説明

積層シートの製造装置及び製造方法

【課題】樹脂フィルムに金属蒸着膜と蒸着重合膜とが積層形成された積層シートを低コストに且つ優れた作業性をもって有利に製造し得る技術を提供する。
【解決手段】排気パイプ24と真空ポンプ26によって真空状態とされる真空槽22内に、巻出し及び巻取りローラ28,30と第一、第二、及び第三のローラ32,34,36とを設置すると共に、第一のローラの周面上で、樹脂フィルムの一方の面上に、第一の金属薄膜を形成せしめる第一の金属蒸着手段と、第二のローラの周面上で、第一の金属薄膜上に、樹脂薄膜を形成せしめる蒸着重合手段と、第三のローラの周面上で、樹脂フィルムの他方の面上に、第二の金属薄膜を形成せしめる第二の金属蒸着手段とを更に設置して、製造装置20を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層シートの製造装置及び製造方法に係り、特に、樹脂フィルムの両面に金属蒸着膜がそれぞれ形成されると共に、それらの金属蒸着膜のうちの少なくとも何れか一方のものの上に、更に、樹脂薄膜が蒸着重合法によって積層形成されてなる積層シートを製造するための新規な装置と、そのような積層シートを有利に製造する方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、樹脂フィルムの両面に、金属薄膜がそれぞれ金属蒸着により形成されると共に、それらの金属薄膜のうちの少なくとも何れか一方のものの上に、更に、樹脂薄膜が蒸着重合法によって積層形成されてなる積層シートが、様々な用途で用いられている。例えば、電子機器に使用されるフィルムコンデンサの構成材料や、包装用シート、或いは各種物品の保護用シート等として、利用されている。
【0003】
ところで、このような積層シートを製造する際には、一般に、先ず、公知の連続真空蒸着装置を用いて、樹脂フィルムの両面に金属薄膜が金属蒸着によりそれぞれ形成された金属化フィルムが作製される。また、そこでは、通常、長尺な金属化フィルムが巻回体として得られる。そして、例えば、特開2001−261867号公報(特許文献1)等に記載されるように、金属化フィルムの製造装置(連続真空蒸着装置)とは別個の巻取り式真空蒸着重合装置等を用いて、金属化フィルムの両面に形成されている金属薄膜のうちの少なくとも何れか一方のものの上に、樹脂薄膜が、蒸着重合法によって積層形成される。かくして、目的とする積層シートが製造されるのである。
【0004】
ところが、そのような従来の技術によって積層シートを製造する場合、樹脂フィルムの両面に金属薄膜を形成するための連続真空蒸着装置と、金属薄膜上に樹脂薄膜を積層形成するための巻取り式真空蒸着重合装置の両方の装置を個別に導入する必要がある。また、それら2種類の装置を使用する場合、連続真空蒸着装置内で作製された金属化フィルムを連続真空蒸着装置から取り出した後、巻取り式真空蒸着重合装置にセットしなければならない。このとき、連続真空蒸着装置各装置の内部を真空状態から大気開放状態とする一方、巻取り式真空蒸着重合装置の内部を大気開放状態から真空状態とするといった面倒な作業が必要となる。
【0005】
このため、従来の積層シートの製造技術では、設備費やランニングコストが高くなってしまうだけでなく、時間と手間の掛かる作業を強いられていたのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−261867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここにおいて、本発明は、上述せる如き事情を背景にして為されたものであって、その解決課題とするところは、樹脂フィルムの両面に金属蒸着膜がそれぞれ形成されると共に、それらの金属蒸着膜のうちの少なくとも何れか一方のものの上に、更に、樹脂薄膜が蒸着重合法によって積層形成されてなる積層シートを、十分に低いコストと優れた作業性をもって有利に製造し得る積層シートの製造装置と製造方法とを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記した課題、又は本明細書全体の記載や図面から把握される課題を解決するために、以下に列挙する各種の態様において、好適に実施され得るものである。また、以下に記載の各態様は、任意の組み合わせにおいても、採用可能である。そして、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに何等限定されることなく、明細書全体の記載並びに図面に開示の発明思想に基づいて、認識され得るものであることが、理解されるべきである。
【0009】
<1> 樹脂フィルムの一方の面に第一の金属薄膜が、その他方の面に第二の金属薄膜が、それぞれ金属蒸着により形成されると共に、該第一の金属薄膜上に、更に、樹脂薄膜が蒸着重合法によって積層形成されてなる積層シートを製造するための装置であって、(a)前記樹脂フィルムの巻回体から該樹脂フィルムを巻き出す巻出しローラと、該巻回体から巻き出された該樹脂フィルムを巻き取る巻取りローラとが内部に設置された真空槽と、(b)該真空槽内の空気を排出して、該真空槽内を真空状態とする排気手段と、(c)前記巻出しローラにて、前記樹脂フィルムの巻回体から巻き出された前記樹脂フィルムが、前記一方の面が外側となるように巻き掛けられる、前記真空槽内に設置された第一のローラと、(d)該第一のローラから送り出された前記樹脂フィルムが、前記一方の面が外側となるように巻き掛けられる、前記真空槽内に設置された第二のローラと、(e)該第二のローラから送り出された前記樹脂フィルムが、前記他方の面が外側となるように巻き掛けられる、前記真空槽内に設置された第三のローラと、(f)前記巻出しローラと前記巻取りローラと前記第一乃至第三のローラのうちの少なくとも何れか一つを回転駆動させることにより、前記樹脂フィルムを該巻出しローラ側から該巻取りローラ側に向かって走行させる駆動手段と、(g)前記第一のローラの周面上で、前記樹脂フィルムの前記一方の面上に、前記第一の金属薄膜を金属蒸着により形成せしめる第一の金属蒸着手段と、(h)前記第二のローラの周面上で、前記樹脂フィルムの前記一方の面に形成された前記第一の金属薄膜上に、前記樹脂薄膜を蒸着重合法によって積層形成せしめる蒸着重合手段と、(i)前記第三のローラの周面上で、前記樹脂フィルムの前記他方の面上に、前記第二の金属薄膜を金属蒸着により形成せしめる第二の金属蒸着手段とを含むことを特徴とする積層シートの製造装置。
【0010】
<2> 前記第二のローラに巻き掛けられた前記樹脂フィルム部位の前記一方の面を収容可能な補助真空槽が、前記真空槽内に設けられると共に、前記排気手段とは独立して作動して、該補助真空槽内の空気を排出することにより、該補助真空槽内を該真空槽内とは真空度の異なる真空状態とする補助排気手段が設けられて、該補助真空槽内で、前記第一の金属薄膜上に、前記樹脂薄膜が、前記蒸着重合手段により積層形成されるようになっている上記態様<1>に記載の積層シートの製造装置。
【0011】
<3> 前記樹脂薄膜をプラズマ処理して、該樹脂薄膜に三次元架橋構造を導入せしめるプラズマ処理手段が、前記真空槽内に、更に設けられている上記態様<1>又は<2>に記載の積層シートの製造装置。
【0012】
<4> 樹脂フィルムの一方の面に第一の金属薄膜が、その他方の面に第二の金属薄膜が、それぞれ金属蒸着により形成されると共に、該第一の金属薄膜上に第一の樹脂薄膜が、該第二の金属薄膜上に第二の樹脂薄膜が、蒸着重合法によってそれぞれ積層形成されてなる積層シートを製造するための装置であって、(a)前記樹脂フィルムの巻回体から該樹脂フィルムを巻き出す巻出しローラと、該巻回体から巻き出された該樹脂フィルムを巻き取る巻取りローラとが内部に設置された真空槽と、(b)該真空槽内の空気を排出して、該真空槽内を真空状態とする排気手段と、(c)前記巻出しローラにて、前記樹脂フィルムの巻回体から巻き出された前記樹脂フィルムが、前記一方の面が外側となるように巻き掛けられる、前記真空槽内に設置された第一のローラと、(d)該第一のローラから送り出された前記樹脂フィルムが、前記一方の面が外側となるように巻き掛けられる、前記真空槽内に設置された第二のローラと、(e)該第二のローラから送り出された前記樹脂フィルムが、前記他方の面が外側となるように巻き掛けられる、前記真空槽内に設置された第三のローラと、(f)該第三のローラから送り出された前記樹脂フィルムが、前記他方の面が外側となるように巻き掛けられる、前記真空槽内に設置された第四のローラと、(g)前記巻出しローラと前記巻取りローラと前記第一乃至第四のローラのうちの少なくとも何れか一つを回転駆動させることにより、前記樹脂フィルムを該巻出しローラ側から該巻取りローラ側に向かって走行させる駆動手段と、(h)前記第一のローラの周面上で、前記樹脂フィルムの前記一方の面上に、前記第一の金属薄膜を金属蒸着により形成せしめる第一の金属蒸着手段と、(i)前記第二のローラの周面上で、前記樹脂フィルムの前記一方の面に形成された前記第一の金属薄膜上に、前記第一の樹脂薄膜を蒸着重合法によって積層形成せしめる第一の蒸着重合手段と、(j)前記第三のローラの周面上で、前記樹脂フィルムの前記他方の面上に、前記第二の金属薄膜を金属蒸着により形成せしめる第二の金属蒸着手段と、(k)前記第四のローラの周面上で、前記樹脂フィルムの前記他方の面に形成された前記第二の金属薄膜上に、前記第二の樹脂薄膜を蒸着重合法によって積層形成せしめる第二の蒸着重合手段とを含むことを特徴とする積層シートの製造装置。
