説明

積層ゴム構造体の加硫用金型及び積層ゴム構造体の製造方法

【課題】各中間板が積層方向と直交する方向に位置ずれを生ずることがなく、しかも加硫用金型の加圧に伴う未加硫ゴム部材の流動によって各中間板の積層方向の間隔が変わることのない積層ゴム構造体の加硫用金型及び積層ゴム構造体の製造方法を提供することにある。
【解決手段】各中間板30,31の各貫通孔30a,31aには上側シャフト14及び下側シャフト15がそれぞれ挿通し、各中間板30,31が積層方向と直交する方向に位置ずれを生ずることがない。また、各中間板30,31は各貫通孔30a,31aが各テーパー部14a,15aと積層方向に係止する係止位置よりも積層方向外側への移動を規制されるので、加硫用金型10の加圧により流動する未加硫ゴム部材20によって各中間板30,31に積層方向の力が加わる場合でも、各中間板30,31は積層方向への位置ずれや変形を生ずることがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば橋梁や建築物等の構造物を支持するために用いられる積層ゴム構造体の加硫用金型及び積層ゴム構造体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、この種の積層ゴム構造体は、複数の未加硫ゴム部材及び中間板を加硫用金型内に上下方向に交互に積層して加硫することにより成型される。また、加硫用金型内において各中間板が水平方向に位置ずれを生ずると、各中間板が互いに水平方向に位置ずれを生ずることにより鉛直剛性や水平剛性等の免震性能が低下するとともに、加硫ゴムから中間板が露出して外観上好ましくないため、各中間板に位置決め孔を設けるとともに各中間板の位置決め孔に上下方向に延びるように形成された位置決めシャフトを挿通し、各中間板が水平方向に位置ずれを生じないようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平10−115344号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、前記製造方法では、加硫用金型内に各未加硫ゴム部材及び各中間板を配置して加硫用金型を上方から加圧すると、加硫用金型内の未加硫ゴム部材が水平方向内側から外側に向かって流動するとともに水平方向外側において上方または下方に流動するため、中間板に上方または下方に向かう大きな力が加わり、中間板の上下方向への位置ずれや中間板の変形が生ずる。このため、各中間板の上下方向の間隔が所定の間隔ではなくなり、外観上好ましくないという問題点があった。
【0004】
本発明は前記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、各中間板が積層方向と直交する方向に位置ずれを生ずることがなく、しかも加硫用金型の加圧に伴う未加硫ゴム部材の流動によって各中間板の積層方向の間隔が変わることのない積層ゴム構造体の加硫用金型及び積層ゴム構造体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は前記目的を達成するために、複数の未加硫ゴム部材及び中間板を交互に積層するとともに、その積層方向両端にそれぞれ端面板を配置して加硫成型する積層ゴム構造体の製造に用いる加硫用金型において、前記各中間板にそれぞれ設けられて積層方向に配列される位置決め孔に積層方向一方及び他方からそれぞれ挿通可能な一対の位置決めシャフトを備え、各位置決めシャフトの少なくとも一部を積層方向外側から積層方向内側に向かって徐々に外形が小さくなるように形成している。
【0006】
これにより、各位置決め孔に位置決めシャフトが積層方向一方及び他方からそれぞれ挿通されることから、各中間板が積層方向と直交する方向に位置ずれを生ずることがない。また、各位置決めシャフトは積層方向外側から積層方向内側に向かって徐々に外形が小さくなるように形成されていることから、各中間板を位置決め孔が積層方向外側から積層方向内側に向かって内形の大きなものから順次配列されるように加硫用金型内に配置することにより、各位置決め孔がその内形と同等の外形を有する位置決めシャフトの外形部にそれぞれ積層方向内側から係止し、各中間板は位置決め孔が位置決めシャフトと係止する係止位置よりも積層方向外側への移動をそれぞれ規制される。
【0007】
