移動情報検出方法、移動情報検出プログラム、計測装置、光学系、露光装置及びデバイスの製造方法
【課題】位置センサを用いた移動部材の移動情報の検出精度を向上させることができる移動情報検出方法、移動情報検出プログラム、計測装置、光学系、露光装置及びデバイスの製造方法を提供する。
【解決手段】ステップS11では、レンズをZ軸方向及びθx方向に移動させると共に、複数の位置で位置センサを用いてレンズのY軸移動量dを検出させ、さらに、Y軸移動量dを検出したときのレンズのZ軸方向に関する位置及び傾斜角を検出させる。そして、ステップS12,13では、位置センサのスケールの傾き角度θを算出させる。その後、算出した傾き角度θに基づいて、位置センサを用いてレンズのY軸移動量dが補正される。
【解決手段】ステップS11では、レンズをZ軸方向及びθx方向に移動させると共に、複数の位置で位置センサを用いてレンズのY軸移動量dを検出させ、さらに、Y軸移動量dを検出したときのレンズのZ軸方向に関する位置及び傾斜角を検出させる。そして、ステップS12,13では、位置センサのスケールの傾き角度θを算出させる。その後、算出した傾き角度θに基づいて、位置センサを用いてレンズのY軸移動量dが補正される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置センサを用いて移動部材の移動情報を検出する移動情報検出方法及び移動情報検出プログラムに関するものである。また、本発明は、移動部材の移動情報を検出するための位置センサを備える計測装置、該計測装置を備える光学系、該光学系を備える露光装置、及び該露光装置を用いるデバイスの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、半導体集積回路などのマイクロデバイスを製造するためのリソグラフィ工程では、所定のパターン(回路パターンなど)を感光性材料が塗布されたウエハ、ガラスプレートなどの基板に形成するための露光装置が用いられる。こうした露光装置に搭載される投影光学系は、鏡筒と、該鏡筒に支持される複数の光学部材(レンズなど)とを備えている。
【0003】
ところで、投影光学系において光学部材が投影光学系の光軸とほぼ直交する面内で移動(横シフトともいう。)すると、基板に投影されたパターンの像の位置が僅かにずれるおそれがある。そこで、近年では、投影光学系に、光学部材の移動量を計測するための計測装置を備えた露光装置が提案されている(特許文献1参照)。この露光装置では、計測装置によって光学部材の移動量が計測された場合、該移動量に基づいて、パターンの像と基板との投影光学系を介しての相対位置関係が調整される。そのため、基板には、パターンの像が適切な位置に投影することができた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−317880号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記計測装置には、第1の方向に沿って等間隔に設けられる複数の目盛が形成される計測面を有するスケール、及び計測面に対向して配置され且つ目盛を読み取るための読取り部を備える磁気式又は光学式の位置センサが設けられている。こうした位置センサを用いて光学部材の第1の方向への移動量を計測する場合には、光学部材へのスケールの取り付け方によって計測誤差を発生させるおそれがある。
【0006】
図12には、光学部材100の第1の方向への移動量を計測するための位置センサ101を設けた場合が図示されている。すなわち、位置センサ101のスケール102が斜めに傾いた状態で光学部材100に取り付けられた場合において、光学部材100が基準位置から第1の方向と直交する第2の方向に移動したときには、光学部材100が実際には第1の方向に移動していないにも関わらず、光学部材100の第1の方向への移動量が誤検出される。そのため、光学部材100の移動方向に第2の方向への移動成分が含まれる場合には、位置センサ101に基づき検出される光学部材100の第1の方向への移動量には、スケール102の取り付け方に起因した誤差成分が含まれる。
【0007】
また、こうした検出誤差は、光学部材100へのスケール102の取り付け方に応じて異なる。そのため、一律なオフセット値を設定し、位置センサ101を用いて検出された光学部材100の第1の方向への移動量をオフセット値で補正する方法は、適用しにくい。したがって、光学部材などの移動部材に対するスケール102の取り付け方に関係なく、位置センサを用いて移動部材の第1の方向への移動情報を、正確に検出できる技術が希求されていた。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、位置センサを用いた移動部材の移動情報の検出精度を向上させることができる移動情報検出方法、移動情報検出プログラム、計測装置、光学系、露光装置及びデバイスの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明は、実施形態に示す図1〜図11に対応付けした以下の構成を採用している。
本発明の移動情報検出方法は、スケール(52,60)と、該スケール(52,60)の計測面(54,61)に形成された目盛(55,62)を読み取る読取り部(53)とを備える位置センサ(SE,SE1,SE2,SE3)を用いて、前記計測面(54,61)に沿う第1の方向に関する移動部材(24,26,28)の移動情報を検出する移動情報検出方法であって、前記移動部材(24,26,28)を、前記スケール(52,60)の計測面(54,61)内において前記第1の方向と交差する第2の方向に移動させると共に、前記計測面(54,61)と交差する第3の方向を中心に傾斜させ、前記位置センサ(SE,SE1,SE2,SE3)を用いて前記第1の方向に関する前記移動部材(24,26,28)の移動情報を検出し、前記第1の方向に関する前記移動部材(24,26,28)の移動情報の検出を、前記移動部材(24,26,28)の前記第2の方向に関する位置を変化させ、且つ前記第3の方向を中心とした前記移動部材(24,26,28)の傾斜角度を変化させて複数回行い、複数回検出した前記第1の方向に関する前記移動部材(24,26,28)の移動情報と、前記第1の方向に関する前記移動部材(24,26,28)の移動情報を検出したときの前記第2の方向に関する前記移動部材(24,26,28)の位置と、前記第1の方向に関する前記移動部材(24,26,28)の移動情報を検出したときの前記移動部材(24,26,28)の傾斜角度とに基づき、前記第2の方向に関する前記スケール(52,60)の傾き角度を算出し、算出した前記傾き角度に基づき、前記位置センサ(SE,SE1,SE2,SE3)を用いた前記移動部材(24,26,28)の前記第1の方向に関する移動情報を補正することを要旨とする。
【0010】
本発明の移動情報検出プログラムは、スケール(52,60)と、該スケール(52,60)の計測面(54,61)に形成された目盛(55,62)を読み取る読取り部(53)とを備える位置センサ(SE,SE1,SE2,SE3)を用いて、前記計測面(54,61)に沿う第1の方向に関する前記移動部材(24,26,28)の移動情報の検出を制御装置(CONT)に行なわせるための移動情報検出プログラムであって、前記制御装置(CONT)に、前記移動部材(24,26,28)を、前記スケール(52,60)の計測面(54,61)内において前記第1の方向と交差する第2の方向に移動させると共に、前記計測面(54,61)と交差する第3の方向を中心に傾斜させ、前記位置センサ(SE,SE1,SE2,SE3)を用いて前記第1の方向に関する前記移動部材(24,26,28)の移動情報を複数の位置で検出するステップと、前記ステップにおいて複数位置で検出した第1の方向に関する前記移動部材(24,26,28)の移動情報と、前記第1の方向に関する前記移動部材(24,26,28)の移動情報を検出したときの前記第2の方向に関する前記移動部材(24,26,28)の位置と、前記第1の方向に関する前記移動部材(24,26,28)の移動情報を検出したときの前記移動部材(24,26,28)の傾斜角度とに基づき、前記第2の方向に関する前記スケール(52,60)の傾き角度を算出するステップと、前記ステップで算出した前記傾き角度に基づき、前記位置センサ(SE,SE1,SE2,SE3)を用いた前記第1の方向に関する前記移動部材(24,26,28)の移動情報を補正するステップと、を実行させることを要旨とする。
【0011】
本発明の計測装置は、第1の方向に関する移動部材(24,26,28)の移動情報を計測する計測装置であって、前記第1の方向に関する移動部材(24,26,28)の移動情報を検出するための位置センサ(SE,SE1,SE2,SE3)と、前記位置センサ(SE,SE1,SE2,SE3)を用いて前記第1の方向に関する前記移動部材(24,26,28)の移動情報を検出し、該検出結果を補正する制御装置(CONT)と、を備え、前記位置センサ(SE,SE1,SE2,SE3)は、一方向に沿って配置される複数の目盛が形成された計測面(54,61)を有するスケール(52,60)と、前記スケール(52,60)の前記計測面(54,61)に対向して配置され且つ該計測面(54,61)の目盛(55,62)を読み取るための読取り部(53)とを備え、前記スケール(52,60)又は読取り部(53)は、前記移動部材(24,26,28)に設けられており、前記制御装置(CONT)は、前記移動部材(24,26,28)を、前記スケール(52,60)の計測面(54,61)内において前記第1の方向と交差する第2の方向に移動させると共に、前記計測面(54,61)と交差する第3の方向を中心に傾斜させ、前記位置センサ(SE,SE1,SE2,SE3)を用いて前記第1の方向に関する前記移動部材(24,26,28)の移動情報を複数の位置で検出し、前記複数位置で検出した前記第1の方向に関する前記移動部材(24,26,28)の移動情報と、前記第1の方向に関する前記移動部材(24,26,28)の移動情報を検出したときの前記第2の方向に関する前記移動部材(24,26,28)の位置と、前記第1の方向に関する前記移動部材(24,26,28)の移動情報を検出したときの前記移動部材(24,26,28)の傾斜角度とに基づき、前記第2の方向に関する前記スケール(52,60)の傾き角度を算出し、前記算出した前記傾き角度に基づき、前記位置センサ(SE,SE1,SE2,SE3)を用いた前記第1の方向に関する前記移動部材(24,26,28)の移動情報を補正することを特徴とする。
【0012】
一般に、位置センサを用いて検出された第1の方向に関する移動部材(24,26,28)の移動情報には、位置センサのスケールの傾き角度に応じた誤差成分が含まれている。そこで、本発明では、移動部材を第2の方向に移動させると共に、移動部材を第3の方向を中心に傾斜させ、複数位置で位置センサを用いて移動部材の第1の方向に関する移動情報を検出させる。そして、複数位置で検出した第1の方向に関する移動部材(24,26,28)の移動情報と、第1の方向に関する移動部材(24,26,28)の移動情報を検出したときの第2の方向に関する移動部材(24,26,28)の位置と、第1の方向に関する移動部材(24,26,28)の移動情報を検出したときの移動部材(24,26,28)の傾斜角度とに基づき、第2の方向に関するスケール(52,60)の傾き角度を算出させる。そして、算出された傾き角度に基づいて、位置センサを用いて検出された第1の方向に関する移動部材(24,26,28)の移動情報を補正することにより、誤差成分の少ない第1の方向に関する移動部材(24,26,28)の移動情報を得ることが可能となる。
【0013】
なお、本発明をわかりやすく説明するために実施形態を示す図面の符号に対応づけて説明したが、本発明が実施形態に限定されるものではないことは言うまでもない。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、位置センサを用いた移動部材の移動情報の検出精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施形態における露光装置を示す概略構成図。
【図2】レンズ保持装置を模式的に示す斜視図。
【図3】計測装置の電気的構成を示すブロック図。
【図4】レンズを模式的に示す平断面図。
【図5】レンズをZ軸方向及びθx方向に移動させる様子を示す模式図。
【図6】本実施形態の移動情報補正処理を説明するフローチャート。
【図7】レンズのZ軸移動量とY軸移動量との関係を示すグラフ。
【図8】レンズのZ軸移動量と傾斜角度との関係を示すグラフ。
【図9】別の実施形態において、ウエハステージに位置センサのスケールが取り付けられた状態を模式的に示す平面図。
【図10】デバイスの製造例のフローチャート。
【図11】半導体デバイスの場合の基板処理に関する詳細なフローチャート。
【図12】従来において光学部材に位置センサのスケールが傾いて取り付けられた状態を模式的に示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明を具体化した一実施形態について図1〜図8に基づき説明する。なお、本実施形態では、投影光学系の光軸に平行な方向をZ軸方向とし、Z軸方向に垂直な平面内で走査露光時のレチクルR及びウエハWの走査方向をY軸方向とし、その走査方向に直交する非走査方向をX軸方向として説明する。また、X軸、Y軸、Z軸の周りの回転方向をθx方向、θy方向、θz方向ともいう。
【0017】
図1に示すように、本実施形態の露光装置21は、光源装置22から供給された露光光ELを用い、所定の回路パターンが形成されたレチクルRを照明し、該照明によって形成される回路パターンの像をレジストなどの感光性材料が塗布されたウエハWの露光面Waに投影するための装置である。こうした露光装置21は、光源装置22からの露光光ELでレチクルRを照明する照明光学系23と、レチクルRを保持するレチクルステージ24と、該レチクルRを介した露光光ELでウエハWの露光面Wa(感光性材料が塗布されたウエハ表面)を照射する投影光学系25と、ウエハWを保持するウエハステージ26とを備えている。なお、本実施形態の光源装置としては、ArFエキシマレーザ光(波長193nm)を露光光ELとして出力する光源が用いられている。
【0018】
照明光学系23は、図示しないフライアイレンズやロッドレンズなどのオプティカルインテグレータ、リレーレンズ及びコンデンサレンズなどの各種レンズ系、及び図示しない開口絞りなどを含んで構成されている。そして、光源装置22から射出された露光光ELが照明光学系23を通過することにより、レチクルR上には、均一な光強度分布(光輝度分布ともいう。)を有し、且つX軸方向(図1において紙面と直交する方向)に延びる略矩形状の照明領域が形成される。
【0019】
レチクルステージ24は、照明光学系23と投影光学系25との間で、そのレチクルRの載置面が光路と略直交するように配置されている。すなわち、レチクルステージ24は、投影光学系25の物体面側(+Z方向側であって、図1では上側)に配置されている。また、レチクルステージ24には、レチクルRを保持するための図示しないレチクル保持部(例えば、レチクルRを真空吸着するための図示しない真空チャック)が設けられている。こうしたレチクルステージ24は、図示しないレチクルステージ駆動部の駆動によって、Y軸方向(図1において左右方向)に移動可能である。すなわち、レチクルステージ駆動部は、レチクル保持部に保持されるレチクルRをY軸方向に所定ストロークで移動させる。また、レチクルステージ駆動部は、レチクルRをX軸方向及びθz方向にも移動させることが可能である。
