説明

空気サイクル冷凍機用タービンユニット

【課題】 スラスト荷重の負荷に対する転がり軸受の長期耐久性を向上させることができて、翼車とディフューザ間の微小隙間を保って安定した高速回転を行うことができ、またコンパクト化が図れ、かつ軸方向移動の自由側の転がり軸受につき、フレッティング摩耗を防止することができると共に前記転がり軸受の冷却効果を向上した空気サイクル冷凍機用タービンユニットを提供する。
【解決手段】 軸受箱41のうちの一方の弾性シール材の軸方向位置と他方の弾性シール材の軸方向位置との間で、前記スピンドルハウジング14の流路14c,14dに連なる冷却油用流路CL1を形成し、軸受箱41をこの軸受箱41が設けられた主軸端部と反対側へ付勢して前記転がり軸受15に予圧を与える予圧用ばね26を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、空気サイクル冷凍冷却用タービンユニットに関し、転がり軸受と磁気軸受を併用し、磁気軸受がアキシアル負荷と軸受予圧のどちらか一方または両方を支持し、転がり軸受の冷却効果を向上した技術に関する。
【背景技術】
【0002】
空気サイクル冷凍冷却システムは、冷媒として空気を用いるため、フロンやアンモニアガス等を用いる場合に比べてエネルギー効率が不足するが、環境保護の面では好ましい。また、冷凍倉庫等のように、冷媒空気を直接に吹き込むことができる施設では、庫内ファンやデフロストの省略等によってトータルコストを引下げられる可能性があり、このような用途で空気サイクル冷凍冷却システムが提案されている(例えば特許文献1)。
【0003】
また、−30℃〜−60℃のディープ・コール領域では、空気冷却の理論効率は、フロンやアンモニアガスと同等以上になることが知られている。ただし、上記空気冷却の理論効率を得ることは、最適に設計された周辺装置があって、始めて成り立つとも述べられている。周辺装置は、圧縮機や膨張タービン等である。
圧縮機,膨張タービンとしては、コンプレッサ翼車および膨張タービン翼車を共通の主軸に取付けたタービンユニットが用いられている。
【0004】
なお、プロセスガスを処理するタービン・コンプレッサとしては、主軸の一端にタービン翼車、他端にコンプレッサ翼車を取付け、前記主軸を電磁石の電流で制御するジャーナルおよびスラスト軸受で支承した磁気軸受式タービン・コンプレッサが提案されている(特許文献2)。
また、ガスタービンエンジンにおける提案ではあるが、主軸支持用の転がり軸受に作用するスラスト荷重が軸受寿命の短縮を招くことを回避するため、転がり軸受に作用するスラスト荷重をスラスト磁気軸受により低減することが提案されている(特許文献3)。
【特許文献1】特許第2623202号公報
【特許文献2】特開平7−91760号公報
【特許文献3】特開平8−261237公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、空気サイクル冷凍冷却システムとして、ディープ・コール領域で高効率となる空気冷却の理論効率を得るためには、最適に設計された圧縮機や膨張タービンが必要となる。
圧縮機,膨張タービンとしては、上記のようにコンプレッサ翼車および膨張タービン翼車を共通の主軸に取付けたタービンユニットが用いられている。このタービンユニットは、膨張タービンの生じる動力によりコンプレッサ翼車を駆動できることで空気サイクル冷凍機の効率を向上させている。
【0006】
しかし、実用的な効率を得るためには、各翼車とハウジングとの隙間を微小に保つ必要がある。この隙間の変動は、安定した高速回転の妨げとなり効率の低下を招く。
また、コンプレッサ翼車やタービン翼車に作用する空気により、主軸にスラスト力が作用し、主軸を支持する軸受にスラスト荷重が荷される。空気サイクル冷凍冷却システムにおけるタービンユニットの主軸の回転速度は、1分間に8万〜10万回転であり、一般的な用途の軸受に比べて非常に高速となる。そのため、上記のようなスラスト荷重は、主軸を支持する軸受の長期耐久性の低下、寿命低下を招き、空気サイクル冷凍冷却用タービンユニットの信頼性を低下させる。このような軸受の長期耐久性の課題を解消しなくては、空気サイクル冷凍冷却用タービンユニットの実用化が難しい。しかし、上記特許文献1に開示の技術は、この高速回転下におけるスラスト荷重の負荷に対する軸受の長期耐久性の低下については解決されるに至っていない。
【0007】
特許文献2の磁気軸受式タービン・コンプレッサのように、主軸を磁気軸受からなるジャーナル軸受およびスラスト軸受で支承したものでは、ジャーナル軸受にアキシアル方向の規制機能がない。そのため、スラスト軸受の制御の不安定要因等があると、上記翼車とディフューザ間の微小隙間を保って安定した高速回転を行うことが難しい。磁気軸受の場合は、電源停止時における接触の問題もある。
【0008】
そこで、主軸の支持に転がり軸受とスラスト支持用の磁気軸受を併用し、かつ磁気軸受のスラスト板をモータロータとして用いるモータ一体型の磁気軸受装置を提案した(例えば、特願2005−356035号)。
