説明

積層コンデンサの実装構造

【課題】積層コンデンサの電歪現象に起因して発生する音鳴きを抑制すること。
【解決手段】積層コンデンサ10は、回路基板2の基板面2Pと直交する方向に第1内部電極と第2内部電極とが誘電体層を介して積層される素体11と、第1内部電極と第2内部電極とが積層される方向と直交する方向に存在する素体11の第1側面11Aで第1内部電極と接続される第1側面側第1端子電極21Aと、第1側面11Aで第2内部電極と接続される第1側面側第2端子電極22Aと、を含む。積層コンデンサ10は、第1側面11A側で回路基板2に取り付けられ、第1側面11Aと対向する第2側面11B側は回路基板2に取り付けられない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板にコンデンサを実装する際の実装構造に関する。
【背景技術】
【0002】
パーソナルコンピュータ、PDA(Personal Digital Assistants)又は携帯電話等の電子機器は、コンデンサ、インダクタ、バリスタ又はこれらを複合した複合部品が表面実装された回路基板を有する。このような構造により、前記電子機器は、高密度に電子部品を搭載して回路基板全体を小型化している。回路基板に搭載されるコンデンサとしては、例えば、積層セラミックコンデンサがある。
【0003】
積層セラミックコンデンサは、誘電体と内部電極とが交互に積層されている。誘電体を形成するセラミック材料には、誘電率が高いチタン酸バリウム等の強誘電体材料が用いられている。積層セラミックコンデンサに交流電圧を印加すると、誘電体を形成するセラミック材料は電歪現象を発生し、機械的な歪みを生じる。このため、交流電圧が印加された積層セラミックコンデンサは振動する。この振動は、積層セラミックコンデンサが表面実装された回路基板にも伝達し、これを振動させる。その結果、積層セラミックコンデンサが表面実装された回路基板は、振動音を発生する(音鳴き)。
【0004】
このような、積層セラミックコンデンサの電歪現象に起因した回路基板の振動音、すなわち音鳴きを抑制するため、例えば、特許文献1には、誘電体セラミックからなる誘電体層と内部電極層とを交互に積層してなる直方体形状の素体と、該素体の両端部において該内部電極層に形成された内部電極を交互に並列に接続する一対の外部端子電極とからなる積層セラミックコンデンサの回路基板への実装方法であって、前記回路基板の表面及び裏面のほぼ面対称な位置に互いに導通するコンデンサ実装用のランドを形成し、該回路基板の表面及び裏面のランドのそれぞれに前記積層セラミックコンデンサを配置して外部端子電極とランドを導電接続する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−232030号公報[0010]
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された技術は、2つの積層セラミックコンデンサを回路基板の表裏に取り付けて、両者の振動を打ち消し合うものである。このため、両者の振動の周波数がずれたり、取付位置のずれが発生したりした場合、音鳴きを十分に抑制することはできない。また、一般には積層セラミックコンデンサには特性のばらつきがあるため、特許文献1に記載された技術で音鳴きを抑制することは困難である。本発明は、積層コンデンサの電歪現象に起因して発生する音鳴きを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題について鋭意研究を重ねた結果、積層コンデンサと回路基板との接続部から回路基板に伝達される積層コンデンサの振動を低減することにより、音鳴きを抑制できることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成されたものである。
【0008】
本発明は、回路基板の基板面と直交する方向に第1内部電極と第2内部電極とが誘電体層を介して積層される素体と、前記第1内部電極と前記第2内部電極とが積層される方向と直交する方向に存在する前記素体の第1側面に設けられて前記第1内部電極と接続される第1側面側第1端子電極と、前記第1側面側第1端子電極が設けられる前記第1側面に設けられて前記第2内部電極と接続される第1側面側第2端子電極と、を含む積層コンデンサが、前記第1側面側で前記回路基板に取り付けられ、前記第1側面と対向する第2側面側は前記回路基板に取り付けられないことを特徴とする積層コンデンサの実装構造である。
【0009】
この積層コンデンサの実装構造は、同一の側面(第1側面)に設けられて積層コンデンサの内部電極と接続される端子電極を、基板電極と電気的に接続し、積層コンデンサの第1側面側で回路基板に積層コンデンサを取り付け、第1側面と対向する第2側面側は回路基板に取り付けない。このように、積層コンデンサの一つの側面側で回路基板に積層コンデンサを取り付けるので、積層コンデンサは、第2側面側及び第1側面に隣接する2つの第3側面及び第4側面が回路基板から解放される。このため、この積層コンデンサの実装構造は、積層コンデンサの側面から回路基板に伝達される力が解放されるとともに、積層コンデンサの側面から回路基板に伝達される振動が緩和される。その結果、この積層コンデンサの実装構造は、積層コンデンサの電歪現象に起因して発生する音鳴きを抑制することができる。
【0010】
本発明において、前記第1側面に隣接する第3側面と第4側面とは、前記第1内部電極又は前記第2内部電極と接続される端子電極を有さず、前記第3側面側と前記第4側面側とは、前記回路基板に取り付けられないことが好ましい。このようにすることで、積層コンデンサの電歪現象に起因して発生する音鳴きをより確実かつ効果的に抑制することができる。
【0011】
本発明において、前記積層コンデンサは、前記第2側面に設けられて前記第1内部電極と接続される第2側面側第1端子電極と、前記第2側面に設けられて前記第2内部電極と接続される第2側面側第2端子電極と、をさらに含み、前記第1側面側又は前記第2側面側のいずれか一方が前記回路基板に取り付けられることが好ましい。このようにすることで、回路基板に取り付けることのできる積層コンデンサの側面が一つに限定されないので、回路基板に積層コンデンサを搭載するときの自由度が向上する。
【0012】
本発明において、前記積層コンデンサは、前記第1側面に複数の前記第1側面側第1端子電極を有し、前記第1内部電極は、複数の前記第1側面側第1端子電極と接続されることが好ましい。このようにすることで、積層コンデンサがいわゆる貫通型コンデンサである場合においても、積層コンデンサの電歪現象に起因して発生する音鳴きを抑制することができる。
【0013】
