説明

窒化物半導体製造装置部品の洗浄方法と洗浄装置

【課題】窒化物半導体を製造する際、半導体製造装置を構成する各種部品が窒化物からなる汚染物で汚染された時、この汚染部品を部品の損傷、腐食を来すことなく、作業者が安全に作業することができる洗浄方法および清浄装置を提供する。
【解決手段】半導体製造装置の汚染部品を取り外して反応室1内に収める。ヒーター5を作動させて反応室1内の汚染部品を500〜1000℃の温度に加熱した後、第1洗浄ガス導入管2から塩素系ガスと希釈ガスからなる第1の洗浄ガスを反応室1内に導入する。汚染物が第1の洗浄ガスに含まれる塩素系ガスと反応し、反応物が揮発性のガスとなり、洗浄ガスに同伴されて排ガス排出管4から排出される。ついで、第2洗浄ガス導入管3から反応室1内に水素系ガスを含む第2の洗浄ガスを導入し、部品に残量している塩素系物質を水素系ガスと反応させ、塩化水素ガス等として除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒化ガリウム(GaN)や窒化ガリウムアルミニウム(AlGaN)等の窒化物半導体を製造する窒化物半導体製造装置を構成するウエハートレーなどの部品が窒化物半導体などで汚染された時に、この部品を洗浄する方法とその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
窒化物半導体製造装置(以下、「半導体製造装置」という。)では、ウエハー上にGaNやAlGaNなどの窒化物を堆積させて半導体を製造するが、この過程で、半導体製造装置内のウエハー上に堆積すべきGaNなどの半導体薄膜が、ウエハーを保持するウエハートレーやガス流路など、ウエハー以外の各種部品に付着する。
ウエハー以外の部品に付着したGaNなどの半導体薄膜は、不要な汚染物となり、窒化物半導体を製造する上で障害になるので、適宜汚染部品を洗浄して汚染物を除去する必要がある。
【0003】
この汚染部品の洗浄方法として、通常、水素洗浄と燐酸洗浄が併行して行われている。
水素洗浄は、主としてウエハートレーに付着した汚染物を除去するもので、ウエハートレーを1000℃以上の高温に保持しつつ半導体製造装置内に水素を通気して行う。1000℃以上にするのは、汚染物と水素との反応生成物を揮発除去するためである。
【0004】
燐酸洗浄は、ガス流路を構成するフローチャネル等に付着した汚染物を除去するもので、フローチャネル等の流路形成部品を半導体製造装置から取り外し、別の場所で、前記流路形成部品を加熱した燐酸に浸漬して洗浄するものである。
【0005】
また、特開平6−124894号公報には、クリーニング室内に汚染部品を収め、ハロゲン系ガスとアルゴンとの洗浄ガスを導入し、クリーニング室内でプラズマを発生させて、汚染物を除去する洗浄方法が開示されている。
酸化ケイ素を主体とする汚染物の除去については、特開20002−164335号公報に開示がある。
【特許文献1】特開2002−164335号公報
【特許文献2】特開平6−124894号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、水素洗浄ではウエハートレーを1000℃以上の高温に保持するため、ウエハートレーが熱変形してしまう怖れがあった。一方、燐酸洗浄では有毒な燐酸蒸気下で洗浄することになるので作業者が危険であった。
また、ハロゲン系ガスとアルゴンとの洗浄ガスをプラズマ状態として洗浄する方法では、洗浄後の部品にハロゲン系物質が残留することがあり、この残留ハロゲン系物質が半導体製造装置部品を腐食させ、正常な半導体の製造を阻害する恐れがある。
【0007】
