説明

移送ロボットの制御方法

【課題】本発明は、比較的小さな設置面積に配置でき、上下への昇降範囲が広くできるとともに、安全にワークを移送することが可能な移送ロボットを提供する。
【解決手段】搬送物を載置するハンド部14と、前記ハンド部14を一方向に移動させる水平アーム機構30と、前記水平アーム機構30を上下に移動する昇降機構20を備えた移送ロボットにおいて、前記昇降機構20が、ベース部材2に備えられた少なくとも2組のリンク機構から構成され、2組のリンク機構の第2関節部6が互いに内側になるように動作させながら、ハンド部14のローリング方向、横ずれ動作、ヨーイング方向の動作を行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶用のガラス基板や半導体ウェハ等の薄板状のワークをストッカに出し入れする移送ロボットおよびその移送方法と制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の移送ロボットとしては、脚部を屈曲伸縮させて上下動し、上部に配置されたアームによりワークを移送するものが提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
従来の第1の移送ロボットは、図7に示すようにハンド部材180を紙面と直交する水平方向(X方向:同図中に符号不記入)に移動自在とするハンド部材動作機構108と、このハンド部材動作機構108の全体を移動させるためのリンク機構109とを有している。リンク機構109は、ベース部材190に一端部が連結部193aを介して回転自在に連結された第1のアーム191と、この第1のアーム191の他端部に連結部193bを介して連結された第2のアーム192とを具備しており、かつこの第2のアーム192の他端部には、ハンド部材動作機構108のベース部181が連結部193cを介して回転可能に連結された構造を有している。
しかしながら、従来の第1の移送ロボットでは、できる限り広い領域においてハンド部材移動可能とし、かつハンド部材を水平および垂直方向に直線的に移動できるようにすることが要請される場合が多いが、第1および第2のアーム191,192を回転させることによってワークをY方向 (図7の紙面に直交する方向)およびZ方向に直線的に移動
させ得る範囲が比較的狭くなっていた。
これを解決するために、第2の従来例が発案されている。図8を用いて第2の従来例について説明する。第2の従来例は、ベース部材1と、リンク機構2と、2つのハンド部材230(230A,230B)を有するハンド部材動作機構203とを具備して構成されている。ベース部材201は、一定の高さを有するボックス状に形成されており、たとえばフロアに固定して設けられている。ただし、後述するように、このベース部材201をY方向に移動自在に設けることもできる。りンク機構202は、第1および第2のアーム221,222と、中間アーム223と、第1ないし第4の連結部224a〜224dとを具備して構成されている。第1ないし第4の連結部224a〜224dのそれぞれの軸心C1〜C4は、いずれもX方向に延びている。第1のアーム21の一端部は、第1の連結部224aを介してベース部材1の一側面の上部に連結されており、軸心C1周りに回転自在である。軸心C1から第1のアーム221の他端部先端までの長さLaは、フロアから軸心C1までの高さHaよりも短い寸法とされている。このことにより、第1のアーム221は軸心C1の全周囲にわたって回転自在となっている。中間アーム223は、たとえば第1のアーム221と略同一長さである。この中間アーム223は、その一端部が第3の連結部224cを介して第1のアーム221の他端部に連結されていることにより、第1のアーム221に対して軸心C3周りに相対回転自在である。第2のアーム222は、たとえば第1のアーム221や中間アーム223よりも短くされており、その一端部が第4の連結部224dを介して中間アーム223の他端部に連結されていることにより、中間アーム223に対して軸心C4周りに相対回転自在である。第2のアーム222の他端部は、ハンド部材動作機構203のベース部231に第2の連結部224bを介して連結されている。このため、ハンド部材動作機構203は、第2のアーム222に対して軸心C2周りに相対回転自在となっている。