本発明において、前記積層コンデンサは、誘電体層を介して前記第2内部電極と対向して配置される第3内部電極と、前記第2側面に設けられて、前記第3内部電極と接続される複数の第2側面側第3端子電極と、前記第2側面に設けられて前記第2内部電極と接続される第2側面側第2端子電極と、をさらに含むことが好ましい。このようにすることで、積層コンデンサが貫通型コンデンサである場合においても、回路基板に取り付けることのできる積層コンデンサの側面が一つに限定されない。また、それぞれの第1側面側第1端子電極、第2側面側第3端子電極、第1側面側第2端子電極及び第2側面側第2端子電極は、平面視において対称性を有しているので、積層コンデンサが180度回転した場合でも実装が可能になる。その結果、回路基板に積層コンデンサを搭載するときの方向性を考慮しなくてもよくなるので、搭載時における自由度が向上する。
【0014】
本発明において、前記積層コンデンサは、前記第1側面側第1端子電極と前記第1側面側第2端子電極と前記誘電体層とを有する素子部分を複数含むことが好ましい。このようにすることで、コンデンサとして機能する素子部分を複数有する積層コンデンサ、すなわちコンデンサアレイにおいても、積層コンデンサの電歪現象に起因して発生する音鳴きを抑制することができる。
【0015】
本発明において、前記素体は、互いに対向し、かつ平面視が長方形形状の第1主面及び第2主面と、前記第1主面と前記第2主面との間を連結するように、前記第1主面及び前記第2主面の短辺方向に延在し、かつ、互いに対向する第3側面と第4側面とを有し、複数の前記素子部分は、前記第3側面と前記第4側面とが対向する方向に向かって配列されることが好ましい。この積層コンデンサの実装構造は、このような構造を有するコンデンサアレイの音鳴きを抑制することに好適である。
【0016】
本発明において、前記素子部分は、前記第2側面に設けられて前記第1内部電極と接続される第2側面側第1端子電極と、前記第2側面に設けられて前記第2内部電極と接続される第2側面側第2端子電極と、をさらに含み、前記第1側面側又は前記第2側面側のいずれか一方が前記回路基板に取り付けられることが好ましい。このようにすることで、コンデンサとして機能する素子部分を複数有する積層コンデンサにおいても、回路基板に取り付けることができる積層コンデンサの側面が一つに限定されないので、回路基板に積層コンデンサを搭載するときの自由度が向上する。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、セラミックコンデンサの電歪現象に起因して発生する音鳴きを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、実施形態1に係る積層コンデンサの実装構造を示す斜視図である。
【図2】図2は、実施形態1に係る実装構造における積層コンデンサを示す断面図である。
【図3】図3は、実施形態1に係る実装構造における積層コンデンサの内部構造を示す平面図である。
【図4】図4は、実施形態1に係る実装構造における積層コンデンサの内部構造を示す平面図である。
【図5】図5は、積層コンデンサの変形を説明するための斜視図である。
【図6】図6は、比較例に係る実装構造の平面図である。
【図7】図7は、比較例に係る実装構造の側面図である。
【図8】図8は、実施形態1に係る実装構造の平面図である。
【図9】図9は、実施形態1に係る実装構造の側面図である。
【図10】図10は、実施形態1の変形例1に係るコンデンサの構造を示す平面図である。
【図11】図11は、実施形態1の変形例1に係るコンデンサの構造を示す平面図である。
【図12】図12は、実施形態1の変形例1に係る実装構造の平面図である。
【図13】図13は、実施形態1の変形例2に係るコンデンサの構造を示す平面図である。
【図14】図14は、実施形態1の変形例2に係るコンデンサの構造を示す平面図である。
【図15】図15は、実施形態2に係るコンデンサの構造を示す平面図である。
【図16】図16は、実施形態2に係るコンデンサの構造を示す平面図である。
【図17】図17は、実施形態2に係る実装構造の平面図である。
【図18】図18は、実施形態2の変形例に係るコンデンサの構造を示す平面図である。
【図19】図19は、実施形態2の変形例に係るコンデンサの構造を示す平面図である。
【図20】図20は、実施形態2の変形例に係るコンデンサの構造を示す平面図である。
【図21】図21は、実施形態2の変形例に係るコンデンサの構造を示す一部断面図である。
【図22】図22は、実施形態2の変形例に係る実装構造の平面図である。
【図23】図23は、実施形態3に係るコンデンサの構造を示す平面図である。
【図24】図24は、実施形態3に係るコンデンサの構造を示す平面図である。
【図25】図25は、実施形態3に係る実装構造の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。以下において、直交又は平行というときには、完全な直交又は平行のみならず、公差又は誤差の範囲も直交又は平行概念に含まれるものとする。
【0020】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る積層コンデンサの実装構造を示す斜視図である。積層コンデンサの実装構造(以下、必要に応じて実装構造という)1は、第1内部電極と第2内部電極とが誘電体層を介して積層された積層コンデンサ10を回路基板2に実装したときの構造である。積層コンデンサ10は、第1内部電極と第2内部電極とが誘電体層を介して積層された素体11の側面に、前記第1内部電極と電気的に接続される端子電極と、前記第2内部電極と電気的に接続される端子電極とを有する電子部品である。なお、積層コンデンサ10は、セラミックコンデンサである。
【0021】
積層コンデンサ10が有する素体11は、第1側面11Aと、第2側面11Bと、第3側面11Cと、第4側面11Dと、第1実装面(以下、第1主面という)11Eと、第2実装面(以下、第2主面という)11Fとで囲まれた形状である。第1側面11Aと、第2側面11Bと、第3側面11Cと、第4側面11Dと、第1主面11Eと、第2主面11Fとはいずれも長方形(正方形も含む)形状の平面なので、積層コンデンサ10が有する素体11は、直方体(立方体も含む)形状である。なお、直方体形状は、素体11の角部が曲面になっている形状も含む。
【0022】
第1側面11Aと第2側面11Bとはそれぞれ対向する。第3側面11Cと第4側面11Dとはそれぞれ対向するとともに、いずれも第1側面11A及び第2側面11Bに直交する。第1主面11Eと第2主面11Fとはそれぞれ対向するとともに、それぞれ第1側面11Aと、第2側面11Bと、第3側面11Cと、第4側面11Dとに直交する。実装構造1において、第1主面11E及び第2主面11Fは、回路基板2の基板面2Pと平行であり、本実施形態においては、第1主面11Eが基板面2Pと対向している。基板面2Pは、積層コンデンサ10が実装される面である。回路基板2は、基板面2Pに基板電極3を有している。素体11は、基板面2Pと平行な面、すなわち第1主面11E及び第2主面11Fと直交する面が側面になる。素体11は、互いに対向する長方形形状の第1主面11E及び第2主面11Fと、第1主面11Eと第2主面11Fとの間を連結するように第1主面11E及び第2主面11Fの長辺方向に伸び、かつ互いに対向する第1側面11A及び第2側面11Bと、第1主面11E及び第2主面11Fの間を連結するように第1主面11E及び第2主面11Fの短辺方向に伸び、かつ互いに対向する第3側面11Cと第4側面11Dとを有する、複数の誘電体層が第1主面11E及び第2主面11Fの対向方向に積層されたコンデンサ素体である。