また、本発明は、複数の未加硫ゴム部材及び中間板を交互に積層するとともに、その積層方向両端にそれぞれ端面板を配置して加硫成型する積層ゴム構造体の製造に用いる加硫用金型において、前記各中間板にそれぞれ設けられて積層方向に配列される位置決め孔に積層方向一方から挿通可能な位置決めシャフトを備え、位置決めシャフトの少なくとも一部を積層方向一方から他方に向かって徐々に外形が小さくなるように形成している。
【0008】
これにより、各位置決め孔に位置決めシャフトが積層方向一方から挿通されることから、各中間板が積層方向と直交する方向に位置ずれを生ずることがない。また、位置決めシャフトは積層方向一方から他方に向かって徐々に外形が小さくなるように形成されていることから、各中間板を位置決め孔が積層方向一方から他方に向かって内形の大きなものから順次配列されるように加硫用金型内に配置することにより、各位置決め孔がその内形と同等の外形を有する位置決めシャフトの外形部にそれぞれ積層方向一方から係止し、各中間板は位置決め孔が位置決めシャフトと係止する係止位置よりも積層方向他方への移動をそれぞれ規制される。
【0009】
また、本発明は、複数の未加硫ゴム部材及び中間板を交互に積層するとともに、その積層方向両端にそれぞれ端面板を配置して加硫成型する積層ゴム構造体の製造に用いる加硫用金型において、前記各中間板にそれぞれ設けられて積層方向に配列される位置決め孔に積層方向に挿通可能な位置決めシャフトを備え、前記位置決めシャフトに少なくとも一部の中間板に積層方向一方のみから係止可能な係止部を設けている。
【0010】
これにより、各位置決め孔を位置決めシャフトが積層方向に挿通することから、各中間板が積層方向と直交する方向に位置ずれを生ずることがない。また、位置決めシャフトには各中間板のうち少なくとも一部の中間板に積層方向一方のみから係止可能な係止部が設けられていることから、位置決めシャフトの係止部が前記少なくとも一部の中間板に係止するように各中間板を加硫用金型内に配置することにより、位置決めシャフトが係止する中間板がその係止位置よりも積層方向一方への移動を規制される。さらに、一部の中間板の積層方向への移動が規制されることにより、加硫用金型内の未加硫ゴム部材の流動状態が変わることから、位置決めシャフトが係止しない中間板の積層方向への移動も抑制される。
【0011】
また、本発明は、複数の未加硫ゴム部材及び中間板を交互に積層するとともに、その積層方向両端にそれぞれ端面板を配置して加硫用金型内で加硫することにより積層ゴム構造体を成型する積層ゴム構造体の製造方法において、前記各中間板にそれぞれ設けられて積層方向に配列される位置決め孔に積層方向一方及び他方からそれぞれ挿通可能に形成されるとともに、少なくとも一部が積層方向外側から積層方向内側に向かって徐々に外形が小さくなるように形成された一対の位置決めシャフトを備えた加硫用金型内に、各中間板を位置決め孔が積層方向外側から積層方向内側に向かって内形の大きなものから順次配列されるように配置して加硫成型するようにしている。
【0012】
これにより、各位置決め孔に位置決めシャフトが積層方向一方及び他方からそれぞれ挿通されることから、各中間板が積層方向と直交する方向に位置ずれを生ずることがない。また、各位置決め孔は積層方向外側から積層方向内側に向かって内形の大きなものから順次配列されるとともに、各位置決めシャフトは積層方向外側から積層方向内側に向かって徐々に外形が小さくなるように形成されていることから、各位置決め孔がその内形と同等の外形を有する位置決めシャフトの外形部にそれぞれ積層方向内側から係止し、各中間板は位置決め孔が位置決めシャフトと係止する係止位置よりも積層方向外側への移動をそれぞれ規制される。
【0013】
また、本発明は、複数の未加硫ゴム部材及び中間板を交互に積層するとともに、その積層方向両端にそれぞれ端面板を配置して加硫用金型内で加硫することにより積層ゴム構造体を成型する積層ゴム構造体の製造方法において、前記各中間板にそれぞれ設けられて積層方向に配列される位置決め孔に積層方向一方から挿通可能に形成されるとともに、少なくとも一部が積層方向一方から他方に向かって徐々に外形が小さくなるように形成された位置決めシャフトを備えた加硫用金型内に、各中間板を位置決め孔が積層方向一方から他方に向かって内形の大きなものから順次配列されるように配置して加硫成型するようにしている。
【0014】