また、第3の従来例について図9を用いて説明する。第3の従来例は、昇降装置310は、複数のポスト321,322を有するベースユニット312と、ワークを支持するワーク支持ユニット313と、一端がベースユニット312のポスト321,322に連結されかつ他端がワーク支持ユニット313に連結される屈伸型の複数のアームユニット341,342,343,344を有する昇降機構314とを備える。ワーク上昇時に、ワ
ーク支持ユニット313が複数のポスト321,322よりも高い位置に配され、ワーク下降時に、ワーク支持ユニット13の少なくとも一部が複数のポスト321,322の間に配される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−238779号公報(第4頁、図2)
【特許文献2】特開2002−210684号公報(第6頁、図2)
【特許文献3】特開2006−176276号公報(第4頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
保管するストッカには天井に届くほどの高さから床面近くまでに液晶用のガラス基板や半導体ウェハ等の薄板状のワークが一定の間隔を持って積み重ねられ保管されている。このようなストッカが移送ロボットの前後または左右に配置されている。これに対応するために移送ロボットは、大型化するとともに長ストロークの昇降機構と旋回機構を備える必要がある。このように構成されたストッカおよび移送ロボットは、相対的にワークの取り出し方向に対してローリング方向に傾いて取り付けられるケースが、大型化することで増えてきている。そうすると、ワークを移送ロボットのハンドで受け取るときにストッカに対して傾いた状態になるためにワークを受け取った際にワークが位置ずれを起こし、搬送先で所定の位置に配置できないなどの問題が生じるために、ローリング方向の補正機能が必要とされてきている。また、ストッカ内のワークの配置についても、ワークは正確な位置にあるとは限らない。たとえば、ワークの取り出し方向に対してヨーイング方向に傾いていたり、横方向にスライドしたりしている場合がある。搬送先で所定の位置に配置するために補正する機能が必要とされてきている。これまでは、これら補正をするために、別途補正機構を備えていたが、装置が複雑化することや設置面積が大きくなるといった問題が生じていた。
また、保管されるワークも大型化されることで重量が重くなり、これを移送する移送ロボットは剛性を高める必要があるとともに、万が一、昇降機構が故障した際にワークが落下して損傷することを防止する安全策を備えることが要求されてきている。また、年々、基板の生産数は増えるためにスループットを速くすることが、基板が大型化しても要求されている。
さらに、このようなワークを移送するシステムの環境は周囲のクリーン度を保つ設備を必要としており、大型化する移送ロボットについてもフットプリントを小さくすることが要求されている。
しかしながら、従来の第1の移送ロボットは、第1および第2のアームを回転させることによってワークを水平方向および垂直方向に直線的に移動させ得るが、垂直方向に関して、ベース部材と干渉するためにベース部材より下面には物理的に下降することができないために昇降範囲が狭くなっていた。また、ストッカ内のワークの位置ずれを補正する手段がないために補正できない問題が生じていた。このような補正する機構を備えると構造が大きくなったり、複雑になるといった問題が生じることになり、適用が困難となっていた。
また、従来の第2の移送ロボットでは、3リンク構成にすることにより可動範囲を広くすることができるようになったが、リンクを駆動する駆動機構が故障した場合、ワークの落下を防止する機構を備えていないので、高価なワークを損傷する問題が生じしていた。また、水平方向に垂直方向の位置を維持したまま移動することができることにより、ストッカ内のワークの横ずれを補正することはできるかもしれないが、補正するのに必要なセンサを備えていないために補正することができない。その他のローリング方向やヨーインク方向の補正することができないために所定の位置に搬送することができないといった問題が生じていた。
また、従来の第3の移送ロボットでは、4本のリンク機構によりワーク搬送部を支持して昇降することから、何れか1本のリンク機構の駆動機構に故障が生じても、ワークを落下させることなく、安全な位置へワークを移送することができる可能性がある。しかしな
