説明

積層体

【課題】 耐熱性、電気特性などに優れ、しかも低吸水率で、低コストの樹脂フィルムを使用し、回路を形成する金属箔等と強固な密着性を有して、優れた折り曲げ性を示す回路基板用などとして有用な積層体を提供する。
【解決手段】 (A)下記一般式(1)


(式中、R1およびR2は、それぞれ独立に水素原子または置換基を有することもある全炭素数1〜20の炭化水素基である)
で示される構造単位を有するポリフェニレンエーテルと、該ポリフェニレンエーテルと反応性を有する官能基を持った共重合体からなる樹脂組成物を用いてなるフィルムと、(B)スパッタリングまたは蒸着で形成された導電性膜と、(C)金属または合金の薄膜とが積層されてなる積層体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性、電気特性などに優れ、低吸水率で、低コストの樹脂フィルムを用い、かつ、折り曲げ性に優れた回路基板用などとして有用な積層体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、通信機器分野においては、通信信号の高速化、装置のコンパクト化、低価格化が一層進行している。それに伴い、通信機器の重要部品であるプリント基板の材料として、プリント基板製作の工程上、耐熱性、耐薬品性、低吸水性などに優れた樹脂フィルムが要求される。また、携帯電話機など各種機器の小型化に伴い、厚さが薄くて折り曲げ性に優れた回路基板の開発が望まれている。さらに、通信機器として使用する際には、高周波数領域で低誘電率、低誘電正接である樹脂フィルムが求められる。
しかも、上記の要求に加えて樹脂フィルムとこの上に形成される導電性物質との密着性が優れることも、プリント基板を形成する上で、重要な因子である。さらに、環境負荷を下げるという観点から、樹脂フィルムがハロゲンや重金属類を含有しないことも要求される。
【0003】
このような市場の要望に対し、たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィンは、誘電率は低いが、耐熱性が低いため、プリント基板材料には適さない。
ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ABS,ポリカーボネートなど、いわゆる汎用エンジニアリングプラスチックは、耐熱性が低い、誘電率が高い、耐薬品性が不十分などのいずれかの問題点が市場から指摘されている。
ポリエーテルサルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリイミドなど、いわゆるスーパーエンジニアリングプラスチックは、優れた耐熱性、耐薬品性を有するが、誘電性が高すぎる場合があり、また非常に高価である、吸水率が高いなどのいずれかの問題点が市場から指摘されている。
【0004】
特許文献1には、熱硬化性ポリフェニレンエーテル層に積層した導体層に回路を形成して配線版を製造する方法が記載されているが、熱硬化性樹脂を用いているため、作業効率が不十分で、そのため、高価なものである。
特許文献2には、置換基にアリール基を有するポリフェニレンエーテルを使用した電子回路基板が記載されているが、特殊な構造のポリフェニレンエーテルを用いているため、非常に高価なものである。
エンジニアリングプラスチックの一種である熱可塑性の2,6−ジメチルポリフェニレンエーテル(ポリフェニレンエーテル)は、優れた耐熱性、耐薬品性、電気絶縁性を有すると共に、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリイミドなどに比べて、低誘電率で、また低吸水率であり、しかも安価であるという特徴を有するが、成形加工性が悪いという欠点がある。
【0005】
ポリフェニレンエーテルにポリスチレンを配合した樹脂組成物は、成形加工性は改良されるが、耐熱性、電気特性などが低下しやすい。
また、特許文献3,4には、ポリフェニレンエーテルと、ポリフェニレンエーテルと反応性を有する官能基を持った共重合体とからなる、成型加工性の改良された樹脂組成物からなるフィルムが記載されており、このフィルムをコンデンサーとして用いる場合、電極として金属箔や金属蒸着膜を用いることができることが記載されている。しかし、これらフィルムと、この上に形成される導電性物質との密着性については全く記載がない。
【特許文献1】特開2004−165519号公報
【特許文献2】特開2004−231743号公報
【特許文献3】特開平7−102169号公報
【特許文献4】特開2002−319316号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、今日まで、耐熱性、電気特性(低誘電率、低誘電正接)などに優れ、しかも低吸水率で、低コストの樹脂フィルムを使用し、回路を形成する金属箔等と強固な密着性を有して、優れた折り曲げ性を示す回路基板については、未だ、見出されておらず、このような回路基板の出現が市場から強く求められている。
