説明

積層体、及び真空成形又は真空圧空成形による積層体の製造方法

【課題】本発明は、溶剤系接着剤を使用する際の課題を解決し、樹脂または金属基材に、樹脂シート、布及び不織布などの加飾部材を効率良く、美しく接着した積層体を得ることを目的とし、また該積層体を得る方法を開発することを目的としている。
【解決手段】真空成形または真空圧空成形により、樹脂シート、布、不織布などの加飾部材と、樹脂基材または金属基材とを、変性ポリオレフィン樹脂を含む組成物を介して貼り合わせることを見出し、本発明を完成するに至った。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空成形又は真空圧空成形において積層体を作成する分野に関するものであって、自動車内装や、電子機器部材の表面を布や不織布、樹脂シートで表面を加飾する技術分野などで利用される。
【背景技術】
【0002】
樹脂基材または金属基材と種々の素材を貼り合わせた積層体は、その目的に応じて多くの検討がなされている。
【0003】
たとえば、凹凸模様(レリーフパターン、エンボス、シボ)等を有するシート、布、不織布などの加飾部材を表面層として貼り合わせた基材は、意匠性が高く自動車用部品、家電等の幅広い分野に用いられている。
【0004】
基材への加飾部材層の貼りあわせは、一般に表面層加飾面の裏面に溶剤系接着剤を塗布した後、加熱圧着機や真空成形機などにより行われている(例えば特許文献1)。また、布や不織布を貼り合わせる場合も同様に、裏面に溶剤系の接着剤を塗布し貼り合わせが行われている。しかし、裏面に溶剤系の接着剤を塗布する方法は、溶剤を気化させる工程が必要であったり、溶剤の乾燥が不十分であると成形後に臭気が生じたりする場合がある。また布や不織布の裏面に溶剤系の接着剤を塗布する場合、溶剤が表面(加飾面)まで滲み出すことがあり、溶剤系接着剤の塗布量の調節が難しいといった課題がある。
【0005】
一方、ポリオレフィン系樹脂に極性官能基を有するモノマー成分が導入された変性ポリオレフィン系樹脂を接着剤として使用することが、検討されている。しかし、変性ポリオレフィン系樹脂を用いて、布や不織布を含む多種の加飾用シートを樹脂あるいは金属の基材の貼り合わせる方法については、さらに効率的な方法の開発が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−144002号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記の現状に対して、溶剤系接着剤を使用する際の課題を解決し、樹脂または金属基材に、樹脂シート、布及び不織布などの加飾部材を効率良く接着した積層体、及び積層体を得る方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討した結果、真空成形または真空圧空成形により、樹脂シート、布、不織布などの加飾部材と、樹脂基材または金属基材とを、変性ポリオレフィン樹脂を含む組成物を介して貼り合わせることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、
(1) (A)樹脂基材層および/または金属基材層と(C)加飾部材層とを、(B)ホットメルト接着材層またはホットメルト接着フィルム層を介して貼り合わせることを特徴とする積層体。
【0010】
(2) (C)加飾部材層が、樹脂シート、布および不織布から選ばれる少なくとも一つである(1)に記載の積層体。
【0011】
(3) (C)加飾部材層が、通気性を有する部材からなる(1)または(2)に記載の積層体。
【0012】
(4) 前記ホットメルト接着剤または接着フィルムが、ポリオレフィン系樹脂からなることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の積層体。
【0013】
(5) 前記ホットメルト接着剤またはフィルムが、下記(a)および(b)存在下、下記(c)、(d)、(e)および(f)から選ばれる少なくとも一つの成分を、溶融混練して得られる変性ポリオレフィン樹脂であることを特徴とする(4)記載の積層体。
(a)ポリオレフィン樹脂、
(b)ラジカル重合開始剤、
(c)芳香族ビニル単量体、
(d)エポキシ基含有ビニル単量体、
(e)エチレン性二重結合及びケイ素原子を同一分子内含む単量体、
(f)エチレン性二重結合及び酸性極性基を同一分子内含む単量体。
【0014】
(6) (A)樹脂基材層および/または金属基材層が、自動車用部材、パソコン用筺体、携帯電話用筺体またはテレビ用フレームである(1)〜(5)のいずれかに記載の積層体。
【0015】
(7) 真空成形または真空圧空成形により、(A)樹脂基材層および/または金属基材層と(C)加飾部材層とを、(B)ホットメルト接着材層またはホットメルト接着フィルム層を介して貼り合わせることを特徴とする(1)〜(6)に記載の積層体の製造方法。
【0016】
(8) (C)加飾部材層と(B)ホットメルト接着材層またはホットメルト接着フィルム層が予め積層されていることを特徴とする(7)に記載の積層体の製造方法。
【0017】
(9) (C)加飾部材層の接着面の反対側面に、さらに(D)非通気性シートを配置することを特徴とする(7)または(8)に記載の積層体の製造方法。
【0018】
