説明

積層セラミックコンデンサ

【課題】 コンデンサ本体と外部電極との接合強度が高い積層セラミックコンデンサを提供する。
【解決手段】 複数の誘電体層5と複数の内部電極層7とが交互に積層されたコンデンサ本体1と、該コンデンサ本体1の前記内部電極層7が露出した端面1aに設けられ、前記内部電極層7と接続された外部電極3とを具備する積層セラミックコンデンサであって、積層セラミックコンデンサを縦断面視したときに、前記コンデンサ本体1の前記端面1aの前記誘電体層5と前記外部電極3との間にSiの酸化物層8を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部電極との接合強度を高めた積層セラミックコンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
積層セラミックコンデンサは、表面実装用の電子部品として広く用いられている。その構造は、セラミックスを主成分とする複数の誘電体層と内部電極層とを交互に積層して構成されたコンデンサ本体の端面に、内部電極層の取り出し部分を設け、その表面を覆うように外部の回路と接続するための外部電極が形成されたものとなっている。
【0003】
このような積層セラミックコンデンサを構成する外部電極は、一般に、金属粉末(銀、パラジウム、ニッケル、銅など)とガラス粉末と有機ビヒクル(バインダを有機溶媒に溶解させた溶液)とからなる導体ペーストをコンデンサ本体の端面に塗布し、空気中または窒素中にて焼成して形成し、次いで、この外部電極の表面にNiめっき膜およびSn含有めっき膜などのめっき膜を形成したものとなっている(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
積層セラミックコンデンサは、近年、携帯電話などモバイルコンピューティング機器の発達に伴い、ますます小型化および高容量化の要求が高まっているが、積層セラミックコンデンサの規格となっているサイズにおいて、より高い静電容量を得る目的のために、静電容量の発現に寄与するコンデンサ本体の体積をなるべく大きくするために、外部電極をより薄く形成することが試みられている(例えば、特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−3132号公報
【特許文献2】特開2001−210545号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、積層セラミックコンデンサは、近年の誘電体層の薄層化によりコンデンサ本体の端面に占める誘電体層の面積割合が小さくなっていることから、外部電極中のガラスとコンデンサ本体の誘電体層との界面における接触箇所が少ないため、外部電極とコンデンサ本体との接合強度が低いという問題があった。
【0007】
従って、本発明は、コンデンサ本体と外部電極との接合強度が高い積層セラミックコンデンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の積層セラミックコンデンサは、複数の誘電体層と複数の内部電極層とが交互に積層されたコンデンサ本体と、該コンデンサ本体の前記内部電極層が露出した端面に設けられ、前記内部電極層と接続された外部電極とを具備する積層セラミックコンデンサであって、積層セラミックコンデンサを縦断面視したときに、前記コンデンサ本体の前記端面の前記誘電体層と前記外部電極との間にSiの酸化物層を有することを特徴とする。
【0009】
上記積層セラミックコンデンサでは、前記内部電極層は、前記コンデンサ本体の前記端面より突き出た突出部を有することが望ましい。
【0010】
上記積層セラミックコンデンサでは、前記突出部が前記内部電極層の金属と前記外部電
極の金属との合金であることが望ましい。
【0011】
