説明

穴形状測定装置

【課題】ノイズ光成分を除去することで、内部から穴形状を撮像できない被検物体の光学的な形状測定を行うことができる穴形状測定装置を提供する。
【解決手段】穴形状測定装置を、光軸方向に延びるように形成された穴Hを有する被検物体80の当該穴Hから放射された光を集光する機能を有する対物レンズ20と、この対物レンズ20の射出瞳面若しくは当該射出瞳面と共役な面に配置され、被検物体80のうち、穴Hから放射された光線を通過させる開口部32、及び、穴H以外の部分から放射された光線を遮光する遮光部31を有する遮光部材30とから構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穴形状測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
穴形状の立体形状を測定する手段としては、一般に3次元的に移動可能なアームに取り付けた微少なプローブを穴の内壁に直接接触させる接触式測定が用いられる。しかし、接触式測定にはプローブの大きさにより測定可能な穴径に制約があること、穴の内壁を多点接触測定しなければならず測定時間がかかることから、非接触かつ高速に測定が可能な光学式測定が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1記載の発明においては、被検物体の表面、裏面をそれぞれ別のカメラで撮像し画像測定することで穴形状のテーパー角や中心軸の傾きを測定している。
【特許文献1】特開2000−258143号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1記載の発明では、被検物体の穴形状の入り口側、出口側両方からの画像測定が必要なため、例えばインジェクションノズルの燃料噴射穴のように内部から穴形状を撮像できない被検物体であって、穴形状の外側が狭く、内側が広い逆テーパーの穴の測定においては適用することできない。また、穴形状の開口部から穴の奥を撮像した場合、被検物体の表面の反射光や、照明からの直接光がノイズとなり良好な画像取得ができないという課題があった。
【0004】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、被検物体に形成された穴の立体形状を測定する際のノイズ光成分を除去することで、内部から穴形状を撮像できない被検物体に形成された逆テーパーの穴形状であっても、光学的な形状測定を行うことができる穴形状測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために本発明に係る穴形状測定装置は、光軸方向に延びるように形成された穴を有する被検物体の当該穴からの光を集光する機能を有する対物レンズと、この対物レンズの射出瞳面若しくは当該射出瞳面と共役な面に配置され、被検物体のうち、穴から放射された光線を通過させる開口部、及び、穴以外の部分から放射された光線を遮光する遮光部を有する遮光部材と、を有する。
【0006】
このような穴形状測定装置は、穴の前記対物レンズ側開口部の直径をφとし、穴の内壁の勾配をθ0とし、穴の深さをhとし、対物レンズの焦点距離をfとし、遮光部材と対物レンズの射出瞳間の倍率をβとし、遮光部材の開口部の光軸からの最短距離をD1、最長距離をD2としたとき、次式
【数2】

を満足することが好ましい。
【0007】
また、このような穴形状測定装置において、遮光部材は、開口部が、遮光部にリング状に形成されていることが好ましい。
【0008】
あるいは、この遮光部材は、開口部が、遮光部に三日月状に形成されていることが好ましい。
【0009】
あるいは、この遮光部材は、2以上の開口部が、遮光部に光軸を中心に同心円状に配置されていることが好ましい。
【0010】
さらに、このような穴形状測定装置は、遮光部材が、光路に対して挿脱可能に取り付けられていることが好ましい。
【0011】
あるいは、このような穴形状測定装置は、遮光部材が、液晶基板で構成され、遮光部が当該液晶基板における液晶分子の配向を調節して形成されることが好ましい。