これによると、主軸にかかるスラスト力を磁気軸受で支持するため、非接触でトルクの増大を抑えながら、転がり軸受に作用するスラスト力を軽減することができる。その結果、各翼車とハウジングとの微小隙間を一定に保つことができ、スラスト荷重の負荷に対する転がり軸受の長期耐久性を向上させることができる。また、磁気軸受とモータロータの一体化により、コンパクトな構成とできる。
【0009】
前記転がり軸受は、主軸の一端側および他端側を支持するものが設けられる。これら転がり軸受は、各翼車とハウジングとの隙間を微小に保つために軸方向の位置規制機能を有するアンギュラ玉軸受や深溝玉軸受が用いられる。この場合に、主軸は上記のように高速回転するものであるため、熱膨張が大きく、片方の転がり軸受は、スピンドルハウジングに対して軸方向位置を自由にする構成がとられる。
しかし、この自由側の転がり軸受と軸受箱の嵌合面、あるいは軸受箱のスピンドルハウジングとの嵌合面において、フレッティング摩耗が発生するという問題がある。
【0010】
そこで、本件出願人は、軸受箱とスピンドルハウジングの間に、弾性シール材を設けて高粘性材を封入した技術を提案した(例えば、特願2006−211572号)。これによると、ダンピング作用が得られ、フレッティング摩耗の発生が防止される。
しかし、軸受箱が弾性シール材等でスピンドルハウジングと隙間を介して弾性支持されているため、スピンドルハウジングから軸受箱への熱通過率が小さい。したがって、このスピンドルハウジングを冷却油で冷やしても、転がり軸受の温度は下がらないという問題がある。
【0011】
この発明の目的は、スラスト荷重の負荷に対する転がり軸受の長期耐久性を向上させることができて、翼車とディフューザ間の微小隙間を保って安定した高速回転を行うことができ、またコンパクト化が図れ、かつ軸方向移動の自由側の転がり軸受につき、フレッティング摩耗を防止することができると共に前記転がり軸受の冷却効果を向上した空気サイクル冷凍機用タービンユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明の空気サイクル冷凍機用タービンユニットは、コンプレッサおよび膨張タービンを有する空気サイクル冷凍冷却用タービンユニットであって、前記コンプレッサのコンプレッサ翼車、および前記膨張タービンのタービン翼車が共通の主軸に取り付けられ、この主軸の一端側および他端側を支持する転がり軸受、および前記主軸の支持に前記転がり軸受と併用される磁気軸受を有し、転がり軸受がラジアル負荷を支持し、磁気軸受がアキシアル負荷と軸受予圧のどちらか一方または両方を支持するタービンユニットであり、前記主軸一端側および他端側の転がり軸受のうち、いずれか一方の転がり軸受は、軸受箱内に圧入または接着により固定され、前記軸受箱を、スピンドルハウジング内に主軸の軸方向に摺動自在に嵌合させ、これら軸受箱とスピンドルハウジングの嵌合面に、軸方向に離れて一対の弾性シール材を介在させ、前記軸受箱のうちの一方の弾性シール材の軸方向位置と他方の弾性シール材の軸方向位置との間で、前記スピンドルハウジングの流路に連なる冷却油用流路を形成し、前記軸受箱をこの軸受箱が設けられた主軸端部と反対側へ付勢して前記転がり軸受に予圧を与える予圧用ばねを設けたものである。
【0013】
この構成によると、転がり軸受と磁気軸受を併用し、転がり軸受がラジアル負荷を支持し、磁気軸受がアキシアル負荷と軸受予圧のどちらか一方または両方を支持するものであるため、アキシアル方向の精度の良い支持が行え、また転がり軸受の長期耐久性が確保できる。そのため、翼車とディフューザ間の微小隙間を保って安定した高速回転を行うことができる。磁気軸受のみの支持の場合における電源停止時の損傷も回避される。
【0014】
また、主軸を支持する両側の転がり軸受のうち、片方の軸受は、この軸受を固定した軸受箱をスピンドルハウジングに対して摺動自在とするため、主軸が高速回転による摩擦熱等で熱膨張しても、その膨張を許容して主軸を支持することができる。この場合に、この自由側の転がり軸受は、軸受箱に圧入または接着により固定するため、軸受外輪にフレッティング摩耗が生じることが防止される。軸受箱とスピンドルハウジングの嵌合面におけるフレッティング摩耗の問題があるが、これら軸受箱とスピンドルハウジングの間には、軸方向に離れて一対の弾性シール材を介在させ、前記軸受箱のうちの一方の弾性シール材の軸方向位置と他方の弾性シール材の軸方向位置との間で、前記スピンドルハウジングの流路に連なる冷却油用流路を形成したので、ダンピング作用が得られ、フレッティング摩耗の発生が防止されると共に、前記軸受箱に固定された転がり軸受の冷却効果を向上することができる。
【0015】
この発明において、前記軸受箱の冷却油用流路は、この軸受箱の外周面に環状に形成された流路であっても良い。この場合、転がり軸受全周にわたって冷却効果を高めることが可能となる。
【0016】
この発明において、前記磁気軸受を構成する電磁石は、前記主軸に設けられた強磁性体からなるフランジ状のスラスト板に非接触で対向するように、前記スピンドルハウジングに取付けられており、アキシアルギャップモータのモータロータが、前記スラスト板とこのスラスト板に周方向に等ピッチで設けられた複数個の永久磁石とで構成され、前記モータロータと対向してモータコイルを有するモータステータを前記ハウジングに設置しても良い。