上記積層セラミックコンデンサでは、前記突出部に前記Siの酸化物層の一部が入り込んでいることが望ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、コンデンサ本体と外部電極との接合強度を高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の積層セラミックコンデンサの実施形態を示す概略縦断面図である。
【図2】積層セラミックコンデンサの他の実施形態を示すものであり、コンデンサ本体と外部電極との界面付近を拡大した概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本発明の積層セラミックコンデンサの実施形態を示す概略縦断面図である。本実施形態の積層セラミックコンデンサは、コンデンサ本体1の両端部に外部電極3が形成されている。外部電極3は、例えば、CuもしくはCuとNiの合金ペーストを焼き付けて形成されており、この外部電極3の表面にははんだ接合を良好にするためのめっき膜が形成されている(図2では、めっき膜は図示していない。)。
【0015】
コンデンサ本体1は略直方体状をしたもので、誘電体磁器からなる誘電体層5と内部電極層7とが交互に積層されて構成されている。コンデンサ本体1の積層方向と垂直な方向の端面1aには、内部電極層7が露出しており、この内部電極層7と外部電極3とが接合されている。図1では誘電体層5と内部電極層7との積層状態を単純化して示しているが、誘電体層5と内部電極層7とは数百層にも及ぶ積層体となっている。なお、積層数は積層セラミックコンデンサを高容量化できるという点で、100層以上、特に、200層以上であることが好ましい。
【0016】
誘電体層5は、チタン酸バリウムを主成分とする誘電体磁器を用いることができ、例えば、チタン酸バリウムに酸化マグネシウム、希土類元素(RE)の酸化物および酸化マンガンなどが固溶した結晶粒子と、酸化珪素を主成分とする粒界相とから構成されている誘電体磁器を例示することができる。なお、誘電体磁器の種類としては上述したものだけに限らず、チタン酸バリウムにカルシウムやストロンチウム等の元素を固溶させたものやこれらの誘電体材料を複合化させたものなど他の誘電体磁器を用いることもできる。誘電体層5の平均厚みは2μm以下、特に、1μm以下が望ましい。これにより積層セラミックコンデンサを小型、高容量化することが可能となる。なお、誘電体層5の平均厚みが0.4μm以上であると、静電容量のばらつきを小さくでき、また容量温度特性を安定化させることが可能になる。
【0017】
内部電極層7を形成する材料としては、高積層化しても製造コストを抑制できるという点で、ニッケル(Ni)や銅(Cu)などの卑金属が望ましく、誘電体層5との同時焼成を行えるという点で、特に、ニッケル(Ni)がより望ましい。また、内部電極層7の厚みは、外部電極3と強固に接合できるという理由から、その厚みは0.5μm以上であることが望ましく、一方、積層セラミックコンデンサの小型化に際し、積層数を増やせるという理由から2μm以下であることが望ましい。
【0018】
本実施形態の積層セラミックコンデンサを構成する外部電極3は、金属とSiOを主成分とするガラス相との焼結体からなるものであり、例えば、銅(Cu)粉末またはCuと他の金属成分(例えば、Ni等の遷移金属)との合金粉末と、ガラス粉末とが焼結したものである。
【0019】
さらに本実施形態の積層セラミックコンデンサは、積層セラミックコンデンサを縦断面視したときに、コンデンサ本体1の端面1aの誘電体層5と外部電極3との間にSiの酸化物層8を有することを特徴とする。本発明によれば、Siの酸化物層8が内部電極層7と交互に積層された誘電体層5に接着していることから外部電極3とコンデンサ本体1の誘電体層5との間の接合強度を高めることができる。これは外部電極3とコンデンサ本体1の端面1aの誘電体層5との界面にガラス成分が偏在しているために、コンデンサ本体1に占める誘電体層5の面積割合が小さくても、外部電極3とコンデンサ本体1の端面1aと誘電体層5との界面における接触箇所が多くなるからである。このため、内部電極層7と外部電極3との電気的な接続が強固となり、設計値に近い静電容量を得ることができる。
【0020】