【0020】
投影光学系25は、露光光ELでレチクルRを照明することにより形成された回路パターンの像を所定の縮小倍率(例えば1/4倍)に縮小させる光学系であって、略円筒形状の鏡筒27を備えている。この鏡筒27内には、投影光学系25の光軸AX(図4参照)に沿って配置される複数枚(図1では3枚のみ図示)のレンズ28が収容されている。これら各レンズ28は、後述するレンズ保持装置40を介して鏡筒27にそれぞれ支持されている。そして、物体面側であるレチクルR側から導かれた露光光ELは、各レンズ28を介してウエハステージ26に保持されるウエハWの露光面Waに導かれる。
【0021】
ウエハステージ26は、投影光学系25の像面側(−Z方向側であって、図1では下側)において、ウエハWが載置される載置面が露光光ELの光路と略直交するように配置されている。また、ウエハステージ26には、ウエハWを保持するための図示しないウエハ保持部(例えば、ウエハWを真空吸着するための図示しない真空チャック)と、該ウエハ保持部を保持する図示しないウエハホルダと、該ウエハホルダのZ軸方向における位置及びX軸周り、Y軸周りの傾斜角を調整する図示しないZレベリング機構とが組み込まれている。こうしたウエハステージ26は、図示しないウエハステージ駆動部によって、Y軸方向に移動可能である。すなわち、ウエハステージ駆動部は、ウエハ保持部に保持されるウエハWをY軸方向に所定ストロークで移動させる。また、ウエハステージ駆動部は、ウエハ保持部に保持されるウエハWをX軸方向及びZ軸方向にも移動可能に構成されている。
【0022】
そして、ウエハWの一つのショット領域にレチクルRの回路パターンを形成する場合、照明光学系23によって照明領域をレチクルRに形成した状態で、レチクルステージ駆動部の駆動によって、レチクルRをY軸方向(例えば、+Y方向側から−Y方向側)に所定ストローク毎に移動させるとともに、ウエハステージ駆動部の駆動によって、ウエハWをレチクルRのX軸方向に沿った移動に対して投影光学系25の縮小倍率に応じた速度比でY軸方向(例えば、−Y方向側から+Y方向側)に同期して移動させる。そして、一つのショット領域への回路パターンの形成が終了した場合、ウエハWの他のショット領域に対する回路パターンの形成が連続して行われる。
【0023】
次に、各レンズ28のうち最も物体面側に位置するレンズ28を保持するレンズ保持装置40について図2に基づき説明する。なお、他のレンズ28用のレンズ保持装置は、レンズ保持装置40と略同一構成であるため、その説明を省略する。
【0024】
鏡筒27には、その内側に突出する図示しない円環状の支持部(フランジ部)が設けられており、鏡筒27は、支持部を介してレンズ保持装置40を支持している。こうしたレンズ保持装置40は、上記支持部に支持される円環状のアウタリング41を備え、該アウタリング41は、XY平面と略平行な状態で配置されている。また、レンズ保持装置40には、アウタリング41上に配置されるパラレルリンク機構42と、該パラレルリンク機構42に支持される円環状のインナリング43とが設けられており、該インナリング43は、複数(本実施形態では3つ)の保持機構49を介してレンズ28を支持している。そして、パラレルリンク機構42の駆動に伴ってインナリング43の位置が変位することにより、レンズ28のアウタリング41に対する位置及び姿勢のうち少なくとも一方が調整される。
【0025】
パラレルリンク機構42は、インナリング43をアウタリング41に対して、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向、θx方向、θy方向及びθz方向の6自由度方向に移動させるべく駆動する。本実施形態においてパラレルリンク機構42は、インナリング43をアウタリング41に対して、投影光学系25の光軸AXと後述する第2位置センサSE2とを繋ぐ方向に延びる軸(図4では一点鎖線で示す。)を中心とする回転方向、及び投影光学系25の光軸AXと後述する第3位置センサSE3とを繋ぐ方向に延びる軸(図4では一点鎖線で示す。)を中心とする回転方向にも移動させることが可能である(図4参照)。すなわち、パラレルリンク機構42は、2本のリンク44を有するリンク機構45を複数(本実施形態では3つ)備え、該各リンク機構45は、周方向において等間隔にそれぞれ配置されている。
【0026】
各リンク44は、それぞれの長手方向における両端がアウタリング41及びインナリング43に球面対偶をなすようにそれぞれ形成されている。具体的には、各リンク44は、第1軸部材46と、該第1軸部材46に接続又は連結される第2軸部材47とをそれぞれ有している。各第1軸部材46の一端(下端)は、アウタリング41にボールジョイント48を介してそれぞれ取り付けられ、各第2軸部材47の他端(上端)は、インナリング43に図示しないボールジョイントを介してそれぞれ取り付けられている。そして、第1軸部材46及び第2軸部材47の少なくとも一方の各々には、リンク44の長さ、即ち第1軸部材46の一端と第2軸部材47の他端との距離を変更させるべく駆動する図示しないアクチュエータがそれぞれ設けられている。アクチュエータの一例として、リンク44の長手方向に伸縮駆動する圧電素子が挙げられる。そして、各リンク44は、後述する制御装置CONTに基づきアクチュエータが駆動する場合にそれぞれ伸縮動作する。
【0027】
各保持機構49は、各リンク機構45と同一周方向位置であって、且つインナリング43の+Z方向側の面(図3では上面)にそれぞれ配置されている。こうした各保持機構49は、+Z方向側が閉塞すると共に−Z方向側が開口する略逆U字状にそれぞれ形成されている。すなわち、各保持機構49は、Z軸方向に延びる一対の延設部49aと、該両延設部49aの+Z方向側の端部を連結する連結部49bとをそれぞれ有している。
【0028】
また、本実施形態の露光装置21には、各レンズ28のXY平面での移動情報を個別に検出する計測装置50が設けられている。この計測装置50は、図3及び図4に示すように、各レンズ28のXY平面での移動情報を検出するためのXY位置センサ51と、該XY位置センサ51からの検出信号に基づき各レンズ28のXY平面での移動情報を算出し、該算出結果に基づき各レンズ保持装置40を制御する制御装置CONTとを備えている。なお、本実施形態において、レンズ28の移動情報には、レンズ28の移動量(X軸方向への移動量、Y軸方向への移動量)に関する情報及び各レンズ28の位置に関する情報のうち少なくとも一方が含まれている。
【0029】
XY位置センサ51には、投影光学系25の光軸AXを中心とする周方向において等間隔に配置される複数(本実施形態では3つ)の位置センサSE(SE1,SE2,SE3)が設けられている。これら各位置センサSEは、磁気式又は光学式のセンサであって、レンズ28において露光光ELが入射しない部分(本実施形態では、レンズ28の側面)にそれぞれ固定されるスケール52と、鏡筒27の内壁に固定され且つスケール52に対向して配置される読取り部53とをそれぞれ有している。これら各読取り部53は、制御装置CONTにそれぞれ電気的に接続されている。なお、図3では、明細書の説明理解の便宜上、レンズ保持装置40の図示を省略している。
【0030】
図5に示すように、スケール52は、図示しない螺子などによってレンズ28に取り付けられている。こうしたスケール52は、平面状の計測面54を備えており、該計測面54には、一方向に沿ってほぼ等間隔に配置される複数の目盛55が形成されている。これら各目盛55は、計測面54内において上記一方向とほぼ直交する方向にそれぞれ延びている。また、読取り部53は、対応するスケール52の目盛55を読取り可能に構成されており、読取り結果に応じた情報(検出情報ともいう。)を制御装置CONTに出力する。
【0031】
制御装置CONTは、図3に示すように、図示しないCPU、ROM、RAM及び不揮発性のメモリなどから構築されるデジタルコンピュータと、各レンズ保持装置40を駆動させるためのドライバ回路とを備えている。こうした制御装置CONTは、ハードウェア及びソフトウェアのうち少なくとも一方によりそれぞれ実現される機能部分として、補正情報記憶部56、レンズ位置算出部57及びレンズ位置制御部58を有している。
【0032】
補正情報記憶部56には、位置センサSEのスケール52のレンズ28への取り付け方に起因して生じる検出誤差を補正するための補正情報(詳しくは、後述するスケール52の傾き角度)が記憶される。
【0033】
レンズ位置算出部57は、XY位置センサ51(即ち、各位置センサSE1,SE2,SE3)からの検出情報に基づきレンズ28のXY平面(即ち、Z軸方向と直交する方向)での移動情報を算出し、該移動情報をレンズ位置制御部58に出力する。また、レンズ位置算出部57は、鏡筒27へのレンズ28の取り付け時や露光装置21のメンテナンス時などに、スケール52の傾き角度を算出する移動情報補正処理を行なう。なお、この移動情報補正処理については、後述する。
【0034】
レンズ位置制御部58は、レンズ位置算出部57から入力されたレンズ28の位置情報に基づき、レンズ保持装置40を個別に制御する。また、レンズ位置制御部58は、レンズ28を移動させた場合にはその移動量に関する情報(レンズ28のZ軸方向への移動量(又はZ軸方向における位置)など)をレンズ位置算出部57に出力する。すなわち、レンズ位置制御部58は、レンズ28を+Z方向側に1μm移動させる場合には、所望する移動量(この場合、+Z方向側に1μm)に応じたパラレルリンク機構42の各リンク44の伸縮量を個別に設定し、該各リンク44のアクチュエータを駆動させる。同様に、レンズ位置制御部58は、レンズ28を+θx方向側に1°傾斜させる場合には、所望する移動量(この場合、+θx方向側に1°)に応じたパラレルリンク機構42の各リンク44の伸縮量を個別に設定し、該各リンク44のアクチュエータを駆動させる。
【0035】
そして、レンズ28がX軸方向に沿って移動した場合、各位置センサSE1,SE2,SE3のうち、第1位置センサSE1は、スケール52と読取り部53とがX軸方向に沿って配置されているため、レンズ28のX軸方向における移動を検出できない。一方、第2位置センサSE2及び第3位置センサSE3は、レンズ28のX軸方向における移動を検出でき、各位置センサSE2,SE3の読取り部53からは、それらによる読取り結果に応じた検出情報が制御装置CONTにそれぞれ出力される。また、レンズ28がY軸方向に沿って移動した場合、第1位置センサSE1の読取り部53からは、レンズ28のY軸方向への移動量に応じた検出情報が制御装置CONTに出力される。一方、第2位置センサSE2及び第3位置センサSE3の読取り部53からは、それらによる読取り結果に応じた検出情報が制御装置CONTにそれぞれ出力される。
【0036】
ところで、図5に示すように、第1位置センサSE1のスケール52を、該スケール52の一方向(各目盛55が並ぶ方向)をY軸方向と完全に一致させるようにレンズ28に取り付けることは、困難である。そのため、第1の方向(この場合、Y軸方向)と直交する第2の方向(この場合、Z軸方向)に延びる基準線L1(図5では一点鎖線で示す。)に対するスケール52の傾き角度θの絶対値は、0(零)よりも大きくなる。そこで、本実施形態では、スケール52の傾き角度θを算出すると共に、該算出結果に応じた補正量を算出する移動情報補正処理が実行される。なお、図5では、スケール52の傾き角度θが誇張されている。
【0037】
次に、本実施形態の移動情報補正処理について、図5に示す模式図、図6に示すフローチャート及び図7、図8に示す各グラフに基づき説明する。ここでは、最も物体面側に位置するレンズ28の第1位置センサSE1に対する移動情報補正処理について説明する。なお、他の位置センサSEに対する移動情報補正処理は、最も物体面側に位置するレンズ28の位置センサSE1に対する移動情報補正処理と略同一内容であるため、それらの詳細な説明を省略する。
【0038】
さて、移動情報補正処理において、ステップS10では、レンズ位置制御部58は、レンズ28を+Z方向側及び−Z方向側に移動させることが可能であって、且つレンズ28をX軸方向に沿う軸線S1を中心とする+θx方向及び−θx方向に移動させることが可能な位置に移動させる(図5参照)。そして、レンズ28の移動が完了すると、レンズ位置制御部58は、移動完了の旨をレンズ位置算出部57に出力する。すると、レンズ位置算出部57は、現時点のレンズ28の位置を基準位置に設定する。なお、図5では、実線で示されたレンズ28の位置が基準位置とする。
【0039】
続いて、ステップS11において、レンズ位置制御部58は、レンズ28を基準位置から移動させると共に、レンズ位置算出部57は、複数位置でのレンズ28のY軸方向への移動量(以下、Y軸移動量ともいう。)dを、第1位置センサSE1を用いて検出する。具体的には、レンズ位置制御部58は、レンズ28のZ軸方向における移動量(以下、Z軸移動量ともいう。)Zdを、第1移動量(=−γ)、第2移動量(=−β)、第3移動量(=−α)、第4移動量(=0(零))、第5移動量(=α)、第6移動量(=β(>α))及び第7移動量(=γ(>β))に設定する。なお、第5移動量、第6移動量及び第7移動量は、それぞれ正の値であるものとする。また、レンズ位置制御部58は、レンズ28のθx方向における傾斜角度Tsを、第1傾斜角(=−T3)、第2傾斜角(=−T2)、第3傾斜角(=−T1)、第4傾斜角(=0(零))、第5傾斜角(=T1)、第6傾斜角(=T2(>T1))及び第7傾斜角(=T3(>T2))に設定する。なお、第5傾斜角、第6傾斜角及び第7傾斜角は、それぞれ正の値であるものとする。
【0040】
すなわち、レンズ位置制御部58は、レンズ28を合計49の位置に移動(変位)することができる。ちなみに、Z軸移動量Zdが第4移動量であって且つ傾斜角度Tsが第4傾斜角となる場合、レンズ28は、基準位置に位置している。
【0041】
そして、レンズ位置算出部57は、Z軸移動量Zdが第1移動量であって且つ傾斜角度Tsが第1傾斜角となる位置にレンズ28が位置する場合、第1位置センサSE1からの検出信号に基づきレンズ28のY軸移動量dを算出する。続いて、レンズ位置算出部57は、Z軸移動量Zdが第2移動量であって且つ傾斜角度Tsが第2傾斜角となる位置にレンズ28が位置する場合、第1位置センサSE1からの検出信号に基づきレンズ28のY軸移動量dを算出する。このように、レンズ位置算出部57は、複数位置(この場合、49位置)にレンズ28を配置した場合における該レンズ28のY軸移動量dを、第1位置センサSE1からの検出信号に基づき算出する。
【0042】
続いて、ステップS12において、レンズ位置算出部57は、ステップS11での算出結果に基づき、軸線S1からレンズ28の基準位置までの基準距離をピポタル径PRとして算出する。本実施形態のレンズ保持装置40は、レンズ28をθx方向、即ち軸線S1を中心とする周方向に移動させることはできるが、このときの軸線S1の位置は、レンズ保持装置40の個体毎に微妙に異なる。そのため、ピポタル径PRは、レンズ28をレンズ保持装置40によって移動させた際の実測値を用いないことには正確に求めることができない。
