説明

突板インサート用フィルム及びその製造方法、並びに、突板インサート成形品及びその製造方法

【課題】突板のパターンが細かくなった場合でも、突板とベースフィルムとの接着が強固な突板インサート用フィルム及びその製造方法、並びに、突板インサート成形品及びその製造方法を提供する。
【解決手段】突板インサート用フィルムは、ベースフィルムと、ホットメルト接着剤層を介して前記ベースフィルムの一方の面に接着された、所定のパターンを有する突板と、を備え、前記ホットメルト接着剤層は、前記ベースフィルムと前記突板との接着部分の周囲にはみ出したはみ出し部分を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、突板インサート用フィルム及びその製造方法、並びに、突板インサート成形品及びその製造方法に関する。この突板インサート成形品は、自動車内装用部品、家電製品装飾用部品、表示パネル、操作パネル、アミューズメント機器用操作部品および筐体、通信機器用操作部品および筐体などの成形品表面への装飾に用いられる。また、この突板インサート用フィルムは、上記突板インサート成形品を製造するために用いられる。本発明は、特に、突板と基材フィルムとの接着が強固な突板インサート用フィルム及びその製造方法、並びに、突板インサート成形品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車の内装等には、その装飾用として突板(突き板ともいう)を用いてインサート成形した突板インサート成形品が用いられている。このような突板インサート成形品を作製する過程では、例えば、感圧接着剤を用いて突板をベースフィルムに接着して突板インサート用フィルムを製造し、この突板インサート用フィルムを用いて突板インサート成型品を作成している(例えば、特許文献1及び特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−234786号公報
【特許文献2】特開2011−5769号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記のように感圧接着剤を用いて突板をベースフィルムに接着してパターン形成し、パターンを有する突板インサート用フィルムを作成した場合、用いる接着剤が感圧接着剤であるために、突板とベースフィルムとは、底面のみでしか接着しておらず、しかもパターンが細かくなった場合に突板とベースフィルムとの接着が十分でない場合があった。また、感圧接着剤による接着は弱く、突板がフィルムから分離する等のおそれがあった。
【0005】
そこで、本発明の目的は、突板のパターンが細かくなった場合でも、突板とベースフィルムとの接着が強固な突板インサート用フィルム及びその製造方法、並びに、突板インサート成形品及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様に係る突板インサート用フィルムは、
ベースフィルムと、
ホットメルト接着剤層を介して前記ベースフィルムの一方の面に接着された、所定のパターンを有する突板と、
を備え、
前記ホットメルト接着剤層は、前記ベースフィルムと前記突板との接着部分の周囲にはみ出したはみ出し部分を有する。
【0007】
本発明の第2態様に係る突板インサート用フィルムの製造方法は、突板の一方の面にホットメルト接着剤を設ける工程と、
前記突板を台座シートに仮固定し、前記突板に所定のパターンを形成する工程と、
前記所定パターンに不要な突板部分を抜きカスとして除去する工程と、
前記所定パターンを有する前記突板の前記ホットメルト接着剤を加熱して、再活性化する工程と、
前記再活性化したホットメルト接着剤にベースフィルムを貼り合わせた後、加圧して、前記ベースフィルムと前記突板との接着部分の周囲に前記ホットメルト接着剤がはみ出したはみ出し部分を形成する工程と、
前記突板から前記台座シートを除去する工程と、
を含む。
【0008】
また、第2態様の突板インサート用フィルムの製造方法において、前記突板の一方の面にホットメルト接着剤を設ける工程は、
前記突板の一方の面にシート状のホットメルト接着剤を配置し、前記シート状のホットメルト接着剤を加熱して、前記突板の一方の面にホットメルト接着剤を設ける、こととしてもよい。
【0009】
さらに、第2態様の突板インサート用フィルムの製造方法において、前記突板の一方の面にホットメルト接着剤を設ける工程は、
