空冷式内燃機関
【課題】 空冷式内燃機関のシリンダにおける走行風の取入れ構造を改良して、該シリンダに前記走行風を効果的に導入せしめることでシリンダの冷却効果の向上を図る。
【解決手段】 空冷式内燃機関のシリンダヘッド3の前側中央に走行風を取入れる冷却空間32が設けられ、この空間32から導入された走行風の一部は該空間32の左右に設けられた開口32bを介して左右の点火プラグ装着座部3e1と、その上部凹状空間3e2を通過し、シリンダヘッド3上部左右のシリンダヘッドカバー山部間の凹状部分の底部開口に沿って流れ、これらの走行風の流れにより、シリンダヘッドは効果的に冷却される。
【解決手段】 空冷式内燃機関のシリンダヘッド3の前側中央に走行風を取入れる冷却空間32が設けられ、この空間32から導入された走行風の一部は該空間32の左右に設けられた開口32bを介して左右の点火プラグ装着座部3e1と、その上部凹状空間3e2を通過し、シリンダヘッド3上部左右のシリンダヘッドカバー山部間の凹状部分の底部開口に沿って流れ、これらの走行風の流れにより、シリンダヘッドは効果的に冷却される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関に関し、特に自動二輪車用の4サイクル空冷式内燃機関の機関冷却に視点がおかれた改良技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から良く知られたDOHC方式の内燃機関におけるクランク軸による2本のカム軸の駆動は、タイミングチェーンやベルトを用いてなされており、2つのカム軸のそれぞれに設けられたスプロケットに同一のタイミングチェーンやベルトが掛けられ、これにより2つのカム軸を同時に同速駆動するようになされている。そして、このカム軸の駆動方式はシリンダに並列配置される気筒間のチェーン室を前記チェーンやベルトが通過する(例えば、特許文献1参照)。
また、DOHC方式の空冷式内燃機関におけるクランク軸によるカム軸の駆動方式として、シリンダへッドの左右にそれぞれ2本のカム軸が配置され、これらカム軸を機関の左右両側にそれぞれ配置されたカム軸駆動装置により駆動するようになし、左右それぞれの2本のカム軸間の駆動が、クランク軸によりその一方のカム軸がチェーン駆動され、該一方のカム軸から他方のカム軸がチェーン駆動されることでなされるようにしたものが知られている。そして、このカム軸駆動方式は、機関の左右両側にそれぞれカム軸駆動装置が配置されることで実質的に前記気筒間におけるチェーン室の設置の必要性は排除されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特許第2593674号公報(第1頁、第1図)
【特許文献2】特公平5−55686号公報(第1頁−第2頁、第1図−第2図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
図13−a、図13−bに図示される上述の特許文献1に記載の発明のカム軸駆動方式は、シリンダ0E0の長手方向中央部030にシリンダ壁により構成されるカム軸駆動のためのタイミングチェーン016用の空間、すなわちチェーン室031が設けられ、該チェーン室031内をタイミングチェーン016が駆動回転する。タイミングチェーン016はクランク軸010に取付けられたスプロケット010hと2本のカム軸033,034にそれぞれ取付けられた同径のスプロケット033c,034c間に掛け渡され、クランク軸010の駆動回転が1本のタイミングチェーン016を介して2本のカム軸033,034に伝達されるようになされている。
【0004】
ところで、このカム軸駆動方式は4サイクルの水冷式内燃機関において採用されており、そのレイアウトを4サイクルの空冷式内燃機関に適用する場合、チェーン室に隣接する気筒における周辺スペースからして例えば冷却フィン等のための放熱面積が充分に確保できず、この点を視ても放熱のための対策が採りにくいことが解る。したがって、チェーン室に隣接する気筒における熱の放散はチェーン室に隣接する気筒に比べて充分になされないことになり、そのため、シリンダ部における不均一な熱的影響が発生することになる
【0005】
また、図14−a、図14−bに図示される上述の特許文献2に記載の発明のカム軸駆動方式はシリンダヘッド03の左右それぞれに2本づつカム軸033,034が配置されており、機関0Eの左右両側にそれぞれカム軸033,034の駆動装置が配置され、左右それぞれの2本のカム軸033,034の一方に取付けられた大径のスプロケット033cとクランク軸010のスプロケット010h間に掛け渡されたタイミングチェーン016により該一方のカム軸033を駆動し、該一方のカム軸033に取付けられた小径のスプロケット033dと他方のカム軸034に取付けられた該小径のスプロケット033dと同径のスプロケット034d間に掛け渡されたカム軸間駆動チェーン036により他方のカム軸034を駆動するようになされている。
【0006】
そして、このカム軸駆動方式は、シリンダヘッドの左右にそれぞれ2本づつ配置されたカム軸を機関の左右両側にそれぞれ配置されたカム軸駆動装置により駆動するから、並列配置される気筒間にカム軸駆動チェーンのためのチェーン室を設ける必要性は排除されるものである。しかしながら、カム軸駆動のための駆動装置は2連必要とされ、これに伴う機関構造の複雑化は避けられず、また部品点数の増加を招き、その分コスト高となるものである。
【0007】
上述したような状況の中で、クランク軸の回転駆動力をカム軸に伝達するカム軸駆動機構は、シリンダブロックのシリンダ孔間に配置され、かつクランク軸の回転駆動力を車両の後方側のカム軸に伝達するようになされ、前記後方側カム軸に伝達された回転駆動力がさらにカム軸間の駆動力伝達機構を介して前方側のカム軸に伝達されるようになされたカム軸駆動方式の採用が前提とされて、機関構造の複雑化を招くことのない比較的単純な構造変更によりシリンダ部における冷却が効果的になされる空冷式内燃機関の改良構造の開発が待たれている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上述した課題を解決するための空冷式内燃機関の改良構造に関し、互いに並列に配置された複数のシリンダ孔を有するシリンダブロックと、該シリンダブロック上部に固定されるシリンダヘッドと、該シリンダヘッド上部で車両の前後方向に対し直交しかつ該前後に位置して互いに平行に並列配置される2本のカム軸と、クランク軸の回転駆動力をカム軸に伝達するカム軸駆動機構とを有する空冷式内燃機関において、前記前方側に位置するカム軸の下方に走行風を導入できる冷却空間が形成されていることを特徴とする。
【0009】
また、前記クランク軸の回転駆動力をカム軸に伝達するカム軸駆動機構は、前記シリンダブロックのシリンダ孔間に配置され、かつクランク軸の前記回転駆動力を車両の後方側のカム軸へ伝達する第1のカム軸駆動機構と、前記後方側カム軸に伝達された前記回転駆動力をさらに前方側のカム軸に伝達する第2のカム軸駆動機構とからなり、前記第1のカム軸駆動機構の前方でかつ前記第2のカム軸駆動機構の下方に走行風を導入できる冷却空間が形成されたことを特徴とする。
【0010】
さらに、前記カム軸駆動機構における回転駆動力の伝達はチェーンを用いてなされていることを特徴とし、また、前記内燃機関は並列した4つの前記シリンダ孔を有する4気筒であり、前記カム軸駆動機構は2番目のシリンダ孔と3番目のシリンダ孔間に配置されていることを特徴とする。さらに、前記シリンダヘッドにはシリンダヘッドカバーが取付けられ、該シリンダヘッドカバーは前記カム軸間が凹状に形成され、この凹状部分はその底部が開口されて該開口を通して前記冷却空間に連通されていることを特徴とする。
また、さらに、前記後方側カム軸に形成される前記第1のカム軸駆動機構の入力部の径は、前記第2のカム軸駆動機構の出力部の径より大きく形成されていることを特徴とする。
【0011】
そして、第2のカム軸駆動機構のチェーン張力を維持するためにテンショナが設けられ、該テンショナがチェーン間から外方へ向けて張力を付与することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の請求項1に係る発明は、互いに並列配置された複数のシリンダ孔を有するシリンダブロックと、該シリンダブロック上部に固定されるシリンダヘッドと、該シリンダヘッド上部で車両の前後方向に対し直交しかつ該前後に位置して互いに平行に並列配置される2本のカム軸と、クランク軸の回転駆動力をカム軸に伝達するカム軸駆動機構とを有する空冷式内燃機関において、前記前方側に位置するカム軸の下方に走行風を導入できる冷却空間が形成されているから、カム軸駆動機構周辺に配置されるシリンダ孔(気筒)に対し、冷却風を効率良く導くことが可能となり、特にカム軸駆動機構側のシリンダ孔形成面を冷却風に接触させることができるのでシリンダ孔を均一に冷却できる。
【0013】
本発明の請求項2に係る発明は、前記請求項1に記載の発明において、前記クランク軸の回転駆動力をカム軸に伝達するカム軸駆動機構は、前記シリンダブロックのシリンダ孔間に配置され、かつクランク軸の前記回転駆動力を車両の後方側のカム軸へ伝達する第1のカム軸駆動機構と、前記後方側カム軸に伝達された前記回転駆動力をさらに前方側のカム軸に伝達する第2のカム軸駆動機構とからなり、前記第1のカム軸駆動機構の前方でかつ前記第2のカム軸駆動機構の下方に走行風を導入できる冷却空間が形成されたから、冷却空間を大きく形成することが可能となり、カム軸駆動機構周辺に配置されるシリンダ孔に対し、冷却風をより効率良く導くことが可能となる。
【0014】
本発明の請求項3に係る発明は、前記請求項1に記載の発明において、前記カム軸駆動機構における回転駆動力の伝達はチェーンを用いてなされているから、構造の複雑化を招くことなく安価でしかも確実な駆動力の伝達が可能となる。
【0015】
本発明の請求項4に係る発明は、前記請求項1に記載の発明において、前記内燃機関は並列した4つの前記シリンダ孔を有する4気筒であり、前記カム軸駆動機構は2番目のシリンダ孔と3番目のシリンダ孔間に配置されているから、最外側のシリンダ孔(気筒)に比べ、冷却が困難であるシリンダ孔間の部位に冷却空間が形成されることになり、機関における冷却バランスがとれるので、冷却装置の大型化が避けられる。
【0016】