【0043】
そこで、本実施形態では、以下に示す方法でピポタル径PRを算出する。すなわち、レンズ位置算出部57は、Y軸移動量d、該Y軸移動量dを検出したときのレンズ28のZ軸移動量Zd、及び該Y軸移動量dを検出したときのレンズ28の傾斜角度Tsを以下に示す関係式(式1)に代入し、ピポタル径算出値dRを求める。ここでは、レンズ位置算出部57は、レンズ28を複数位置(この場合、全49位置)に配置した場合のピポタル径算出値dRを個別に算出する。
【0044】
d=(dR+Zd)×sin(Ts) ・・・(式1)
ここで、レンズ28の位置毎に検出されるY軸移動量dの各々には、スケール52の傾き角度θに応じた検出誤差がそれぞれ含まれている。そのため、こうした各Y軸移動量dを用いて算出された各ピポタル径算出値dRには、当然、誤差成分がそれぞれ含まれている。ここで、レンズ28のZ軸移動量Zdが第1移動量であって且つ傾斜角度Tsが第4傾斜角である場合に算出されるピポタル径算出値dR(=dR1)は、理論上、以下に示す関係式(式2)で示すことができる。また、レンズ28のZ軸移動量Zdが第7移動量であって且つ傾斜角度Tsが第4傾斜角である場合に算出されるピポタル径算出値dR(=dR2)は、以下に示す関係式(式3)で示すことができる。また、レンズ28のZ軸移動量Zdが第4移動量であって且つ傾斜角度Tsが第1傾斜角である場合に算出されるピポタル径算出値dR(=dR3)は、以下に示す関係式(式4)で示すことができる。また、レンズ28のZ軸移動量Zdが第4移動量であって且つ傾斜角度Tsが第7傾斜角である場合に算出されるピポタル径算出値dR(=dR4)は、以下に示す関係式(式5)で示すことができる。
【0045】
dR1=PR+A ・・・(式2)
dR2=PR−A ・・・(式3)
dR3=PR+B ・・・(式4)
dR4=PR−B ・・・(式5)
ただし、PR…実際のピポタル径、A,B…Z軸移動量Zd及び傾き角度θに応じた誤差量
すなわち、各ピポタル径算出値dRは、実際のピポタル径PRと、基準位置を基準としたレンズ28のZ軸移動量Zd及び基準位置を基準としたレンズ28の傾斜角度Tsとに基づいた誤差量(A,B)とをそれぞれ含んで算出される。また、上述したように、第1移動量の絶対値は、第7移動量の絶対値と同一であると共に、第2移動量の絶対値は、第6移動量の絶対値と同一であり、さらに、第3移動量の絶対値は、第5移動量の絶対値と同一である。また、第1傾斜角の絶対値は、第7傾斜角の絶対値と同一であると共に、第2傾斜角の絶対値は、第6傾斜角の絶対値と同一であり、さらに、第3傾斜角の絶対値は、第5傾斜角の絶対値と同一である。そこで、レンズ位置算出部57は、各ピポタル径算出値dRの平均値を算出し、該平均値をスケール52の傾き角度θに対応した誤差量が大幅に取り除かれたピポタル径PRとする。
【0046】
なお、関係式(式2)〜(式4)は理論値であって、実際の各ピポタル径算出値dRには、実際のピポタル径PR及び傾き角度θに応じた検出誤差だけではなく、レンズ保持装置40によるレンズ28のZ軸方向への移動精度及びθx方向への移動精度に応じた誤差などがそれぞれ含まれる。しかし、本実施形態では、説明理解の便宜上、レンズ保持装置40によるレンズ28の移動精度に応じた誤差はないものとする。
【0047】
続いて、ステップS13において、レンズ位置算出部57は、ステップS12で算出したピポタル径PRを用いて、スケール52の傾き角度θを算出する。すなわち、図7は、第1位置センサSE1を用いて検出されたY軸移動量dと、レンズ28のZ軸移動量Zdとの関係を示すグラフである。図7に示すように、傾斜角度Tsが第4傾斜角である場合には、各Z軸移動量Zdに個別対応するY軸移動量dを示す各プロットがほぼ一直線に並ぶ。また、傾斜角度Tsが第1傾斜角である場合もまた、各Z軸移動量Zdに個別対応するY軸移動量dを示す各プロットがほぼ一直線に並ぶ。また、傾斜角度Tsが第7傾斜角である場合もまた、各Z軸移動量Zdに個別対応するY軸移動量dを示す各プロットがほぼ一直線に並ぶ。しかも、各Z軸移動量Zdに個別対応するY軸移動量dを示す各プロットが並ぶ各直線の傾きは、傾斜角度Tsが小さいほど小さくなっている。なお、図7では、明細書の説明理解の便宜上、傾斜角度Tsが第2傾斜角及び第5傾斜角である場合のプロット及び直線を省略している。
【0048】
ここで、もし仮にスケール52の傾き角度θが0(零)であるとすると、傾斜角度Tsが第4傾斜角である場合の直線の傾きは、ほぼ0(零)になるはずである。また、スケール52の傾き角度θの正負の符号が本実施形態の場合とは逆の場合、傾斜角度Tsの符号が正である場合の直線の傾きのほうが、傾斜角度Tsの符号が負である場合の直線の傾きよりも小さくなる。
【0049】
つまり、上記直線の傾きが0(零)又は0(零)に限りなく近くなるような傾斜角度Tsを求めることにより、スケール52の傾き角度θを得ることができる。そこで、レンズ位置算出部57は、レンズ28のZ軸移動量Zdが第1移動量である場合の各Y軸移動量dと該各Y軸移動量dに個別対応する各傾斜角度Tsに基づき、Y軸移動量dが0(零)となる傾斜角度Tsを求める。また、レンズ位置算出部57は、レンズ28のZ軸方向におけるZ軸移動量Zdが第2移動量である場合の各Y軸移動量dと該各Y軸移動量dに個別対応する各傾斜角度Tsに基づき、Y軸移動量dが0(零)となる傾斜角度Tsを求める。すなわち、レンズ位置算出部57は、レンズ28のZ軸移動量Zd毎に、Y軸移動量dが0(零)となる傾斜角度Tsを求める。なお、図8には、レンズ28のZ軸方向におけるZ軸移動量Zdと、Y軸移動量dが0(零)となる傾斜角度Tsとの関係が示されている。
【0050】
そして、レンズ位置算出部57は、レンズ28のZ軸移動量Zdと求めた傾斜角度Tsとに基づき、図8において実線の直線で示す一次関数を導出する。この一次関数は、公知の近似方法(一例として、最小二乗法)を用いて導出される。続いて、レンズ位置算出部57は、導出した一次関数を用い、レンズ28のZ軸移動量Zdが0(零)となるときの傾斜角度Ts(以下、算出角度ともいう。)を算出する。この算出角度は、レンズ28の傾斜角度Tsが算出角度となるようにレンズ28をθx方向に移動させた状態で該レンズ28をZ軸方向に移動させた場合に、第1位置センサSE1を用いて検出するY軸移動量dがほぼ0(零)となる角度である。すなわち、傾斜角度Tsが算出角度である場合、スケール52の目盛55が並ぶ一方向は、Y軸方向とほぼ一致する。したがって、レンズ位置算出部57は、上記算出角度をスケール52の傾き角度θとし、該傾き角度θを補正情報記憶部56に記憶させ、その後、移動情報補正処理を終了する。
【0051】
次に、算出した傾き角度θを用いて、第1位置センサSE1からの検出信号に基づき検出されたY軸移動量dの補正方法を説明する。
さて、レンズ28の移動方向に、Z軸方向への移動成分が含まれている場合、レンズ位置算出部57は、レンズ28のZ軸方向へのZ軸移動量Zdを、レンズ位置制御部58からの信号に基づき取得する。そして、レンズ位置算出部57は、検出したレンズ28のZ軸移動量Zdと、補正情報記憶部56に記憶されている傾き角度θとを、以下に示す関係式(式6)に代入し、補正量Esを算出する。
【0052】
Es=Zd×sin(θ) ・・・(式6)
続いて、レンズ位置算出部57は、第1位置センサSE1の読取り部53から入力された検出信号に基づき、レンズ28の補正前のY軸移動量dを検出する。そして、レンズ位置算出部57は、検出した補正前のY軸移動量dから補正量Esを減算し、該減算結果を補正後のY軸移動量dとする。
【0053】
その後、このように算出された補正後のY軸移動量dに基づき、レンズ位置制御部58は、必要に応じてレンズ保持装置40の駆動を制御する。
したがって、本実施形態では、以下に示す効果を得ることができる。
【0054】
(1)第1位置センサSE1を用いて検出されたY軸方向に関するレンズ28のY軸移動量d(即ち、補正前のY軸移動量)には、第1位置センサSE1のスケール52の傾き角度θに応じた誤差成分が含まれている。そこで、本実施形態では、レンズ28をZ軸方向に移動させると共に、レンズ28をθx方向に移動させ、複数位置で第1位置センサSE1を用いてレンズ28のY軸移動量dを検出する。そして、複数位置で検出したレンズ28のY軸移動量dと、該Y軸移動量dを検出したときのレンズ28のZ軸移動量Zdと、該Y軸移動量dを検出したときのレンズ28の傾斜角度Tsとに基づき、スケール52の傾き角度θを算出する。そして、算出した傾き角度θに基づいて、第1位置センサSE1を用いて検出されたレンズ28のY軸移動量dを補正することにより、誤差成分の少ないY軸移動量d(即ち、補正後のY軸移動量d)を得ることができる。したがって、第1位置センサSE1を用いてレンズ28のY軸移動量dの検出精度を向上させることができる。
【0055】
(2)また、本実施形態では、第2位置センサSE2及び第3位置センサSE3に関しても、第1位置センサSE1の場合と同様な方法で、それらのスケール52の傾き角度θが算出される。そして、該算出された傾き角度に基づき、第2位置センサSE2及び第3位置センサSE3を用いて検出されるレンズ28の移動量が補正される。その結果、レンズ28のXY平面に沿う方向における移動情報を、正確に取得することができる。したがって、レンズ28のXY平面での位置をより正確に調整することができ、投影光学系25の光学特性を向上させることができる。
【0056】
(3)本実施形態のステップS11において、レンズ28のZ軸方向における複数の位置は、基準位置を挟んで対象な位置にそれぞれ配置されている。同様に、レンズ28の各傾斜角度Tsは、基準位置を挟んで対象な位置にそれぞれ設定されている。そのため、複数の位置での各値に基づき算出した各ピポタル径算出値dRの平均値を算出することにより、スケール52の傾き角度θに起因した誤差成分の大部分がキャンセルされたピポタル径PRを求めることができる。すなわち、ピポタル径PRを容易に求めることができる。
【0057】
なお、上記実施形態は以下のような別の実施形態に変更してもよい。
・実施形態において、一つの位置センサSEに対して、移動情報補正処理を複数回(例えば3回)行なってもよい。このように移動情報補正処理を複数回実行することにより、スケール52の傾き角度θに応じた誤差量をより小さくすることができ、ひいてはレンズ28の位置検出精度をさらに向上させることができる。
【0058】
・実施形態において、レンズ28のZ軸方向への移動量を検出するための位置センサを設け、該位置センサからの検出信号に基づきレンズ28のZ軸移動量Zdを検出してもよい。なお、こうした位置センサは、スケールと読取り部とを有する光学式又は磁気式のセンサであってもよいし、静電容量センサであってもよい。
【0059】
同様に、レンズ28の傾斜角度Tsを検出するための位置センサを設け、該位置センサからの検出信号に基づきレンズ28の傾斜角度Tsを検出してもよい。
・本発明を、ウエハWやレチクルRを保持するステージの移動情報を検出するための計測装置に具体化してもよい。図9に示すように、ウエハW(図9では二点鎖線で示す。)を保持するウエハステージ26には、ウエハステージ26のY軸方向に関するY軸移動量を検出するための位置センサSEのスケール60が設けられている。このスケール60の計測面61には、一方向に沿って配置される複数の目盛62が形成されている。また、露光装置21には、ウエハステージ26をY軸方向、X軸方向及びθz方向に移動させるための図示しないウエハステージ駆動部と、ウエハステージ26のX軸方向に関する位置(又は移動量)を検出するための位置センサと、ウエハステージ26のθz方向における傾斜角を検出するための位置センサとが設けられている。
【0060】
そして、位置センサSEを用いて検出したウエハステージ26のY軸方向に関する移動量を補正する場合には、上記実施形態と同様に、位置センサSEのスケール60のウエハステージ26に対する傾き角度θを算出させる。このとき、ウエハステージ26をZ軸方向へ移動させたり、θz方向に移動させたりする。こうした補正処理を行なうことにより、ウエハステージ26の移動情報を正確に取得することができ、ひいてはウエハステージ26に保持されるウエハWの各ショット領域に、適切な位置にパターンを形成させることができる。
【0061】
・実施形態では、ステップS13において、1次の近似式を用いて傾き角度θを算出しているが、2次以上の近似式を用いて傾き角度θを算出してもよい。また、レンズ28のZ軸移動量Zd毎に求められた、Y軸移動量dが0(零)となる各傾斜角度Tsの平均値を算出し、該算出結果を傾き角度θとしてもよい。
【0062】
・実施形態において、位置センサSEは、光学式のリニアエンコーダであってもよい。
・実施形態において、位置センサSEは、スケール52を鏡筒27側に取り付け、レンズ28に読取り部53を取り付けた構成でもよい。この場合であっても、上記実施形態と同等の効果を得ることができる。
【0063】
・実施形態において、照明光学系23が備えるレンズのうち少なくとも一つのレンズに、位置センサSEを設けてもよい。そして、位置センサSEを用いてレンズの移動情報を検出させてもよい。
【0064】
・実施形態において、露光装置21は、半導体素子などのマイクロデバイスだけでなく、光露光装置、EUV露光装置、X線露光装置、及び電子線露光装置などで使用されるレチクルまたはマスクを製造するために、マザーレチクルからガラス基板やシリコンウエハなどへ回路パターンを転写する露光装置であってもよい。また、露光装置21は、液晶表示素子(LCD)などを含むディスプレイの製造に用いられてデバイスパターンをガラスプレート上へ転写する露光装置、薄膜磁気ヘッド等の製造に用いられて、デバイスパターンをセラミックウエハ等へ転写する露光装置、及びCCD等の撮像素子の製造に用いられる露光装置などであってもよい。
【0065】
・実施形態において、光源装置22は、例えばg線(436nm)、i線(365nm)、KrFエキシマレーザ(248nm)、F2レーザ(157nm)、Kr2レーザ(146nm)、Ar2レーザ(126nm)等を供給可能な光源であってもよい。また、光源装置22は、DFB半導体レーザまたはファイバレーザから発振される赤外域、または可視域の単一波長レーザ光を、例えばエルビウム(またはエルビウムとイッテルビウムの双方)がドープされたファイバアンプで増幅し、非線形光学結晶を用いて紫外光に波長変換した高調波を供給可能な光源であってもよい。
【0066】
・実施形態において、光源装置22は、波長が100nm程度以下の軟X線領域である極端紫外光、即ちEUV(Extreme Ultraviolet )光を供給可能な光源であってもよい。この場合、光学系23,25が備える光学部材は、反射型のミラーとなる。こうしたミラーの移動情報を、上記実施形態の計測装置50で計測してもよい。
【0067】
・実施形態において、投影光学系25とウエハWとの間の光路中を1.1よりも大きな屈折率を有する媒体(典型的には液体)で満たす手法、所謂液浸法を適用してもよい。この場合、投影光学系25とウエハWとの間の光路中に液体を満たす手法としては、国際公開番号WO99/49504号公報に開示されているような局所的に液体を満たす手法や、特開平6−124873号公報に開示されているような露光対象のウエハWを保持したステージを液槽の中で移動させる手法や、特開平10−303114号公報に開示されているようなステージ上に所定深さの液体槽を形成し、その中に基板を保持する手法などを採用することができる。
