説明

積層型半導体装置

【課題】積層型半導体装置の半導体素子の温度低減効果を高めること。
【解決手段】積層型半導体装置50は、半導体パッケージ1の上に、半導体パッケージ5が接続端子8を介して積層されて構成され、マザー基板51に3次元実装される。積層型半導体装置50は、半導体パッケージ1,5の間に配置された放熱部材10を備えている。放熱部材10は、半導体パッケージ1,5の両方に熱的に接触する接触部10aと、半導体パッケージ1,5の外周縁部よりも外方に張り出す張り出し部10bとを有している。放熱部材10の接触部10aには、複数の接続端子8が貫通する開口部11が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板に半導体素子を実装した半導体パッケージを、2層以上積み重ねて3次元的に実装した積層型半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、携帯電話を初め各種のデジタル機器では、軽薄短小化が進んでいる。それに伴い、より高密度な実装が可能な半導体パッケージが必要となっている。
【0003】
現在、高密度実装が可能な形態として積層型半導体装置が注目されている。積層型半導体装置は、半導体素子を配線基板に実装した1つの半導体パッケージ上に、更に、別の半導体パッケージを接続して構成されている。半導体パッケージを3次元的に配置することで、実装面積を小さくすることができ高密度実装を可能としている。
【0004】
しかしながら積層型半導体装置は、熱源である半導体素子が3次元的に配置されている。そのため、半導体素子からの放熱が十分でなく、半導体素子の温度上昇により、誤動作や、接続端子の接続不良を引き起こす可能性があった。すなわち、通常の半導体パッケージの場合は、半導体素子からの熱の多くは、接続端子を経由してマザー基板へ放出される。これに対して積層型半導体装置の場合、マザー基板に直接実装されていない半導体パッケージに実装されている半導体素子からの熱は、マザー基板への放熱を十分に行うことができなかった。
【0005】
このような問題点を解決するため、特許文献1では、積層型半導体装置において、個々の半導体パッケージのそれぞれ放熱部材を貼り付け、空気中へ放熱させる方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−236694号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の方法は、マザー基板に直接実装されていない半導体パッケージに実装された半導体素子から発生した熱を、放熱部材を介して空気中に放熱するものである。しかしながら、空気の熱伝導率は0.02W/mKと低いため、空気中への放熱効果は高いとは言い難い。
【0008】
半導体素子から発生する熱は、半導体素子の機能アップに伴い多くなる。また、放熱効率は、高密度実装のために接続端子の小型化および多ピン化に伴い低下する。従って、発熱量が多い場合は、放熱部材を大きくするなどの対策が必要となるが、放熱部材の大きさには限度があり、あまり極端に大きくすることは現実的には不可能である。
【0009】
そこで、本発明は、強制空冷を用いず、半導体パッケージサイズを極力大きくすることなく、各半導体パッケージの半導体素子の放熱効果を高めることができる積層型半導体装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述の目的を達成するために本発明における積層型半導体装置は、配線基板に実装された半導体素子を有する半導体パッケージを複数備え、前記複数の半導体パッケージが積層して配置され、前記複数の半導体パッケージのうち隣り合う一対の半導体パッケージの配線基板同士が複数の接続端子により電気的に接続され、マザー基板に実装される積層型半導体装置において、前記一対の半導体パッケージの間に配置され、前記一対の半導体パッケージの両方に熱的に接触する接触部と、前記接触部から前記一対の半導体パッケージの外周縁部よりも外方に張り出す張り出し部と、を有する放熱部材を備え、前記接触部には、前記複数の接続端子が貫通する開口部が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、一対の半導体パッケージの間に配置された放熱部材が、両方の半導体パッケージに熱的に接触している。従って一対の半導体パッケージのうち相対的にマザー基板とは反対側に配置された半導体パッケージの半導体素子により発生した熱は、放熱部材を介して相対的にマザー基板側に配置された半導体パッケージに伝熱され、最終的にマザー基板に伝熱させることができる。