説明

穀物粒及びこれを用いた穀粉、全粒粉、食品、動物用飼料、シロップ及びその製造方法、並びに、単離抽出したβ‐グルカンを含有する食品、添加剤、皮膚外用剤、医薬組成物及びその製造方法

【課題】低炭水化物且つ高食物繊維を含有し、摂取後も血中グルコース値が急激に上昇しない食品、飲料等を提供する。
【解決手段】大麦から得られる穀物粒であって、15〜25重量%のタンパク質、25〜35重量%の炭水化物及び25〜35重量%の食物繊維、を含み、且つ、該食物繊維の40〜60重量%が水溶性食物繊維であることを特徴とする穀物粒。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食物繊維、タンパク質及びデンプンの含有量が特定の範囲にある穀物粒、これから得られる穀粉または全粒粉、これらと他の成分とを含有する食品、動物用飼料、シロップ、前記穀物粒などから単離抽出されたβ‐グルカンを含有するする食品、添加剤等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、健康食品素材として食物繊維が注目されている。食物繊維は、大きく分けて不溶性繊維(不溶解食物繊維)と水溶性食物繊維の2つに分類され、不溶性食物繊維はその作用として便容積の増加、腸内容物の通過時間の短縮、腸内圧、腹圧の低下があり、その結果、便秘、大腸ガン等各種大腸疾患の予防、治療効果があるとされる。また、水溶性食物繊維はその作用として消化管活動の活性化、食事成分の消化吸収の低下、腸管を循環する胆汁酸の減少、(水溶性食物繊維存在下における)腸内細菌の種類と代謝の変動があり、その結果、便秘、大腸疾患、肥満、糖尿病、高脂血症等の予防、治療効果があるとされる。
【0003】
このような機能を有する食物繊維を効率的に摂取する方法として例えば朝食にシリアル等の良好な栄養源を供給する食品が提供されている。このシリアルの種類としては、フレークドシリアル、パフドシリアル、またはシュレッデッドシリアルなどがあり、これらのものは通常、トウモロコシ、小麦、米、大麦等からなるシリアル粒(cereal grain)の1種以上を含有するものである。これら使われるシリアル粒は、デンプン等の炭水化物含量は高いがタンパク質は相対的に少ないものであるため、タンパク質含量の高い大豆等を添加することで調整したシリアルが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2002−45133号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1にて提案されているシリアルでは、確かにタンパク質含有量が調整され、栄養バランスは向上されているが、シリアル粒自体に含まれる炭水化物量が多いため、摂取カロリーが相対的に高いものとなってしまう。これを嫌ってシリアル粒の使用量を少なくすれば、シリアル粒から本来摂取できるはずの食物繊維量が減少することとなる。
【0006】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、食物繊維やタンパク質の含有量が豊富で且つ炭水化物含有量を抑えた穀物粒、これを用いた穀粉、全粒粉更にはこれらから得られる各種食品、飲料、添加剤等やその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、大麦から得られる穀物粒であって、15〜25重量%のタンパク質、25〜35重量%の炭水化物及び25〜35重量%の食物繊維、を含み、且つ、該食物繊維の40〜60重量%が水溶性食物繊維であることを特徴とする穀物粒[1]。
【0008】
[1]において、18〜20重量%のタンパク質、28〜32重量%の炭水化物及び28〜32重量%の食物繊維を含んでいることを特徴とする穀物粒[2]。
【0009】
[1]または[2]において、前記水溶性食物繊維にはβ‐グルカンが含まれていることを特徴とする穀物粒[3]。