前記突板の一方の面に溶融状のホットメルト接着剤を塗布することによって、前記突板の一方の面にホットメルト接着剤を設ける、こととしてもよい。
【0010】
また、第2態様の突板インサート用フィルムの製造方法において、前記突板を台座シートに仮固定し、前記突板に所定のパターンを形成する工程は、
前記突板の前記ホットメルト接着剤を設けていない他方の面を、粘着剤を介して台座シートに仮固定し、前記突板の前記ホットメルト接着剤を接着している面から、所定のパターンを形成する、こととしてもよい。
【0011】
さらに、第2態様の突板インサート用フィルムの製造方法において、前記突板を台座シートに仮固定し、前記突板に所定のパターンを形成する工程は、
前記突板の前記ホットメルト接着剤を設けている面を、粘着剤を介して台座シートに仮固定し、前記突板の前記ホットメルト接着剤を接着していない他方の面から、所定のパターンを形成する、こととしてもよい。
【0012】
本発明の第3態様に係る突板インサート成型品は、表面側に露出した所定のパターンを有する突板と、
前記パターン以外の表面と、前記突板の表面以外の側面及び底面とを覆うベースフィルムと、
前記ベースフィルムと接して設けられた成形樹脂と、
を備え、
前記ベースフィルムと前記突板との境界面において、前記突板は、前記突板の底面から側面にかけて、ホットメルト接着剤層を介して前記ベースフィルムの一方の面に接着された、突板インサート成型品。
【0013】
本発明の第4態様に係る突板インサート成型品の製造方法は、射出成形用金型の一組の金型のうち、一方の金型内に、請求項1に記載の突板インサート用フィルムを、前記ベースフィルムとは反対側の面を前記金型内面に対向するように配置する工程と、
前記金型内を真空吸引して、前記突板インサート用フィルムを前記金型内面に吸引する工程と、
前記金型と対向する他方の金型とを合わせて型閉め後、前記一組の金型のキャビティ内に成形樹脂を充填して前記突板インサート用フィルムと成形樹脂とが一体化した突板インサート成形品を得る工程と、
を含む。
【発明の効果】
【0014】
本発明の第1態様に係る突板インサート用フィルムによれば、突板とベースフィルムとの間をホットメルト接着剤で接着するので、感圧接着剤に比べてより強く接着できる。さらに、この突板インサート用フィルムは、突板とベースフィルムとの接着部分の周囲にホットメルト接着剤がはみ出したはみ出し部分を有する。そこで、この突板インサート用フィルムを突板インサート成型品の製造に用いた場合、突板の底面から側面にかけてホットメルト接着剤が回り込むため、突板とベースフィルムとがより強固に接着される。
【0015】
本発明の第2態様に係る突板インサート用フィルムの製造方法によれば、突板とベースフィルムとの接着部分の周囲にホットメルト接着剤がはみ出したはみ出し部分を有する突板インサート用フィルムを得ることができる。そこで、上記第1態様に係る突板インサート用フィルムによる効果を奏することができる。
【0016】
本発明の第3態様に係る突板インサート成型品によれば、ベースフィルムと突板との境界面において、突板は、突板の底面から側面にかけて、ホットメルト接着剤層を介してベースフィルムの一方の面に接着されている。そこで、この突板インサート成型品では、突板の底面から側面にかけてホットメルト接着剤が回り込んでいるため、突板とベースフィルムとがより強固に接着される。
【0017】
本発明の第4態様に係る突板インサート成型品の製造方法によれば、突板とベースフィルムとの接着部分の周囲にホットメルト接着剤がはみ出したはみ出し部分を有する第1態様に係る突板インサート用フィルムを用いている。そこで、製造される突板インサート成型品では、突板の底面から側面にかけてホットメルト接着剤が回り込んでいるため、突板とベースフィルムとがより強固に接着される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】(a)は、本発明の実施の形態1に係る突板インサート用フィルムの製造方法のうち、突板にホットメルト接着剤を設ける工程を示す断面図であり、(b)は、(a)の工程の別例を示す断面図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る突板インサート用フィルムの製造方法のうち、突板にピナクル型によってパターンを形成する工程を示す断面図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係る突板インサート用フィルムの製造方法のうち、所定パターンに不要な突板部分を抜きカスとして除去する工程を示す断面図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係る突板インサート用フィルムの製造方法のうち、突板のホットメルト接着剤を加熱して、再活性化する工程を示す断面図である。