本発明の請求項5に係る発明は、前記請求項1に記載の発明において、前記シリンダヘッドにはシリンダヘッドカバーが取付けられ、該シリンダヘッドカバーは前記カム軸間が凹状に形成され、この凹状部分はその底部が開口されて該開口を通して前記冷却空間に連通されているから、シリンダブロック前面の冷却空間から冷却風をシリンダヘッドカバーの凹状部に導くことにより、プラグ装着座部を通る冷却風の出口と入口が形成され冷却風の循環が積極的に行なえる。
また、充分な冷却風を中間気筒のプラグ装着座部に当てることによって、プラグ座の温度や各部壁面温度を低減することが可能となり、さらに多気筒機関における外側気筒と中間気筒との熱的影響のバランスの是正が可能となる。
【0017】
本発明の請求項6に係る発明は、前記請求項1に記載の発明または請求項2に記載の発明において、前記後方側カム軸に形成される前記第1のカム軸駆動機構の入力部の径は、前記第2のカム軸駆動機構の出力部の径より大きく形成されているから、カム軸間駆動力伝達機構を小型化できるので、冷却空間の確保をより容易にすることができ、冷却効率が向上する。
【0018】
本発明の請求項7に係る発明は、前記請求項3に記載の発明において、前記第2のカム軸駆動機構のチェーン張力を維持するためにテンショナが設けられ、該テンショナがチェーン間から外方へ向けて張力を付与するから、シリンダヘッド外方にテンショナが突出しないので、該ヘッドがコンパクト化され、その外観性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
クランク軸の回転駆動力をカム軸に伝達するカム軸駆動機構は、シリンダブロックのシリンダ孔間に配置され、クランク軸の回転駆動力を車両の後方側のカム軸へ伝達する第1のカム軸駆動機構と、前記後方側カム軸に伝達された回転駆動力をさらに前方側のカム軸に伝達する第2のカム軸駆動機構からなり、前記第1のカム軸駆動機構の前方でかつ前記第2のカム軸駆動機構の下方に走行風を導入できる冷却空間が形成されて実施される。
【0020】
図1ないし図12に基づいて本発明の実施例について説明する。
本実施例の内燃機関Eが搭載される自動二輪車である車両50は、その全容は図示されず図1に示されるように機関Eの搭載部近傍の構造のみが図示されている。
【0021】
車両50は、通常の車両と同様、ヘッドパイプ、フロントフォーク、ハンドル、メインフレームさらには、シートレールやバックステイ、後輪を支持するスイングアーム等を備える車体フレーム構造を有している。
【0022】
そして、図1に図示される前記車両50に搭載される内燃機関Eはその側面視が断面図で示されており、該機関Eは空冷式の4サイクル並列4気筒機関であり、頭上弁式のツインカム機構(DOHC)が採用され、車両50への搭載時においてはそのシリンダE0の頭部排気側E2が走行方向を向き、吸気側E1は右上方を向くように配置されており、シリンダE0の上部から吸気管E11が右上方へと延び、この吸気管E11には図示されない気化器やエアクリーナが接続されている。また排気管E21はシリンダE0の前側から車体下方を通って後方へ延びている。
【0023】
機関EのシリンダE0はその下部がクランクケース1の上部に載置固定され、該シリンダE0は直接クランクケース1に固定されるシリンダブロック2と、このシリンダブロック2の上部にその下部が固定されるシリンダヘッド3と、さらに、シリンダヘッド3の上部を覆いかつ該ヘッド3に固定されるシリンダヘッドカバー4からなり、結局これら構造部がボルトにより互いに接合固定され一体化されることで構成されている。
【0024】
クランクケース1には、図2に図示されるように複数個所(6箇所)のジャーナル軸受部1aを介してクランク軸10が回転可能に支承されており、また、クランク軸10の4個所のクランクピン10aにはそれぞれコンロッド10bがその大端部10cを介して取付けられ、これらコンロッド10cの小端部10dにはピストンピン10eを介してそれぞれピストンPが取付けられ、これらピストンPは前記シリンダブロック2に形成されたシリンダ孔2aないし2d内を往復摺動する。そして、これらの構造は既によく知られたところである。
【0025】
また、クランク軸10にはその長手方向の図示における右寄りの位置にドライブギア10fが取付けられ、このギア10fは変速装置のメインシャフト11上で遊嵌されたドリブンギア11aと噛合い、該ドリブンギア11aからクラッチ11bを介して前記メインシャフト11に駆動力を伝達し、該駆動力はメインシャフト11とカウンタシャフト12上の変速ギアGの選択的なギアの噛合いを介してカウンタシャフト12に伝達され、さらにカウンタシャフト12に伝達された駆動力は駆動スプロケット12aにより駆動チェーン12bを介して図示されない車両走行用駆動輪である後輪に伝達される。
【0026】
メインシャフト11とカウンタシャフト12は共にクランク軸10と平行に延長し、それぞれその両端もしくは両端近傍においてクランクケース1に回転可能に軸受支持され、また、図3に図示されるように、メインシャフト11とカウンタシャフト12には該両シャフト11,12に平行かつ隣接してシフトドラム13が配置され、シフトドラム13もその両端においてクランクケース1に回転可能に軸受支持され、図示されない変速ペダル操作に連動して間歇的に回転するようになされている。
【0027】
変速ギアGの選択的な噛合いは、シフトドラム13の上述の変速ペダル操作に基づく間歇的な回転によりなされるが、該変速はシフトドラム13の外周面に設けられた3条のカム溝13a,13b,13cにそれぞれシフタ14の一端突部14aが嵌合され、該ドラム13の回転に応じてシフタ14がシフタ案内軸15に沿って左右動して、シフタ14他端の二股のフォーク14bを介して所望の変速のために所定の変速ギアGを移動することでなされる。
【0028】
シフトドラム13の図示右方端の軸受支持部13dに隣接するクランクケース1の構造部には、シフトドラム13の回転におけるニュートラル相当位置を検出するためのセンサ16が設けられ、センサ16は、その検出部16aがシフトドラム13の前記軸受支持部13d近傍外周部の該ドラム13の回転におけるニュートラル検出突部13eに当接するように前記ケース1の構造部に配設され、このセンサ16の配設は、該センサ16の軸線16bがシフトドラム13の回転軸線13fに対して傾斜した角度をもってなされている。このセンサ16の傾斜した配設は、内燃機関Eの巾方向の長さを抑えて機関Eのコンパクト化を実現するものである。
【0029】
再び図2を参照して、クランク軸10には、その長手方向中央部に並列して2つの径の異なるスプロケット10g,10hが設けられ、その大径のスプロケット10gはチェーン17により発電機18を駆動するものであるが(図1参照)、該発電機18には図示されない一方向クラッチを介した同軸の関係をもってスタータモータが接続されている。また、小径のスプロケット10hは後に詳しく説明されるチェーン19によりカム軸33,34を駆動するためのものであり、さらにその長手方向図示における左方端寄りの位置には、パルサロータ10iが取付けられている。
【0030】
クランクケース1の上部に載置固定されるシリンダブロック2は、図4に図示されるようにその上面視(平面視)において、車両50の前後方向に対して直交する方向に長い略矩形状の形状をなし、その長手方向に沿って図示されるように4つのシリンダ孔2aないし2dが並列配置され、これらシリンダ孔2aないし2dはシリンダブロック2の上下を貫通し、該シリンダ孔2aないし2d内には上述のピストンPが周知のように、また既述のように往復摺動可能に配置されている。
【0031】
そして、シリンダブロック2の長手方向中央部20には、上述したカム軸33,34駆動用のチェーン19が通過するための空間部21が形成され、この空間部21は前記ブロック2の長手方向中央部20の該ブロック2の巾方向やや後方寄りの位置で該ブロック2の上下を貫通しており、シリンダブロック2の上面視において巾方向に長い略矩形状をなしている。したがって、シリンダブロック2の4つのシリンダ孔2aないし2dは、該ブロック2の長手方向中央部20において互いに前記カム軸33,34駆動チェーン19のための空間部21により左右に2つづつ離間して配置されている。
【0032】
シリンダブロック2の外周面には図1,2等も参照して明らかなように多数の冷却フィンFが設けられている。冷却フィンFは、図4において図示される上面視と実質的に平行な面で所定の間隔をもって配設される複数の平面形成部からなり、シリンダブロック2の外周部、すなわちシリンダブロック2の前記長い側面X1,X2および短い側面Y1,Y2からそれぞれ外方へと向って所定長さで延出する複数枚の横方向フィンFとして形成されている。
【0033】
そして図4に図示されるように、冷却フィンFは、シリンダブロック2の長手方向両端に位置するシリンダ孔2a,2dにおいては、該ブロック2における長い側面X1,X2の両側面と短い側面Y1,Y2の一方の側面Y1もしくはY2の外周面に設けられており、その周囲の過半に冷却フィンが設けられる。これに対して該ブロック2の前記チェーン19のための空間部21に隣接したシリンダ孔2b,2cにおいては、該ブロック2の長い側面X1,X2の両側面に設けられるのみであり、その周囲のせいぜい半分に設けられるに過ぎず、この点からも充分な冷却対策がとれない一因を視ることができる。
【0034】
シリンダブロック2の上部に固定されるシリンダヘッド3は、その図5(a)に図示される所定の断面で示されるその平面視において、その外形形状が前記シリンダブロック2と同様略矩形状をなしており、図6にその長手方向断面(図5のA-A断面)の左方部のみが図示されるようにその下部にシリンダブロック2の4つのシリンダ孔2aないし2dに対応する燃焼室3aないし3dを形成するための4つの凹所3a1ないし3d1(図6には左方側の2つ、3a1と3b1のみが示されている)が形成されている。なお、図2も参照されたい。
【0035】
そして、図2、図6およびシリンダヘッド3の巾方向断面(図5のB-B断面)を図示する図7等の参照により明らかなように、シリンダヘッド3には、前記凹所3a1ないし3d1とシリンダブロック2のそれぞれのシリンダ孔2aないし2d上部とにより形成される前記燃焼室3aないし3dと、該燃焼室のそれぞれにおいて臨むように装着された点火プラグ3eと、これら燃焼室3aないし3dにおいてそれぞれ開口する吸・排気口3f,3gと、該吸・排気口3f,3gに連通する吸・排気通路3h,3iと、吸気通路3hに装着された図示されない燃料噴射装置、さらには、これら吸・排気口3f,3gの開閉を行なう吸・排気弁3k,3mと、これら吸・排気弁3k,3mの開閉作動をなすための動弁機構等が配置されている。