本発明は、上記要望に応えた回路基板用などとして有用な積層体を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の課題に対し、鋭意検討を重ねた結果、特定構成のポリフェニレンエーテルに、このポリフェニレンエーテルと反応性を有する官能基を持った共重合体を加えた樹脂組成物よりフィルムを作製し、この樹脂フィルムにスパッタリングまたは蒸着で銅や銅−ニッケル合金などの導電性膜を積層すると、耐熱性、電気特性、耐薬品性などに優れ、低吸水率で、低コストの樹脂フィルムと、この樹脂フィルムとの接着性に優れ、導電性膜とからなる積層体を得ることができることを見出した。さらに、この積層体に上記の導電性膜を介して銅メッキや銅箔などの薄膜を積層することにより、この薄膜と樹脂フィルムとの接着性に優れ、かつ、折り曲げ性に優れた回路基板用などに適した積層体を得ることができることを見出し、本発明に到達した。
【0008】
すなわち、本発明は、つぎの(1)〜(9)の各積層体に係るものである。
また、本発明は、これらの各積層体を用いてなる、プリント回路基板、平面アンテナ、ICカードを提供できるものである。
(1)(A)下記一般式(1)
【0009】
【化1】

【0010】
(式中、R1およびR2は、それぞれ独立に水素原子または置換基を有することもある全炭素数1〜20の炭化水素基を表す。)で示される構造単位を有するポリフェニレンエーテルと、該ポリフェニレンエーテルと反応性を有する官能基を持った共重合体からなる樹脂組成物を用いてなるフィルムと、(B)スパッタリングまたは蒸着で形成された導電性膜と、(C)金属または合金の薄膜とが積層されてなる積層体。
(2)導電性膜(B)が、スパッタリングで形成された導電性膜であることを特徴とする(1)項に記載の積層体。
(3)導電性膜(B)が、銅、金、クロム、ニッケル、銀、銅−ニッケル合金、クロム−ニッケル合金からなる群から選ばれた金属または合金からなる導電性膜であることを特徴とする(1)項に記載の積層体。
(4)導電性膜(B)が、スパッタリングにより形成された厚さが50〜9,000Åの銅または銅−ニッケル合金からなる導電性膜であることを特徴とする(1)に記載の積層体。
(5)フィルム(A)に用いられる前記ポリフェニレンエーテルと反応性を有する官能基を持った共重合体における官能基がエポキシ基であることを特徴とする(1)に記載の積層体。
(6)フィルム(A)に用いられる前記ポリフェニレンエーテルと反応性を有する官能基を持った共重合体が、不飽和カルボン酸グリシジルエステルおよび/または不飽和グリシジルエーテル単位を0.1〜30質量%含有する共重合体であることを特徴とする(1)項に記載の積層体。
(7)フィルム(A)に用いられる前記ポリフェニレンエーテルと反応性を有する官能基を持った共重合体が、(メタ)アクリル酸エステル−エチレン−(不飽和カルボン酸グリシジルエステルおよび/または不飽和グリシジルエーテル)共重合体ゴムからなることを特徴とする(1)項に記載の積層体。
(8)フィルム(A)に用いられる前記ポリフェニレンエーテルと反応性を有する官能基を持った共重合体が、(a)エチレン単位が60〜99質量%、(b)不飽和カルボン酸グリシジルエステルおよび/または不飽和グリシジルエーテル単位が0.1〜20質量%、(c)エチレン系不飽和エステル化合物単位が0〜40質量%からなるエポキシ基含有エチレン共重合体であることを特徴とする(1)項に記載の積層体。
(9)金属または合金の薄膜(C)が、銅メッキまたは銅箔である(1)に記載の積層体。
【発明の効果】
【0011】
本発明の積層体は、耐熱性、電気特性、耐薬品性に優れ、吸水率が低く、また低コストで製造でき、さらに、樹脂フィルムと導電性膜との接着性、折り曲げ性にも優れる。
また、本発明の積層体は、接着剤を用いなくとも金属または合金の薄膜と樹脂フィルムとの接着性にも優れ、上記銅メッキや銅箔などの薄膜を積層して、折り曲げることのできる回路などを形成しうるので、フレキシブルプリント基板、多層基板などとして、産業界において幅広く適用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の積層体に用いられるフィルム(A)を形成する樹脂組成物の好ましい実施の形態について、詳細に説明する。
本発明に用いられる樹脂組成物は、(i)一般式(1)で示される構造単位を有するポリフェニレンエーテルと、(ii)該ポリフェニレンエーテルと反応性を有する官能基を持った共重合体からなる。(i)成分のポリフェニレンエーテルは、前記した一般式(1)で示される構造単位を有する重合体であり、この重合体は、一般式(1)で示される構造単位を2種以上有するものであってもよい。
【0013】
一般式(1)において、R1およびR2は、それぞれ独立に水素または置換基を有していてもよい全炭素数1〜20の炭化水素基である。
置換基を有していてもよい全炭素数1〜20の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、デシル基などの全炭素数1〜20のアルキル基、フェニル基、4−メチルフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基などの全炭素数6〜20のアリール基、ベンジル基、2−フェニルエチル基、1−フェニルエチル基などの全炭素数7〜20のアラルキル基、トリフルオロメチル基、2−t−ブチルオキシエチル基、3−ジフェニルアミノプロピル基などの置換基を有する全炭素数1〜20の炭化水素基などが挙げられる。
これらの中でも、R1、R2は、水素、メチル基などであることが好ましく、とりわけ水素であることが好ましい。
【0014】
(i)成分のポリフェニレンエーテルは、一般式(1)で示される構造単位を有する単独重合体であっても、上記構造単位以外に、一般式(1)に対応するフェノール化合物以外のフェノール化合物である単量体から誘導される構造単位を有する共重合体であってもよい。この共重合体では、一般式(1)で示される構造単位を80モル%以上含むことが好ましく、90モル%以上含むことがより好ましい。