がら、従来の第3の移送ロボットは、リンク機構が外向きに屈曲するために下降位置では大きな設置面を必要とすることになり、フットプリントが小さくならないといった問題が生じていた。また、ワークの取り出し方向に対してピッチング方向に傾かせることができるもののローリング方向、ヨーイング方向や横ずれを補正する機構が備えられていないために所定の位置への位置決めができないといった問題が生じていた。
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、比較的小さな設置面積に配置でき、上下への昇降範囲が広くできるとともに、安全にワークを移送でき、移送する際に所定の位置へ位置決め可能なように傾き補正が可能な移送ロボットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記問題を解決するため、本発明は、次のように構成したものである。
請求項1に記載の発明は、搬送物を載置するハンド部と、前記ハンド部を回動可能に支持する第2アームと、前記第2アームを回転可能に支持する第1アームと、を少なくとも備え、前記ハンド部が一方向に移動するように前記アームが回転する水平アーム機構と、
ベースの片側に片側第1関節部で回動可能に支持された片側第1脚部と、前記片側第1脚部に片側第2関節部で回動可能に支持され前記水平アーム機構を支持する片側第2脚部と、を備えた第1リンク機構と、前記ベースの他方側に他方側第1関節部で回動可能に支持された他方側第1脚部と、前記他方側第1脚部に他方側第2関節部で回動可能に支持され前記水平アーム機構を支持する他方側第2脚部と、を備えた第2リンク機構と、を備え、前記片側第1関節部と前記他方側第1関節部と前記片側第2関節部と前記他方側第2関節部のそれぞれの回転軸の方向と前記ハンド部の移動方向とが平行になるよう配置され、 前記ハンド部の移動方向から見て、前記片側第2関節部と前記他方側第2関節部が前記第1リンク機構と前記第2リンク機構の内側に互いに張り出すように前記片側第1脚部と前記他方側第1脚部が互いに逆方向に回転しながら、前記ハンド部を前記片側第1関節部と前記他方側第1関節部との間で上下に移動させうる昇降機構と、を備えた移送ロボットの制御方法であって、前記ハンド部の移動方向のローリング方向の傾きを変えるように、あるいは、前記ハンド部が水平状態を維持したまま前記ハンド部の移動方向に対して横ずれ動作するように、前記片側第1脚部と前記他方側第1脚部を前記片側第1関節部と前記他方側第1関節部においてそれぞれ互いに異なる角度量を回転させ、前記片側第2脚部と前記他方側第2脚部を前記片側第2関節部と前記他方側第2関節部においてそれぞれ互いに異なる角度量を回転させること、を特徴とするものである。
請求項2に記載の発明は、搬送物を載置するハンド部と、前記ハンド部を回動可能に支持する第2アームと、前記第2アームを回転可能に支持する第1アームと、を少なくとも備え、前記ハンド部が一方向に移動するように前記アームが回転する水平アーム機構と、 ベースの片側に片側第1関節部で回動可能に支持された片側第1脚部と、前記片側第1脚部に片側第2関節部で回動可能に支持され前記水平アーム機構を支持する片側第2脚部と、を備えた第1リンク機構と、前記ベースの他方側に他方側第1関節部で回動可能に支持された他方側第1脚部と、前記他方側第1脚部に他方側第2関節部で回動可能に支持され前記水平アーム機構を支持する他方側第2脚部と、を備えた第2リンク機構と、を備え、前記片側第1関節部と前記他方側第1関節部と前記片側第2関節部と前記他方側第2関節部のそれぞれの回転軸の方向と前記ハンド部の移動方向とが平行になるよう配置され、 前記ハンド部の移動方向から見て、前記片側第2関節部と前記他方側第2関節部が前記第1リンク機構と前記第2リンク機構の内側に互いに張り出すように前記片側第1脚部と前記他方側第1脚部が互いに逆方向に回転しながら、前記ハンド部を前記片側第1関節部と前記他方側第1関節部との間で上下に移動させうる昇降機構と、前記ベースを鉛直軸回りに旋回させる旋回機構と、を備えた移送ロボットの制御方法であって、前記ハンド部の移動方向のヨーイング方向の方向を変えるように前記旋回機構によって前記ベースを旋回させること、を特徴とする移送ロボットの制御方法を特徴とするものである。