【0068】
・実施形態において、露光装置21を、可変パターン生成器(例えば、DMD(Digital Mirror Device又はDigital Micro-mirror Device))を用いたマスクレス露光装置に具体化してもよい。このようなマスクレス露光装置は、例えば特開2004−304135号公報、国際特許公開第2006/080285号パンフレット及びこれに対応する米国特許公開第2007/0296936号公報に開示されている。
【0069】
・実施形態において、露光装置21を、ステップ・アンド・リピート方式の装置に具体化してもよい。
・本発明の計測装置を、露光装置以外の他の装置に設けてもよい。ただし、他の装置には、移動部材と、少なくとも第1の方向、該第1の方向と交差する第2の方向、第1及び第2の各方向と交差する方向に延びる軸線を中心とした回転方向に移動部材を移動させることが可能な機構とを設けてもよい。また、また、他の装置には、移動部材の第2の方向に関する位置及び上記回転方向における傾斜角度を検出可能なセンサを設けてもよい。この場合であっても、移動部材に取り付けられたスケールの傾き角度θを算出し、位置センサを用いて検出された移動部材の第1の方向に関する移動量を、傾き角度θに応じた補正を行なうことにより、移動部材の第1の方向に関する移動量を正確に検出することができる。
【0070】
次に、本発明の実施形態の露光装置21によるデバイスの製造方法をリソグラフィ工程で使用したマイクロデバイスの製造方法の実施形態について説明する。図10は、マイクロデバイス(ICやLSI等の半導体チップ、液晶パネル、CCD、薄膜磁気ヘッド、マイクロマシン等)の製造例のフローチャートを示す図である。
【0071】
まず、ステップS101(設計ステップ)において、マイクロデバイスの機能・性能設計(例えば、半導体デバイスの回路設計等)を行い、その機能を実現するためのパターン設計を行う。引き続き、ステップS102(マスク製作ステップ)において、設計した回路パターンを形成したマスク(レチクルRなど)を製作する。一方、ステップS103(基板製造ステップ)において、シリコン、ガラス、セラミックス等の材料を用いて基板(シリコン材料を用いた場合にはウエハWとなる。)を製造する。
【0072】
次に、ステップS104(基板処理ステップ)において、ステップS101〜ステップS104で用意したマスクと基板を使用して、後述するように、リソグラフィ技術等によって基板上に実際の回路等を形成する。次いで、ステップS105(デバイス組立ステップ)において、ステップS104で処理された基板を用いてデバイス組立を行う。このステップS105には、ダイシング工程、ボンティング工程、及びパッケージング工程(チップ封入)等の工程が必要に応じて含まれる。最後に、ステップS106(検査ステップ)において、ステップS105で作製されたマイクロデバイスの動作確認テスト、耐久性テスト等の検査を行う。こうした工程を経た後にマイクロデバイスが完成し、これが出荷される。
【0073】
図11は、半導体デバイスの場合におけるステップS104の詳細工程の一例を示す図である。
ステップS111(酸化ステップ)においては、基板の表面を酸化させる。ステップS112(CVDステップ)においては、基板表面に絶縁膜を形成する。ステップS113(電極形成ステップ)においては、基板上に電極を蒸着によって形成する。ステップS114(イオン打込みステップ)においては、基板にイオンを打ち込む。以上のステップS111〜ステップS114のそれぞれは、基板処理の各段階の前処理工程を構成しており、各段階において必要な処理に応じて選択されて実行される。
【0074】
基板プロセスの各段階において、上述の前処理工程が終了すると、以下のようにして後処理工程が実行される。この後処理工程では、まず、ステップS115(レジスト形成ステップ)において、基板に感光性材料を塗布する。引き続き、ステップS116(露光ステップ)において、上で説明したリソグラフィシステム(露光装置21)によってマスクの回路パターンを基板に転写する。次に、ステップS117(現像ステップ)において、ステップS116にて露光された基板を現像して、基板の表面に回路パターンからなるマスク層を形成する。さらに続いて、ステップS118(エッチングステップ)において、レジストが残存している部分以外の部分の露出部材をエッチングにより取り去る。そして、ステップS119(レジスト除去ステップ)において、エッチングが済んで不要となった感光性材料を取り除く。すなわち、ステップS118及びステップS119において、マスク層を介して基板の表面を加工する。これらの前処理工程と後処理工程とを繰り返し行うことによって、基板上に多重に回路パターンが形成される。
【符号の説明】
【0075】
21…露光装置、23…照明光学系、24…移動部材、マスク保持装置としてのレチクルステージ、25…投影光学系、26…移動部材、基板保持装置としてのウエハステージ、28…移動部材、光学部材としてのレンズ、27…支持部材としての鏡筒、40…レンズ保持装置、50…計測装置、52,60…スケール、53…読取り部、54,61…計測面、55,62…目盛、AX…光軸、CONT…制御装置、R…マスクとしてのレチクル、S1…軸線、SE,SE1〜SE3…位置センサ、W…基板としてのウエハ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置センサを用いて移動部材の移動情報を検出する移動情報検出方法及び移動情報検出プログラムに関するものである。また、本発明は、移動部材の移動情報を検出するための位置センサを備える計測装置、該計測装置を備える光学系、該光学系を備える露光装置、及び該露光装置を用いるデバイスの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、半導体集積回路などのマイクロデバイスを製造するためのリソグラフィ工程では、所定のパターン(回路パターンなど)を感光性材料が塗布されたウエハ、ガラスプレートなどの基板に形成するための露光装置が用いられる。こうした露光装置に搭載される投影光学系は、鏡筒と、該鏡筒に支持される複数の光学部材(レンズなど)とを備えている。
【0003】
ところで、投影光学系において光学部材が投影光学系の光軸とほぼ直交する面内で移動(横シフトともいう。)すると、基板に投影されたパターンの像の位置が僅かにずれるおそれがある。そこで、近年では、投影光学系に、光学部材の移動量を計測するための計測装置を備えた露光装置が提案されている(特許文献1参照)。この露光装置では、計測装置によって光学部材の移動量が計測された場合、該移動量に基づいて、パターンの像と基板との投影光学系を介しての相対位置関係が調整される。そのため、基板には、パターンの像が適切な位置に投影することができた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−317880号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記計測装置には、第1の方向に沿って等間隔に設けられる複数の目盛が形成される計測面を有するスケール、及び計測面に対向して配置され且つ目盛を読み取るための読取り部を備える磁気式又は光学式の位置センサが設けられている。こうした位置センサを用いて光学部材の第1の方向への移動量を計測する場合には、光学部材へのスケールの取り付け方によって計測誤差を発生させるおそれがある。
【0006】
図12には、光学部材100の第1の方向への移動量を計測するための位置センサ101を設けた場合が図示されている。すなわち、位置センサ101のスケール102が斜めに傾いた状態で光学部材100に取り付けられた場合において、光学部材100が基準位置から第1の方向と直交する第2の方向に移動したときには、光学部材100が実際には第1の方向に移動していないにも関わらず、光学部材100の第1の方向への移動量が誤検出される。そのため、光学部材100の移動方向に第2の方向への移動成分が含まれる場合には、位置センサ101に基づき検出される光学部材100の第1の方向への移動量には、スケール102の取り付け方に起因した誤差成分が含まれる。
【0007】
また、こうした検出誤差は、光学部材100へのスケール102の取り付け方に応じて異なる。そのため、一律なオフセット値を設定し、位置センサ101を用いて検出された光学部材100の第1の方向への移動量をオフセット値で補正する方法は、適用しにくい。したがって、光学部材などの移動部材に対するスケール102の取り付け方に関係なく、位置センサを用いて移動部材の第1の方向への移動情報を、正確に検出できる技術が希求されていた。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、位置センサを用いた移動部材の移動情報の検出精度を向上させることができる移動情報検出方法、移動情報検出プログラム、計測装置、光学系、露光装置及びデバイスの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明は、実施形態に示す図1〜図11に対応付けした以下の構成を採用している。
本発明の移動情報検出方法は、スケール(52,60)と、該スケール(52,60)の計測面(54,61)に形成された目盛(55,62)を読み取る読取り部(53)とを備える位置センサ(SE,SE1,SE2,SE3)を用いて、前記計測面(54,61)に沿う第1の方向に関する移動部材(24,26,28)の移動情報を検出する移動情報検出方法であって、前記移動部材(24,26,28)を、前記スケール(52,60)の計測面(54,61)内において前記第1の方向と交差する第2の方向に移動させると共に、前記計測面(54,61)と交差する第3の方向を中心に傾斜させ、前記位置センサ(SE,SE1,SE2,SE3)を用いて前記第1の方向に関する前記移動部材(24,26,28)の移動情報を検出し、前記第1の方向に関する前記移動部材(24,26,28)の移動情報の検出を、前記移動部材(24,26,28)の前記第2の方向に関する位置を変化させ、且つ前記第3の方向を中心とした前記移動部材(24,26,28)の傾斜角度を変化させて複数回行い、複数回検出した前記第1の方向に関する前記移動部材(24,26,28)の移動情報と、前記第1の方向に関する前記移動部材(24,26,28)の移動情報を検出したときの前記第2の方向に関する前記移動部材(24,26,28)の位置と、前記第1の方向に関する前記移動部材(24,26,28)の移動情報を検出したときの前記移動部材(24,26,28)の傾斜角度とに基づき、前記第2の方向に関する前記スケール(52,60)の傾き角度を算出し、算出した前記傾き角度に基づき、前記位置センサ(SE,SE1,SE2,SE3)を用いた前記移動部材(24,26,28)の前記第1の方向に関する移動情報を補正することを要旨とする。
【0010】
本発明の移動情報検出プログラムは、スケール(52,60)と、該スケール(52,60)の計測面(54,61)に形成された目盛(55,62)を読み取る読取り部(53)とを備える位置センサ(SE,SE1,SE2,SE3)を用いて、前記計測面(54,61)に沿う第1の方向に関する前記移動部材(24,26,28)の移動情報の検出を制御装置(CONT)に行なわせるための移動情報検出プログラムであって、前記制御装置(CONT)に、前記移動部材(24,26,28)を、前記スケール(52,60)の計測面(54,61)内において前記第1の方向と交差する第2の方向に移動させると共に、前記計測面(54,61)と交差する第3の方向を中心に傾斜させ、前記位置センサ(SE,SE1,SE2,SE3)を用いて前記第1の方向に関する前記移動部材(24,26,28)の移動情報を複数の位置で検出するステップと、前記ステップにおいて複数位置で検出した第1の方向に関する前記移動部材(24,26,28)の移動情報と、前記第1の方向に関する前記移動部材(24,26,28)の移動情報を検出したときの前記第2の方向に関する前記移動部材(24,26,28)の位置と、前記第1の方向に関する前記移動部材(24,26,28)の移動情報を検出したときの前記移動部材(24,26,28)の傾斜角度とに基づき、前記第2の方向に関する前記スケール(52,60)の傾き角度を算出するステップと、前記ステップで算出した前記傾き角度に基づき、前記位置センサ(SE,SE1,SE2,SE3)を用いた前記第1の方向に関する前記移動部材(24,26,28)の移動情報を補正するステップと、を実行させることを要旨とする。
【0011】
本発明の計測装置は、第1の方向に関する移動部材(24,26,28)の移動情報を計測する計測装置であって、前記第1の方向に関する移動部材(24,26,28)の移動情報を検出するための位置センサ(SE,SE1,SE2,SE3)と、前記位置センサ(SE,SE1,SE2,SE3)を用いて前記第1の方向に関する前記移動部材(24,26,28)の移動情報を検出し、該検出結果を補正する制御装置(CONT)と、を備え、前記位置センサ(SE,SE1,SE2,SE3)は、一方向に沿って配置される複数の目盛が形成された計測面(54,61)を有するスケール(52,60)と、前記スケール(52,60)の前記計測面(54,61)に対向して配置され且つ該計測面(54,61)の目盛(55,62)を読み取るための読取り部(53)とを備え、前記スケール(52,60)又は読取り部(53)は、前記移動部材(24,26,28)に設けられており、前記制御装置(CONT)は、前記移動部材(24,26,28)を、前記スケール(52,60)の計測面(54,61)内において前記第1の方向と交差する第2の方向に移動させると共に、前記計測面(54,61)と交差する第3の方向を中心に傾斜させ、前記位置センサ(SE,SE1,SE2,SE3)を用いて前記第1の方向に関する前記移動部材(24,26,28)の移動情報を複数の位置で検出し、前記複数位置で検出した前記第1の方向に関する前記移動部材(24,26,28)の移動情報と、前記第1の方向に関する前記移動部材(24,26,28)の移動情報を検出したときの前記第2の方向に関する前記移動部材(24,26,28)の位置と、前記第1の方向に関する前記移動部材(24,26,28)の移動情報を検出したときの前記移動部材(24,26,28)の傾斜角度とに基づき、前記第2の方向に関する前記スケール(52,60)の傾き角度を算出し、前記算出した前記傾き角度に基づき、前記位置センサ(SE,SE1,SE2,SE3)を用いた前記第1の方向に関する前記移動部材(24,26,28)の移動情報を補正することを特徴とする。
【0012】