【0013】
<5> 前記第二のローラに巻き掛けられた前記樹脂フィルム部位の前記一方の面を収容可能な第一の補助真空槽と、前記第四のローラに巻き掛けられた前記樹脂フィルム部位の前記他方の面を収容可能な第二の補助真空槽とが、前記真空槽内に設けられると共に、前記排気手段とは独立して作動して、該第一の補助真空槽内の空気を排出することにより、該第一の補助真空槽内を該真空槽内とは真空度の異なる真空状態とする第一の補助排気手段と、該排気手段とは独立して作動して、該第二の補助真空槽内の空気を排出することにより、該第二の補助真空槽内を該真空槽内とは真空度の異なる真空状態とする第二の補助排気手段とが更に設けられて、該第一の補助真空槽内で、前記第一の金属薄膜上に、前記第一の樹脂薄膜が、前記第一の蒸着重合手段により積層形成される一方、該第二の補助真空槽内で、前記第二の金属薄膜上に、前記第二の樹脂薄膜が、前記第二の蒸着重合手段により積層形成されるようになっている上記態様<4>に記載の積層シートの製造装置。
【0014】
<6> 前記第一の樹脂薄膜をプラズマ処理して、該第一の樹脂薄膜に三次元架橋構造を導入せしめる第一のプラズマ処理手段と、前記第二の樹脂薄膜をプラズマ処理して、該第二の樹脂薄膜に三次元架橋構造を導入せしめる第二のプラズマ処理手段とが、前記真空槽内に、更に設けられている上記態様<4>又は<5>に記載の積層シートの製造装置。
【0015】
<7> 前記積層シートが、フィルムコンデンサを形成するための材料となるフィルムコンデンサ形成用積層シートである上記態様<1>乃至<6>に記載の積層シートの製造装置。
【0016】
<8> 樹脂フィルムの一方の面に第一の金属薄膜が、その他方の面に第二の金属薄膜が、それぞれ金属蒸着により形成されると共に、該第一の金属薄膜上に、更に、樹脂薄膜が蒸着重合法によって積層形成されてなる積層シートを製造する方法であって、(a)第一のローラと第二のローラと第三のローラとが内部に設置された真空槽を有し、前記樹脂フィルムが、該真空槽内に収容されて、該第一のローラと該第二のローラと該第三のローラとに対して、その順番で巻き掛けられた状態において、該樹脂フィルムを該第一のローラ側から該第三のローラ側に向かって走行させ得るように構成された成膜装置を準備する工程と、(b)前記第一のローラと前記第二のローラとに対して、前記樹脂フィルムを、前記一方の面が外側となるようにそれぞれ巻き掛けると共に、該第二のローラから送り出された該樹脂フィルムを、前記第三のローラに対して、前記他方の面が外側となるように巻き掛けて、前記真空層内を真空とした状態で、該樹脂フィルムを該第一のローラ側から該第三のローラ側に向かって走行させる工程と、(c)前記第一のローラの周面上で、前記樹脂フィルムの前記一方の面上に、前記第一の金属薄膜を金属蒸着により形成する工程と、(d)前記第二のローラの周面上で、前記樹脂フィルムの前記一方の面に形成された前記第一の金属薄膜上に、前記樹脂薄膜を蒸着重合法によって積層形成する工程と、(e)前記第三のローラの周面上で、前記樹脂フィルムの前記他方の面上に、前記第二の金属薄膜を金属蒸着により形成する工程とを含むことを特徴とする積層シートの製造方法。
【0017】
<9> 前記樹脂薄膜に対するプラズマ処理を実施して、該樹脂薄膜に三次元架橋構造を導入するようにした上記態様<8>に記載の積層シートの製造方法。
【0018】
<10> 上記態様<8>又は<9>に記載の製造方法によって得られた前記積層シートを巻回して、又は該積層シートの複数を積層して製造することを特徴とするフィルムコンデンサの製造方法。
【0019】
<11> 前記樹脂薄膜が、ポリユリア樹脂膜である上記態様<10>に記載のフィルムコンデンサの製造方法。
【0020】
<12> 前記樹脂薄膜が、前記樹脂フィルムよりも高い誘電率を有している上記態様<10>又は<11>に記載のフィルムコンデンサの製造方法。
【0021】
<13> 前記樹脂薄膜が0.01〜10μmの範囲内の厚さを有している上記態様<10>乃至<12>のうちの何れか一つに記載のフィルムコンデンサの製造方法。
【0022】
<14> 前記樹脂フィルムがポリプロピレンからなる一方、前記樹脂薄膜がポリユリア樹脂からなる上記態様<10>乃至<13>のうちの何れか一つに記載のフィルムコンデンサの製造方法。
【0023】
<15> 前記積層シートが、前記樹脂薄膜を内側にして巻回されている上記態様<10>乃至<14>のうちの何れか一つに記載のフィルムコンデンサの製造方法。
【0024】
<16> 前記積層シートが、複数回、巻回されている上記態様<10>乃至<15>のうちの何れか一つに記載のフィルムコンデンサの製造方法。
【0025】
<17> 前記積層シートの複数が、前記樹脂薄膜と前記金属薄膜とを互いに重なり合うように積層するようにした上記態様<10>乃至<14>のうちの何れか一つに記載のフィルムコンデンサ。
【0026】
<18> 樹脂フィルムの一方の面に第一の金属薄膜が、その他方の面に第二の金属薄膜が、それぞれ金属蒸着により形成されると共に、該第一の金属薄膜上に第一の樹脂薄膜が、該第二の金属薄膜上に第二の樹脂薄膜が、蒸着重合法によってそれぞれ積層形成されてなる積層シートを製造する方法であって、(a)第一のローラと第二のローラと第三のローラと第四のローラとが内部に設置された真空槽を有しており、前記樹脂フィルムが、該真空槽内に収容されて、該第一のローラと該第二のローラと該第三のローラと該第四のローラとに対して、その順番で巻き掛けられた状態において、該樹脂フィルムを該第一のローラ側から該第四のローラ側に向かって走行させ得るように構成された成膜装置を準備する工程と、(b)前記第一のローラと前記第二のローラとに対して、前記樹脂フィルムを、前記一方の面が外側となるようにそれぞれ巻き掛けると共に、該第二のローラから送り出された該樹脂フィルム部分を、前記第三のローラと前記第四のローラとに対して、前記他方の面が外側となるようにそれぞれ巻き掛けて、前記真空層内を真空とした状態で、該樹脂フィルムを該第一のローラ側から該第四のローラ側に向かって走行させる工程と、(c)前記第一のローラの周面上で、前記樹脂フィルムの前記一方の面上に、前記第一の金属薄膜を金属蒸着により形成する工程と、(d)前記第二のローラの周面上で、前記樹脂フィルムの前記一方の面に形成された前記第一の金属薄膜上に、前記第一の樹脂薄膜を蒸着重合法によって積層形成する工程と、(e)前記第三のローラの周面上で、前記樹脂フィルムの前記他方の面上に、前記第二の金属薄膜を金属蒸着により形成する工程と、(f)前記第四のローラの周面上で、前記樹脂フィルムの前記他方の面に形成された前記第二の金属薄膜上に、前記第二の樹脂薄膜を蒸着重合法によって積層形成する工程とを含むことを特徴とする積層シートの製造方法。
【0027】
<19> 前記第一の樹脂薄膜と第二の樹脂薄膜とに対して、プラズマ処理をそれぞれ実施して、該第一の樹脂薄膜と該第二の樹脂薄膜とに三次元架橋構造をそれぞれ導入するようにした上記態様<18>に記載の積層シートの製造方法。
【0028】
<20> 上記態様<18>又は<19>に記載の製造方法によって得られた前記積層シートを巻回して、又は該積層シートの複数を積層して製造することを特徴とするフィルムコンデンサの製造方法。
【0029】
<21> 前記樹脂薄膜が、ポリユリア樹脂膜である上記態様<20>に記載のフィルムコンデンサの製造方法。
【0030】
<22> 前記第一の樹脂薄膜と前記第二の樹脂薄膜とが、前記樹脂フィルムよりも高い誘電率を有している上記態様<20>又は<21>に記載のフィルムコンデンサの製造方法。
【0031】
<23> 前記第一の樹脂薄膜と前記第二の樹脂薄膜膜が0.01〜10μmの範囲内の厚さを有している上記態様<20>乃至<22>のうちの何れか一つに記載のフィルムコンデンサの製造方法。
【0032】
