説明

空洞部を有する回路基板およびその製造方法

【課題】2つの基板を用いてその間に空洞部が構成された空洞部を有する回路基板およびその製造方法を実現する。
【解決手段】本発明では、上基板11の表面の導電箔20aから形成した第1の回路パターン17と、上基板11の裏面に設けた接着シート13と、下基板12の表面の導電箔21aから形成した第2の回路パターン19と、下基板12の裏面の導電箔21bを除去して形成した空洞部14とその周囲に設けた絶縁層34とを備え、上基板11の裏面の前記接着層13と下基板12の裏面の絶縁層34とを接着して、上基板11、下基板12および絶縁層34とで囲まれる空洞部14を両基板間に形成することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空洞部を有する回路基板およびその製造方法に関し、特に、2つの基板を用いてその間に空洞部が構成された空洞部を有する回路基板およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図7にICチップを基板の中に埋め込んだ高密度な実装基板が示されている。
【0003】
この実装基板は第1の基板100、第2の基板200、第3の基板300、ICチップ400、導電性接続部材500および封止部材600から構成される。第1の基板100、第2の基板200および第3の基板300はプリント基板であり、所望の配線パターンが形成されている。第1の基板100および第2の基板200は貼り合わされ、一方の外表面にはICチップ400が収容可能な底面積および深さを有する凹部が形成される。ICチップ400は前記凹部に収容され、半田等の金属バンプよりなる導電性接続部材500により凹部の底面と接続される。そして機械的強度を保持し、ICチップ400を保護するためにエポキシ樹脂等の封止部材600により封止される。その後、第3の基板300は前記凹部側に積層され、前記凹部を密封した多層のプリント基板が形成される(図8参照)。すなわち第1の基板100、第2の基板200および第3の基板300からなる3層構造の貼り合わせ(積層)多層プリント基板において、中層の第2の基板200のみに打抜き部700を形成し、この打抜き部にICチップ400が埋め込まれている。
【0004】
また、最近、シリコン(MEMS)マイクと呼ばれるシリコン基板に振動板となるダイアフラムを組み込んだ小型マイクが普及してきた。MEMSはMicro-Electro-Mechanical-Systemの略称である。
【0005】
図8にシリコン(MEMS)マイクの一例を示す。周囲に残されたシリコン基板51と、
シリコン基板51の円形状の貫通孔に貼られている金属膜よりなるダイアフラム52と、ダイアフラム52に対向してエアギャップ53を介してバックプレート電極54を表面に設けたバックプレート55と、シリコン基板51上にダイアフラム52と接続されたボンディングパッド56と、バックプレート電極54と接続されたボンディングパッド57とが設けられている。
【0006】
ダイアフラム52の振動をダイアフラム52とバックプレート電極54とで形成されるコンデンサの容量の変化で検出し、CMOSICで再生する。
【0007】
図9に実装構造を説明する。プリント基板61上にシリコン(MEMS)マイク62とCMOSIC63とを組み込み、全体を箱型のケース64で収納する。シリコン(MEMS)マイクのダイアフラム52の近くケース64には必ず音孔65が設けられ、外部からの音をダイアフラム52まで伝達する。CMOSIC63とシリコン(MEMS)マイクとはボンディングワイヤーでプリント基板61の配線で接続される。
【特許文献1】特開平09−321438号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した従来の実装基板では、多層の実装基板を用いてその間に空洞を形成するためには、間に挟まれて基板に打抜き部を形成するのが簡便な方法であるが、打抜き部を形成するには必ず3枚の基板が必要となるため、空洞を有する実装基板の小型化が困難である問題点があった。