これにより、各位置決め孔に位置決めシャフトが積層方向一方から挿通されることから、各中間板が積層方向と直交する方向に位置ずれを生ずることがない。また、各位置決め孔は積層方向一方から他方に向かって内形の大きなものから順次配列されるとともに、位置決めシャフトは積層方向一方から他方に向かって徐々に外形が小さくなるように形成されていることから、各位置決め孔がその内形と同等の外形を有する位置決めシャフトの外形部にそれぞれ積層方向一方から係止し、各中間板は位置決め孔が位置決めシャフトと係止する係止位置よりも積層方向他方への移動をそれぞれ規制される。
【0015】
また、本発明は、複数の未加硫ゴム部材及び中間板を交互に積層するとともに、その積層方向両端にそれぞれ端面板を配置して加硫用金型内で加硫することにより積層ゴム構造体を成型する積層ゴム構造体の製造方法において、前記各中間板にそれぞれ設けられて積層方向に配列される位置決め孔に積層方向に挿通可能に形成されるとともに、少なくとも一部の中間板に積層方向一方のみから係止可能な係止部を有する位置決めシャフトを備えた加硫用金型内に、位置決めシャフトの係止部が前記少なくとも一部の中間板に係止するように各中間板を配置して加硫成型するようにしている。
【0016】
これにより、各位置決め孔を位置決めシャフトが積層方向に挿通することから、各中間板が積層方向と直交する方向に位置ずれを生ずることがない。また、位置決めシャフトには少なくとも一部の中間板に積層方向一方のみから係止可能な係止部が設けられていることから、位置決めシャフトが係止する中間板はその係止位置よりも積層方向一方への移動を規制される。さらに、一部の中間板の積層方向への移動が規制されることにより、加硫用金型内の未加硫ゴム部材の流動状態が変わることから、位置決めシャフトが係止しない中間板の積層方向への移動も抑制される。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、各中間板は積層方向と直交する方向に位置ずれを生ずることがなく、また、位置決めシャフトと係止する中間板はその係止位置よりも所定の積層方向への移動が規制されるので、加硫用金型の加圧に伴う未加硫ゴム部材の流動によって中間板に積層方向の力が加わる場合でも、各中間板は積層方向への位置ずれや変形を生ずることがなく、各中間板の積層方向の間隔が未加硫ゴム部材の流動によって変わることを防止できる。即ち、各中間板の積層方向の間隔が常に所定の間隔になるように加硫成型することができ、確実に所望の外観を得ることができる点で極めて有利である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1乃至図4は本発明の第1の実施形態を示すもので、図1は加硫成型中の加硫用金型の平面図、図2は図1におけるA−A線断面図、図3は加硫用金型内に各中間板、各端面板及び各未加硫ゴム部材を配置する状態を示す側面断面図、図4は加硫成型後に積層ゴム構造体を加硫用金型から離型する状態を示す側面断面図である。
【0019】
本発明の積層ゴム構造体の製造方法は、図3に示すように、加硫用金型10内に複数の未加硫ゴム部材20と2枚の第1中間板30及び1枚の第2中間板31とを交互に積層するとともに、その積層方向両端に下側端面板32及び上側端面板33を配置した後、加硫用金型10を加圧及び加熱することにより積層ゴム構造体を成型するものである。
【0020】
加硫用金型10は、下型11と、上型12と、中型13と、加硫用金型10内に配置される位置決めシャフトとしての4本の上側シャフト14及び4本の下側シャフト15とから構成されている。
【0021】
下型11は矩形の板状に形成され、上面の外周部に全周に亘って上方に延びる突状部11aが設けられている。また、突状部11aの内周面には上方に向かって徐々に外側に傾斜する傾斜面11bが形成されている。
【0022】
上型12は矩形の板状に形成され、下面の外周部に全周に亘って下方に延びる突状部12aが設けられている。また、突状部12aの内周面には下方に向かって徐々に外側に傾斜する傾斜面12bが形成されている。さらに、上型12の下面には後述する各第1中間板30の各貫通孔30aに対応する位置にそれぞれ位置決め穴12cが設けられ、各位置決め穴12cにはそれぞれ上側シャフト14の上端部が挿入されるようになっている。
【0023】
中型13は幅方向に分割可能な一対の中型部材13aからなり、各中型部材13aは水平方向の断面がコ字形状に形成されている。また、各中型部材13aの上端部の外周面には上方に向かって徐々に内側に傾斜する傾斜面13bが形成されるとともに、各中型部材13aの下端部の外周面には下方に向かって徐々に内側に傾斜する傾斜面13cが形成されている。
【0024】