このように、空気に放熱する経路の他にマザー基板に伝熱する経路が形成されるので、各半導体パッケージの半導体素子の温度低減効果を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る積層型半導体装置の概略構成を示す説明図であり、(a)は積層型半導体装置の断面図、(b)は(a)の矢印X方向から見た放熱部材の平面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る積層型半導体装置の第2の半導体パッケージと放熱部材の端部を拡大した断面図である。(a)は第2の半導体パッケージが第1の半導体パッケージ上に積層される前の断面図、(b)は、第2の半導体パッケージが第1の半導体パッケージ上に積層された後の断面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る積層型半導体装置の第1の半導体パッケージの断面図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係る積層型半導体装置の放熱部材の平面図であり、(a)は放熱部材の開口部を2つの領域に形成した場合、(b)は放熱部材の開口部を4つの領域に形成した場合を示している。
【図5】比較例の積層型半導体装置の模式図であり、(a)は比較例1の積層型半導体装置の模式図、(b)は比較例2の積層型半導体装置の模式図、(c)は比較例3の積層型半導体装置の模式図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係る積層型半導体装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1の実施の形態)
以下、本発明を実施するための第1の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。図1(a)は、本発明の第1の実施の形態に係る積層型半導体装置50の断面図である。
【0014】
積層型半導体装置50は、半導体パッケージを複数備えており、本実施の形態では、一対の半導体パッケージ、即ち第1の半導体パッケージ1及び第2の半導体パッケージ5を備えている。これら複数の半導体パッケージ1,5は、接続端子8としてのボール電極を介して積層され、マザー基板51に3次元的に実装されている。つまり、第1の半導体パッケージ1の上に、第2の半導体パッケージ5が積層されている積層型半導体装置50が、マザー基板51上に実装されている。
【0015】
第1の半導体パッケージ1は、第1の配線基板2(インターポーザとも言う)と、第1の配線基板2の一方の面(表面)に実装された第1の半導体素子3とを有している。第1の配線基板2の他方の面(裏面)には、複数の接続端子4が配置されている。接続端子4は、ボール電極としてのはんだボールである。第1の半導体パッケージ1の第1の配線基板2は、複数の接続端子4により、マザー基板51に電気的に接続されている。第1の配線基板2の他方の面には、複数の電極パッド21が設けられており、マザー基板51の上面には複数の電極パッド52が設けられている。これら電極パッド21と電極パッド52とが接続端子4により電気的・機械的に接続されている。
【0016】
第2の半導体パッケージ5は、第2の配線基板6(インターポーザとも言う)と、第2の配線基板6の一方の面(表面)に実装された第2の半導体素子7とを有している。第2の配線基板6の他方の面(裏面)には、複数の接続端子8が配置されている。接続端子8は、ボール電極としてのはんだボールである。第1の半導体パッケージ1の第1の配線基板2の一方の面と、第2の半導体パッケージ5の第2の配線基板6の他方の面とは、複数の接続端子8により電気的に接続されている。第2の配線基板6の他方の面には、複数の電極パッド61が形成されており、第2の配線基板6の一方の面には複数の電極パッド22が形成されている。これら電極パッド61と電極パッド22とが接続端子8により電気的・機械的に接続されている。
【0017】