【図5】本発明の実施の形態1に係る突板インサート用フィルムの製造方法のうち、再活性化したホットメルト接着剤にベースフィルムを貼り合わせた後、加圧して、ベースフィルムと突板との接着部分の周囲にはみ出したはみ出し部分を形成する工程を示す断面図である。
【図6】本発明の実施の形態1に係る突板インサート用フィルムの製造方法のうち、突板から台座シートを除去して、突板インサート用フィルムを得る工程を示す断面図である。
【図7】(a)は、本発明の実施の形態2に係る突板インサート用フィルムの製造方法のうち、突板にホットメルト接着剤を設ける工程を示す断面図であり、(b)は、(a)の工程の別例を示す断面図である。
【図8】本発明の実施の形態2に係る突板インサート用フィルムの製造方法のうち、突板にピナクル型によってパターンを形成する工程を示す断面図である。
【図9】本発明の実施の形態2に係る突板インサート用フィルムの製造方法のうち、所定パターンに不要な突板部分を抜きカスとして除去する工程を示す断面図である。
【図10】本発明の実施の形態2に係る突板インサート用フィルムの製造方法のうち、突板パーツセットジグに突板パーツをセットして、真空吸引で固定する工程を示す断面図である。
【図11】本発明の実施の形態2に係る突板インサート用フィルムの製造方法のうち、突板のホットメルト接着剤を加熱して、再活性化する工程を示す断面図である。
【図12】本発明の実施の形態2に係る突板インサート用フィルムの製造方法のうち、再活性化したホットメルト接着剤にベースフィルムを貼り合わせた後、加圧して、ベースフィルムと突板との接着部分の周囲にはみ出したはみ出し部分を形成する工程を示す断面図である。
【図13】本発明の実施の形態2に係る突板インサート用フィルムの製造方法のうち、突板から台座シートを除去して、突板インサート用フィルムを得る工程を示す断面図である。
【図14】透明ベースフィルムを用い、その裏面に印刷層を設けた裏刷り型の突板インサート用フィルムの断面構造を示す断面図である。
【図15】ベースフィルムの表面側に印刷層とトップコート層とを設けた表刷り型の突板インサート用フィルムの断面構造を示す断面図である。
【図16】突板積層体のホットメルト接着剤層側からパターンの抜き加工工程を行う場合の断面図である。
【図17】突板積層体の突板側からパターンの抜き加工工程を行う場合の断面図である。
【図18】本発明の実施の形態1に係る突板インサート成型品の表面のパターンの一例を示す平面図である。
【図19】図16のホットメルト接着剤層側からパターンの抜き加工工程を行って得られた突板インサート用フィルムを用いた場合の、図18のa−a線に沿った部分断面図である。
【図20】図17の突板側からパターンの抜き加工工程を行って得られた突板インサート用フィルムを用いた場合の、図18のa−a線に沿った部分断面図である。
【図21】図17の突板側からパターンの抜き加工工程を行うと共に、透明ベースフィルムを用い、その裏面に印刷層を設けた裏刷り型の突板インサート用フィルムの断面構造を示す断面図である。
【図22】図21の裏刷り型の突板インサート用フィルムを用いて得られた突板インサート成型品の断面構造を示す断面図である。
【図23】突板インサート用フィルムを射出成形金型内にセットした状態を示す断面図である。
【図24】図23でセットした突板インサート用フィルムを真空吸引して金型内面に吸着した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態に係る突板インサート用フィルム及びその製造方法、並びに、その突板インサート用フィルムを用いた突板インサート成形品及びその製造方法について、添付図面を参照しながら説明する。なお、図面において、実質的に同一の部材については同一の符号を付している。
【0020】
(実施の形態1)