(10) (D)非通気性シートが、ゴム製シートである(9)に記載の積層体の製造方法。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、加飾部材と、樹脂基材または金属基材との貼り合わせに、変性ポリオレフィン系樹脂を含む接着剤組成物を用いることにより、溶剤系接着剤を使用する場合に対して、臭気等の環境面での利点や加飾部材への溶剤の染み出しが回避できる点などにおいて効果がある。
【0020】
また、加飾部材として樹脂シート等に凹凸模様を直接転写するエンボス加工を行う工程と同じ工程において、その加飾面の裏面に接着層を形成することも好適な実施形態のひとつであり、実用的に有効な製造方法を提供するものである。
【0021】
また、本発明は、これまで真空成形または真空圧空成形では積層が困難であった布や不織布などの通気性のある加飾部材を、真空成形又は真空圧空成形により、樹脂基材または金属基材に貼り付けることを可能にするものである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に本発明の詳細について述べる。
<加飾部材>
本発明で用いられる加飾部材は、凹凸などのエンボスを有する樹脂シート、布、不織布など樹脂基材または金属基材の表層を加飾する部材である。
【0023】
本発明で用いられる樹脂シートの材質としては、特に限定されるものではなく、ポリオレフィン、アクリル、ポリカーボネート、ポリエステル、ABS、AES等が挙げられる。また、表面に凹凸をつけたエンボスシートであっても、金属箔と貼り合せた積層シートであってもよい。
【0024】
本発明で用いられる布、不織布の材質は、特に限定されるものではなく、木綿、絹等の天然素材であっても、ポリエステル、ポリプロピレン等の化学繊維からなるものであってもよい。また、布の織り方は、どのようなものでもよい。
【0025】
前記、布、不織布、樹脂シートなどの加飾部材は、通気性を有するものであっても良い。
布、不織布、樹脂シートなどの表面層は、加飾面の反対面に予め接着層が塗布またはラミネートされることが好ましい。ラミネートの方法としては、熱ロールによるラミネート、プレス機によるバッチ積層などが挙げられる。
【0026】
<樹脂基材、金属基材>
本発明で用いられる被着体(樹脂基材、金属基材)の材料は、例えば、金、銀、銅、鉄、錫、鉛、アルミニウム、シリコンなどの金属;ガラス、セラミックスなどの無機材料;紙、布などのセルロース系高分子材料;メラミン樹脂、アクリル・ウレタン樹脂、ウレタン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、スチレン・アクリロニトリル共重合体、ポリカーボネート樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂などの合成高分子材料等が挙げられる。
【0027】
被着体の材料として、異なる2種類以上の材料を混合、複合してもよい。また、積層体が本発明の接着性フィルムを介して、異なる2つの被着体が接着してなるものである場合、2つの被着体を構成する材料は、同じ種類の材料でも異なる種類の材料のいずれでもよい。被着体の性状としては特に限定されないが、例えば、フィルム状、シート状、板状、繊維状などが挙げられる。また、被着体には、必要に応じて、離型剤、メッキなどの被膜、塗料による塗膜、プラズマやレーザーなどによる表面改質、表面酸化、エッチングなどの表面処理等を実施してもよい。被着体の具体例としては、トリム類(ドアトリム、内装トリムなど)、成形天井、シート材(内装シート、インパネ表皮、装飾シートなど)等の自動車部材や、室内ドア、パーティション、内装壁板、家具、システムキッチン等の住宅資材で使用される化粧フィルム、パソコンや携帯電話の筐体等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0028】
<接着剤または接着シート>
本発明に用いられる接着層は、樹脂基材または金属基材と、加飾部材を接着できる接着剤であれば、特に制限なく使用することができるが、作業環境の視点から、ホットメルト接着剤またはホットメルト接着フィルムが好ましい。また、取扱い性の良い形状である接着フィルムを得やすい点からは、変性プロピレン樹脂組成物からなる接着性樹脂組成部であることが、さらに好ましい。
【0029】
また、変性プロピレン樹脂としては、下記(a)および(b)の存在下、下記(c)、(d)、(e)および(f)から選ばれる少なくとも一つの成分を、溶融混練して得られる変性ポリオレフィン樹脂が好ましい。
(a)ポリオレフィン樹脂、
(b)ラジカル重合開始剤、
(c)芳香族ビニル単量体、
(d)エポキシ基含有ビニル単量体、
(e)エチレン性二重結合及びケイ素原子を同一分子内含む単量体、
(f)エチレン性二重結合及び酸性極性基を同一分子内含む単量体。
【0030】
(変性ポリオレフィン樹脂組成物)
本発明の変性ポリオレフィン樹脂組成物は、(a)ポリオレフィン樹脂に対し、(c)芳香族ビニル単量体、(d)エポキシ基含有ビニル単量体、(e)エチレン性二重結合及びケイ素原子を同一分子内に含む単量体、および(f)エチレン性二重結合及び酸性極性基を同一分子内に含む単量体から選ばれる少なくとも1つの単量体からなるグラフト鎖をグラフトさせた樹脂組成物である。
【0031】
本発明に用いるグラフト重合反応としては、特に制限されないが、溶液重合、含浸重合、溶融重合などを用いることができる。特に、溶融重合が簡便で好ましい。
溶融混練時の添加順序及び方法については、特に制限はない。なお、その他必要に応じ添加される材料の混合や溶融混練の順序及び方法はとくに制限されるものではない。