一般に、位置センサを用いて検出された第1の方向に関する移動部材(24,26,28)の移動情報には、位置センサのスケールの傾き角度に応じた誤差成分が含まれている。そこで、本発明では、移動部材を第2の方向に移動させると共に、移動部材を第3の方向を中心に傾斜させ、複数位置で位置センサを用いて移動部材の第1の方向に関する移動情報を検出させる。そして、複数位置で検出した第1の方向に関する移動部材(24,26,28)の移動情報と、第1の方向に関する移動部材(24,26,28)の移動情報を検出したときの第2の方向に関する移動部材(24,26,28)の位置と、第1の方向に関する移動部材(24,26,28)の移動情報を検出したときの移動部材(24,26,28)の傾斜角度とに基づき、第2の方向に関するスケール(52,60)の傾き角度を算出させる。そして、算出された傾き角度に基づいて、位置センサを用いて検出された第1の方向に関する移動部材(24,26,28)の移動情報を補正することにより、誤差成分の少ない第1の方向に関する移動部材(24,26,28)の移動情報を得ることが可能となる。
【0013】
なお、本発明をわかりやすく説明するために実施形態を示す図面の符号に対応づけて説明したが、本発明が実施形態に限定されるものではないことは言うまでもない。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、位置センサを用いた移動部材の移動情報の検出精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施形態における露光装置を示す概略構成図。
【図2】レンズ保持装置を模式的に示す斜視図。
【図3】計測装置の電気的構成を示すブロック図。
【図4】レンズを模式的に示す平断面図。
【図5】レンズをZ軸方向及びθx方向に移動させる様子を示す模式図。
【図6】本実施形態の移動情報補正処理を説明するフローチャート。
【図7】レンズのZ軸移動量とY軸移動量との関係を示すグラフ。
【図8】レンズのZ軸移動量と傾斜角度との関係を示すグラフ。
【図9】別の実施形態において、ウエハステージに位置センサのスケールが取り付けられた状態を模式的に示す平面図。
【図10】デバイスの製造例のフローチャート。
【図11】半導体デバイスの場合の基板処理に関する詳細なフローチャート。
【図12】従来において光学部材に位置センサのスケールが傾いて取り付けられた状態を模式的に示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明を具体化した一実施形態について図1〜図8に基づき説明する。なお、本実施形態では、投影光学系の光軸に平行な方向をZ軸方向とし、Z軸方向に垂直な平面内で走査露光時のレチクルR及びウエハWの走査方向をY軸方向とし、その走査方向に直交する非走査方向をX軸方向として説明する。また、X軸、Y軸、Z軸の周りの回転方向をθx方向、θy方向、θz方向ともいう。
【0017】
図1に示すように、本実施形態の露光装置21は、光源装置22から供給された露光光ELを用い、所定の回路パターンが形成されたレチクルRを照明し、該照明によって形成される回路パターンの像をレジストなどの感光性材料が塗布されたウエハWの露光面Waに投影するための装置である。こうした露光装置21は、光源装置22からの露光光ELでレチクルRを照明する照明光学系23と、レチクルRを保持するレチクルステージ24と、該レチクルRを介した露光光ELでウエハWの露光面Wa(感光性材料が塗布されたウエハ表面)を照射する投影光学系25と、ウエハWを保持するウエハステージ26とを備えている。なお、本実施形態の光源装置としては、ArFエキシマレーザ光(波長193nm)を露光光ELとして出力する光源が用いられている。
【0018】
照明光学系23は、図示しないフライアイレンズやロッドレンズなどのオプティカルインテグレータ、リレーレンズ及びコンデンサレンズなどの各種レンズ系、及び図示しない開口絞りなどを含んで構成されている。そして、光源装置22から射出された露光光ELが照明光学系23を通過することにより、レチクルR上には、均一な光強度分布(光輝度分布ともいう。)を有し、且つX軸方向(図1において紙面と直交する方向)に延びる略矩形状の照明領域が形成される。
【0019】
レチクルステージ24は、照明光学系23と投影光学系25との間で、そのレチクルRの載置面が光路と略直交するように配置されている。すなわち、レチクルステージ24は、投影光学系25の物体面側(+Z方向側であって、図1では上側)に配置されている。また、レチクルステージ24には、レチクルRを保持するための図示しないレチクル保持部(例えば、レチクルRを真空吸着するための図示しない真空チャック)が設けられている。こうしたレチクルステージ24は、図示しないレチクルステージ駆動部の駆動によって、Y軸方向(図1において左右方向)に移動可能である。すなわち、レチクルステージ駆動部は、レチクル保持部に保持されるレチクルRをY軸方向に所定ストロークで移動させる。また、レチクルステージ駆動部は、レチクルRをX軸方向及びθz方向にも移動させることが可能である。
【0020】
投影光学系25は、露光光ELでレチクルRを照明することにより形成された回路パターンの像を所定の縮小倍率(例えば1/4倍)に縮小させる光学系であって、略円筒形状の鏡筒27を備えている。この鏡筒27内には、投影光学系25の光軸AX(図4参照)に沿って配置される複数枚(図1では3枚のみ図示)のレンズ28が収容されている。これら各レンズ28は、後述するレンズ保持装置40を介して鏡筒27にそれぞれ支持されている。そして、物体面側であるレチクルR側から導かれた露光光ELは、各レンズ28を介してウエハステージ26に保持されるウエハWの露光面Waに導かれる。
【0021】
ウエハステージ26は、投影光学系25の像面側(−Z方向側であって、図1では下側)において、ウエハWが載置される載置面が露光光ELの光路と略直交するように配置されている。また、ウエハステージ26には、ウエハWを保持するための図示しないウエハ保持部(例えば、ウエハWを真空吸着するための図示しない真空チャック)と、該ウエハ保持部を保持する図示しないウエハホルダと、該ウエハホルダのZ軸方向における位置及びX軸周り、Y軸周りの傾斜角を調整する図示しないZレベリング機構とが組み込まれている。こうしたウエハステージ26は、図示しないウエハステージ駆動部によって、Y軸方向に移動可能である。すなわち、ウエハステージ駆動部は、ウエハ保持部に保持されるウエハWをY軸方向に所定ストロークで移動させる。また、ウエハステージ駆動部は、ウエハ保持部に保持されるウエハWをX軸方向及びZ軸方向にも移動可能に構成されている。
【0022】
そして、ウエハWの一つのショット領域にレチクルRの回路パターンを形成する場合、照明光学系23によって照明領域をレチクルRに形成した状態で、レチクルステージ駆動部の駆動によって、レチクルRをY軸方向(例えば、+Y方向側から−Y方向側)に所定ストローク毎に移動させるとともに、ウエハステージ駆動部の駆動によって、ウエハWをレチクルRのX軸方向に沿った移動に対して投影光学系25の縮小倍率に応じた速度比でY軸方向(例えば、−Y方向側から+Y方向側)に同期して移動させる。そして、一つのショット領域への回路パターンの形成が終了した場合、ウエハWの他のショット領域に対する回路パターンの形成が連続して行われる。
【0023】
次に、各レンズ28のうち最も物体面側に位置するレンズ28を保持するレンズ保持装置40について図2に基づき説明する。なお、他のレンズ28用のレンズ保持装置は、レンズ保持装置40と略同一構成であるため、その説明を省略する。
【0024】
鏡筒27には、その内側に突出する図示しない円環状の支持部(フランジ部)が設けられており、鏡筒27は、支持部を介してレンズ保持装置40を支持している。こうしたレンズ保持装置40は、上記支持部に支持される円環状のアウタリング41を備え、該アウタリング41は、XY平面と略平行な状態で配置されている。また、レンズ保持装置40には、アウタリング41上に配置されるパラレルリンク機構42と、該パラレルリンク機構42に支持される円環状のインナリング43とが設けられており、該インナリング43は、複数(本実施形態では3つ)の保持機構49を介してレンズ28を支持している。そして、パラレルリンク機構42の駆動に伴ってインナリング43の位置が変位することにより、レンズ28のアウタリング41に対する位置及び姿勢のうち少なくとも一方が調整される。
【0025】
パラレルリンク機構42は、インナリング43をアウタリング41に対して、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向、θx方向、θy方向及びθz方向の6自由度方向に移動させるべく駆動する。本実施形態においてパラレルリンク機構42は、インナリング43をアウタリング41に対して、投影光学系25の光軸AXと後述する第2位置センサSE2とを繋ぐ方向に延びる軸(図4では一点鎖線で示す。)を中心とする回転方向、及び投影光学系25の光軸AXと後述する第3位置センサSE3とを繋ぐ方向に延びる軸(図4では一点鎖線で示す。)を中心とする回転方向にも移動させることが可能である(図4参照)。すなわち、パラレルリンク機構42は、2本のリンク44を有するリンク機構45を複数(本実施形態では3つ)備え、該各リンク機構45は、周方向において等間隔にそれぞれ配置されている。
【0026】
各リンク44は、それぞれの長手方向における両端がアウタリング41及びインナリング43に球面対偶をなすようにそれぞれ形成されている。具体的には、各リンク44は、第1軸部材46と、該第1軸部材46に接続又は連結される第2軸部材47とをそれぞれ有している。各第1軸部材46の一端(下端)は、アウタリング41にボールジョイント48を介してそれぞれ取り付けられ、各第2軸部材47の他端(上端)は、インナリング43に図示しないボールジョイントを介してそれぞれ取り付けられている。そして、第1軸部材46及び第2軸部材47の少なくとも一方の各々には、リンク44の長さ、即ち第1軸部材46の一端と第2軸部材47の他端との距離を変更させるべく駆動する図示しないアクチュエータがそれぞれ設けられている。アクチュエータの一例として、リンク44の長手方向に伸縮駆動する圧電素子が挙げられる。そして、各リンク44は、後述する制御装置CONTに基づきアクチュエータが駆動する場合にそれぞれ伸縮動作する。
【0027】
各保持機構49は、各リンク機構45と同一周方向位置であって、且つインナリング43の+Z方向側の面(図3では上面)にそれぞれ配置されている。こうした各保持機構49は、+Z方向側が閉塞すると共に−Z方向側が開口する略逆U字状にそれぞれ形成されている。すなわち、各保持機構49は、Z軸方向に延びる一対の延設部49aと、該両延設部49aの+Z方向側の端部を連結する連結部49bとをそれぞれ有している。
【0028】
また、本実施形態の露光装置21には、各レンズ28のXY平面での移動情報を個別に検出する計測装置50が設けられている。この計測装置50は、図3及び図4に示すように、各レンズ28のXY平面での移動情報を検出するためのXY位置センサ51と、該XY位置センサ51からの検出信号に基づき各レンズ28のXY平面での移動情報を算出し、該算出結果に基づき各レンズ保持装置40を制御する制御装置CONTとを備えている。なお、本実施形態において、レンズ28の移動情報には、レンズ28の移動量(X軸方向への移動量、Y軸方向への移動量)に関する情報及び各レンズ28の位置に関する情報のうち少なくとも一方が含まれている。
【0029】
XY位置センサ51には、投影光学系25の光軸AXを中心とする周方向において等間隔に配置される複数(本実施形態では3つ)の位置センサSE(SE1,SE2,SE3)が設けられている。これら各位置センサSEは、磁気式又は光学式のセンサであって、レンズ28において露光光ELが入射しない部分(本実施形態では、レンズ28の側面)にそれぞれ固定されるスケール52と、鏡筒27の内壁に固定され且つスケール52に対向して配置される読取り部53とをそれぞれ有している。これら各読取り部53は、制御装置CONTにそれぞれ電気的に接続されている。なお、図3では、明細書の説明理解の便宜上、レンズ保持装置40の図示を省略している。
【0030】
図5に示すように、スケール52は、図示しない螺子などによってレンズ28に取り付けられている。こうしたスケール52は、平面状の計測面54を備えており、該計測面54には、一方向に沿ってほぼ等間隔に配置される複数の目盛55が形成されている。これら各目盛55は、計測面54内において上記一方向とほぼ直交する方向にそれぞれ延びている。また、読取り部53は、対応するスケール52の目盛55を読取り可能に構成されており、読取り結果に応じた情報(検出情報ともいう。)を制御装置CONTに出力する。
【0031】
制御装置CONTは、図3に示すように、図示しないCPU、ROM、RAM及び不揮発性のメモリなどから構築されるデジタルコンピュータと、各レンズ保持装置40を駆動させるためのドライバ回路とを備えている。こうした制御装置CONTは、ハードウェア及びソフトウェアのうち少なくとも一方によりそれぞれ実現される機能部分として、補正情報記憶部56、レンズ位置算出部57及びレンズ位置制御部58を有している。
【0032】
補正情報記憶部56には、位置センサSEのスケール52のレンズ28への取り付け方に起因して生じる検出誤差を補正するための補正情報(詳しくは、後述するスケール52の傾き角度)が記憶される。
【0033】
レンズ位置算出部57は、XY位置センサ51(即ち、各位置センサSE1,SE2,SE3)からの検出情報に基づきレンズ28のXY平面(即ち、Z軸方向と直交する方向)での移動情報を算出し、該移動情報をレンズ位置制御部58に出力する。また、レンズ位置算出部57は、鏡筒27へのレンズ28の取り付け時や露光装置21のメンテナンス時などに、スケール52の傾き角度を算出する移動情報補正処理を行なう。なお、この移動情報補正処理については、後述する。
【0034】
レンズ位置制御部58は、レンズ位置算出部57から入力されたレンズ28の位置情報に基づき、レンズ保持装置40を個別に制御する。また、レンズ位置制御部58は、レンズ28を移動させた場合にはその移動量に関する情報(レンズ28のZ軸方向への移動量(又はZ軸方向における位置)など)をレンズ位置算出部57に出力する。すなわち、レンズ位置制御部58は、レンズ28を+Z方向側に1μm移動させる場合には、所望する移動量(この場合、+Z方向側に1μm)に応じたパラレルリンク機構42の各リンク44の伸縮量を個別に設定し、該各リンク44のアクチュエータを駆動させる。同様に、レンズ位置制御部58は、レンズ28を+θx方向側に1°傾斜させる場合には、所望する移動量(この場合、+θx方向側に1°)に応じたパラレルリンク機構42の各リンク44の伸縮量を個別に設定し、該各リンク44のアクチュエータを駆動させる。
【0035】
そして、レンズ28がX軸方向に沿って移動した場合、各位置センサSE1,SE2,SE3のうち、第1位置センサSE1は、スケール52と読取り部53とがX軸方向に沿って配置されているため、レンズ28のX軸方向における移動を検出できない。一方、第2位置センサSE2及び第3位置センサSE3は、レンズ28のX軸方向における移動を検出でき、各位置センサSE2,SE3の読取り部53からは、それらによる読取り結果に応じた検出情報が制御装置CONTにそれぞれ出力される。また、レンズ28がY軸方向に沿って移動した場合、第1位置センサSE1の読取り部53からは、レンズ28のY軸方向への移動量に応じた検出情報が制御装置CONTに出力される。一方、第2位置センサSE2及び第3位置センサSE3の読取り部53からは、それらによる読取り結果に応じた検出情報が制御装置CONTにそれぞれ出力される。
【0036】