さらに、コンデンサ本体1の端面1aにSiの酸化物層8が形成されていることから、コンデンサ本体1の端面1aと外部電極3との間の空隙の容積を小さくすることができる。このため外部電極3の表面側からの水分やめっき液の浸入が抑えられ、これにより耐湿性を高めることも可能になる。
【0021】
ここで、Siの酸化物層8とは、コンデンサ本体1との外部電極3との境界付近の断面をX線マイクロアナライザを用いて分析したときに、Siがコンデンサ本体1の端面1aに層状に分布するように検出され、また、Siに付随して軽元素として酸素が検出される状態のことである。なお、Siの酸化物層8には、外部電極3、内部電極層7および誘電体層5に含まれる成分が微量含まれていても良い。
【0022】
また、本実施形態の積層セラミックコンデンサでは、内部電極層7は、コンデンサ本体1の端面1aより突き出た突出部9を有することが望ましい。これにより外部電極3と内部電極層7との金属同士の接合強度をさらに高めることができ、静電容量をより設計値に近づけることができるとともに、耐熱衝撃性を高めることができる。
【0023】
また、本実施形態の積層セラミックコンデンサでは、突出部9が内部電極層7の金属と外部電極3の金属との合金であることが望ましい。突出部9が内部電極層7の金属と外部電極3の金属との合金により形成されたものであると、内部電極層7と外部電極3との金属同士の電気的接合が強固になることから積層セラミックコンデンサの静電容量をさらに設計値に近づけることができる。
【0024】
ここで、合金とは、内部電極層7を構成する金属が、例えば、ニッケル(Ni)であり、外部電極3を構成する金属が、例えば、銅(Cu)である場合、NiとCuとの合金となるが、突出部9の一部が合金化されずにNiの単体およびCuの単体のうちの少なくとも1種の金属が混在していてもよい。突出部8の厚み(内部電極層7の積層方向と同じ方向における厚み)は内部電極層7の厚みと同等であるのがよい。
【0025】
なお、本実施形態においては、突出部9を形成している合金の領域は、コンデンサ本体1の内部に形成されている内部電極層7の一部にまで及んでいてもよく、これにより突出部9と内部電極層7との接合をさらに強くすることができる。
【0026】
図2は、積層セラミックコンデンサの他の実施形態を示すものであり、コンデンサ本体と外部電極との界面付近を拡大した概略断面図である。本実施形態の積層セラミックコンデンサでは、突出部9にSiの酸化物層8の一部が入り込んでいることが望ましい(図2の8aで示す。)。この場合、突出部9が端面1aから突出した方向に対して垂直な方向(内部電極層7の積層方向)からSiの酸化物層8が入り込んでいるのがよく、これにより外部電極3とコンデンサ本体1との接合を、積層セラミックコンデンサの対向する外部
電極3の方向である長手方向のみならず積層方向からの引っ張りに対しても強くすることが可能になる。
【0027】
上述のように、突出部9は主な構成材料が金属であり、一方、Siの酸化物層8はセラミックスであるが、Siの酸化物層8の一部が突出部9に入り込んでいると、突出部8とこれに接するように存在しているSiの酸化物層8との間の接合をさらに強固にでき、外部電極の接合強度、高温高湿負荷試験および熱衝撃試験での不良をさらに減らすことができる。
【0028】
また、X線マイクロアナライザを用いた分析によれば、本実施形態の積層セラミックコンデンサ中に形成されたSiの酸化物層8は、その一部が、突出部9の領域から外部電極3側に入り込んでいる箇所(図2中の8b)が認められる場合があり、これによりコンデンサ本体1と外部電極3との間の接合強度をさらに高めることができる。
【0029】
なお、突出部9の長さ(コンデンサ本体1の端面1aから外部電極3の底面までの距離:図2におけるt)は、コンデンサ本体1の端面1aと外部電極3との間に空隙が形成されにくいという理由から5μm以下であることが好ましい。
【0030】
ここで、突出部9が合金化されている状態としては、突出部9を、X線マイクロアナライザを用いたマッピング処理したときに、外部電極3および内部電極層7の両金属が検出される場合をいう。