一般式(1)に対応するフェノール化合物としては、下記の一般式(2)で示されるフェノール化合物の中から、その少なくとも1種が用いられる。また、一般式(1)に対応するフェノール化合物以外のフェノール化合物としては、例えば、多価ヒドロキシ芳香族化合物(例えば、ビスフェノール−A,テトラブロモビスフェノール−A,レゾルシン、ハイドロキノン、ノボラック樹脂)が挙げられる。
【0015】
【化2】

(式中、R1およびR2は、一般式(1)の場合と同様に、それぞれ独立に水素原子または置換基を有することもある全炭素数1〜20の炭化水素基である)
【0016】
(i)成分のポリフェニレンエーテルは、その固有粘度〔η〕(25℃、クロロホルム溶液)が0.30〜0.65の範囲にあるのが好ましく、0.35〜0.50の範囲にあるのがさらに好ましい。
固有粘度〔η〕が0.30未満では、フィルムの耐熱性が低下する傾向にあり、また、0.65を超えると、樹脂組成物の成形加工性が低下する傾向にある。
【0017】
本発明の樹脂組成物において、(ii)成分の共重合体は、上記(i)成分のポリフェニレンエーテルと反応性を有する官能基を持った共重合体であり、上記の官能基としては、例えば、オキサゾリル基、エポキシ基、アミノ基などが挙げられ、特に好ましくは、エポキシ基である。エポキシ基などは他の官能基の一部として存在していてもよく、そのような例としては例えばグリシジル基が挙げられる。
【0018】
(ii)成分の共重合体において、上記のような官能基を共重合体中に導入する方法は、特に限定されず、通常の方法で行うことができる。例えば、共重合体の合成段階で上記官能基を有する単量体を共重合により導入することも可能であるし、共重合体に上記官能基を有する単量体をグラフト共重合することも可能である。
上記官能基を有する単量体としては、とりわけグリシジル基を含有する単量体が好ましく使用される。グリシジル基を含有する単量体としては、例えば、下記の一般式(3)で示される不飽和カルボン酸グリシジルエステルおよび/または不飽和グリシジルエーテルが好ましく用いられる。
(ii)成分の共重合体としては、このような不飽和カルボン酸グリシジルエステルおよび/または不飽和グリシジルエーテル単位を0.1〜30質量%含有するのが好ましく、0.1〜20質量%含有するのがさらに好ましい。
【0019】
【化3】

【0020】
一般式(3)で示される不飽和カルボン酸グリシジルエステルとしては、例えば、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、イタコン酸ジグリシジルエステル、ブテントリカルボン酸トリグリシジルエステル、p−スチレンカルボン酸グリシジルエステルなどを挙げることができる。
一般式(3)で示される不飽和グリシジルエーテルとしては、例えば、ビニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、2−メチルアリルグリシジルエーテル、メタクリルグリシジルエーテル、スチレン−p−グリシジルエーテル等が挙げられる。
【0021】
(ii)成分の共重合体は、これを含む樹脂組成物のフィルム成形品の熱安定性や柔軟性を良好にするため、その結晶の融解熱量が3J/g未満であるのが好ましい。
また、ムーニー粘度が3〜70のものが好ましく、3〜30のものがさらに好ましく、4〜25のものが特に好ましい。ここでいうムーニー粘度とは、JIS K6300に準じて100℃でラージローターを用いて測定される値である。
【0022】
(ii)成分の共重合体は、ゴムであってもよいし、熱可塑性樹脂であってもよく、またゴムと熱可塑性樹脂の混合物であってもよい。
ゴム中に前記官能基を導入する方法は、特に限定されず、公知の方法で行える。例えば、ゴムの合成段階で前記官能基を有する単量体を共重合により導入してもよいし、ゴムに前記官能基を有する単量体をグラフト共重合させてもよい。
【0023】
(ii)成分の共重合体において、エポキシ基を有するゴムとしては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル−エチレン−(不飽和カルボン酸グリシジルエステルおよび/または不飽和グリシジルエーテル)共重合体ゴムが挙げられる。
上記の(メタ)アクリル酸エステルは、アクリル酸またはメタクリル酸とアルコールとから得られるエステルで、アルコールとしては、炭素数1〜8のアルコールが好ましい。(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、tert−ブチルアクリレート、tert−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレートなどが挙げられる。このような(メタ)アクリル酸エステルは、その1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0024】
このような共重合体ゴムは、これを含む樹脂組成物のフィルム成形品の熱安定性や機械的性質を向上させるために、(メタ)アクリル酸エステル単位が40質量%を超え96質量%未満、特に好ましくは45〜70質量%であり、エチレン単位が3質量%以上50質量%未満、特に好ましくは10〜49質量%であり、不飽和カルボン酸グリシジルエーテルおよび/または不飽和グリシジルエーテル単位が0.1〜30質量%、特に好ましくは0.1〜20質量%を含むものであるのがよい。
