説明

積層材

【課題】肉や魚を焼いたときにでる油を吸収できるように工夫したアルミニウム箔を提供すること。
【解決手段】紙の両面にアルミニウム箔を積層し、少なくとも片面のアルミニウム箔は穿孔を施した積層材。本発明の積層材に食品を載せて加熱した場合、染み出た油が穿孔を通して紙に吸収され、食品自体に油があまり付着しない。フライパンに本発明の積層材を敷いて調理したときは、フライパンの汚れが少ない。アルミニウム箔にシリコーン樹脂やフッ素をコートすると、調理用油を使用しないか使用しても少量で加熱調理できる。さらに難燃性が優れ、直火に当たっても燃える虞が少ない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は紙又は不織布と金属箔の積層材に関する。さらに詳しくは、吸油性に優れ、肉や魚を加熱調理したときに、油を吸収できる積層材に関する。
【背景技術】
【0002】
肉や魚を加熱調理する場合、フライパンをあまり汚さないようにするために、アルミニウム箔などの金属箔を敷き、その上に食品を載せて調理することは広く行われている。しかしながら、そのようにしても滲み出した油が流れてフライパンを汚し、油落しが厄介である。特に近年廃水汚染の原因となる洗剤の使用が抑えられる傾向にあり、問題が大きい。また、金属箔に油が溜まるので必要以上に食品に付着し、油を摂りすぎることになり、味覚上も健康も好ましくない。
食品を加熱調理するためのアルミニウム箔として、食品との剥離性を向上させるため、フッ素樹脂コートしたものが知られている(特許文献1)。しかしながら、滲み出した油の処理を考慮したものは知られていない。
【特許文献1】実開平2−65543公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、肉や魚を焼いたときにでる油を吸収できるように工夫した加熱調理用の積層材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者は鋭意検討の結果、穿孔を有する金属箔と油吸性能のある材料を特定の接着剤を用いてラミネートすることにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明に到達した。
即ち、本発明は以下のとおりである。
1.紙又は不織布の両面に水ガラスを接着剤として金属箔を積層してなり、少なくとも片面の金属箔は穿孔を有する積層材。
2.紙が難燃紙である前記1の積層材。
3.不織布がレーヨン不織布である前記1の積層材。
4.少なくとも片面の金属箔がアルミニウム箔である前記1から3までのいずれか1項の積層材。
5.少なくとも片面の金属箔はシリコーン樹脂又はフッ素樹脂を塗布してなる前記1から4までのいずれか1項の積層材。
6.少なくとも一方の金属箔は紙又は不織布との接着が部分的である前記1から5までのいずれか1項の積層材。
7.形状が直径10cmから30cmの円盤状である前記1から6までのいずれか1項の積層材。
8.1辺の長さが10cmから30cmの矩形状である前記1から6までのいずれか1項の積層材。
9.少なくとも1以上のつまみ部分のついた前記7又は8の積層材。
10.両面の金属箔の間から液体が漏洩しないように外周部が密封加工された前記7から9までのいずれか1項の積層材。
11.両面の金属箔の間から液体が漏洩しないように外周部が折曲加工された前記7から9までのいずれか1項の積層材。
【発明の効果】
【0005】
本発明の積層材は、紙を金属箔でサンドウィッチした構造であり、金属箔の少なくとも一方は多数の穿孔を有する。従って、これに食品を載せたりくるんだりして加熱した場合、滲み出た油が穿孔を通して紙に吸収され、食品自体に油があまり付着しない。使用済みの積層材はそのまま廃棄でき、フライパンに本発明の積層材を敷いて調理したときは、フライパンの汚れが少ない。また、特にアルミニウム箔にシリコーン樹脂やフッ素をコートすると、調理用油を使用しないか使用しても少量で加熱調理できる。さらに、積層材の両面は金属箔であり、水ガラスで接着しているので、難燃性が優れ、直火に当たっても燃える虞が少ない。フライパンの底面の形状またはそれにタブ(つまみ)をつけた形状に予め加工してあれば取扱も簡便であり、両面の金属箔の間から液体が漏洩しないように外周部が密封加工または折曲加工されていれば、フライパンの汚れはさらに軽減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下に本発明を説明する。