【0023】
実装構造1は、3次元の構造なので、X、Y、Z座標で表現することができる。基板面2PをXY平面とすると、第1主面11E及び第2主面11Fは、XY平面と平行な面となる。第1側面11A及び第2側面11BはYZ平面と平行な面となり、第3側面11C及び第4側面11DはXZ平面と平行な面となる。Z方向は、基板面2Pと直交する方向であり、X方向及びY方向は、基板面2Pと平行な方向である。
【0024】
素体11の第1側面11Aは、第1側面側第1端子電極21Aと、第1側面側第2端子電極22Aとを有する。本実施形態において、第1側面11Aと対向する第2側面11Bは、第2側面側第1端子電極21Bと、第2側面側第2端子電極22Bとを有する。第1側面側第1端子電極21A及び第2側面側第1端子電極21Bは、素体11が有する第1内部電極と電気的に接続される端子電極に相当し、第1側面側第2端子電極22A及び第2側面側第2端子電極22Bは、素体11が有する第2内部電極と電気的に接続される端子電極に相当する。このように、一対の第1側面側第1端子電極21Aと第1側面側第2端子電極22Aとは、素体11の同一の側面(第1側面11A)に設けられ、一対の第2側面側第1端子電極21Bと第2側面側第2端子電極22Bとは、素体11の同一の側面(第2側面11B)に設けられる。
【0025】
第1側面側第1端子電極21A、第1側面側第2端子電極22A、第2側面側第1端子電極21B及び第2側面側第2端子電極22Bは、いずれも金属導体層であり、例えば、Ag電極層がある。また、複数の金属電極層で構成されていてもよく、例えば、第1側面側第1端子電極21A及び第1側面側第2端子電極22A等は、Cu又はAgを主成分とした下地電極の表面に、Niめっき層、Snめっき層等を形成してもよい。
【0026】
第1側面側第1端子電極21A及び第2側面側第1端子電極21Bは、第1側面11A又は第2側面11Bに設けられる側面側電極21Sと、側面側電極21Sと電気的に接続されて第1主面11E及び第2主面11Fに設けられる2つの実装面側電極21Tとを有する。同様に、第1側面側第2端子電極22A及び第2側面側第2端子電極22Bは、第1側面11A又は第2側面11Bに設けられる側面側電極22Sと、側面側電極22Sと電気的に接続されて第1主面11E及び第2主面11Fに設けられる2つの実装面側電極22Tとを有する。実装面側電極21T、22Tは第1主面11E及び第2主面11Fのうち少なくとも一方に設けられていればよい。なお、第1側面11A(又は第2側面11B)に隣接する第3側面11C及び第4側面11Dは、素体11が有する第1内部電極又は第2内部電極と電気的に接続される端子電極を有していない。このため、積層コンデンサ10は、第1側面11A側又は第2側面11B側で回路基板2に取り付けられ、第3側面11C側及び第4側面11D側は回路基板2に取り付けられない。次に、積層コンデンサ10の内部構造を説明する。
【0027】
図2は、実施形態1に係る実装構造における積層コンデンサを示す断面図である。図3、図4は、実施形態1に係る実装構造における積層コンデンサの内部構造を示す平面図である。図2は、積層コンデンサ10及び回路基板2を、第3側面11C及び第4側面11Dと平行かつ対向する第1側面側第1端子電極21Aと第1側面側第2端子電極22Aとを通る平面で切った断面を示している。図3は、第1内部電極13と平行かつ第1内部電極13を通る平面で積層コンデンサ10を切った状態を示している。図4は、第2内部電極14と平行かつ第2内部電極14を通る平面で積層コンデンサ10を切った状態を示している。図3、図4については、以下の同様の図面でも同じである。
【0028】
積層コンデンサ10が有する素体11は、誘電材料の誘電体層12と、導電材料の第1内部電極13と、同じく導電材料の第2内部電極14とを含む。第1内部電極13及び第2内部電極14は、例えば、パラジウム、銀/パラジウム合金、ニッケル、銅(Cu)等である。
【0029】
誘電体層12は、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO)等である。本実施形態において、素体11は、誘電体層12と第1内部電極13と第2内部電極14とが交互に積層される。より具体的には、素体11は、回路基板2の基板面2Pと直交する方向(Z方向)に第1内部電極13と第2内部電極14とが誘電体層12を介して積層される。本実施形態において、素体11は、誘電体層12と第1内部電極13と第2内部電極14とをそれぞれ複数有しているが、誘電体層12と第1内部電極13と第2内部電極14とをそれぞれ少なくとも一つずつ有していればよい。素体11は、誘電体層12となるセラミックグリーンシート(未焼成セラミックシート)と、第1内部電極13及び第2内部電極14となる導電体シートとを、交互に複数枚積層した積層体を加熱圧着して一体化した後、切断し、脱脂し、焼成することにより得られた直方体形状の焼結体である。
【0030】
図3に示すように、本実施形態において、第1内部電極13は、2つの第1引き出し部13Cを有する。図2に示すように、素体11は複数の第1内部電極13を有するが、それぞれの第1内部電極13は、2つの第1引き出し部13Cを有している。それぞれの第1内部電極13が有する2つの第1引き出し部13Cは、素体11の第1側面11Aと第2側面11Bとに引き出される。本実施形態においては、第1側面11Aに引き出される第1引き出し部13Cは第2側面11C側に配置され、第2側面11Bに引き出される第1引き出し部13Cは第4側面11D側に配置される。そして、素体11の第1側面11Aに露出した第1引き出し部13Cの端面が、第1側面11Aに設けられる第1側面側第1端子電極21Aの側面側電極21Sと電気的に接続される。また、素体11の第2側面11Bに露出した第1引き出し部13Cの端面が、第2側面11Bに設けられる第2側面側第1端子電極21Bの側面側電極21Sと電気的に接続される。
【0031】