【0031】
また、突出部9にSiの酸化物層8が入り込んでいる状態とは、X線マイクロアナライザを用いたSiのマッピング処理において、Siが、突出部9の金属成分が検出される領域内で検出される場合をいう。
【0032】
また、本実施形態の積層セラミックコンデンサでは、積層セラミックコンデンサを縦断面視したときに、外部電極3とめっき膜との合計厚みtが20μm以下であることが望ましい。積層セラミックコンデンサを縦断面視したときの外部電極3とめっき膜との合計厚みtを20μm以下とすることにより、積層セラミックコンデンサの規格となっているサイズにおいて、静電容量の発現に寄与するコンデンサ本体1の体積を大きくできることから、積層セラミックコンデンサの単位体積当たりの静電容量を高めることができる。また、外部電極3の厚みがこのように薄くても、本発明の場合には、接合強度が高く、耐熱衝撃性および高温高湿試験の耐性に優れた積層セラミックコンデンサを得ることができる。
【0033】
次に、本発明の積層セラミックコンデンサを製造する方法について説明する。
【0034】
まず、誘電体層5を形成する誘電体磁器の原料を準備する。誘電体磁器として、チタン酸バリウムを主成分とする焼結体を用いる場合、例えば、チタン酸バリウム粉末に対して、所定量のMgO粉末、希土類元素の酸化物粉末およびMnCO粉末を配合し、さらに、必要に応じて所望の誘電特性を維持できる範囲で焼結助剤としてガラス粉末を添加して素原料粉末を得る。
【0035】
MgO粉末、希土類元素の酸化物粉末およびMnCO粉末の割合は、チタン酸バリウム粉末100モルに対して、それぞれ0.2〜0.8モル、0.3〜0.8モルおよび0.1〜0.5モルとすることが望ましく、また、ガラス粉末の添加量はチタン酸バリウム粉末を100質量部としたときに0.5〜2質量部が好ましい。
【0036】
次に、上記の素原料粉末に有機ビヒクルを加えてセラミックスラリを調製し、次いで、ドクターブレード法またはダイコータ法などのシート成形法を用いてセラミックグリーン
シートを形成する。この場合、セラミックグリーンシートの厚みは誘電体層5の高容量化のための薄層化と高絶縁性を確保するという理由から0.5〜4μmが好ましい。
【0037】
次に、得られたセラミックグリーンシートの主面上に矩形状の内部電極パターンを1〜3μmの厚みで印刷して形成する。内部電極パターンとなる導体ペーストはNiおよびCuから選ばれる少なくとも1種の金属粉末を主成分とするものが好適である。この場合、金属粉末の純度は共材として含まれる誘電体粉末を除き98%以上の純度を有するのが好ましい。
【0038】
次に、内部電極パターンが形成されたセラミックグリーンシートを所望枚数重ねて、その上下に内部電極パターンを形成していないセラミックグリーンシートを複数枚、上下層が同じ枚数になるように重ねてシート積層体を形成する。この場合、シート積層体中における内部電極パターンは、長手方向に半パターンずつ交互にずらしてある。
【0039】
次に、シート積層体を格子状に切断して、内部電極パターンの端部が露出したコンデンサ本体成形体を形成する。コンデンサ本体成形体を脱脂した後、水素−窒素の混合ガス中(酸素分圧:1×10−7Pa〜1×10−9Pa)にて、1100℃〜1200℃の温度で1〜4時間の焼成を行い、誘電体層5と内部電極層7とが一体的に焼結されたコンデンサ本体1を作製する。
【0040】
次に、得られたコンデンサ本体1を、必要に応じて、焼成の温度よりも低い温度(900〜1050℃)であり、かつその焼成の還元雰囲気よりも高い酸素分圧(酸素分圧:10−4Pa〜10−6Pa)で再酸化処理を行う。この場合、再酸化処理により、焼成後に還元状態にある誘電体層5を酸化でき、これにより誘電体層5の比誘電率などの誘電特性を高められる。
【0041】
次に、焼成後のコンデンサ本体1に所定の条件でバレル研磨を行い、誘電体層5の端面5aを削って内部電極層7をコンデンサ本体1の端面1aに露出させて外部電極3との電気的な接続が十分に行えるようにする。