【0036】
図5(a)に図示されるようにシリンダヘッド3の所定断面における上面視において、シリンダヘッド3の長手方向中央部30でその巾方向後方寄りに位置して所定の巾と長さの該ヘッド3を上下で貫通するカム軸駆動チェーン19のための空間部31が設けられ、この空間部31は前記シリンダブロック2に設けられた該チェーン19のための空間部21とその位置が整合され、前記カム軸駆動チェーン19はクランク軸10からシリンダヘッド3の上部まで支障なく通過することができるようになされている。
【0037】
また、シリンダヘッド3の前記上面視におけるその長手方向中央部30の前方(排気側)、すなわち前記カム軸駆動チェーン19のための空間部31の長手方向中心線と同軸線上の該ヘッド3前方部には、該ヘッド3の前方から後方に向かって前記チェーン19のための空間部31前方の壁部に近接する位置にまで達する窪んだ部分32が設けられており、この窪んだ部分32は、図5(b)に図示されるように2本のスタッドボルトB,B間で上方がやや窪んだ頂部壁32aを有している。
【0038】
そして、窪み部32の頂部壁32aの上方は凹状の構造部とされ、この構造部を後述される2つのカム軸33,34間を駆動的に連結する車両の前後方向に指向して掛け渡されるチェーン36が通過するようになされ、この部分は実質的に後に説明されるシリンダヘッドカバー4の中央部40をその巾方向において横断するチェーンカバー41により覆われている。
【0039】
また、この窪み部32の頂部壁32aの下方壁の左右両側部には、図5(c)に図示されるように開口32bが設けられており、この左右の開口32bは図5(d)に図示のようにシリンダヘッド3の中央部30を挟んで左右に配置される点火プラグ3eの座部3e1上部凹状空間3e2への連通を介してさらに後述されるシリンダヘッドカバー4の凹状部分42b,43bの低部開口42c,43c(図12参照)へと連通している。
【0040】
点火プラグ3eの装着座部3e1上部の凹状空間3e2は、図5,7,12等から理解できるように実質的にシリンダヘッド3の中央部30を挟んで該ヘッド3の長手方向の左右に延びる上部が開口した溝状部分として形成されており、この左右に延びるそれぞれの溝状部分は2つの直線方向に並ぶ点火プラグ3eの装着座部3e1の上部を抜けてその左右外方端が該ヘッド3の長手方向左右端部を突き抜けている。
【0041】
そして、前記窪み部32と、その左右の開口32bは、車両50走行時の走行風の導入にきわめて有効に作用し、シリンダへッド3やシリンダブロック2の冷却に寄与するものである。走行風の導入による冷却作用については後に説明される。
【0042】
ところで、前記動弁機構は図1,2等の参照から理解できるように、端的には複数のカム33a,34aを備えた2本のカム軸33,34と、これらカム軸33,34を駆動するための駆動機構、前記カム33a,34aに当接してそのバルブステム部3k1,3m1を押動する吸・排気弁3k,3mのリフタ3k2,3m2等を含む弁作動機構等からなり、カム軸33,34は車両50の進行方向に対して直交するシリンダヘッド3の長手方向に沿って延伸し、かつ車両50の進行方向前後の位置関係をもって軸受部を介して回転可能に互いに平行に配置されている。
【0043】
2本のカム軸33,34のそれぞれに備えられるカム33a,34aは(図2参照)、上述のように吸・排気弁3k,3mの開閉作動のためにそのバルブリフタ3k2,3m2に当接されるものであり、したがって、該カム33a,34aは各吸・排気弁3k,3mのバルブステム3k1,3m1上端に対応して該カム軸33,34に配設され、本実施例においては車両50の後方側のカム軸33は吸気弁3kの開閉用カム33aが配設されたカム軸33である。
【0044】
また、車両50の前方側のカム軸34は排気弁3mの開閉用カム34aが配設されるカム軸34であり、そして、図2に図示されるように各燃焼室3aないし3dに対応してそれぞれ2つの吸気弁3kと2つの排気弁3mが配設される所謂4バルブ式であるから、2本のカム軸33,34にはそれぞれ8個のカム33a,34aが配設されている。
【0045】
そして、車両50の後方側に位置するカム軸33には、図1、図2の参照により明らかなように、その長手方向略中央部33bに2つの径が異なるスプロケット33c,33dが設けられており、その大径のスプロケット33cは既述のクランク軸10の長手方向略中央部に設けられた小径のスプロケット10hに対応しており、カム軸33の大径スプロケット33cの径はクランク軸10の小径スプロケット10hの径の丁度2倍の大きさとされている。
【0046】
両者スプロケット10h,33c間にはカム軸駆動チェーン19が掛け渡され、クランク軸10の回転駆動力がカム軸33に伝達されるようになされており、前記スプロケット10h,33cにおける両者の径はクランク軸10の回転数に対してカム軸33の回転数は丁度1/2となるようになされている。
【0047】
また、図1,2を参照して明らかなように、後方側カム軸33の長手方向略中央部33bに設けられた小径のスプロケット33dは、後方側カム軸33の回転駆動力を前方側カム軸34に伝達するためのチェーン36による駆動のために供されるスプロケットであり、したがって、前方側カム軸34には前記後方側カム軸33のスプロケット33dに対応して同様のスプロケット34dが設けられ、この2つのスプロケット33d,34dは互いに同径とされ、その径は後方側カム軸33の前記大径スプロケット33cの径よりは小さい。
【0048】
2つのスプロケット33d,34d間には駆動チェーン36、すなわち、カム軸間の駆動チェーン36が掛け渡され、これにより前後の両カム軸33,34は互いに該チェーン36を介して同速度で回転するようになされている。したがって、機関運転によるクランク軸10の回転駆動力はその1/2の回転速度をもって前記2つの駆動チェーン19,36を介して両カム軸33,34に伝達され、既述のように後方側カム軸33の回転によるカム33aのバルブリフタ3k2の押動で吸気弁3kが開閉作動され、また前方側カム軸34の回転によるカム34aのバルブリフタ3m2の押動で排気弁3mが開閉作動される。
【0049】
そして、図1に図示されるように上述のクランク軸10と両カム軸33,34間の駆動力の伝達をなすチェーン19には、チェーン伝動の円滑化のためのチェーン張力調節機構であるチェーンテンショナ19Aが設けられ、該テンショナ19Aにより機関後部の構造部にその一端部(図における下端部)が枢動可能に取付けられたテンショナスリッパ19A1がチェーン19の図示後方外側から押し当てられている。
【0050】
テンショナスリッパ19A1のチェーン19への押し当て力はテンショナ19Aにより適宜調節され該チェーン19の張力が調節される。また、カム軸33,34間の駆動チェーン36にはチェーン張力調節機構であるチェーンテンショナ36Aが設けられ、該テンショナ36Aによりシリンダヘッドカバー4にその一端が枢動可能に取付けられたテンショナスリッパ36A1がチェーン36に図示上方外側から押し当てられ、チェーン36の張力が調節される。
【0051】
チェーンテンショナ36Aに換えて図8,9,11に図示の別形式のテンショナ36Bの採用が可能である。このテンショナ36Bは、チェーン36の内側、すなわち、カム軸間駆動チェーン36の上下の回送部36a,36b間からチェーン36を外側に図8図示の上下方向において張出すように展張する形式ものであり、このために前記上下方向で互いにその相対間隔が調整されるチェーン36の回送における上方回送部36aを走行ガイドする上部ガイド36B1と、チェーン36の回送における下方回送部36bを走行ガイドする下部ガイド36B2とを備えるものである。
【0052】
そして、これら上部および下部のガイド36B1,36B2は、図9に図示されるようにそれぞれチェーン36の回送における走行方向に長い溝状のチェーンガイド部36B11,36B21を有し、上部ガイド36B1はピストン36B3に結合され、下部ガイド36B2はシリンダ36B4側の基体部36B0に結合されている。
【0053】
テンショナ36Bのシリンダ36B4は、シリンダヘッド3への取付けに供されるテンショナ36Bの基体部36B0と一体に形成されており、該基体部36B0が図8,9には図示されないが図11に上面視で図示される(点線図示)シリンダヘッド3に3箇所のボルトB1により固定されることでチェーン36に対する位置決めがなされ、このシリンダ36B4内に既述のピストン36B3が摺動可能に配置されている。ピストン36B3はその上方肉厚頭部36B31に既述のように上部ガイド36B1がネジ込み固定されている。
【0054】
また、ピストン36B3の下方はスカート部36B32とされ、このスカート部36B32で囲まれたシリンダ36B4内が中空部36B33とされており、この中空部36B33内にボール弁BVを位置せしめて供給弁装置Vが該シリンダ36B4の下部に配置され、供給弁装置Vのボール弁BVに通じるシリンダ軸線方向に延びる供給油路36B5の基部が環状油路を介して前記供給油路36B5に直交方向に延びる供給油路36B6の一端に連通し、該直交供給油路36B6の他端は縦長の油溜め室36B7の下部に連通している。
【0055】
縦長の油溜め室36B7の上方部には、空気等の気体が充填された体積可変の圧油の圧力変化を調整する可撓室36B8が設けられ、この油溜め室36B7への供給油路36B9が図10,11に図示されるシリンダヘッド3のカム軸間チェーン36のための空間部31の周辺部に形成される圧油供給油路31aに分岐油路を介して連通している。この圧油供給油路31aはカム軸等動弁系への圧油供給油路である。
【0056】
圧油供給油路31aは、図10に図示されるようにシリンダヘッド3の図示下方から上方へ向かって延び、該供給油路31aは、その下方開口がシリンダブロック2内を通過してその上部で開口する油路に連通すると共に、その比較的上方寄りの位置にシリンダヘッド3上部に対設配置される2本の前・後方側カム軸33,34にそれぞれ圧油を供給するための斜め上方に指向して分岐する2つの油路(図10においてはその一方のみが図示されている)31c,31cを分岐し、かつ細い水平な分岐油路31dを分岐する分岐部31bを備えている(図11参照)。
【0057】