【0009】
また、上述したシリコン(MEMS)マイクなどを組み込む場合に音を取り込む音孔が必要となるが、ケースを用いて実装するために実装密度が向上できない問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされ、上基板と、前記上基板の表面の前記導電箔から形成した任意の第1の回路パターンと、前記上基板の裏面に設けた接着シートと、下基板と、前記下基板の表面の前記導電箔から形成した任意の第2の回路パターンと、前記下基板の裏面の前記導電箔を除去して形成した空洞とその周囲に設けた絶縁層と、前記上基板の裏面の前記接着シートと前記下基板の裏面の前記絶縁層とを接着して、前記上基板、前記下基板および前記絶縁層とで囲まれる空洞部と、前記上基板の前記第1の回路パターンと前記下基板の前記第2の回路パターンとを接続するスルーホール電極とを具備することを特徴とする。
また、本発明に依れば、前記空洞部に前記上基板あるいは前記下基板を貫通する貫通孔を設けたことを特徴とする。
【0011】
更に、本発明に依れば、前記貫通孔上に回路素子のダイアフラムを配置することを特徴とする。
【0012】
本発明の製造方法に依れば、両面に導電箔を設けた上基板を準備する工程と、前記上基板の一方の前記導電箔をエッチングして予定の空洞パターンを形成する工程と、両面に導電箔を設けた下基板を準備する工程と、前記下基板の一方の前記導電箔をエッチングして予定の空洞部となる部分を残す工程と、前記下基板の前記予定の空洞部となる部分の前記導電箔の周囲を絶縁層で埋め、前記予定の空洞部となる部分の前記導電箔をエッチングして前記空洞部を形成する工程と、前記上基板の前記予定の空洞パターンの周囲に接着層を付着する工程と、前記上基板と下基板とを前記接着層で貼り合わせて前記空洞部を形成する工程とを具備することを特徴とする。
【0013】
また、本発明の製造方法に依れば、両面に導電箔を設けた上基板を準備する工程と、前記上基板の一方の前記導電箔をエッチングして予定の空洞パターンを形成する工程と、両面に導電箔を設けた下基板を準備する工程と、前記下基板の一方の前記導電箔をエッチングして予定の空洞部となる部分を残す工程と、前記下基板の前記予定の空洞部となる部分の前記導電箔の周囲を絶縁層で埋め、前記予定の空洞部となる部分の前記導電箔をエッチングして前記空洞部を形成する工程と、前記上基板の前記予定の空洞パターンの前記導電箔の周囲に接着層を付着する工程と、前記上基板と下基板とを前記接着層で貼り合わせて前記空洞部を形成する工程と、前記上基板および下基板を貫通するスルーホールを形成し、スルーホール電極を形成する工程と、前記上基板および下基板の外部に面する他方の導電箔をエッチングして前記上基板に第1の回路パターンを前記下基板に第2の回路パターンを形成する工程と、前記上基板あるいは下基板より前記空洞部まで到達する貫通孔を形成する工程とを具備することを特徴とする。
【0014】
更に、本発明の製造方法に依れば、前述した工程に続き、前記第1の回路パターンに回路素子を配置する工程を具備することを特徴とする。
【0015】
更に、本発明の製造方法に依れば、前記回路素子としてダイアフラムを有する半導体素子を用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明に依れば、上基板と下基板の間に挟まれた導電箔を用いて空洞部を実現した回路基板が提供できる。従って、少なくとも2枚の基板のみで空洞部を形成でき、回路基板の小型化を可能にできる。そして、両基板の外側に面する導電箔にはそれぞれ回路パターンが形成され、回路素子の両面実装が行える。
【0017】
また、本発明では、空洞部を下基板の導電箔の空洞パターンを選ぶことで任意の形状の空洞部が形成でき、任意の位置に形成でき、そのサイズは導電箔の厚みで選択できる。