この場合、磁気軸受の電磁石に対向させるスラスト板に、モータロータの永久磁石を設けたため、磁気軸受とモータとの部品兼用によってコンパクト化される。
【0017】
この発明において、流入空気に対して、タービンユニットのコンプレッサによる圧縮、他の熱交換器による冷却、前記タービンユニットの膨張タービンによる断熱膨張、もしくは予圧縮手段による圧縮、熱交換器による冷却、タービンユニットのコンプレッサによる圧縮、他の熱交換器による冷却、前記タービンユニットの膨張タービンによる断熱膨張、を順次行う空気サイクル冷凍機に用いられるものであっても良い。
【0018】
このような空気サイクル冷凍冷却システムに適用した場合、圧縮膨張タービンシステムにおいて、各翼車の適切な隙間を保って主軸の安定した高速回転が得られ、かつ軸受の長期耐久性の向上、寿命の向上が得られることから、圧縮膨張タービンシステムの全体として、しいては空気サイクル冷凍冷却システムの全体としても信頼性が向上する。また、空気サイクル冷凍冷却システムのネックとなっている圧縮膨張タービンシステムの主軸軸受の安定した高速回転、長期耐久性、信頼性が向上することから、空気サイクル冷凍冷却システムの実用化が可能となる。
【発明の効果】
【0019】
この発明のモータ一体型の磁気軸受装置は、特に、軸受箱とスピンドルハウジングの間には、軸方向に離れて一対の弾性シール材を介在させ、前記軸受箱のうちの一方の弾性シール材の軸方向位置と他方の弾性シール材の軸方向位置との間で、前記スピンドルハウジングの流路に連なる冷却油用流路を形成したので、ダンピング作用が得られ、フレッティング摩耗の発生が防止されると共に、前記軸受箱に固定された転がり軸受の冷却効果を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
この発明の一実施形態を図1ないし図5と共に説明する。図1は、この実施形態の空気サイクル冷凍機用タービンユニット5の断面図を示す。このタービンユニット5は圧縮膨張タービンシステムを構成するものであり、コンプレッサ6および膨張タービン7を有し、コンプレッサ6のコンプレッサ翼車6aおよび膨張タービン7のタービン翼車7aが主軸13の両端にそれぞれ嵌合している。主軸13の材料には、磁気特性の良好な低炭素鋼が使用される。
【0021】
図1において、コンプレッサ6は、コンプレッサ翼車6aと微小の隙間d1を介して対向するコンプレッサハウジング6bを有し、中心部の吸込口6cから軸方向に吸入した空気を、コンプレッサ翼車6aで圧縮し、外周部の出口(図示せず)から矢印6dで示すように排出する。
膨張タービン7は、タービン翼車7aと微小の隙間d2を介して対向するタービンハウジング7bを有し、外周部から矢印7cで示すように吸い込んだ空気を、タービン翼車7aで断熱膨張させ、中心部の排出口7dから軸方向に排出する。
【0022】
このタービンユニット5におけるモータ一体型の磁気軸受装置は、主軸13をラジアル方向に対し複数の転がり軸受15,16で支持し、主軸13にかかるアキシアル負荷と軸受予圧のどちらか一方または両方を磁気軸受である電磁石17により支持すると共に、主軸13を回転駆動するアキシアルギャップ型のモータ28を設けたものである。このタービンユニット5は、主軸13に作用するスラスト力を検出するセンサ18と、このセンサ18の出力に応じて前記電磁石17による支持力を制御する磁気軸受用コントローラ19と、電磁石17とは独立に前記モータ28を制御するモータ用コントローラ29とを有している。センサ18は、円周方向に例えば180°離れた2箇所に設けられている。
【0023】
電磁石17は、主軸13の軸方向中間部において軸方向に並ぶように主軸13に垂直かつ同軸に設けられた強磁性体からなるフランジ状の2つのスラスト板13a,13bの各片面に非接触で対向するように、一対のものがスピンドルハウジング14に設置されている。具体的には、磁気軸受ユニットを構成する一方の電磁石17は、膨張タービン7寄りに位置するスラスト板13aの膨張タービン7側に向く片面を電磁石ターゲットとして、この片面に非接触で対向するようにスピンドルハウジング14に設置される。また、磁気軸受ユニットを構成する他方の電磁石17は、コンプレッサ6寄りに位置するスラスト板13bのコンプレッサ6側に向く片面を電磁石ターゲットして、この片面に非接触で対向するようにスピンドルハウジング14に設置される。
【0024】
モータ28は、前記電磁石17と並んで主軸13に設けられたモータロータ28aと、このモータロータ28aに対し軸方向に対向するモータステータ28bとでなるモータユニットである。具体的には、モータユニットの一部品を構成するモータロータ28aは、主軸13における前記各スラスト板13a,13bの電磁石17が対向する側とは反対側の各片面に、円周方向に等ピッチで並ぶ永久磁石28aaを配置することで左右一対のものが構成される。このように軸方向に対向配置される永久磁石28aaの間では、その磁極が互いに異極となるように設定される。主軸13には磁気特性の良好な低炭素鋼を使用しているので、主軸13と一体構造となるように設けられる前記各スラスト板13a,13bを、永久磁石28aaのバックヨークおよび電磁石ターゲットに兼用できる。