図4に示すように、第2内部電極14は、それぞれ2つの第2引き出し部14Cを有する。図3に示すように、素体11は複数の第2内部電極14を有するが、それぞれの第2内部電極14は、2つの第2引き出し部14Cを有している。それぞれの第1内部電極14が有する2つの第2引き出し部14Cは、素体11の第1側面11Aと第2側面11Bとに引き出される。本実施形態においては、第1側面11Aに引き出される第2引き出し部14Cは第4側面11D側に配置され、第2側面11Bに引き出される第2引き出し部14Cは第2側面11C側に配置される。そして、素体11の第1側面11Aに露出した第2引き出し部14Cの端面が、第1側面側第2端子電極22Aの側面側電極22Sと電気的に接続される。また、素体11の第2側面11Bに露出した第2引き出し部14Cの端面が、第2側面11Bに設けられる第2側面側第2端子電極22Bの側面側電極21Sと電気的に接続される。
【0032】
後述するように、第1引き出し部13C及び第2引き出し部14Cの数は少なくとも一つあればよい。この場合、素体11は、第1側面側第1端子電極21A及び第1側面側第2端子電極22Aと、第2側面側第1端子電極21B及び第2側面側第2端子電極22Bとのいずれか一方を、第1側面11A又は第2側面11Bのいずれか一方に有していればよい。また、本実施形態において、積層コンデンサ10は、図1に示す第1主面11E又は第2主面11F側から見た場合、第1主面11E及び第2主面11Fの中心(図心)に対して一対の第1引き出し部13Cが点対称に配置され、一対の第2引き出し部14Cが点対称に配置される。
【0033】
このような構造により、積層コンデンサ10は、第1主面11E又は第2主面11F側から見た場合に、第1主面11E及び第2主面11Fの中心(図心)に対して第1側面側第1端子電極21Aと第2側面側第1端子電極21Bとが点対称に配置され、第1側面側第2端子電極22Aと第2側面側第2端子電極22Bとが点対称に配置される。このため、積層コンデンサ10を部品搭載装置で回路基板2に搭載する場合、積層コンデンサ10が第1主面11E及び第2主面11Fの中心に対して180度回転しても積層コンデンサ10を同様に回路基板2へ搭載できる。その結果、積層コンデンサ10を回路基板2へ搭載するときに積層コンデンサ10の方向性を考慮しなくてもよいので、自由度が向上する。
【0034】
図2に示すように、積層コンデンサ10は、第1側面側第1端子電極21Aが有する第1主面11E側の実装面側電極21Tが、回路基板2の基板電極3とはんだ4により接合される。同様に、積層コンデンサ10は、第1側面側第2端子電極22Aが有する第1主面11E側の実装面側電極22Tが、回路基板2の基板電極3とはんだ4により接合される。なお、第2主面11E側の実装面側電極21T、22Tが、回路基板2の基板電極3とはんだ4により接合されてもよい。はんだ4は、第1側面側第1端子電極21A及び第1側面側第2端子電極22Aの実装面側電極21T、22Tと基板電極3とを電気的に接続する。
【0035】
このように、実装構造1は、積層コンデンサ10が有する素体11の同一の側面(第1側面11A)に設けられた第1側面側第1端子電極21A及び第1側面側第2端子電極22Aと回路基板2の基板電極3とが電気的に接続される。すなわち、実装構造1において、積層コンデンサ10は、第1側面11A側が回路基板2に実装される。これに対して、積層コンデンサ10は、第2側面側第1端子電極21B及び第2側面側第2端子電極22Bは、回路基板2の基板電極3と電気的及び物理的に接続されない。すなわち、実装構造1は、積層コンデンサ10の回路基板2に取り付けられた側面(第1側面11A)側と対向する側面(第2側面11B)側は、回路基板2に取り付けられない。
【0036】
図5は、積層コンデンサの変形を説明するための斜視図である。積層コンデンサ10は、Z方向、すなわち、図1、図2に示す回路基板2の基板面2Pと直交する方向に第1内部電極13と第2内部電極14とが誘電体層12を介して積層されている。図2に示す誘電体層12は、誘電材料が用いられる。積層コンデンサ10は、第1側面側第1端子電極21Aと第1側面側第2端子電極22Aとの間又は第2側面側第1端子電極21Bと第2側面側第2端子電極22Bとの間に交流電圧が印加されると、誘電体層12に電歪現象が発生し、積層コンデンサ10が変形する。すなわち、強誘電性を有するセラミックの誘電体層12の電歪現象効果により、積層コンデンサ10の積層方向に伸縮が生じる。
【0037】
誘電体の一般的なポアソン比(=0.3)にしたがって、積層方向と直交する方向、すなわち、回路基板2の基板面2Pに平行な方向(X方向及びY方向)にも伸縮が生じる。例えば、図5に示すように、積層コンデンサ10は、積層方向(Z方向)に伸びると(図5の矢印E、Fに示す方向)、積層方向と直交する方向(X方向及びY方向)には縮み(図5の矢印A、B、C、Dに示す方向)、積層方向に縮むと積層方向と直交する方向には伸びる。
【0038】
交流電圧が積層コンデンサ10に印加されることにより、積層コンデンサ10は、積層方向(第1主面11E及び第2主面11Fと直交する方向)への伸縮と、積層方向と直交する方向(第1〜第4側面11A〜11Dと直交する方向)への伸縮(積層方向への伸縮と位相が90度ずれる)とが繰り返される。その結果、積層コンデンサ10が実装された回路基板2は、基板面2Pと略直交する方向へ振動する。積層コンデンサ10の振動の振幅は微少(1pmから1nm程度)であり、そのままでは音としてほとんど人間には認識されない。しかし、積層コンデンサ10が回路基板に実装されると、実装方法によっては回路基板が音響インピーダンス変換器として働く。そして、振動の周波数が人間の可聴周波数帯域(20Hzから20kHz)になったときに、音として人間の耳に検知される。このように、積層コンデンサ10は、回路基板2に実装されると、誘電材料の電歪現象に起因する音鳴きが発生することがある。
【0039】
図6は、比較例に係る実装構造の平面図である。図7は、比較例に係る実装構造の側面図である。比較例の実装構造101は、積層コンデンサ10が有する第1側面側第1端子電極21A及び第2側面側第2端子電極22Bを、回路基板2の基板電極3とはんだ4によって電気的及び物理的に接続している。すなわち、積層コンデンサ10は、対向する第1側面11Aと第2側面11Bとの両方が、回路基板2に取り付けられている。
【0040】
このような構造の場合、積層コンデンサ10の誘電体層12の電歪現象が発生すると、積層コンデンサ10が積層方向と直交する方向に伸縮するとともに、第1側面11A及び第2側面11Bと直交する方向にも伸縮する(図6、図7の矢印A、Bで示す方向)。実装構造101は、第1側面11A及び第2側面11Bと直交する方向において、積層コンデンサ10の第1側面11A側とこれに対向する第2側面11B側との両方で回路基板2に取り付けられている。このため、実装構造101は、電歪現象に起因する第1側面11A及び第2側面11Bと直交する方向の力が回路基板2に伝達される。その結果、図7に示すように、積層コンデンサ10に印加される交流電圧の周期で、回路基板2は基板面2Pと直交する方向、より具体的には、回路基板2を曲げるように振動することになる。
【0041】