溶融混練時の加熱温度は、100〜250℃であることが、ポリオレフィン樹脂が充分に溶融し、かつ熱分解しないという点で好ましい。また溶融混練の時間(ラジカル重合開始剤を混合してからの時間)は、通常30秒間〜60分間である。
【0032】
また、前記の溶融混練の装置としては、押出機、バンバリーミキサー、ミル、ニーダー、加熱ロールなどを使用することができる。生産性の面から単軸あるいは2軸の押出機を用いる方法が好ましい。また、各々の材料を充分に均一に混合するために、前記溶融混練を複数回繰返してもよい。
【0033】
本発明の変性ポリオレフィン樹脂組成物には必要に応じて、酸化防止剤、金属不活性剤、燐系加工安定剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、蛍光増白剤、金属石鹸、制酸吸着剤などの安定剤、または架橋剤、連鎖移動剤、核剤、滑剤、可塑剤、充填材、強化材、顔料、染料、難燃剤、帯電防止剤などの添加剤を本発明の効果を損なわない範囲内で添加してもよい。これらの安定剤および添加剤を用いる場合は、予め(a)ポリオレフィン樹脂に添加されているものであってもよく、(a)ポリオレフィン樹脂に(c)〜(f)成分をグラフトさせる際に添加されるものであってもよく、また変性ポリオレフィン樹脂を製造したのちに適宜の方法でこの変性ポリオレフィン樹脂に添加されるものであってもよい。
【0034】
本発明の変性ポリオレフィン樹脂組成物は、添加剤として、ポリオレフィン樹脂に添加しても、接着性を向上することができる。
【0035】
本発明の変性ポリオレフィン樹脂組成物は、ポリオレフィン樹脂と混合して用いることができる。例えばポリプロピレン単独重合体、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリ‐1‐ブテン、ポリイソブチレン、プロピレンとエチレンおよび/または1‐ブテンとのあらゆる比率でのランダム共重合体またはブロック共重合体、エチレンとプロピレンとのあらゆる比率においてジエン成分が50重量%以下であるエチレン‐プロピレン‐ジエン三元共重合体、ポリメチルペンテン、シクロペンタジエンとエチレンおよび/またはプロピレンとの共重合体などの環状ポリオレフィン、エチレンまたはプロピレンと50重量%以下のたとえば酢酸ビニル、メタクリル酸アルキルエステル、アクリル酸アルキルエステル、芳香族ビニルなどのビニル化合物などとのランダム共重合体、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーブロック共重合体、オレフィン系熱可塑性エラストマー(ポリプロピレンとエチレン/プロピレン共重合体又はエチレン‐プロピレン‐ジエン三元共重合体の単純混合物、その一部架橋物、又はその完全架橋物)などが挙げられ、これらは単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0036】
剛性が高く、安価であるという点からはポリプロピレン単独重合体が好ましく、剛性および耐衝撃性がともに高いという点からはプロピレンとほかの単量体とのブロック共重合体であることが好ましい。また、柔軟性が必要な場合にはポリオレフィン系熱可塑性エラストマーが好ましい。
【0037】
本発明の変性ポリオレフィン樹脂組成物とポリオレフィン樹脂を混合する際にその混合量は特に限定はないが、変性ポリオレフィン樹脂組成物100重量部に対し、0.1〜100重量部を含有とすることが接着性の点で好ましく、更には0.1〜70重量部を含有させることが好ましい。より好ましくは0.3〜50重量部であり、更に好ましくは0.5〜20重量部である。
【0038】
(シートまたはフィルム状成形体について)
本発明の変性ポリオレフィン樹脂組成物は、熱溶着性を有するポリオレフィンシートまたはフィルム状成形体にすることができる。また、ポリオレフィン樹脂に本発明の変性ポリオレフィン樹脂組成物を添加してなるポリオレフィン樹脂組成物も、熱溶着性を有するポリオレフィンシートまたはフィルム状成形体にすることができる。本発明でいう熱溶着性とは、熱で溶けて被着体と接合する性質のことである。本発明のシートまたはフィルム状成形体とは、成形体の厚みとしては3μmから3mmが例示でき、好ましくは10μm〜1mmであり、シートあるいはフィルムとして利用することができるものである。
【0039】
本発明の熱溶着性を有するポリオレフィンシートまたはフィルム状成形体の製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば本発明の変性ポリオレフィン樹脂組成物とポリオレフィン樹脂をドライブレンド、あるいは溶融混練した後に、各種の押出成形機、射出成形機、カレンダー成形機、インフレーション成形機、ロール成形機、あるいは加熱プレス成形機などを用いてシート状成形体に成形加工することが可能である。
【0040】
(ポリオレフィン樹脂)
前記(a)ポリオレフィン樹脂とは、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、プロピレンとエチレン及び又は1‐ブテン、1‐ヘキセン、1‐オクテンとのあらゆる比率でのランダム共重合体またはブロック共重合体、エチレンとプロピレンとのあらゆる比率においてジエン成分が50重量%以下であるエチレン‐プロピレン‐ジエン三元共重合体、ポリメチルペンテン、シクロペンタジエンとエチレン及び又はプロピレンとの共重合体などの環状ポリオレフィン、エチレンまたはプロピレンと50重量%以下のビニル化合物などとのランダム共重合体、ブロック共重合体などが挙げられる。