【0018】
更に、本発明では、空洞部は導電箔のエッチングで加工ができ、機械加工を必要としない。
【0019】
更に、本発明では、上基板の表面の導電箔および下基板の表面の導電箔に第1の回路パターンおよび第2の回路パターンを設けるので、上基板と下基板を貼り合わせた回路基板は両面基板と同様に回路素子などの実装が行える。
【0020】
更に、本発明では、従来のMEMS回路素子の実装では必ず必要とされた音孔を形成するケースは完全に不要となり、著しく実装密度を向上できる。
【0021】
本発明の製造方法に依れば、両面に導電箔を有する上基板と下基板を用いることで導電箔のエッチングにより空洞部を両基板の間に形成できる。これにより回路基板は2枚の基板で空洞部を実現できるのである。
【0022】
また、本発明の製造方法に依れば、空洞部は下基板の裏面の導電箔のエッチングで形成されるので、ルーター等の機械的な研削が不要になり、エッチングという化学的処理なのでその形状も任意に形成され、大きさも下基板の裏面の導電箔の厚みに依存する。
【0023】
更に、本発明の製造方法に依れば、上基板と下基板とは接着層で強固に貼り付けられるために、回路基板は上基板の表面の導電箔と下基板の表面の導電箔とで両面基板としての処理が行え、その処理の際に空洞部への処理液等の侵入は完全に排除できる。
【0024】
更に、本発明の製造方法に依れば、空洞部は完全に上基板と下基板の間に挟まれて形成できるために、最終の工程で初めて貫通孔を設けて空洞部と外気とを連絡でき、空洞部を最終工程まで異物の侵入から保護できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下に、本発明における実施の形態について、図1を参照にして詳細に説明する。
【0026】
まず、図1は本発明の空洞部を有する回路基板の断面図を示す。
【0027】
空洞部を有する回路基板10は、上基板11、下基板12、接着層13、空洞部14、スルーホール電極15a、15b、および貫通孔16a、16bから構成される。
【0028】
上基板11は、両表面に導電箔20a、20bを貼り付けたガラスエポキシ基板である。裏面の導電箔20bの任意の位置には、空洞部と同じ形状の空洞パターンの導電箔20bをエッチングして形成する。空洞パターンの導電箔20bの周囲は接着層13となるボンディングシート等で囲まれる。
【0029】
表面の導電箔20aは、第1の回路パターン17を有し、第1の回路パターン17は露光現像、エッチングにより形成される。
【0030】
下基板12は、両表面に導電箔21a、21bを貼り付けたガラスエポキシ基板である。裏面の導電箔21bは、まず、空洞部と同じ形状の空洞パターンの導電箔21bをエッチングして形成し、その周囲を絶縁物であるアンダーコート樹脂34などで埋めて、それから空洞パターンの導電箔21bをエッチング除去して空洞部14を形成している。
【0031】
表面の導電箔21aは、第2の回路パターン19を有し、第2の回路パターン19は露光現像、エッチングにより形成される。
【0032】
接着層13は、ガラスクロスにエポキシ系樹脂を半硬化させたスーパーボンディングシート(商品名)を用いて、両基板11,12の裏面同士を貼り合わせて1つの回路基板となる。
【0033】
空洞部14は、下基板12の裏面に形成された空洞パターンの導電箔21bをエッチング除去してできた空洞とそれを囲むアンダーコート樹脂34と上基板11の裏面の空洞部と同じ形状の空洞パターンの導電箔20bとで囲まれた空間で形成される。なお、空洞パターンの導電箔20bは除去されて上基板11の表面が露出する場合もある。
【0034】
スルーホール電極15a、15bは、上基板11、下基板12および接着層13を貫通するスルーホール18a、18bを形成し、スルーホールメッキ処理を行った電極である。ここでは、図示したごとく、回路基板10の両端に2つ形成される。スルーホール電極15a、15bは第1の回路パターン17、第2の回路パターン19の所望個所を電気的に接続する。