よって、本発明における課題は、窒化物半導体を製造する際、半導体製造装置を構成する各種部品が上記汚染物で汚染された場合に、この汚染部品を部品の損傷、腐食を来すことなく、しかも作業者が安全に作業することができる洗浄方法および清浄装置を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる課題を解決するため、
請求項1にかかる発明は、窒化物半導体製造装置内の汚染された部品を、塩素系ガスを主成分とする第1の洗浄ガスと接触させて汚染物質を除去し、第2の洗浄ガスと接触させて部品に残留している塩素系物質を除去することを特徴とする窒化物半導体製造装置部品の洗浄方法である。
【0009】
前記第1の洗浄ガスの塩素系ガス濃度を5体積%以上とすることが好ましい。また、前記第1の洗浄ガスと汚染された部品との接触を、500〜1000℃で行うことが好ましい。
請求項2にかかる発明は、前記第1の洗浄ガスとの接触と第2の洗浄ガスとの接触がバッチ処理方式にて行われることを特徴とする請求項1記載の窒化物半導体製造装置部品の洗浄方法である。
【0010】
請求項3にかかる発明は、前記第1の洗浄ガスとの接触と第2の洗浄ガスとの接触が通気処理方式にて行われることを特徴とする請求項1記載の窒化物半導体製造装置部品の洗浄方法である。
請求項4にかかる発明は、前記第2の洗浄ガスが、水素ガスであることを特徴とする請求項1に記載の窒化物半導体製造装置部品の洗浄方法である。
請求項5にかかる発明は、前記第2の洗浄ガスと汚染された部品との接触が、500〜1000℃で行われることを特徴とする請求項1に記載の窒化物半導体製造装置部品の洗浄方法である。
【0011】
請求項6にかかる発明は、第1洗浄ガス導入管と第2洗浄ガス導入管と排出ガス排出管とを有する反応室と、この反応室内に収めた洗浄対象部品を500〜1000℃の温度に保持できる加熱手段と、第1洗浄ガス導入管に第1の洗浄ガスを送り込む第1洗浄ガス供給源と、第2洗浄ガス導入管に第2の洗浄ガスを送り込む第2洗浄ガス供給源を備えたことを特徴とする窒化物半導体製造装置部品の洗浄装置である。
【発明の効果】
【0012】
本発明方法によると、汚染された部品の汚染物は、第1の洗浄ガスに含まれる塩素系ガスと反応して反応生成物を生じ、該反応生成物は500℃以上の温度で生成するので直ちに気化し、これにより汚染物が除去され、汚染された部品は清浄になる。その後、部品が第2の洗浄ガスと接触することで、部品に残留している塩素系物質が除去され、部品に塩素系物質が残ることがない。
また、従来の水素洗浄のように1000℃以上の高温にする必要がないので、ウエハートレーなどの部品が熱変形せず、また、従来の燐酸洗浄のような有毒な環境下での洗浄ではないので作業者の安全が確保できる。
しかも、2種類の洗浄方法を使い分ける従来方法に比べ、本発明方法は一つの洗浄方法で洗浄できるメリットもある。
【0013】
また、本発明装置によれば、反応室内の密閉された空間内において、第1および第2の洗浄ガスと汚染部品に接触させて洗浄するので、作業者は安全に洗浄作業を行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は、本発明の洗浄装置の一例を示すものである。
この例の洗浄装置は、汚染された部品を収納するシリカなどの耐熱性材料で作られた反応室1と、この反応室1内に第1の洗浄ガスを導入する第1洗浄ガス導入管2と、同じく反応室1内に第2の洗浄ガスを導入する第2洗浄ガス導入管3と、反応室1内で生じた排ガスを排出する排ガス排出管4と、反応室1内を500℃〜1000℃の温度に保持できる一対のヒーター5、5(加熱手段)と、このヒーター5、5の出力を調整して反応室1内に収められた汚染部品の温度を500〜1000℃の範囲で一定に保持する温度調整器6から構成され、反応室1の底部には洗浄対象となる汚染部品7を載置する台8が配置されている。