中でも、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリイソブチレンが好ましく、ポリプロピレンが特に好ましい。
【0041】
また、極性基が導入されたポリオレフィン樹脂も使用できる。極性基が導入されたポリオレフィン樹脂の具体例としては、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、エチレン‐酢酸ビニル共重合体、エチレン‐アクリル酸共重合体、エチレン‐アクリル酸エチル共重合体、エチレン‐メタクリル酸メチル共重合体、エチレン‐アクリル酸エチル‐メタクリル酸グリシジル共重合体などが挙げられる。
【0042】
前記の原料ポリオレフィン樹脂は、単独で用いてもよく、また複数を併用してもよい。
前記原料ポリオレフィン樹脂には、必要に応じて、他の樹脂、又はゴムを本発明の効果を損なわない範囲内で添加してもよい。
【0043】
前記の他の樹脂またはゴムとしては、たとえばポリペンテン‐1、などのポリα‐オレフィン;プロピレン含有量が75重量%未満のプロピレン‐ブテン‐1共重合体などのエチレン又はα‐オレフィン‐α‐オレフィン共重合体;プロピレン含有量が75重量%未満のエチレン‐プロピレン‐5‐エチリデン‐2‐ノルボルネン共重合体などのエチレンまたはα‐オレフィン‐α−オレフィン‐ジエン単量体共重合体;ポリブタジエン、ポリイソプレンなどのポリジエン共重合体;スチレン‐ブタジエンランダム共重合体などのビニル単量体‐ジエン単量体ランダム共重合体;スチレン‐ブタジエン‐スチレンブロック共重合体などのビニル単量体‐ジエン単量体‐ビニル単量体ブロック共重合体;水素化(スチレン‐ブタジエンランダム共重合体)などの水素化(ビニル単量体‐ジエン単量体ランダム共重合体);水素化(スチレン‐ブタジエン‐スチレンブロック共重合体)などの水素化(ビニル単量体‐ジエン単量体‐ビニル単量体ブロック共重合体);アクリロニトリル‐ブタジエン‐スチレングラフト共重合体、メタクリル酸メチル‐ブタジエン‐スチレングラフト共重合体などのビニル単量体‐ジエン単量体‐ビニル単量体グラフト共重合体;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチル、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレンなどのビニル重合体;塩化ビニル‐アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル‐酢酸ビニル共重合体、アクリロニトリル‐スチレン共重合体、メタクリル酸メチル‐スチレン共重合体などのビニル共重合体などがあげられる。
【0044】
ポリオレフィン樹脂に対するこれら他の樹脂またはゴムの添加量は、この樹脂の種類またはゴムの種類により異なり、前述のように本発明の効果を損なわない範囲内にあればよいものであるが、通常、25重量%程度以下であることが好ましい。
また、これらポリオレフィン樹脂(各種の添加材料を含む場合もある)は粒子状のものであってもペレット状のものであってもよく、その大きさや形はとくに制限されるものではない。
【0045】
また、前記の添加材料(ほかの樹脂、およびゴム)を用いる場合は、この添加材料は予めポリオレフィン樹脂に添加されているものであっても、ポリオレフィン樹脂を溶融するときに添加されるものであってもよく、また変性ポリオレフィン樹脂を製造したのちに適宜の方法でこの変性ポリオレフィン樹脂に添加されるものであってもよい。
ポリオレフィン樹脂におけるプロピレン成分に関しては、ポリオレフィン樹脂に対しラジカルが発生し易くなる点で、プロピレン単位が過半量であることが好ましい。ここでいう過半量とはポリオレフィン樹脂に対するプロピレン成分が50重量%以上のことを意味する。
【0046】
(ラジカル開始剤)
(a)ポリオレフィン樹脂に対して、(c)芳香族ビニル単量体、(d)エポキシ基含有ビニル単量体、(e)エチレン性二重結合及びケイ素原子を同一分子内に含む単量体、(f)エチレン性二重結合及び酸性極性基を同一分子内に含む単量体などをグラフト共重合する際、反応を開始するため、ラジカル重合開始剤を添加する。
ラジカル重合開始剤としては、一般に過酸化物またはアゾ化合物などがあげられる。前記ラジカル重合開始剤としては、メチルエチルケトンパーオキサイド、メチルアセトアセテートパーオキサイドなどのケトンパーオキサイド;1,1‐ビス(t‐ブチルパーオキシ)‐3,3,5‐トリメチルシクロヘキサン、1,1‐ビス(t‐ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、n‐ブチル‐4,4‐ビス(t‐ブチルパーオキシ)バレレート、2,2‐ビス(t‐ブチルパーオキシ)ブタンなどのパーオキシケタール;パーメタンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3‐テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイドなどのハイドロパーオキサイド;ジクミルパーオキサイド、2,5‐ジメチル‐2,5‐ジ(t‐ブチルパーオキシ)ヘキサン、α,α´‐ビス(t‐ブチルパーオキシ‐m‐イソプロピル)ベンゼン、t‐ブチルクミルパーオキサイド、ジ‐t‐ブチルパーオキサイド、2,5‐ジメチル‐2,5‐ジ(t‐ブチルパーオキシ)ヘキシン‐3などのジアルキルパーオキサイド;ベンゾイルパーオキサイドなどのジアシルパーオキサイド;ジ(3‐メチル‐3‐メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、ジ‐2‐メトキシブチルパーオキシジカーボネートなどのパーオキシジカーボネート;t‐ブチルパーオキシオクテート、t‐ブチルパーオキシイソブチレート、t‐ブチルパーオキシラウレート、t‐ブチルパーオキシ‐3,5,5‐トリメチルヘキサノエート、t‐ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、2,5‐ジメチル‐2,5‐ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t‐ブチルパーオキシアセテート、t‐ブチルパーオキシベンゾエート、ジ‐t‐ブチルパーオキシイソフタレートなどのパーオキシエステルなどの有機過酸化物の1種または2種以上があげられる。
【0047】
これらのうち、とくに水素引き抜き能が高いものが好ましく、そのようなラジカル重合開始剤としては、たとえば1,1‐ビス(t‐ブチルパーオキシ)‐3,3,5‐トリメチルシクロヘキサン、1,1‐ビス(t‐ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、n‐ブチル‐4,4‐ビス(t‐ブチルパーオキシ)バレレート、2,2‐ビス(t‐ブチルパーオキシ)ブタンなどのパーオキシケタール;ジクミルパーオキサイド、2,5‐ジメチル‐2,5‐ジ(t‐ブチルパーオキシ)ヘキサン、α,α´‐ビス(t‐ブチルパーオキシ‐m‐イソプロピル)ベンゼン、t‐ブチルクミルパーオキサイド、ジ‐t‐ブチルパーオキサイド、2,5‐ジメチル‐2,5‐ジ(t‐ブチルパーオキシ)ヘキシン‐3などのジアルキルパーオキサイド;ベンゾイルパーオキサイドなどのジアシルパーオキサイド;t‐ブチルパーオキシオクテート、t‐ブチルパーオキシイソブチレート、t‐ブチルパーオキシラウレート、t‐ブチルパーオキシ‐3,5,5‐トリメチルヘキサノエート、t‐ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、2,5‐ジメチル‐2,5‐ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t‐ブチルパーオキシアセテート、t‐ブチルパーオキシベンゾエート、ジ‐t‐ブチルパーオキシイソフタレートなどのパーオキシエステルなどの1種または2種以上があげられる。
【0048】
前記ラジカル重合開始剤の添加量は、ポリオレフィン樹脂100重量部に対して、0.01〜5重量部の範囲内にあることが好ましく、0.05〜3重量部の範囲内にあることがさらに好ましい。0.01重量部未満では変性が充分に進行せず、5重量部を超えるとポリオレフィンの流動性、機械的特性の著しい低下を招く。
【0049】
(芳香族ビニル単量体)
例示するならば、スチレン;o‐メチルスチレン、m‐メチルスチレン、p‐メチルスチレン、α‐メチルスチレン、β‐メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレンなどのメチルスチレン;o‐クロロスチレン、m‐クロロスチレン、p‐クロロスチレン、α‐クロロスチレン、β‐クロロスチレン、ジクロロスチレン、トリクロロスチレンなどのクロロスチレン;o‐ブロモスチレン、m‐ブロモスチレン、p‐ブロモスチレン、ジブロモスチレン、トリブロモスチレンなどのブロモスチレン;o‐フルオロスチレン、m‐フルオロスチレン、p‐フルオロスチレン、ジフルオロスチレン、トリフルオロスチレンなどのフルオロスチレン;o‐ニトロスチレン、m‐ニトロスチレン、p‐ニトロスチレン、ジニトロスチレン、トリニトロスチレンなどのニトロスチレン;o‐ヒドロキシスチレン、m‐ヒドロキシスチレン、p‐ヒドロキシスチレン、ジヒドロキシスチレン、トリヒドロキシスチレンなどのビニルフェノール;o‐ジビニルベンゼン、m‐ジビニルベンゼン、p‐ジビニルベンゼンなどのジビニルベンゼン;o‐ジイソプロペニルベンゼン、m‐ジイソプロペニルベンゼン、p‐ジイソプロペニルベンゼンなどのジイソプロペニルベンゼン;などの1種または2種以上が挙げられる。これらのうちスチレン、α‐メチルスチレン、p‐メチルスチレンなどのメチルスチレン、ジビニルベンゼン単量体またはジビニルベンゼン異性体混合物が安価であるという点で好ましい。
【0050】
(c)芳香族ビニル単量体は、前記(d)エポキシ基含有ビニル単量体、(e)エチレン性二重結合及びケイ素原子を同一分子内に含む単量体、及び(f)エチレン性二重結合及び酸性極性基を同一分子内に含む単量体から選ばれる少なくとも1つと同時に用いることが、前記(d)、(e)、(f)のグラフト率を高めることができ好ましい。
【0051】
前記(c)芳香族ビニル単量体の添加量は、ポリオレフィン樹脂100重量部に対して、0.01〜10重量部であることが好ましく、0.1〜5重量部であることがさらに好ましい。添加量が少なすぎるとポリオレフィン樹脂に対する(d)エポキシ基含有ビニル単量体、(e)エチレン性二重結合及びケイ素原子を同一分子内に含む単量体、(f)エチレン性二重結合及び酸性極性基を同一分子内に含む単量体のグラフト率が劣る傾向がある。一方、添加量が10重量部を超えると(d)エポキシ基含有ビニル単量体、(e)エチレン性二重結合及びケイ素原子を同一分子内に含む単量体、(f)エチレン性二重結合及び酸性極性基を同一分子内に含む単量体のグラフト効率が飽和域に達する。