図6は、実施の形態1に係る突板インサート用フィルム10の一実施例を示す断面図である。この突板インサート用フィルム10は、ベースフィルム2と、ホットメルト接着剤層3を介してベースフィルム2の一方の面に接着された、所定のパターンを有する突板積層体1と、を備える。この突板インサート用フィルムによれば、突板とベースフィルムとの間をホットメルト接着剤で接着するので、感圧接着剤に比べてより強く接着できる。また、この突板インサート用フィルム10は、ホットメルト接着剤層3が、ベースフィルム2と突板積層体1との接着部分の周囲にはみ出したはみ出し部分14を有することを特徴とする。そこで、この突板インサート用フィルムを突板インサート成型品の製造に用いた場合、突板の底面から側面にかけてホットメルト接着剤が回り込むため、突板とベースフィルムとがより強固に接着される。
【0021】
(変形例1)
次に、変形例1の突板インサート用フィルム10aについて、図14を用いて説明する。図14は、透明ベースフィルム2aを用い、その裏面に印刷層21を設けた裏刷り型の突板インサート用フィルム10aの断面構造を示す断面図である。
この裏刷り型の突板インサート用フィルム10aでは、図14に示すように、表面側になるベースフィルム2として透明ベースフィルム2aを用いている。これによって、裏面側に設けた印刷層21を保護しながら装飾部分としての印刷層21を表面から見ることができる。
【0022】
(変形例2)
また、変形例2の突板インサート用フィルム10bについて、図15を用いて説明する。図15は、ベースフィルム2の表面側に印刷層21とトップコート層23とを設けた表刷り型の突板インサート用フィルム10bの断面構造を示す断面図である。
この表刷り型の突板インサート用フィルム10bでは、ベースフィルム2に不透明なものを用いることができ、その表面側に印刷層21と、印刷層21を保護するトップコート層23とを設けている。
【0023】
(変形例3)
さらに、変形例3の突板インサート用フィルム10cについて、図21を用いて説明する。図21は、図17の突板積層体1側からパターンの抜き加工工程を行うと共に、透明ベースフィルム2aを用い、その裏面に印刷層21を設けた裏刷り型の突板インサート用フィルム10cの断面構造を示す断面図である。
この裏刷り型の突板インサート用フィルム10cでは、図21に示すように、突板積層体1の頂面が狭く底面が広い台形形状を有する。そこで、この突板インサート用フィルム10cを用いた突板インサートでは、図22に示すように、パターンの端部で透明ベースフィルム2aが突板積層体1を包み込むようになる。
【0024】
次に、この突板インサート用フィルム10を構成する各部材について説明する。
<突板積層体>
突板積層体1は、突板11と、接着剤層12と、不織布13とを順に積層して構成される。なお、不織布13及び接着剤層12を用いずに突板11のみで突板積層体1を構成してもよい。
この突板積層体1の厚みは、例えば0.2mm〜0.5mm、好ましくは0.2mm〜0.3mmの範囲である。
この突板積層体1は、所定のパターンに抜き加工されたものであり、突板インサート用フィルム10としてベースフィルム2の片面に部分的に存在する。当該パターンは、例えば図18に示すような複雑な形状のものが可能であり、装飾性に優れた突板インサート成形品20を得ることができる。
なお、明細書全体を通じて突板積層体1と突板11とを実質的に置換可能なものとして取り扱うことがある。
【0025】
<突板>
突板11とは、木材を薄く削いだ単版のことであり、一般に内装材や家具なので表面化粧材として用いられるものである。突板11には、色合いや木目の美しいホワイトオーク、チーク、ナラ、ケアキ、ローズ、ウォールナット、メイプル、ブヒンガ、チェリー、檜、樺、桐、楠、杉、コクタン、サペリ、シナ、スプルス、カリン、ゼブラ、セン、タモ、ニレ、マホガニー等の樹木を用いることができる。突板11の表面に現れる模様としては、柾目、板目、杢目などがある。また、突板11の突板インサート成形品表面となる側には、保護層をあらかじめ設けていてもよい。当該保護層としては、例えば、ハードコートインキを塗布するか、PMMAなどの樹脂フィルムの貼り合わせによって形成してもよい。
【0026】
<不織布>
不織布13は、突板11と接着剤12を介して接着されている。また、不織布13は、ホットメルト接着剤3を介してベースフィルム2と接着される。
【0027】
<接着剤>
接着剤12は、突板11と不織布13とを接着するものである。この接着剤12としては、突板11と不織布13とを確実に接着できるものであれば特に限定されない。なお、突板積層体1をホットメルト接着剤3によってベースフィルム2に接着するので、突板積層体1を構成する接着剤12としては、ホットメルト接着剤の再活性化時の加熱時に溶解する熱可塑性樹脂を含まないことが好ましい。
【0028】
<ベースフィルム>