【0012】
また、このような穴形状測定装置は、被検物体を偏光照明する偏光照明手段と、被検物体からの反射光のうち偏光照明手段による偏光照明に対して直交する偏光成分を有する光線を通過させる検光手段と、を更に有することが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る穴形状測定装置を以上のように構成すると、被検物体に形成された穴の立体形状を測定する際のノイズ光成分を除去することができ、穴形状内壁からの信号のみを検出できる。これにより、インジェクションノズルの燃料噴射穴のように内部から穴形状を撮像できない被検物体の逆テーパー形状の穴の測定においても、光学的な形状測定が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(第1の実施形態)
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照して説明する。まず、図1を用いて第1の実施形態に係る穴形状測定装置の構成について説明する。図1(a)に示す穴形状測定装置は、照明光学系10、対物レンズ20、遮光部材30、ハーフミラー40、結像レンズ50、撮像素子60、及び、画像処理装置70から構成されている。具体的には、被検物体80側から、対物レンズ20、遮光部材30、ハーフミラー40、及び、結像レンズ50の順で光軸上に並び、ハーフミラー40の側方に照明光学系10が配置されている。
【0015】
照明光学系10は、光源側から順に、同軸上に並んで、光源11、コレクタレンズ12、第1のリレーレンズ群13、開口絞り14、視野絞り15、及び、第2のリレーレンズ群16を備えている。この照明光学系10は、いわゆる落射型のケーラー照明光学系を構成しており、視野絞り15は、コレクタレンズ12の前側焦点位置F及び被検物体80と、それぞれ共役になっている。また、開口絞り14は、対物レンズ20の後側焦点面(すなわち射出瞳面)と共役になっている。遮光部材30は、対物レンズ20の射出瞳面若しくはその近傍に配置されている。
【0016】
遮光部材30は、図1(b)に示すように、対物レンズ20で集光された光束を遮断する遮断部31を有し、この遮光部31に光軸に対して同心円状に配置されたリング状の開口部32が形成されている。このような構成の遮光部材30は、「輪帯開口」とも呼ばれ、以降の説明ではこの輪帯開口を用いた場合について説明する。
【0017】
このような穴形状測定装置によると、照明光学系10からの光束(照明光)はハーフミラー40で反射され、遮光部材30、及び、対物レンズ20を介して被検物体80を照明する。被検物体80からの反射、散乱光はふたたび対物レンズ20に入射し、遮光部材30の開口部32、及び、ハーフミラー40を透過して結像レンズ50に入射する。この結像レンズ50の焦点面には、撮像素子60が配置されている。このとき、被検物体80と撮像素子60とは共役となっており、撮像素子60には被検物体80の拡大像が結像する。
【0018】
撮像素子60により光電変換された被検物体80の拡大像は、画像処理装置70により画像解析される。このとき、不図示のステージ上下動機構により、被検物体80と穴形状測定装置との距離を変えることで、被検物体80に対する対物レンズ20の焦点面をずらしながら複数の画像を撮像し、解析して、穴形状の立体計測を行う。
【0019】
次に、図2に被検物体80の詳細を示す。この被検物体80には穴形状の外側(すなわち穴形状測定装置の対物レンズ20側)が狭く、内側が広い逆テーパー形状の穴Hが加工さている。ここで、穴Hにおける対物レンズ20側開口部の設計上の直径をφ、穴Hの設計上の内壁Wの勾配をθ0、穴Hの設計上の深さをhとする。対物レンズ20を介して被検物体80を照明した光束は、穴Hの内壁Wで反射、散乱し、再び対物レンズ20に入射する。このとき、穴Hの最深部において散乱してから再び対物レンズ20に入射する光束と、被検物体80表面の法線とのなす角の最小値をθ1、最大値をθ2とすると、これらの角度θ1、θ2は下記式(a)であらわすことができる。
【0020】
【数3】

【0021】
すなわち、穴Hの内壁Wの最深部からの反射、散乱光(信号光)は最小値θ1と最大値θ2との間の角度(図2の斜線部分)で対物レンズ20に入射しており、それ以外の角度で入射する光束は被検物体80の表面からの反射光等、穴Hの内壁Wの測定に不要なノイズ光であるといえる。故に対物レンズ20に入射する光束のうち、光軸とのなす角度がθ1からθ2以外の光束をカットすることでノイズ光を低減した良好な画像取得が可能となる。
【0022】
ここで、対物レンズ20の焦点距離fと、対物レンズ20に入射する光線の入射角度θと、対物レンズ20に入射した光線の対物レンズ20の後側焦点面における光軸からの距離(高さ)dは、良好に収差補正された対物レンズであれば、下記式(b)を満足することが知られている。
【0023】
【数4】

【0024】
この式(b)に上述の穴Hからの光束を当てはめると、図1(b)に示すように、遮光部材30の開口部32の光軸からの最短距離(輪帯開口の場合は開口部32の内径に相当する)をD1、光軸からの最長距離(輪帯開口の場合は開口部32の外径に相当する)をD2とし、最短距離(内径)に対する光線の入射角度をθ′、最長距離(外径)に対する光線の入射角度をθ″、遮光部材30と対物レンズ20の射出瞳間の倍率をβとしたとき、下記式(c)が成り立つ。
【0025】
【数5】

【0026】
また、遮光部材30により、光軸とのなす角度がθ1からθ2以外の光束をカットするためには、次式(d)を満足すればよい。
【0027】
【数6】

【0028】
したがって、上記式(a)と式(c)及び(d)とから、図2に示すように、穴Hの対物レンズ20側の開口部の直径をφ、穴Hの内壁Wの勾配をθ0、及び、穴Hの深さをhとし、対物レンズの焦点距離をfとし、遮光部材30と対物レンズ20の射出瞳間の倍率をβとし、図1(b)に示すように、遮光部材30の開口部32の最短距離(内径)をD1とし、最長距離(外径)をD2としたとき、下記式(1)を満足することで、対物レンズ20に入射する光束のうち、光軸とのなす角度がθ1からθ2以外の光束をカットすることができる。その結果、ノイズ光を低減した良好な画像取得が可能となる。
【0029】
【数7】

【0030】
なお、この第1の実施形態において、遮光部材30は、対物レンズ20の後側焦点面(射出瞳面)に直接配置されているので、上記式(1)において、遮光部材30と対物レンズ20の射出瞳間の倍率は、β=1で計算される。
【0031】
また、この第1の実施形態では、後側焦点面(射出瞳面)が対物レンズ20の後方に露出している例において、この後側焦点面に直接遮光部材30を配置しているが、本発明がこれに限定されることはない。例えば、一般的な対物レンズの構成においては、後側焦点位置が対物レンズの中にある場合が多いが、本発明はこのような構成においても適用可能である。この場合、遮光部材30は対物レンズ20の内部に配置され、遮光部材30と射出瞳とは共役であって射出瞳面は遮光部材30の虚像面となる。このときの遮光部材30と対物レンズ20の射出瞳間の倍率をβとしたときに、上記式(1)を満足するよう構成すればよい。
【0032】
(第2の実施形態)
次に、図3を参照して第2の実施形態について説明する。図3(a)に示す穴形状測定装置は、照明光学系10、対物レンズ20、遮光部材30、ハーフミラー40、結像レンズ50、撮像素子60、画像処理装置70、及び、リレー光学系90から構成されている。具体的には、被検物体80側から、対物レンズ20、ハーフミラー40、リレー光学系90、遮光部材30、及び、結像レンズ50の順で光軸上に並び、ハーフミラー40の側方に照明光学系10が配置されている。
【0033】