請求項3に記載の発明は、前記ハンド部の前記ローリング方向の傾きの変更を、前記ハンド部の移動方向に対する前記搬送物の載置場所の傾きに応じて行なうこと、を特徴とするものである。
請求項4に記載の発明は、前記ハンド部の前記横ずれ動作を、前記ハンド部の移動方向に対する前記搬送物の載置場所の横ずれ量に応じて行なうこと、を特徴とするものである。
請求項5に記載の発明は、前記ハンド部の前記ヨーイング方向の方向の変更を、前記ハンド部の移動方向に対する前記搬送物の載置場所の方向のずれ量に応じて行なうこと、を特徴とするものである。
請求項6に記載の発明は、前記水平アーム機構が、前記第1アームを回動可能に支持するとともに前記片側第2脚部と前記他方側第2脚部とに回動可能に支持される支持ベースと、前記支持ベースに設けられた第1のセンサと、を備え、前記ハンド部が前記支持ベースの上側に引き込まれたときに前記第1のセンサによって前記搬送物の前記ハンド部の移動方向に対する横ずれ量を検出し、前記検出した搬送物の横ずれ量に応じて前記ハンド部の前記横ずれ動作を行なうこと、を特徴とするものである。
請求項7に記載の発明は、前記ハンド部に第2のセンサを設け、前記第2のセンサによって前記ハンド部に載置された前記搬送物の前記ハンド部に対する角度ずれを検出し、 前記搬送物の前記ハンド部に対する角度ずれに応じて前記ハンド部の前記ヨーイング方向の方向の変更を行なうこと、を特徴とするものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によると、昇降機構が少なくとも2つのリンク機構から構成され、リンク機構が脚部支持部材の内側を旋回することで水平アーム機構を昇降させ、水平アーム機構が最下降位置に位置した際には脚部支持部材の内側に配置されるように構成されたことで、昇降範囲を広くすることができる。また、少なくとも2つのリンク機構から構成されていることで、万が一、1つのリンク機構が故障して駆動力が発生できなくなったとしても、他方のリンク機構により駆動力を得ることができることから水平アーム機構が落下することを防止し、ワークの損傷を防止する2重化した安全機構を提供している。さらに、水平アーム機構が脚部支持部材の内側に配置され、リンク機構も脚部支持部材よりも外側に大きく飛び出さないような位置に旋回して水平アーム機構が最下降位置に位置するように形成されるので、リンク機構が外側に飛び出るような屈曲構造ではないので、比較的小さな設置面積に配置することが可能であり、フットプリントを小さくすることができる。
また、本発明によると、ハンド移動方向に関して同軸上に第1水平関節を配置し、一方向に伸縮するアームによりハンドを移動させることにより、ストッカからのワークの出し入れが、2つのハンドを用いることにより高速化することができる。すなわちスループットを向上することができる。
また、本発明によると、2組のリンク機構からなる昇降機構に備えられた少なくとも2つの回転関節を備えることにより、水平アーム機構をハンドの移動方向に関してローリング方向および左右方向の何れか一つの方向に移動できることから、移送ロボットとストッカの相対的な位置ずれを移送ロボットの動作により補正できるので、従来あったロボットのように補正機構を必要とせずに済み、装置を複雑化することなく、設置面積が小さいまま補正することが可能となる。
また、本発明によると、2組のリンク機構からなる昇降機構に備えられた少なくとも2つの回転関節を備えるとともに、移送ロボットの旋回軸を利用して、水平アーム機構をハンドの移動方向に関してローリング方向、ヨーング方向および左右方向の搬送物がハンドに載置された際の搬送物の位置ずれを補正することができるので、ストッカ内の搬送物の配置に関わらず、搬送物を所定の位置で搬送先に移送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の実施例を示す移送ロボットの斜視図
【図2】本発明の実施例の水平アーム機構が最上昇位置へ移動した場合を示す斜視図
【図3】本発明の実施例の水平アーム機構が最下降位置へ移動した場合を示す斜視図
【図4】本発明のローリングずれを補正する昇降機構の動作を示す模式図
【図5】本発明の横ずれを補正する昇降機構の動作を示す模式図
【図6】ハンド上のワークのずれを補正するフローチャート