ベースフィルム2の材質としては、例えば、アクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂)、スチレン系樹脂、、ポリエステル系樹脂、ポリプロピレン系樹脂(延伸ポリプロピレンフィルム(OPPフィルム)を含む。)、塩化ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、ナイロン樹脂、ビニロン樹脂、アセテート樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、等の樹脂を使用することができる。特に好ましくはアクリル系樹脂である。
なお、後述するように、透明ベースフィルム2aを用いる場合には、透明性を有するものを用いればよい。
【0029】
ベースフィルム2の膜厚としては、50μm〜200μmの範囲内のものを使用することができる。なお、膜厚は、100μm〜180μmの範囲がさらに好ましい。膜厚が50μm未満の場合、ベースフィルム2の材質によっては射出成型時に射出される成形樹脂によって突板積層体1の周囲でベースフィルム2が急激に伸ばされ、その伸びに耐えられず破れるおそれがある。また、膜厚が200μmを超える場合、逆に伸びが悪くなり、突板積層体1とベースフィルム2との周囲に溝ができるおそれがある。また、成型品の肉厚内でのフィルム厚みの比率が大きくなり、射出される成形樹脂の流動性が阻害され、ベースフィルム2のコストも高くなってしまう。
【0030】
また、ベースフィルム2として加飾されたものを用いてもよい。例えば、ベースフィルム2に単色印刷を全面的に設けたり、ベースフィルム2に着色材を含有させたりしてもよい。また、ベースフィルム2の表面に艶消しやヘアラインなどの微細凹凸模様を設けてもよい。さらには、これらを組み合わせてもよい。
【0031】
<ホットメルト接着剤>
ホットメルト接着剤層3としては、例えば、ウレタン系、ポリエステル系、合成ゴム系、ポリアミド系、EVA系等の熱可塑性樹脂からなる接着剤であれば使用できる。ホットメルト接着剤層3の厚さは、10μm〜100μmの範囲の範囲とする。また、25μm〜60μmの範囲がさらに好ましい。ホットメルト接着剤層3の厚さが10μm未満の場合には、ホットメルト接着剤3の一部が突板積層体1の不織布13に浸み込むため、ベースフィルム2との接着において所定の強度が得られない。一方、厚さが100μmを超える場合には突板積層体1の周囲でのホットメルト接着剤3のはみ出し部分14が多くなる。この結果、射出成型時に突板積層体1とベースフィルム2との間から表面側にホットメルト接着剤3がはみ出してしまい、突板インサート成型品としての外観不良を招く。
また、ホットメルト接着剤3の軟化温度は、70℃〜160℃の範囲であれば使用することができる。
上記軟化温度の範囲のホットメルト接着剤層3を用いることで、作業時の加熱部(ヒータ)15のヒータ温度として、120℃〜200℃の範囲とすることができる。なお、作業時の加熱部15のヒータ温度は、140℃〜170℃の範囲が好ましい。
【0032】
<突板インサート用フィルムの製造方法>
次に、本発明の実施の形態1に係る突板インサート用フィルムの製造方法について図1乃至図6を用いて説明する。
(1)突板積層体1の一方の面にホットメルト接着剤3を設ける(図1(a)又は(b))。ホットメルト接着剤3を設ける方法としては、シート状ホットメルト接着剤3を用いる方法(図1(a))と、溶融状ホットメルト接着剤3aを用いる方法がある(図1(b))。シート状ホットメルト接着剤3を用いる方法では、突板積層体1にシート状ホットメルト接着剤3を配置し、加熱部4によってシート状ホットメルト接着剤3を加熱して、突板積層体1にホットメルト接着剤3を接着する(図1(a))。一方、溶融状ホットメルト接着剤3aを用いる方法では、ローラ5を用いて溶融状ホットメルト接着剤3aを突板積層体1に接着する(図1(b))。
(2)突板積層体1を台座シート6に仮固定し、突板積層体1に所定のパターンを形成する(図2)。パターンを形成する方法としては、図2に示すように、ピナクル型8によって抜き加工する方法がある。
なお、突板積層体1の不要部分を抜きカス9として切除する方法としては、上記ピナクル型8による抜き工程に限らず、トムソン型などを用いた打抜き法のほか、金型によるプレス法、サンドブラスト法なども採用できる。とくに突板インサート用フィルム10のベースフィルム2がアクリル系樹脂からなる場合、抜きカス9がPETフィルムなどと比較すると脆いため、サンドブラスト法などで容易に切除ができる。