<24> 前記樹脂フィルムがポリプロピレンからなる一方、前記第一の樹脂薄膜と前記第二の樹脂薄膜とがポリユリア樹脂からなる上記態様<20>乃至<23>のうちの何れか一つに記載のフィルムコンデンサの製造方法。
【0033】
<25> 前記積層シートが、複数回、巻回されている上記態様<20>乃至<24>のうちの何れか一つに記載のフィルムコンデンサの製造方法。
【発明の効果】
【0034】
このように、本発明に従う積層シートの製造装置のうち、第一乃至第三のローラを有するものにおいては、一つの真空槽内において、樹脂フィルムを巻出しローラから巻き出して、巻取りローラに送り出すことにより、その途中で、かかる樹脂フィルムの両面に対して、金属蒸着により、第一の金属薄膜と第二の金属薄膜とが形成されると共に、第一の金属薄膜上に、樹脂薄膜が、蒸着重合により形成されるようになっている。
【0035】
また、本発明に従う積層シートの製造装置のうち、第一乃至第四のローラを有するものにあっても、一つの真空槽内において、樹脂フィルムを巻出しローラから巻き出して、巻取りローラに送り出すことにより、その途中で、かかる樹脂フィルムの両面に対して、金属蒸着により、第一の金属薄膜と第二の金属薄膜とが形成されると共に、第一の金属薄膜上に第一の樹脂薄膜が、第二の金属薄膜上に第二の樹脂薄膜が、それぞれ、蒸着重合により形成されるようになっている。
【0036】
それ故、このような本発明に係る積層シートの製造装置を用いれば、金属薄膜形成用の連続真空蒸着装置と樹脂薄膜形成用の巻取り式真空蒸着重合装置の両方を個別に準備する必要が解消される。また、樹脂フィルムの両面に金属薄膜が形成された金属化フィルムを連続真空蒸着装置から取り出した後、改めて、巻取り式真空蒸着重合装置にセットする作業や、それに付随して実施される、各装置内をそれぞれ真空状態と大気開放状態とに別個に制御する面倒で時間のかかる作業からも有利に開放され得る。
【0037】
従って、かくの如き本発明に従う積層シートの製造装置によれば、樹脂フィルムの両面に金属蒸着膜がそれぞれ形成されると共に、それらの金属蒸着膜のうちの少なくとも何れか一方のものの上に、更に、樹脂薄膜が蒸着重合法によって積層形成されてなる積層シートを、十分に低いコストと優れた作業性をもって有利に製造することが出来るのである。
【0038】
そして、本発明に従う積層シートの製造方法にあっても、本発明に従う積層シートの製造装置において奏される作用・効果と実質的に同一の作用・効果が有効に享受され得ることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に従う積層シートの製造装置を用いて製造された積層シートの一例を示す部分断面説明図である。
【図2】本発明に従う積層シートの製造装置の一実施形態を示す断面説明図である。
【図3】図2に示された製造装置を用いて積層シートを製造する際の一工程例を示す説明図であって、樹脂フィルムを巻出し及び巻取りローラと第一乃至第三のローラに架け渡した状態を示している。
【図4】本発明に従う積層シートの製造装置を用いて製造された積層シートの別の例を示す図1に対応する図である。
【図5】本発明に従う積層シートの製造装置の別の実施形態を示す図2に対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明することとする。
【0041】
先ず、図1には、本発明に従う構造を有する製造装置を用いて製造された積層シートの一例として、フィルムコンデンサを構成する積層シートの一部が、断面形態において示されている。かかる図1から明らかなように、積層シート10は、樹脂フィルムたる誘電体フィルム12をベースとして有し、この誘電体フィルム12の主面を与える一方の面(図1における誘電体フィルム12の上面)と他方の面(図1における誘電体フィルム12の下面)に対して、それぞれ、第一の金属薄膜としての第一電極膜14と第二の金属薄膜たる第二電極膜16とが、積層形成されている。また、第一電極膜14上には、樹脂薄膜としての第一誘電体膜18が、更に積層形成されている。
【0042】
この積層シート10のベースたる誘電体フィルム12は、ここでは、ポリプロピレン製の延伸フィルムからなり、1〜10μm程度の厚さを有している。なお、この誘電体フィルム12の形成材料は、ポリプロピレンに何等限定されるものではなく、例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリフェニレンサルファイド、ポリエチレンナフタレート等、従来のフィルムコンデンサを構成する誘電体フィルムの形成材料として使用される樹脂材料が、ポリプロピレンに代えて、適宜に用いられ得る。また、積層シート10が、フィルムコンデンサ以外の用途に使用される場合には、誘電体フィルム12たる樹脂フィルムの形成材料として、例示のもの以外の樹脂材料も、勿論、使用可能である。
【0043】
誘電体フィルム12の両方の面上に形成される第一電極膜14と第二電極膜16は、真空中での蒸着法の実施によって形成された金属蒸着薄膜からなっている。各電極膜14,16の厚さは、各電極膜14,16の膜抵抗値が1〜25Ω/cm2 程度の範囲内の値となるように、適宜に決定される。
【0044】
また、それら第一及び第二電極膜14,16の形成材料としては、従来品と同様に、アルミニウムや亜鉛等の金属材料の中から、例えば、誘電体フィルム12の材質等に応じて適宜に選択されたものが、使用される。なお、それら第一電極膜14と第二電極膜16は、必ずしも、同一の金属材料からなるものでなくとも良く、フィルムコンデンサに対する要求性能等に応じて、形成材料が決定される。また、第一電極膜14と第二電極膜16のそれぞれの厚さや膜抵抗値も、フィルムコンデンサに対する要求性能等に応じて、互いに同一の値とされるか、若しくは互いに異なる値とされる。なお、積層シート10が、フィルムコンデンサ以外の用途に使用される場合には、金属薄膜(本実施形態での電極膜14,16に相当する)の形成材料や厚さ等は、用途等によって、適宜に変更可能である。
【0045】
第一電極膜14の外周面上に、換言すれば誘電体フィルム12側とは反対側の面上に形成される第一誘電体膜18は、ポリユリア樹脂製の薄膜からなっている。この第一誘電体膜18は、真空中で、蒸着重合法を公知の手法に従って実施することにより形成されてなるものである。
【0046】
このように、第一誘電体膜18は、真空中で生成した重合体によって形成された蒸着重合膜にて構成されているために、ナノオーダーでの膜厚制御が可能となっており、膜厚が、極めて薄く且つ均一にコントロールされているだけでなく、膜中の不純物量が十分に少なくされている。また、この第一誘電体膜18の厚さは、一般に、0.01〜10μm程度とされることとなる。
【0047】
なお、第一誘電体膜18は、上述のポリユリア樹脂膜に、特に限定されるものではなく、ポリアミド樹脂膜や、ポリイミド樹脂膜、ポリアミドイミド樹脂膜、ポリエステル樹脂膜、ポリアゾメチン樹脂膜、ポリウレタン樹脂膜、アクリル樹脂膜等、公知の蒸着重合法によって成膜可能な樹脂膜にて構成しても、何等差し支えない。そして、その中でも、誘電体フィルム12よりも高い誘電率を有する樹脂膜が、好適に採用される。そのような樹脂膜にて第一誘電体膜18を形成することによって、フィルムコンデンサの静電容量を効果的に増大させることが可能となる。なお、誘電率の差異を有する誘電体フィルム12や第一誘電体膜18を形成する樹脂材料としては、例示の如きポリプロピレンとポリユリアの組合せに何等限定されるものではない。
【0048】
また、第一誘電体膜18は、上記の如き高誘電率を有する樹脂膜のうちでも、特に、ポリユリア樹脂膜にて構成されていることが、より望ましい。何故なら、ポリユリア樹脂は、原料モノマー(ジイソシアネートとジアミン)の重合に際して、加熱処理が不要であり、しかも、水やアルコール等の脱離が全くない重付加重合反応において、形成されるものであるからである。このため、原料モノマーの重合時に加熱処理を実施するための設備が不要となって、低コスト化が実現され得ると共に、加熱処理時の熱によって、誘電体フィルム12が変形する、所謂熱負けが惹起されることが有利に回避され得るのである。また、重合反応によって脱離した水やアルコール等を、重合反応が進行する真空槽中から除去する必要がなく、そのための設備も不要となり、これによっても、低コスト化が実現可能となるのである。勿論、積層シート10がフィルムコンデンサ用以外に使用される場合には、樹脂薄膜(本実施形態での第一誘電体膜18に相当する)の形成材料や厚さ等は、用途等によって、適宜に変更可能である。
【0049】
そして、本実施形態では、第一電極膜14上に積層形成された第一誘電体膜18の表面に対して、更にプラズマ処理が施されて、第一誘電体膜18に三次元架橋構造が導入されている。これによって、第一誘電体膜18の耐電圧性が有利に高められ得るのである。