【0025】
このモータ28は、前記モータロータ28aとモータステータ28b間に作用するローレンツ力により、主軸13を回転させる。このように、このアキシアルギャップ型のモータ28はコアレスモータとされていることから、モータロータ28aとモータステータ28b間の磁気カップリングによる負の剛性はゼロとなっている。
【0026】
主軸13は、中間部の大径部13cと、両端部の小径部13dとを有する段付き軸とされている。両側の転がり軸受15,16は、その内輪15a,16aが小径部13dに圧入状態に嵌合し、片方の幅面が大径部13cと小径部13d間の段差面に係合する。
スピンドルハウジング14における両側の転がり軸受15,16よりも各翼車6a,7a側の部分は、内径面が主軸13に近接する径に形成され、この内径面に非接触シール(図示せず)が形成されている。
前記転がり軸受15,16は、アキシアル方向位置の規制機能を有するものであり、アンギュラ玉軸受が用いられている。転がり軸受15,16は、この他に深溝玉軸受等であっても良い。
【0027】
前記センサ18は、タービン翼車7a側の軸受16の近傍における静止側、つまりスピンドルハウジング14側に設けられている。このセンサ18を近傍に設けた軸受16は、その外輪16bが軸受箱23内に固定状態に嵌合している。軸受箱23は、リング状に形成されて一端に軸受16の外輪16bの幅面に係合する内鍔23aを有しており、スピンドルハウジング14に設けられた内径面24にアキシアル方向に移動自在に嵌合している。内鍔23aは、アキシアル方向の中央側端に設けられている。
【0028】
センサ18は主軸13の回りの円周方向複数箇所(例えば2箇所)に分配配置され、軸受箱23の内鍔23a側の幅面と、スピンドルハウジング14に固定された部材である片方の電磁石17との間に介在させてある。また、センサ18は、センサ予圧ばね25により予圧が印加されている。センサ予圧ばね25は、スピンドルハウジング14に設けられた収容凹部内に収容されて軸受16の外輪16bをアキシアル方向に付勢するものとされ、外輪16bおよび軸受箱23を介してセンサ18を予圧する。センサ予圧ばね25は、例えば主軸13の回りの円周方向複数箇所に設けられたコイルばね等からなる。
【0029】
センサ予圧ばね25による予圧は、押し付け力によってスラスト力を検出するセンサ18が、主軸13のアキシアル方向のいずれの向きの移動に対しても検出できるようにするためであり、タービンユニット5の通常の運転状態で主軸13に作用する平均的なスラスト力以上の大きさとされる。
【0030】
センサ18の非配置側の転がり軸受15は、スピンドルハウジング14に対しアキシアル方向に移動自在に設置され、かつ予圧用ばね26によって弾性支持されている。具体的には、図2に拡大して示すように設置される。転がり軸受15の外輪15bは、軸受箱41内に圧入または接着により固定される。軸受箱41は、内径面が段付き面とされ、その段面41aに外輪15bの幅面が係合する状態に、上記外輪15bの固定が行われる。
【0031】
軸受箱41は、スピンドルハウジング14内の円筒状嵌合面14aに、主軸軸方向に摺動自在に嵌合させる。これら軸受箱41とスピンドルハウジング14の嵌合面には、軸方向に離れて一対の弾性シール材42を介在させている。図2に示すように、軸受箱41のうちの一方の弾性シール材42の軸方向位置SP1と他方の弾性シール材42の軸方向位置SP2との間で、スピンドルハウジング14の流路14c,14dに連なる冷却油用流路CL1を形成している。この冷却油用流路CL1は、軸受箱41の外周面に環状に形成された、転がり軸受15を冷却する流路であり、例えば、断面矩形孔状に形成される。
【0032】
前記軸受箱41において、軸方向に所定離間する第1および第2壁部HB1,HB2が形成され、第1壁部HB1の基端部分と第2壁部HB2の基端部分とを一体に繋ぐ円周溝底ESが形成されている。これら第1,第2壁部HB1,HB2と円周溝底ESとにより、冷却油用流路CL1を形成している。前記第1壁部HB1は、一方の弾性シール材42をこの軸受箱41に嵌入させ、かつこの弾性シール材42の軸方向位置を規制する機能を備えている。この軸受箱41において、第1壁部HB1の先端部分HB1aは、この軸受箱41の外径面、つまりスピンドルハウジング14との嵌合面よりも、所定小距離小径となるように形成されている。これによって、スピンドルハウジング14の内径面と第1壁部HB1の先端部分HB1aとの間に隙間δ1が形成される。
【0033】
また、前記第2壁部HB2は、他方の弾性シール材42をこの軸受箱41に嵌入させ、かつこの弾性シール材42の軸方向位置を規制する機能を備えている。この軸受箱41において、第2壁部HB2の先端部分HB2aは、この軸受箱41の外径面、つまりスピンドルハウジング14との嵌合面よりも、所定小距離小径となるように形成されている。これによって、スピンドルハウジング14の内径面と第2壁部HB2の先端部分HB2aとの間に隙間δ2が形成される。
【0034】