(3)所定パターンに不要な突板部分を抜きカス9として除去する(図3)。
(4)所定パターンを有する突板積層体1のホットメルト接着剤3を加熱して、再活性化する(図4)。ホットメルト接着剤3の加熱は、例えば、図4に示すように加熱部15をホットメルト接着剤層3に接触させて加熱してもよい。あるいは、輻射加熱、温風加熱によってホットメルト接着剤3を加熱してもよい。
(5)再活性化したホットメルト接着剤3にベースフィルム2を貼り合わせた後、加圧して、ベースフィルム2と突板積層体1との接着部分の周囲にホットメルト接着剤3がはみ出したはみ出し部分14を形成する(図5)。加圧は、例えば、図5に示すように加圧部16によってベースフィルム2と突板積層体1とを加圧してもよい。
(6)突板積層体1から台座シート6を除去する(図6)。
以上によって、突板インサート用フィルム10を得ることができる。
【0033】
次に、この突板インサート用フィルムの製造方法において用いる台座シート6について説明する。
【0034】
<台座シート>
台座シート6は、半導体・光学部品・電子部品製造におけるダイシング工程においてワークを固定する時などに使用されるダイシングテープ等を用いることができる。例えば、サンエー化研製の「SL216F」(ポリエチレン製で粘着材はアクリル系、フィルム厚0.016mm)や日東電工製の「R410」などがある。
【0035】
<工程(2)の変形例>
なお、上記突板インサート用フィルムの製造方法の、突板積層体1を台座シート6に仮固定し、突板積層体1に所定のパターンを形成する工程(2)の変形例について、図16及び図17を用いて説明する。図16は、突板積層体1のホットメルト接着剤層3側からパターンの抜き加工工程を行う場合の断面図である。図16は、工程(2)の図2と同じ側から抜き加工を行う場合である。一方、図17は、突板積層体1の突板11側からパターンの抜き加工工程を行う場合の断面図である。
この突板積層体1に所定のパターンを形成する工程(2)では、突板積層体1のホットメルト接着剤層3側からパターンの抜き加工工程を行う場合(図2、図16)に限られず、その変形例として、突板積層体1の突板11側からパターンの抜き加工工程を行ってもよい(図17)。この工程(2)の変形例によって、例えば、図21に示すような突板インサート用フィルム10cが得られる。なお、図21では、さらに、ベースフィルムとして透明ベースフィルム2aを用い、裏面に印刷層21及び接着層22を設けている。
【0036】
<突板インサート成形品の製造方法>
次いで、本発明に係る突板インサート用フィルムを用いた突板インサート成形品の製造方法について、図23及び図24を用いて説明する。
【0037】
(1)射出成形用金型の一組の金型25a、26bのうち、一方の金型25a内に、上記突板インサート用フィルム10を、ベースフィルム2とは反対側の面を金型25a内面に対向するように配置する(図23)。
(2)金型25a内を真空吸引して、突板インサート用フィルム10を金型25a内面に吸引する(図24)。
(3)金型25aと対向する他方の金型25bとを合わせて型閉め後、一組の金型25a、25bのキャビティ内に成形樹脂24を充填して突板インサート用フィルム10と成形樹脂24とが一体化した突板インサート成形品20を得る。
以上によって、突板インサート成形品20を得ることができる。
【0038】
この突板インサート成型品の製造方法によれば、突板積層体1とベースフィルム2との接着部分の周囲にホットメルト接着剤がはみ出したはみ出し部分14を有する突板インサート用フィルム10を用いている。そこで、製造される突板インサート成型品20では、突板積層体1の底面から側面にかけてホットメルト接着剤3が回り込んでいるため、突板積層体1とベースフィルム2とがより強固に接着される。
【0039】
以下に、この突板インサート成形品の製造方法において用いる成形樹脂24について説明する。
<成形樹脂>
成形樹脂24としては、例えば、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、ポリカ/ABSアロイ樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂などの汎用樹脂を用いることができる。さらに、ガラス繊維や無機フィラーなどの補強材を添加した複合樹脂も使用できる。また、成形樹脂24中は着色されていてもよい。
【0040】