【0010】
[3]において、前記水溶性食物繊維における前記β‐グルカンの含有量は80重量%以上であることを特徴とする穀物粒[4]。
【0011】
[1]乃至[4]において、前記大麦がプロワショヌパナ種であることを特徴とする穀物粒[5]。
【0012】
大麦から得られた全粒のままの[1]乃至[5]のいずれかに記載の穀物粒[6]。
【0013】
粉砕または加工された結果、粉にされ、すりつぶされ、精白され、延ばされ、粗挽きされ、固められた[1]乃至[5]のいずれかに記載の穀物粒[7]。
【0014】
[1]乃至[7]のいずれかに記載の穀物粒から得られる穀粉または全粒粉[8]。
【0015】
発明者らは、上記した課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、水溶性及び水不溶性食物繊維、タンパク質、炭水化物の含有量が特定の穀物粒及び穀粉、全粒粉を食品や飼料等の原料とすることで、炭水化物含有量を比較的低く抑えることができ(即ちカロリーを抑えることができ)、しかも食物繊維含有量を高く維持できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0016】
具体的には、[1]乃至[8]のいずれかに記載の穀物粒、穀粉または全粒粉と、少なくとも一種の食品成分を含有する食品である[9]。
【0017】
[1]乃至[8]のいずれかに記載の穀物粒、穀粉または全粒粉と、少なくとも一種の動物用飼料を含有する動物用飼料である[10]。
【0018】
[1]乃至[8]のいずれかに記載の穀物粒、穀粉または全粒粉を、水または有機溶媒に混合することにより得られるシロップである[11]。
【0019】
[11]において、混合後、更に加熱することにより得られるシロップである[12]。
【0020】
[1]乃至[8]のいずれかに記載の穀物粒、穀粉または全粒粉からβ‐グルカンを単離抽出し、該β‐グルカンと、少なくとも一種の食品成分を含有する食品である[13]。
【0021】
[1]乃至[8]のいずれかに記載の穀物粒、穀粉または全粒粉からβ‐グルカンを単離抽出し、該β‐グルカンと、少なくとも一種の添加剤成分を含有する添加剤である[14]。
【0022】
[1]乃至[8]のいずれかに記載の穀物粒、穀粉または全粒粉からβ‐グルカンを単離抽出し、該β‐グルカンと、少なくとも一種の皮膚用外用剤成分を含有する皮膚外用剤である[15]。
【0023】
[1]乃至[8]のいずれかに記載の穀物粒、穀粉または全粒粉からβ‐グルカンを単離抽出し、該β‐グルカンと、少なくとも一種の医薬組成物成分を含有する医薬組成物である[16]。
【0024】
[1]乃至[8]のいずれかに記載の穀物粒、穀粉または全粒粉を、食品に添加することを特徴とする血糖値抑制機能を有する食品の製造方法である[17]。
【0025】
[1]乃至[8]のいずれかに記載の穀物粒、穀粉または全粒粉を、動物用飼料に添加することを特徴とする血糖値抑制機能を有する動物用飼料の製造方法である[18]。
【0026】
[1]乃至[8]のいずれかに記載の穀物粒、穀粉または全粒粉を、飲料に添加することを特徴とする血糖値抑制機能を有する飲料の製造方法である[19]。
【0027】
[1]乃至[8]のいずれかに記載の穀物粒、穀粉または全粒粉からβ‐グルカンを単離抽出し、該β‐グルカンを、食品に添加することを特徴とする機能性食品の製造方法である[20]。
【0028】
[1]乃至[8]のいずれかに記載の穀物粒、穀粉または全粒粉からβ‐グルカンを単離抽出し、該β‐グルカンを、皮膚用外用剤に添加することを特徴とする皮膚用外用剤の製造方法である[21]。
【0029】
[1]乃至[8]のいずれかに記載の穀物粒、穀粉または全粒粉からβ‐グルカンを単離抽出し、該β‐グルカンを、食品添加剤に添加することを特徴とする食品添加剤の製造方法である[22]。
【0030】