前記スピンドルハウジング14の流路14c,14dのうち、一方の流路14cは、軸受箱41の冷却油用流路CL1に冷却油を供給する供給路であり、他方の流路14dは、軸受箱41から冷却油を排出する排出路である。また、一方の流路14cの冷却油用流路CL1への供給口は、例えば、スピンドルハウジング14の上部に形成され、他方の流路14dの冷却油用流路CL1からの排出口は、例えば、スピンドルハウジング14の下部に形成される。さらに、これら供給口,排出口は、スピンドルハウジング14の円周方向の180度対称位置に形成される。ただし、180度対称位置に必ずしも限定されるものではない。なお、本実施形態では、一つの供給口および一つの排出口が形成されているが、複数の供給口であっても良く、複数の排出口であっても良い。
【0035】
図示外の油圧供給源から、スピンドルハウジング14の流路14cに供給される冷却油を、軸受箱41の冷却油用流路CL1に供給する。この冷却油の一部を、前記隙間δ1を介して軸方向一方のシール嵌合溝41bに供給すると共に、前記隙間δ2を介して軸方向他方のシール嵌合溝41cに供給するようになっている。これらシール嵌合溝41b,41cは、軸受箱41の外周面にそれぞれ形成されている。冷却油用流路CL1に供給された冷却油は、円周方向に沿って下方に流れ、転がり軸受15を冷却しつつ前記他方の流路14dへ排出される。
【0036】
本実施形態では、軸受箱41の冷却油用流路CL1に供給した冷却油の一部を、前記隙間δ1,δ2を介して各シール嵌合溝41b,41cに供給している。これによって、冷却油の一部を粘性材および潤滑剤として用いることが可能となる。
【0037】
軸受箱41は、この軸受箱41が設けられた主軸端部と反対側へ、予圧用ばね26によって付勢される。予圧用ばね26は、定圧予圧用のものであって、軸受箱41の幅面つまり端面に接するリング状の押し部材44を介して軸受箱41を付勢する。スピンドルハウジング14には、押し部材44の幅面を当接させる規制面14bを有しており、主軸13の非熱膨張状態、および熱膨張がある程度小さい状態では、押し部材44はスピンドルハウジング14の規制面14bに接触し、予圧用ばね26によって定圧予圧を両側の転がり軸受15,16に与える。高温になって主軸13の熱膨張が大きくなると、図2のように押し部材44の幅面が規制面14bから離れる。なお、予圧用ばね26は、図1のセンサ予圧ばね25よりもばね定数が小さいものとされる。
【0038】
上記タービンユニット5におけるモータ一体型の磁気軸受装置の力学モデルは簡単なバネ系で構成することができる。すなわち、このバネ系は、軸受15,16とこれら軸受の支持系とで形成される合成バネと、モータ部で形成される合成バネとが並列となった構成である。前記軸受の支持系は、センサ予圧ばね25、軸受予圧ばね26、および軸受箱23,41などを有する。前記モータ部は、電磁石17とモータ28とを有する。
このバネ系において、軸受15,16とこれら軸受の支持系とで形成される合成バネは、変位した方向と逆の方向に変位量に比例して作用する剛性となるのに対し、電磁石17とモータ28とで形成される合成バネは、変位した方向に変位量に比例して作用する負の剛性となる。
このため、上記した両合成バネの剛性の大小関係を、
軸受等による合成バネの剛性値<電磁石・モータによる合成バネの負の剛性値…(1)とした場合、機械システムの位相は180°遅れとなり不安定な系となることから、電磁石17を制御する磁気軸受用コントローラ19において、予め位相補償回路を付加する必要が生じ、コントローラ19の構成が複雑なものになる。
【0039】
そこで、この実施形態のモータ一体型の磁気軸受装置では、上記した両合成バネの剛性の大小関係を、
軸受等による合成バネの剛性値>電磁石・モータによる合成バネの負の剛性値…(2)としている。とくに、このモータ一体型の磁気軸受装置では、上記したようにアキシアルギャップ型のモータ28をコアレスモータとしているので、モータ28に作用する負の剛性値をゼロとすることができ、モータ28が高負荷動作し過大なアキシアル荷重が作用した状態においても上記(2)式の大小関係を保つことができる。
その結果、制御帯域において、機械システムの位相が180°遅れとなることを防止できるので、モータ28が高負荷動作し過大なアキシアル荷重が作用した状態でも磁気軸受用コントローラ19の制御対象を安定なものとでき、コントローラ19の回路構成を図4に示すように比例もしくは比例積分を用いた簡単なものに構成できる。
【0040】
ブロック図で示す図4の磁気軸受用コントローラ19では、各センサ18の検出出力P1,P2をセンサ出力演算回路30で加減算し、その演算結果を比較器31で基準値設定手段32の基準値と比較して偏差を演算し、さらに演算した偏差をPI補償回路(もしくはP補償回路)33によりタービンユニット5に応じて適宜設定される比例積分(もしくは比例)処理を行うことで、電磁石17の制御信号を演算するようにしている。PI補償回路(もしくはP補償回路)33の出力は、ダイオード34,35を介して各方向の電磁石171 ,172 を駆動するパワー回路36,37に入力される。電磁石171 ,172 は、図1に示したスラスト板13aに対向する一対の電磁石17であり、吸引力しか作用しないため、予めダイオード34,35で電流の向きを決め、2個の電磁石171 ,172 を選択的に駆動するようにしている。