<突板インサート成形品>
次に、実施の形態1に係る突板インサート成形品20について、図18から図20を用いて説明する。図18は、本発明の実施の形態1に係る突板インサート成型品20の表面のパターンの一例を示す平面図である。図19は、図16のホットメルト接着剤層3側からパターンの抜き加工工程を行って得られた突板インサート用フィルム10を用いた場合の、図18のa−a線に沿った部分断面図である。図20は、図17の突板11側からパターンの抜き加工工程を行って得られた突板インサート用フィルム10を用いた場合の、図18のa−a線に沿った部分断面図である。
【0041】
この突板インサート成形品20は、表面側に露出した所定のパターンを有する突板積層体1と、パターン以外の表面と、突板積層体1の表面以外の側面及び底面とを覆うベースフィルム2と、ベースフィルム2と接して設けられた成形樹脂24と、を備える。また、この、突板インサート成形品20は、図19及び図20の断面図に示されるように、ベースフィルム2と突板積層体1との境界面において、突板積層体1は、突板積層体1の底面から側面にかけて(回り込み部分14a)、ホットメルト接着剤層3を介してベースフィルム2の一方の面に接着されていることを特徴とする。そこで、この突板インサート成型品20では、突板積層体1の底面から側面にかけてホットメルト接着剤3が回り込んでいる(回り込み部分14a)ため、突板積層体1とベースフィルム2とがより強固に接着される。
【0042】
(突板インサート成形品の変形例)
また、変形例の突板インサート成形品20bについて、図22を用いて説明する。図22は、図21の裏刷り型の突板インサート用フィルム10cを用いて得られた突板インサート成型品20bの断面構造を示す断面図である。この変形例の突板インサート成形品20bでは、突板積層体1の頂面が狭く底面が広い台形形状を有するので、図22に示すように、パターンの端部で透明ベースフィルム2aが突板積層体1を包み込むようになる。
【0043】
(実施の形態2)
図7〜図13を用いて、実施の形態2に係る突板インサート用フィルムの製造方法について説明する。なお、実施の形態1に係る突板インサート用フィルムの製造方法と実質的に同一の(1)乃至(3)の工程(図7乃至図9)については省略し、(4)以降の工程について説明する。
(4)所定パターンを有する突板積層体1の突板パーツ17を突板パーツセットジグ18にセットする(図10)。この場合、突板パーツ17は、例えば、真空吸引孔19によって真空吸引して保持することができる。このような突板パーツセットジグ18を用いて突板パーツ17を保持することにより、細かいパターンを有する突板積層体の配置を正確に保持できる。
(5)所定パターンを有する突板積層体1のホットメルト接着剤3を加熱して、再活性化する(図11)。ホットメルト接着剤3の加熱は、例えば、図11に示すように加熱部15をホットメルト接着剤層3に接触させて加熱してもよい。あるいは、輻射加熱、温風加熱によってホットメルト接着剤3を加熱してもよい。
(6)再活性化したホットメルト接着剤3にベースフィルム2を貼り合わせた後、加圧して、ベースフィルム2と突板積層体1との接着部分の周囲にホットメルト接着剤3がはみ出したはみ出し部分14を形成する(図12)。加圧は、例えば、図12に示すように加圧部16によってベースフィルム2と突板積層体1とを加圧してもよい。
(6)突板積層体1から台座シート6を除去する(図13)。
以上によって、突板インサート用フィルム10を得ることができる。
【0044】
本発明は、添付図面を参照しながら好ましい実施形態に関連して充分に記載されているが、この技術の熟練した人々にとっては種々の変形や修正は明白である。そのような変形や修正は、添付した請求の範囲による本発明の範囲から外れない限りにおいて、その中に含まれると理解されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明に係る突板インサート用フィルム及び突板インサート成型品は、自動車内装用部品、家電製品装飾用部品、表示パネル、操作パネル、アミューズメント機器用操作部品および筐体、通信機器用操作部品および筐体などの成形品表面への装飾用途に用いることができ、産業上有用なものである。
【符号の説明】
【0046】
1 突板積層体
2 ベースフィルム
2a 透明ベースフィルム
3 シート状ホットメルト接着剤
3a 溶融状ホットメルト接着剤
4 熱プレス部
5 ローラ
6 台座シート
7 粘着剤層
8 ピナクル型