[1]乃至[8]のいずれかに記載の穀物粒、穀粉または全粒粉からβ‐グルカンを単離抽出し、該β‐グルカンを、皮膚用外用剤に添加することを特徴とする皮膚用外用剤の製造方法である[23]。
【0031】
[1]乃至[8]のいずれかに記載の穀物粒、穀粉または全粒粉からβ‐グルカンを単離抽出し、該β‐グルカンを、医薬組成物に添加することを特徴とする医薬組成物の製造方法である[24]。
【0032】
[1]乃至[8]のいずれかに記載の穀物粒、穀粉または全粒粉からβ‐グルカンを単離抽出し、該β‐グルカンを、飲料に添加することを特徴とする機能性飲料の製造方法である[25]。
【0033】
なお、「食品」としては、例えば、パンミックス、パンケーキミックス、ワッフルミックス、ケーキミックス、フルーツパイミックス、パイミックス、ベーキングミックス、パン粉・肉・野菜チーズやソースがついた棒状のパン、飲料用などに用いられる食用粉、牛肉・ポーク・家禽・シーフード用に用いられる生地混合物、ピザ外皮、ピザ生地、パン生地、クッキー生地、ブリート、エンチラダ、トルティーヤ、トルティーヤラップサンドイッチ、スパゲッティ、マカロニ、ラザニア、うどん、そばなどのパスタ・麺類、肉・野菜・チーズやソースが入っているパン生地などの各種生地類、パン、マフィン、ベーグル、ロールパンなどの各種パン類、朝食のシリアル、シリアル、穀類を原料とする食物バー、大豆を原料とする食物バー、クラッカー、プレッツェル、クッキー、チューインガム、チョコレート等のシリアル、クラッカー、菓子類、アイスクリーム、アイスミルクおよびソフトクリーム、コーヒーホワイトナー、ホイップクリーム、カスタードクリーム、及びこれ以外の乳製品、アイスキャンディー、泡立ててかき混ぜて使用する乳製品、スープ、ヨーグルト(冷凍のものを含む)、プリンなどの乳製品類または非乳製品類、バー、飲料粉、栄養補助食品(含む栄養補助飲料、栄養補助飲料粉、栄養補助バー)などの食事代用品、マヨネーズ、ドレッシング、調味料・ソース類、畜肉・魚肉練製品、冷凍食品、レトルト食品等やマーガリン、ショートニング等の加工油脂製品などが挙げられる。
【0034】
「飲料」とは、緑茶などの未発酵茶飲料、ウーロン茶などの半発酵茶飲料、紅茶などの完全発酵茶飲料、炭酸飲料、コーヒー飲料、果実飲料、野菜ジュース、ミネラルウォーター、牛乳などの動物由来飲料その他の飲料が挙げられる。
【0035】
「添加剤」とは、食品中や化粧品、化学品医薬品等に添加される材料である。例えば、発色剤、防腐剤、合成甘味料、調味料、着香料、酸化防止剤、防カビ剤、殺菌剤、漂白剤、乳化安定剤、天然系糊料、合成甘味料、防腐剤、合成保存料、品質保持剤、品質改良剤、合成着色料、乳化剤、食品改質剤、保湿剤、油脂代替物、pH調整剤などが挙げられる。
【0036】
「皮膚用外用剤」としては、例えば洗顔クリーム、クレンジングクリーム、マッサージクリーム、コールドクリーム、モイスチャークリーム、乳液、パック剤、美白剤、ローション等、皮膚用化粧品に用いるや軟膏、火傷薬などが挙げられる。
【0037】
「医薬組成物」としては、抽出されたβ‐グルカンと医薬成分、例えば、整腸作用のある成分と組み合わせて整腸剤としたり、コレステロールや血圧等の調整作用のある成分と組み合わせて血圧抑制剤やコレステロール低下剤、火傷や消炎効果のある成分と組み合わせた軟膏などが挙げられる。
【発明の効果】
【0038】
本発明の穀物粒は、食物繊維及びタンパク質を多く含みしかも炭水化物(デンプン)の割合が少ないので、食品、添加剤、飼料、皮膚外用剤、医薬等の材料として好適である。さらに、この穀物粒はそのままでも使用できるが、使用目的に応じ、押したり、すりつぶしたり、精白したり、粗挽きまたは粉砕することにより各種形態に加工できる。また、穀物粒等から水溶性繊維であるβ‐グルカンを抽出することにより、例えば、この抽出されたβ‐グルカンを利用し、β‐グルカンの生理的作用、特にコレステロール値の低下作用、血糖値抑制作用がある食品や各種添加剤、医薬組成物を容易に製造することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下、本発明の実施の最良の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