ところで、図5に示すように、第1位置センサSE1のスケール52を、該スケール52の一方向(各目盛55が並ぶ方向)をY軸方向と完全に一致させるようにレンズ28に取り付けることは、困難である。そのため、第1の方向(この場合、Y軸方向)と直交する第2の方向(この場合、Z軸方向)に延びる基準線L1(図5では一点鎖線で示す。)に対するスケール52の傾き角度θの絶対値は、0(零)よりも大きくなる。そこで、本実施形態では、スケール52の傾き角度θを算出すると共に、該算出結果に応じた補正量を算出する移動情報補正処理が実行される。なお、図5では、スケール52の傾き角度θが誇張されている。
【0037】
次に、本実施形態の移動情報補正処理について、図5に示す模式図、図6に示すフローチャート及び図7、図8に示す各グラフに基づき説明する。ここでは、最も物体面側に位置するレンズ28の第1位置センサSE1に対する移動情報補正処理について説明する。なお、他の位置センサSEに対する移動情報補正処理は、最も物体面側に位置するレンズ28の位置センサSE1に対する移動情報補正処理と略同一内容であるため、それらの詳細な説明を省略する。
【0038】
さて、移動情報補正処理において、ステップS10では、レンズ位置制御部58は、レンズ28を+Z方向側及び−Z方向側に移動させることが可能であって、且つレンズ28をX軸方向に沿う軸線S1を中心とする+θx方向及び−θx方向に移動させることが可能な位置に移動させる(図5参照)。そして、レンズ28の移動が完了すると、レンズ位置制御部58は、移動完了の旨をレンズ位置算出部57に出力する。すると、レンズ位置算出部57は、現時点のレンズ28の位置を基準位置に設定する。なお、図5では、実線で示されたレンズ28の位置が基準位置とする。
【0039】
続いて、ステップS11において、レンズ位置制御部58は、レンズ28を基準位置から移動させると共に、レンズ位置算出部57は、複数位置でのレンズ28のY軸方向への移動量(以下、Y軸移動量ともいう。)dを、第1位置センサSE1を用いて検出する。具体的には、レンズ位置制御部58は、レンズ28のZ軸方向における移動量(以下、Z軸移動量ともいう。)Zdを、第1移動量(=−γ)、第2移動量(=−β)、第3移動量(=−α)、第4移動量(=0(零))、第5移動量(=α)、第6移動量(=β(>α))及び第7移動量(=γ(>β))に設定する。なお、第5移動量、第6移動量及び第7移動量は、それぞれ正の値であるものとする。また、レンズ位置制御部58は、レンズ28のθx方向における傾斜角度Tsを、第1傾斜角(=−T3)、第2傾斜角(=−T2)、第3傾斜角(=−T1)、第4傾斜角(=0(零))、第5傾斜角(=T1)、第6傾斜角(=T2(>T1))及び第7傾斜角(=T3(>T2))に設定する。なお、第5傾斜角、第6傾斜角及び第7傾斜角は、それぞれ正の値であるものとする。
【0040】
すなわち、レンズ位置制御部58は、レンズ28を合計49の位置に移動(変位)することができる。ちなみに、Z軸移動量Zdが第4移動量であって且つ傾斜角度Tsが第4傾斜角となる場合、レンズ28は、基準位置に位置している。
【0041】
そして、レンズ位置算出部57は、Z軸移動量Zdが第1移動量であって且つ傾斜角度Tsが第1傾斜角となる位置にレンズ28が位置する場合、第1位置センサSE1からの検出信号に基づきレンズ28のY軸移動量dを算出する。続いて、レンズ位置算出部57は、Z軸移動量Zdが第2移動量であって且つ傾斜角度Tsが第2傾斜角となる位置にレンズ28が位置する場合、第1位置センサSE1からの検出信号に基づきレンズ28のY軸移動量dを算出する。このように、レンズ位置算出部57は、複数位置(この場合、49位置)にレンズ28を配置した場合における該レンズ28のY軸移動量dを、第1位置センサSE1からの検出信号に基づき算出する。
【0042】
続いて、ステップS12において、レンズ位置算出部57は、ステップS11での算出結果に基づき、軸線S1からレンズ28の基準位置までの基準距離をピポタル径PRとして算出する。本実施形態のレンズ保持装置40は、レンズ28をθx方向、即ち軸線S1を中心とする周方向に移動させることはできるが、このときの軸線S1の位置は、レンズ保持装置40の個体毎に微妙に異なる。そのため、ピポタル径PRは、レンズ28をレンズ保持装置40によって移動させた際の実測値を用いないことには正確に求めることができない。
【0043】
そこで、本実施形態では、以下に示す方法でピポタル径PRを算出する。すなわち、レンズ位置算出部57は、Y軸移動量d、該Y軸移動量dを検出したときのレンズ28のZ軸移動量Zd、及び該Y軸移動量dを検出したときのレンズ28の傾斜角度Tsを以下に示す関係式(式1)に代入し、ピポタル径算出値dRを求める。ここでは、レンズ位置算出部57は、レンズ28を複数位置(この場合、全49位置)に配置した場合のピポタル径算出値dRを個別に算出する。
【0044】
d=(dR+Zd)×sin(Ts) ・・・(式1)
ここで、レンズ28の位置毎に検出されるY軸移動量dの各々には、スケール52の傾き角度θに応じた検出誤差がそれぞれ含まれている。そのため、こうした各Y軸移動量dを用いて算出された各ピポタル径算出値dRには、当然、誤差成分がそれぞれ含まれている。ここで、レンズ28のZ軸移動量Zdが第1移動量であって且つ傾斜角度Tsが第4傾斜角である場合に算出されるピポタル径算出値dR(=dR1)は、理論上、以下に示す関係式(式2)で示すことができる。また、レンズ28のZ軸移動量Zdが第7移動量であって且つ傾斜角度Tsが第4傾斜角である場合に算出されるピポタル径算出値dR(=dR2)は、以下に示す関係式(式3)で示すことができる。また、レンズ28のZ軸移動量Zdが第4移動量であって且つ傾斜角度Tsが第1傾斜角である場合に算出されるピポタル径算出値dR(=dR3)は、以下に示す関係式(式4)で示すことができる。また、レンズ28のZ軸移動量Zdが第4移動量であって且つ傾斜角度Tsが第7傾斜角である場合に算出されるピポタル径算出値dR(=dR4)は、以下に示す関係式(式5)で示すことができる。
【0045】
dR1=PR+A ・・・(式2)
dR2=PR−A ・・・(式3)
dR3=PR+B ・・・(式4)
dR4=PR−B ・・・(式5)
ただし、PR…実際のピポタル径、A,B…Z軸移動量Zd及び傾き角度θに応じた誤差量
すなわち、各ピポタル径算出値dRは、実際のピポタル径PRと、基準位置を基準としたレンズ28のZ軸移動量Zd及び基準位置を基準としたレンズ28の傾斜角度Tsとに基づいた誤差量(A,B)とをそれぞれ含んで算出される。また、上述したように、第1移動量の絶対値は、第7移動量の絶対値と同一であると共に、第2移動量の絶対値は、第6移動量の絶対値と同一であり、さらに、第3移動量の絶対値は、第5移動量の絶対値と同一である。また、第1傾斜角の絶対値は、第7傾斜角の絶対値と同一であると共に、第2傾斜角の絶対値は、第6傾斜角の絶対値と同一であり、さらに、第3傾斜角の絶対値は、第5傾斜角の絶対値と同一である。そこで、レンズ位置算出部57は、各ピポタル径算出値dRの平均値を算出し、該平均値をスケール52の傾き角度θに対応した誤差量が大幅に取り除かれたピポタル径PRとする。
【0046】
なお、関係式(式2)〜(式4)は理論値であって、実際の各ピポタル径算出値dRには、実際のピポタル径PR及び傾き角度θに応じた検出誤差だけではなく、レンズ保持装置40によるレンズ28のZ軸方向への移動精度及びθx方向への移動精度に応じた誤差などがそれぞれ含まれる。しかし、本実施形態では、説明理解の便宜上、レンズ保持装置40によるレンズ28の移動精度に応じた誤差はないものとする。
【0047】
続いて、ステップS13において、レンズ位置算出部57は、ステップS12で算出したピポタル径PRを用いて、スケール52の傾き角度θを算出する。すなわち、図7は、第1位置センサSE1を用いて検出されたY軸移動量dと、レンズ28のZ軸移動量Zdとの関係を示すグラフである。図7に示すように、傾斜角度Tsが第4傾斜角である場合には、各Z軸移動量Zdに個別対応するY軸移動量dを示す各プロットがほぼ一直線に並ぶ。また、傾斜角度Tsが第1傾斜角である場合もまた、各Z軸移動量Zdに個別対応するY軸移動量dを示す各プロットがほぼ一直線に並ぶ。また、傾斜角度Tsが第7傾斜角である場合もまた、各Z軸移動量Zdに個別対応するY軸移動量dを示す各プロットがほぼ一直線に並ぶ。しかも、各Z軸移動量Zdに個別対応するY軸移動量dを示す各プロットが並ぶ各直線の傾きは、傾斜角度Tsが小さいほど小さくなっている。なお、図7では、明細書の説明理解の便宜上、傾斜角度Tsが第2傾斜角及び第5傾斜角である場合のプロット及び直線を省略している。
【0048】
ここで、もし仮にスケール52の傾き角度θが0(零)であるとすると、傾斜角度Tsが第4傾斜角である場合の直線の傾きは、ほぼ0(零)になるはずである。また、スケール52の傾き角度θの正負の符号が本実施形態の場合とは逆の場合、傾斜角度Tsの符号が正である場合の直線の傾きのほうが、傾斜角度Tsの符号が負である場合の直線の傾きよりも小さくなる。
【0049】
つまり、上記直線の傾きが0(零)又は0(零)に限りなく近くなるような傾斜角度Tsを求めることにより、スケール52の傾き角度θを得ることができる。そこで、レンズ位置算出部57は、レンズ28のZ軸移動量Zdが第1移動量である場合の各Y軸移動量dと該各Y軸移動量dに個別対応する各傾斜角度Tsに基づき、Y軸移動量dが0(零)となる傾斜角度Tsを求める。また、レンズ位置算出部57は、レンズ28のZ軸方向におけるZ軸移動量Zdが第2移動量である場合の各Y軸移動量dと該各Y軸移動量dに個別対応する各傾斜角度Tsに基づき、Y軸移動量dが0(零)となる傾斜角度Tsを求める。すなわち、レンズ位置算出部57は、レンズ28のZ軸移動量Zd毎に、Y軸移動量dが0(零)となる傾斜角度Tsを求める。なお、図8には、レンズ28のZ軸方向におけるZ軸移動量Zdと、Y軸移動量dが0(零)となる傾斜角度Tsとの関係が示されている。
【0050】
そして、レンズ位置算出部57は、レンズ28のZ軸移動量Zdと求めた傾斜角度Tsとに基づき、図8において実線の直線で示す一次関数を導出する。この一次関数は、公知の近似方法(一例として、最小二乗法)を用いて導出される。続いて、レンズ位置算出部57は、導出した一次関数を用い、レンズ28のZ軸移動量Zdが0(零)となるときの傾斜角度Ts(以下、算出角度ともいう。)を算出する。この算出角度は、レンズ28の傾斜角度Tsが算出角度となるようにレンズ28をθx方向に移動させた状態で該レンズ28をZ軸方向に移動させた場合に、第1位置センサSE1を用いて検出するY軸移動量dがほぼ0(零)となる角度である。すなわち、傾斜角度Tsが算出角度である場合、スケール52の目盛55が並ぶ一方向は、Y軸方向とほぼ一致する。したがって、レンズ位置算出部57は、上記算出角度をスケール52の傾き角度θとし、該傾き角度θを補正情報記憶部56に記憶させ、その後、移動情報補正処理を終了する。
【0051】
次に、算出した傾き角度θを用いて、第1位置センサSE1からの検出信号に基づき検出されたY軸移動量dの補正方法を説明する。
さて、レンズ28の移動方向に、Z軸方向への移動成分が含まれている場合、レンズ位置算出部57は、レンズ28のZ軸方向へのZ軸移動量Zdを、レンズ位置制御部58からの信号に基づき取得する。そして、レンズ位置算出部57は、検出したレンズ28のZ軸移動量Zdと、補正情報記憶部56に記憶されている傾き角度θとを、以下に示す関係式(式6)に代入し、補正量Esを算出する。
【0052】
Es=Zd×sin(θ) ・・・(式6)
続いて、レンズ位置算出部57は、第1位置センサSE1の読取り部53から入力された検出信号に基づき、レンズ28の補正前のY軸移動量dを検出する。そして、レンズ位置算出部57は、検出した補正前のY軸移動量dから補正量Esを減算し、該減算結果を補正後のY軸移動量dとする。
【0053】
その後、このように算出された補正後のY軸移動量dに基づき、レンズ位置制御部58は、必要に応じてレンズ保持装置40の駆動を制御する。
したがって、本実施形態では、以下に示す効果を得ることができる。
【0054】
(1)第1位置センサSE1を用いて検出されたY軸方向に関するレンズ28のY軸移動量d(即ち、補正前のY軸移動量)には、第1位置センサSE1のスケール52の傾き角度θに応じた誤差成分が含まれている。そこで、本実施形態では、レンズ28をZ軸方向に移動させると共に、レンズ28をθx方向に移動させ、複数位置で第1位置センサSE1を用いてレンズ28のY軸移動量dを検出する。そして、複数位置で検出したレンズ28のY軸移動量dと、該Y軸移動量dを検出したときのレンズ28のZ軸移動量Zdと、該Y軸移動量dを検出したときのレンズ28の傾斜角度Tsとに基づき、スケール52の傾き角度θを算出する。そして、算出した傾き角度θに基づいて、第1位置センサSE1を用いて検出されたレンズ28のY軸移動量dを補正することにより、誤差成分の少ないY軸移動量d(即ち、補正後のY軸移動量d)を得ることができる。したがって、第1位置センサSE1を用いてレンズ28のY軸移動量dの検出精度を向上させることができる。
【0055】
(2)また、本実施形態では、第2位置センサSE2及び第3位置センサSE3に関しても、第1位置センサSE1の場合と同様な方法で、それらのスケール52の傾き角度θが算出される。そして、該算出された傾き角度に基づき、第2位置センサSE2及び第3位置センサSE3を用いて検出されるレンズ28の移動量が補正される。その結果、レンズ28のXY平面に沿う方向における移動情報を、正確に取得することができる。したがって、レンズ28のXY平面での位置をより正確に調整することができ、投影光学系25の光学特性を向上させることができる。
【0056】
(3)本実施形態のステップS11において、レンズ28のZ軸方向における複数の位置は、基準位置を挟んで対象な位置にそれぞれ配置されている。同様に、レンズ28の各傾斜角度Tsは、基準位置を挟んで対象な位置にそれぞれ設定されている。そのため、複数の位置での各値に基づき算出した各ピポタル径算出値dRの平均値を算出することにより、スケール52の傾き角度θに起因した誤差成分の大部分がキャンセルされたピポタル径PRを求めることができる。すなわち、ピポタル径PRを容易に求めることができる。
【0057】
なお、上記実施形態は以下のような別の実施形態に変更してもよい。
・実施形態において、一つの位置センサSEに対して、移動情報補正処理を複数回(例えば3回)行なってもよい。このように移動情報補正処理を複数回実行することにより、スケール52の傾き角度θに応じた誤差量をより小さくすることができ、ひいてはレンズ28の位置検出精度をさらに向上させることができる。
【0058】
・実施形態において、レンズ28のZ軸方向への移動量を検出するための位置センサを設け、該位置センサからの検出信号に基づきレンズ28のZ軸移動量Zdを検出してもよい。なお、こうした位置センサは、スケールと読取り部とを有する光学式又は磁気式のセンサであってもよいし、静電容量センサであってもよい。
【0059】
同様に、レンズ28の傾斜角度Tsを検出するための位置センサを設け、該位置センサからの検出信号に基づきレンズ28の傾斜角度Tsを検出してもよい。