9 抜きカス
10、10a、10b、10c 突板インサート用フィルム
11 突板
12 接着剤層
13 不織布
14 はみ出し部分
14a 回り込み部分
15 加熱部
16 加圧部
17 突板パーツ
18 突板パーツセットジグ
19 真空吸引孔
20、20a、20b 突板インサート成型品
21 印刷層
22 接着層
23 トップコート層
24 成形樹脂
25a、25b 射出成形用金型

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースフィルムと、
ホットメルト接着剤層を介して前記ベースフィルムの一方の面に接着された、所定のパターンを有する突板と、
を備え、
前記ホットメルト接着剤層は、前記ベースフィルムと前記突板との接着部分の周囲にはみ出したはみ出し部分を有する、突板インサート用フィルム。
【請求項2】
突板の一方の面にホットメルト接着剤を設ける工程と、
前記突板を台座シートに仮固定し、前記突板に所定のパターンを形成する工程と、
前記所定パターンに不要な突板部分を抜きカスとして除去する工程と、
前記所定パターンを有する前記突板の前記ホットメルト接着剤を加熱して、再活性化する工程と、
前記再活性化したホットメルト接着剤にベースフィルムを貼り合わせた後、加圧して、前記ベースフィルムと前記突板との接着部分の周囲に前記ホットメルト接着剤がはみ出したはみ出し部分を形成する工程と、
前記突板から前記台座シートを除去する工程と、
を含む、突板インサート用フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記突板の一方の面にホットメルト接着剤を設ける工程は、
前記突板の一方の面にシート状のホットメルト接着剤を配置し、前記シート状のホットメルト接着剤を加熱して、前記突板の一方の面にホットメルト接着剤を設ける、請求項2に記載の突板インサート用フィルムの製造方法。
【請求項4】
前記突板の一方の面にホットメルト接着剤を設ける工程は、
前記突板の一方の面に溶融状のホットメルト接着剤を塗布することによって、前記突板の一方の面にホットメルト接着剤を設ける、請求項2に記載の突板インサート用フィルムの製造方法。
【請求項5】
前記突板を台座シートに仮固定し、前記突板に所定のパターンを形成する工程は、
前記突板の前記ホットメルト接着剤を設けていない他方の面を、粘着剤を介して台座シートに仮固定し、前記突板の前記ホットメルト接着剤を接着している面から、所定のパターンを形成する、請求項2に記載の突板インサート用フィルムの製造方法。
【請求項6】
前記突板を台座シートに仮固定し、前記突板に所定のパターンを形成する工程は、
前記突板の前記ホットメルト接着剤を設けている面を、粘着剤を介して台座シートに仮固定し、前記突板の前記ホットメルト接着剤を接着していない他方の面から、所定のパターンを形成する、請求項2に記載の突板インサート用フィルムの製造方法。
【請求項7】
表面側に露出した所定のパターンを有する突板と、
前記パターン以外の表面と、前記突板の表面以外の側面及び底面とを覆うベースフィルムと、
前記ベースフィルムと接して設けられた成形樹脂と、
を備え、
前記ベースフィルムと前記突板との境界面において、前記突板は、前記突板の底面から側面にかけて、ホットメルト接着剤層を介して前記ベースフィルムの一方の面に接着された、突板インサート成型品。
【請求項8】
射出成形用金型の一組の金型のうち、一方の金型内に、請求項1に記載の突板インサート用フィルムを、前記ベースフィルムとは反対側の面を前記金型内面に対向するように配置する工程と、
前記金型内を真空吸引して、前記突板インサート用フィルムを前記金型内面に吸引する工程と、
前記金型と対向する他方の金型とを合わせて型閉め後、前記一組の金型のキャビティ内に成形樹脂を充填して前記突板インサート用フィルムと成形樹脂とが一体化した突板インサート成形品を得る工程と、
を含む、突板インサート成形品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2013−95125(P2013−95125A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−243069(P2011−243069)
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ピナクル
【出願人】(000231361)日本写真印刷株式会社 (477)
【Fターム(参考)】