【0050】
ところで、このような積層シート10を製造する際には、例えば、図2に示される如き積層シート製造装置20(成膜装置)が用いられる。
【0051】
この積層シート製造装置20は、長手矩形状の真空槽22を有している。かかる真空槽22の一つの側壁部には、排気パイプ24が接続されており、また、この排気パイプ24が、真空ポンプ26に接続されている。かくして、真空ポンプ26の作動により、真空槽22内の空気が外部に排出されて、真空槽22内が真空状態とされるようになっている。このことから明らかなように、本実施形態では、排気パイプ24と真空ポンプ26とにて、排気手段が構成されている。なお、ここでは、真空ポンプ26の作動によって、真空槽22内が10-4〜100Pa程度の圧力(真空度)にコントロールされるようになっている。
【0052】
また、かかる真空槽22内には、巻出しローラ28と巻取りローラ30とが、設置されている。それら巻出しローラ28と巻取りローラ30は、真空槽22の長さ方向(図2の上下方向)中央部において、幅方向(図2の左右方向)両側にそれぞれ偏倚して配置されている。また、巻取りローラ30は、駆動手段としての電動モータ(図示せず)に連結されている。これにより、巻取りローラ30が、電動モータの駆動/停止に伴って回転駆動/停止させられるようになっている。
【0053】
真空槽22内には、更に、第一のローラ32と第二のローラ34と第三のローラ36とが、設置されている。それら第一乃至第三のローラ32,34,36は、互いに同一の外径を有している。そして、第一のローラ32と第二のローラ34とが、巻出しローラ28を間に挟んで、真空槽22の長さ方向両側にそれぞれ偏倚して配置されている。一方、第三のローラ36は、真空槽22の幅方向において、第一のローラ32と並んで配置されている。
【0054】
また、真空槽22内において、第一のローラ32を間に挟んで、巻出しローラ28側とは反対側の箇所には、アルミニウム又はアルミニウム合金(以下、アルミニウムと総称する)からなる第一蒸着材料38aが、第一のローラ32の外周面と所定距離を隔てて対向した状態で、図示しないホルダ等により設置されている。一方、第三のローラ36を間に挟んで、巻取りローラ30とは反対側の箇所にも、アルミニウム又はアルミニウム合金(以下、アルミニウムと総称する)からなる第二蒸着材料38bが、第三のローラ36の外周面と所定距離を隔てて対向した状態で、ホルダ等により設置されている。また、それら第一及び第二蒸着材料38a,38bの第一及び第三のローラ32,36とは反対側には、各蒸着材料38a,38bを加熱するための第一ヒータ40aと第二ヒータ40bが、それぞれ設置されている。
【0055】
さらに、真空槽22内において、第二のローラ34を間に挟んで、巻出しローラ28側とは反対側の箇所には、第一の補助真空槽42が設置されている。この第一の補助真空槽42は、真空槽22の外部から、真空槽22の側壁部を貫通して延びる第一の補助排気パイプ44が接続されている。また、かかる第一の補助排気パイプ44の真空槽22から外部への突出部分には、第一の補助真空ポンプ46が接続されている。更に、第一の補助真空槽42の側壁部には、窓部48が設けられており、この窓部48を通じて、第二のローラ34の一部が、その外周面を第一の補助真空槽42内に露呈させるように、突入している。
【0056】
かくして、第一の補助真空ポンプ46が、前記真空ポンプ26の作動とは独立して制御された状態下で作動することにより、第一の補助真空槽42内から空気が第一の補助排気パイプ44を通じて外部に排出されるようになっている。そして、それにより、第一の補助真空槽42内が、真空槽22内とは圧力が異なる真空状態とされるようになっている。
【0057】
また、そのような第一の補助真空槽42の窓部48が形成される側壁部と対向する別の側壁部には、二つの開口部50a,50bが形成されている。そして、それら各開口部50a,50bに対して、二つのモノマー導入ポット52a,52bが、連通状態で、接続されている。それら二つのモノマー導入ポット52a,52bのうちの一方の内部には、ジイソシアネートが所定の量だけ収容されている一方、それらのうちの他方の内部には、ジアミンが所定の量だけ収容されている。更に、二つのモノマー導入ポット52a,52bにおける第一の補助真空槽42内への開口側とは反対の底部側には、各モノマー導入ポット52a,52b内の原料モノマーを加熱するための第三ヒータ54aと第四ヒータ54bが、それぞれ設置されている。なお、モノマー導入ポット52a,52b内に収容されるモノマー原料は、蒸着重合によって形成されるべき第一誘電体膜18を与える重合物の種類によって適宜に変更されることは、言うまでもないところである。
【0058】
また、真空槽22内における第二のローラ34の近傍において、後述する誘電体フィルム12の送出し側に位置する箇所には、プラズマ処理手段としての第一のプラズマ発生装置56が設置されている。このプラズマ発生装置56は、例えば、レーザを用いてプラズマを発生させる、従来より公知の構造を有している。
【0059】
そして、このような本実施形態の積層シート製造装置20を用いて、目的とする積層シート10を製造する際には、例えば、以下のようにして、その作業が進められる。
【0060】
すなわち、図3に示されるように、先ず、前記せる誘電体フィルム12の巻回体58を、巻出しローラ28に外挿して、セットする。そして、巻回体58から誘電体フィルム12の一部を巻き出して、それを第一のローラ32と第二のローラ34とに対して、それらに架け渡すように巻き掛ける。
【0061】
このとき、誘電体フィルム12は、その一方の面が、第一のローラ32と第二のローラ34のそれぞれの外周面側とは反対側に位置して、外部に露呈されるように、つまり、一方の面が外側となるように、各ローラ32,34に巻き掛けられる。これにより、第一のローラ32の外周面上で外側に位置する誘電体フィルム12の一方の面が、第一蒸着材料38aに対して所定距離を隔てて対向配置される。また、第二のローラ34の外周面上で外側に位置する誘電体フィルム12の一方の面は、第一の補助真空槽42の内側空間に露呈した状態で、第一の補助真空槽42内に収容される。
【0062】
また、第二のローラ34から第一のローラ32側とは反対側に送り出される誘電体フィルム12部分を、第三のローラ36に巻き掛ける。このとき、かかる誘電体フィルム12部分は、第一及び第二のローラ32,34の外周面上で外側に位置する一方側の面とは反対側の他方の面が、第三のローラ36の外周面上で外部に露呈されるように、つまり外側となるように、第三のローラ36に巻き掛けられる。これにより、第三のローラ36の外周面上で外側に位置する誘電体フィルム12の他方の面が、第二蒸着材料38bに対して所定距離を隔てて対向配置される。
【0063】
さらに、第三のローラ36から第二のローラ34側とは反対側に送り出される誘電体フィルム12部分を、巻取りローラ30にセットされた巻取りリール31に巻き掛けて、取り外し可能に固定する。
【0064】
そして、そのような状態において、真空ポンプ26を作動させて、真空槽22内を10-4〜100Pa程度にまで減圧して、真空状態とする。また、それと共に、第一の補助真空ポンプ46も作動させて、第一の補助真空槽42内を10-5〜10Pa程度にまで減圧して、真空状態とする。
【0065】
次に、図示しない電動モータを駆動して、図2に示されるように、巻取りローラ30を、半時計回りに回転させる。これにより、巻取りローラ30にセットされた巻取りリール31を回転駆動させて、誘電体フィルム12の巻取りを開始する。そうして、巻出しローラ28に外挿された巻回体58から、誘電体フィルム12を徐々に巻き出しつつ、誘電体フィルム12が巻き掛けられた第一乃至第三のローラ32,34,36を図2中の矢印回りに回転させる。これにより、巻回体58から巻き出された誘電体フィルム12を、第一のローラ32→第二のローラ34→第三のローラ36→巻取りローラ30の順に走行させる。
【0066】
そして、その一方で、第一蒸着材料38aを第一ヒータ40aにて加熱し、蒸発させて、真空蒸着を実施する。これにより、第一のローラ32に巻き掛けられた誘電体フィルム12の一方の面に対して、第一のローラ32の外周面上で、第一電極膜14を形成する。その後、この第一電極膜14が形成された誘電体フィルム12部分を、誘電体フィルム12の走行方向下流側に位置する第二のローラ34に送り出す。
【0067】