各上側シャフト14は円柱状に形成され、下端部側には下方に向かって徐々に外径が小さくなるテーパー部14aが設けられている。また、各上側シャフト14の上端部の外周面には全周に亘って面取り部14bが形成されている。
【0025】
各下側シャフト15は円柱状に形成され、上端部側には上方に向かって徐々に外径が小さくなるテーパー部15aが設けられている。また、各下側シャフト15の下端部側の外周面にはネジ部15bが設けられている。さらに、各下側シャフト15のテーパー部15aの形状は各上側シャフト14のテーパー部14aの形状と等しい形状に形成されている。また、各シャフト14,15は互いの先端部が加硫用金型10内で上下方向に当接するようになっている。
【0026】
未加硫ゴム部材20は矩形のシート状に成形され、四隅には後述する第1中間板30の各貫通孔30aに対応する位置に上下方向に貫通する貫通孔20aが設けられている。
【0027】
各第1中間板30は鉄鋼材料からなり、矩形の板状に形成されるとともに、四隅の近傍には上下方向に貫通する位置決め孔としての貫通孔30aが設けられている。また、各貫通孔30aは各シャフト14,15のテーパー部14a,15aの上下方向略中央部の外径と等しい内径に形成されている。さらに、各第1中間板30の上面及び下面には未加硫ゴム部材20を加硫接着するための接着剤が塗布されている。
【0028】
第2中間板31は鉄鋼材料からなり、矩形の板状に形成されるとともに、四隅の近傍には上下方向に貫通する位置決め孔としての貫通孔31aが設けられている。また、各貫通孔31aは第1中間板30の各貫通孔30aに対応する位置にそれぞれ設けられ、各貫通孔31aは各シャフト14,15のテーパー部14a,15aの先端部の外径と等しい内径に形成されている。さらに、各第2中間板31の上面及び下面には未加硫ゴム部材20を加硫接着するための接着剤が塗布されている。
【0029】
下側端面板32は鉄鋼材料からなり、各中間板30,31よりも厚い矩形の板状に形成されるとともに、四隅の近傍には上下方向に貫通するネジ孔32aが設けられている。また、各ネジ孔32aは第1中間板30の各貫通孔30aに対応する位置にそれぞれ設けられ、下側端面板32の上面側には未加硫ゴム部材20を加硫接着するための接着剤が塗布されている。
【0030】
上側端面板33は鉄鋼材料からなり、各中間板30,31よりも厚い矩形の板状に形成されるとともに、四隅の近傍には上下方向に貫通する貫通孔33aが設けられている。また、各貫通孔33aは第1中間板30の各貫通孔30aに対応する位置にそれぞれ設けられ、上側端面板33の下面側には未加硫ゴム部材20を加硫接着するための接着剤が塗布されている。
【0031】
ここで、本実施形態の積層ゴム構造体の製造方法について説明する。先ず、図3に示すように、下側端面板32の各ネジ孔32aにそれぞれ下側シャフト15を螺合し、下側端面板32を中型13が取付けられた下型11に載置する。次に、各第1中間板30の間に第2中間板31を配置するともに、各第1中間板30の上面側及び下面側にそれぞれ未加硫ゴム部材20を配置し、各中間板30,31及び各未加硫ゴム部材20を加硫用金型10内に配置する。この時、各貫通孔30a,31a,20aに各下側シャフト15が挿通するようにする。続いて、その上面に上側端面板33を載置するとともに上側端面板33の各貫通孔33aにそれぞれ上方から上側シャフト14を挿入し、各上側シャフト14が各位置決め穴12cに挿入されるように上型12を載置する。
【0032】
この状態で加硫用金型10を図示しない加硫プレスによって上方から加圧しながら加熱すると、図2に示すように、未加硫ゴム部材20が水平方向内側から外側に向かって流動するとともに水平方向外側において上方または下方に流動する。
【0033】
ここで、各中間板30,31の各貫通孔30a,31aには上側シャフト14及び下側シャフト15がそれぞれ挿通していることから、各中間板30,31が積層方向と直交する方向に位置ずれを生ずることがない。
【0034】
また、各第1中間板30の各貫通孔30aはシャフト14,15のテーパー部14a,15aの上下方向略中央部の外径と等しい内径に形成されるとともに、第2中間板31の各貫通孔31aはシャフト14,15のテーパー部14a,15aの先端部の外径と等しい内径に形成されていることから、各中間板30,31は各貫通孔30a,31aが各テーパー部14a,15aと積層方向に係止する係止位置よりも積層方向外側への移動を規制される。
【0035】