【図7】第1の従来の移送ロボットを示す正面図
【図8】第2の従来の移送ロボットを示す正面図
【図9】第3の従来の移送ロボットを示す正面図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
【実施例1】
【0009】
図1は、本発明の移送ロボットの斜視図である。
本発明の移送ロボットは、図示しないストッカに配置されたワークを取り出し、作業エ
リアへ移送するために、旋回機構17、昇降機構20および水平アーム機構30から構成されている。
本発明が特許文献1から3と異なる部分は、旋回機能を有し、昇降機構がダブルレッグ機構からなりハンド部が昇降機構の間に下降する部分である。
旋回機構17は、台座1に取り付けられたベース2の略中心に旋回軸が配置されるように設置されている。また、ベース2の両端には脚部支持部材3a、3bが設置されている。
【0010】
昇降機構20は、脚部支持部材3a、3bに備えられた不図示の駆動部が第1関節部4a、4bに備えられ、第1脚部5a、5bの一端が連結され、第1脚部5a、5bの他端は不図示の駆動部が備えられた第2関節部6a、6bで第2脚部7a、7bの一端と連結される。第2脚部7a、7bの他端は、支持ベース8に回動可能に連結されている。第1脚部5a、5bは、水平アーム機構30の最下降位置への移動をより低くできるように脚部支持部材3a、3bよりも長く形成されている。第2脚部7a、7bの長さは、水平アーム機構30が最下降位置へ移動した際に、第1脚部5a、5bの側面が脚部支持部材3a、3bの側面から大きく飛び出さないように決められており、第1脚部5a、5bの長さよりも短い長さで形成されている。
【0011】
次に、水平アーム機構30について説明する。水平アーム機構30は、2つのハンド14a、14bを不図示のワークをストッカから出し入れするように移動させるダブルリンク機構から構成されている。支持ベース8に備えられた不図示の駆動機構を備えた第1水平関節部9aで第1アーム10aの一端と連結され、第1アーム10aの他端は、第2水平関節部11aで第2アーム12aの一端と連結される。第2アーム12aの他端は、第3水平関節部13aで第1ハンド14aと連結されている。
また、支持ベース8には、支持部材16を備えた支柱15が取り付けられており、支持部材に備えられた不図示の駆動機構を備えた第1水平関節部9bで第1アーム10bの一端と連結され、第1アーム10bの他端は、第2水平関節部11bで第2アーム12bの一端と連結される。第2アーム12bの他端は、第3水平関節部13bで第1ハンド14bと連結されている。第1アーム10a、10bと第2アーム12a、12bは互いに対向し、対面構造を形成している。また、第1水平関節部9a、9bは、本実施例では同軸上に配置されている。しかしながら、ハンド14a、14bの移動方向に関して互いにオフセットした構成としても第1アーム10a、10bと第2アーム12a、12bのアーム長を変更することで本実施例と同じ動作が可能である。また、第1水平関節部9a、9bは、第3水平関節部13a、13bは、ハンド14a、14bの移動方向に関して同軸上に配置されている。
また、第1水平関節部9a、9bの回転軸は、本実施例では旋回機構17の旋回軸よりも前方にオフセットしており、旋回機構17との干渉しないように配置されている。しかしながら、ハンド14a、14bの移動方向に関して前後にオフセットした構成としても第1アーム10a、10bと第2アーム12a、12bのアーム長を変更することで本実施例と同じ動作が可能である。
【0012】
次に、動作について説明する。はじめに昇降機構の動作について図2および3を用いて説明する。図2は昇降機構20が最上昇位置に移動した場合であり、図3は昇降機構20が最下降位置に移動した場合を示している。一方の昇降機構について説明し、他方の動作は面対称であるので説明を省略する。
図1および図2を用いて最上昇位置へ移動する場合について説明する。第1関節部4aおよび第2関節部6aの不図示のモータ等からなる駆動機構が駆動され、ハンド14aの移動方向正面から見て第1脚部5aは反時計回りに第1関節部4aを中心に旋回し、第2脚部7aは時計回りに第2関節部6aを中心に旋回して水平アーム機構30を最上昇位置に移動させる。