また、二つのモノマー導入ポット52a,52b内にそれぞれ収容された、原料モノマーであるジイソシアネートとジアミンとを第三ヒータ54aと第四ヒータ54bにて加熱し、第一の補助真空槽42内に蒸発させる。そして、誘電体フィルム12の一方の面に形成されて、第一の真空補助槽42内で露呈する第一電極膜14上において、ジイソシアネートとジアミンとの重合反応を惹起させることにより、かかる第一電極膜14上に、ポリユリア樹脂膜からなる第一誘電体膜18を積層形成する。そして、この第一電極膜14と第一誘電体膜18とが積層形成された誘電体フィルム12部分を、下流側の第三のローラ36に送り出す。
【0068】
引き続いて、第二のローラ34から送り出された誘電体フィルム12が第三のローラ36に達する前に、第二のローラ34と第三のローラ36との間に配置された第一のプラズマ発生装置56から発生するプラズマを、第一誘電体膜18の表面に照射して、第一誘電体膜18をプラズマ処理する。これにより、第一誘電体膜18に三次元架橋構造を導入する。その結果、第一誘電体膜18の耐電圧性が有利に高められ得る。
【0069】
その後、第二蒸着材料38bを第二ヒータ40bにて加熱し、蒸発させて、真空蒸着を行う。これにより、第三のローラ36に巻き掛けられた誘電体フィルム12部分の他方の面、つまり、第一電極膜14と第一誘電体膜18とが積層形成された側とは反対側の面に対して、第三のローラ36の外周面上で、第二電極膜16を形成する。かくして、一方の面に第一電極膜14と第一誘電体膜18とが積層形成されると共に、他方の面に第二電極膜16が形成された積層シート10を得ると共に、この積層シート10を、下流側の巻取りローラ30に送り出す。
【0070】
次いで、積層シート10を、巻取りローラ30にセットされた巻取りリール31にて巻き取る。かくして、目的とする積層シート10を、連続的に製造すると共に、それを、巻回物として得るのである。
【0071】
そして、図示されてはいないものの、例えば、かくして得られた積層シート10の巻回物から、積層シート10を巻き出して、所定長さに切断する。その後、それらの積層シート10の切断片の複数を、第二電極膜16と第一誘電体膜18とが互いに重ね合わされるように積層する。これにより、積層タイプのフィルムコンデンサが製造される。或いは、積層シート10の巻回物から積層シート10を巻き出しつつ、又は所定長さだけ巻き出した後、巻き出された積層シート10を、第一誘電体膜18が内側となるように1回又は複数回、巻回する。これにより、巻回タイプのフィルムコンデンサが製造されるのである。
【0072】
なお、上記から明らかなように、本実施形態では、第一蒸着材料38aと第一ヒータ40aとにて、第一の金属蒸着手段が、また、第二蒸着材料38bと第二ヒータ40bとにて、第二の金属蒸着手段とが、それぞれ構成されている。更に、二つのモノマー導入ポット52a,52bと第三及び第四ヒータ54a,54bとにて、蒸着重合手段が構成されている。
【0073】
また、本実施形態では、誘電体フィルム12に対して第一及び第二電極膜14,16を形成する金属蒸着工程と、第一誘電体膜18を形成する蒸着重合工程とが、同時に開始されるようになっている。このため、巻取りローラ30にて巻き取られる巻回物の中心側部位には、誘電体フィルム12の一方の面上に第一誘電体膜18のみが形成される部分と、一方の面には膜が何等形成されておらず、他方の面のみに第二電極膜16が形成されてなる部分とが存在するが、これらの部分は、最終的に切除されることとなる。
【0074】
このように、本実施形態においては、一つの真空槽22内で、巻出しローラ28と巻取りローラ30との間で、第一乃至第三のローラ32,34,36に架け渡された誘電体フィルム12を一方向に走行させつつ、第一乃至第三のローラ32,34,36の各外周面上で、誘電体フィルム12の一方の面に、第一電極膜14と第一誘電体膜18とを積層形成すると共に、その他方の面に、第二電極膜16を形成するようになっている。
【0075】
そのため、このような本実施形態によれば、誘電体フィルム12の両面に、第一電極膜14と第二電極膜16を、金属蒸着によって連続的に形成するための装置と、誘電体フィルム12の一方の面に形成された第一電極膜14上に、第一誘電体膜18を、蒸着重合によって更に形成するための装置とを、別々に準備する必要がない。また、それ故に、誘電体フィルム12の両面に第一及び第二電極膜14,16が形成された金属化フィルムを金属蒸着装置から取り出した後、改めて、第一誘電体膜18を蒸着重合によって形成するための装置にセットし直す作業や、その際に、各装置内をそれぞれ真空状態と大気開放状態とに別個に制御する作業からも有利に開放され得る。
【0076】
従って、かくの如き本実施形態によれば、誘電体フィルム12の両面に第一及び第二電極膜14,16がそれぞれ形成されると共に、第一電極膜14上に、更に、第一誘電体膜18が蒸着重合法によって積層形成されてなる積層シート10を、十分に低いコストと優れた作業性をもって有利に製造することが出来る。そして、その結果として、そのような積層シート10を積層又は巻回してなる、積層タイプや巻回タイプのフィルムコンデンサが、低コストに且つ作業性良く得られることとなるのである。
【0077】
また、本実施形態では、第一の補助真空ポンプ46にて、真空槽22とは異なる圧力にコントロールされた第一の補助真空槽42内で、第一誘電体膜18が、第一電極膜14上に、蒸着重合により積層形成されるようになっている。このため、金属蒸着とは異なる真空条件で実施される蒸着重合が、金属重合を行うための真空槽22内で、極めて良好且つ適正な条件の下で実施され得る。その結果として、第一電極膜14上に、適正な膜厚で且つ高品質の第一誘電体膜18が、極めて有利に形成され得るのである。
【0078】
また、本実施形態において製造された積層シート10を巻回して、或いは積層して得られるフィルムコンデンサにおいては、第一電極膜14と第二電極膜16とが、延伸フィルム等からなる誘電体フィルム12を間に挟んで、その両側に位置せしめられる構造(A)のみを有する、従来のフィルムコンデンサとは異なって、かかるA構造と共に、第一電極膜14と第二電極膜16とが、蒸着重合膜からなる第一誘電体膜18を間に挟んで、その両側に位置せしめられる構造(B)が導入されている。そして、かかるB構造においては、第一誘電体膜18が、真空中での蒸着重合によって形成されたものであるところから、ナノオーダーでの膜厚制御が可能で、極めて薄く且つ均一な膜厚とされているだけでなく、膜中の不純物量が十分に少なくされている。
【0079】
それ故、本実施形態において製造された積層シート10を用いて得られるフィルムコンデンサにあっては、従来のフィルムコンデンサとは異なって、誘電体フィルム12を極端に薄肉化したり、フィルム材料中の不純物を低減させたりすることなく、コンデンサ全体を小型化し且つ静電容量を効果的に増大させることが出来る。
【0080】
従って、本実施形態において製造された積層シート10を用いて得られるフィルムコンデンサにあっては、必ずしも、誘電体フィルム12を薄肉化したり、フィルム材料中の不純物量を低減させたりして、誘電体フィルム12の高機能化を図らなくとも、また、誘電体フィルム12の薄肉化による問題を発生させることもなしに、小型・大容量化が有利に実現され得、以て、種々の要求性能が、極めて効果的に達成され得るのである。
【0081】
次に、図4には、本発明に従う構造を有する製造装置を用いて製造された積層シートの別の例が、断面形態において示されている。かかる図4から明らかなように、この積層シート60は、樹脂フィルムとしての誘電体フィルム12の両面に、第一の金属薄膜たる第一電極膜14と、第二の金属薄膜としての第二電極膜16が形成され、また、それら第一電極膜14上と第二電極膜16上とに対して、第一の樹脂薄膜たる第一誘電体膜18と、第二の樹脂薄膜としての第二誘電体膜19とが、更にそれぞれ積層形成されている。
【0082】
この積層シート60においては、第一電極膜14と第二電極膜16とが、前記第一の実施形態に係る積層シート製造装置20にて製造される積層シート10の第一電極膜14及び第二電極膜16に対して、材質、膜厚、及び構造が全て同一とされている。また、第一誘電体膜18と第二誘電体膜19が、かかる積層シート10の第一誘電体膜18に対して、材質、膜厚、及び構造が全て同一とされている。
【0083】
そして、このような積層シート60を製造する際には、例えば、図5に示される如き構造を有する積層シート製造装置(成膜装置)62が、用いられる。
【0084】
本実施形態に係る積層シート製造装置62においては、前記第一の実施形態に係る積層シート製造装置20の真空槽22内に、第一乃至第三のローラ32,34,36に加えて、第四のローラ64が設置されている。この第四のローラ64は、第一乃至第三のローラ32,34,36と同一の外径を有している。そして、真空槽22の長さ方向において、巻取りローラ30を間に挟んで第三のローラ36側とは反対側の箇所に、配置されている。