続いて、図4に示すように、所定の時間だけ加圧及び加熱した後に下型11、上型12及び中型13を互いに離れるように移動し、また、各上側シャフト14を上方に抜き取るとともに下側シャフト15を下方に抜き取ることにより、積層ゴム構造体を離型する。この際、各下側シャフト15は下側端面板32に着脱自在に螺合しているので、下型11を積層ゴム構造体から離す時に各下側シャフト15が落下することがなく、各下側シャフト15を抜き取ることが容易になる。また、このように製造された積層ゴム構造体には、内部に積層方向外側から積層方向内側に向かって徐々に内径が小さくなる複数の穴が形成される。
【0036】
このように、本実施形態によれば、各中間板30,31の各貫通孔30a,31aには上側シャフト14及び下側シャフト15がそれぞれ挿通し、各中間板30,31が積層方向と直交する方向に位置ずれを生ずることがないので、加硫ゴムからの各中間板30,31の露出を防止することができ、確実に所望の外観を得ることができる。
【0037】
また、各中間板30,31は各貫通孔30a,31aが各テーパー部14a,15aと積層方向に係止する係止位置よりも積層方向外側への移動を規制されるので、加硫用金型10の加圧により流動する未加硫ゴム部材20によって各中間板30,31に積層方向の力が加わる場合でも、各中間板30,31は積層方向への位置ずれや変形を生ずることがなく、各中間板30,31の積層方向の間隔が未加硫ゴム部材20の流動によって変わることを防止できる。即ち、各中間板30,31の積層方向の間隔が常に所定の間隔になるように加硫成型することができ、確実に所望の外観を得ることができる点で極めて有利である。
【0038】
さらに、各下側シャフト15は下側端面板32に着脱自在に螺合しているので、積層ゴム構造体を下型11から離型する時に各下側シャフト15が落下することを防止でき、積層ゴム構造体の離型作業を容易且つ確実に行うことができる。
【0039】
また、各貫通孔30a,31aを各中間板30,31の四隅の近傍に設けたので、未加硫ゴム部材20の流動によって積層方向への位置ずれまたは変形が生じやすい各中間板30,31の四隅を移動規制することができ、各中間板30,31の積層方向の間隔を所定の間隔に保持する上で極めて有利である。
【0040】
尚、本実施形態では、各貫通孔30a,31aを円形状に形成するとともに、各シャフト14,15を円柱状に形成したものを示したが、各貫通孔30a,31aを多角形状に形成するとともに、各シャフト14,15を各貫通孔30a,31aを挿通可能な多角柱状に形成することも可能である。
【0041】
図5は本発明の第2の実施形態を示す加硫成型中の加硫用金型の側面断面図である。尚、第1の実施形態と同等の構成部分には同一の符号を付して示す。
【0042】
本発明の積層ゴム構造体の製造方法は、図5に示すように、加硫用金型40内に複数の未加硫ゴム部材20と第1中間板50、第2中間板51及び第3中間板52とを交互に積層するとともに、その積層方向両端に下側端面板53及び第1の実施形態と同様の上側端面板33を配置した後、加硫用金型40を加圧及び加熱することにより積層ゴム構造体を成型するものである。
【0043】
加硫用金型40は、下型41と、加硫用金型10内に配置される位置決めシャフトとしての4本のシャフト42と、第1の実施形態と同様の上型12及び中型13とから構成されている。
【0044】
下型41は矩形の板状に形成され、上面の外周に全周に亘って上方に延びる突出部41aが設けられている。また、突出部41aの内周面には上方に向かって徐々に外側に傾斜する傾斜面41bが形成されている。さらに、下型41の上面には後述する第1中間板50の各貫通孔50aに対応する位置にそれぞれ位置決め穴41cが設けられ、各位置決め穴41cにはそれぞれシャフト42の下端部が挿入されるようになっている。
【0045】
各シャフト42は円柱状に形成され、上下方向中央部には下方に向かって徐々に外径が小さくなるテーパー部42aが設けられている。また、各シャフト42の上端部の外周面には全周に亘って面取り部42bが形成されるとともに、下端部の外周面には全周に亘って面取り部42cが形成されている。
【0046】
各中間板50,51,52は鉄鋼材料からなり、矩形の板状に形成されるとともに、四隅の近傍には上下方向に貫通する位置決め孔としての貫通孔50a,51a,52aがそれぞれ設けられている。第1中間板50の各貫通孔50aはシャフト42のテーパー部42aにおける下端側の外径と等しい内径に形成され、第2中間板51の各貫通孔51aはシャフト42のテーパー部42aにおける上下方向略中央部の外径と等しい内径に形成されている。また、第3中間板52の各貫通孔52aはシャフト42のテーパー部42aにおける上端側の外径と等しい内径に形成されている。さらに、各中間板50,51,52の上面及び下面には未加硫ゴム部材20と加硫接着するための接着剤がそれぞれ塗布されている。