また、図1および図3を用いて最下降位置へ移動する場合について説明する。第1関節部4aおよび第2関節部6aの不図示のモータ等からなる駆動機構が駆動され、ハンド14aの移動方向正面から見て第1脚部5aは時計回りに第1関節部4aを中心に旋回し、第2脚部7aは反時計回りに第2関節部6aを中心に旋回して水平アーム機構30を下降させ、第1脚部5aがベース2面と同じ高さになった場合、さらに第1脚部5aは時計回りに第1関節部4aを中心に旋回して、第1脚部5aの側面が脚部支持部材3aの側面から大きく飛び出さない程度まで旋回させ、第2脚部7aは時計回りに第2関節部6aを中心に旋回して最上昇位置に移動させる。
最下降位置に水平アーム機構30が移動した場合、水平アーム機構30は、昇降機構20の間に配置される。このようにすることで、不図示のストッカの最下位置のワークを支持ベース8に取り付けられたハンド14aにより取り出すことが可能となる。
また、一方の昇降機構20が故障しても他方の昇降機構20で駆動できるので水平アーム機構は落下することなく、安全な最下位置への移動が可能であり、ワークを損傷することがない。
旋回領域は、旋回機構17を中心に脚部支持部材3a、3b側面までの長さが旋回半径となっており、比較的小さな設置面積を可能とする。
【0013】
次に、図4を用いてハンドの移動方向に関してローリンク方向にストッカが傾いて設置された場合の昇降機構の補正動作について説明する。図4はワークをストッカへ移送する方向から見た昇降機構の部分の模式図である。
ストッカが設置された場合にある傾きθをもって設置された場合は、第1脚部5aを水平維持状態から角度θ時計回りに第1関節部4aを回転させ、第2脚部7aを水平維持状態から角度θ反時計回りに第2関節部6aを回転させる。また、第1脚部5bを水平維持状態から角度θ反時計回りに第1関節部4bを回転させ、第2脚部7bを水平維持状態から角度θ時計回りに第2関節部6bを回転させる。そうすることで、支持ベース8は、水平状態から角度θ傾いた状態に保持され、支持ベース8上に配置された不図示の水平アーム機構が水平状態から角度θ傾いた状態に保持される。
このような傾きを補正する動作としては、たとえば、ワークをストッカから取り出し、移送する動作を移送ロボットに操作者が教示する際にティーチングペンダントによる手動動作で行われ、一旦、教示されればプレーバック動作により同じ軌道で移送ロボットは動作する。
【0014】
次に、ハンドの移動方向に関してヨーイング方向にストッカが傾いて設置された場合の補正動作について説明する。このような傾きを補正する動作としては、たとえば、ワークをストッカから取り出し、移送する動作を移送ロボットに操作者が教示する際にティーチングペンダントによる手動動作で行われる。その際に補正動作する軸は、図4に記載されている旋回機構17により所定の角度に調整される。一旦、教示されればプレーバック動作により同じ軌道で移送ロボットは動作する。
【0015】
次に、図5を用いてハンドの移動方向に関してストッカが左に横ずれして設置された場合の昇降機構の補正動作について説明する。図5はワークをストッカへ移送する方向から見た昇降機構の部分の模式図である。
ストッカが設置された場合に横ずれして設置された場合は、第1脚部5aを水平維持状態から角度θ反時計回りに第1関節部4aを回転させ、第2脚部7aを水平維持状態から角度θ時計回りに第2関節部6aを回転させる。また、第1脚部5bを水平維持状態から角度θ時計回りに第1関節部4bを回転させ、第2脚部7bを水平維持状態から角度θ時計回りに第2関節部6bを回転させる。そうすることで、支持ベース8は、水平状態を維持したまま左右に移動することができ、支持ベース8上に配置された不図示の水平アーム機構が水平状態を維持したまま、左右方向に移動できる。
【0016】
ストッカが傾いていたり、横ずれしていたりした場合について説明したが、ストッカ内でワークが傾いたり、横ずれしていたりする場合も想定される。ワークが傾くケースであるが、ワークの移送方向に関してローリングしている場合は考える必要はなく、ヨーイング方向に関してのみ考慮すればよい。つまり、ローリング方向に傾きを持っているとするとストッカの配置面が傾いていることが考えられるが、ストッカ内は精度良く製作されているので、ローリング方向の傾きは生じにくいと考えられるためである。
図6のフローチャートを用いて、ヨーイング方向の傾きの補正と横ずれについて説明する。