そして、分岐部31bにおいて分岐した細い水平分岐油路31dの油路の端部は、前記テンショナ36Bの供給油路36B9の図示下部の開口39B91に連通している(図11参照)。したがって、圧油供給油路31aから細い水平分岐油路31dを通してテンショナ36Bへ圧油が供給されるが、この圧油の供給はテンショナ36Bのための供給油路の短縮化を実現する。なお、図11における33c,33d,34dはそれぞれチェーン駆動用のスプロケットである。また、駆動チェーン19,36としてはブッシュタイプのチェーンが使用される。
【0058】
テンショナ36Bのピストン36B3は、既述のようにシリンダ36B4内において摺動可能であり、ピストン36B3は、シリンダ36B4内が供給弁装置Vのボール弁BVの開放時に導入される供給油路を介した圧油で満たされることにより、その上部に結合された上部ガイド36B1に架かるチェーン36の張力による荷重をシリンダ36B4内の圧油により受留めることができ、チェーン36の振れは効果的に抑制される。
【0059】
ところで、シリンダヘッド3の上部は上述のシリンダヘッドカバー4により覆われている。シリンダヘッドカバー4は、図12の斜視図に図示されるように、シリンダヘッド3と同様車両50の前後方向に直交する方向に延びる全体としては略矩形状の長い構造を備えており、該カバー4は図12において点線で示される2本のカム軸33,34をその上方から略完全に覆うが、点火プラグ3e装着座部3e1上部の凹状空間3e2により形成される溝状部分に対応する部分は該カバー4が切除された開口とされ該溝状部分を覆うものではない。
【0060】
また、シリンダヘッドカバー4の中央部40におけるカム軸33に取付けられたスプロケット33c,33dを実質的に収容するチェーン19のための空間部31と、カム軸34駆動のためのスプロケット33d、34d間に掛け渡されたカム軸間駆動チェーン36の上方回送部36aは、実質的にシリンダヘッドカバー4の中央部40をその巾方向で横断するシリンダヘッドカバー4とは別構造であるチェーンカバー41により覆われている。
【0061】
したがって、シリンダヘッドカバー4はより具体的にはその平面視、図12から明らかなように略H字状の外形形状を呈し、該カバー4の長手方向中央部40のチェーンカバー41を挟んでその両側から延びる対をなすカバー部分42,42、43,43が、丁度カム軸33,34を覆う2つの上方に張出した長手方向に延びる山部42a,42aと43a,43aを形成して、この山部42a,42a間、43a,43a間が長手方向に延びる谷部とされ、該谷部を形成する凹状部分42b,43bはその底部がカバー4が切除された長い低部開口42c,43cとされ、この底部開口42c,43cが点火プラグ3e装着座部3e1上部の凹状空間3e2により形成される溝状部分に臨むように対向される。
【0062】
そして、このシリンダヘッドカバー4はシリンダヘッド3へのその装着状態において、該カバー4の前記対をなす凹状部分42b,43bの長い低部開口42c,43cが、既述のシリンダヘッド3の前方に形成された冷却空間である窪み部32の両側開口32bにそれぞれ連通され、この連通は、点火プラグ3eの座部3e1の上部凹状空間3e2を介してなされ、すなわち、前記溝状部分を介してなされている。
【0063】
ここで、車両走行時における走行風の流れの作用について説明する。
車両50の走行時には、シリンダヘッド3の前方中央部の上述した冷却空間である窪み部32に走行風が流れ込み、該窪み部32の周壁を冷却し(図5(a)および図5(b)の矢印イ,ロ参照)、この導入冷却風は、前記窪み部32の左右両側開口32bから左右に分流して流れ込み(図5(a)および図5(b)ないし(d)の矢印イ、ロ参照)、この冷却風の流れは点火プラグ3eの装着座部3e1上部凹状空間3e2に沿って流れ、もしくは該凹状空間3e2を通過してヘッドカバー4の山部42aと42a間および43aと43a間の対をなす凹状部分42b,43bの長い底部開口42c,43cに沿って流れる。
【0064】
そして、前記冷却風の流れはシリンダヘッド3の長手方向両端部(左右端)から流出して、シリンダヘッド3やシリンダブロック2の両側部や後部に回り込む流れを形成する。
【0065】
この冷却風の流れは窪み部32の周壁を冷却するので、排気側における冷却が効果的になされ、また、窪み部32は比較的深くチェーン19のための空間部31に近接する位置まで達しているので、該空間部31に隣接配置されたシリンダブロック2の中間部のシリンダ孔2b,2cの上部相当部近傍を冷却することができ、さらに点火プラグ座部3e1やその上部の凹状空間3e2周壁部を冷却し、シリンダヘッド3の上部を効果的に冷却し、さらにまた、シリンダヘッド3やシリンダブロック2の両側部や後部をも効果的に冷却する。
【0066】
このように、走行風はシリンダヘッド3の前方から冷却空間を形成する窪み部32を介して効果的に該シリンダヘッド3内や周辺部に導入され、この導入風が前記窪み部32周壁や点火プラグ3eの座部3e1やその上部凹状空間3e2の周壁部等をきわめて効果的に冷却するともに、シリンダヘッド3の側部や後部等各所をも効果的に冷却するから、その冷却効果はきわめて大きい。
【0067】
また、窪み部32周壁の冷却と、点火プラグ3eの装着座部3e1やその周辺部の冷却に関連して、結果としてシリンダブロック2のカム軸駆動チェーン19のための空間部21の存在により充分な冷却対策が採りにくい該空間部21隣接のシリンダ孔2b,2cにおける冷却も効果的に行なうことができる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明の内燃機関のシリンダ構造は、自動二輪車用の空冷式内燃機関のシリンダ構造に限られることなく、他の車両用空冷式内燃機関のシリンダ構造として適用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の改良が施される側断面で示される内燃機関と該機関が搭載された車両の一部構造を示す図である。
【図2】本発明の内燃機関の主要構造部を示す図である。
【図3】本発明の内燃機関の主要構造部の部分図である。
【図4】本発明のシリンダブロックを示す平面図である。
【図5】本発明のシリンダヘッドを示す図であり、(a)は、その所定の断面が示される平面図である。(b)は、(a)におけるC-C断面図であり、(c)は、(a)におけるD-D断面図であり、さらに(d)は、(a)におけるE-E断面図である。
【図6】図5(a)におけるA-A断面を示す図である。
【図7】図5(a)におけるB-B断面を示す図である。
【図8】本発明において別の形式のチェーンテンショナが使用された実施例を示す図である。
【図9】図8において使用されたチェーンテンショナの本体構造を示す図であり、(a)は正面断面図、(b)は(a)におけるF-F断面図である。
【図10】本発明の図8に図示される実施例に対応する供給油路を備えるシリンダヘッドの断面図である。
【図11】図10に図示されるシリンダヘッドの上面図である。
【図12】本発明のシリンダヘッドカバーを示す斜視図である。
【図13−a】従来の内燃機関のシリンダ部を示す図であり、該シリンダ部の側断面図である。
【図13−b】従来の内燃機関のシリンダ部を示す図であり、図13−aの上方から見た平面図である。
【図14−a】従来の他の内燃機関のシリンダ部の構造を示す図であり、該シリンダ部の側断面図である。
【図14−b】従来の内燃機関のシリンダ部の構造を示す図であり、図14−aの一部が断面とされた正面図である。
【符号の説明】
【0070】
10・・・クランク軸、11・・・メインシャフト、12・・・カウンタシャフト、13・・・シフトドラム、13e・・・ニュートラル位置検出部、16・・・センサ、16a・・・検出部、19・・・カム軸駆動チェーン、19A・・・チェーンテンショナ、2・・・シリンダブロック、3・・・シリンダヘッド、3e・・・点火プラグ、3e1・・・装着座部、3e2・・・凹状空間、31・・・チェーンのための空間部、31a・・・圧油供給油路、31b・・・分岐部、31c・・・油路、31d・・・細い水平な分岐油路、32・・・窪み部、32b・・・開口、33・・・後方側カム軸、34・・・前方側カム軸、36・・・カム軸間駆動チェーン、36A,36B・・・チェーンテンショナ、36B3・・・ピストン、36B4・・・シリンダ、36B5,36B6,36B9・・・供給油路、4・・・シリンダヘッドカバー、41・・・チェーンカバー、B1・・・ボルト、V・・・供給弁装置。
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関に関し、特に自動二輪車用の4サイクル空冷式内燃機関の機関冷却に視点がおかれた改良技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から良く知られたDOHC方式の内燃機関におけるクランク軸による2本のカム軸の駆動は、タイミングチェーンやベルトを用いてなされており、2つのカム軸のそれぞれに設けられたスプロケットに同一のタイミングチェーンやベルトが掛けられ、これにより2つのカム軸を同時に同速駆動するようになされている。そして、このカム軸の駆動方式はシリンダに並列配置される気筒間のチェーン室を前記チェーンやベルトが通過する(例えば、特許文献1参照)。
また、DOHC方式の空冷式内燃機関におけるクランク軸によるカム軸の駆動方式として、シリンダへッドの左右にそれぞれ2本のカム軸が配置され、これらカム軸を機関の左右両側にそれぞれ配置されたカム軸駆動装置により駆動するようになし、左右それぞれの2本のカム軸間の駆動が、クランク軸によりその一方のカム軸がチェーン駆動され、該一方のカム軸から他方のカム軸がチェーン駆動されることでなされるようにしたものが知られている。そして、このカム軸駆動方式は、機関の左右両側にそれぞれカム軸駆動装置が配置されることで実質的に前記気筒間におけるチェーン室の設置の必要性は排除されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特許第2593674号公報(第1頁、第1図)
【特許文献2】特公平5−55686号公報(第1頁−第2頁、第1図−第2図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
図13−a、図13−bに図示される上述の特許文献1に記載の発明のカム軸駆動方式は、シリンダ0E0の長手方向中央部030にシリンダ壁により構成されるカム軸駆動のためのタイミングチェーン016用の空間、すなわちチェーン室031が設けられ、該チェーン室031内をタイミングチェーン016が駆動回転する。タイミングチェーン016はクランク軸010に取付けられたスプロケット010hと2本のカム軸033,034にそれぞれ取付けられた同径のスプロケット033c,034c間に掛け渡され、クランク軸010の駆動回転が1本のタイミングチェーン016を介して2本のカム軸033,034に伝達されるようになされている。