【0052】
(エポキシ基含有ビニル単量体)
エポキシ基含有ビニル単量体としては、例えば、メタクリル酸グリシジル、アクリル酸グリシジル、マレイン酸モノグリシジル、マレイン酸ジグリシジル、イタコン酸モノグリシジル、イタコン酸ジグリシジル、アリルコハク酸モノグリシジル、アリルコハク酸ジグリシジル、p‐スチレンカルボン酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル、メタアリルグリシジルエーテル、スチレン‐p‐グリシジルエーテル、p‐グリシジルスチレン、3,4‐エポキシ‐1‐ブテン、3,4‐エポキシ‐3‐メチル‐1‐ブテンなどのエポキシオレフィン、ビニルシクロヘキセンモノオキシドなどの1種または2種以上が挙げられる。
【0053】
これらのうち、メタクリル酸グリシジル、アクリル酸グリシジルが安価という点で好ましい。前記エポキシ基含有ビニル単量体の添加量は、(a)ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して、0.01〜10重量部であることが好ましく、0.5〜5重量部であることがさらに好ましい。添加量が少なすぎると接着性が充分に改善されない傾向があり、添加量が多すぎると好適な形状や外観を有する樹脂組成物として取得できない傾向がある。
【0054】
(エチレン性二重結合及びケイ素原子を同一分子内に含む単量体)
エチレン性二重結合及びケイ素原子を同一分子内に含む単量体は、下記一般式(1)で示される化学構造を有することを特徴とするものである。
−SiX3 (1)
(式中、Xはそれぞれ独立に加水分解性基または水酸基である。)
【0055】
一般式(1)中のXで記載される加水分解性基としては特に限定されず、公知の加水分解性基があげられ、例えば、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、酸アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、アルケニルオキシ基などがあげられる。これらのなかでは、水素原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基およびアルケニルオキシ基が好ましく、アルコキシ基が、加水分解性が穏やかで取扱いやすいことからより好ましい。
【0056】
アルコキシ基の具体例としては、特に限定されず、例えば、メトキシ基、エトキシ基、1‐プロポキシ基、2‐プロポキシ基、1‐ブトキシ基、2‐ブトキシ基、tert‐ブチルオキシ基、オクトキシ基、ラウリルオキシ基、フェノキシ基、ベンジルオキシ基などがあげられる。これらのなかでは、メトキシ基、エトキシ基が、入手が容易なことから好ましい。
【0057】
本発明において、ポリオレフィン樹脂にグラフトされるアルコキシシランとしては、ビニルアルコキシシラン、イソプロペニルアルコキシシラン、アリルアルコキシシラン、アクリロキシアルコキシシラン、メタクリロキシアルコキシシラン等のラジカル重合性の官能基(アルケニル基)を有するアルケニルアルコキシシランが好ましく使用される。例えば、ビニルメトキシシラン、ビニルエトキシシラン、ビニルプロポキシシラン、ビニルブトキシシラン、メタクリロキシプロピルシラン等のビニルアルコキシシランなどが好ましく用いられ、このビニル基などの官能基を利用して対象とするポリオレフィン樹脂にグラフト反応により付加される。
【0058】
前記エチレン性二重結合及びケイ素原子を同一分子内に含む単量体の添加量は、ポリオレフィン樹脂100重量部に対して、0.01〜10重量部であることが好ましく、0.1〜5重量部であることがさらに好ましい。添加量が少なすぎると接着性が充分に改善されない傾向があり、添加量が多すぎると好適な形状や外観を有する樹脂組成物として取得できない傾向がある。
【0059】
(エチレン性二重結合及び酸性極性基を同一分子内に含む単量体)
エチレン性二重結合及び酸性極性基を同一分子内に含む単量体に含まれる酸性極性基としては、例えば、カルボン酸基、カルボン酸無水物基、カルボン酸ハライド基、カルボン酸アミド基、カルボン酸イミド基、カルボン酸塩基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基、スルホン酸塩化物基、スルホン酸アミド基、スルホン酸塩基等が挙げられる。このうち、好ましくは、カルボン酸基及びカルボン酸無水物基である。
【0060】
本発明で用いるエチレン性二重結合及び酸性極性基を同一分子内に含む単量体は、特に制限されないが、好ましくは、上記の極性基を含む不飽和カルボン酸及び又はその誘導体である。不飽和カルボン酸又はその誘導体としては、例えば、不飽和モノもしくはジカルボン酸、又はこれらの誘導体が挙げられる。これらの誘導体としては、具体的には、カルボン酸の無水物、ハライド、及び塩等が挙げられる。このうち、好ましくは、不飽和ジカルボン酸又はその無水物である。
【0061】
不飽和モノ又はジカルボン酸の具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、エンド‐ビシクロ[2.2.1]‐5‐ヘプテン‐2,3‐ジカルボン酸(エンディック酸)、フマル酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、ナジック酸等が挙げられる。