【0035】
貫通孔16a、16bは、上基板11あるいは下基板12の表面から空洞部14の両端に対してNC工作機で形成された穴である。貫通孔16a、16bは上基板11あるいは下基板12のみ形成されてもいいし、上基板11と下基板12にそれぞれ分けて設けても良い。
【0036】
なお、空洞部14はMEMSマイクロフォンの音孔としての利用が考えられるが、MEMS非接触温度センサなどの検出孔としての利用も可能である。
【0037】
次に、図2を具体化された回路基板を説明する底面図および上面図である。
【0038】
図2(A)は、下基板12の表面の導電箔21aで形成した第2の回路パターン19を示している。4隅に貴金属メッキ層からなるA、B、C、Dの外付電極を有し、中央に斜め方向に示した点線が本発明の空洞部14である。黒く塗られた4つの丸はスルーホール電極15a、15b(残りの2つは符号なし)である。
【0039】
図2(B)は、上基板11の表面の導電箔20aで形成した第1の回路パターン17を示している。黒く塗られた4つの丸はスルーホール電極15a、15b(残りの2つは符号なし)である。黒く塗られた4つの丸はスルーホール電極15a、15b(残りの2つは符号なし)であり、A、B、C、Dの外付電極に接続されている。中央に斜め方向に示した点線が本発明の空洞部14である。反対の面から見るために図2(A)と直交方向に傾斜して見える。
【0040】
また、中央部の貫通孔16a上にはダイアフラムを有するMEMS等の回路素子23がダイアフラムを貫通孔16aに対向させて固着され、回路素子23の各ボンディングパッド24と第1の回路パターン17に設けた各接続電極25とをボンディングワイヤーで接続する。
【0041】
このような構造では回路基板10の周辺に設けた貫通孔16bから集音して、空洞部14を伝播して貫通孔16aから回路素子23のダイアフラムに伝達される。なお、ダイアフラムについては図8で説明するものと同じである。
【0042】
次に、本発明による空洞部を有する回路基板の製造方法について、図3〜図5を参照して説明する。
【0043】
本発明の製造方法は、両面に導電箔を設けた上基板を準備する工程と、前記上基板の一方の前記導電箔をエッチングして予定の空洞パターンを形成する工程と、両面に導電箔を設けた下基板を準備する工程と、前記下基板の一方の前記導電箔をエッチングして予定の空洞部となる部分を残す工程と、前記下基板の前記予定の空洞部となる部分の前記導電箔の周囲を絶縁層で埋め、前記予定の空洞部となる部分の前記導電箔をエッチングして前記空洞部を形成する工程と、前記上基板の前記予定の空洞パターンの周囲に接着層を付着する工程と、前記上基板と下基板とを前記接着層で貼り合わせて前記空洞部を形成する工程とから構成される。
【0044】
まず、図3を参照して、上基板11の製造方法を説明する。
【0045】
図3(A)では、上基板11の両表面に銅などの導電箔20a、20bを貼り付けたガラスエポキシ基板を用意する。導電箔20a、20bは12μmの銅箔を用い、上基板11は0.06mmの板厚のものを用いる。表面の導電箔20aは回路素子を載置する第1の回路パターンを形成するために用いられる。裏面の導電箔20bは空洞パターンを形成し、後述するボンディングシートの加工を行う。なお、上基板11はガラスエポキシ樹脂以外でも、BTレジン、コンポジット、ガラスポリイミド樹脂あるいは紙フェノール樹脂等のプリント基板材料の中から選択される。BTレジンはT成分(トリアジン樹脂)を主成分とし、B成分(多官能マレイミド化合物)または他の改質用化合物より構成された高耐熱付加重合型熱硬化性樹脂の総称を言う。コンポジットは複数の基板材料を積層したものである。なお、上基板11にはコーナーに製造工程中の位置出しをするガイド孔31が設けられる。
【0046】
図3(B)では、上基板11の裏面の導電箔20bは空洞パターンとなる部分をレジスト層32で選択的に覆い、空洞パターンのパターン形成をする。