一対の配線基板2,6は、各半導体素子3,7よりも平面の面積が大きく形成されている。したがって、第1の半導体パッケージ1の平面視の外形は、配線基板2の平面視の外形であり、第2の半導体パッケージ5の平面視の外形は、配線基板6の平面視の外形である。つまり、第1の半導体パッケージ1の外周縁部は、配線基板2の外周縁部であり、第2の半導体パッケージ5の外周縁部は配線基板6の外周縁部である。配線基板2,6は正方形形状に形成されており、そのサイズは一片が11mm〜14mmが一般的である。また、半導体素子3、7も正方形形状に形成されており、そのサイズは一片が5mm〜9mmで、厚さが0.1mm〜0.2mmが一般的である。そして、複数の接続端子8は、半導体素子3のまわりに配置され、配線基板同士2,6を接続している。
【0018】
隣り合う一対の半導体パッケージ1,5の間には、放熱部材10が配置されている。放熱部材10は、平板状に形成されている。放熱部材10は、一対の半導体パッケージ1,5の両方に熱的に接触している接触部10aを有している。放熱部材10の接触部10aは、第2の半導体パッケージ5の第2の配線基板6の裏面に熱伝導性接着剤9により接着固定されている。また放熱部材10の接触部10aは、第1の配線基板2に実装された第1の半導体素子3の上面(実装面とは逆の面)に熱伝導性接着剤9により接着固定されている。これにより、放熱部材10の接触部10aは、第2の半導体パッケージ5の第2の配線基板6に下面に面接触し、第1の半導体パッケージ1の第1の半導体素子3に上面に面接触している。
【0019】
図1(b)は、図1(a)の放熱部材10を矢印X方向から見た平面図である。放熱部材10の接触部10aには、各接続端子8との電気的な接触を避けるため、各接続端子8に対応した数の複数の貫通孔111,111…からなる開口部11が形成されている。つまり、開口部11は、各接続端子8に対応する位置に形成されたそれぞれの貫通孔111で構成されている。
【0020】
開口部11の各貫通孔111の大きさは、接続端子8の径よりも大きく設定されている。このような構成とすることで、放熱部材10を半導体パッケージ1,5の全周から張り出させることを可能としている。このような構成により、特許文献1に記載されているように、接続端子を並列に配置し、その間に放熱部材を配置する場合に比べて、放熱効率は格段に高くなる。また、接続端子の数を30〜40%多く設置することの可能となる。
【0021】
なお、熱伝導性接着剤9は、例えば、銀、アルミナ等の熱伝導性の高い材料をエポキシ系の樹脂に添加した材料等である。また、放熱部材10の材料としては、例えば、銅(398W/mK)、アルミニウム(236W/mK)等の熱伝導性の高い材料等である。
【0022】
放熱部材10は、一対の半導体パッケージ1,5の外周縁部よりも外方に張り出す張り出し部10bを有している。これにより、第2の半導体パッケージ5に実装された第2の半導体素子7から発せられる熱は、放熱部材10により空気中への放出が行われる。本実施の形態では、張り出し部10bは、一対の半導体パッケージ1,5の外周縁部の全体から張り出すように形成されている。
【0023】
ここで、放熱部材10の放熱効果は、放熱部材10の張り出し部10bにおける張り出し量に依存することが判明している。シミュレーション結果によると、張り出し量が6mmまでは放熱効果は高いが、それ以上では除々に放熱効果は低くなり、20mmを越えると放熱効果が殆ど変わらなくなる。放熱効果を高めるために張り出し量を6mm程度まで大きくする方が放熱効果は高くなるが、隣接する部品との距離を考慮して張り出し量を片側2mm程度とする。つまり、放熱部材10のサイズは13mm〜16mmとし、厚さは0.1mm〜0.2mmとするのが好ましい。なお、配線基板2,6の熱伝導率は、0.5〜0.6W/mK、はんだ電極である接続端子4,8の熱伝導率は、50〜60W/mK、半導体素子3,7の熱伝導率は、110〜130W/mK、放熱部材10の熱伝導率は、130〜140W/mKである。
【0024】
次に、積層型半導体装置50の製造方法について簡単に説明する。第2の半導体パッケージ5の第2の配線基板6の第2の半導体素子7が設置されていない面に熱伝導性接着剤9を塗布し、放熱部材10をマウンタ等で位置合わせして、各接続端子8が開口部11の各貫通孔111を貫通するように設置する。そして、放熱部材10は搭載後、熱印加を行い熱伝導性接着剤9を硬化させる。なお、熱伝導性接着剤9は熱伝導性接着シートを使用しても良い。
【0025】
熱伝導性接着剤としては、エポキシ系接着剤やウレタン系接着剤等を使用することができるが、熱伝導率は10W/mK以上であることが好ましい。
【0026】