【0062】
不飽和カルボン酸の誘導体の具体例としては、塩化マレニル、無水マレイン酸、無水エンディック酸、無水シトラコン酸、無水イタコン酸、無水ナジック酸、マレイン酸モノメチル、フマル酸モノメチル等が挙げられる。
【0063】
これら不飽和カルボン酸又はその誘導体のうち、好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸及びマレイン酸の無水物であり、より好ましくは、無水マレイン酸である。これらは、一種単独で用いてもよく、また、二種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0064】
これらのうち、無水マレイン酸が異種材と接着させる場合、特に金属材料と接着させる場合に、低い温度で接着するという点で好ましい。前記エチレン性二重結合及び酸性極性基を同一分子内に含む単量体の添加量は、ポリオレフィン樹脂100重量部に対して、0.01〜10重量部であることが好ましく、0.1〜5重量部であることがさらに好ましい。添加量が少なすぎると接着性が充分に改善されない傾向があり、添加量が多すぎると好適な形状や外観を有する樹脂組成物として取得できない傾向がある。
【0065】
<積層体の製造方法>
本発明の(A)樹脂基材層および/または金属基材層と(C)加飾部材層とを、(B)ホットメルト接着材またはホットメルト接着フィルム層を介して貼り合わせることを特徴とする積層体は、真空成形または真空圧空成形により積層されるのが好ましい。真空成形または真空圧空成形により積層された積層体は、種々の形状の樹脂基材または金属基材の形状に沿って美しく加飾部材を貼り付けることができ、意匠性に優れた積層体を得ることができる。本工程において、複雑な形状の樹脂基材または金属基材への加飾部材の貼り付けも、ホットメルト接着材またホットメルト接着フィルムを用いることにより達成できる。
【0066】
また、樹脂シート、布及び不織布などの加飾部材層は、加飾面の反対面に予め接着層が塗布またはラミネートされることが好ましい。ラミネートの方法は、熱ロールによるラミネート、プレス機によるバッチ積層などが挙げられる。
【0067】
また、さらに樹脂シート等に凹凸模様を直接転写するエンボス加工を行う工程において、エンボス加工を行う工程と同じ工程において、加飾面の裏面に接着層を形成する工程を配置ことも好適な実施形態のひとつである。ここで得られた加飾部材層と接着層の積層体は、次に真空成形または真空圧空成形により、樹脂基材または金属基材と貼り合わせる工程で使用させる。
【0068】
(非通気性シート)
本発明において、樹脂基材または金属基材を貼り合わせる素材が通気性を有するものであり、接着層を塗布またはラミネートするのみでは真空成形または真空圧空成形時に十分な圧着力が得られず接着性が低い場合、非通気性シートを用いて積層することもできる。順に、樹脂基材層または金属基材層、接着剤層および通気性を有する素材層を配置し、さらに順に非通気性素材層を配置した状態で、真空成形または真空圧空成形により積層を行うことができる。非通気素材を配置したことにより、通常では真空成形または真空圧空成形により積層できない通気性の高い素材を積層することができる。
【0069】
本発明で用いられる非通気性シートは、基材に貼り合わせる通気性を有するシートの空気の通気度に対して、通気度が低いシートであれば使用することができる。前記非通気性シートは、真空成形、又は真空圧空成形において、成形時に空気の流れを遮断し積層体に接着のための圧力を与えることを目的としている。従い、真空成形または真空圧空成形において、通気性を有するシートが樹脂基材または金属基材に接着できる圧力を得ることができる素材であれば使用することができる。
【0070】
上記の目的で使用できる素材を例示するならば、布、不織布が本来有する表面性を損ない難い点から、天然ゴム、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、エチレン・プロピレンゴム、ブチルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム等のゴム素材が好適素材として例示できる。特に伸縮性と破れにくさの点で、天然ゴム、ブチルゴムが好ましい。また、高温で加工する場合は、シリコーンゴムが好ましい。非通気性シートの厚さは0.4mm〜5mmが好ましく、より好ましくは0.5〜3mm、さらに好ましくは0.6〜2mmである。
【実施例】
【0071】
以下に具体的な実施例を示すが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。下記実施例および比較例中「部」および「%」は、それぞれ「重量部」および「重量%」を表す。
【0072】
[真空圧空成形機]
布施真空社製NGF‐0609機を使用して成形を行った。貼り合わせる布、不織布、樹脂シートが、120℃に加熱されたことを、放射温度計で確認して、成形を行った。成形機は、上部と下部からなっており、下部に基材をセットし、上部と下部の中間に布・不織布・樹脂シートを挟んでセッティングを行う。セッティングを終えると、上部、下部ともに減圧し、−90kPaとした。その後、上部に設置されている赤外線加熱機で、布・不織布・樹脂シートを加熱し、120℃まで加熱された段階で、基材を布・不織布・樹脂シートに押し当てた。続いて、上部に圧空を導入して200kPaとし、成形を行った。また、成形の際、圧空がもれる素材、布、不織布等については、ラバーシートを上部側に取り付けて成形を行った。