【0015】
第1の洗浄ガスは、塩素、塩化水素などの塩素系ガスを充填した容器9と希釈ガスを充填した容器10から供給され、適宜両ガスが流量調節弁11,11により混合されて第1の洗浄ガスとなりガス導入弁16、16を通り、第1洗浄ガス導入管2を介して反応室1内に導入されるようになっている。
【0016】
第2の洗浄ガスは、水素、メタンなど水素系ガスを充填した容器12と希釈ガスを充填した容器13から供給され、適宜両ガスが流量調節弁14,14により混合されて第2の洗浄ガスとなりガス導入弁16、16を通り、第2洗浄ガス導入管3を介して反応室1内に導入されるようになっている。
【0017】
また、排ガス排出管4は、排出弁17を介して真空ポンプ15に接続されており、これにより反応室1内を真空減圧状態とすることができるようになっている。さらに、真空ポンプ15は、図示しない排ガス除害処理装置に接続されており、反応室1から排出される各種ガスが無害化されたのち、大気中に排出されるようになっている。
なお、ヒーター5は、発熱線、ランプ加熱など汚染部品を加熱可能なものなら何でも良く、個数も2つに限らず任意で良い。
【0018】
次に、この洗浄装置を用いて汚染された部品を洗浄する方法について説明する。本発明の洗浄方法には、バッチ処理方式と通気処理方式とがあり、初めにバッチ処理方式によるものを説明する。
バッチ処理方式とは、後述のように、第1の洗浄ガスを反応室1内に封入状態として所定時間処理し、ついで反応室1内の気体をパージしたのち、第2の洗浄ガスを所定時間封入状態として反応を行うものである。
まず、半導体製造装置から汚染された部品7を取り外して反応室1の台8の上に載置した後、反応室1を密閉する。
【0019】
次いで、ヒーター4を作動させて反応室1内の汚染部品を500〜1000℃の温度に加熱した後、真空ポンプ17を作動させ、反応室1内を減圧状態にしたのち、排出弁17を閉じ、ガス導入弁16、16を開いて第1洗浄ガス導入管2から第1の洗浄ガスを反応室1内に導入する。その後、ガス導入弁16、16を閉じ、第1の洗浄ガスを反応室1内に封入した状態とする。
【0020】
この際の第1の洗浄ガスとしては、塩素系ガスを希釈ガスで希釈した混合ガスが用いられる。塩素系ガスとしては、Cl(塩素)、HCl、SiCl、SiHCl、SiHCl、SiHCl、BCl、CHCl、CHCl、CHCl等の分子内に塩素を含む化合物の1種または2種以上の混合物が用いられるが、価格、反応性等を考慮すると塩素が特に好ましい。
【0021】
希釈ガスとしては、窒素、ヘリウム、アルゴン、空気などの塩素系ガスと反応しない任意のガスの1種または2種以上の混合ガスを用いることができる。第1の洗浄ガス中の塩素系ガス濃度は5体積%以上とされる。塩素系ガス濃度が5体積%未満でも汚染物は第1の洗浄ガス中の塩素系ガスと反応するが、反応速度が遅くなり実用性に乏しくなる。
【0022】
一方、塩素系ガス濃度を高くしすぎると、部品自体が腐食する怖れがあるが、封入するガス量が少なくて済み、塩素系ガス濃度は高いほうが洗浄性能は高まるので、100体積%が好ましい。
【0023】
この時、汚染部品を500℃以上の温度で接触させるのは、汚染物と第1の洗浄ガスとの反応によって生成された反応生成物を気化して排出するためである。500℃未満の温度でも反応生成物を気化できるが、揮発速度が遅くなるので洗浄方法としては実用的でない。また、接触時の温度を1000℃以下としたのは、汚染された部品の熱変形を防止する観点から定めたもので、1000℃以上の温度でも熱変形を起こさない部品であれば1000℃以上にしても良い。
【0024】