【0040】
<本願穀物粒の組成>
本発明で用いる穀物粒は、少なくとも大麦由来であって、好ましくはプロワショヌパナ種の大麦に由来する。全成分中、15〜25重量%のタンパク質、25〜35重量%の食物繊維、及び25〜35重量%の炭水化物を含み、かつ該食物繊維の40〜60重量%が水溶性食物繊維からなるものである。好ましくは、18〜20重量%のタンパク質、28〜32重量%の炭水化物及び28〜32重量%の食物繊維を含んでいるとよい。更に好ましくは、30重量%の炭水化物及び30重量%の食物繊維を含んでいるとよい。また、食物繊維は、「不溶性食物繊維」と「水溶性食物繊維」とからなる。水溶性食物繊維にはβ‐グルカンが含まれており、全ての水溶性食物繊維に対するβ‐グルカンの含有量が80%以上であることが好ましい。
【0041】
本願発明の実施形態の一例であるプロワショヌパナ種穀物粒(以下「本願穀物粒」という。)と、オート麦、(プロワショヌパナ種以外の)大麦(以下単に「大麦」という。)との栄養成分比較表を図1として示している。
【0042】
ここでは、本願穀物粒のタンパク質含有用量が18〜20重量%であることが見て取れる。一方、比較対象となっているオート麦のタンパク質含有量は14重量%であり、大麦のタンパク質含有量は16重量%である。このことから本願穀物粒をシリアルに使用した場合には、例えば大豆などのような高タンパク穀物粒を別途添加することなく、シリアル全体のタンパク質含有量を確保することができる。
【0043】
次に本願穀物粒の脂質含有量は6〜7重量%であるのに対し、オート麦の脂質含有量は7重量%、大麦の脂質含有量は2〜3重量%である。
【0044】
次に、オート麦、大麦のそれぞれの炭水化物含有量はそれぞれ60重量%であるのに対し、本願穀物粒の炭水化物含有量は30重量%である。このように本願穀物粒における炭水化物の含有量はオート麦、大麦の炭水化物含有量に対して約半分の値でしかない。即ち、オート麦や大麦に対して本願穀物粒を使用した場合には炭水化物から由来するカロリー(エネルギー)の摂取量を半減することが可能となっている。更に、同量のタンパク質を確保する観点から比較すれば、本願穀物粒のタンパク質含有量は前述したとおりオート麦、大麦に対して多いことから、ある一定量のタンパク質を確保するために必要な本願穀物粒は更に少なくて済み、その結果、含まれる炭水化物含有量も半分以下となる。即ち、摂取後消化管において吸収されるグルコース等の糖類の絶対的含有量が少ないことを意味している。
【0045】
次に、総食物繊維(不溶性食物繊維及び水溶性食物繊維の総量)を比較してみると、本願穀物粒の総食物繊維含有量が約30重量%以上であるのに対し、オート麦の総食物繊維含有量は約10重量%であり、大麦の総食物繊維含有量は約14〜19重量%である。このように、本願穀物粒が含有する総食物繊維量は、大麦に対して約1.5〜2倍であり、オート麦との比較においては約3倍もの量が確保されている。よって、本願穀物粒の量(添加量)を少なくした場合でも、十分な総食物繊維量を確保することが可能となっている。また、総食物繊維の中に含まれる水溶性食物繊維としてのβ‐グルカンは、本願穀物粒においては15重量%である。これに対し、オート麦のそれは4〜5重量%であり、大麦のそれは4〜6重量%に過ぎない。
【0046】
次に、本願穀物粒と、オート麦、(プロワショヌパナ種以外の)大麦、小麦との食物繊維分比較表(図2)を参照しつつ説明する。この表では、黒塗り部分が不溶解性食物繊維(不溶性食物繊維)であり、白塗り部分がβ‐グルカンであり、グレー部分(網掛け部分)がその他の(β‐グルカン以外の)水溶性食物繊維を示している。