【0073】
(接着フィルム作成例1)
(a)エチレンプロピレン共重合体((株)ダウケミカル社製V3401、MFR=8)100部、(b)1,3−ジ(t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン(日本油脂(株)製:パーブチルP、1分間半減期175℃)0.5部をシリンダー温度200℃、スクリュー回転数250rpmに設定したベント付き二軸押出機(30mmφ、L/D=28、(株)日本製鋼所製、製品名LABOTEX30)に供給して溶融混練した後、次いで、シリンダー途中より、(c)スチレン5重量部、(d)グリシジルメタクリレート5重量部を加え溶融混練して変性ポリオレフィン樹脂ペレットを得た(変性後MFR=5)。得られた変性樹脂ペレットを、シリンダー及びダイス温度200℃、スクリュー回転数100rpmに設定した単軸押出機のホッパーに投入し、ダイス先端に取り付けたT型ダイスより、幅約400mm、厚み100μmのフィルムを得た。
【0074】
(実施例1)自動車ピラー(タルクPP)
PET樹脂繊維からなる布に対して、(接着フィルム作成例1)で作成した接着フィルムをラミネートした。接着フィルムをラミネートした布と、厚さ1mmのラバーシート(ブチルゴム)と、自動車用Aピラーを真空圧空成形機の装置内にセットし、貼り合せ成形を行った。ここで自動車用Aピラーは、タルクが配合されたポリプロピレン樹脂であり、大きさは1m程度、自動車前方部分のピラーである。
成形後、装置から取り出すと、PET樹脂繊維からなる布は、自動車用Aピラーに対して、貼り付いていた。
【0075】
(比較例1)自動車ピラー(タルクPP)ラバーなし
PET樹脂繊維からなる布に対して、(接着フィルム作成例1)で作成した接着フィルムをラミネートした。接着フィルムをラミネートした布と、(実施例1)と同じ自動車用Aピラーを真空圧空成形機の装置内にセットし、貼り合せ成形を行った。
接着フィルムをラミネートしただけの布は、圧空が通り抜けるため、ピラーに接着させることができなかった。
【0076】
(比較例2)自動車ピラー(タルクPP)接着層なし
PET樹脂繊維からなる布と、厚さ1mmのラバーシート(ブチルゴム)と、自動車用Aピラーを真空圧空成形機の装置内にセットし、貼り合せ成形を行った。接着層がないと、ピラーには布が全く貼り付いていなかった。
【0077】
一般に、空気を通してしまう素材である布、不織布であっても、実施例1のように真空圧空成形で貼り合せ加工できることが示された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)樹脂基材層および/または金属基材層と(C)加飾部材層とを、(B)ホットメルト接着材層またはホットメルト接着フィルム層を介して貼り合わせることを特徴とする積層体。
【請求項2】
(C)加飾部材層が、樹脂シート、布および不織布から選ばれる少なくとも一つである請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
(C)加飾部材層が、通気性を有する部材からなる請求項1または2に記載の積層体。
【請求項4】
前記ホットメルト接着剤または接着フィルムが、ポリオレフィン系樹脂からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項5】
前記ホットメルト接着剤またはフィルムが、下記(a)および(b)存在下、下記(c)、(d)、(e)および(f)から選ばれる少なくとも一つの成分を、溶融混練して得られる変性ポリオレフィン樹脂であることを特徴とする請求項4記載の積層体。
(a)ポリオレフィン樹脂、
(b)ラジカル重合開始剤、
(c)芳香族ビニル単量体、
(d)エポキシ基含有ビニル単量体、
(e)エチレン性二重結合及びケイ素原子を同一分子内含む単量体、
(f)エチレン性二重結合及び酸性極性基を同一分子内含む単量体。
【請求項6】
(A)樹脂基材層および/または金属基材層が、自動車用部材、パソコン用筺体、携帯電話用筺体またはテレビ用フレームである請求項1〜5のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項7】
真空成形または真空圧空成形により、(A)樹脂基材層および/または金属基材層と(C)加飾部材層とを、(B)ホットメルト接着材層またはホットメルト接着フィルム層を介して貼り合わせることを特徴とする請求項1〜6に記載の積層体の製造方法。
【請求項8】
(C)加飾部材層と(B)ホットメルト接着材層またはホットメルト接着フィルム層が予め積層されていることを特徴とする請求項7に記載の積層体の製造方法。
【請求項9】
(C)加飾部材層の接着面の反対側面に、さらに(D)非通気性シートを配置することを特徴とする請求項7または8に記載の積層体の製造方法。
【請求項10】
(D)非通気性シートが、ゴム製シートである請求項9に記載の積層体の製造方法。

【公開番号】特開2011−121308(P2011−121308A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−281872(P2009−281872)
【出願日】平成21年12月11日(2009.12.11)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】