【0042】
この場合、焼成して得られたコンデンサ本体1を、セラミック粒子をメディアボールとするボールミル中に入れてバレル研磨を行うのがよい。
【0043】
本発明では、コンデンサ本体1のサイズは問わないが、0402型(内部電極層7に平行な面の面積が0.4mm×0.2mm)〜2012型(同面積が2mm×1mm)の小型サイズの積層セラミックコンデンサに対して好適である。
【0044】
次に、コンデンサ本体1の端面に外部電極3を形成する。本実施形態の積層セラミックコンデンサを構成する外部電極3用の導体ペーストとしては、例えば、銅粉末に微粒のSiO粉末とリチウムを含む溶液とエチルセルロースなどの有機結合材を含む有機ビヒクルとを混合して調製したものを用いる。この場合、導体ペーストに含まれる微粒のSiO粉末の量は、銅粉末100質量部に対して3〜10質量部とするのがよく、また、微粒のSiO粉末は平均粒径が30〜90nmのものを用いるのがよい。
【0045】
本実施形態では、外部電極3を形成するための導体ペーストに無機成分として、高い表面エネルギーを有している微粒のSiO粉末に、さらにSiO粉末を軟化させやすいリチウムを含む溶液を添加しているために、微粒のSiO粉末が外部電極3側からコンデンサ本体1の端面1a側へ拡散しやすくなり、また、コンデンサ本体1の端面1aに突き出た内部電極層3の突出部9間に入り込み易くなる。その結果、コンデンサ本体1の端面1aの誘電体層5と外部電極3との間にSiの酸化物層9を形成することができる。
【0046】
また、導体ペーストが低温で反応しやすいリチウム成分を液体状態で含んでいるために、内部電極層7を構成する金属の融点が低下することから内部電極層7の金属と外部電極3の金属とが反応しやすくなり、コンデンサ本体1の端面1aに突き出た突出部9を形成しやすくなる。
【0047】
この場合、微粒のSiO粉末に対して、リチウムを含む溶液の割合を多くした導体ペーストを用いた場合には、コンデンサ本体1に対する外部電極3の接合強度を高めることができるとともに、積層セラミックコンデンサの静電容量を高めることができる。これは、突出部9において内部電極層7の金属と下地電極3aの金属との合金の割合が多くなるためと考えられる。
【0048】
この場合、外部電極3を形成する条件としては最高温度が600〜750℃、酸素分圧を0.1〜50Paとすることが好ましい。
【0049】
次に、この下地電極3aの表面に、電解バレルめっき法によりNiめっき膜とSn含有めっき膜とをこの順に形成することによって、本実施形態の積層セラミックコンデンサを得ることができる。
【実施例】
【0050】
まず、原料粉末として、チタン酸バリウム粉末,MgO粉末,Y粉末およびMnCO粉末を準備した。これらの各種粉末をチタン酸バリウム粉末量100モルとしたときに、MgO粉末を0.5モル,Y粉末を1モル、MnCO粉末を0.5モル添加し、さらに、ガラス粉末(SiO=55,BaO=20,CaO=15,LiO=10(モル%))をチタン酸バリウム粉末100質量部に対して1質量部添加して誘電体粉末を調製した。
【0051】
この誘電体粉末を直径5mmのジルコニアボールを用いて、溶媒としてトルエンとアルコールとからなる混合溶媒を添加し湿式混合した。
【0052】
次に、湿式混合した粉末を、ポリビニルブチラール樹脂を溶解させたトルエンおよびアルコールの混合溶媒中に投入し、直径5mmのジルコニアボールを用いて湿式混合してセラミックスラリを調製し、ドクターブレード法により厚みが1.5μmのセラミックグリーンシートを作製した。
【0053】
次に、このセラミックグリーンシートの上面にNiを主成分とする矩形状の内部電極パターンを複数形成した。内部電極パターンを形成するための導体ペーストは、平均粒径が0.3μmのNi粉末100質量部に対してチタン酸バリウム(BT)の粉末を15質量部添加したものを用いた。
【0054】