第1の洗浄ガスの封入を所定時間継続すると、汚染部品に付着した汚染物は第1の洗浄ガスに含まれる塩素系ガスと反応し、反応物が生成されるが、この反応物は直ちに蒸発して揮発性の排ガスとなり、反応室1内を漂う。
【0025】
その後、排出弁17を開けて第1の洗浄ガスおよび排ガスを排ガス排出管4から排出した後、再び真空ポンプ15を作動させて、反応室1内を減圧状態とし、排出弁17を閉じる。ついで、ガス導入弁16、16を開けて、第2の洗浄ガスを第2洗浄ガス導入管3から反応室1内に導入し、封入する。
【0026】
第2の洗浄ガスには、水素、メタン、エタンなどの分子内に水素を含む水素系ガスとこれを希釈するアルゴン、ヘリウム、窒素などの不活性ガスからなる希釈ガスとの混合ガスが用いられる。水素系ガスとしては、反応性の点で水素が最も好ましい。
【0027】
第2の洗浄ガス中の水素系ガスの濃度は、10〜100体積%とされ、10体積%未満では部品に残留している塩素系ガスを十分に除去することができない。一方、水素系ガス濃度は高い方が洗浄性能は高まるので、100体積%が好ましい。
第2の洗浄ガスと部品との接触温度は、500〜1000℃の範囲とされ、500℃未満では、残留している塩素系物質の除去が不十分となり、1000℃を越えると部品が熱変形を生じる。
【0028】
この第2の洗浄ガスと部品との接触により、先の第1の洗浄ガスとの接触の際に部品に付着して残留している塩素系ガスに起因する塩素系物質が第2の洗浄ガス中の水素系ガスと反応し、塩化水素ガス等となって部品から除去され、この塩化水素ガス等は、反応室1内を漂う。その後、排出弁17を開けて第2の洗浄ガスおよび塩化水素ガス等を排ガス排出管4から排出する。ついで、反応室1内に窒素等を導入して部品を室温まで冷却する。
【0029】
次に、本発明の通気処理方式による洗浄方法を説明する。
この通気処理方法とは、反応室1内に、第1の洗浄ガスを所定時間流し続け、ついで第2の洗浄ガスを所定時間流し続ける方法である。この方式で用いられる第1および第2の洗浄ガスは、先のバッチ処理方式のものと同じであり、反応温度、反応時間も原則同様でよい。
【0030】
まず、汚染部品7を反応室1の台8に載せ、反応室1を密閉する。ついで、真空ポンプ15を作動させて反応室1内の気体をパージする。こののち、ヒーター5、5を作動させて、反応室1内の汚染部品7の温度を500〜1000℃とし、第1洗浄ガス導入管2から第1の洗浄ガスを反応室1内に所定の流量で所定時間流し続ける。
【0031】
この第1の洗浄ガスの導入により、部品7に付着している汚染物は、第1の洗浄ガスに含まれる塩素系ガスと反応し、揮発性の排ガスとなって部品7から離脱し、この排ガスは、第1の洗浄ガスに同伴されて、反応室1から排ガス排出管4を経て系外に排出される。
【0032】
第1の洗浄ガスを所定時間流したのち、第1の洗浄ガスの導入を停止し、これと同時に第2の洗浄ガスを第2洗浄ガス導入管3から反応室1内に流し始める。この際の部品の温度は、500〜1000℃とされる。
第2の洗浄ガスを所定時間流したのち、第2の洗浄ガスの導入を停止する。
【0033】
第2の洗浄ガスの導入により、部品に付着している塩素系物質が水素系ガス中の水素と反応し、塩化水素ガス等となって部品から離脱し、このガスは、排ガス排出管4から排出される。ついで、反応室1内に窒素等を導入して部品7を室温まで冷却する。
【0034】
このように、本発明の洗浄方法では、第1の洗浄ガスの導入により部品に付着しているGaNなどの窒化物半導体からなる汚染物が除去され、第2の洗浄ガスの導入により部品に付着して残留している塩素系物質が除去されることになる。
このため、部品には、塩素系物質が残ることがなくなり、この塩素系物質によって部品が腐食することもなくなる。