【0085】
また、第四のローラ64を間に挟んで、巻取りローラ30側とは反対側には、第二の補助真空槽66が設置されている。この第二の補助真空槽66は、真空槽22の外部から、真空槽22の側壁部を貫通して延びる第二の補助排気パイプ68が接続されている。また、かかる第二の補助排気パイプ68の真空槽22から外部への突出部分には、第二の補助真空ポンプ70が接続されている。更に、第二の補助真空槽66の側壁部には、窓部72が設けられており、この窓部72を通じて、第四のローラ64の一部が、その外周面を第二の補助真空槽66内に露呈させるように、突入している。
【0086】
かくして、第二の補助真空ポンプ70が、前記真空ポンプ26の作動とは独立して制御された状態下で作動することにより、第二の補助真空槽66内が、真空槽22内とは圧力が異なる真空状態とされるようになっている。なお、ここでは、第二の補助真空ポンプ70の作動が、前記第一の補助真空ポンプ46の作動を制御する制御装置と同一の制御装置にて制御されている。そして、そのような第二の補助真空ポンプ70の作動により、第二の補助真空層66内が、第一の補助真空層42内と同じ圧力の真空状態とされている。
【0087】
また、そのような第二の補助真空槽66の側壁部にも、二つの開口部74a,74bが形成されている。そして、それら各開口部74a,74bに対して、二つのモノマー導入ポット76a,76bが、連通状態で接続されている。それら二つのモノマー導入ポット76a,76bのうちの一方の内部には、ジイソシアネートが所定の量だけ収容されている一方、それらのうちの他方の内部には、ジアミンが所定の量だけ収容されている。更に、二つのモノマー導入ポット76a,76bにおける第二の補助真空槽66内への開口側とは反対の底部側には、各モノマー導入ポット76a,76b内の原料モノマーを加熱するための第五ヒータ78aと第六ヒータ78bが、それぞれ設置されている。なお、モノマー導入ポット76a,76b内に収容されるモノマー原料は、蒸着重合によって形成されるべき第二誘電体膜19を与える重合物の種類によって適宜に変更されることは、言うまでもないところである。
【0088】
また、真空槽22内における第四のローラ64と巻取りローラ30の間において、第四のローラ64側に偏倚した箇所には、第二のプラズマ処理手段としての第二のプラズマ発生装置80が設置されている。この第二のプラズマ処理装置80は、第二のローラ34の近傍に設置された、第一のプラズマ処理手段としての第一のプラズマ発生装置56と同一の構造を有している。
【0089】
そして、このような本実施形態の積層シート製造装置62を用いて、目的とする積層シート60を製造する際には、例えば、以下のようにして、その作業が進められる。
【0090】
すなわち、先ず、巻出しローラ28に外挿した誘電体フィルム12の巻回体58から巻き出される誘電体フィルム12部分を、前記第一の実施形態と同様にして、第一乃至第三のローラ32,34,36に巻き掛けると共に、第三のローラ36から送り出される誘電体フィルム12部分を、その他方の面が、第四のローラ64の外周面側とは反対側に位置して、第二の補助真空槽66内に露呈されるように、第四のローラ64に巻き掛ける。また、第四のローラ64から送り出される誘電体フィルム12部分を、巻取りローラ30にセットされた巻取りリール31に巻き掛けて、取り外し可能に固定する。
【0091】
そして、そのような状態において、真空ポンプ26と第一及び第二の補助真空ポンプ46,70とを作動させる。それにより、真空槽22内を10-4〜100Pa程度にまで減圧する一方、第一の補助真空槽42内を10-5〜10Pa程度にまで減圧し、更に、第二の補助真空槽66内を10-5〜10Pa程度にまで減圧して、各真空槽22,42,66内をそれぞれ真空状態とする。
【0092】
次に、図示しない電動モータを駆動して、図5に示されるように、巻取りローラ30を、半時計回りに回転させる。これにより、巻出しローラ28と第一乃至第四のローラ3234,36,64を図5中の矢印回りに回転させると共に、巻出しローラ28に外挿された巻回体58から、誘電体フィルム12を徐々に巻き出しつつ、巻取りローラ30にて巻き取る。そうして、巻回体58から巻き出された誘電体フィルム12を、第一のローラ32→第二のローラ34→第三のローラ36→第四のローラ64→巻取りローラ30の順に走行させる。
【0093】
そして、前記第一の実施形態と同様に、誘電体フィルム12を第一のローラ32→第二のローラ34→第三のローラ36の順で走行させるときに、それら各ローラ32,34,36の外周面上で、誘電体フィルム12の一方の面上に、第一電極膜14と第一誘電体膜18とを積層形成する一方、誘電体フィルム12の他方の面上に、第二電極膜16を形成する。なお、第一電極膜14と第一誘電体膜18とが積層形成された誘電体フィルム12部分を第二のローラ34から第三のローラ36に送り出す際に、その途中で、かかる誘電体フィルム12部分の第一誘電体膜18を、第一のプラズマ発生装置56によりプラズマ処理して、この第一誘電体膜18に三次元架橋構造を導入する。これによって、第一誘電体膜18の耐電圧性を高める。
【0094】
その後、第二の補助真空槽66内で、第四のローラ64に巻き掛けられた誘電体フィルム12の第二電極膜16上に、第二誘電体膜19を積層形成する。この第二誘電体膜19の形成は、第一の補助真空槽42内で、誘電体フィルム12の第一電極膜14上に、第一誘電体膜18を積層形成する際と同様な蒸着重合を、第二の補助真空槽66内で実施することにより実現される。
【0095】
かくして、一方の面に第一電極膜14と第一誘電体膜18とが積層形成されると共に、他方の面に第二電極膜16と第二誘電体膜19が形成された積層シート60を得ると共に、この積層シート60を、下流側の巻取りローラ30に送り出す。
【0096】
引き続いて、第四のローラ64から送り出された誘電体フィルム12が巻取りローラ30に達する前に、それら第四のローラ64と巻取りローラ30との間に配置された第二のプラズマ発生装置80から発生するプラズマを、第二誘電体膜19の表面に照射して、第二誘電体膜19をプラズマ処理する。これにより、第二誘電体膜19に三次元架橋構造を導入して、第二誘電体膜19の耐電圧性を高める。
【0097】
その後、第二誘電体膜19がプラズマ処理された積層シート60を巻取りローラ30にて、巻取りリール31に巻き取る。これにより、目的とする積層シート60を、連続的に製造すると共に、それを、巻回物として得るのである。
【0098】
そして、この得られた積層シート60の巻回物から積層シート60を巻き出し、前述と同様にして、積層タイプや巻回タイプのフィルムコンデンサが製造されるのである。
【0099】
なお、上記から明らかなように、本実施形態では、第一蒸着材料38aと第一ヒータ40aとにて、第一の金属蒸着手段が、第二蒸着材料38bと第二ヒータ40bとにて、第二の金属蒸着手段が、それぞれ構成されている。また、モノマー導入ポット52a,52bと第三及び第四ヒータ54a,54bとにて、第一の蒸着重合手段が、モノマー導入ポット76a,76bと第五及び第六ヒータ78a,78bとにて、第二の蒸着重合手段が、各々構成されている。
【0100】
このように、本実施形態においては、一つの真空槽22内で、巻出しローラ28と巻取りローラ30との間で、第一乃至第四のローラ32,34,36,64に架け渡された誘電体フィルム12を一方向に走行させつつ、第一乃至第四のローラ32,34,36,64の各外周面上で、誘電体フィルム12の一方の面に、第一電極膜14と第一誘電体膜18とを積層形成すると共に、その他方面に、第二電極膜16と第二誘電体膜19とを積層形成するようになっている。
【0101】
そのため、かかる本実施形態によれば、誘電体フィルム12の両面に、第一電極膜14と第二電極膜16を、金属蒸着によって連続的に形成するための装置と、それら第一電極膜14上と第二電極膜16上とに、第一誘電体膜18と第二誘電体膜19とを、蒸着重合によって、それぞれ、更に形成するための装置とを別々に準備する必要がない。また、それ故に、誘電体フィルム12の両面に第一及び第二電極膜14,16が形成された金属化フィルムを金属蒸着装置から取り出した後、改めて、かかる金属化フィルムの第一電極膜14上と第二電極膜16とに対して、第一誘電体膜18と第二誘電体膜19とを蒸着重合によってそれぞれ形成するための装置にセットし直す作業や、その際に、各装置内をそれぞれ真空状態と大気開放状態とに別個に制御する作業からも有利に開放され得る。