次に、内部電極パターンを印刷したセラミックグリーンシートを200枚積層し、その上下面に内部電極パターンを印刷していないセラミックグリーンシートをそれぞれ20枚積層し、プレス機を用いて温度60℃、圧力10Pa、時間10分の条件で密着させて、積層体を作製し、しかる後、この積層体を、所定の寸法に切断してコンデンサ本体成形体を形成した。
【0055】
次に、コンデンサ本体成形体を大気中で脱バインダ処理した後、水素−窒素の混合ガス雰囲気にて酸素分圧が10−8Paの条件にて1140℃で2時間の焼成を行いコンデンサ本体を作製した。作製したコンデンサ本体のサイズは1005型に相当するものであり、そのサイズはおおよそ、0.95mm×0.48mm×0.48mmであった。また、
誘電体層の平均厚みは1μm、内部電極層の1層の平均厚みは1μmであった。なお、このコンデンサ本体で得られる静電容量の設計値は2.2μFである。
【0056】
次に、作製したコンデンサ本体に窒素雰囲気中(酸素分圧:10−6Pa)1000℃で5時間の酸化処理を行った。
【0057】
次に、作製したコンデンサ本体をバレル研磨した。バレル研磨は内容積が500mLのポリポットを用い、メディアボールとして平均粒径が5mmのアルミナボールを用い、溶媒として純水を用いて行った。バレル研磨を行ったコンデンサ本体の試料はいずれも内部電極層がコンデンサ本体の端面よりもわずかに露出していた。
【0058】
次に、バレル研磨したコンデンサ本体の端部にCuを主成分とする導体ペースト(Cu粉末(純度99%))を塗布して未焼結状態の外部電極を形成した。導体ペーストとしては、表1に示すように、Cu粉末と微粒のSiO粉末とリチウムを含む溶液とエチルセルロースをテルピネオールとフタル酸ジブチルとの混合溶媒に溶解させた有機ビヒクルとを添加したものを用いた。また、比較例として、SiO粉末に平均粒径が200nmのものを用いた場合(試料No.5)および軟化温度が680℃のホウケイ酸ガラスフリットを用いた場合(試料No.6)を作製し、同様の評価を行った。微粒のSiO2粉末、平均粒径が200μmのSiO粉末およびホウケイ酸ガラスフリットの添加量はCu粉末100質量部に対して10質量部とした。
【0059】
次に、未焼結の外部電極を有するコンデンサ本体を温度を700℃、酸素分圧を1Pa、最高温度の保持時間を0.2時間とする条件で加熱して下地電極の焼き付けを行った。
【0060】
次に、電解バレルメッキ法により、外部電極の表面に、順に、電解めっき法によりNiめっきおよびSnめっきを行い、Niめっき膜およびSn含有めっき膜(Sn99.9%)を形成して積層セラミックコンデンサを作製した。
【0061】
次に、作製した積層セラミックコンデンサについて以下の評価を行った。なお、各評価は、Niめっき膜およびSn含有めっき膜を形成した積層セラミックコンデンサを用いて行った。このときコンデンサ本体と外部電極との界面部分における突出部およびSiの酸化物層の分析は、得られた積層セラミックコンデンサを断面研磨して図1に示すような断面を露出させた試料を作製し、コンデンサ本体と外部電極との接合界面付近に対して、走査電子顕微鏡に付設のX線マイクロアナライザを用いて各元素のマッピング処理の結果を用いて行った。
【0062】
突出部が合金化している状態は、突出部を、X線マイクロアナライザを用いたマッピング処理したときに、外部電極および内部電極層の両金属が検出される場合とした。
【0063】
突出部にSiの酸化物層が入り込んでいる状態は、X線マイクロアナライザを用いたSiのマッピング処理において、Siが、突出部の金属成分が検出される領域内で検出される場合とした。
【0064】
外部電極の厚みtは、写した走査型電子顕微鏡写真からコンデンサ本体の積層方向の中央部の厚みを測定して求めた。このとき形成した外部電極の端面方向の厚みは全試料とも約18μmであった。また、Niメッキ膜およびSn含有メッキ膜は平均厚みがいずれも1μmであった。
【0065】
外部電極のコンデンサ本体との接合強度は、試料の外部電極に0.8mmのはんだ引き綱線を230℃のホットプレート上で共晶クリームはんだにより接着し、この綱線を10