この種の共重合体ゴムは、通常の方法、例えばフリーラジカル開始剤による塊状重合、乳化重合、溶液重合などにより、製造することができる。なお、代表的な重合方法は、例えば、フリーラジカルを生成する重合開始剤の存在下、圧力500kg/cm2以上、温度40〜300℃の条件により製造することができる(例えば、特開昭48−11388号公報、特開昭61−127709号公報など参照)。
【0025】
(ii)成分の共重合体において、上記した共重合体ゴム以外のゴムとしては、例えば、ポリフェニレンエーテルと反応性を有する官能基を持つアクリルゴムや、ポリフェニレンエーテルと反応性を有する官能基を持つビニル芳香族炭化水素化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体ゴムを例示することができる。
【0026】
上記アクリルゴムとして、好ましくは、下記の一般式(4)〜(6)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種の単量体を構成成分としたものが挙げられる。
CH2 =CH−C(=O)−OR3 (4)
CH2 =CH−C(=O)−OR4OR5 (5)
CH2 =CR6−C(=O)−O〔R7C(=O)O〕n8
(6)
(式中、R3は炭素原子数1〜18のアルキル基またはシアノアルキル基、R4は炭素原子数1〜12のアルキレン基、R5は炭素原子数1〜12のアルキル基、R6は水素原子またはメチル基、R7は炭素原子数3〜30のアルキレン基、R8は炭素原子数1〜20のアルキル基またはその誘導体、nは1〜20の整数である)
【0027】
一般式(4)で表される化合物の具体例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、ペンチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、アクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ノニルアクリレート、デシルアクリレート、ドデシルアクリレート、シアノエチルアクリレートなどを挙げることができる。
また、一般式(5)で表される化合物の具体例としては、メトキシエチルアクリレート、エトキシエチルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、エトキシプロピルアクリレートなどを挙げることができる。
【0028】
上記アクリルゴムの構成成分として、必要に応じて、上記の一般式(4)〜(6)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種の単量体と(さらに不飽和カルボン酸グリシジルエステルおよび/または不飽和グリシジルエーテルと)共重合可能な他の不飽和単量体を用いることができる。
このような他の不飽和単量体の具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル、ハロゲン化スチレン、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、ビニルナフタレン、N−メチロールアクリルアミド、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ベンジルアクリレート、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸などが挙げられる。
【0029】
上記アクリルゴムの好ましい構成成分比は、一般式(4)〜(6)で表される化合物から選ばれる少なくとも一種の単量体40.0〜99.9質量%、不飽和カルボン酸グリシジルエステルおよび/または不飽和グリシジルエーテル0.1〜30質量%、好ましくは0.1〜20質量%、これらの単量体と共重合可能な他の不飽和単量体0.0〜30質量%である。アクリルゴムの構成成分比が上記の範囲内であると、組成物の耐熱性、耐衝撃性、成形加工性が良好であり、好ましい。
上記アクリルゴムの製法は、特に限定されない。例えば、特開昭59−113010号公報、特開昭62−64809号公報、特開平3−160008号公報、WO95/04764などに記載されている周知の重合法を使用でき、ラジカル開始剤の存在下で乳化重合、懸濁重合、溶液重合またはバルク重合を行うことにより、製造できる。
【0030】
また、前記ビニル芳香族炭化水素化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体ゴムとしては、ビニル芳香族炭化水素化合物を主体とする構成単位と共役ジエン化合物を主体とする構成単位からなるブロック共重合体をエポキシ化して得られるゴム、または上記ブロック共重合体の水添物をエポキシ化して得られるゴムなどが挙げられる。
【0031】
ここで、ビニル芳香族炭化水素化合物としては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルナフタレンなどを挙げることができ、中でもスチレンが好ましい。
また、共役ジエン化合物としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、3−ブチル−1,3−オクタジエンなどを挙げることができ、中でもブタジエンまたはイソプレンが好ましい。