図8は、実施形態1に係る実装構造の平面図である。図9は、実施形態1に係る実装構造の側面図である。本実施形態において、実装構造1は、積層コンデンサ10の同一側面(この例では第1側面11A)に設けられた第1側面側第1端子電極21A及び第1側面側第2端子電極22Aを、回路基板2の基板電極3とはんだ4によって電気的及び物理的に接続している。すなわち、実装構造1において、積層コンデンサ10は、第1側面11A側のみが回路基板2に取り付けられ、第1側面11Aに対向する第2側面11B側は回路基板2に取り付けられない。
【0042】
実装構造1において、積層コンデンサ10の誘電体層12の電歪現象が発生すると、積層コンデンサ10が第1側面11A及び第2側面11Bと直交する方向にも伸縮する(図8、図9の矢印A、Bで示す方向)。実装構造1は、第1側面11A及び第2側面11Bと直交する方向において、積層コンデンサ10の第1側面11A側のみが回路基板2に取り付けられ、第1側面11Aと対向する第2側面11B側は回路基板2に対して解放されている。このような構造により、実装構造1は、電歪現象に起因する第1側面11A及び第2側面11Bと直交する方向の力が第2側面11B側で解放され、回路基板2にはほとんど伝達されない。その結果、実装構造1は、図9に示すように、積層コンデンサ10に交流電圧が印加された場合には、誘電体層12の電歪現象に起因する音鳴きを抑制することができる。
【0043】
一般に、回路基板2の基板面2Pには、基板電極3の部分を除いてレジスト層5が設けられている。積層コンデンサ10の第2側面11B側の第2側面側第2端子電極22Bは、基板電極3と非接触になるが、積層コンデンサ10が回路基板2に搭載されると、レジスト層5が積層コンデンサ10を支持する。このため、第2側面側第2端子電極22Bと基板電極3とが非接触であっても、レジスト層5が積層コンデンサ10の姿勢を安定させることができる。
【0044】
(変形例1)
図10、図11は、実施形態1の変形例1に係るコンデンサの構造を示す平面図である。図12は、実施形態1の変形例1に係る実装構造の平面図である。本変形例の積層コンデンサ10aは、第1内部電極13の第1引き出し部13C及び第2内部電極14の第2引き出し部14Cの配置が上述した積層コンデンサ10とは異なる。積層コンデンサ10aの他の構造は、上述した積層コンデンサ10と同様であり、本変形例の実装構造1aも、積層コンデンサ10aを用いる以外は上述した実装構造1と同様である。したがって、実装構造1aも、上述した実装構造1と同様に音鳴きを抑制することができる。
【0045】
図10に示すように、積層コンデンサ10aの第1内部電極13が有する2つの第1引き出し部13Cは、素体11aの第1側面11Aと第2側面11Bとに引き出される。本変形例において、第1側面11A及び第2側面11Bに引き出される第1引き出し部13Cは、いずれも第3側面11C側に配置される。すなわち、第1側面11Aに引き出される第1引き出し部13Cと第2側面11Bに引き出される第1引き出し部13Cとは、互いに対向している。
【0046】
図11に示すように、積層コンデンサ10aの第2内部電極14が有する2つの第2引き出し部14Cは、素体11aの第1側面11Aと第2側面11Bとに引き出される。本変形例において、第1側面11A及び第2側面11Bに引き出される第2引き出し部14Cは、いずれも第4側面11D側に配置される。すなわち、第1側面11Aに引き出される第2引き出し部14Cと第2側面11Bに引き出される第2引き出し部14Cとは、互いに対向している。
【0047】
本変形例において、積層コンデンサ10aは、図1に示す第1主面11E又は第2主面11F側から見た場合、第3側面11C及び第4側面11Dと直交し、かつ第1側面11Aと第2側面11Bとの中点を通る直線に対して、一対の第1引き出し部13Cが線対称に配置され、一対の第2引き出し部14Cが線対称に配置される。このような構造により、積層コンデンサ10aは、第1主面11E又は第2主面11F側から見た場合に、前記直線に対して第1側面側第1端子電極21Aと第2側面側第1端子電極21Bとが線対称に配置され、第1側面側第2端子電極22Aと第2側面側第2端子電極22Bとが線対称に配置される。
【0048】
実装構造1aにおいて、図12に示す例では、積層コンデンサ10aの第1側面11A側を回路基板2に取り付け、第2側面11B側を回路基板2から解放している。すなわち、積層コンデンサ10aの同一の側面としての第1側面11Aに設けられた第1側面側第1端子電極21Aと第1側面側第2端子電極22Aとが、回路基板2の基板電極3と電気的及び物理的に接続される。実装構造1aにおいては、積層コンデンサ10aの第2側面11B側を回路基板2に取り付け、第1側面11A側を回路基板2から解放してもよい。すなわち、積層コンデンサ10aの同一の側面としての第2側面11Bに設けられた第2側面側第1端子電極21Bと第2側面側第2端子電極22Bとを、回路基板2の基板電極3と電気的及び物理的に接続してもよい。このように、積層コンデンサ10aは、第1側面11A側と第2側面11B側とのいずれを回路基板2に取り付けてもよいので、実装構造1aは、積層コンデンサ10aを回路基板2へ搭載するときの自由度が向上する。
【0049】
(変形例2)
図13、図14は、実施形態1の変形例2に係るコンデンサの構造を示す平面図である。本変形例の積層コンデンサ10bは、一つの第1内部電極13が有する第1引き出し部13Cの数及び一つの第2内部電極14が有する第2引き出し部14Cの数が、上述した積層コンデンサ10、10aとは異なる。積層コンデンサ10bの他の構造は、上述した積層コンデンサ10、10aと同様である。このため、積層コンデンサ10bを用いた実装構造においても、上述した実装構造1、1aと同様に音鳴きを抑制することができる。
【0050】
図13に示すように、積層コンデンサ10bの第1内部電極13が有する一つの第1引き出し部13Cは、素体11bの第1側面11Aに引き出される。本変形例において、第1引き出し部13Cは第3側面11C側に配置される。図14に示すように、積層コンデンサ10bの第2内部電極14が有する一つの第2引き出し部14Cは、素体11bの第1側面11Aに引き出される。本変形例において、第1側面11Aに引き出される第2引き出し部14Cは第4側面11D側に配置される。このように、積層コンデンサ10bは、同一の側面としての第1側面11Aのみに、第1引き出し部13C及び第2引き出し部14Cが引き出され、第1側面側第1端子電極21Aと第1側面側第2端子電極22Aとが設けられる。
【0051】
積層コンデンサ10bは、第1側面11A側が回路基板2に取り付けられる。積層コンデンサ10bは、回路基板2に取り付けられる一つの側面(第1側面11A)側の他には端子電極を有していない。このため、積層コンデンサ10bは絶縁性が優れるので、これを用いた実装構造は、音鳴きの抑制に加え、端子電極間の短絡等のおそれを低減できる。
【0052】