【0004】
ところで、このカム軸駆動方式は4サイクルの水冷式内燃機関において採用されており、そのレイアウトを4サイクルの空冷式内燃機関に適用する場合、チェーン室に隣接する気筒における周辺スペースからして例えば冷却フィン等のための放熱面積が充分に確保できず、この点を視ても放熱のための対策が採りにくいことが解る。したがって、チェーン室に隣接する気筒における熱の放散はチェーン室に隣接する気筒に比べて充分になされないことになり、そのため、シリンダ部における不均一な熱的影響が発生することになる
【0005】
また、図14−a、図14−bに図示される上述の特許文献2に記載の発明のカム軸駆動方式はシリンダヘッド03の左右それぞれに2本づつカム軸033,034が配置されており、機関0Eの左右両側にそれぞれカム軸033,034の駆動装置が配置され、左右それぞれの2本のカム軸033,034の一方に取付けられた大径のスプロケット033cとクランク軸010のスプロケット010h間に掛け渡されたタイミングチェーン016により該一方のカム軸033を駆動し、該一方のカム軸033に取付けられた小径のスプロケット033dと他方のカム軸034に取付けられた該小径のスプロケット033dと同径のスプロケット034d間に掛け渡されたカム軸間駆動チェーン036により他方のカム軸034を駆動するようになされている。
【0006】
そして、このカム軸駆動方式は、シリンダヘッドの左右にそれぞれ2本づつ配置されたカム軸を機関の左右両側にそれぞれ配置されたカム軸駆動装置により駆動するから、並列配置される気筒間にカム軸駆動チェーンのためのチェーン室を設ける必要性は排除されるものである。しかしながら、カム軸駆動のための駆動装置は2連必要とされ、これに伴う機関構造の複雑化は避けられず、また部品点数の増加を招き、その分コスト高となるものである。
【0007】
上述したような状況の中で、クランク軸の回転駆動力をカム軸に伝達するカム軸駆動機構は、シリンダブロックのシリンダ孔間に配置され、かつクランク軸の回転駆動力を車両の後方側のカム軸に伝達するようになされ、前記後方側カム軸に伝達された回転駆動力がさらにカム軸間の駆動力伝達機構を介して前方側のカム軸に伝達されるようになされたカム軸駆動方式の採用が前提とされて、機関構造の複雑化を招くことのない比較的単純な構造変更によりシリンダ部における冷却が効果的になされる空冷式内燃機関の改良構造の開発が待たれている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上述した課題を解決するための空冷式内燃機関の改良構造に関し、互いに並列に配置された複数のシリンダ孔を有するシリンダブロックと、該シリンダブロック上部に固定されるシリンダヘッドと、該シリンダヘッド上部で車両の前後方向に対し直交しかつ該前後に位置して互いに平行に並列配置される2本のカム軸と、クランク軸の回転駆動力をカム軸に伝達するカム軸駆動機構とを有する空冷式内燃機関において、前記前方側に位置するカム軸の下方に走行風を導入できる冷却空間が形成されていることを特徴とする。
【0009】
また、前記クランク軸の回転駆動力をカム軸に伝達するカム軸駆動機構は、前記シリンダブロックのシリンダ孔間に配置され、かつクランク軸の前記回転駆動力を車両の後方側のカム軸へ伝達する第1のカム軸駆動機構と、前記後方側カム軸に伝達された前記回転駆動力をさらに前方側のカム軸に伝達する第2のカム軸駆動機構とからなり、前記第1のカム軸駆動機構の前方でかつ前記第2のカム軸駆動機構の下方に走行風を導入できる冷却空間が形成されたことを特徴とする。
【0010】
さらに、前記カム軸駆動機構における回転駆動力の伝達はチェーンを用いてなされていることを特徴とし、また、前記内燃機関は並列した4つの前記シリンダ孔を有する4気筒であり、前記カム軸駆動機構は2番目のシリンダ孔と3番目のシリンダ孔間に配置されていることを特徴とする。さらに、前記シリンダヘッドにはシリンダヘッドカバーが取付けられ、該シリンダヘッドカバーは前記カム軸間が凹状に形成され、この凹状部分はその底部が開口されて該開口を通して前記冷却空間に連通されていることを特徴とする。
また、さらに、前記後方側カム軸に形成される前記第1のカム軸駆動機構の入力部の径は、前記第2のカム軸駆動機構の出力部の径より大きく形成されていることを特徴とする。
【0011】
そして、第2のカム軸駆動機構のチェーン張力を維持するためにテンショナが設けられ、該テンショナがチェーン間から外方へ向けて張力を付与することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の請求項1に係る発明は、互いに並列配置された複数のシリンダ孔を有するシリンダブロックと、該シリンダブロック上部に固定されるシリンダヘッドと、該シリンダヘッド上部で車両の前後方向に対し直交しかつ該前後に位置して互いに平行に並列配置される2本のカム軸と、クランク軸の回転駆動力をカム軸に伝達するカム軸駆動機構とを有する空冷式内燃機関において、前記前方側に位置するカム軸の下方に走行風を導入できる冷却空間が形成されているから、カム軸駆動機構周辺に配置されるシリンダ孔(気筒)に対し、冷却風を効率良く導くことが可能となり、特にカム軸駆動機構側のシリンダ孔形成面を冷却風に接触させることができるのでシリンダ孔を均一に冷却できる。
【0013】
本発明の請求項2に係る発明は、前記請求項1に記載の発明において、前記クランク軸の回転駆動力をカム軸に伝達するカム軸駆動機構は、前記シリンダブロックのシリンダ孔間に配置され、かつクランク軸の前記回転駆動力を車両の後方側のカム軸へ伝達する第1のカム軸駆動機構と、前記後方側カム軸に伝達された前記回転駆動力をさらに前方側のカム軸に伝達する第2のカム軸駆動機構とからなり、前記第1のカム軸駆動機構の前方でかつ前記第2のカム軸駆動機構の下方に走行風を導入できる冷却空間が形成されたから、冷却空間を大きく形成することが可能となり、カム軸駆動機構周辺に配置されるシリンダ孔に対し、冷却風をより効率良く導くことが可能となる。
【0014】
本発明の請求項3に係る発明は、前記請求項1に記載の発明において、前記カム軸駆動機構における回転駆動力の伝達はチェーンを用いてなされているから、構造の複雑化を招くことなく安価でしかも確実な駆動力の伝達が可能となる。
【0015】
本発明の請求項4に係る発明は、前記請求項1に記載の発明において、前記内燃機関は並列した4つの前記シリンダ孔を有する4気筒であり、前記カム軸駆動機構は2番目のシリンダ孔と3番目のシリンダ孔間に配置されているから、最外側のシリンダ孔(気筒)に比べ、冷却が困難であるシリンダ孔間の部位に冷却空間が形成されることになり、機関における冷却バランスがとれるので、冷却装置の大型化が避けられる。
【0016】
本発明の請求項5に係る発明は、前記請求項1に記載の発明において、前記シリンダヘッドにはシリンダヘッドカバーが取付けられ、該シリンダヘッドカバーは前記カム軸間が凹状に形成され、この凹状部分はその底部が開口されて該開口を通して前記冷却空間に連通されているから、シリンダブロック前面の冷却空間から冷却風をシリンダヘッドカバーの凹状部に導くことにより、プラグ装着座部を通る冷却風の出口と入口が形成され冷却風の循環が積極的に行なえる。
また、充分な冷却風を中間気筒のプラグ装着座部に当てることによって、プラグ座の温度や各部壁面温度を低減することが可能となり、さらに多気筒機関における外側気筒と中間気筒との熱的影響のバランスの是正が可能となる。
【0017】
本発明の請求項6に係る発明は、前記請求項1に記載の発明または請求項2に記載の発明において、前記後方側カム軸に形成される前記第1のカム軸駆動機構の入力部の径は、前記第2のカム軸駆動機構の出力部の径より大きく形成されているから、カム軸間駆動力伝達機構を小型化できるので、冷却空間の確保をより容易にすることができ、冷却効率が向上する。
【0018】
本発明の請求項7に係る発明は、前記請求項3に記載の発明において、前記第2のカム軸駆動機構のチェーン張力を維持するためにテンショナが設けられ、該テンショナがチェーン間から外方へ向けて張力を付与するから、シリンダヘッド外方にテンショナが突出しないので、該ヘッドがコンパクト化され、その外観性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
クランク軸の回転駆動力をカム軸に伝達するカム軸駆動機構は、シリンダブロックのシリンダ孔間に配置され、クランク軸の回転駆動力を車両の後方側のカム軸へ伝達する第1のカム軸駆動機構と、前記後方側カム軸に伝達された回転駆動力をさらに前方側のカム軸に伝達する第2のカム軸駆動機構からなり、前記第1のカム軸駆動機構の前方でかつ前記第2のカム軸駆動機構の下方に走行風を導入できる冷却空間が形成されて実施される。
【0020】
図1ないし図12に基づいて本発明の実施例について説明する。
本実施例の内燃機関Eが搭載される自動二輪車である車両50は、その全容は図示されず図1に示されるように機関Eの搭載部近傍の構造のみが図示されている。
【0021】
車両50は、通常の車両と同様、ヘッドパイプ、フロントフォーク、ハンドル、メインフレームさらには、シートレールやバックステイ、後輪を支持するスイングアーム等を備える車体フレーム構造を有している。
【0022】
そして、図1に図示される前記車両50に搭載される内燃機関Eはその側面視が断面図で示されており、該機関Eは空冷式の4サイクル並列4気筒機関であり、頭上弁式のツインカム機構(DOHC)が採用され、車両50への搭載時においてはそのシリンダE0の頭部排気側E2が走行方向を向き、吸気側E1は右上方を向くように配置されており、シリンダE0の上部から吸気管E11が右上方へと延び、この吸気管E11には図示されない気化器やエアクリーナが接続されている。また排気管E21はシリンダE0の前側から車体下方を通って後方へ延びている。
【0023】
機関EのシリンダE0はその下部がクランクケース1の上部に載置固定され、該シリンダE0は直接クランクケース1に固定されるシリンダブロック2と、このシリンダブロック2の上部にその下部が固定されるシリンダヘッド3と、さらに、シリンダヘッド3の上部を覆いかつ該ヘッド3に固定されるシリンダヘッドカバー4からなり、結局これら構造部がボルトにより互いに接合固定され一体化されることで構成されている。