上記のビニル芳香族炭化水素化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体あるいはその水添物は、周知の方法で製造することができ、例えば、特公昭40−23798号公報、特開昭59−133203号公報などに記載されている。
【0032】
本発明に用いられる(ii)成分の共重合体としてのゴムは、必要に応じて加硫を行い、加硫ゴムとして用いることができる。
例えば、前記の(メタ)アクリル酸エステル−エチレン−(不飽和カルボン酸グリシジルエステルおよび/または不飽和グリシジルエーテル)共重合体ゴムの加硫は、多官能性有機酸、多官能性アミン化合物、イミダゾール化合物などを用いることで達成されるが、これらに限定されるものではない。
【0033】
本発明の(ii)成分の共重合体において、エポキシ基を有する熱可塑性樹脂としては、(a)エチレン単位が60〜99質量%、(b)不飽和カルボン酸グリシジルエステルおよび/または不飽和グリシジルエーテル単位が0.1〜20質量%、(c)エチレン系不飽和エステル化合物単位が0〜40質量%からなるエポキシ基含有エチレン共重合体を挙げることができる。
ここで、(c)成分のエチレン系不飽和エステル化合物としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル等のカルボン酸ビニルエステル、α,β−不飽和カルボン酸アルキルエステルなどが挙げられる。特に、酢酸ビニル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチルが好ましい。
【0034】
上記エポキシ基含有エチレン共重合体としては、例えば、エチレン単位とグリシジルメタクリレート単位とからなる共重合体、エチレン単位とグリシジルメタクリレート単位とアクリル酸メチル単位とからなる共重合体、エチレン単位とグリシジルメタクリレート単位とアクリル酸エチル単位とからなる共重合体、エチレン単位とグリシジルメタクリレート単位と酢酸ビニル単位とからなる共重合体などが挙げられる。
【0035】
上記エポキシ基含有エチレン共重合体は、メルトインデックス(JIS K6760、190℃、2.16kg荷重、以下、MFRということがある)が、0.5〜100g/10分であるのが好ましく、さらに好ましくは2〜50g/10分である。
メルトインデックスは上記の範囲外であってもよいが、100g/10分を超えると樹脂組成物としたときの機械的物性の点で好ましくなく、0.5g/10分未満では(i)成分との相溶性に劣り好ましくない。
また、上記エポキシ基含有エチレン共重合体は、曲げ剛性率が10〜1,300kg/cm2の範囲にあるのが好ましく、20〜1,100kg/cm2の範囲にあるのがより好ましい。曲げ剛性率が上記の範囲外であると、樹脂組成物としたときの成形加工性や機械的性質が不十分となる場合があり好ましくない。
【0036】
上記エポキシ基含有エチレン共重合体は、通常、不飽和エポキシ化合物(不飽和カルボン酸グリシジルエステルおよび/または不飽和グリシジルエーテル)とエチレンをラジカル発生剤の存在下500〜4,000気圧、100〜300℃で適当な溶媒や連鎖移動剤の存在下または不存在下に共重合させる、高圧ラジカル重合法により、製造できる。
また、ポリエチレンに不飽和エポキシ化合物(不飽和カルボン酸グリシジルエステルおよび/または不飽和グリシジルエーテル)およびラジカル発生剤を混合し、押出機の中で溶融グラフト共重合させる方法によっても製造できる。
【0037】
本発明における樹脂組成物の組成としては、上記の(i)成分と(ii)成分との比が、好ましくは(i)成分99〜40質量%、さらに好ましくは99〜55質量%、好ましくは(ii)成分1〜60質量%、さらに好ましくは1〜45質量%のものである。(i)成分が多すぎると、樹脂組成物の成形加工性が低下する傾向にあり、また(i)成分が少なすぎると、樹脂組成物の耐熱性などが著しく低下する傾向にあり、いずれも好ましくない。
【0038】
本発明における樹脂組成物を製造する適当な方法としては、例えば、溶融状態で各成分を混練(溶融混練)する方法が挙げられる。
溶融混練により樹脂組成物を得るには、一軸または二軸の押出機、各種のニーダーなどの混練装置を用いることができるが、二軸の押出機が好ましい。溶融混練に際して、混練装置のシリンダー設定温度は、200〜340℃の範囲が好ましく、220〜320℃の範囲がさらに好ましく、250〜310℃の範囲が特に好ましい。
また、溶融混練に際して、混練する各成分はあらかじめタンブラーまたはヘンシェルミキサーのような装置で各成分を均一に混合したのち、混練装置に供給してもよいし、各成分を混練装置にそれぞれ別個に定量供給する方法も用いることができる。
【0039】
本発明における樹脂組成物には、(i)成分および(ii)成分のほかに、必要に応じて、有機充填剤、無機充填剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、滑剤、無機または有機系着色剤、防錆剤、架橋剤、発泡剤、蛍光剤、表面平滑剤、表面光沢改良剤、フッ素樹脂のような離型改良剤などの各種の添加剤を含ませてもよい。
【0040】
本発明において、上記の樹脂組成物を成形してフィルムを得るには、例えば、押出し成形法を採用できる。具体的には、上記の樹脂組成物をダイ(口金)を備えた押出し機に供給する方法を使用できる。