【0047】
本願穀物粒においては、総食物繊維のうち40〜60重量%が水溶性食物繊維(その他の水溶性食物繊維+β‐グルカン)であり、且つ、水溶性食食物繊維のうち80重量%以上がβ‐グルカンで構成されている。その他の大麦、オート麦、小麦はこの条件を満たしていない。また、β‐グルカンの絶対的な含有量についても、大麦及びオート麦に対して約3倍、小麦との比較に至っては15倍以上の含有量が確保されている。
【実施例】
【0048】
このような特定の組成を有する本願穀物粒は例えば以下のような効果を発揮する。
【0049】
小麦粉100%の食パンと、小麦粉に本願穀物粒を15重量%混合した食パンを食した際の血中グルコース値の経時的変化には以下のような違いがあった。
【0050】
小麦粉100%からなる食パンを摂取した場合には、摂取後急激に血中グルコース値(血中グルコース濃度:血糖値)が上昇し始めピークに至り、その後急激に血中グルコース値が減少し、摂取前の血中グルコース値へと戻った。一方、小麦粉に本願穀物粒を15重量%混合した食パンを摂取した場合には、摂取後緩やかなカーブを描きつつグルコース値が上昇し、その緩やかな上昇のままピークをむかえ、その後も緩やかな下降線をたどってグルコース値が減少した。血中グルコース値のピーク時の値を比較しても、本願穀物粒を混合した食パンが、小麦粉100%の食パンよりも低い値となっている。また、摂取前の血中グルコース値へと戻るまでの時間も、本願穀物粒を混合した食パンが、小麦粉100%の食パンよりも長時間であった。
【0051】
血中グルコース値が急激に上昇すると、大量のインスリンが分泌されることによって、血中グルコース値を下げようとする。大量のインスリンが分泌されると、血中グルコース値が急激に減少するため、早い段階でいわゆる低血糖状態となり空腹感を感じることとなる。また、インスリンによって血中グルコースが急激に取り込まれた場合は、取り込んだグルコースを効率よく体内で利用することができないため、脂肪として蓄えられることとなる。即ち、脂肪を蓄え易い状態を作り出していることとなる。
【0052】
一方、血中グルコース値の上昇が緩やかな場合は、インスリンの分泌も緩やかであるため、血中グルコース値も緩やかに減少する。その結果、空腹感を感じる血糖値に至るまで長時間を要する。即ち、本願穀物粒を添加した食パンは、小麦粉100%の食パンに比べて、GI値が低く、且つ、いわゆる「腹持ちがよい」食品であると言いうことができる。
【0053】
このような効果は、本願穀物粒に含まれる炭水化物の「絶対量」が少ないということ、及び、食物繊維量が多いこととの相乗効果として発揮されているものと考えられる。即ち、絶対的な炭水化物量が少ないことによって腸管から血中へと取り込まれるグルコースの値が少なくなると共に、食物繊維が大量に存在することによって腸管から血中へと吸収されるグルコースの量を抑制していると考えられる。
【0054】
特に近年、種々の疾患の原因であると考えられる「メタボリック症候群」を予防するためには本願穀物粒の組成を利用して、種々の食品や飲料に添加することにより、メタボリック症候群を予防する機能を有する機能性食品、機能性飲料、機能性シロップなど幅広く適用することが可能である。また、血中グルコース値(血糖値)の上昇が緩やか且つ上昇する絶対値が小さいため、例えば糖尿病患者及び糖尿病予備群に該当する人々の食事に適用することで、厳しい食事制限を緩和し、食事を楽しむことも可能となる。
【0055】
勿論このような効果は、必ずしも人間のみが享受できるメリットではなく、ペット等の動物や家畜等の動物用飼料として利用することも可能である。ペットの肥満防止や家畜の健康管理にも有効である。
【0056】
<β‐グルカンについて>
本願穀物粒には、大量のβ‐グルカンが含まれている。例えば本願穀物粒は、このβ‐グルカンを単離抽出する目的で利用することも可能である。
【0057】