【0024】
クランクケース1には、図2に図示されるように複数個所(6箇所)のジャーナル軸受部1aを介してクランク軸10が回転可能に支承されており、また、クランク軸10の4個所のクランクピン10aにはそれぞれコンロッド10bがその大端部10cを介して取付けられ、これらコンロッド10cの小端部10dにはピストンピン10eを介してそれぞれピストンPが取付けられ、これらピストンPは前記シリンダブロック2に形成されたシリンダ孔2aないし2d内を往復摺動する。そして、これらの構造は既によく知られたところである。
【0025】
また、クランク軸10にはその長手方向の図示における右寄りの位置にドライブギア10fが取付けられ、このギア10fは変速装置のメインシャフト11上で遊嵌されたドリブンギア11aと噛合い、該ドリブンギア11aからクラッチ11bを介して前記メインシャフト11に駆動力を伝達し、該駆動力はメインシャフト11とカウンタシャフト12上の変速ギアGの選択的なギアの噛合いを介してカウンタシャフト12に伝達され、さらにカウンタシャフト12に伝達された駆動力は駆動スプロケット12aにより駆動チェーン12bを介して図示されない車両走行用駆動輪である後輪に伝達される。
【0026】
メインシャフト11とカウンタシャフト12は共にクランク軸10と平行に延長し、それぞれその両端もしくは両端近傍においてクランクケース1に回転可能に軸受支持され、また、図3に図示されるように、メインシャフト11とカウンタシャフト12には該両シャフト11,12に平行かつ隣接してシフトドラム13が配置され、シフトドラム13もその両端においてクランクケース1に回転可能に軸受支持され、図示されない変速ペダル操作に連動して間歇的に回転するようになされている。
【0027】
変速ギアGの選択的な噛合いは、シフトドラム13の上述の変速ペダル操作に基づく間歇的な回転によりなされるが、該変速はシフトドラム13の外周面に設けられた3条のカム溝13a,13b,13cにそれぞれシフタ14の一端突部14aが嵌合され、該ドラム13の回転に応じてシフタ14がシフタ案内軸15に沿って左右動して、シフタ14他端の二股のフォーク14bを介して所望の変速のために所定の変速ギアGを移動することでなされる。
【0028】
シフトドラム13の図示右方端の軸受支持部13dに隣接するクランクケース1の構造部には、シフトドラム13の回転におけるニュートラル相当位置を検出するためのセンサ16が設けられ、センサ16は、その検出部16aがシフトドラム13の前記軸受支持部13d近傍外周部の該ドラム13の回転におけるニュートラル検出突部13eに当接するように前記ケース1の構造部に配設され、このセンサ16の配設は、該センサ16の軸線16bがシフトドラム13の回転軸線13fに対して傾斜した角度をもってなされている。このセンサ16の傾斜した配設は、内燃機関Eの巾方向の長さを抑えて機関Eのコンパクト化を実現するものである。
【0029】
再び図2を参照して、クランク軸10には、その長手方向中央部に並列して2つの径の異なるスプロケット10g,10hが設けられ、その大径のスプロケット10gはチェーン17により発電機18を駆動するものであるが(図1参照)、該発電機18には図示されない一方向クラッチを介した同軸の関係をもってスタータモータが接続されている。また、小径のスプロケット10hは後に詳しく説明されるチェーン19によりカム軸33,34を駆動するためのものであり、さらにその長手方向図示における左方端寄りの位置には、パルサロータ10iが取付けられている。
【0030】
クランクケース1の上部に載置固定されるシリンダブロック2は、図4に図示されるようにその上面視(平面視)において、車両50の前後方向に対して直交する方向に長い略矩形状の形状をなし、その長手方向に沿って図示されるように4つのシリンダ孔2aないし2dが並列配置され、これらシリンダ孔2aないし2dはシリンダブロック2の上下を貫通し、該シリンダ孔2aないし2d内には上述のピストンPが周知のように、また既述のように往復摺動可能に配置されている。
【0031】
そして、シリンダブロック2の長手方向中央部20には、上述したカム軸33,34駆動用のチェーン19が通過するための空間部21が形成され、この空間部21は前記ブロック2の長手方向中央部20の該ブロック2の巾方向やや後方寄りの位置で該ブロック2の上下を貫通しており、シリンダブロック2の上面視において巾方向に長い略矩形状をなしている。したがって、シリンダブロック2の4つのシリンダ孔2aないし2dは、該ブロック2の長手方向中央部20において互いに前記カム軸33,34駆動チェーン19のための空間部21により左右に2つづつ離間して配置されている。
【0032】
シリンダブロック2の外周面には図1,2等も参照して明らかなように多数の冷却フィンFが設けられている。冷却フィンFは、図4において図示される上面視と実質的に平行な面で所定の間隔をもって配設される複数の平面形成部からなり、シリンダブロック2の外周部、すなわちシリンダブロック2の前記長い側面X1,X2および短い側面Y1,Y2からそれぞれ外方へと向って所定長さで延出する複数枚の横方向フィンFとして形成されている。
【0033】
そして図4に図示されるように、冷却フィンFは、シリンダブロック2の長手方向両端に位置するシリンダ孔2a,2dにおいては、該ブロック2における長い側面X1,X2の両側面と短い側面Y1,Y2の一方の側面Y1もしくはY2の外周面に設けられており、その周囲の過半に冷却フィンが設けられる。これに対して該ブロック2の前記チェーン19のための空間部21に隣接したシリンダ孔2b,2cにおいては、該ブロック2の長い側面X1,X2の両側面に設けられるのみであり、その周囲のせいぜい半分に設けられるに過ぎず、この点からも充分な冷却対策がとれない一因を視ることができる。
【0034】
シリンダブロック2の上部に固定されるシリンダヘッド3は、その図5(a)に図示される所定の断面で示されるその平面視において、その外形形状が前記シリンダブロック2と同様略矩形状をなしており、図6にその長手方向断面(図5のA-A断面)の左方部のみが図示されるようにその下部にシリンダブロック2の4つのシリンダ孔2aないし2dに対応する燃焼室3aないし3dを形成するための4つの凹所3a1ないし3d1(図6には左方側の2つ、3a1と3b1のみが示されている)が形成されている。なお、図2も参照されたい。
【0035】
そして、図2、図6およびシリンダヘッド3の巾方向断面(図5のB-B断面)を図示する図7等の参照により明らかなように、シリンダヘッド3には、前記凹所3a1ないし3d1とシリンダブロック2のそれぞれのシリンダ孔2aないし2d上部とにより形成される前記燃焼室3aないし3dと、該燃焼室のそれぞれにおいて臨むように装着された点火プラグ3eと、これら燃焼室3aないし3dにおいてそれぞれ開口する吸・排気口3f,3gと、該吸・排気口3f,3gに連通する吸・排気通路3h,3iと、吸気通路3hに装着された図示されない燃料噴射装置、さらには、これら吸・排気口3f,3gの開閉を行なう吸・排気弁3k,3mと、これら吸・排気弁3k,3mの開閉作動をなすための動弁機構等が配置されている。
【0036】
図5(a)に図示されるようにシリンダヘッド3の所定断面における上面視において、シリンダヘッド3の長手方向中央部30でその巾方向後方寄りに位置して所定の巾と長さの該ヘッド3を上下で貫通するカム軸駆動チェーン19のための空間部31が設けられ、この空間部31は前記シリンダブロック2に設けられた該チェーン19のための空間部21とその位置が整合され、前記カム軸駆動チェーン19はクランク軸10からシリンダヘッド3の上部まで支障なく通過することができるようになされている。
【0037】
また、シリンダヘッド3の前記上面視におけるその長手方向中央部30の前方(排気側)、すなわち前記カム軸駆動チェーン19のための空間部31の長手方向中心線と同軸線上の該ヘッド3前方部には、該ヘッド3の前方から後方に向かって前記チェーン19のための空間部31前方の壁部に近接する位置にまで達する窪んだ部分32が設けられており、この窪んだ部分32は、図5(b)に図示されるように2本のスタッドボルトB,B間で上方がやや窪んだ頂部壁32aを有している。
【0038】
そして、窪み部32の頂部壁32aの上方は凹状の構造部とされ、この構造部を後述される2つのカム軸33,34間を駆動的に連結する車両の前後方向に指向して掛け渡されるチェーン36が通過するようになされ、この部分は実質的に後に説明されるシリンダヘッドカバー4の中央部40をその巾方向において横断するチェーンカバー41により覆われている。
【0039】
また、この窪み部32の頂部壁32aの下方壁の左右両側部には、図5(c)に図示されるように開口32bが設けられており、この左右の開口32bは図5(d)に図示のようにシリンダヘッド3の中央部30を挟んで左右に配置される点火プラグ3eの座部3e1上部凹状空間3e2への連通を介してさらに後述されるシリンダヘッドカバー4の凹状部分42b,43bの低部開口42c,43c(図12参照)へと連通している。
【0040】
点火プラグ3eの装着座部3e1上部の凹状空間3e2は、図5,7,12等から理解できるように実質的にシリンダヘッド3の中央部30を挟んで該ヘッド3の長手方向の左右に延びる上部が開口した溝状部分として形成されており、この左右に延びるそれぞれの溝状部分は2つの直線方向に並ぶ点火プラグ3eの装着座部3e1の上部を抜けてその左右外方端が該ヘッド3の長手方向左右端部を突き抜けている。
【0041】
そして、前記窪み部32と、その左右の開口32bは、車両50走行時の走行風の導入にきわめて有効に作用し、シリンダへッド3やシリンダブロック2の冷却に寄与するものである。走行風の導入による冷却作用については後に説明される。
【0042】
ところで、前記動弁機構は図1,2等の参照から理解できるように、端的には複数のカム33a,34aを備えた2本のカム軸33,34と、これらカム軸33,34を駆動するための駆動機構、前記カム33a,34aに当接してそのバルブステム部3k1,3m1を押動する吸・排気弁3k,3mのリフタ3k2,3m2等を含む弁作動機構等からなり、カム軸33,34は車両50の進行方向に対して直交するシリンダヘッド3の長手方向に沿って延伸し、かつ車両50の進行方向前後の位置関係をもって軸受部を介して回転可能に互いに平行に配置されている。
【0043】