フィルムの製造に用いるダイとしては、Tダイ、円筒スリットのダイが好ましく用いられる。また、キャスト法や熱プレス法なども、フィルムの製造に適用できる(例えば、特開2002−319316号公報参照)。
このように成形されるフィルムの厚さは、特に限定されないが、通常、1〜3,000μmの範囲で制御可能であり、5〜1,000μmの範囲のものが実用上好ましい。7〜500μmの範囲のものがさらに好ましい。
【0041】
本発明の積層体は、上記のように成形されるポリフェニレンエーテル系樹脂組成物からなるフィルム(A)の上に、スパッタリングまたは蒸着で形成された導電性膜(B)を積層している。
導電性膜(B)の積層前に、必要に応じて、上記フィルム(A)の表面を前処理することができる。前処理方法は特に限定されず、周知の方法を使用できる。例えば、アルカリなどの薬液処理、プラズマ処理、コロナ放電処理、イオン照射などが挙げられる。
【0042】
導電性膜(B)とは、導電性の金属または合金からなる膜である。ここで、好ましい金属としては、銅、クロム、チタン、金、銀、ステンレス、タンタル、錫、ニオブ、インジウム、アルミ、好ましい合金としては銅−ニッケル、チタン−アルミ、ニッケル−クロム、ニッケル−銅、クロム−ニッケル、銀−パラジウムなどを挙げることができる。
これらの中でも、銅、金、クロム、ニッケル、銀、銅−ニッケル、クロム−ニッケルなどが好ましい。銅、銅−ニッケルがさらに好ましい。
【0043】
このような導電性膜は、前記フィルムの表面に、上記のような導電性の金属や合金を、スパッタリングや蒸着する方法により、形成することができる。これらの中でも、スパッタリングにより形成するのが特に好ましい。スパッタリングや蒸着の操作は、周知の方法を適用することができる。
例えば、スパッタリングでは、フィルムを入れた真空容器内に、アルゴン、窒素などの不活性ガスを導入しながら、フィルムと導電性の金属や合金からなるターゲットとの間に直流高電圧を付加して、生成するイオン化した不活性ガスをターゲットに衝突させ、飛ばされたターゲット物質をフィルム上で膜形成する。本発明においては、上記フィルム(A)が耐熱性に優れるため、通常のスパッタリングでは、熱変形の影響なく、フィルム(A)上に導電性膜(B)を積層することができる。さらに、このように積層されたフィルム(A)と導電性膜(B)とは密着性が折り曲げ使用上の要求も満足する強固なものとなる。
また、蒸着では、フィルムを入れた真空容器中で、導電性の金属や合金を加熱、蒸発させることにより、フィルム上に膜形成する。
【0044】
導電性膜(B)の形成は、フィルムの片面で行ってもよいし、必要により、フィルムの両面で行ってもよい。また、フィルム上に形成される導電性膜(B)は、導電性の金属または合金の単層構成に限られず、二層以上の層構成としてもよい。
このような導電性膜(B)の厚さは、特に限定されず、用途目的に応じて、適宜設定することができる。通常は、導電性膜(B)の全厚さが50〜9,000Åの範囲にあるのが好ましい。100〜5,000Åの範囲にあるのがさらに好ましい。
【0045】
本発明の積層体は、上記の導電性膜(B)を介して、さらに金属または合金の薄膜(C)を積層した積層体である。
金属または合金の薄膜(C)は、導電性膜(B)上に、例えば、メッキ処理や金属箔の貼り合わせ処理により、形成することができる。
このように形成される金属または合金の薄膜(C)は、導電性膜(B)とは共に成分が金属であるため、密着性に優れる。さらに、導電性膜(B)は上記のようにフィルム(A)とは良好に密着させることができ、薄膜(C)のフィルム(A)表面に対する接着性に優れ、耐水性が高く、薄膜として回路を形成した場合に折り曲げても剥離などの不具合を生じるおそれがないものとすることができる。
【0046】
上記のメッキ処理には、電解メッキ、化学メッキ、溶融メッキ、気相メッキなど周知の方法を適用可能であるが、これらの処理の中でも、電解メッキや化学メッキが好ましく、電解メッキが最も好ましい。
電解メッキは、電解液中にフィルムを浸漬し、直流の電気を通電して、液中の金属イオンをフィルムの導電性膜の表面に析出させる方法である。電解液のメッキ金属としては、銅、ニッケル、アルミ、亜鉛、錫、クロム、金、銀などを挙げることができる。これらの中でも、銅が好ましい。
このようなメッキ処理で形成される金属または合金の薄膜の厚さは、特に限定されないが、通常は、2〜100μmであるのがよい。
【0047】
また、上記の金属箔の貼り合わせ処理は、フィルムに対して熱圧着法などの周知の方法を用いて、実施することができる。
金属箔としては、電解銅箔、圧延銅箔などの銅箔、銅合金箔、アルミ箔、金箔、銀箔、アルミ箔、ニッケル箔、ニッケル−銅箔、ニッケル合金箔、ステンレス箔、錫箔、チタン箔、タンタル箔などを挙げることができる。これらの中でも、銅箔、ニッケル箔、銅−ニッケル箔、金箔などが好ましい。銅箔が最も好ましい。
このような金属箔からなる金属または合金の薄膜の厚さは、特に限定されないが、通常は、5〜150μmであるのがよい。
【0048】
本発明の積層体は、上記薄膜(C)を用いて回路を形成し、フレキシブルプリント回路基板、多層プリント回路基板などとして通信業界あるいは電気・電子部品産業などに幅広く利用できる。
特に、本発明では、上記の積層体を用いたプリント回路基板のほか、平面アンテナ、ICカードなどを提供できるものである。