以上、本実施形態及びその変形例は、積層コンデンサの同一側面に設けられた複数の端子電極を回路基板の基板電極に接続し、前記同一側面側でのみ積層コンデンサを回路基板に取り付け、実装する。このようにすることで、電歪による積層コンデンサの収縮が回路基板に伝達されることを抑制できるので、積層コンデンサの電歪に起因する音鳴きを抑制することができる。本実施形態及びその変形例で記載した構成は、以下の実施形態及びその変形例においても適宜適用することができる。また、本実施形態及びその変形例で記載した構成を有するものは、本実施形態及びその変形例と同様の作用、効果を奏する。
【0053】
(実施形態2)
図15、図16は、実施形態2に係るコンデンサの構造を示す平面図である。図17は、実施形態2に係る実装構造の平面図である。本実施形態の積層コンデンサ10cは、第1内部電極13の第1引き出し部13Cを複数有するとともに、これらが同一側面としての第1側面11Aに引き出され、前記同一側面に複数の第1側面側第1端子電極21Aが設けられる点に特徴がある。積層コンデンサ10cの他の構造は、上述した積層コンデンサ10、10a等と同様であり、本実施形態の実装構造1cも、積層コンデンサ10bを用いる以外は上述した実装構造1、1a等と同様である。したがって、実装構造1cも、上述した実装構造1、1a等と同様に音鳴きを抑制することができる。
【0054】
図15に示すように、積層コンデンサ10cの第1内部電極13が有する2つの第1引き出し部13Cは、素体11cの第1側面11Aに引き出される。本実施形態において、一つの第1引き出し部13Cは第3側面11C側に配置され、もう一つの第1引き出し部13Cは第4側面11D側に配置される。図16に示すように、積層コンデンサ10cの第2内部電極14が有する一つの第2引き出し部14Cは、素体11cの第1側面11Aであって、2つの第1引き出し部13C、13Cの間に引き出される。第1内部電極13は、2つの第1引き出し部13C、13Cを電気的に接続する。
【0055】
このように、積層コンデンサ10cは、第1側面11Aに2つの第1引き出し部13C、13Cと、一つの第2引き出し部14Cとが引き出される。そして、2つの第1引き出し部13Cに、それぞれ第1側面側第1端子電極21Ac、21Adが電気的に接続されるとともに、一つの第2引き出し部14Cに第1側面側第2端子電極22Aが電気的に接続される。このような構造により、積層コンデンサ10cは、第1側面11Aに2つの第1側面側第1端子電極21Ac、21Adと、一つの第1側面側第2端子電極22Aとを有する。
【0056】
第1側面側第1端子電極21Acは回路基板2の基板電極3Iに接続されて電気信号が入力される。第1側面側第1端子電極21Adは回路基板2の基板電極3Oに接続されて、第1内部電極13を通過した前記電気信号が出力される(前記電気信号の入出力関係は逆でもよい)。第1側面側第2端子電極22Aは、回路基板2のGND(グランド)電極3Gに接続される。このように、積層コンデンサ10cは、電気信号が内部を通過する、いわゆる貫通型コンデンサとして用いることができる。
【0057】
図17に示す実装構造1cは、貫通型コンデンサとして機能する積層コンデンサ10cを回路基板2に実装した場合の構造である。実装構造1cにおいても、積層コンデンサ10cは、同一側面としての第1側面11Aに設けられた第1側面側第1端子電極21Ac、21Ad及び第1側面側第2端子電極22Aのみが回路基板2の基板電極3I等と接続される。このため、実装構造1cにおいて、積層コンデンサ10cは、同一側面としての第1側面11A側のみが回路基板2に取り付けられ、第1側面11Aと対向する第2側面11B側は回路基板2に取り付けられない。その結果、実装構造1cは、貫通型コンデンサを用いる場合においても音鳴きを抑制することができる。
【0058】
(変形例)
図18、図19、図20は、実施形態2の変形例に係るコンデンサの構造を示す平面図である。図21は、実施形態2の変形例に係るコンデンサの構造を示す一部断面図である。図22は、実施形態2の変形例に係る実装構造の平面図である。本変形例の積層コンデンサ10dは、上述した実施形態2の積層コンデンサ10cが、誘電体層を介して第2内部電極14と対向して配置される第3内部電極15と、第2側面11Bに設けられて、第3内部電極15と接続される複数の第2側面側第3端子電極23Bc、23Bdと、第2側面11Bに設けられて第2内部電極14と接続される第2側面側第2端子電極22Bと、をさらに含んだものである。積層コンデンサ10dの他の構造は、上述した積層コンデンサ10cと同様であり、本変形例の実装構造1dも、積層コンデンサ10dを用いる以外は上述した実装構造1cと同様である。したがって、実装構造1dも、上述した実装構造1c等と同様に音鳴きを抑制することができる。
【0059】
図18に示すように、積層コンデンサ10dは、第3内部電極15を有する。図21に示すように、第3内部電極15は、誘電体層12を介して第2内部電極14と対向している。積層コンデンサ10dは、第1内部電極13と、第2内部電極14と、第3内部電極15とが、それぞれ誘電体層12を介して積層されている。第3内部電極15が有する2つの第3引き出し部15Cは、素体11dの第2側面11Bに引き出される。本実施形態において、一つの第3引き出し部15Cは第3側面11C側に配置され、もう一つの第3引き出し部15Cは第4側面11D側に配置される。第3内部電極15は、2つの第3引き出し部15C、15Cを電気的に接続する。
【0060】
図19に示すように、積層コンデンサ10dの第1内部電極13が有する2つの第1引き出し部13Cは、素体11cの第1側面11Aに引き出される。本実施形態において、一つの第1引き出し部13Cは第3側面11C側に配置され、もう一つの第1引き出し部13Cは第4側面11D側に配置される。図20に示すように、積層コンデンサ10dの第2内部電極14が有する2つの第2引き出し部14Cは、一方が素体11dの第1側面11Aであって、2つの第1引き出し部13C、13Cの間に引き出される。また、他方の第2引き出し部14Cは、素体11dの第2側面11Bであって、2つの第3引き出し部15C、15Cの間に引き出される。
【0061】
このように、積層コンデンサ10dは、第1側面11Aに2つの第1引き出し部13C、13Cと、一つの第2引き出し部14Cとが引き出され、第2側面11Bに2つの第3引き出し部15C、15Cと、一つの第2引き出し部14Cとが引き出される。そして、2つの第1引き出し部13C、13Cに、それぞれ第1側面側第1端子電極21Ac、21Adが電気的に接続されるとともに、一つの第2引き出し部14Cに第1側面側第2端子電極22Aが電気的に接続される。また、2つの第3引き出し部15C、15Cに、それぞれ第2側面側第3端子電極23Bc、23Bdが電気的に接続されるとともに、一つの第2引き出し部14Cに第2側面側第2端子電極22Bが電気的に接続される。第1側面側第1端子電極21Ac及び第2側面側第3端子電極23Bcは第3側面11C側に配置され、第1側面側第1端子電極21Ad及び第2側面側第3端子電極23Bdは第4側面11D側に配置される。