【0047】
図3(C)では、レジスト層32をマスクとして裏面の導電箔20bをエッチングして空洞パターンの導電箔20bを残す。空洞パターンの導電箔20bはスルーホール電極の一部となる導電箔20bとともに残される。空洞パターンの導電箔20bの役割は空洞部14の上面を導電箔20bを残すことで平坦性等により音などの振動を伝播し易くすることと空洞部14の補強をするためである。
【0048】
図3(D)では、上基板11の裏面の導電箔20b側に全面をボンディングシートで覆う。このボンディングシートは接着層13を作るものである。
【0049】
図3(E)では、レーザー加工により空洞パターンの裏面の導電箔20b上のボンディングシートを選択的に除去し、空洞パターンの導電箔20bの周りの上基板11を埋める。
なお、本工程ではCO2レーザーを用いて空洞パターンの裏面の導電箔20b上のボンディングシートを除去するので、導電箔20bの表面が露出される。これによりボンディングシートが空洞部に垂れ下がり空洞部14を塞いだり、変形することを防止する。
【0050】
続いて、図4を参照して、下基板12の製造方法を説明する。
【0051】
図4(A)では、下基板12の両表面に銅などの導電箔21a、21bを貼り付けたガラスエポキシ基板を用意する。導電箔21a、21bは18μmの銅箔を用い、下基板12は0.1mmの板厚のものを用いる。表面の導電箔21aは回路素子等を載置する第2の回路パターンを形成するために用いられる。裏面の導電箔21bは空洞部を形成するために用いられる。なお、下基板12はガラスエポキシ樹脂以外でも、BTレジン、コンポジット、ガラスポリイミド樹脂あるいは紙フェノール樹脂等のプリント基板材料の中から選択される。BTレジンはT成分(トリアジン樹脂)を主成分とし、B成分(多官能マレイミド化合物)または他の改質用化合物より構成された高耐熱付加重合型熱硬化性樹脂の総称を言う。コンポジットは複数の基板材料を積層したものである。なお、下基板12も上基板11と同様にコーナーに製造工程中の位置出しをするガイド孔31が設けられる。
【0052】
図4(B)では、下基板12の裏面の導電箔21bは空洞パターンとなる部分をレジスト層 で選択的に覆い、空洞パターンのパターン形成をする。
【0053】
図4(C)では、レジスト層33をマスクとして裏面の導電箔21bをエッチングして空洞パターンの導電箔21bを残す。
【0054】
図4(D)では、下基板12の裏面全体にアンダーコート樹脂34等を厚く塗布し、空洞パターンの導電箔21bを埋める。アンダーコート樹脂34としてはポリイミド樹脂が最適であり、液状のポリイミド樹脂を滴下してスピンナーで一様に広げて加熱硬化させる。
【0055】
図4(E)では、アンダーコート樹脂34を裏面の導電箔21bの厚みまで研磨して、裏面の導電箔21bの表面を露出させる。
【0056】
図4(F)では、露出された裏面の導電箔21bをエッチングして除去し、アンダーコート樹脂で周囲を囲まれた空洞部14を形成する。すなわち、空洞パターンの裏面の導電箔21bが取り除かれて、そっくり空洞部14を形成する。
【0057】
従って、空洞部14は裏面の導電箔21bの空洞パターンにより任意の形状に作れ、たとえば渦巻状、ホーン形状、蛇行形状等が実現できる。また、空洞部14の厚みは裏面の導電箔21bの厚みに依存するので、この厚みを選択することで任意の厚みに形成できる。
【0058】
更に、図5を参照して両基板の貼り合わせ工程を説明する。
【0059】
図5(A)では、上基板11の裏面と下基板12の裏面とを対向させてガイド孔31を用いて位置合わせする。
【0060】
図5(B)では、上基板11と下基板12とを接着層13により貼り合わせて空洞部14を形成する。上基板11と下基板12とを重ねて油圧プレス機で3〜5MPaで加圧しながら、160〜170℃で1時間ほどアニールして接着層13を本硬化させて上基板11と下基板12と接着層13で一体に接着して空洞部14を有する回路基板を完成させる。