上記の利用にあたり、回路の形成方法は、特に限定されず、周知の方法を適用できる。例えば、薄膜上にレジストを塗布したのち、露光、現像の工程を経て、酸やプラズマなどでエッチングしてレジストを除去し、回路を形成する方法を用いることができる。
【0049】
本発明の積層体は、フィルム(A)が低吸水性であるため、水洗を伴って製造され、あるいは水蒸気雰囲気下で使用される回路として好適に用いることができる。フィルム(A)の吸水率は、通常0.1〜0.3%である。これは、通常、回路基板に用いられるポリイミドの吸水率が約3%であるのに比べ、非常に低い値である。また、本発明に用いられるフィルム(A)は、同量のポリイミドフィルムに比較して、通常、1/10以下の低コストで製造することができる。
このように、本発明の積層体は、折り曲げ性に優れ、さらに、折り曲げによっても、フィルムから回路が剥離する恐れが小さく、剥離携帯電話などに用いられる折り曲げ可能なプリント基板として好適に用いることができる。
【実施例】
【0050】
つぎに、本発明を実施例に基づいて、さらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例にのみ限定されるものではない。
なお、以下の実施例で用いた樹脂組成物を構成する(i)、(ii)成分は、下記のとおりである。また、実施例の物性測定は、下記のように行った。
【0051】
<樹脂組成物>
(i)成分:三菱ガス化学(株)製の「PX−100F」(〔η〕=0.4のポリフェニレンエーテル)を使用した。
(ii)成分:住友化学工業(株)製の「ボンドファースト7L」〔エチレン/グリシジルメタクリレート/アクリル酸メチル=67/3/30(質量比)の共重合体、MFR(190℃)=9g/10分〕を使用した。
【0052】
<物性測定>
(1)吸水率
クロックナー社製射出成形機、クロックナーF−85型を使用して、シリンダー設定温度290℃、スクリュー回転数100rpm,射出圧力78MPaで樹脂ペレットの射出成形を行い、ASTM D570に準拠して、成形品を室温で24時間浸漬して吸水率を求めた。
(2)MIT屈曲試験
サイズ110mm×15mmの試験片を、折り曲げ面のR=0.8mmとし、JIS
P8115に準拠して、屈曲試験を行った。
(3)剥離試験
サイズ110mm×15mmの試験片を、JIS C6471に準拠して、23℃、湿度50%,速度50mm/分で180°方向剥離試験を行った。
(4)誘電率、誘電正接
150mm×150mm×3mmの射出成形平板を、室温でASTM D150に準拠して、周波数1KHzで誘電率、誘電正接を測定した。また、同様の平板を空洞共振器法によって、室温で1GHzでの誘電率、誘電正接を測定した。
【0053】
実施例1
(i)成分を120℃で8時間乾燥し、また(ii)成分を60℃で4時間真空乾燥し、(i)成分/(ii)成分=95/5(質量比)の割合で良く混合したのち、ベルストルフ二軸押出し機、ZE40A(スクリュー径40mm,スクリュー長1,340mm,L/D=33.5)を使用し、シリンダー設定温度290℃、スクリュー回転数150rpmで、ベントで脱気しながら溶融混練を行った。
得られた樹脂組成物のペレットを、以下、P−1と略記することがある。P−1を射出成形して求めた吸水率は0.2%であった。
また、P−1を射出成形して得られた平板に関し、1KHzでの誘電率は2.60、誘電正接は0.0007、1GHzでの誘電率は2.47、誘電正接は0.0049であった。
【0054】
得られた樹脂組成物のペレットP−1を、ハーケ株式会社(独)製ポリラボシステム装置を使用して、Tダイ製膜を行った。ポリラボシステム装置の一軸押出し機はスクリュー径19.05mm、L/D=20であるが、そのシリンダー設定温度295℃、スクリュー回転数150rpmで混練、押し出しを行った。
また、Tダイはスリット間隙0.8mm、ダイ幅100mmのものを使用し、Tダイにおける樹脂温度298℃で成膜を行った。ここで、Tダイにおける樹脂温度は、Tダイ出口から約2cm内側のダイ部壁下部壁面の温度検出器で検出した。Tダイから出た樹脂は3本ロールの巻き取り機を用いて、9m/分で巻き取り、厚さが37μmのフィルムを得た。得られたフィルムを、以下、F−1と略記することがある。
【0055】
F−1を鈴寅製スパッタリング装置中へセットし、到達真空度1×10-3Pa、加工真空度1×10-1Pa、不活性ガスはアルゴンとした。F−1を装置内で0.1m/分で移動させつつ、スパッタ出力3.2KW/時間で銅をスパッタリングすることにより、F−1の片面上に銅膜を形成した。スパッタリング処理過程でのフィルムの変形、融解などは認められなかった。
得られたフィルムと銅膜の積層体を、以下、S−1と略記することがある。S−1の外観は良好で、スパッタリングによるF−1の熱変形はみられず、スパッタリングされた銅膜も均一であり、銅膜とフィルムとの間での剥離も認められなかった。
【0056】
S−1を酸化ルテニウムで染色処理したのち、ミクロトームを使用し、S−1の垂直方向に切削して、超薄切片を作製した。この積層体S−1の断面の透過型電子顕微鏡写真は、図1に示されるとおりであった。図中のスケールは100nmである。
図1において、フィルム(F−1)には、灰色のドメインのポリフェニレンエーテル(PPE)の連続相1がみられた。また、F−1上には厚さが約2,000Åのスパッタリングされた銅膜2がみられた。銅膜の厚さは均一であり、銅膜とF−1の間に剥離などもみられず、銅膜とF−1の接着性が良好であった。