次に、第2の半導体パッケージ5の接続端子8にはんだペーストを転写等の方法により付着させる。次に、第1の半導体パッケージ1の第1の半導体素子3の非能動面に熱伝導性接着剤9を塗布する。または、熱伝導性接着シートを予め第1の半導体素子3の非能動面に設置しておく。次に、第1の半導体パッケージ1と第2の半導体パッケージ5を位置合わせし、マウンタ等で第1の半導体パッケージ1の上に第2の半導体パッケージ5を搭載する。
【0027】
その後、リフロー工程等により、接続端子8を介して第1の半導体パッケージ1と第2の半導体パッケージ5を電気的、機械的に接続し、更に、放熱部材10を第1の半導体素子3とを接着させる。尚、熱伝導性接着剤の硬化が不足の場合は別途キュアを行い放熱部材10と第1の半導体素子3を接着させる。本製造方法により、放熱部材を設置した積層型半導体装置50が完成する。
【0028】
なお、接続端子8と放熱部材10が接触し電気的にショートするのを防ぐため、次のような工夫をすることができる。図2(a)は、第2の半導体パッケージ5が第1の半導体パッケージ1上に積層される前の断面図であり、図2(b)は、第2の半導体パッケージ5が第1の半導体パッケージ1上に積層された後の断面図である。
【0029】
図2(a)及び図2(b)に示すように、放熱部材10に形成された開口部11の各貫通孔111は、第2の半導体パッケージ5側から第1の半導体パッケージ1側に向かって漸次広がるテーパ形状に形成されている。これは、図2(a)に示す実装前の接続端子8aは、実装後は、図2(b)に示すように縦方向が縮まり、横方向が広がる。そのため、実装後の接続端子8bの形状に合わせて、開口部11の各貫通孔111を、第2の半導体パッケージ側から第1の半導体パッケージ側に向かって漸次広がるテーパ形状に形成することが有効である。
【0030】
通常、開口部11の各貫通孔111における第2の半導体パッケージ5の第2の配線基板6側の開口径は、放熱部材10を搭載する際の搭載精度を考慮して、接続端子8aの径と比較して0.02mm程度大きくする。すなわち、接続端子8aの径がΦ0.2〜0.3mm程度であれば第2の配線基板6側の開口径はΦ0.22〜0.32mm程度とする。一方、第2の半導体パッケージ5を第1の半導体パッケージ1に実装すると、接続端子8の形状は15%程度横方向に広がる。従って、接続端子8の径はΦ0.23〜0.35mm程度となるため、第1の配線基板2側の開口径はΦ0.25〜0.37mm程度とする。
【0031】
また、図3に示すように、開口部11の各貫通孔111に絶縁処理を施してもよい。本実施の形態では、貫通孔111の側面111aに絶縁部材15を塗布している。絶縁部材15は、例えば、絶縁性樹脂等がよく、更に、放熱効果を損なわないようにするために開口部11の各貫通孔111のみに設置することが望ましい。
【0032】
また、開口部11の各貫通孔の形状は、図1(b)に示したように接続端子毎に形成する以外に、接続端子の配置や間隔に応じて、図4(a)及び図4(b)に示すように2つの領域もしくは4つの領域とすることも可能である。1つの領域には複数の接続端子が配置されている。
【0033】
図4(a)においては、複数の接続端子8を2つの端子群81A,81Bに区分けし、開口部11は、それぞれの端子群81A,81Bに対応する位置に形成されたそれぞれの貫通孔111A,111Bで構成されている。図4(b)においては、複数の接続端子8を4つの端子群81A,81B,81C,81Dに区分けしている。開口部11は、それぞれの端子群81A,81B,81C,81Dに対応する位置に形成されたそれぞれの貫通孔111A,111B,111C,111Dで構成さている。図1(b)に示す形状が放熱効率は最も高いが、製造の容易さを考慮して、図4(a)及び図4(b)としても良い。
【0034】
このように、放熱部材10には接続端子8に接触しないように接続端子8に対応する位置に開口部11が形成されるので、放熱部材10を接続端子8の数や位置に依存せずに半導体パッケージ1,5の外周縁部から外側に張り出して形成することができる。これにより、放熱部材10が半導体パッケージ1,5の外周縁部から張り出す方向の自由度が増すので、放熱部材10の張り出し部10bによる空気中への放熱効果が高くなり、各半導体パッケージの半導体素子の温度低減効果を向上させることができる。
【0035】
本実施の形態の積層型半導体装置50では、放熱部材10により一対の半導体パッケージ1,5を熱的に接触させている。これにより、第2の半導体パッケージ5の第2の半導体素子7から発せられる熱は、以下の5つの経路により放出される。
(1)第2の半導体パッケージ5の上方の空気中へ伝わる第1の放熱経路