照明光学系10からの光束(照明光)は、ハーフミラー40で反射され、対物レンズ20を介して被検物体80を照明する。この被検物体80からの反射、散乱光(信号光)はふたたび対物レンズ20に入射し、ハーフミラー40を通過してリレー光学系90に入射する。リレー光学系90は、被検物体80側から順に、第1リレーレンズ91、及び、第2リレーレンズ92から構成されている。第1リレーレンズ91は、対物レンズ20の後側焦点面(瞳面)がこの第1リレーレンズ91の前側焦点面若しくはその近傍に位置し、第1リレーレンズ91の後側焦点面が、被検物体80の共役面C1若しくはその近傍に位置するよう配置されており、共役面C1には被検物体80の像が結像する。また、第2リレーレンズ92は、共役面C1若しくはその近傍にこの第2リレーレンズ92の前側焦点が位置し、第2リレーレンズ92の後側焦点面が対物レンズ20の瞳面と共役となるよう配置されている。そして、この第2リレーレンズ92の後側焦点面(対物レンズ20の瞳と共役な面)若しくはその近傍には、図3(b)に示すような遮光部材30が配置されている。この遮光部材30は、上記式(1)を満足するよう構成されることにより、穴Hの内壁Wの測定に不要なノイズ光をカット可能である。
【0034】
また遮光部材30は不図示の挿脱機構により、図3に二点鎖線で示したように光路から挿脱可能なように構成されている。遮光部材30を通過した光束は結像レンズ50に入射する。結像レンズ50の焦点面、若しくはその近傍には撮像素子60が配置される。このとき被検物体80と撮像素子60は共役となっており、撮像素子60には被検物体80の拡大像が結像している。
【0035】
撮像素子60により光電変換された被検物体80の拡大像は、画像処理装置70により画像解析される。このとき、不図示のステージ上下動機構により被検物体80と穴形状測定装置との距離を変えることで、被検物体80に対する対物レンズ20の焦点面をずらしながら複数の画像を撮像、解析し、穴形状の立体計測を行う。
【0036】
この第2の実施形態においては、第1の実施形態と同様の構成に加え、リレー光学系90を更に有することで、対物レンズ20を切り替えず通常観察が可能となっている。また、第2の実施形態の遮光部材30は、光路から挿脱可能なように構成されていることから、穴形状測定時のみ遮光部材30を配置することや、穴Hの直径φ、内壁Wの勾配θ0、及び深さhの誤差等に応じて、上記式(1)を満足するような形状の遮光部材30に交換することもできる。さらに、第2リレーレンズ92の後側焦点面に遮光部材30を配置することにより、上述のように後側焦点面が対物レンズ20の内部になる場合でも、穴形状測定用に遮光部材30を有する特殊な対物レンズを用いることなく、一般的な対物レンズが使用可能であるという利点がある。
【0037】
(第3の実施形態)
以下、図4を参照して第3の実施形態について説明する。この第3の実施形態例は、上述の穴形状測定装置を、光の干渉を利用して形状測定を行う、白色干渉型三次元形状測定に適用したものである。この白色干渉型三次元形状測定においては、測定対象への照射光を参照光と観察光に分割し、観察光のみを測定対象表面に照射させるとともにその反射観察光と参照光とを合成し、この合成光から得られる光の干渉縞から測定対象の表面形状を測定する。
【0038】
ここで、第3の実施形態における穴形状測定装置の構成は第1の実施形態と同様であるが、第1の実施形態における対物レンズ20に換えて、ミロー型白色干渉対物レンズ21を用いている。このミロー型白色干渉対物レンズ21は、対物レンズ20と被検物体80との間に、反射面22とハーフミラー23を配置したものである。なお、第1の実施形態と同様の構成については詳細な説明は省略する。
【0039】
図4の穴形状測定装置において、照明光は、対物レンズ20を透過した後、ハーフミラー23に照射され、一部の光がこのハーフミラー23を透過し、残りの光が反射される。ハーフミラー23を透過した光(観察光)は、被検物体80上に達し、反射される(反射観察光)。一方、ハーフミラー23で反射された光(参照光)は、反射面22で反射され、再びハーフミラー23に達し反射されて、前述の被検物体80からの戻り光(反射観察光)と同一光路上に合成される。
【0040】