【0061】
図5(C)では、スルーホール電極15a、15bを形成するためのスルーホール15がNC工作機を用いてドリル等で上基板11および下基板12および接着層13を貫通して開けられる。
【0062】
図5(D)では、スルーホールにスルーホールメッキを用いてスルーホール電極15a、15bを形成する。貼り合わせた上基板11および下基板12をパラジウム溶液に浸漬させ、両導電箔20a、21aを電極としてスルーホールの内壁に銅の電解メッキし、銅ペーストを充填してスルーホール電極15a、15bを形成する。
【0063】
図5(E)では、上基板11および下基板12の外側に面する導電箔20a、21aをレジスト層で被覆し、上基板11の導電箔20aには第1の回路パターン17のレジスト層を、下基板12の導電箔21aには第2の回路パターン19のレジスト層を露光現像し、残ったレジスト層をマスクとして導電箔20a、21aを同時にエッチングする。この際に、空洞部14は上基板11と下基板12とを接着層13により密閉されているので、エッチング溶液が空洞部14に侵入することはない。導電箔20a、21aが銅のときはエッチング溶液として塩化第2鉄を用いる。具体的な第1の回路パターン17および第2の回路パターン19は図2に示している。
【0064】
最後に、図6を参照して回路基板の最終加工を説明する。
【0065】
図6(A)では、第1の回路パターン17および第2の回路パターン19の形成に用いたレジスト層を剥離除去し、新たなレジスト層を被覆して外付電極や回路素子のボンディング電極等の表面処理を行う第1の回路パターン17および第2の回路パターン19を露出させる。
【0066】
図6(B)では、露出された第1の回路パターン17と第2の回路パターン19の表面に3μmのニッケル層と0.3μmの金層を設けて、外付電極35や回路素子のボンディング電極の表面処理を行う。このニッケル層と金層により回路素子の固着、金属細線のボンディングあるいは半田付けが可能となる。
【0067】
図6(C)では、空洞部14まで貫通する貫通孔16a、16bが、NC工作機を用いてルーターで上基板11の表面から形成される。貫通孔16a、16bはそれぞれ半径0.6mmおよび半径1.7mmである。なお、貫通孔の穴加工は、空洞部14上端で寸止めされる。貫通孔16a、16bにより空洞部14は、外気と連絡される。
【0068】
その後、上基板11の第1の回路パターン17には図2に示すように回路素子が予定の位置に固着され、ボンディングワイヤーなどで接続される。下基板12の第2の回路パターン19は主に外付電極35(図2ではA、B、C、Dで示す)として用いられ、プリント基板などに表面実装されるときに用いる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の空洞部を有する回路基板の断面図である。
【図2】本発明の空洞部を有する回路基板の(A)底面図および(B)上面図である。
【図3】本発明の製造方法で完成した空洞部を有する回路基板の上基板の製造工程を説明する断面図(A)〜(E)である。
【図4】本発明の製造方法で完成した空洞部を有する回路基板の下基板の製造工程を説明する断面図(A)〜(F)である。
【図5】本発明の製造方法で完成した空洞部を有する回路基板の上基板と下基板の貼り合わせ工程を説明する断面図(A)〜(E)である。
【図6】本発明の製造方法で完成した空洞部を有する回路基板の最終の製造工程を説明する断面図(A)〜(C)である。
【図7】従来の回路基板を説明する断面図である。
【図8】MEMS回路素子を説明する断面図である。
【図9】MEMS回路素子を実装した従来の実装構造を説明する断面図である。
【符号の説明】
【0070】
10 回路基板
11 上基板
12 下基板
13 接着層
14 空洞部
15a、15b スルーホール電極
16a、16b 貫通孔
17 第1の回路パターン