(2)第2の半導体パッケージ5の下方の空気中へ伝わる第2の放熱経路
(3)第2の配線基板6、放熱部材10及び半導体素子3を経由して第1の配線基板2に伝わる第1の伝熱経路
(4)第2の配線基板6及び接続端子8を経由して第1の配線基板2に伝わる第2の伝熱経路
(5)放熱部材10を経由して空気中へ伝わる第3の放熱経路
【0036】
これらの5つの経路を形成することにより、第2の半導体素子7の放熱効果を向上させることができる。
【0037】
なお、第1の配線基板2に伝わった熱は、接続端子4を経由してマザー基板51へ伝わることとなる。また、空気に放熱する経路においても、放熱部材10が第2の半導体パッケージ5の外周縁部全体から張り出して形成されているので、放熱部材10による空気中への放熱効果が高くなる。
【0038】
以上、一対の半導体パッケージ1,5のうち相対的にマザー基板51とは反対側に配置された半導体パッケージ5の半導体素子7により発生した熱は、放熱部材10を介して相対的にマザー基板側に配置された半導体パッケージ1に伝熱される。そして、最終的にマザー基板51に伝熱させることができる。このように、空気に放熱する経路の他にマザー基板51に伝熱する経路が形成されるので、各半導体パッケージ1,5の半導体素子3,7の温度低減効果を向上させることができる。
【0039】
なお、一般的に使用されている半導体素子は、温度が120℃を超えると誤動作を起こす可能性が高くなる。また120℃から140℃の間では、温度が1℃上昇する毎に誤動作の可能性は高くなる。また140℃以上の温度になると、その可能性は非常に高いが、温度に上昇による影響はあまりないことが知られている。従って、120℃から140℃の間において半導体素子の温度を1℃下げることは、技術的に非常に大きな意味を持つ。
【0040】
尚、上記実施の形態では、ボール電極がはんだボールの場合について説明したが、これに限定するものではなく、ボール電極が球形状の剛体にはんだを塗布して構成される電極であってもよい。
【0041】
また、上記実施の形態では、各配線基板に1つの半導体素子が実装される場合について説明したが、複数の半導体素子が実装される場合であっても本願発明は適用可能である。その際、半導体素子の実装される形態は、スタックドパッケージや、シングルパッケージのいずれであっても構わない。
【0042】
また、上記実施の形態では、2つの半導体パッケージの場合について説明したが、3つ以上の半導体パッケージが積層される場合であっても本願発明は適用可能である。この場合、3つ以上の半導体パッケージのうち隣り合う一対の半導体パッケージが、第1の半導体パッケージ及び第2の半導体パッケージである。そして、一対の半導体パッケージの間に放熱部材をそれぞれ配置すればよい。
【0043】
また、上記実施の形態において第2の半導体パッケージ5は、第2の半導体素子7を覆う封止樹脂を有しているが、本発明はこれに限られるものではない。また、上記実施の形態では、第1の半導体パッケージ1および第2の半導体パッケージ5は、ともに一つの半導体素子が実装されているが、複数の半導体素子が実装されていても構わない。
【0044】
また、上記実施の形態では、半導体素子が配線基板におけるマザー基板とは反対側の面に実装される場合について説明したが、これとは逆に、半導体素子が配線基板におけるマザー基板側の面に実装される場合についても適用可能である。
【0045】
また、上記実施の形態では、半導体パッケージが正方形形状の場合について説明したが、正方形以外の四角形でもよく、また、四角形以外の多角形でもよく、辺と辺とが交差する角部をカットしたものや湾曲させたもの等も含まれる。また、多角形以外の形状、例えば円形や楕円形など、平面視であらゆる形状のものが含まれる。
【0046】
また、配線基板に半導体素子を実装する形態としては、特に限定するものではなく、フリップチップ実装や、ワイヤーボンディングにて接続しモールド樹脂等で覆ったものでもよい。
【0047】
(実施例1)
積層型半導体装置50の熱低減効果を確認するために、熱流体解析ソフト(FLoTHERM V8.2 メンターグラフィックス社製)を使ってシミュレーションを実施した。積層型半導体装置50のシミュレーションモデル形状、サイズを以下に示す。
【0048】
第1の半導体パッケージ1の第1の配線基板2は、11.5mm×11.5mmの正方形形状の基板である。その熱伝導率は平面方向で80W/mk、厚さ方向で0.5W/mkである。第1の半導体素子3は、5mm×5mmの正方形形状であり、厚さは0.05mmである。その熱伝導率は25℃において平面方向で117.5W/mkである。接続端子4は120個形成し、その形状は、断面が0.34mm×0.34mmの正方形形状で、高さが0.2mmの正四角柱形状とした。