・本発明を、ウエハWやレチクルRを保持するステージの移動情報を検出するための計測装置に具体化してもよい。図9に示すように、ウエハW(図9では二点鎖線で示す。)を保持するウエハステージ26には、ウエハステージ26のY軸方向に関するY軸移動量を検出するための位置センサSEのスケール60が設けられている。このスケール60の計測面61には、一方向に沿って配置される複数の目盛62が形成されている。また、露光装置21には、ウエハステージ26をY軸方向、X軸方向及びθz方向に移動させるための図示しないウエハステージ駆動部と、ウエハステージ26のX軸方向に関する位置(又は移動量)を検出するための位置センサと、ウエハステージ26のθz方向における傾斜角を検出するための位置センサとが設けられている。
【0060】
そして、位置センサSEを用いて検出したウエハステージ26のY軸方向に関する移動量を補正する場合には、上記実施形態と同様に、位置センサSEのスケール60のウエハステージ26に対する傾き角度θを算出させる。このとき、ウエハステージ26をZ軸方向へ移動させたり、θz方向に移動させたりする。こうした補正処理を行なうことにより、ウエハステージ26の移動情報を正確に取得することができ、ひいてはウエハステージ26に保持されるウエハWの各ショット領域に、適切な位置にパターンを形成させることができる。
【0061】
・実施形態では、ステップS13において、1次の近似式を用いて傾き角度θを算出しているが、2次以上の近似式を用いて傾き角度θを算出してもよい。また、レンズ28のZ軸移動量Zd毎に求められた、Y軸移動量dが0(零)となる各傾斜角度Tsの平均値を算出し、該算出結果を傾き角度θとしてもよい。
【0062】
・実施形態において、位置センサSEは、光学式のリニアエンコーダであってもよい。
・実施形態において、位置センサSEは、スケール52を鏡筒27側に取り付け、レンズ28に読取り部53を取り付けた構成でもよい。この場合であっても、上記実施形態と同等の効果を得ることができる。
【0063】
・実施形態において、照明光学系23が備えるレンズのうち少なくとも一つのレンズに、位置センサSEを設けてもよい。そして、位置センサSEを用いてレンズの移動情報を検出させてもよい。
【0064】
・実施形態において、露光装置21は、半導体素子などのマイクロデバイスだけでなく、光露光装置、EUV露光装置、X線露光装置、及び電子線露光装置などで使用されるレチクルまたはマスクを製造するために、マザーレチクルからガラス基板やシリコンウエハなどへ回路パターンを転写する露光装置であってもよい。また、露光装置21は、液晶表示素子(LCD)などを含むディスプレイの製造に用いられてデバイスパターンをガラスプレート上へ転写する露光装置、薄膜磁気ヘッド等の製造に用いられて、デバイスパターンをセラミックウエハ等へ転写する露光装置、及びCCD等の撮像素子の製造に用いられる露光装置などであってもよい。
【0065】
・実施形態において、光源装置22は、例えばg線(436nm)、i線(365nm)、KrFエキシマレーザ(248nm)、F2レーザ(157nm)、Kr2レーザ(146nm)、Ar2レーザ(126nm)等を供給可能な光源であってもよい。また、光源装置22は、DFB半導体レーザまたはファイバレーザから発振される赤外域、または可視域の単一波長レーザ光を、例えばエルビウム(またはエルビウムとイッテルビウムの双方)がドープされたファイバアンプで増幅し、非線形光学結晶を用いて紫外光に波長変換した高調波を供給可能な光源であってもよい。
【0066】
・実施形態において、光源装置22は、波長が100nm程度以下の軟X線領域である極端紫外光、即ちEUV(Extreme Ultraviolet )光を供給可能な光源であってもよい。この場合、光学系23,25が備える光学部材は、反射型のミラーとなる。こうしたミラーの移動情報を、上記実施形態の計測装置50で計測してもよい。
【0067】
・実施形態において、投影光学系25とウエハWとの間の光路中を1.1よりも大きな屈折率を有する媒体(典型的には液体)で満たす手法、所謂液浸法を適用してもよい。この場合、投影光学系25とウエハWとの間の光路中に液体を満たす手法としては、国際公開番号WO99/49504号公報に開示されているような局所的に液体を満たす手法や、特開平6−124873号公報に開示されているような露光対象のウエハWを保持したステージを液槽の中で移動させる手法や、特開平10−303114号公報に開示されているようなステージ上に所定深さの液体槽を形成し、その中に基板を保持する手法などを採用することができる。
【0068】
・実施形態において、露光装置21を、可変パターン生成器(例えば、DMD(Digital Mirror Device又はDigital Micro-mirror Device))を用いたマスクレス露光装置に具体化してもよい。このようなマスクレス露光装置は、例えば特開2004−304135号公報、国際特許公開第2006/080285号パンフレット及びこれに対応する米国特許公開第2007/0296936号公報に開示されている。
【0069】
・実施形態において、露光装置21を、ステップ・アンド・リピート方式の装置に具体化してもよい。
・本発明の計測装置を、露光装置以外の他の装置に設けてもよい。ただし、他の装置には、移動部材と、少なくとも第1の方向、該第1の方向と交差する第2の方向、第1及び第2の各方向と交差する方向に延びる軸線を中心とした回転方向に移動部材を移動させることが可能な機構とを設けてもよい。また、また、他の装置には、移動部材の第2の方向に関する位置及び上記回転方向における傾斜角度を検出可能なセンサを設けてもよい。この場合であっても、移動部材に取り付けられたスケールの傾き角度θを算出し、位置センサを用いて検出された移動部材の第1の方向に関する移動量を、傾き角度θに応じた補正を行なうことにより、移動部材の第1の方向に関する移動量を正確に検出することができる。
【0070】
次に、本発明の実施形態の露光装置21によるデバイスの製造方法をリソグラフィ工程で使用したマイクロデバイスの製造方法の実施形態について説明する。図10は、マイクロデバイス(ICやLSI等の半導体チップ、液晶パネル、CCD、薄膜磁気ヘッド、マイクロマシン等)の製造例のフローチャートを示す図である。
【0071】
まず、ステップS101(設計ステップ)において、マイクロデバイスの機能・性能設計(例えば、半導体デバイスの回路設計等)を行い、その機能を実現するためのパターン設計を行う。引き続き、ステップS102(マスク製作ステップ)において、設計した回路パターンを形成したマスク(レチクルRなど)を製作する。一方、ステップS103(基板製造ステップ)において、シリコン、ガラス、セラミックス等の材料を用いて基板(シリコン材料を用いた場合にはウエハWとなる。)を製造する。
【0072】
次に、ステップS104(基板処理ステップ)において、ステップS101〜ステップS104で用意したマスクと基板を使用して、後述するように、リソグラフィ技術等によって基板上に実際の回路等を形成する。次いで、ステップS105(デバイス組立ステップ)において、ステップS104で処理された基板を用いてデバイス組立を行う。このステップS105には、ダイシング工程、ボンティング工程、及びパッケージング工程(チップ封入)等の工程が必要に応じて含まれる。最後に、ステップS106(検査ステップ)において、ステップS105で作製されたマイクロデバイスの動作確認テスト、耐久性テスト等の検査を行う。こうした工程を経た後にマイクロデバイスが完成し、これが出荷される。
【0073】
図11は、半導体デバイスの場合におけるステップS104の詳細工程の一例を示す図である。
ステップS111(酸化ステップ)においては、基板の表面を酸化させる。ステップS112(CVDステップ)においては、基板表面に絶縁膜を形成する。ステップS113(電極形成ステップ)においては、基板上に電極を蒸着によって形成する。ステップS114(イオン打込みステップ)においては、基板にイオンを打ち込む。以上のステップS111〜ステップS114のそれぞれは、基板処理の各段階の前処理工程を構成しており、各段階において必要な処理に応じて選択されて実行される。
【0074】
基板プロセスの各段階において、上述の前処理工程が終了すると、以下のようにして後処理工程が実行される。この後処理工程では、まず、ステップS115(レジスト形成ステップ)において、基板に感光性材料を塗布する。引き続き、ステップS116(露光ステップ)において、上で説明したリソグラフィシステム(露光装置21)によってマスクの回路パターンを基板に転写する。次に、ステップS117(現像ステップ)において、ステップS116にて露光された基板を現像して、基板の表面に回路パターンからなるマスク層を形成する。さらに続いて、ステップS118(エッチングステップ)において、レジストが残存している部分以外の部分の露出部材をエッチングにより取り去る。そして、ステップS119(レジスト除去ステップ)において、エッチングが済んで不要となった感光性材料を取り除く。すなわち、ステップS118及びステップS119において、マスク層を介して基板の表面を加工する。これらの前処理工程と後処理工程とを繰り返し行うことによって、基板上に多重に回路パターンが形成される。
【符号の説明】
【0075】
21…露光装置、23…照明光学系、24…移動部材、マスク保持装置としてのレチクルステージ、25…投影光学系、26…移動部材、基板保持装置としてのウエハステージ、28…移動部材、光学部材としてのレンズ、27…支持部材としての鏡筒、40…レンズ保持装置、50…計測装置、52,60…スケール、53…読取り部、54,61…計測面、55,62…目盛、AX…光軸、CONT…制御装置、R…マスクとしてのレチクル、S1…軸線、SE,SE1〜SE3…位置センサ、W…基板としてのウエハ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スケールと、該スケールの計測面に形成された目盛を読み取る読取り部とを備える位置センサを用いて、前記計測面に沿う第1の方向に関する移動部材の移動情報を検出する移動情報検出方法であって、
前記移動部材を、前記スケールの計測面内において前記第1の方向と交差する第2の方向に移動させると共に、前記計測面と交差する第3の方向を中心に傾斜させ、前記位置センサを用いて前記第1の方向に関する前記移動部材の移動情報を検出し、
前記第1の方向に関する前記移動部材の移動情報の検出を、前記移動部材の前記第2の方向に関する位置を変化させ、且つ前記第3の方向を中心とした前記移動部材の傾斜角度を変化させて複数回行い、
複数回検出した前記第1の方向に関する前記移動部材の移動情報と、前記第1の方向に関する前記移動部材の移動情報を検出したときの前記第2の方向に関する前記移動部材の位置と、前記第1の方向に関する前記移動部材の移動情報を検出したときの前記移動部材の傾斜角度とに基づき、前記第2の方向に関する前記スケールの傾き角度を算出し、
算出した前記傾き角度に基づき、前記位置センサを用いた前記移動部材の前記第1の方向に関する移動情報を補正することを特徴とする移動情報検出方法。
【請求項2】
前記移動部材の移動情報は、前記移動部材の移動量を含んでおり、
前記第2の方向に関する前記移動部材の位置を変位させたときに、前記位置センサを用いて検出される前記第1の方向に関する前記移動部材の移動量が0(零)になる又は0(零)に近づく前記移動部材の傾斜角度を補正用傾斜角度として求め、
前記補正用傾斜角度に基づき前記傾き角度を算出することを特徴とする請求項1に記載の移動情報検出方法。
【請求項3】
前記移動部材の基準位置を設定すると共に、前記第3の方向に延びる軸線を設定し、前記移動部材は、前記軸線を中心とする周方向に移動可能であり、
前記軸線から前記移動部材の基準位置までの基準距離の算出値(dR)を、前記位置センサを用いて検出した前記第1方向に関する前記移動部材の移動量(d)、前記第2方向に関する前記移動部材の位置(Zd)及び傾斜角度(Ts)を次式に代入して算出し、
d=(dR+Zd)×sin(Ts)
前記移動部材を複数の位置に配置した際の前記第2の方向に関する前記移動部材の位置(Zd)、傾斜角度(Ts)及び前記第1の方向に関する前記移動部材の移動量(d)に基づき算出された位置毎の基準距離の算出値(dR)に基づいて、前記軸線から前記移動部材の基準位置までの基準距離を求め、
前記第2方向に関する位置の異なる複数の位置に前記移動部材を配置した場合の補正用傾斜角度を、前記求めた基準距離に基づき位置毎に求め、
前記求めた複数の補正用傾斜角度に基づき前記傾き角度を算出することを特徴とする請求項2に記載の移動情報検出方法。
【請求項4】
前記移動部材が前記第1の方向に移動する共に前記第2の方向に移動した場合には、
補正量(Es)を、次式に前記傾き角度(Ta)及び前記第2方向に関する前記移動部材の位置(Zd)を代入して算出し、
Es=sin(Ta)×Zd
前記位置センサを用いて検出された前記第1の方向に関する前記移動部材の移動量から前記補正量(Es)を除くことにより、前記第1の方向に関する補正後の前記移動部材の移動量を算出することを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の移動情報検出方法。
【請求項5】
スケールと、該スケールの計測面に形成された目盛を読み取る読取り部とを備える位置センサを用いて、前記計測面に沿う第1の方向に関する移動部材の移動情報の検出を制御装置に行なわせるための移動情報検出プログラムであって、
前記制御装置に、
前記移動部材を、前記スケールの計測面内において前記第1の方向と交差する第2の方向に移動させると共に、前記計測面と交差する第3の方向を中心に傾斜させ、前記位置センサを用いて前記第1の方向に関する前記移動部材の移動情報を複数の位置で検出するステップと、
前記ステップにおいて複数位置で検出した第1の方向に関する前記移動部材の移動情報と、前記第1の方向に関する前記移動部材の移動情報を検出したときの前記第2の方向に関する前記移動部材の位置と、前記第1の方向に関する前記移動部材の移動情報を検出したときの前記移動部材の傾斜角度とに基づき、前記第2の方向に関する前記スケールの傾き角度を算出するステップと、
前記ステップで算出した前記傾き角度に基づき、前記位置センサを用いた前記第1の方向に関する前記移動部材の移動情報を補正するステップと、を実行させることを特徴とする移動情報検出プログラム。
【請求項6】
第1の方向に関する移動部材の移動情報を計測する計測装置であって、
前記第1の方向に関する移動部材の移動情報を検出するための位置センサと、
前記位置センサを用いて前記第1の方向に関する前記移動部材の移動情報を検出し、該検出結果を補正する制御装置と、を備え、
前記位置センサは、一方向に沿って配置される複数の目盛が形成された計測面を有するスケールと、前記スケールの前記計測面に対向して配置され且つ該計測面の目盛を読み取るための読取り部とを備え、前記スケール又は読取り部は、前記移動部材に設けられており、
前記制御装置は、
前記移動部材を、前記スケールの計測面内において前記第1の方向と交差する第2の方向に移動させると共に、前記計測面と交差する第3の方向を中心に傾斜させ、前記位置センサを用いて前記第1の方向に関する前記移動部材の移動情報を複数の位置で検出し、