【0047】
下側端面板53は鉄鋼材料からなり、各中間板50,51,52よりも厚い矩形の板状に形成されるとともに、四隅の近傍には上下方向に貫通する貫通孔53aが設けられている。また、各貫通孔53aは第1中間板50の各貫通孔50aに対応する位置にそれぞれ設けられ、下側端面板53の上面側には未加硫ゴム部材20を加硫接着するための接着剤が塗布されている。
【0048】
ここで、本実施形態の積層ゴム構造体の製造方法は、第1の実施形態と同様に各未加硫ゴム部材20、各中間板50,51,52及び各端面板33,53を加硫用金型40内に配置するとともに、上側端面板33の各貫通孔33aに上方からシャフト42をそれぞれ挿入した後、上型12を載置する。
【0049】
この状態で加硫用金型40を図示しない加硫プレスによって上方から加圧しながら加熱すると、図5に示すように、未加硫ゴム部材20が水平方向内側から外側に向かって流動するとともに水平方向外側において上方に流動する。
【0050】
ここで、各中間板50,51,52の各貫通孔50a,51a,52aにはシャフト42がそれぞれ挿通していることから、各中間板50,51,52が積層方向と直交する方向に位置ずれを生ずることがない。
【0051】
また、第1中間板50の各貫通孔50aはシャフト42のテーパー部42aにおける下端側の外径と等しい内径に形成されるとともに、第2中間板51の各貫通孔51aはシャフト42のテーパー部42aにおける上下方向略中央部の外径と等しい内径に形成され、さらに、第3中間板52の各貫通孔52aはシャフト42のテーパー部42aにおける上端側の外径と等しい内径に形成されていることから、各中間板50,51,52は各貫通孔50a,51a,52aが各テーパー部42aと積層方向に係止する位置よりも上方への移動を規制される。
【0052】
このように、本実施形態によれば、各中間板50,51,52は各貫通孔50a,51a,52aが各テーパー部42aと積層方向に係止する係止位置よりも上方への移動を規制されるので、加硫用金型40の加圧により流動する未加硫ゴム部材20によって各中間板50,51,52に上向きの力が加わる場合でも、各中間板50,51,52が積層方向への位置ずれや変形を生ずることがなく、各中間板50,51,52の積層方向の間隔が未加硫ゴム部材20の流動によって変わることを防止できる。即ち、各中間板50,51,52の積層方向の間隔が常に所定の間隔になるように加硫成型することができ、確実に所望の外観を得ることができる点で極めて有利である。
【0053】
図6乃至図7は本発明の第3の実施形態を示すもので、図6は加硫成型中の加硫用金型の側面断面図、図7はシャフトの要部断面図である。尚、第2の実施形態と同等の構成部分には同一の符号を付して示す。
【0054】
本発明の積層ゴム構造体の製造方法は、図6に示すように、加硫用金型60内に複数の未加硫ゴム部材20と複数の中間板70とを交互に積層するとともに、その積層方向両端に第2の実施形態と同様の各端面板53,33を配置した後、加硫用金型60を加圧及び加熱することにより積層ゴム構造体を成型するものである。
【0055】
加硫用金型60は、第2の実施形態と同様の下型41、上型12及び中型13と、加硫用金型60内に配置される位置決めシャフトとしての4本のシャフト61とから構成されている。
【0056】
各シャフト61は円柱状に形成され、互いに上下方向に間隔をおいて2箇所にそれぞれ一対の係止部材61aが設けられている。各係止部材61aはシャフト61に設けられた凹状部61b内に配置されるとともに、上端部が取付ピン61cによってシャフト61に取付けられ、シャフト61の径方向に回動するようになっている。また、各係止部材61aの下端部側にはそれぞれ付勢部材としてのスプリング61dが取付けられ、スプリング61dによって係止部材61aがシャフト61の径方向外側に付勢されている。即ち、シャフト61を後述する中間板70の貫通孔70aに下方から挿入すると、係止部材61aが貫通孔70aに係合することによりスプリング61dの付勢力に抗してシャフト61の径方向内側に回動し、凹状部61b内に没して貫通孔70aを通過する。また、貫通孔70aを通過した後は係止部材61aがスプリング61dの付勢力によりシャフト61の径方向外側に回動し、係止部材61aが凹状部61b外に突出して中間板70の上面に係止するようになっている。