18a、18b スルーホール
19 第2の回路パターン
20a、20b 導電箔
21a、21b 導電箔
31 ガイド孔
32、33 レジスト層
34 アンダーコート樹脂
35 外付電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上基板と、
前記上基板の表面の前記導電箔から形成した任意の第1の回路パターンと、前記上基板の裏面に設けた接着シートと、
下基板と、
前記下基板の表面の前記導電箔から形成した任意の第2の回路パターンと、前記下基板の裏面の前記導電箔を除去して形成した空洞とその周囲に設けた絶縁層と、
前記上基板の裏面の前記接着シートと前記下基板の裏面の前記絶縁層とを接着して、前記上基板、前記下基板および前記絶縁層とで囲まれる空洞部と、
前記上基板の前記第1の回路パターンと前記下基板の前記第2の回路パターンとを接続するスルーホール電極とを具備することを特徴とする空洞部を有する回路基板。
【請求項2】
前記空洞部に前記上基板あるいは前記下基板を貫通する貫通孔を設けたことを特徴とする請求項1に記載の空洞部を有する回路基板。
【請求項3】
前記貫通孔上に回路素子のダイアフラムを配置することを特徴とする請求項2に記載の空洞部を有する回路基板。
【請求項4】
両面に導電箔を設けた上基板を準備する工程と、
前記上基板の一方の前記導電箔をエッチングして予定の空洞パターンを形成する工程と、
両面に導電箔を設けた下基板を準備する工程と、
前記下基板の一方の前記導電箔をエッチングして予定の空洞部となる部分を残す工程と、
前記下基板の前記予定の空洞部となる部分の前記導電箔の周囲を絶縁層で埋め、前記予定の空洞部となる部分の前記導電箔をエッチングして前記空洞部を形成する工程と、
前記上基板の前記予定の空洞パターンの周囲に接着層を付着する工程と、
前記上基板と下基板とを前記接着層で貼り合わせて前記空洞部を形成する工程とを具備することを特徴とする空洞部を有する回路基板の製造方法。
【請求項5】
両面に導電箔を設けた上基板を準備する工程と、
前記上基板の一方の前記導電箔をエッチングして予定の空洞パターンを形成する工程と、
両面に導電箔を設けた下基板を準備する工程と、
前記下基板の一方の前記導電箔をエッチングして予定の空洞部となる部分を残す工程と、
前記下基板の前記予定の空洞部となる部分の前記導電箔の周囲を絶縁層で埋め、前記予定の空洞部となる部分の前記導電箔をエッチングして前記空洞部を形成する工程と、
前記上基板の前記予定の空洞パターンの前記導電箔の周囲に接着層を付着する工程と、
前記上基板と下基板とを前記接着層で貼り合わせて前記空洞部を形成する工程と、
前記上基板および下基板を貫通するスルーホールを形成し、スルホール電極を形成する工程と、
前記上基板および下基板の外部に面する他方の導電箔をエッチングして前記上基板に第1の回路パターンを前記下基板に第2の回路パターンを形成する工程と、
前記上基板あるいは下基板より前記空洞部まで到達する貫通孔を形成する工程とを具備することを特徴とする空洞部を有する回路基板の製造方法。
【請求項6】
前述した工程に続き、前記第1の回路パターンに回路素子を配置する工程を具備することを特徴とする請求項5に記載の空洞部を有する回路基板を用いた回路装置の製造方法。
【請求項7】
前記回路素子としてダイアフラムを有する半導体素子を前記空洞部まで到達する貫通孔の上に組み込むことを特徴とする請求項6に記載の空洞部を有する回路基板を用いた回路装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−147955(P2010−147955A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−324910(P2008−324910)
【出願日】平成20年12月22日(2008.12.22)
【出願人】(598150488)株式会社エレメント電子 (13)
【Fターム(参考)】