【0102】
従って、かくの如き本実施形態によれば、誘電体フィルム12の両面に第一及び第二電極膜14,16がそれぞれ形成されると共に、それら第一電極膜14上と第二電極膜16上とに、更に、第一誘電体膜18と第二誘電体膜19とが蒸着重合法によって積層形成されてなる積層シート60を、前記第一の実施形態と同様に、十分に低いコストと優れた作業性をもって有利に製造することが出来る。そして、その結果として、積層タイプや巻回タイプのフィルムコンデンサが、低コストに且つ作業性良く得られることとなるのである。また、そのようなフィルムコンデンサの製造に際して、前記第一の実施形態と同様な作用・効果が有利に奏され得る。
【0103】
以上、本発明の具体的な構成について詳述してきたが、これはあくまでも例示に過ぎないのであって、本発明は、上記の記載によって、何等の制約をも受けるものではない。
【0104】
例えば、前記第一の実施形態では、第一電極膜(第一の金属薄膜)14に対して、その誘電体フィルム(樹脂フィルム)12側とは反対側の面のみに、第一誘電体膜(第一の樹脂薄膜)18が積層形成されていたが、第一電極膜14に代えて、第二電極膜(第二の金属薄膜)16の誘電体フィルム12側とは反対側の面のみに、第一誘電体膜18を積層形成することも可能である。
【0105】
また、前記第一及び第二の実施形態では、第一乃至第四のローラ32,34,36,64が、全て同一の外径を有していたが、それらのうちの少なくとも一つの外径を異なる大きさとしても良い。その際、他よりも外径が大きなローラの外周面上で、誘電体フィルム12上に形成される金属薄膜や樹脂薄膜は、他に比して、長い時間をかけて金属蒸着や蒸着重合が実施されて形成されるため、膜厚を厚くすることが出来る。その逆に、他よりも外径が小さなローラの外周面上で、誘電体フィルム12上に形成される金属薄膜や樹脂薄膜は、他に比して、短い時間で金属蒸着や蒸着重合が実施されて形成されるため、膜厚を薄くすることが出来る。
【0106】
また、例えば、成膜に際して、形成されるべき薄膜同士の間で、所定の膜厚に到達させるまでの時間(金属蒸着操作や蒸着重合操作に要する時間)が異なる場合にあっても、第一乃至第四のローラ32,34,36,64の幾つかのものの外径を、他のもとは異なる大きさとすることが有効となる。即ち、膜厚形成時間の長い薄膜を、周面上で形成するローラの外径を大きくしたり、膜厚形成時間の短い薄膜を、周面上で形成するローラの外径を小さくしたりすれば、誘電体フィルム12を、各ローラ32,34,36,64間において一定の速度で走行させつつ、それぞれの薄膜が、所定の厚さをもって、有利に且つ確実に形成され得ることとなる。
【0107】
さらに、前記第一及び第二の実施形態では、巻取りローラ30が電動モータ等の駆動手段により回転駆動させられることにより、誘電体フィルム12が、巻出しローラ28側から巻取りローラ30側に走行するようになっていたが、駆動手段は、巻取り及び巻出しローラ30,28や第一乃至第四のローラ32,34,36,64のうちの少なくとも一つを回転駆動するように設置されておれば良い。勿論、そのような駆動手段として、電動モータ以外の公知の回転駆動装置が、何れも採用可能である。
【0108】
更にまた、そのような駆動手段による各ローラ28,30,32,34,36,64の回転速度を調節する回転速度調節機構(例えば、駆動手段が電動モータであれば、その回転速度を制御可能な公知の制御機構等)を設けて、誘電体フィルム12の走行速度を任意に変化させ得るように構成することも可能である。誘電体フィルム12の走行速度を遅くすることにより、その分だけ、長い時間を掛けて、金属蒸着操作や蒸着重合操作を実施することが出来、以て、例えば、第一及び第二電極膜14,16や第一及び第二誘電体膜18,19の膜厚を厚くすることが可能となる。また、誘電体フィルム12の走行速度を早めれば、その分だけ、金属蒸着操作や蒸着重合操作に掛かる時間を短く為すことが出来、それによって、例えば、第一及び第二電極膜14,16や第一及び第二誘電体膜18,19の膜厚を薄くすることが可能となる。
【0109】
また、第一乃至第四のローラ32,34,36,64に対して、その外周面を冷却して、それに巻き掛けられる誘電体フィルム12部分を冷却する冷却手段を設けても良い。これによって、各ローラ32,34,36,64の外周面上で形成される各電極膜14,16や各誘電体膜18,19を効率的に冷却して、安定化させることが可能となる。
【0110】
さらに、第一のローラ32と第一蒸着材料38aとの間の距離や、第三のローラ36と第二蒸着材料38bとの間の距離を可変とする距離調節機構を設けても良い。この距離調節機構は、例えば、電動モータとカム機構やリンク機構等との組み合わせやシリンダ機構等の各種のアクチュエータによって構成される。そして、例えば、第一のローラ32や第三のローラ36を第一蒸着材料38aや第二蒸着材料38bに対して接近又は離隔移動させるか、或いはその逆に、第一蒸着材料38aや第二蒸着材料38bを第一のローラ32や第三のローラ36に対して接近又は離隔移動させる構造が採用されることとなる。これによって、第一電極膜14や第二電極膜16の膜厚制御が可能となる。
【0111】
更にまた、第一乃至第六ヒータ40a,40b,54a,54b,78a,78bのそれぞれに対して、それらの加熱温度を互いに独立して制御可能な制御機構を設けても良い。これにより、各蒸着材料38a,38bや各原料モノマーの蒸発量が調節可能となって、より緻密な条件で、金属蒸着や蒸着重合が実施され得る。かくして、ローラ外径の制御や上記距離調節機構による制御、或いは真空槽22と第一及び第二の補助真空槽42,66内の真空状態(内圧)の制御等とは独立して、或いはそれらとの組合せにより、各電極膜14,16や各誘電体膜18,19の膜厚等の調節が、より有利に且つ確実に実現され得ることとなる。
【0112】
また、前記第二の実施形態では、第一の補助真空槽42と第二の補助真空槽66とが別個のものにて構成されると共に、第一の補助真空ポンプ46と第二の補助真空ポンプ70とが互いに独立した別々のものにて構成されていた。しかしながら、第一の補助真空槽42と第二の補助真空槽66とを1個の補助真空槽にて構成し、また、第一の補助真空ポンプ46と第二の補助真空ポンプ70も、1個の補助真空ポンプにて構成しても良い。この場合には、第二のローラ34の一部と第四のローラ64の一部とが、1個の補助真空槽内に突入するように配置される。そして、そのような1個の補助真空槽内で、第一誘電体膜18と第二誘電体膜19とが、第一電極膜14上と第二電極膜16上に、それぞれ積層形成されることとなる。
【0113】
加えて、本発明は、フィルムコンデンサを構成する積層シートの製造装置及び製造方法の他、包装用シートや各種物品の保護用シート等として利用される積層シートの製造装置及び製造方法に対しても、有利に適用可能である。
【0114】
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもないところである。
【符号の説明】
【0115】
10,60 積層シート 12 誘電体フィルム
14 第一電極膜 16 第二電極膜
18 第一誘電体膜 19 第二誘電体膜
20,62 積層シート製造装置 22 真空槽
24 排気パイプ 26 真空ポンプ
28 巻出しローラ 30 巻取りローラ
32 第一のローラ 34 第二のローラ
36 第三のローラ 38 蒸発材料
40,54,78 ヒータ 42 第一の補助真空槽
44 第一の補助排気パイプ 46 第一の補助真空ポンプ
52,76 モノマー導入ポット 64 第四のローラ
66 第二の補助真空槽 68 第二の補助排気パイプ
70 第二の補助真空ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂フィルムの一方の面に第一の金属薄膜が、その他方の面に第二の金属薄膜が、それぞれ金属蒸着により形成されると共に、該第一の金属薄膜上に、更に、樹脂薄膜が蒸着重合法によって積層形成されてなる積層シートを製造するための装置であって、
前記樹脂フィルムの巻回体から該樹脂フィルムを巻き出す巻出しローラと、該巻回体から巻き出された該樹脂フィルムを巻き取る巻取りローラとが内部に設置された真空槽と、
該真空槽内の空気を排出して、該真空槽内を真空状態とする排気手段と、
前記巻出しローラにて、前記樹脂フィルムの巻回体から巻き出された前記樹脂フィルムが、前記一方の面が外側となるように巻き掛けられる、前記真空槽内に設置された第一のローラと、
該第一のローラから送り出された前記樹脂フィルムが、前記一方の面が外側となるように巻き掛けられる、前記真空槽内に設置された第二のローラと、