金属箔は、通常の家庭用に用いられるアルミニウム箔と同様のものが使用できるが、金箔、銀箔、銅箔、ステンレス鋼箔でもよい。アルミニウム箔は安価なので好適に利用できる。金箔などは、表面に撥水性、撥油性があるので、好ましい。また、アルミニウム箔に金メッキなどを施すことも、表面の撥水性、撥油性を向上させるうえで好ましい。銀箔、銅箔は抗菌効果が期待できて好ましい。金属箔の厚さに制限はなく、通常3〜200μmであるが、6〜50μmが好ましい。金属箔の積層材外側となる表面は、剥離性を向上させるために、フッ素樹脂又はシリコーン樹脂をコーティングしていることが好ましい。コーティングは一方又は両方の金属箔に施してよい。金属箔にはエンボス加工が施してあってもよく、その場合は凹部に油が溜まることが期待できる。
【0007】
紙または不織布は油を吸収するために用いられる。その種類に制限はないが、その目的からある程度吸油性に優れたものが好ましい。耐熱性や難燃性の観点から、難燃紙、レーヨン不織布などが好ましい。難燃紙とはJIS A1322の防炎3級以上、好ましくは2級以上の紙である。ただし、前処理はA法による。このような難燃紙としては、紙にリン酸アンモニウム、スルファミン酸アンモニウム等の難燃剤や水酸化アルミニウムを含有させたものが例示できる。坪量にも制限はないが、通常10〜300g/m、好ましくは25〜200g/mである。坪量が25g/mよりも小さいと吸油性能が劣る一方、200g/mを超えると積層材全体が厚くなって取り扱いにくくなる。
【0008】
金属箔と紙または不織布とは水ガラスで接着される。接着剤としての水ガラスとしては、通常SiO/NaOの比が2〜4のものが工業的に使用されており、本発明においてもこれを使用できる。好ましくはSiO/NaOの比が3〜4である。SiO/NaOの固形分濃度は15〜22重量%が好ましく、さらに好ましくは17〜20重量%である。また、水ガラスは単独で使用してもよいが、硬化剤を配合しても差し支えない。硬化剤としては例えば炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムが例示できる。硬化剤を配合する場合はSiO100重量部に対して21重量部以下が好ましい。このような水ガラス系接着剤は特許第2915388号に開示されている。
水ガラスは接着面全体に塗布して面全体を接着してもよく、点付けや線状、格子状等のように一部に塗布して、部分接着としてもよい。部分的に接着するとアルミニウム箔と紙の間に未接着の空間ができ、ここに油が廻って溜ったり紙に吸収されやすくなるので好ましい。部分接着とする場合、積層材の外周部から溜まった油が漏れることがあるため、外周部が密封加工されている、もしくは折曲加工されていることが好ましい。
【0009】
穿孔は油を紙または不織布に導いて吸油させるためのものである。穿孔の直径は、好ましくは0.1〜3mmである。0.1mm未満では、油を通しにくく、3mmを超えると難燃性が低下したり、紙または不織布に吸油された油が金属箔表面に逆流することがあって不都合である。
積層材の形状は特に制限はないが、調理用の器具、例えばフライパンや焼き網で使い易いように円盤状や矩形が好ましく、例えば直径10cmから30cmの円盤状、1辺の長さが10cmから30cmの矩形状のものがよく用いられる。
【0010】
図1〜4は本発明の積層材の断面を模式的に表した図である。図において、1は金属箔、2は紙または不織布、3は接着剤、4はシリコーンコート層、5は穿孔である。
図3は穿孔が積層材全体を貫通している例であり、この場合は油の一部は積層材を通って、下に滲み出る場合がある。図2は、穿孔を金属箔の片面に開けた例である。油は上側の金属箔の穿孔を通るが、下の金属箔には穿孔がないので、通り抜けることなく紙または不織布に吸収される。図1は図2の場合において紙と上側のアルミニウム箔の水ガラスを点付けした例で、未接着部分に油が廻りやすく紙または不織布に吸収されやすくなり、またその部分自体に油が溜まりやすく、好ましい例である。図4は、外周部が密封加工された例で、両面の金属箔の間から液体が漏洩しない、好ましい例である。
【0011】