また、S−1について、MIT屈曲試験を1,000回行ったのち、外観を目視したところ、スパッタリングされた銅膜とフィルムとのいずれにも、ひび割れ、剥離などは認められず、外観良好であった。
【0057】
S−1を、水1リットルに硫酸20g加えた硫酸水溶液で2分処理を行った。硫酸処理したけれどもS−1には、剥離、変形などは認められなかった。
S−1を硫酸処理したのち、硫酸銅70gを水1リットルに溶解した硫酸銅水溶液で、電流密度1.2A/dm2で、26℃、50分、S−1に銅メッキ処理を施した。S−1上に形成された銅メッキからなる薄膜の厚さは約2.3μmであった。S−1/銅メッキ薄膜に剥離、変形などは認められず、外観は良好であった。S−1と銅メッキ薄膜との剥離試験を行ったところ、剥離強度は3.3N/cmであった。
銅メッキ薄膜上にフォトレジストを塗布し、乾燥後、回路パターンを作製し、光をあてたのち、エッチング処理を施し、水洗することで、回路を形成できた。
【0058】
比較例1
F−1に代えて、東洋紡製ポリエチレンテレフタレートフィルム、E5000、25μm厚を用いて、スパッタリング処理を行なったころ、スパッタリング後のE5000には、大きな熱変形が認められた。そのため、回路形成は行えなかった。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】実施例1の積層体における樹脂組成物からなるフィルムとスパッタリングされた銅膜との断面の透過型電子顕微鏡写真である。
【符号の説明】
【0060】
1 ポリフェニレンエーテル(PPE)の連続相
2 スパッタリングされた銅膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記一般式(1)
【化1】

(式中、R1およびR2は、それぞれ独立に水素原子または置換基を有することもある全炭素数1〜20の炭化水素基を表す。)
で示される構造単位を有するポリフェニレンエーテルと、該ポリフェニレンエーテルと反応性を有する官能基を持った共重合体からなる樹脂組成物を用いてなるフィルムと、(B)スパッタリングまたは蒸着で形成された導電性膜と、(C)金属または合金の薄膜とが積層されてなる積層体。
【請求項2】
導電性膜(B)が、スパッタリングで形成された導電性膜であることを特徴とする請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
導電性膜(B)が、銅、金、クロム、ニッケル、銀、銅−ニッケル合金、クロム−ニッケル合金からなる群から選ばれた金属または合金からなる導電性膜であることを特徴とする請求項1に記載の積層体。
【請求項4】
導電性膜(B)が、スパッタリングにより形成された厚さが50〜9,000Åの銅または銅−ニッケル合金からなる導電性膜であることを特徴とする請求項1に記載の積層体。
【請求項5】
フィルム(A)に用いられる前記ポリフェニレンエーテルと反応性を有する官能基を持った共重合体における官能基がエポキシ基であることを特徴とする請求項1に記載の積層体。
【請求項6】
フィルム(A)に用いられる前記ポリフェニレンエーテルと反応性を有する官能基を持った共重合体が、不飽和カルボン酸グリシジルエステルおよび/または不飽和グリシジルエーテル単位を0.1〜30質量%含有する共重合体であることを特徴とする請求項1に記載の積層体。
【請求項7】
フィルム(A)に用いられる前記ポリフェニレンエーテルと反応性を有する官能基を持った共重合体が、(メタ)アクリル酸エステル−エチレン−(不飽和カルボン酸グリシジルエステルおよび/または不飽和グリシジルエーテル)共重合体ゴムからなることを特徴とする請求項1に記載の積層体。
【請求項8】
フィルム(A)に用いられる前記ポリフェニレンエーテルと反応性を有する官能基を持った共重合体が、(a)エチレン単位が60〜99質量%、(b)不飽和カルボン酸グリシジルエステルおよび/または不飽和グリシジルエーテル単位が0.1〜20質量%、(c)エチレン系不飽和エステル化合物単位が0〜40質量%からなるエポキシ基含有エチレン共重合体であることを特徴とする請求項1に記載の積層体。
【請求項9】
金属または合金の薄膜(C)が、銅メッキまたは銅箔であることを特徴とする請求項1に記載の積層体。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の積層体を用いてなるプリント回路基板。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の積層体を用いてなる平面アンテナ。
【請求項12】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の積層体を用いてなるICカード。

【図1】
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【公開番号】特開2007−152799(P2007−152799A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−352745(P2005−352745)
【出願日】平成17年12月6日(2005.12.6)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成17年度、新エネルギー・産業技術総合開発機構委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】