この同一光路上に合成された2つの光(反射観察光と参照光)は、互いに干渉し合い、対物レンズ20を通過した後、遮光部材30の開口部32、ハーフミラー40、結像レンズ50を通った後、撮像素子60上にニュートン縞(干渉縞)を形成する。このようにして得られた干渉像は、通常の被検物体80の物体像と重なって観察される。この第3の実施形態においても、上記式(1)を満足するような遮光部材30を用いることで、穴Hの内壁Wの測定に不要なノイズ光をカットし、物体像及び干渉像ともに良好な画像取得が可能となる。
【0041】
このようにミロー型白色干渉対物レンズ21を用いた第3の実施形態の穴形状測定装置を用いることで、特に光軸方向に波長レベル以下という極めて高精度な測定が可能になる。なお、この第3の実施形態においては、ミロー型白色干渉対物レンズ21を用いた白色干渉型三次元形状測定による穴形状測定の例を示したが、本発明がこれに限定されることはなく、例えば、マイケルソン型やリニーク型といった種々のタイプの干渉計装置に適用することが可能である。
【0042】
(第4の実施形態)
以下、図5を参照して第4の実施形態について説明する。この第4の実施形態は、上述の穴形状測定装置を、光の共焦点効果を利用して形状測定を行う、共焦点型三次元形状測定に適用したものである。この第4の実施形態における穴形状測定装置は、照明光学系10、対物レンズ20、遮光部材30、ハーフミラー40、結像レンズ50、リレー光学系94、ニッポウディスク100、撮像素子60、及び、画像処理装置70から構成されている。具体的には、被検物体80側から、対物レンズ20、遮光部材30、結像レンズ50、ニッポウディスク100、ハーフミラー40、リレー光学系94の順で光軸上に並び、ハーフミラー40の側方に照明光学系10が配置されている。
【0043】
照明光学系10は、光源側から順に、同軸上に並んで、光源11と、コレクタレンズ12と、第1のリレーレンズ群13と、第2のリレーレンズ群16とから構成されている。リレー光学系94は、被検物体80側から順に、第1リレーレンズ95と、第2リレーレンズ96とから構成されている。
【0044】
ニッポウディスク100は、中心から螺旋状に広がるパターンで多数のピンホール(微少小孔)が形成されたディスクを有し、軸100aを中心として高速回転される。照明光学系10から照射された照明光(光束)は、ハーフミラー40により反射され、ニッポウディスク4を照明し、ニッポウディスク40のピンホールを通過する。ピンホールを通過した照明光は、結像レンズ50、及び対物レンズ20を通り被検物体80を照明する。このニッポウディスク100は、対物レンズ20、及び結像レンズ50を介して被検物体80の共役面に配設されており、このため対物レンズ20を通り被検物体80に照射される照明光は被検物体80上にピンホール像を結ぶ。
【0045】
このように被検物体80に照射された照明光は、被検物体80により反射されて再び対物レンズ20を通り、遮光部材30によって、ニッポウディスク100のピンホールに結像しないノイズ光がカットされた後、元のピンホールに集まってこれを通過し、ハーフミラー40、リレー光学系94を通過し、撮像素子60に被検物体の(拡大像の)二次像を結ぶ。撮像素子60により光電変換された被検物体80の拡大像は、画像処理装置70により画像解析される。このとき、不図示のステージ上下動機構により被検物体80と穴形状測定装置との距離を変えることで、被検物体80に対する対物レンズ20の焦点面をずらしながら複数の画像を撮像、解析し、穴形状の立体計測を行う。第4の実施形態においても、上記式(1)を満足するような遮光部材30により、穴Hの内壁Wの測定に不要なノイズ光をカットすることができ、良好な画像取得が可能となる。
【0046】
なお、この第4の実施形態においては、タンデム型共焦点測定装置による穴形状測定の例を示したが、本発明がこれに限定されることはなく、例えば、レーザー走査型共焦点測定装置に適用することも可能である。また、遮光部材30は、対物レンズ20の射出瞳面に配置されているが、図5に点線で示したように、対物レンズ20の射出瞳と共役な面であって、リレーレンズ95の後側焦点面に配置してもよい。