【0041】
同じくブロック図で示す図5のモータ用コントローラ29では、回転同期指令信号を基に、モータロータ28aの回転角をフィードバック信号として位相調整回路38でモータ駆動電流の位相調整が行われ、その調整結果に応じたモータ駆動電流をモータ駆動回路39からモータステータ28bに供給することによって、定回転制御が行われる。前記回転同期指令信号は、モータロータ28aに設けられた図示外の回転角度検出センサの出力に応じて演算される。
【0042】
この構成のタービンユニット5は、空気サイクル冷凍冷却システムに適用されて、冷却媒体となる空気を後段の熱交換器(ここでは図示せず)により効率良く熱交換できるように、コンプレッサ6で圧縮して温度上昇させ、さらに後段の前記熱交換器で冷却された空気を、膨張タービン7により、目標温度、例えば−30℃〜−60℃程度の極低温まで断熱膨張により冷却して排出するように使用される。
このような使用例において、このタービンユニット5は、コンプレッサ翼車6aおよびタービン翼車7aが、前記スラスト板13aとモータロータ28aと共通の主軸13に嵌合し、モータ28の動力とタービン翼車7aで発生した動力のどちらか一方または両方によりコンプレッサ翼車6aを駆動するものとしている。このため、各翼車6a,7aの適切な隙間d1,d2を保って主軸13の安定した高速回転が得られ、かつ転がり軸受15,16の長期耐久性の向上、寿命の向上が得られる。
【0043】
すなわち、タービンユニット5の圧縮,膨張の効率を確保するためには、各翼車6a,7aとハウジング6b,7bとの隙間d1,d2を微小に保つ必要がある。例えば、このタービンユニット5を空気サイクル冷凍冷却システムに適用する場合には、この効率確保が重要となる。これに対して、主軸13を玉軸受形式の転がり軸受15,16により支持するため、転がり軸受の持つアキシアル方向位置の規制機能により、主軸13のアキシアル方向位置がある程度規制され、各翼車6a,7aとハウジング6b,7bとの微小隙間d1,d2を一定に保つことができる。
【0044】
しかし、タービンユニット5の主軸13には、各翼車6a,7aに作用する空気の圧力でスラスト力がかかる。また、空気冷却システムで使用するタービンユニット5では、1分間に例えば8万〜10万回転程度の非常に高速の回転となる。そのため、主軸13を回転支持する転がり軸受15,16に上記スラスト力が作用すると、転がり軸受15,16の長期耐久性が低下する。
この実施形態は、上記スラスト力を電磁石17で支持するため、非接触でトルクの増大を抑えながら、主軸13の支持用の転がり軸受15,16に作用するスラスト力を軽減することができる。この場合に、主軸13に作用するスラスト力を検出するセンサ18と、このセンサ18の出力に応じて前記電磁石17による支持力を制御する磁気軸受用コントローラ19とを設けたため、転がり軸受15,16を、その軸受仕様に応じてスラスト力に対し最適な状態で使用することができる。
特に、軸方向に並べて主軸13に設けられた2つのスラスト板13a,13bの軸方向外側に2つの電磁石17を配置して磁気軸受ユニットを構成すると共に、前記両スラスト板13a,13bで挟まれる位置にアキシアルギャップ型のモータ28を配置してモータユニットを構成することにより、磁気軸受ユニットとモータユニットをコンパクトな一体構造としているため、主軸13の軸長を短くでき、それだけ主軸13の固有振動数が高くなって、主軸13を高速回転させることができる。
【0045】
また、このタービンユニット5は、主軸13を支持する両側の転がり軸受15,16のうち、片方の転がり軸受15は、図2のように、この軸受15を固定した軸受箱41をスピンドルハウジング14に対して摺動自在とするため、主軸13が高速回転による摩擦熱等で熱膨張しても、その膨張を許容して主軸13を支持することができる。この場合に、この自由側の転がり軸受5は、軸受箱41に圧入または接着により固定するため、軸受外輪15bにフレッティング摩耗が生じることが防止される。
【0046】
軸受箱41とスピンドルハウジング14の嵌合面におけるフレッティング摩耗の問題があるが、これら軸受箱41とスピンドルハウジング14の間には、軸方向に離れて一対の弾性シール材42を介在させ、前記軸受箱41のうちの一方の弾性シール部材42の軸方向位置SP1と他方の弾性シール材42の軸方向位置SP2との間で、スピンドルハウジング14の流路14c,14dに連なる冷却油用流路CL1を形成した。これによって、ダンピング作用が得られ、フレッティング摩耗の発生が防止されると共に、前記軸受箱41に固定された転がり軸受15の冷却効果を向上することができる。
【0047】
また、本実施形態では、冷却油を、転がり軸受15を冷却するための流体、軸受箱41とスピンドルハウジング14間の隙間に介在させる粘性材、および軸受箱41とスピンドルハウジング14の嵌合面を潤滑させる潤滑剤として兼用している。したがって、冷却流体,粘性材,潤滑剤毎に個別の供給システムを設ける必要がなく、装置構造を簡単化し、製作コストの低減を図ることができる。