2本のカム軸33,34のそれぞれに備えられるカム33a,34aは(図2参照)、上述のように吸・排気弁3k,3mの開閉作動のためにそのバルブリフタ3k2,3m2に当接されるものであり、したがって、該カム33a,34aは各吸・排気弁3k,3mのバルブステム3k1,3m1上端に対応して該カム軸33,34に配設され、本実施例においては車両50の後方側のカム軸33は吸気弁3kの開閉用カム33aが配設されたカム軸33である。
【0044】
また、車両50の前方側のカム軸34は排気弁3mの開閉用カム34aが配設されるカム軸34であり、そして、図2に図示されるように各燃焼室3aないし3dに対応してそれぞれ2つの吸気弁3kと2つの排気弁3mが配設される所謂4バルブ式であるから、2本のカム軸33,34にはそれぞれ8個のカム33a,34aが配設されている。
【0045】
そして、車両50の後方側に位置するカム軸33には、図1、図2の参照により明らかなように、その長手方向略中央部33bに2つの径が異なるスプロケット33c,33dが設けられており、その大径のスプロケット33cは既述のクランク軸10の長手方向略中央部に設けられた小径のスプロケット10hに対応しており、カム軸33の大径スプロケット33cの径はクランク軸10の小径スプロケット10hの径の丁度2倍の大きさとされている。
【0046】
両者スプロケット10h,33c間にはカム軸駆動チェーン19が掛け渡され、クランク軸10の回転駆動力がカム軸33に伝達されるようになされており、前記スプロケット10h,33cにおける両者の径はクランク軸10の回転数に対してカム軸33の回転数は丁度1/2となるようになされている。
【0047】
また、図1,2を参照して明らかなように、後方側カム軸33の長手方向略中央部33bに設けられた小径のスプロケット33dは、後方側カム軸33の回転駆動力を前方側カム軸34に伝達するためのチェーン36による駆動のために供されるスプロケットであり、したがって、前方側カム軸34には前記後方側カム軸33のスプロケット33dに対応して同様のスプロケット34dが設けられ、この2つのスプロケット33d,34dは互いに同径とされ、その径は後方側カム軸33の前記大径スプロケット33cの径よりは小さい。
【0048】
2つのスプロケット33d,34d間には駆動チェーン36、すなわち、カム軸間の駆動チェーン36が掛け渡され、これにより前後の両カム軸33,34は互いに該チェーン36を介して同速度で回転するようになされている。したがって、機関運転によるクランク軸10の回転駆動力はその1/2の回転速度をもって前記2つの駆動チェーン19,36を介して両カム軸33,34に伝達され、既述のように後方側カム軸33の回転によるカム33aのバルブリフタ3k2の押動で吸気弁3kが開閉作動され、また前方側カム軸34の回転によるカム34aのバルブリフタ3m2の押動で排気弁3mが開閉作動される。
【0049】
そして、図1に図示されるように上述のクランク軸10と両カム軸33,34間の駆動力の伝達をなすチェーン19には、チェーン伝動の円滑化のためのチェーン張力調節機構であるチェーンテンショナ19Aが設けられ、該テンショナ19Aにより機関後部の構造部にその一端部(図における下端部)が枢動可能に取付けられたテンショナスリッパ19A1がチェーン19の図示後方外側から押し当てられている。
【0050】
テンショナスリッパ19A1のチェーン19への押し当て力はテンショナ19Aにより適宜調節され該チェーン19の張力が調節される。また、カム軸33,34間の駆動チェーン36にはチェーン張力調節機構であるチェーンテンショナ36Aが設けられ、該テンショナ36Aによりシリンダヘッドカバー4にその一端が枢動可能に取付けられたテンショナスリッパ36A1がチェーン36に図示上方外側から押し当てられ、チェーン36の張力が調節される。
【0051】
チェーンテンショナ36Aに換えて図8,9,11に図示の別形式のテンショナ36Bの採用が可能である。このテンショナ36Bは、チェーン36の内側、すなわち、カム軸間駆動チェーン36の上下の回送部36a,36b間からチェーン36を外側に図8図示の上下方向において張出すように展張する形式ものであり、このために前記上下方向で互いにその相対間隔が調整されるチェーン36の回送における上方回送部36aを走行ガイドする上部ガイド36B1と、チェーン36の回送における下方回送部36bを走行ガイドする下部ガイド36B2とを備えるものである。
【0052】
そして、これら上部および下部のガイド36B1,36B2は、図9に図示されるようにそれぞれチェーン36の回送における走行方向に長い溝状のチェーンガイド部36B11,36B21を有し、上部ガイド36B1はピストン36B3に結合され、下部ガイド36B2はシリンダ36B4側の基体部36B0に結合されている。
【0053】
テンショナ36Bのシリンダ36B4は、シリンダヘッド3への取付けに供されるテンショナ36Bの基体部36B0と一体に形成されており、該基体部36B0が図8,9には図示されないが図11に上面視で図示される(点線図示)シリンダヘッド3に3箇所のボルトB1により固定されることでチェーン36に対する位置決めがなされ、このシリンダ36B4内に既述のピストン36B3が摺動可能に配置されている。ピストン36B3はその上方肉厚頭部36B31に既述のように上部ガイド36B1がネジ込み固定されている。
【0054】
また、ピストン36B3の下方はスカート部36B32とされ、このスカート部36B32で囲まれたシリンダ36B4内が中空部36B33とされており、この中空部36B33内にボール弁BVを位置せしめて供給弁装置Vが該シリンダ36B4の下部に配置され、供給弁装置Vのボール弁BVに通じるシリンダ軸線方向に延びる供給油路36B5の基部が環状油路を介して前記供給油路36B5に直交方向に延びる供給油路36B6の一端に連通し、該直交供給油路36B6の他端は縦長の油溜め室36B7の下部に連通している。
【0055】
縦長の油溜め室36B7の上方部には、空気等の気体が充填された体積可変の圧油の圧力変化を調整する可撓室36B8が設けられ、この油溜め室36B7への供給油路36B9が図10,11に図示されるシリンダヘッド3のカム軸間チェーン36のための空間部31の周辺部に形成される圧油供給油路31aに分岐油路を介して連通している。この圧油供給油路31aはカム軸等動弁系への圧油供給油路である。
【0056】
圧油供給油路31aは、図10に図示されるようにシリンダヘッド3の図示下方から上方へ向かって延び、該供給油路31aは、その下方開口がシリンダブロック2内を通過してその上部で開口する油路に連通すると共に、その比較的上方寄りの位置にシリンダヘッド3上部に対設配置される2本の前・後方側カム軸33,34にそれぞれ圧油を供給するための斜め上方に指向して分岐する2つの油路(図10においてはその一方のみが図示されている)31c,31cを分岐し、かつ細い水平な分岐油路31dを分岐する分岐部31bを備えている(図11参照)。
【0057】
そして、分岐部31bにおいて分岐した細い水平分岐油路31dの油路の端部は、前記テンショナ36Bの供給油路36B9の図示下部の開口39B91に連通している(図11参照)。したがって、圧油供給油路31aから細い水平分岐油路31dを通してテンショナ36Bへ圧油が供給されるが、この圧油の供給はテンショナ36Bのための供給油路の短縮化を実現する。なお、図11における33c,33d,34dはそれぞれチェーン駆動用のスプロケットである。また、駆動チェーン19,36としてはブッシュタイプのチェーンが使用される。
【0058】
テンショナ36Bのピストン36B3は、既述のようにシリンダ36B4内において摺動可能であり、ピストン36B3は、シリンダ36B4内が供給弁装置Vのボール弁BVの開放時に導入される供給油路を介した圧油で満たされることにより、その上部に結合された上部ガイド36B1に架かるチェーン36の張力による荷重をシリンダ36B4内の圧油により受留めることができ、チェーン36の振れは効果的に抑制される。
【0059】
ところで、シリンダヘッド3の上部は上述のシリンダヘッドカバー4により覆われている。シリンダヘッドカバー4は、図12の斜視図に図示されるように、シリンダヘッド3と同様車両50の前後方向に直交する方向に延びる全体としては略矩形状の長い構造を備えており、該カバー4は図12において点線で示される2本のカム軸33,34をその上方から略完全に覆うが、点火プラグ3e装着座部3e1上部の凹状空間3e2により形成される溝状部分に対応する部分は該カバー4が切除された開口とされ該溝状部分を覆うものではない。
【0060】
また、シリンダヘッドカバー4の中央部40におけるカム軸33に取付けられたスプロケット33c,33dを実質的に収容するチェーン19のための空間部31と、カム軸34駆動のためのスプロケット33d、34d間に掛け渡されたカム軸間駆動チェーン36の上方回送部36aは、実質的にシリンダヘッドカバー4の中央部40をその巾方向で横断するシリンダヘッドカバー4とは別構造であるチェーンカバー41により覆われている。
【0061】
したがって、シリンダヘッドカバー4はより具体的にはその平面視、図12から明らかなように略H字状の外形形状を呈し、該カバー4の長手方向中央部40のチェーンカバー41を挟んでその両側から延びる対をなすカバー部分42,42、43,43が、丁度カム軸33,34を覆う2つの上方に張出した長手方向に延びる山部42a,42aと43a,43aを形成して、この山部42a,42a間、43a,43a間が長手方向に延びる谷部とされ、該谷部を形成する凹状部分42b,43bはその底部がカバー4が切除された長い低部開口42c,43cとされ、この底部開口42c,43cが点火プラグ3e装着座部3e1上部の凹状空間3e2により形成される溝状部分に臨むように対向される。
【0062】
そして、このシリンダヘッドカバー4はシリンダヘッド3へのその装着状態において、該カバー4の前記対をなす凹状部分42b,43bの長い低部開口42c,43cが、既述のシリンダヘッド3の前方に形成された冷却空間である窪み部32の両側開口32bにそれぞれ連通され、この連通は、点火プラグ3eの座部3e1の上部凹状空間3e2を介してなされ、すなわち、前記溝状部分を介してなされている。
【0063】
ここで、車両走行時における走行風の流れの作用について説明する。