【0047】
(第5の実施形態)
以下、図8を参照して第5の実施形態について説明する。この第5の実施形態は、上述の穴形状測定装置における照明光学系10と観察光学系とを、いわゆるクロスニコルの配置とすることで、被検物体80表面からの反射光を更にカットするよう構成されている。ここで、第5の実施形態における穴形状測定装置の構成は、第1の実施形態と同様の構成に加え、対物レンズ20と被検物体80との間に、検光手段としての偏光フィルタ24及び1/4波長板25を有している。偏光フィルタ24は、照明光学系10からの照明光を所定の偏光方向の偏光照明に変換する偏光照明手段としての機能も有する。なお、第1の実施形態と同様の構成については、同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0048】
図8の穴形状測定装置において、照明光は、対物レンズ20を透過した後、偏光フィルタ24により所定の偏光方向成分(例えば、紙面方向の直線偏光)の光のみ透過する。偏光フィルタ24を透過した光(偏光照明)は、1/4波長板25により円偏光に変換された後、被検物体80を照明する。このとき、被検物体80を照明する光のうち、被検物体80の表面に到達した光は偏光状態を保持したまま反射されるのに対し、穴Hの内壁Wに到達した光の一部は偏光状態が変化して散乱し、再び1/4波長板25に入射する。故に、被検物体80から反射される光のうち、照明光の偏光状態と等しい光をカットすることで、穴形状測定に不要な被検物体80の表面からの反射光を除去することができ、ノイズ光を低減した良好な画像取得が可能となる。
【0049】
被検物体80からの反射光のうち、偏光状態を保持した円偏光は、再び1/4波長板25により直線偏光に変換された後、偏光フィルタ24に入射するが、このときの偏光方向は照明光(偏光照明)の偏光方向と直交した方向に偏光しているため、偏光フィルタ24を通過せずカットされる。一方、被検物体80からの反射光のうち、偏光状態が変化した光は1/4波長板25、偏光フィルタ24を通過した後、再び対物レンズ20に入射し、斜光部材30の開口部32、及び、ハーフミラー40を透過して結像レンズ50に入射する。この結像レンズ50の焦点面には、撮像素子60が配置されている。このとき、被検物体80と撮像素子60とは共役となっており、撮像素子60には被検物体80の拡大像が結像する。この第5の実施形態においても、上記式(1)を満足するような遮光部材30を用いることで、穴Hの内壁Wの測定に不要なノイズ光をカットし、物体像及び干渉像ともに良好な画像取得が可能となる。
【0050】
また、以上で説明した第1〜第5の実施形態においては、照明光学系10は落射照明光学系であるとしたが、本発明がこれに限定されることはなく、例えば、透過照明においても適用可能である。また、穴Hからの不要なノイズ光をカットする遮光部材30に設けられた開口部32は輪帯開口であるとしたが、本発明はこれに限定されることはなく、図6に示すように、遮光部31′に、光軸に対して同心円状に配置された4極形状の開口部32′を形成した遮光部材30′や、図7に示すように、遮光部31″に三日月形状の開口部32″を形成した遮光部材30″としてもよい。その場合、図6及び図7に示したように、光軸からの最短距離D1、最長距離D2が上記式(1)を満足するのが望ましい。なお、図7のような遮光部材30″は、穴Hが回転対称のときに有効であり、穴Hの一部の形状を計測するだけで、全体形状を認識することができる。
【0051】
また、以上のような遮光部材30を形成するために、液晶基板を用いてもよい。通常観察時は遮光部を形成させずに光を透過させ、穴形状測定時に電圧の印加により液晶分子の配向を調節して遮光部を形成し、穴Hの内壁Wからの光のみを透過しノイズ光をカットするように構成する。このような構成とすることにより、穴形状測定用に、遮光部材30を有する特殊な対物レンズや挿脱機構を用いることなく、穴形状に対応した遮光部材30を得ることができる。