本発明の積層材は、例えば以下のようにして製造できる。必要に応じ予めフッ素処理又はシリコーン処理した金属箔に、エッチングやパンチング等の方法により孔を穿つ。紙または不織布、金属箔又はその両方の接着面に水ガラスを塗布し、接着し、乾燥する。穿孔を積層材全体を貫通させる場合は、まず紙または不織布と金属箔を接着し、ついでパンチング等により孔を開けてもよい。
【実施例】
【0012】
以下に本発明を実施例で説明するが、本発明はこれらにより制限されるものではない。
実施例1
片面シリコーンコートした12μmのアルミニウム箔に、パンチングマシンで直径0.5mmの孔を10000ケ/mとなるように開けた。25g/mの薄葉紙の一方に上記の穿孔したアルミニウム箔を、他方に7μmの未コートアルミニウム箔を、シリコーンコート面が表側となるようにして、水ガラスを接着剤として全面接着し、図2に示すような本発明の積層材を得た。水ガラスはSiO2/Na2O比が3.4で、硬化剤として炭酸水素ナトリウムをSiO2100重量部に対して5重量部配合したものを用いた。
フライパンの上にこの積層材を敷き、その上に豚バラ肉を約25g載せて、調味油を使用せずに7分間焼いた後、秤量した。焼いた肉の外観、食感、減量率を表1に示した。
【0013】
実施例2
穿孔したアルミニウム箔と紙の接着を水ガラスを用いて点付けとした以外は実施例1と同様にして、図1に示すような本発明の積層材を得た。
この積層材を実施例1と同様にして評価した。
【0014】
比較例1
孔を開けないシリコーンコートアルミニウム箔を用いて実施例1と同様に評価した。
【0015】
【表1】

【0016】
本発明の積層材は比較例1のアルミニウム箔に比べて油の落ちによる減量が大きく、特に実施例2が大きく、油っぽさがない。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明の積層材は、特に油が染み出す魚や肉を焼いて調理する場合のフォイルとして提起したものである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の積層材で、金属箔の一方と紙が点付けされた例である。
【図2】本発明の積層材で、金属箔の一方が穿孔されている例である。
【図3】本発明の積層材で、穿孔が全体を貫通している例である。
【図4】本発明の積層材で、外周部が密封加工された例である。
【符号の説明】
【0019】
1 アルミニウム箔
2 紙
3 水ガラス
4 シリコーン層
5 穿孔
6 未接着部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙又は不織布の両面に水ガラスを接着剤として金属箔を積層してなり、少なくとも片面の金属箔は穿孔を有する積層材。
【請求項2】
紙が難燃紙である請求項1の積層材。
【請求項3】
不織布がレーヨン不織布である請求項1の積層材。
【請求項4】
少なくとも片面の金属箔がアルミニウム箔である請求項1から3までのいずれか1項の積層材。
【請求項5】
少なくとも片面の金属箔はシリコーン樹脂又はフッ素樹脂を塗布してなる請求項1から4までのいずれか1項の積層材。
【請求項6】
少なくとも一方の金属箔は紙又は不織布との接着が部分的である請求項1から5までのいずれか1項の積層材。
【請求項7】
形状が直径10cmから30cmの円盤状である請求項1から6までのいずれか1項の積層材。
【請求項8】
1辺の長さが10cmから30cmの矩形状である請求項1から6までのいずれか1項の積層材。
【請求項9】
少なくとも1以上のつまみ部分のついた請求項7又は8の積層材。
【請求項10】
両面の金属箔の間から液体が漏洩しないように外周部が密封加工された請求項7から9までのいずれか1項の積層材。
【請求項11】
両面の金属箔の間から液体が漏洩しないように外周部が折曲加工された請求項7から9までのいずれか1項の積層材。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2007−196406(P2007−196406A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−14578(P2006−14578)
【出願日】平成18年1月24日(2006.1.24)
【出願人】(390013251)東海アルミ箔株式会社 (9)
【Fターム(参考)】