【0049】
第2の半導体パッケージ5の第2の配線基板6は、11.5mm×11.5mmの正方形形状の基板である。その熱伝導率は平面方向で80W/mk、厚さ方向で0.5W/mkである。第2の半導体素子7は、5mm×5mmの正方形形状であり、厚さは0.1mmである。その熱伝導率は25℃において平面方向で117.5W/mkである。第2の半導体素子7を覆う樹脂部は、11.5mm×11.5mmの正方形形状であり、厚さは0.45mmである。その熱伝導率は0.8W/mkである。接続端子8は441個形成し、その形状は断面が0.34mm×0.34mmの正方形形状で、高さが0.2mmの正四角柱形状とした。
【0050】
放熱部材10は、図4(b)に示した、開口部11の貫通孔が4箇所設けられているものを使用した。放熱部材の外径は、13.5mm×13.5mmの正方形形状であり厚さは0.1mmである。放熱部材10は半導体パッケージ1および2の各辺のから1mm張り出した位置に配置されている。外径面積は182.25mmであり、第2の配線基板6と接着されている箇所のサイズは5mm×5mmであり、開口部の貫通孔の1箇所の面積は23.5625mmであり、4つの貫通孔の面積の合計は94.25mmとした。放熱部材10の熱伝導率は平面方向で137W/mkとした。
【0051】
シミュレーションは、第1の半導体パッケージ1に1.5W、第2の半導体パッケージ5に1.2Wを印加して、半導体パッケージ5からの熱の挙動を求めた。シミュレーションの結果、半導体パッケージ5から上方の空気中への放熱量は0.25Wであり、下方の空気中への放熱量は0.16Wであった。また、半導体パッケージ5から放熱部材10を経由して第1の半導体パッケージ1への伝熱量は0.18Wであり、接続端子8を経由して第1の半導体パッケージ1への伝熱量は0.46Wであった。また、半導体パッケージ5から放熱部材10を経由して空気中への放熱量は0.14Wであった。また、この時の第1の半導体素子3の温度は126℃、第2の半導体素子7の温度は134℃であった。それらの結果を表1に示す。
【0052】
実施例1の場合、第2の半導体パッケージ5に印加された1.2Wの熱のうち0.55Wが放熱され0.64Wが伝熱される。従って、トータル1.19Wの熱が第2の半導体パッケージ5から放出され、第2の半導体パッケージ5にとどまる熱量は0.01Wである。
【0053】
(比較例1)
比較のため、実施例1に対して放熱部材を配置せず、第1の半導体パッケージ1と第2の半導体パッケージ5は、熱的には接続端子8のみで接続されている積層型半導体装置100を比較例1とした。模式図を図5(a)に示す。第1の半導体パッケージ1、第2の半導体パッケージ5の仕様は実施例1と同様であるが、接続端子8の数は160とした。
【0054】
比較例1の場合、第2の半導体パッケージ5の第2の半導体素子7から発せられる熱は、以下の3つの経路により放出される。
(1)第2の半導体パッケージの上方の空気中へ伝わる放熱経路
(2)第2の半導体パッケージの下方の空気中へ伝わる放熱経路
(4)接続端子8を経由して第1の配線基板2に伝わる伝熱経路
【0055】
実施例1と同様に、第1の半導体パッケージ1に1.5W、第2の半導体パッケージ5に1.2Wを印加して、半導体パッケージ5からの熱の挙動を求めた。シミュレーションの結果、半導体パッケージ5から上方の空気中への放熱量は0.31Wであり、下方の空気中への放熱量は0.25Wであった。また、接続端子8を経由して第1の配線基板2への伝熱量は0.61Wであった。また、この時の第1の半導体素子3の温度は126℃、第2の半導体素子7の温度は142℃であった。それらの結果を表1に示す。
【0056】
比較例1の場合、第2の半導体パッケージ5に印加された1.2Wの熱のうち0.56Wが放熱され0.61Wが伝熱される。従って、トータル1.17Wの熱が第2の半導体パッケージ5から放出され、第2の半導体パッケージ5にとどまる熱量は0.03Wである。すなわち、実施例1と比較すると3倍の熱量が第2の半導体パッケージ5にとどまるっている。これにより、第2の半導体素子7の温度が8℃高くなっている。
【0057】
(比較例2)