【0052】
また、以上の実施形態では、穴Hの直径φ、内壁Wの勾配θ0、及び深さhは、設計上の寸法を用いているが、本発明は設計上の寸法に限定されることはなく、例えば、測定開始時に、被検物体80の中から選択した適宜のサンプルについて各寸法を測定し、得られた値を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】第1の実施形態に係る穴形状測定装置の構成を示す説明図であって、(a)は穴形状測定装置を示し、(b)は遮光部材を示す。
【図2】被検物体の穴形状と、穴の内壁で反射、散乱した光束との関係を説明するための説明図である。
【図3】第2の実施形態に係る穴形状測定装置の構成を示す説明図であって、(a)は穴形状測定装置を示し、(b)は遮光部材を示す。
【図4】第3の実施形態に係る穴形状測定装置の構成を示す説明図であって、(a)は穴形状測定装置を示し、(b)は遮光部材を示す。
【図5】第4の実施形態に係る穴形状測定装置の構成を示す説明図であって、(a)は穴形状測定装置を示し、(b)は遮光部材を示す。
【図6】4極形状の開口部を有する遮光部材を示す説明図である。
【図7】三日月形状の開口部を有する遮光部材を示す説明図である。
【図8】第5の実施形態に係る穴形状測定装置の構成を示す説明図であって、(a)は穴形状測定装置を示し、(b)は遮光部材を示す。
【符号の説明】
【0054】
11 光源 20 対物レンズ
24 偏光フィルタ(偏光正面手段兼検光手段)
25 1/4波長板(検光手段)
30,30′,30″ 遮光部材
H 穴 W 内壁 80 被検物体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光軸方向に延びるように形成された穴を有する被検物体の当該穴からの光を集光する機能を有する対物レンズと、
前記対物レンズの射出瞳面若しくは当該射出瞳面と共役な面に配置され、前記被検物体のうち、前記穴から放射された光線を通過させる開口部、及び、前記穴以外の部分から放射された光線を遮光する遮光部を有する遮光部材と、を有する穴形状測定装置。
【請求項2】
前記穴の前記対物レンズ側の開口部の直径をφとし、前記穴の内壁の勾配をθ0とし、前記穴の深さをhとし、前記対物レンズの焦点距離をfとし、前記遮光部材と前記対物レンズの射出瞳間の倍率をβとし、前記遮光部材の前記開口部の光軸からの最短距離をD1、最長距離をD2としたとき、次式
【数1】

を満足する請求項1に記載の穴形状測定装置。
【請求項3】
前記遮光部材は、前記開口部が、前記遮光部にリング状に形成された請求項1または2に記載の穴形状測定装置。
【請求項4】
前記遮光部材は、前記開口部が、前記遮光部に三日月状に形成された請求項1または2に記載の穴形状測定装置。
【請求項5】
前記遮光部材は、2以上の開口部が、前記遮光部に光軸を中心に同心円状に配置された請求項1または2に記載の穴形状測定装置。
【請求項6】
前記遮光部材は、光路に対して挿脱可能に取り付けられた請求項1〜5いずれか一項に記載の穴形状測定装置。
【請求項7】
前記遮光部材が、液晶基板で構成され、前記遮光部が当該液晶基板における液晶分子の配向を調節して形成される請求項1〜5いずれか一項に記載の穴形状測定装置。
【請求項8】
前記被検物体を偏光照明する偏光照明手段と、
前記被検物体からの反射光のうち前記偏光照明手段による偏光照明に対して直交する偏光成分を有する光線を通過させる検光手段と、を更に有する請求項1〜7いずれか一項に記載の穴形状測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−258080(P2009−258080A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−259133(P2008−259133)
【出願日】平成20年10月4日(2008.10.4)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】