該第二のローラから送り出された前記樹脂フィルムが、前記他方の面が外側となるように巻き掛けられる、前記真空槽内に設置された第三のローラと、
前記巻出しローラと前記巻取りローラと前記第一乃至第三のローラのうちの少なくとも何れか一つを回転駆動させることにより、前記樹脂フィルムを該巻出しローラ側から該巻取りローラ側に向かって走行させる駆動手段と、
前記第一のローラの周面上で、前記樹脂フィルムの前記一方の面上に、前記第一の金属薄膜を金属蒸着により形成せしめる第一の金属蒸着手段と、
前記第二のローラの周面上で、前記樹脂フィルムの前記一方の面に形成された前記第一の金属薄膜上に、前記樹脂薄膜を蒸着重合法によって積層形成せしめる蒸着重合手段と、
前記第三のローラの周面上で、前記樹脂フィルムの前記他方の面上に、前記第二の金属薄膜を金属蒸着により形成せしめる第二の金属蒸着手段と、
を含むことを特徴とする積層シートの製造装置。
【請求項2】
前記第二のローラに巻き掛けられた前記樹脂フィルム部位の前記一方の面を収容可能な補助真空槽が、前記真空槽内に設けられると共に、前記排気手段とは独立して作動して、該補助真空槽内の空気を排出することにより、該補助真空槽内を該真空槽内とは真空度の異なる真空状態とする補助排気手段が設けられて、該補助真空槽内で、前記第一の金属薄膜上に、前記樹脂薄膜が、前記蒸着重合手段により積層形成されるようになっている請求項1に記載の積層シートの製造装置。
【請求項3】
樹脂フィルムの一方の面に第一の金属薄膜が、その他方の面に第二の金属薄膜が、それぞれ金属蒸着により形成されると共に、該第一の金属薄膜上に第一の樹脂薄膜が、該第二の金属薄膜上に第二の樹脂薄膜が、蒸着重合法によってそれぞれ積層形成されてなる積層シートを製造するための装置であって、
前記樹脂フィルムの巻回体から該樹脂フィルムを巻き出す巻出しローラと、該巻回体から巻き出された該樹脂フィルムを巻き取る巻取りローラとが内部に設置された真空槽と、
該真空槽内の空気を排出して、該真空槽内を真空状態とする排気手段と、
前記巻出しローラにて、前記樹脂フィルムの巻回体から巻き出された前記樹脂フィルムが、前記一方の面が外側となるように巻き掛けられる、前記真空槽内に設置された第一のローラと、
該第一のローラから送り出された前記樹脂フィルムが、前記一方の面が外側となるように巻き掛けられる、前記真空槽内に設置された第二のローラと、
該第二のローラから送り出された前記樹脂フィルムが、前記他方の面が外側となるように巻き掛けられる、前記真空槽内に設置された第三のローラと、
該第三のローラから送り出された前記樹脂フィルムが、前記他方の面が外側となるように巻き掛けられる、前記真空槽内に設置された第四のローラと、
前記巻出しローラと前記巻取りローラと前記第一乃至第四のローラのうちの少なくとも何れか一つを回転駆動させることにより、前記樹脂フィルムを該巻出しローラ側から該巻取りローラ側に向かって走行させる駆動手段と、
前記第一のローラの周面上で、前記樹脂フィルムの前記一方の面上に、前記第一の金属薄膜を金属蒸着により形成せしめる第一の金属蒸着手段と、
前記第二のローラの周面上で、前記樹脂フィルムの前記一方の面に形成された前記第一の金属薄膜上に、前記第一の樹脂薄膜を蒸着重合法によって積層形成せしめる第一の蒸着重合手段と、
前記第三のローラの周面上で、前記樹脂フィルムの前記他方の面上に、前記第二の金属薄膜を金属蒸着により形成せしめる第二の金属蒸着手段と、
前記第四のローラの周面上で、前記樹脂フィルムの前記他方の面に形成された前記第二の金属薄膜上に、前記第二の樹脂薄膜を蒸着重合法によって積層形成せしめる第二の蒸着重合手段と、
を含むことを特徴とする積層シートの製造装置。
【請求項4】
前記第二のローラに巻き掛けられた前記樹脂フィルム部位の前記一方の面を収容可能な第一の補助真空槽と、前記第四のローラに巻き掛けられた前記樹脂フィルム部位の前記他方の面を収容可能な第二の補助真空槽とが、前記真空槽内に設けられると共に、前記排気手段とは独立して作動して、該第一の補助真空槽内の空気を排出することにより、該第一の補助真空槽内を該真空槽内とは真空度の異なる真空状態とする第一の補助排気手段と、該排気手段とは独立して作動して、該第二の補助真空槽内の空気を排出することにより、該第二の補助真空槽内を該真空槽内とは真空度の異なる真空状態とする第二の補助排気手段とが更に設けられて、該第一の補助真空槽内で、前記第一の金属薄膜上に、前記第一の樹脂薄膜が、前記第一の蒸着重合手段により積層形成される一方、該第二の補助真空槽内で、前記第二の金属薄膜上に、前記第二の樹脂薄膜が、前記第二の蒸着重合手段により積層形成されるようになっている請求項3に記載の積層シートの製造装置。
【請求項5】
樹脂フィルムの一方の面に第一の金属薄膜が、その他方の面に第二の金属薄膜が、それぞれ金属蒸着により形成されると共に、該第一の金属薄膜上に、更に、樹脂薄膜が蒸着重合法によって積層形成されてなる積層シートを製造する方法であって、
第一のローラと第二のローラと第三のローラとが内部に設置された真空槽を有し、前記樹脂フィルムが、該真空槽内に収容されて、該第一のローラと該第二のローラと該第三のローラとに対して、その順番で巻き掛けられた状態において、該樹脂フィルムを該第一のローラ側から該第三のローラ側に向かって走行させ得るように構成された成膜装置を準備する工程と、
前記第一のローラと前記第二のローラとに対して、前記樹脂フィルムを、前記一方の面が外側となるようにそれぞれ巻き掛けると共に、該第二のローラから送り出された該樹脂フィルムを、前記第三のローラに対して、前記他方の面が外側となるように巻き掛けて、該真空層内を真空とした状態で、該樹脂フィルムを該第一のローラ側から該第三のローラ側に向かって走行させる工程と、
前記第一のローラの周面上で、前記樹脂フィルムの前記一方の面上に、前記第一の金属薄膜を金属蒸着により形成する工程と、
前記第二のローラの周面上で、前記樹脂フィルムの前記一方の面に形成された前記第一の金属薄膜上に、前記樹脂薄膜を蒸着重合法によって積層形成する工程と、
前記第三のローラの周面上で、前記樹脂フィルムの前記他方の面上に、前記第二の金属薄膜を金属蒸着により形成する工程と、
を含むことを特徴とする積層シートの製造方法。
【請求項6】
樹脂フィルムの一方の面に第一の金属薄膜が、その他方の面に第二の金属薄膜が、それぞれ金属蒸着により形成されると共に、該第一の金属薄膜上に第一の樹脂薄膜が、該第二の金属薄膜上に第二の樹脂薄膜が、蒸着重合法によってそれぞれ積層形成されてなる積層シートを製造する方法であって、
第一のローラと第二のローラと第三のローラと第四のローラとが内部に設置された真空槽を有しており、前記樹脂フィルムが、該真空槽内に収容されて、該第一のローラと該第二のローラと該第三のローラと該第四のローラとに対して、その順番で巻き掛けられた状態において、該樹脂フィルムを該第一のローラ側から該第四のローラ側に向かって走行させ得るように構成された成膜装置を準備する工程と、
前記第一のローラと前記第二のローラとに対して、前記樹脂フィルムを、前記一方の面が外側となるようにそれぞれ巻き掛けると共に、該第二のローラから送り出された該樹脂フィルムを、前記第三のローラと前記第四のローラとに対して、前記他方の面が外側となるようにそれぞれ巻き掛けて、前記真空層内を真空とした状態で、該樹脂フィルムを該第一のローラ側から該第四のローラ側に向かって走行させる工程と、
前記第一のローラの周面上で、前記樹脂フィルムの前記一方の面上に、前記第一の金属薄膜を金属蒸着により形成する工程と、
前記第二のローラの周面上で、前記樹脂フィルムの前記一方の面に形成された前記第一の金属薄膜上に、前記第一の樹脂薄膜を蒸着重合法によって積層形成する工程と、
前記第三のローラの周面上で、前記樹脂フィルムの前記他方の面上に、前記第二の金属薄膜を金属蒸着により形成する工程と、
前記第四のローラの周面上で、前記樹脂フィルムの前記他方の面に形成された前記第二の金属薄膜上に、前記第二の樹脂薄膜を蒸着重合法によって積層形成する工程と、
を含むことを特徴とする積層シートの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−84772(P2011−84772A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−238178(P2009−238178)
【出願日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【出願人】(308013436)小島プレス工業株式会社 (386)
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)
【Fターム(参考)】