実施例1に対して放熱部材を配置せず、第1の半導体パッケージ1に実装された半導体素子3と第2の半導体パッケージ5は、導電性樹脂210で接続されている積層型半導体装置200を比較例2とした。模式図を図5(b)に示す。第1の半導体パッケージ1、第2の半導体パッケージ5の仕様は実施例1と同様であるが、接続端子8の数は160とした。
【0058】
比較例2の場合、第2の半導体パッケージ5の第2の半導体素子7から発せられる熱は、以下の4つの経路により放出される。
(1)第2の半導体パッケージの上方の空気中へ伝わる放熱経路
(2)第2の半導体パッケージの下方の空気中へ伝わる放熱経路
(3)導電性樹脂210及び半導体素子3を経由して第1の配線基板2に伝わる伝熱経路
(4)接続端子8を経由して第1の配線基板2に伝わる伝熱経路
【0059】
実施例1と同様に、第1の半導体パッケージ1に1.5W、第2の半導体パッケージ5に1.2Wを印加して、第2の半導体パッケージ5からの熱の挙動を求めた。シミュレーションの結果、第2の半導体パッケージ5から上方の空気中への放熱量は0.29Wであり、下方の空気中への放熱量は0.15Wであった。また、第2の半導体パッケージ5から導電性樹脂210及び半導体素子3を経由して第1の配線基板2に伝わる伝熱量は0.27Wであり、接続端子8を経由して第1の配線基板2への伝熱量は0.47Wであった。また、この時の第1の半導体素子3の温度は129℃、第2の半導体素子7の温度は136℃であった。それらの結果を表1に示す。
【0060】
比較例2の場合、第2の半導体パッケージ5に印加された1.2Wの熱のうち0.44Wが放熱され0.74Wが伝熱される。従って、トータル1.18Wの熱が第2の半導体パッケージ5から放出され、第2の半導体パッケージ5にとどまる熱量は0.02Wである。すなわち、実施例1と比較すると2倍の熱量が第2の半導体パッケージ5にとどまるっている。これにより、第2の半導体素子7の温度が2℃高くなっている。
【0061】
(比較例3)
実施例1に対して放熱部材は配置するが、放熱部材310は第2の半導体パッケージ5にのみ導電性樹脂で接続されている積層型半導体装置300を比較例2とした。模式図を図5(c)に示す。このとき第1の半導体パッケージ1と第2の半導体パッケージ5は、熱的には接続端子8のみにより接続されている。第1の半導体パッケージ1、第2の半導体パッケージ5、放熱部材310の仕様は実施例1と同様であるが、接続端子8の数は120とした。
【0062】
比較例3の場合、第2の半導体パッケージ5の第2の半導体素子7から発せられる熱は、以下の4つの経路により放出される。
(1)第2の半導体パッケージの上方の空気中へ伝わる放熱経路
(2)第2の半導体パッケージの下方の空気中へ伝わる放熱経路
(4)接続端子8を経由して第1の配線基板2に伝わる伝熱経路
(5)放熱部材10を経由して空気中へ伝わる放熱経路
【0063】
実施例1と同様に、第1の半導体パッケージ1に1.5W、第2の半導体パッケージ5に1.2Wを印加して、第2の半導体パッケージ5からの熱の挙動を求めた。シミュレーションの結果、第2の半導体パッケージ5から上方の空気中への放熱量は0.28Wであり、下方の空気中への放熱量は0.11Wであった。また、接続端子8を経由して第1の半導体パッケージ1への伝熱量は0.50Wであり、第2の半導体パッケージ5から放熱部材310を経由して空気中への放熱量は0.30Wであった。また、この時の第1の半導体素子3の温度は126℃、第2の半導体素子7の温度は137℃であった。それらの結果を表1に示す。
【0064】
比較例3の場合、第2の半導体パッケージ5に印加された1.2Wの熱のうち0.69Wが放熱され0.50Wが伝熱される。従って、トータル1.19Wが放熱もしくは伝熱され、第2の半導体パッケージ5にとどまる熱量は0.01Wであり実施例1と同じである。しかしながら、伝熱に比べ放熱は温度上昇を抑制する効果が少なくなるため、第2の半導体素子7の温度が3℃高くなっている。
【0065】
【表1】

【0066】
(第2の実施の形態)
次に、本発明を実施するための第2の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。図6は、本発明の第2の実施の形態に係る積層型半導体装置60の断面図である。なお、図1と同様の部材には同じ符号を付している。
【0067】
図6における放熱部材10の張り出し部10bの先端が下方(マザー基板方向)に折り曲げられた形状となっている。なお折り曲げ形状部分は、張り出し部10bの少なくとも1辺に設けられていれば良い。折り曲げる方向は、雰囲気温度が低い方向に折り曲げたほうが効率は良く、本実施の形態においては、マザー基板51に直接実装され、熱が放出され易い第1の半導体パッケージ1側に折り曲げられている。