車両50の走行時には、シリンダヘッド3の前方中央部の上述した冷却空間である窪み部32に走行風が流れ込み、該窪み部32の周壁を冷却し(図5(a)および図5(b)の矢印イ,ロ参照)、この導入冷却風は、前記窪み部32の左右両側開口32bから左右に分流して流れ込み(図5(a)および図5(b)ないし(d)の矢印イ、ロ参照)、この冷却風の流れは点火プラグ3eの装着座部3e1上部凹状空間3e2に沿って流れ、もしくは該凹状空間3e2を通過してヘッドカバー4の山部42aと42a間および43aと43a間の対をなす凹状部分42b,43bの長い底部開口42c,43cに沿って流れる。
【0064】
そして、前記冷却風の流れはシリンダヘッド3の長手方向両端部(左右端)から流出して、シリンダヘッド3やシリンダブロック2の両側部や後部に回り込む流れを形成する。
【0065】
この冷却風の流れは窪み部32の周壁を冷却するので、排気側における冷却が効果的になされ、また、窪み部32は比較的深くチェーン19のための空間部31に近接する位置まで達しているので、該空間部31に隣接配置されたシリンダブロック2の中間部のシリンダ孔2b,2cの上部相当部近傍を冷却することができ、さらに点火プラグ座部3e1やその上部の凹状空間3e2周壁部を冷却し、シリンダヘッド3の上部を効果的に冷却し、さらにまた、シリンダヘッド3やシリンダブロック2の両側部や後部をも効果的に冷却する。
【0066】
このように、走行風はシリンダヘッド3の前方から冷却空間を形成する窪み部32を介して効果的に該シリンダヘッド3内や周辺部に導入され、この導入風が前記窪み部32周壁や点火プラグ3eの座部3e1やその上部凹状空間3e2の周壁部等をきわめて効果的に冷却するともに、シリンダヘッド3の側部や後部等各所をも効果的に冷却するから、その冷却効果はきわめて大きい。
【0067】
また、窪み部32周壁の冷却と、点火プラグ3eの装着座部3e1やその周辺部の冷却に関連して、結果としてシリンダブロック2のカム軸駆動チェーン19のための空間部21の存在により充分な冷却対策が採りにくい該空間部21隣接のシリンダ孔2b,2cにおける冷却も効果的に行なうことができる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明の内燃機関のシリンダ構造は、自動二輪車用の空冷式内燃機関のシリンダ構造に限られることなく、他の車両用空冷式内燃機関のシリンダ構造として適用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の改良が施される側断面で示される内燃機関と該機関が搭載された車両の一部構造を示す図である。
【図2】本発明の内燃機関の主要構造部を示す図である。
【図3】本発明の内燃機関の主要構造部の部分図である。
【図4】本発明のシリンダブロックを示す平面図である。
【図5】本発明のシリンダヘッドを示す図であり、(a)は、その所定の断面が示される平面図である。(b)は、(a)におけるC-C断面図であり、(c)は、(a)におけるD-D断面図であり、さらに(d)は、(a)におけるE-E断面図である。
【図6】図5(a)におけるA-A断面を示す図である。
【図7】図5(a)におけるB-B断面を示す図である。
【図8】本発明において別の形式のチェーンテンショナが使用された実施例を示す図である。
【図9】図8において使用されたチェーンテンショナの本体構造を示す図であり、(a)は正面断面図、(b)は(a)におけるF-F断面図である。
【図10】本発明の図8に図示される実施例に対応する供給油路を備えるシリンダヘッドの断面図である。
【図11】図10に図示されるシリンダヘッドの上面図である。
【図12】本発明のシリンダヘッドカバーを示す斜視図である。
【図13−a】従来の内燃機関のシリンダ部を示す図であり、該シリンダ部の側断面図である。
【図13−b】従来の内燃機関のシリンダ部を示す図であり、図13−aの上方から見た平面図である。
【図14−a】従来の他の内燃機関のシリンダ部の構造を示す図であり、該シリンダ部の側断面図である。
【図14−b】従来の内燃機関のシリンダ部の構造を示す図であり、図14−aの一部が断面とされた正面図である。
【符号の説明】
【0070】
10・・・クランク軸、11・・・メインシャフト、12・・・カウンタシャフト、13・・・シフトドラム、13e・・・ニュートラル位置検出部、16・・・センサ、16a・・・検出部、19・・・カム軸駆動チェーン、19A・・・チェーンテンショナ、2・・・シリンダブロック、3・・・シリンダヘッド、3e・・・点火プラグ、3e1・・・装着座部、3e2・・・凹状空間、31・・・チェーンのための空間部、31a・・・圧油供給油路、31b・・・分岐部、31c・・・油路、31d・・・細い水平な分岐油路、32・・・窪み部、32b・・・開口、33・・・後方側カム軸、34・・・前方側カム軸、36・・・カム軸間駆動チェーン、36A,36B・・・チェーンテンショナ、36B3・・・ピストン、36B4・・・シリンダ、36B5,36B6,36B9・・・供給油路、4・・・シリンダヘッドカバー、41・・・チェーンカバー、B1・・・ボルト、V・・・供給弁装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに並列に配置された複数のシリンダ孔を有するシリンダブロックと、該シリンダブロック上部に固定されるシリンダヘッドと、該シリンダヘッド上部で車両の前後方向に対し直交しかつ該前後に位置して互いに平行に並列配置される2本のカム軸と、クランク軸の回転駆動力をカム軸に伝達するカム軸駆動機構とを有する空冷式内燃機関において、
前記前方側に位置するカム軸の下方に走行風を導入できる冷却空間が形成されていることを特徴とする空冷式内燃機関。
【請求項2】
前記クランク軸の回転駆動力をカム軸に伝達するカム軸駆動機構は、前記シリンダブロックのシリンダ孔間に配置され、かつクランク軸の前記回転駆動力を車両の後方側のカム軸へ伝達する第1のカム軸駆動機構と、前記後方側カム軸に伝達された前記回転駆動力をさらに前方側のカム軸に伝達する第2のカム軸駆動機構とからなり、前記第1のカム軸駆動機構の前方でかつ前記第2のカム軸駆動機構の下方に走行風を導入できる冷却空間が形成されたことを特徴とする請求項1記載の空冷式内燃機関。
【請求項3】
前記カム軸駆動機構における回転駆動力の伝達はチェーンを用いてなされていることを特徴とする請求項1記載の空冷式内燃機関。
【請求項4】
前記内燃機関は並列した4つの前記シリンダ孔を有する4気筒であり、前記カム軸駆動機構は2番目のシリンダ孔と3番目のシリンダ孔間に配置されていることを特徴とする請求項1記載の空冷式内燃機関。
【請求項5】
前記シリンダヘッドにはシリンダヘッドカバーが取付けられ、該シリンダヘッドカバーは前記カム軸間が凹状に形成され、この凹状部分はその低部が開口されて該開口を通して前記冷却空間に連通されていることを特徴とする請求項1記載の空冷式内燃機関。
【請求項6】
前記後方側カム軸に形成される前記第1のカム軸駆動機構の入力部の径は、前記第2のカム軸駆動機構の出力部の径より大きく形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の空冷式内燃機関。
【請求項7】
前記第2のカム軸駆動機構のチェーン張力を維持するためにテンショナが設けられ、該テンショナがチェーン間から外方へ向けて張力を付与することを特徴とする請求項3記載の空冷式内燃機関。
【請求項1】
互いに並列に配置された複数のシリンダ孔を有するシリンダブロックと、該シリンダブロック上部に固定されるシリンダヘッドと、該シリンダヘッド上部で車両の前後方向に対し直交しかつ該前後に位置して互いに平行に並列配置される2本のカム軸と、クランク軸の回転駆動力をカム軸に伝達するカム軸駆動機構とを有する空冷式内燃機関において、
前記前方側に位置するカム軸の下方に走行風を導入できる冷却空間が形成されていることを特徴とする空冷式内燃機関。
【請求項2】
前記クランク軸の回転駆動力をカム軸に伝達するカム軸駆動機構は、前記シリンダブロックのシリンダ孔間に配置され、かつクランク軸の前記回転駆動力を車両の後方側のカム軸へ伝達する第1のカム軸駆動機構と、前記後方側カム軸に伝達された前記回転駆動力をさらに前方側のカム軸に伝達する第2のカム軸駆動機構とからなり、前記第1のカム軸駆動機構の前方でかつ前記第2のカム軸駆動機構の下方に走行風を導入できる冷却空間が形成されたことを特徴とする請求項1記載の空冷式内燃機関。
【請求項3】
前記カム軸駆動機構における回転駆動力の伝達はチェーンを用いてなされていることを特徴とする請求項1記載の空冷式内燃機関。
【請求項4】
前記内燃機関は並列した4つの前記シリンダ孔を有する4気筒であり、前記カム軸駆動機構は2番目のシリンダ孔と3番目のシリンダ孔間に配置されていることを特徴とする請求項1記載の空冷式内燃機関。
【請求項5】
前記シリンダヘッドにはシリンダヘッドカバーが取付けられ、該シリンダヘッドカバーは前記カム軸間が凹状に形成され、この凹状部分はその低部が開口されて該開口を通して前記冷却空間に連通されていることを特徴とする請求項1記載の空冷式内燃機関。
【請求項6】
前記後方側カム軸に形成される前記第1のカム軸駆動機構の入力部の径は、前記第2のカム軸駆動機構の出力部の径より大きく形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の空冷式内燃機関。
【請求項7】
前記第2のカム軸駆動機構のチェーン張力を維持するためにテンショナが設けられ、該テンショナがチェーン間から外方へ向けて張力を付与することを特徴とする請求項3記載の空冷式内燃機関。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13−a】
【図13−b】
【図14−a】
【図14−b】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13−a】
【図13−b】
【図14−a】
【図14−b】
【公開番号】特開2006−29310(P2006−29310A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−270474(P2004−270474)
【出願日】平成16年9月16日(2004.9.16)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年9月16日(2004.9.16)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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