【0062】
第1側面側第1端子電極21Ac又は第2側面側第3端子電極23Bcは回路基板2の基板電極3Iに接続されて電気信号が入力される。第1側面側第1端子電極21Ad又は第2側面側第3端子電極23Bdは回路基板2の基板電極3Oに接続されて、第1内部電極13又は第3内部電極15を通過した前記電気信号が出力される(前記電気信号の入出力関係は逆でもよい)。第1側面側第2端子電極22A又は第2側面側第2端子電極22Bは、回路基板2のGND(グランド)電極3Gに接続される。このように、積層コンデンサ10dも、上述した積層コンデンサ10cと同様に、電気信号が内部を通過する、いわゆる貫通型コンデンサとして用いることができる。
【0063】
図22に示す実装構造1dにおいて、積層コンデンサ10dは、同一側面としての第1側面11Aに設けられた第1側面側第1端子電極21Ac、21Ad及び第1側面側第2端子電極22Aのみが回路基板2の基板電極3I等と接続される。あるいは、積層コンデンサ10dは、同一側面としての第2側面11Bに設けられた第2側面側第3端子電極23Bc、23Bd及び第2側面側第2端子電極22Bのみが回路基板2の基板電極3I等と接続される。このため、実装構造1dにおいて、積層コンデンサ10cは、同一側面としての第1側面11A側のみが回路基板2に取り付けられ、第1側面11Aと対向する第2側面11B側は回路基板2に取り付けられず、あるいは、同一側面としての第2側面11B側のみが回路基板2に取り付けられ、第2側面11Bと対向する第1側面11A側は回路基板2に取り付けられない。その結果、実装構造1dは、貫通型コンデンサを用いる場合において、音鳴きを抑制することができる。
【0064】
積層コンデンサ10dは、平面視、すなわち、第1主面11E又は第2主面11F側から見た場合に、第1主面11E及び第2主面11Fの中心(図心)に対して第1側面側第1端子電極21Acと第2側面側第3端子電極23Bdとが点対称に配置され、第1側面側第1端子電極21Adと第2側面側第3端子電極23Bcとが点対称に配置され、さらに、第1側面側第2端子電極22Aと第2側面側第2端子電極22Bとが点対称に配置される。このため、積層コンデンサ10dを部品搭載装置で回路基板2に搭載する場合、積層コンデンサ10dが第1主面11E及び第2主面11Fの中心に対して180度回転しても積層コンデンサ10dを同様に回路基板2へ搭載できる。その結果、積層コンデンサ10dを回路基板2へ搭載するときの自由度が向上する。
【0065】
以上、本実施形態及びその変形例は、貫通型の積層コンデンサの同一側面側でのみ回路基板に取り付け、実装する。その結果、貫通型の積層コンデンサであっても、電歪による積層コンデンサの収縮が回路基板に伝達されることを抑制できるので、積層コンデンサの電歪に起因する音鳴きを抑制することができる。本実施形態及びその変形例で記載した構成は、以下の実施形態及びその変形例においても適宜適用することができる。また、本実施形態及びその変形例で記載した構成を有するものは、本実施形態及びその変形例と同様の作用、効果を奏する。
【0066】
(実施形態3)
図23、図24は、実施形態3に係るコンデンサの構造を示す平面図である。図25は、実施形態3に係る実装構造の平面図である。本実施形態の積層コンデンサ10eは、上述した実施形態1の積層コンデンサ10と同様であるが、第1側面側第1端子電極21Aと第1側面側第2端子電極22Aと誘電体層12とを有する素子部分10Ae、10Beを複数(本実施形態では2つ)含む点が異なる。積層コンデンサ10eの他の構造は、上述した積層コンデンサ10と同様であり、本実施形態の実装構造1eも、積層コンデンサ10eを用いる以外は上述した実装構造1と同様である。したがって、実装構造1eも、上述した実装構造1と同様に音鳴きを抑制することができる。
【0067】
図23に示すように、積層コンデンサ10eは、第1側面側第1端子電極21Aと第1側面側第2端子電極22Aとが誘電体層12を介して積層された素子部分10Ae、10Beを有する。このように、積層コンデンサ10eは、コンデンサアレイを構成している。なお、本実施形態において、積層コンデンサ10eは2つの素子部分10Ae、10Beを有するが、素子部分の数は2に限定されるものではない。
【0068】
それぞれの素子部分10Ae、10Beは、便宜上、第3側面11Cと第4側面11Dとの中間(一点鎖線Gで示す部分)で分けられる。しかし、それぞれの素子部分10Ae、10Beは、誘電体層12を共通とした素体11eとして焼成されているので、積層コンデンサ10eにおいて、それぞれの素子部分10Ae、10Beは一体不可分である。それぞれの素子部分10Ae、10Beの構造は、上述した実施形態1の変形例1に係る積層コンデンサ10a(図10、図11)と同様である。
【0069】
積層コンデンサ10eは、第1側面11Aに第1側面側第1端子電極21Aと、第1側面側第2端子電極22Aとをそれぞれ2つずつ有する。また、積層コンデンサ10eは、第2側面11Bに第2側面側第1端子電極21Bと、第2側面側第2端子電極22Bとをそれぞれ2つずつ有する。積層コンデンサ10eは、それぞれの素子部分10Ae、10Beにおいて、一つの第1側面側第2端子電極22Aと一つの第1側面側第1端子電極21Aとが隣接し、一つの第2側面側第2端子電極22Bと一つの第2側面側第1端子電極21Bとが隣接する。なお、積層コンデンサ10eは、第1側面11Aと第2側面11Bとのいずれか一方のみに、第1側面側第1端子電極21Aと、第1側面側第2端子電極22Aとをそれぞれ2つずつ有していてもよい。この場合、それぞれの素子部分10Ae、10Beの構造は、上述した実施形態1の変形例2に係る積層コンデンサ10b(図13、図14)と同様である。
【0070】
積層コンデンサ10eの素体11eは、図1、図2に示す実施形態1の積層コンデンサ10の素体11と同様に、第1主面11F及び第2主面11Fを有する。第1主面11E及び第2主面11Fは、互いに対向し、かつ平面視が長方形形状である。素体11eの第3側面11C及び第4側面11Dは、第1主面11Eと第2主面11Fとの間を連結するように、第1主面11E及び第2主面11Fの短辺方向に延在し、かつ、互いに対向する。なお、第3側面11C及び第4側面11Dは、素体11eの第1主面11Aと第2主面11Bとを連結する。第1主面11A及び第2主面11Bは、第3側面11C及び第4側面11DとX方向(図1、図2参照)における寸法が同一であるが、第1主面11A及び第2主面11BのY方向における寸法は、第3側面11C及び第4側面11DのX方向における寸法よりも大きい。このため、第1主面11A、第2主面11Bは、第3側面11C及び第4側面11Dは、いずれも平面視が長方形(正方形も含む)形状であるが、平面視においては、第1主面11A及び第2主面11Bの方が、第3側面11C及び第4側面11Dよりも幅が大きくなる。