【0068】
張り出し部分の形状に関して、その放熱効果を実施例1と同様のシミュレーションで検証した。シミュレーションは、張り出し部分を水平方向に1.5mm張り出した場合と、水平方向に1mm張り出し、更に下方に0.5mm折り曲げられた形状の場合で比較した。その結果、第2の半導体パッケージ5の温度は、下方に折り曲げられた形状の方が、1.5℃温度が低くなることが確認できた。
【符号の説明】
【0069】
1 第1の半導体パッケージ
2 第1の配線基板
3 第1の半導体素子
5 第2の半導体パッケージ
6 第2の配線基板
7 第2の半導体素子
8 接続端子
10 放熱部材
10a 接触部
10b 張り出し部
11 開口部
50,60 積層型半導体装置
51 マザー基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線基板に実装された半導体素子を有する半導体パッケージを複数備え、前記複数の半導体パッケージが積層して配置され、前記複数の半導体パッケージのうち隣り合う一対の半導体パッケージの配線基板同士が複数の接続端子により電気的に接続され、マザー基板に実装される積層型半導体装置において、
前記一対の半導体パッケージの間に配置され、前記一対の半導体パッケージの両方に熱的に接触する接触部と、前記接触部から前記一対の半導体パッケージの外周縁部よりも外方に張り出す張り出し部と、を有する放熱部材を備え、
前記接触部には、前記複数の接続端子が貫通する開口部が形成されていることを特徴とする積層型半導体装置。
【請求項2】
前記開口部は、前記各接続端子に対応する位置に形成されたそれぞれの貫通孔で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の積層型半導体装置。
【請求項3】
前記開口部は、前記複数の接続端子を区分けして得られるそれぞれの端子群に対応する位置に形成されたそれぞれの貫通孔で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の積層型半導体装置。
【請求項4】
前記接触部は、前記一対の半導体パッケージのうち一方の半導体パッケージの配線基板に面接触し、かつ他方の半導体パッケージの半導体素子に面接触していることを特徴とする請求項2又は3に記載の積層型半導体装置。
【請求項5】
前記接続端子は、ボール電極であり、前記貫通孔は、前記一方の半導体パッケージ側から前記他方の半導体パッケージ側に向かって漸次広がるテーパ形状に形成されていることを特徴とする請求項4に記載の積層型半導体装置。
【請求項6】
前記張り出し部は、マザー基板側に折り曲げられた形状であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の積層型半導体装置。
【請求項7】
第1の配線基板に第1の半導体素子が実装された第1の半導体パッケージと、第2の配線基板に第2の半導体素子が実装された第2の半導体パッケージと、を備え、前記第1の半導体パッケージの上に前記第2の半導体パッケージが積層して配置され、前記第1の配線基板と前記第2の配線基板とが複数の接続端子により電気的に接続され、マザー基板に実装される積層型半導体装置において、
前記第1の半導体パッケージと前記第2の半導体パッケージとの間に配置され、前記第1の半導体素子及び前記第2の配線基板の両方に熱的に接触する接触部と、前記接触部から前記第1の半導体パッケージ及び前記第2の半導体パッケージの外周縁部よりも外方に張り出す張り出し部と、を有する放熱部材を備え、
前記第2の半導体素子の熱を、前記第2の配線基板、前記放熱部材及び前記第1の半導体素子を経由して前記第1の配線基板へ伝熱する第1の伝熱経路と、前記第2の半導体素子の熱を、前記第2の配線基板及び前記複数の接続端子を経由して前記第1の配線基板へ伝熱する第2の伝熱経路と、が形成されていることを特徴とする積層型半導体装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−33875(P2012−33875A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−93906(P2011−93906)
【出願日】平成23年4月20日(2011.4.20)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】