グルカンとは、食物繊維の一種であり、「単糖」であるグルコース(ブドウ糖)が多数グリコシド結合したものである。その結合の仕方によってαとβの二種類に分けられる。グルコースの分子は、6個(1番〜6番)の炭素を骨格にして、それらの炭素に水素や酸素が結合して出来上がっている。1番の炭素には隣りのグルコースと結合できる結合手が存在しており、その結合手の方向によってα型とβ型に区別される。α型のグルコースが隣りのグルコースとつながる結合様式をα‐結合 (α‐グリコシド結合)と呼び、同様に、β型のグルコースの結合様式をβ‐結合 (β-グリコシド結合)と呼ぶ。α型グルコースだけが多数結合した多糖類をα-グルカンといい、大多数のグルカンはこのα-グルカンである。代表的なものとしてはデンプン、デキストリンなどである。また、β型グルコースだけが多数結合した多糖類を「β-グルカン」といい、結合の仕方によってβ(1-4)、β(1-6)、β(1-3)などに分れ、結合態様によって構造が相違することを意味している。
【0058】
β‐グルカンの効果は、マクロファージ、NK細胞、T細胞、キラーT細胞を活性化させる働きがあるといわれている。これにより免疫力・抵抗力が高まれば、身体の中に侵入した細菌や異物を排除したり、仮に感染したとしても発病を抑制することが可能となる。更に、免疫力が高まることによって、ガンなどの腫瘍を抑える効果も存在するといわれている。更には、利尿作用、血圧調整作用、コレステロール調整作用もあるといわれている。
【0059】
本願穀物粒は、上述したとおりβ‐グルカンの高い含有率を有しているため、β‐グルカンを単離抽出する対象としても有効である。抽出方法には種々のものが考えられるが、β‐グルカンは水溶性のため、水や温水で簡易に抽出することが可能である。このとき、本願穀物粒では、水溶性食物繊維中にβ‐グルカンが80重量%以上で含まれているため、単に水や温水で抽出するのみでも、他の穀物粒に比べて高純度のβ‐グルカンを得ることが可能である。
【0060】
抽出したβ‐グルカンは、少なくとも一種の食品成分と混ぜて食品としたり、少なくとも一種の添加剤成分と混ぜて添加剤としたり、少なくとも一種の皮膚用外用剤成分と混ぜて皮膚外用剤としたり、少なくとも一種の医薬組成物成分と混ぜて医薬組成物とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本願発明は、人間を含む動物全般の健康維持を図る産業に広く適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本願穀物粒と、オート麦、(プロワショヌパナ種以外の)大麦との栄養成分比較表
【図2】本願穀物粒と、オート麦、(プロワショヌパナ種以外の)大麦、小麦との食物繊維分比較表

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大麦から得られる穀物粒であって、15〜25重量%のタンパク質、25〜35重量%の炭水化物及び25〜35重量%の食物繊維、を含み、且つ、該食物繊維の40〜60重量%が水溶性食物繊維である
ことを特徴とする穀物粒。
【請求項2】
請求項1において、
18〜20重量%のタンパク質、28〜32重量%の炭水化物及び28〜32重量%の食物繊維を含んでいる
ことを特徴とする穀物粒。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記水溶性食物繊維にはβ‐グルカンが含まれている
ことを特徴とする穀物粒。
【請求項4】
請求項3において、
前記水溶性食物繊維における前記β‐グルカンの含有量は80重量%以上である
ことを特徴とする穀物粒。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかにおいて、
前記大麦がプロワショヌパナ種である
ことを特徴とする穀物粒。
【請求項6】
大麦から得られた全粒のままの請求項1乃至5のいずれかに記載の穀物粒。