(1)ロボットハンド上にワークを載置する。
(2)ハンドに備えられた図示しない2つのセンサの相対角度から角度ずれを検出する。(3)ステップ2で検出された角度ずれは、旋回機構の回転角度に変換されて角度補正される。
(4)ロボットハンドに載置したガラス基板を引き込んだ場合に、支持ベースおよび支持部材に搭載した不図示の距離検出センサで横ずれを検出する。
(5)横ずれが生じていれば、各関節の回転角度に横ずれ量を変換することで位置補正する。
(6)角度および位置補正した姿勢を維持したまま、作業領域へ移動する。
以上のステップを行うことにより、ワークをハンドに載置した際のヨーイングずれおよび横ずれを補正することができる。
【0017】
次に、水平アーム機構30の動作について図1をもとに説明する。第1アーム10a、10bの一端と支持ベース8および支持部材16が連結され、第1アーム10a、10bの他端は、第2水平関節部11a、11bで第2アーム12a、12bの一端と連結される。第2アーム12a、12bの他端は、第3水平関節部13a、13bで第1ハンド14a、14bと連結されている。支持ベース8および支持部材16に備えられた回転駆動機構が駆動されると、たとえば、各水平関節部へベルト駆動等により駆動力が伝達され、ハンド14a、14bは一方向を向いて移動する。ハンド14aはアームが伸びた位置を示したものであり、ハンド14bはアームが縮んだ位置を示している。本実施例では、上下の水平アーム機構30において、第2水平関節部11a、11bが互いに反対方向に張り出すようにしているが、これに限られるものではなく、たとえば、支柱15の反対側の水平方向に互いの第2水平関節部11a、11bが張り出すように動作させても良い。
尚、本発明では、上アームと下アームを有する多関節ロボットについて述べたが、上下いずれか一方のアームからなる多関節ロボットでも良いことは自明である。また、第1から第3水平関節部の回転関節を有する移送ロボットについて述べたが、第3水平関節部が固定された移送ロボットについても同様な作用および効果を有することは当然である。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明では、液晶基板や半導体ウェハを移送するロボットについて述べたが、このような基板を搬送するものであれば、たとえば、太陽発電用のパネルや有機EL基板等の基板でも、基板であれば、移送することは可能である。
【符号の説明】
【0019】
1 台座
2 ベース
3a、3b 脚部支持部材
4a、4b 第1関節部
5a、5b 第1脚部
6a、6b 第2関節部
7a、7b 第2脚部
8 支持ベース
9a、9b 第1水平関節部
10a、10b 第1アーム
11a、11b 第2水平関節部
12a、12b 第2アーム
13a、13b 第3水平関節部
14a、14b ハンド
15 支柱
16 支持部材
17 旋回機構
20 昇降機構
30 水平アーム機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送物を載置するハンド部と、前記ハンド部を回動可能に支持する第2アームと、前記第2アームを回転可能に支持する第1アームと、を少なくとも備え、前記ハンド部が一方向に移動するように前記アームが回転する水平アーム機構と、
ベースの片側に片側第1関節部で回動可能に支持された片側第1脚部と、前記片側第1脚部に片側第2関節部で回動可能に支持され前記水平アーム機構を支持する片側第2脚部と、を備えた第1リンク機構と、
前記ベースの他方側に他方側第1関節部で回動可能に支持された他方側第1脚部と、前記他方側第1脚部に他方側第2関節部で回動可能に支持され前記水平アーム機構を支持する他方側第2脚部と、を備えた第2リンク機構と、を備え、
前記片側第1関節部と前記他方側第1関節部と前記片側第2関節部と前記他方側第2関節部のそれぞれの回転軸の方向と前記ハンド部の移動方向とが平行になるよう配置され、
前記ハンド部の移動方向から見て、前記片側第2関節部と前記他方側第2関節部が前記第1リンク機構と前記第2リンク機構の内側に互いに張り出すように前記片側第1脚部と前記他方側第1脚部が互いに逆方向に回転しながら、前記ハンド部を前記片側第1関節部と前記他方側第1関節部との間で上下に移動させうる昇降機構と、
を備えた移送ロボットの制御方法であって、