mm/分で引っ張ることにより接合強度を測定した。平均の接合強度が1.5kgf以上を示した試料を合格とし、平均の接合強度が1.5kgfよりも低い試料を不合格とした。
【0066】
熱衝撃試験は、室温との温度差が300℃となるように設定したはんだ槽を用いて、積層セラミックコンデンサを約1秒間はんだ槽に漬けて行い、浸漬後の試料について、実体顕微鏡を用いて50〜100倍の倍率で観察し、外部電極およびコンデンサ本体のいずれかの箇所におけるクラックの有無を確認し、不良個数を求めた。
【0067】
高温高湿負荷試験は、温度65℃、湿度93%RH、直流電圧6.3Vの条件で48時間放置した後に積層セラミックコンデンサの絶縁抵抗が5×10Ω以下を示した試料を不良と判定した。試料数は30個とした。
【0068】
静電容量は温度25℃、周波数1.0kHz、測定電圧を1Vrmsとして測定し、その平均値を求めた。接合強度、熱衝撃試験および高温高湿負荷試験の試料数は30個とした。
【0069】
【表1】

【0070】
表1の結果から明らかなように、積層セラミックコンデンサを縦断面視したときに、コンデンサ本体の端面の誘電体層と外部電極との間にSiの酸化物層を有する試料No.1
〜4は、接合強度試験での不良数が30個中1個以下であった。また、これらの試料は、静電容量値がいずれも2.1μF以上であり、設計値の95%以上の値を有し、高温高湿負荷試験での不良が無く、熱衝撃試験での不良率が30個中1個以下であった。
【0071】
特に、突出部が内部電極層のNiと外部電極のCuとの合金を形成していることが確認された試料No.2〜4では、積層セラミックコンデンサの静電容量が2.15μFであり、そのばらつきも他の試料に比較して小さかった。
【0072】
さらに、突出部にSiの酸化物層が入り込んでいることが確認された試料No.2、3では、接合強度、耐熱衝撃性および高温高湿負荷特性のいずれの評価においても不良も無かった。
【0073】
これに対して、試料No.5〜7では、接合強度、耐熱衝撃性および高温高湿負荷特性の評価において不良が多かった。
【符号の説明】
【0074】
1 コンデンサ本体
1a コンデンサ本体の端面
3 外部電極
5 誘電体層
7 内部電極層
8 Siの酸化物層
9 突出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の誘電体層と複数の内部電極層とが交互に積層されたコンデンサ本体と、該コンデンサ本体の前記内部電極層が露出した端面に設けられ、前記内部電極層と接続された外部電極とを具備する積層セラミックコンデンサであって、積層セラミックコンデンサを縦断面視したときに、前記コンデンサ本体の前記端面の前記誘電体層と前記外部電極との間にSiの酸化物層を有することを特徴とする積層セラミックコンデンサ。
【請求項2】
前記内部電極層は、前記コンデンサ本体の前記端面より突き出た突出部を有することを特徴とする請求項1に記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項3】
前記突出部が前記内部電極層の金属と前記外部電極の金属との合金であることを特徴とする請求項2に記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項4】
前記突出部に前記Siの酸化物層の一部が入り込んでいることを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれかに記載の積層セラミックコンデンサ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2012−230973(P2012−230973A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−97327(P2011−97327)
【出願日】平成23年4月25日(2011.4.25)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】