【0057】
各中間板70は鉄鋼材料からなり、矩形の板状に形成されている。また、中間板70の四隅の近傍には上下方向に貫通する位置決め孔としての貫通孔70aが設けられ、貫通孔70aはシャフト61の外径よりもわずかに大きな内径に形成されている。
【0058】
ここで、本実施形態の積層ゴム構造体の製造方法は、第2の実施形態と同様に各未加硫ゴム部材20、各中間板70及び各端面板33,53の各貫通孔70a,33a,53aに下方からシャフト61を挿入して加硫用金型60内に配置した後、上型12を載置する。
【0059】
この状態で加硫用金型60を図示しない加硫プレスによって上方から加圧しながら加熱すると、図6に示すように、未加硫ゴム部材20が水平方向内側から外側に向かって流動するとともに水平方向外側において上方に流動する。
【0060】
ここで、各中間板70の各貫通孔70aにはシャフト61がそれぞれ挿通していることから、各中間板70が積層方向と直交する方向に位置ずれを生ずることがない。
【0061】
また、一部の中間板70の各貫通孔70a付近の上面には各シャフト61の各係止部材61aが係止することから、係止部材61aと係止する中間板70はその係止位置よりも上方への移動を規制される。また、加硫成型後にシャフト61を上方に向かって抜き取る際には、各係止部材61aが各貫通孔70a,33aに係合してシャフト61の径方向内側に回動するので、各シャフト61を加硫成型後の積層ゴム構造体から容易に取り外すことができる。
【0062】
このように、本実施形態によれば、一部の中間板70が各シャフト61の各係止部材61aによって上方への移動を規制されるので、加硫用金型60の加圧により流動する未加硫ゴム部材20によって各中間板70に上向きの力が加わる場合でも、各係止部材61aが係止する中間板70が積層方向への位置ずれや変形を生ずることがない。また、一部の中間板70の積層方向への位置ずれや変形が規制されることにより、加硫用金型60内の未加硫ゴム部材20の流動状態が変化し、他の中間板70の積層方向への位置ずれや変形を抑制することができる。即ち、各中間板70の積層方向の間隔が常に所定の間隔になるように加硫成型することができ、確実に所望の外観を得ることができる点で極めて有利である。
【0063】
尚、本実施形態では、シャフト61にスプリング61dによって径方向外側に向かって付勢された係止部材61aを設けたものを示したが、上端部がシャフト61の外周面に固定さるとともに下端部がシャフト61の径方向外側に突出し、シャフト61を貫通孔70aに下方から挿通すると下端部がシャフト61の径方向内側に弾性変形するとともに、中間板70の上面に係止する係止部材を設けることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明における第1の実施形態を示す加硫成型中の加硫用金型の平面図
【図2】図1におけるA−A線断面図
【図3】加硫用金型内に各中間板、各端面板及び各未加硫ゴム部材を配置する状態を示す側面断面図
【図4】加硫成型後に積層ゴム構造体を加硫用金型から離型する状態を示す側面断面図
【図5】本発明の第2の実施形態を示す加硫成型中の加硫用金型の側面断面図
【図6】本発明の第3の実施形態示す加硫成型中の加硫用金型の側面断面図
【図7】シャフトの要部断面図
【符号の説明】
【0065】
10…加硫用金型、11…下型、12…上型、12c…位置決め穴、13…中型、14…上側シャフト、14a…テーパー部、15…下側シャフト、15a…テーパー部、15b…ネジ部、20…未加硫ゴム部材、30…第1中間板、30a…貫通孔、31…第2中間板、31a…貫通孔、32…下側端面板、32a…ネジ孔、33…上側端面板、33a…貫通孔、40…加硫用金型、41…下型、41c…位置決め穴、42…シャフト、42a…テーパー部、50…第1中間板、50a…貫通孔、51…第2中間板、51a…貫通孔、52…第3中間板、52a…貫通孔、53…下側端面板、53a…貫通孔、60…加硫用金型、61…シャフト、61a…係止部材、61d…スプリング、70…中間板、70a…貫通孔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の未加硫ゴム部材及び中間板を交互に積層するとともに、その積層方向両端にそれぞれ端面板を配置して加硫成型する積層ゴム構造体の製造に用いる加硫用金型において、
