本実施形態によれば、センサー部22の検知結果に基づいて、臭いを出力することができる複数の方向の中から、着信通知に適する臭いの出力方向を選択することができる。このように選択された方向に臭いを出力することにより、収納場所や設置の向きにかかわらず、着信があった旨の通知に用いる臭いを効率的な向きに出力することができる。よって、携帯電話機10の収納場所や設置の向きにかかわらず、着信中の場合及び不在着信の場合における着信があった旨の通知に用いる臭いを効率的な向きに出力することができる。
また、本実施形態によれば、センサー部22の加速度αX,αY、αZの検知結果に基づいて、重力の方向とは反対側に位置する上向きの外壁面、又はその上向きの外壁面に隣接する側方の外壁面から外側に向かう方向に臭いを出力する。このような上向きの外壁面や側方の外壁面から外側に向かう方向は、下向きの外壁面から外側に向かう方向に比して、臭いの出力を遮る障害物が存在する確率が低いため、着信があった旨の通知に用いる臭いをより効率的な向きに出力することができる。
また、本実施形態によれば、携帯電話機10の傾きにかかわらず、臭いを出力可能な外壁面が、臭いの出力を遮る障害物が存在する確率が低い上方や側方に位置することになる。従って、移動体通信端末の設置の向きにかかわらず、上記効率的な向けへの臭いの出力をより確実に行うことができる。
また、本実施形態によれば、着信中に利用者が応答できなかった不在着信があった場合に臭いを出力することにより、携帯電話機10の表示部20の表示等を確認することなく、上記不在着信があったことを利用者に知らせることができる。しかも、出力した臭いがしばらくの間消失しないので、光、音及び振動のいずれかを出力して不在着信があったことを知らせる場合に比して出力する頻度が少なくて済み、低消費電力化を図ることができる。
また、本実施形態によれば、上記不在着信の場合の臭いの出力を繰り返し行うことにより、利用者による着信確認操作がすぐに行われないような場合に、上記不在着信があったことを通知する臭いが消失してしまうのを防止し、上記不在着信を利用者に確実に知らせることができる。
また、本実施形態によれば、不在着信があった場合に出力する臭いと、着信中に出力する臭いとを互いに異ならせることにより、不在着信があったことと現在着信中であることとを容易に識別することができる。
【0031】
なお、上記実施形態では、ストレートタイプの携帯電話機の蓋部202側に香り物質保持部材収容部30を設けた場合について説明したが、本発明は、クラムシェル(折り畳み)タイプの携帯電話機等、他の形状の携帯電話機の場合にも同様に適用でき、同様な効果が得られるものである。また、上記各実施形態では、携帯電話機の場合について説明したが、本発明は、PHS、自動車電話機等の他の移動体通信端末の場合についても適用でき、同様な効果が得られるものである。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施形態に係る携帯電話機の一構成例を模式的に示すブロック図。
【図2】同携帯電話機の外観図。
【図3】同携帯電話機の発臭部の一構成例を示す概略構成図。
【図4】同携帯電話機の臭いを出力可能な外壁面及びその臭いの出力方向の一例を模式的に示した斜視図。
【図5】同携帯電話機上に定義される座標X,Y,Zとセンサー部で検知される加速度の方向とを示す説明図。
【図6】(a)〜(c)はそれぞれ、同携帯電話機の傾きと臭いの出力(噴出)方向との関係の一例を模式的に示す説明図。
【図7】同携帯電話機が更にいろいろな向きに傾いたときに検知される加速度の値と臭いの出力(噴出)方向との関係の一例を模式的に示す説明図。
【図8】音声電話又はメールを受信した着信時に臭いを出力するときの動作例を示すフローチャート。
【図9】音声電話又はメールを受信した着信時及び不在着信の状態のときに臭いを出力するときの動作例を示すフローチャート。
【図10】不在着信の状態のときに臭いを所定の間隔で繰り返し出力するときの動作例を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0033】
10 携帯電話機
13 制御部
14 メモリ部
15 発臭部
16 電磁弁
22 センサー部
23 タイマー部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信ネットワークを介して通信可能な移動体通信端末であって、
該移動体通信端末の外壁部から互いに異なる複数の方向に臭いを出力可能な臭い発生手段と、
該移動体通信端末の姿勢を検知する姿勢検知手段と、
着信があった場合に、該姿勢検知手段の検知結果に基づいて該複数の方向の中から選択された方向に臭いを出力するように該臭い発生手段を制御する制御手段と
を備えたことを特徴とする移動体通信端末。
【請求項2】
請求項1の移動体通信端末において、
上記姿勢検知手段は、該移動体通信端末に作用している重力の方向を検知するものであり、
上記制御手段は、該姿勢検知手段の検知結果に基づいて、重力の方向とは反対側に位置する上向きの外壁面又は該上向きの外壁面に隣接する側方の外壁面から外側に向かう方向に臭いを出力するように制御することを特徴とする移動体通信端末。
【請求項3】
請求項1又は2の移動体通信端末において、
上記臭い発生手段は、該移動体通信端末における外向きの面の全体を構成する複数の外壁面のそれぞれから臭いを出力可能に構成されていることを特徴とする移動体通信端末。
【請求項4】
請求項1の移動体通信端末において、
上記制御手段は、着信中に利用者が応答できなかった不在着信があった場合に臭いを出力するように制御することを特徴とする移動体通信端末。
【請求項5】
請求項4の移動体通信端末において、
上記制御手段は、上記不在着信があった場合に、所定の時間間隔で上記臭いを繰り返し出力するように制御することを特徴とする移動体通信端末。
【請求項6】
請求項4又は5の移動体通信端末において、
上記制御手段は、上記不在着信があった場合とともに、上記着信中にも、上記臭いの出力を行うように制御し、
該不在着信があった場合に出力する臭いと該着信中に出力する臭いとを互いに異ならせたことを特徴とする移動体通信端末。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2007−96861(P2007−96861A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−284580(P2005−284580)
【出願日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(501440684)ソフトバンクモバイル株式会社 (654)
【Fターム(参考)】