また、本実施形態では、冷却油用流路CL1を軸受箱41の外周面に環状に形成したので、転がり軸受15全周にわたって冷却効果を高めることが可能となる。また、弾性シール材42としてOリングを適用したが、このOリングは、優れたシール性能が得られ、また安価に入手できる。
【0048】
図6はタービンユニット5の他の実施形態を示す。
以下の説明においては、前述の先行する形態で説明している事項に対応している部分には同一の参照符を付し、重複する説明を略する場合がある。構成の一部のみを説明している場合、構成の他の部分は、先行して説明している形態と同様とする。実施の各形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施の形態同士を部分的に組合せることも可能である。
このタービンユニット5は、図1に示す実施形態において、主軸13に垂直かつ同軸に設けられた強磁性体からなるフランジ状のスラスト板を1つだけとして、このスラスト板13aを電磁石ターゲットとして、その両面に非接触で対向するように、左右一対の電磁石17,17がスピンドルハウジング14に設置されている。
【0049】
モータ28は、主軸13に設けられたモータロータ28aと、このモータロータ28aに対し軸方向に対向するモータステータ28bとでなる。モータロータ28aは、前記スラスト板13aの両面における前記電磁石17の対向位置よりも外径側に、円周方向に等ピッチで並ぶ永久磁石28aaを配置することで左右一対のものが構成される。このように軸方向に対向配置される永久磁石28aaの間では、その磁極が互いに異極となるように設定される。スラスト板13aは永久磁石28aaのバックヨークを兼ねる。
【0050】
モータステータ28bは、前記スラスト板13aの両面のモータロータ28aに非接触で対向するように、スピンドルハウジング14に設置される強磁性体からなる一対のステータヨーク28bbに、それぞれモータコイルbaを巻回することで左右一対のものが構成される。前記強磁性体としては、例えば低炭素鋼およびケイ素鋼板等が挙げられる。このようにして前記スラスト板13aを挟んで構成される左右2個のモータ28は、前記モータロータ28aとモータステータ28b間に作用する磁気力により、主軸13を回転させる。この場合、スラスト板13aにおけるモータロータ28bの位置を、電磁石17の対向位置よりも外径側としているので、少ないモータ駆動電流でより大きいトルクを得ることができる。その他の構成は図1の実施形態の場合と同様であり、ここではその説明を省略する。
【0051】
図7は、上記タービンユニット5を用いた空気サイクル冷凍冷却システムの全体の構成を示す。この空気サイクル冷凍冷却システムは、冷凍倉庫等の被冷却空間10の空気を直接に冷媒として冷却するシステムであり、被冷却空間10にそれぞれ開口した空気の取入口1aから排出口1bに至る空気循環経路1を有している。この空気循環経路1に、予圧縮手段2、第1の熱交換器3、空気サイクル冷凍冷却用タービンユニット5のコンプレッサ6、第2の熱交換器3、中間熱交換器9、および前記タービンユニット5の膨張タービン7が順に設けられている。中間熱交換器9は、同じ空気循環経路1内で取入口1aの付近の流入空気と、後段の圧縮で昇温し、冷却された空気との間で熱交換を行うものであり、取入口1aの付近の空気は熱交換器9a内を通る。
【0052】
予圧縮手段2はブロア等からなり、モータ2aにより駆動される。第1の熱交換器3および第2の熱交換器8は、冷却媒体を循環させる熱交換器3a,8aをそれぞれ有し、熱交換器3a,8a内の水等の冷却媒体と空気循環経路1の空気との間で熱交換を行う。各熱交換器3a,8aは、冷却塔11に配管接続されており、熱交換で昇温した冷却媒体が冷却塔11で冷却される。なお、前記予圧縮手段2を含まない構成の空気サイクル冷凍冷却システムでもよい。
【0053】
この空気サイクル冷凍冷却システムは、被冷却空間10を0℃〜−60℃程度に保つシステムであり、被冷却空間10から空気循環経路1の取入口1aに0℃〜−60℃程度で1気圧の空気が流入する。なお、以下に示す温度および気圧の数値は、一応の目安となる一例である。取入口1aに流入した空気は、中間熱交換器9により、空気循環経路1中の後段の空気の冷却に使用され、30℃まで昇温する。この昇温した空気は1気圧のままであるが、予圧縮手段2により1.4気圧に圧縮させられ、その圧縮により、70℃まで昇温する。第1の熱交換器3は、昇温した70℃の空気を冷却すれば良いため、常温程度の冷水であっても効率良く冷却することができ、40℃に冷却する。
【0054】
熱交換により冷却された40℃,1.4気圧の空気が、タービンユニット5のコンプレッサ6により、1.8気圧まで圧縮され、この圧縮により70℃程度に昇温した状態で、第2の熱交換器8により40℃に冷却される。この40℃の空気は、中間熱交換器9で−30℃の空気により−20℃まで冷却される。気圧はコンプレッサ6から排出された1.8気圧が維持される。
中間熱交換器9で−20℃まで冷却された空気は、タービンユニット5の膨張タービン7により断熱膨張され、−55℃まで冷却されて排出口1bから被冷却空間10に排出される。この空気サイクル冷凍冷却システムは、このような冷凍サイクルを行う。
【0055】
この空気サイクル冷凍冷却システムでは、タービンユニット5において、各翼車6a,7aの適切な隙間d1,d2を保って主軸13の安定した高速回転が得られ、かつ軸受15,16の長期耐久性の向上、寿命の向上が得られることで、軸受15,16の長期耐久性が向上することから、タービンユニット5の全体として、しいては空気サイクル冷凍冷却システムの全体としての信頼性が向上する。このように、空気サイクル冷凍冷却システムのネックとなっているタービンユニット5の主軸軸受15,16の安定した高速回転、長期耐久性、信頼性が向上するため、空気サイクル冷凍冷却システムの実用化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】この発明の一実施形態にかかる空気サイクル冷凍機用タービンユニットの断面図である。
【図2】同タービンユニットにおける主軸等の断面図である。
【図3】転がり軸受の冷却構造等を表す要部の拡大断面図である。
【図4】同タービンユニットに用いられる磁気軸受用コントローラの一例を示すブロック図である。
【図5】同タービンユニットに用いられるモータ用コントローラの一例を示すブロック図である。
【図6】この発明の一実施形態にかかる空気サイクル冷凍機用タービンユニットの断面図である。
【図7】上記タービンユニットを適用した空気サイクル冷凍冷却システムの系統図である。
【符号の説明】
【0057】
2…予圧縮手段
3…第1の熱交換器
5…タービンユニット
6…コンプレッサ
6a…コンプレッサ翼車
7…膨張タービン
7a…タービン翼車
8…第2の熱交換器
13…主軸
13a,13b…スラスト板
14…スピンドルハウジング
14c,14d…流路
15,16…転がり軸受
17…電磁石
19…磁気軸受用コントローラ
26…予圧用ばね
28…コアレスモータ
28a…モータロータ
28aa…永久磁石
28b…モータステータ
28ba…コイル
41…軸受箱
42…弾性シール材
CL1…冷却油用流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンプレッサおよび膨張タービンを有する空気サイクル冷凍冷却用タービンユニットであって、前記コンプレッサのコンプレッサ翼車、および前記膨張タービンのタービン翼車が共通の主軸に取り付けられ、この主軸の一端側および他端側を支持する転がり軸受、および前記主軸の支持に前記転がり軸受と併用される磁気軸受を有し、転がり軸受がラジアル負荷を支持し、磁気軸受がアキシアル負荷と軸受予圧のどちらか一方または両方を支持するタービンユニットであり、
前記主軸一端側および他端側の転がり軸受のうち、いずれか一方の転がり軸受は、軸受箱内に圧入または接着により固定され、前記軸受箱を、スピンドルハウジング内に主軸の軸方向に摺動自在に嵌合させ、これら軸受箱とスピンドルハウジングの嵌合面に、軸方向に離れて一対の弾性シール材を介在させ、前記軸受箱のうちの一方の弾性シール材の軸方向位置と他方の弾性シール材の軸方向位置との間で、前記スピンドルハウジングの流路に連なる冷却油用流路を形成し、前記軸受箱をこの軸受箱が設けられた主軸端部と反対側へ付勢して前記転がり軸受に予圧を与える予圧用ばねを設けた空気サイクル冷凍機用タービンユニット。
【請求項2】
請求項1において、前記軸受箱の冷却油用流路は、この軸受箱の外周面に環状に形成された流路である空気サイクル冷凍機用タービンユニット。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、前記磁気軸受を構成する電磁石は、前記主軸に設けられた強磁性体からなるフランジ状のスラスト板に非接触で対向するように、前記スピンドルハウジングに取付けられており、アキシアルギャップモータのモータロータが、前記スラスト板とこのスラスト板に周方向に等ピッチで設けられた複数個の永久磁石とで構成され、前記モータロータと対向してモータコイルを有するモータステータを前記ハウジングに設置した空気サイクル冷凍機用タービンユニット。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項において、流入空気に対して、タービンユニットのコンプレッサによる圧縮、他の熱交換器による冷却、前記タービンユニットの膨張タービンによる断熱膨張、もしくは予圧縮手段による圧縮、熱交換器による冷却、タービンユニットのコンプレッサによる圧縮、他の熱交換器による冷却、前記タービンユニットの膨張タービンによる断熱膨張、を順次行う空気サイクル冷凍機に用いられるものである空気サイクル冷凍機用タービンユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−190376(P2008−190376A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−23991(P2007−23991)
【出願日】平成19年2月2日(2007.2.2)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】