【請求項7】
粉砕または加工された結果、粉にされ、すりつぶされ、精白され、延ばされ、粗挽きされ、固められた請求項1乃至5のいずれかに記載の穀物粒。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載の穀物粒から得られる穀粉または全粒粉。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載の穀物粒、穀粉または全粒粉と、少なくとも一種の食品成分を含有する食品。
【請求項10】
請求項1乃至8のいずれかに記載の穀物粒、穀粉または全粒粉と、少なくとも一種の動物用飼料を含有する動物用飼料。
【請求項11】
請求項1乃至8のいずれかに記載の穀物粒、穀粉または全粒粉を、水または有機溶媒に混合することにより得られるシロップ。
【請求項12】
請求項11において、混合後、更に加熱することにより得られるシロップ。
【請求項13】
請求項1乃至8のいずれかに記載の穀物粒、穀粉または全粒粉からβ‐グルカンを単離抽出し、該β‐グルカンと、少なくとも一種の食品成分を含有する食品。
【請求項14】
請求項1乃至8のいずれかに記載の穀物粒、穀粉または全粒粉からβ‐グルカンを単離抽出し、該β‐グルカンと、少なくとも一種の添加剤成分を含有する添加剤。
【請求項15】
請求項1乃至8のいずれかに記載の穀物粒、穀粉または全粒粉からβ‐グルカンを単離抽出し、該β‐グルカンと、少なくとも一種の皮膚用外用剤成分を含有する皮膚用外用剤。
【請求項16】
請求項1乃至8のいずれかに記載の穀物粒、穀粉または全粒粉からβ‐グルカンを単離抽出し、該β‐グルカンと、少なくとも一種の医薬組成物成分を含有する医薬組成物。
【請求項17】
請求項1乃至8のいずれかに記載の穀物粒、穀粉または全粒粉を、食品に添加する
ことを特徴とする血糖値抑制機能を有する食品の製造方法。
【請求項18】
請求項1乃至8のいずれかに記載の穀物粒、穀粉または全粒粉を、動物用飼料に添加する
ことを特徴とする血糖値抑制機能を有する動物用飼料の製造方法。
【請求項19】
請求項1乃至8のいずれかに記載の穀物粒、穀粉または全粒粉を、飲料に添加する
ことを特徴とする血糖値抑制機能を有する飲料の製造方法。
【請求項20】
請求項1乃至8のいずれかに記載の穀物粒、穀粉または全粒粉からβ‐グルカンを単離抽出し、該β‐グルカンを、食品に添加する
ことを特徴とする機能性食品の製造方法。
【請求項21】
請求項1乃至8のいずれかに記載の穀物粒、穀粉または全粒粉からβ‐グルカンを単離抽出し、該β‐グルカンを、皮膚用外用剤に添加する
ことを特徴とする皮膚用外用剤の製造方法。
【請求項22】
請求項1乃至8のいずれかに記載の穀物粒、穀粉または全粒粉からβ‐グルカンを単離抽出し、該β‐グルカンを、添加剤に添加する
ことを特徴とする添加剤の製造方法。
【請求項23】
請求項1乃至8のいずれかに記載の穀物粒、穀粉または全粒粉からβ‐グルカンを単離抽出し、該β‐グルカンを、皮膚用外用剤に添加する
ことを特徴とする皮膚用外用剤の製造方法。
【請求項24】
請求項1乃至8のいずれかに記載の穀物粒、穀粉または全粒粉からβ‐グルカンを単離抽出し、該β‐グルカンを、医薬組成物に添加する
ことを特徴とする医薬組成物の製造方法。
【請求項25】
請求項1乃至8のいずれかに記載の穀物粒、穀粉または全粒粉からβ‐グルカンを単離抽出し、該β‐グルカンを、飲料に添加する
ことを特徴とする機能性飲料の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−212111(P2008−212111A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−57188(P2007−57188)
【出願日】平成19年3月7日(2007.3.7)
【出願人】(000108454)ソマール株式会社 (81)
【Fターム(参考)】