前記複数位置で検出した前記第1の方向に関する前記移動部材の移動情報と、前記第1の方向に関する前記移動部材の移動情報を検出したときの前記第2の方向に関する前記移動部材の位置と、前記第1の方向に関する前記移動部材の移動情報を検出したときの前記移動部材の傾斜角度とに基づき、前記第2の方向に関する前記スケールの傾き角度を算出し、
前記算出した前記傾き角度に基づき、前記位置センサを用いた前記第1の方向に関する前記移動部材の移動情報を補正することを特徴とする計測装置。
【請求項7】
前記移動部材の移動情報は、前記移動部材の移動量を含んでおり、
前記制御装置は、
前記移動部材を前記第2の方向に移動させたときに、前記位置センサを用いて検出される前記第1の方向に関する前記移動部材の移動量が0(零)になる又は0(零)に近づく前記移動部材の傾斜角度を補正用傾斜角度として求め、
前記補正用傾斜角度に基づき前記傾き角度を算出することを特徴とする請求項6に記載の計測装置。
【請求項8】
前記移動部材には基準位置が設定されると共に、前記第3の方向に延びる軸線が設定され、前記移動部材は、前記軸線を中心とする周方向に移動可能であり、
前記制御装置は、
前記軸線から前記移動部材の基準位置までの基準距離の算出値(dR)を、前記位置センサを用いて検出された前記第1方向に関する前記移動部材の移動量(d)、前記第2方向に関する前記移動部材の位置(Zd)及び傾斜角度(Ts)を次式に代入して算出し、
d=(dR+Zd)×sin(Ts)
前記移動部材を複数の位置に配置した際の前記第2の方向に関する前記移動部材の位置(Zd)、傾斜角度(Ts)及び第1の方向に関する前記移動部材の移動量(d)に基づき算出された位置毎の基準距離の算出値(dR)に基づいて、前記軸線から前記移動部材の基準位置までの基準距離を求め、
前記第2方向に関する位置の異なる複数の位置に前記移動部材を配置した場合の補正用傾斜角度を、前記求めた基準距離に基づき位置毎に求め、
前記求めた複数の補正用傾斜角度に基づき前記傾き角度を算出することを特徴とする請求項7に記載の計測装置。
【請求項9】
前記制御装置は、
前記移動部材が前記第1の方向に移動する共に前記第2の方向に移動した場合には、
補正量(Es)を、次式に前記傾き角度(Ta)及び前記第2方向に関する前記移動部材の位置(Zd)を代入して算出し、
Es=sin(Ta)×Zd
前記位置センサを用いて検出された前記第1の方向に関する前記移動部材の移動量から前記補正量(Es)を除くことにより、前記第1の方向に関する補正後の前記移動部材の移動量を算出することを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の計測装置。
【請求項10】
光学部材と、
前記光学部材を、保持装置を介して支持する支持部材と、
請求項6〜請求項9のうち何れか一項に記載の計測装置と、を備え、
前記スケール及び読取り部の何れか一方は、前記光学部材における放射ビームの入射領域外に配置され、前記スケール及び読取り部の何れか他方は、前記支持部材側に設けられていることを特徴とする光学系。
【請求項11】
前記光学系の光軸を中心とした周方向において互いに異なる位置に、複数の前記位置センサをそれぞれ配置し、
前記制御装置は、前記複数の位置センサを用いて、前記光学部材の光軸と略直交する面内における移動情報を計測することを特徴とする請求項10に記載の光学系。
【請求項12】
前記保持装置は、前記光学部材を、前記支持部材に対して相対的に、前記第2の方向及び前記軸線を中心とした周方向を少なくとも含む複数方向に移動させるべく駆動することを特徴とする請求項10又は請求項11に記載の光学系。
【請求項13】
所定のパターンを放射ビームで照明する照明光学系と、
前記パターンを介した放射ビームを、感光性材料が塗布された基板に照射する投影光学系と、を備え、
前記照明光学系及び投影光学系の少なくとも一方は、請求項10〜請求項12のうち何れか一項に記載の光学系で構成されることを特徴とする露光装置。
【請求項14】
所定のパターンが形成されたマスクを放射ビームで照明する照明光学系と、
前記マスクを保持するマスク保持装置と、
前記マスクを介した放射ビームを感光性材料が塗布された基板に照射する投影光学系と、
前記基板を保持する基板保持装置と、
請求項6〜請求項9のうち何れか一項に記載の計測装置と、を備え、
前記スケール及び読取り部の何れか一方は、前記マスク保持装置及び基板保持装置の少なくとも一方に設けられていることを特徴とする露光装置。
【請求項15】
リソグラフィ工程を含むデバイスの製造方法において、
前記リソグラフィ工程は、請求項13又は請求項14に記載の露光装置を用いることを特徴とするデバイスの製造方法。
【請求項1】
スケールと、該スケールの計測面に形成された目盛を読み取る読取り部とを備える位置センサを用いて、前記計測面に沿う第1の方向に関する移動部材の移動情報を検出する移動情報検出方法であって、
前記移動部材を、前記スケールの計測面内において前記第1の方向と交差する第2の方向に移動させると共に、前記計測面と交差する第3の方向を中心に傾斜させ、前記位置センサを用いて前記第1の方向に関する前記移動部材の移動情報を検出し、
前記第1の方向に関する前記移動部材の移動情報の検出を、前記移動部材の前記第2の方向に関する位置を変化させ、且つ前記第3の方向を中心とした前記移動部材の傾斜角度を変化させて複数回行い、
複数回検出した前記第1の方向に関する前記移動部材の移動情報と、前記第1の方向に関する前記移動部材の移動情報を検出したときの前記第2の方向に関する前記移動部材の位置と、前記第1の方向に関する前記移動部材の移動情報を検出したときの前記移動部材の傾斜角度とに基づき、前記第2の方向に関する前記スケールの傾き角度を算出し、
算出した前記傾き角度に基づき、前記位置センサを用いた前記移動部材の前記第1の方向に関する移動情報を補正することを特徴とする移動情報検出方法。
【請求項2】
前記移動部材の移動情報は、前記移動部材の移動量を含んでおり、
前記第2の方向に関する前記移動部材の位置を変位させたときに、前記位置センサを用いて検出される前記第1の方向に関する前記移動部材の移動量が0(零)になる又は0(零)に近づく前記移動部材の傾斜角度を補正用傾斜角度として求め、
前記補正用傾斜角度に基づき前記傾き角度を算出することを特徴とする請求項1に記載の移動情報検出方法。
【請求項3】
前記移動部材の基準位置を設定すると共に、前記第3の方向に延びる軸線を設定し、前記移動部材は、前記軸線を中心とする周方向に移動可能であり、
前記軸線から前記移動部材の基準位置までの基準距離の算出値(dR)を、前記位置センサを用いて検出した前記第1方向に関する前記移動部材の移動量(d)、前記第2方向に関する前記移動部材の位置(Zd)及び傾斜角度(Ts)を次式に代入して算出し、
d=(dR+Zd)×sin(Ts)
前記移動部材を複数の位置に配置した際の前記第2の方向に関する前記移動部材の位置(Zd)、傾斜角度(Ts)及び前記第1の方向に関する前記移動部材の移動量(d)に基づき算出された位置毎の基準距離の算出値(dR)に基づいて、前記軸線から前記移動部材の基準位置までの基準距離を求め、
前記第2方向に関する位置の異なる複数の位置に前記移動部材を配置した場合の補正用傾斜角度を、前記求めた基準距離に基づき位置毎に求め、
前記求めた複数の補正用傾斜角度に基づき前記傾き角度を算出することを特徴とする請求項2に記載の移動情報検出方法。
【請求項4】
前記移動部材が前記第1の方向に移動する共に前記第2の方向に移動した場合には、
補正量(Es)を、次式に前記傾き角度(Ta)及び前記第2方向に関する前記移動部材の位置(Zd)を代入して算出し、
Es=sin(Ta)×Zd
前記位置センサを用いて検出された前記第1の方向に関する前記移動部材の移動量から前記補正量(Es)を除くことにより、前記第1の方向に関する補正後の前記移動部材の移動量を算出することを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の移動情報検出方法。
【請求項5】
スケールと、該スケールの計測面に形成された目盛を読み取る読取り部とを備える位置センサを用いて、前記計測面に沿う第1の方向に関する移動部材の移動情報の検出を制御装置に行なわせるための移動情報検出プログラムであって、
前記制御装置に、
前記移動部材を、前記スケールの計測面内において前記第1の方向と交差する第2の方向に移動させると共に、前記計測面と交差する第3の方向を中心に傾斜させ、前記位置センサを用いて前記第1の方向に関する前記移動部材の移動情報を複数の位置で検出するステップと、
前記ステップにおいて複数位置で検出した第1の方向に関する前記移動部材の移動情報と、前記第1の方向に関する前記移動部材の移動情報を検出したときの前記第2の方向に関する前記移動部材の位置と、前記第1の方向に関する前記移動部材の移動情報を検出したときの前記移動部材の傾斜角度とに基づき、前記第2の方向に関する前記スケールの傾き角度を算出するステップと、
前記ステップで算出した前記傾き角度に基づき、前記位置センサを用いた前記第1の方向に関する前記移動部材の移動情報を補正するステップと、を実行させることを特徴とする移動情報検出プログラム。
【請求項6】
第1の方向に関する移動部材の移動情報を計測する計測装置であって、
前記第1の方向に関する移動部材の移動情報を検出するための位置センサと、
前記位置センサを用いて前記第1の方向に関する前記移動部材の移動情報を検出し、該検出結果を補正する制御装置と、を備え、
前記位置センサは、一方向に沿って配置される複数の目盛が形成された計測面を有するスケールと、前記スケールの前記計測面に対向して配置され且つ該計測面の目盛を読み取るための読取り部とを備え、前記スケール又は読取り部は、前記移動部材に設けられており、
前記制御装置は、
前記移動部材を、前記スケールの計測面内において前記第1の方向と交差する第2の方向に移動させると共に、前記計測面と交差する第3の方向を中心に傾斜させ、前記位置センサを用いて前記第1の方向に関する前記移動部材の移動情報を複数の位置で検出し、
前記複数位置で検出した前記第1の方向に関する前記移動部材の移動情報と、前記第1の方向に関する前記移動部材の移動情報を検出したときの前記第2の方向に関する前記移動部材の位置と、前記第1の方向に関する前記移動部材の移動情報を検出したときの前記移動部材の傾斜角度とに基づき、前記第2の方向に関する前記スケールの傾き角度を算出し、
前記算出した前記傾き角度に基づき、前記位置センサを用いた前記第1の方向に関する前記移動部材の移動情報を補正することを特徴とする計測装置。
【請求項7】
前記移動部材の移動情報は、前記移動部材の移動量を含んでおり、
前記制御装置は、
前記移動部材を前記第2の方向に移動させたときに、前記位置センサを用いて検出される前記第1の方向に関する前記移動部材の移動量が0(零)になる又は0(零)に近づく前記移動部材の傾斜角度を補正用傾斜角度として求め、
前記補正用傾斜角度に基づき前記傾き角度を算出することを特徴とする請求項6に記載の計測装置。
【請求項8】
前記移動部材には基準位置が設定されると共に、前記第3の方向に延びる軸線が設定され、前記移動部材は、前記軸線を中心とする周方向に移動可能であり、
前記制御装置は、
前記軸線から前記移動部材の基準位置までの基準距離の算出値(dR)を、前記位置センサを用いて検出された前記第1方向に関する前記移動部材の移動量(d)、前記第2方向に関する前記移動部材の位置(Zd)及び傾斜角度(Ts)を次式に代入して算出し、
d=(dR+Zd)×sin(Ts)
前記移動部材を複数の位置に配置した際の前記第2の方向に関する前記移動部材の位置(Zd)、傾斜角度(Ts)及び第1の方向に関する前記移動部材の移動量(d)に基づき算出された位置毎の基準距離の算出値(dR)に基づいて、前記軸線から前記移動部材の基準位置までの基準距離を求め、
前記第2方向に関する位置の異なる複数の位置に前記移動部材を配置した場合の補正用傾斜角度を、前記求めた基準距離に基づき位置毎に求め、
前記求めた複数の補正用傾斜角度に基づき前記傾き角度を算出することを特徴とする請求項7に記載の計測装置。
【請求項9】
前記制御装置は、
前記移動部材が前記第1の方向に移動する共に前記第2の方向に移動した場合には、
補正量(Es)を、次式に前記傾き角度(Ta)及び前記第2方向に関する前記移動部材の位置(Zd)を代入して算出し、
Es=sin(Ta)×Zd
前記位置センサを用いて検出された前記第1の方向に関する前記移動部材の移動量から前記補正量(Es)を除くことにより、前記第1の方向に関する補正後の前記移動部材の移動量を算出することを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の計測装置。
【請求項10】
光学部材と、
前記光学部材を、保持装置を介して支持する支持部材と、
請求項6〜請求項9のうち何れか一項に記載の計測装置と、を備え、
前記スケール及び読取り部の何れか一方は、前記光学部材における放射ビームの入射領域外に配置され、前記スケール及び読取り部の何れか他方は、前記支持部材側に設けられていることを特徴とする光学系。
【請求項11】
前記光学系の光軸を中心とした周方向において互いに異なる位置に、複数の前記位置センサをそれぞれ配置し、
前記制御装置は、前記複数の位置センサを用いて、前記光学部材の光軸と略直交する面内における移動情報を計測することを特徴とする請求項10に記載の光学系。
【請求項12】
前記保持装置は、前記光学部材を、前記支持部材に対して相対的に、前記第2の方向及び前記軸線を中心とした周方向を少なくとも含む複数方向に移動させるべく駆動することを特徴とする請求項10又は請求項11に記載の光学系。
【請求項13】
所定のパターンを放射ビームで照明する照明光学系と、
前記パターンを介した放射ビームを、感光性材料が塗布された基板に照射する投影光学系と、を備え、
前記照明光学系及び投影光学系の少なくとも一方は、請求項10〜請求項12のうち何れか一項に記載の光学系で構成されることを特徴とする露光装置。
【請求項14】
所定のパターンが形成されたマスクを放射ビームで照明する照明光学系と、
前記マスクを保持するマスク保持装置と、
前記マスクを介した放射ビームを感光性材料が塗布された基板に照射する投影光学系と、
前記基板を保持する基板保持装置と、
請求項6〜請求項9のうち何れか一項に記載の計測装置と、を備え、
前記スケール及び読取り部の何れか一方は、前記マスク保持装置及び基板保持装置の少なくとも一方に設けられていることを特徴とする露光装置。
【請求項15】
リソグラフィ工程を含むデバイスの製造方法において、
前記リソグラフィ工程は、請求項13又は請求項14に記載の露光装置を用いることを特徴とするデバイスの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−159861(P2011−159861A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−21273(P2010−21273)
【出願日】平成22年2月2日(2010.2.2)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月2日(2010.2.2)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】
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