前記各中間板にそれぞれ設けられて積層方向に配列される位置決め孔に積層方向一方及び他方からそれぞれ挿通可能な一対の位置決めシャフトを備え、
各位置決めシャフトの少なくとも一部を積層方向外側から積層方向内側に向かって徐々に外形が小さくなるように形成した
ことを特徴とする積層ゴム構造体の加硫用金型。
【請求項2】
前記各位置決めシャフトのうち積層方向一端側の位置決めシャフトを積層方向一端側の端面板に着脱可能に形成した
ことを特徴とする請求項1記載の積層ゴム構造体の加硫用金型。
【請求項3】
複数の未加硫ゴム部材及び中間板を交互に積層するとともに、その積層方向両端にそれぞれ端面板を配置して加硫成型する積層ゴム構造体の製造に用いる加硫用金型において、
前記各中間板にそれぞれ設けられて積層方向に配列される位置決め孔に積層方向一方から挿通可能な位置決めシャフトを備え、
位置決めシャフトの少なくとも一部を積層方向一方から他方に向かって徐々に外形が小さくなるように形成した
ことを特徴とする積層ゴム構造体の加硫用金型。
【請求項4】
複数の未加硫ゴム部材及び中間板を交互に積層するとともに、その積層方向両端にそれぞれ端面板を配置して加硫成型する積層ゴム構造体の製造に用いる加硫用金型において、
前記各中間板にそれぞれ設けられて積層方向に配列される位置決め孔に積層方向に挿通可能な位置決めシャフトを備え、
前記位置決めシャフトに少なくとも一部の中間板に積層方向一方のみから係止可能な係止部を設けた
ことを特徴とする積層ゴム構造体の加硫用金型。
【請求項5】
前記位置決めシャフトに、その径方向に出没可能に形成され、径方向外側に突出することにより中間板の積層方向一方の面に係止可能な係止部材と、係止部材を位置決めシャフトの径方向外側に向かって付勢する付勢部材とを設け、
係止部材を、位置決めシャフトが中間板の位置決め孔に積層方向他方から挿入されると付勢部材の付勢力に抗して位置決めシャフトの径方向内側に移動するように形成した
ことを特徴とする請求項4記載の積層ゴム構造体の加硫用金型。
【請求項6】
複数の未加硫ゴム部材及び中間板を交互に積層するとともに、その積層方向両端にそれぞれ端面板を配置して加硫用金型内で加硫することにより積層ゴム構造体を成型する積層ゴム構造体の製造方法において、
前記各中間板にそれぞれ設けられて積層方向に配列される位置決め孔に積層方向一方及び他方からそれぞれ挿通可能に形成されるとともに、少なくとも一部が積層方向外側から積層方向内側に向かって徐々に外形が小さくなるように形成された一対の位置決めシャフトを備えた加硫用金型内に、各中間板を位置決め孔が積層方向外側から積層方向内側に向かって内形の大きなものから順次配列されるように配置して加硫成型する
ことを特徴とする積層ゴム構造体の製造方法。
【請求項7】
複数の未加硫ゴム部材及び中間板を交互に積層するとともに、その積層方向両端にそれぞれ端面板を配置して加硫用金型内で加硫することにより積層ゴム構造体を成型する積層ゴム構造体の製造方法において、
前記各中間板にそれぞれ設けられて積層方向に配列される位置決め孔に積層方向一方から挿通可能に形成されるとともに、少なくとも一部が積層方向一方から他方に向かって徐々に外形が小さくなるように形成された位置決めシャフトを備えた加硫用金型内に、各中間板を位置決め孔が積層方向一方から他方に向かって内形の大きなものから順次配列されるように配置して加硫成型する
ことを特徴とする積層ゴム構造体の製造方法。
【請求項8】
複数の未加硫ゴム部材及び中間板を交互に積層するとともに、その積層方向両端にそれぞれ端面板を配置して加硫用金型内で加硫することにより積層ゴム構造体を成型する積層ゴム構造体の製造方法において、
前記各中間板にそれぞれ設けられて積層方向に配列される位置決め孔に積層方向に挿通可能に形成されるとともに、少なくとも一部の中間板に積層方向一方のみから係止可能な係止部を有する位置決めシャフトを備えた加硫用金型内に、位置決めシャフトの係止部が前記少なくとも一部の中間板に係止するように各中間板を配置して加硫成型する
ことを特徴とする積層ゴム構造体の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−272855(P2006−272855A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−98293(P2005−98293)
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】