前記ハンド部の移動方向のローリング方向の傾きを変えるように、あるいは、前記ハンド部が水平状態を維持したまま前記ハンド部の移動方向に対して横ずれ動作するように、前記片側第1脚部と前記他方側第1脚部を前記片側第1関節部と前記他方側第1関節部においてそれぞれ互いに異なる角度量を回転させ、前記片側第2脚部と前記他方側第2脚部を前記片側第2関節部と前記他方側第2関節部においてそれぞれ互いに異なる角度量を回転させること、を特徴とする移送ロボットの制御方法。
【請求項2】
搬送物を載置するハンド部と、前記ハンド部を回動可能に支持する第2アームと、前記第2アームを回転可能に支持する第1アームと、を少なくとも備え、前記ハンド部が一方向に移動するように前記アームが回転する水平アーム機構と、
ベースの片側に片側第1関節部で回動可能に支持された片側第1脚部と、前記片側第1脚部に片側第2関節部で回動可能に支持され前記水平アーム機構を支持する片側第2脚部と、を備えた第1リンク機構と、
前記ベースの他方側に他方側第1関節部で回動可能に支持された他方側第1脚部と、前記他方側第1脚部に他方側第2関節部で回動可能に支持され前記水平アーム機構を支持する他方側第2脚部と、を備えた第2リンク機構と、を備え、
前記片側第1関節部と前記他方側第1関節部と前記片側第2関節部と前記他方側第2関節部のそれぞれの回転軸の方向と前記ハンド部の移動方向とが平行になるよう配置され、
前記ハンド部の移動方向から見て、前記片側第2関節部と前記他方側第2関節部が前記第1リンク機構と前記第2リンク機構の内側に互いに張り出すように前記片側第1脚部と前記他方側第1脚部が互いに逆方向に回転しながら、前記ハンド部を前記片側第1関節部と前記他方側第1関節部との間で上下に移動させうる昇降機構と、
前記ベースを鉛直軸回りに旋回させる旋回機構と、
を備えた移送ロボットの制御方法であって、
前記ハンド部の移動方向のヨーイング方向の方向を変えるように前記旋回機構によって前記ベースを旋回させること、を特徴とする移送ロボットの制御方法。
【請求項3】
前記ハンド部の前記ローリング方向の傾きの変更を、前記ハンド部の移動方向に対する前記搬送物の載置場所の傾きに応じて行なうこと、を特徴とする請求項1記載の移送ロボットの制御方法。
【請求項4】
前記ハンド部の前記横ずれ動作を、前記ハンド部の移動方向に対する前記搬送物の載置場所の横ずれ量に応じて行なうこと、を特徴とする請求項1記載の移送ロボットの制御方法。
【請求項5】
前記ハンド部の前記ヨーイング方向の方向の変更を、前記ハンド部の移動方向に対する前記搬送物の載置場所の方向のずれ量に応じて行なうこと、を特徴とする請求項2記載の移送ロボットの制御方法。
【請求項6】
前記水平アーム機構が、前記第1アームを回動可能に支持するとともに前記片側第2脚部と前記他方側第2脚部とに回動可能に支持される支持ベースと、前記支持ベースに設けられた第1のセンサと、を備え、
前記ハンド部が前記支持ベースの上側に引き込まれたときに前記第1のセンサによって前記搬送物の前記ハンド部の移動方向に対する横ずれ量を検出し、
前記検出した搬送物の横ずれ量に応じて前記ハンド部の前記横ずれ動作を行なうこと、を特徴とする請求項1記載の移送ロボットの制御方法。
【請求項7】
前記ハンド部に第2のセンサを設け、
前記第2のセンサによって前記ハンド部に載置された前記搬送物の前記ハンド部に対する角度ずれを検出し、
前記搬送物の前記ハンド部に対する角度ずれに応じて前記ハンド部の前記ヨーイング方向の方向の変更を行なうこと、を特徴とする請求項2記載の移送ロボットの制御方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−158769(P2010−158769A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−38927(P2010−38927)
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【分割の表示】特願2008−558990(P2008−558990)の分割
【原出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(000006622)株式会社安川電機 (2,482)
【Fターム(参考)】