【0071】
積層コンデンサ10eは、第1側面11Aに第1側面側第1端子電極21Aと、第1側面側第2端子電極22Aとをそれぞれ2つずつ有し、第2側面11Bに第2側面側第1端子電極21Bと、第2側面側第2端子電極22Bとをそれぞれ2つずつ有する。このように、積層コンデンサ10eは、第1主面11Aと、第2主面11Bと、第3側面11Cと、第4側面11Dとのうち、長側面である第1主面11Aと第2主面11Bとの少なくとも一方に、第1側面側第1端子電極21A、第2側面側第1端子電極21B等を有している。また、積層コンデンサ10eは、複数(本実施形態では2つ)の素子部分10Ae、10Beが、第3側面11Cと第4側面11Dとが対向する方向、すなわち、素体10eの長手方向に向かって配列される。
【0072】
図25に示す実装構造1eにおいて、積層コンデンサ10eは、同一側面としての第1側面11A又は第2側面11Bに設けられた2つの第1側面側第1端子電極21A及び2つの第1側面側第2端子電極22Aのみが回路基板2の基板電極3I等と接続される。このため、実装構造1eにおいて、積層コンデンサ10eは、同一側面としての第1側面11A側のみが回路基板2に取り付けられ、第1側面11Aと対向する第2側面11B側は回路基板2に取り付けられず、あるいは、同一側面としての第2側面11B側のみが回路基板2に取り付けられ、第2側面11Bと対向する第1側面11A側は回路基板2に取り付けられない。その結果、実装構造1eは、複数の素子部分10Ae、10Beを有する積層コンデンサ10eを用いる場合でも音鳴きを抑制することができる。また、積層コンデンサ10eは、第1側面11A側と第2側面11B側とのいずれでも回路基板2に取り付けることができるので、実装構造1eは、積層コンデンサ10aを回路基板2へ搭載するときの自由度が向上する。
【0073】
以上、本実施形態は、コンデンサアレイ、すなわち、複数の素子部分を有する積層コンデンサにおいて、同一側面側でのみ回路基板に取り付け、実装する。その結果、積層コンデンサがコンデンサアレイであっても、電歪による積層コンデンサの収縮が回路基板に伝達されることを抑制できるので、積層コンデンサの電歪に起因する音鳴きを抑制することができる。本実施形態で記載した構成を有するものは、本実施形態及びその変形例と同様の作用、効果を奏する。
【符号の説明】
【0074】
1、1a、1c、1d、1e、101 実装構造
2 回路基板
2P 基板面
3、3I、3C 基板電極
3G GND(グランド)電極
5 レジスト層
10、10a、10b、10c、10d、10e 積層コンデンサ
10Ae、10Be 素子部分
11、11a、11b、11c、11d、11e 素体
11A 第1側面
11B 第2側面
11C 第3側面
11D 第4側面
11E 第1実装面(第1主面)
11F 第2実装面(第2主面)
12 誘電体層
13 第1内部電極
13C 第1引き出し部
14 第2内部電極
14C 第2引き出し部
15 第3内部電極
15C 第3引き出し部
21S、22S 側面側電極
21T、22T 実装面側電極
21A、21Ac、21Ad 第1側面側第1端子電極
21B 第2側面側第1端子電極
22A 第1側面側第2端子電極
22B 第2側面側第2端子電極
23Bc、23Bd 第2側面側第3端子電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板の基板面と直交する方向に第1内部電極と第2内部電極とが誘電体層を介して積層される素体と、
前記第1内部電極と前記第2内部電極とが積層される方向と直交する方向に存在する前記素体の第1側面に設けられて前記第1内部電極と接続される第1側面側第1端子電極と、
前記第1側面側第1端子電極が設けられる前記第1側面に設けられて前記第2内部電極と接続される第1側面側第2端子電極と、を含む積層コンデンサが、
前記第1側面側で前記回路基板に取り付けられ、前記第1側面と対向する第2側面側は前記回路基板に取り付けられないことを特徴とする積層コンデンサの実装構造。
【請求項2】
前記第1側面に隣接する第3側面と第4側面とは、前記第1内部電極又は前記第2内部電極と接続される端子電極を有さず、前記第3側面側と前記第4側面側とは、前記回路基板に取り付けられない請求項1に記載の積層コンデンサの実装構造。
【請求項3】
前記積層コンデンサは、
前記第2側面に設けられて前記第1内部電極と接続される第2側面側第1端子電極と、
前記第2側面に設けられて前記第2内部電極と接続される第2側面側第2端子電極と、
をさらに含み、前記第1側面側又は前記第2側面側のいずれか一方が前記回路基板に取り付けられる請求項1又は2に記載の積層コンデンサの実装構造。
【請求項4】
前記積層コンデンサは、
前記第1側面に複数の前記第1側面側第1端子電極を有し、前記第1内部電極は、複数の前記第1側面側第1端子電極と接続される請求項1又は2に記載の積層コンデンサの実装構造。
【請求項5】
前記積層コンデンサは、
誘電体層を介して前記第2内部電極と対向して配置される第3内部電極と、
前記第2側面に設けられて、前記第3内部電極と接続される複数の第2側面側第3端子電極と、
前記第2側面に設けられて前記第2内部電極と接続される第2側面側第2端子電極と、
をさらに含む請求項4に記載の積層コンデンサの実装構造。
【請求項6】
前記積層コンデンサは、
前記第1側面側第1端子電極と前記第1側面側第2端子電極と前記誘電体層とを有する素子部分を複数含む請求項1又は2に記載の積層コンデンサの実装構造。
【請求項7】
前記素体は、互いに対向し、かつ平面視が長方形形状の第1主面及び第2主面と、前記第1主面と前記第2主面との間を連結するように、前記第1主面及び前記第2主面の短辺方向に延在し、かつ、互いに対向する第3側面と第4側面とを有し、
複数の前記素子部分は、前記第3側面と前記第4側面とが対向する方向に向かって配列される請求項6に記載の積層コンデンサの実装構造。
【請求項8】
前記素子部分は、
前記第2側面に設けられて前記第1内部電極と接続される第2側面側第1端子電極と、
前記第2側面に設けられて前記第2内部電極と接続される第2側面側第2端子電極と、
をさらに含み、前記第1側面側又は前記第2側面側のいずれか一方が前記回路基板に取り付けられる請求項6又は7に記載の積層コンデンサの実装構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2012−227491(P2012−227491A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−96428(P2011−96428)
【出願日】平成23年4月22日(2011.4.22)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】