さらに、この塩素系物質が部品から飛散し、窒化物半導体の成膜時の膜中に混入することもなく、良質の窒化物半導体膜を得ることもできる。
【0035】
また、本発明の洗浄方法では、半導体製造装置自体に上記第1および第2の洗浄ガスを導入しても良いが、装置自体の損傷が生じないようにする必要がある。
【0036】
以下具体例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
洗浄装置として、図1に記載の構成のものを使用した。
反応室として、内寸法で直径30cm、横100cmの円筒型のものを用い、第1の洗浄ガスと第2の洗浄ガスを導入した。模擬サンプルとして、サファイア基板上に膜厚が既知の窒化ガリウム、窒化ガリウムアルミニウムの結晶を成膜したものを用いた。
【0037】
(例1、バッチ処理方式)
膜厚3.0μmのGaN結晶を成膜したサファイア基板を反応室内に設置し、窒素42slmを供給しながら昇温した。反応室内温度が800℃に到達した後、窒素の導入を停止して、反応室1内を減圧状態としてから、塩素70リットルを封入して0.5時間の処理を行った。その後、封入ガスを排出して窒素42slmを流し、反応室内温度が室温となるまで冷却した。
サファイア基板を取り出し、SEMにより処理前後のGaN膜厚を測定した結果、GaN膜は全て除去されており、サファイア基板のみが残った。
【0038】
ついで、このサファイア基板表面に残留している塩素原子濃度をX線光電子分光分析装置(XPS)で測定したところ、1.5atomic%であった。
さらに、このサファイア基板を反応室内に戻し、封入ガスを水素70リットルとして0.5時間、温度800℃で反応させたのち、室温に冷却した。
このサファイア基板表面に残留している塩素原子濃度を同様にして測定したところ、0.1atomic%以下(N.D.)であった。
【0039】
(例2、バッチ処理方式)
膜厚1.0μmのAlGaN結晶を成膜したサファイア基板を反応室内に設置し、窒素42slmを供給しながら昇温した。反応室内温度が800℃に到達した後、窒素の導入を停止し、反応室内を減圧状態としてから塩化水素70リットルを封入して0.5時間の処理を行った。その後、封入ガスを排出してから窒素42slmを流し、反応室内温度が室温となるまで冷却した。
サファイア基板を取り出し、SEMにより処理前後のAlGaN膜厚を測定した結果、AlGaN膜は全て除去されており、サファイア基板のみが残った。
【0040】
ついで、このサファイア基板表面に残留している塩素原子濃度をX線光電子分光分析装置(XPS)で測定したところ、0.80atomic%であった。
さらに、このサファイア基板を反応室内に戻し、封入ガスを水素ガス70リットルとして0.5時間、温度800℃で反応させたのち、室温に冷却した。
このサファイア基板表面に残留している塩素原子濃度を同様にして測定したところ、0.1atomic%以下(N.D.)であった。
【0041】
(例3、通気処理方式)
膜厚3.0μmのGaN結晶を成膜したサファイア基板を反応室内に設置し、窒素42slmを供給しながら昇温した。反応室内温度が800℃に到達した後、導入ガスを窒素21slm+塩素21slm(塩素系ガス濃度50体積%)として、0.5時間の処理を行った。その後、導入ガスを窒素42slmとし、反応室内温度が室温となるまで冷却した。
サファイア基板を取り出し、SEMにより処理前後のGaN膜厚を測定した結果、GaN膜は全て除去されており、サファイア基板のみが残った。
【0042】
ついで、このサファイア基板表面に残留している塩素原子濃度をX線光電子分光分析装置(XPS)で測定したところ、1.4atomic%であった。
さらに、このサファイア基板を反応室内に戻し、導入ガスを窒素21slm+水素21slm(水素系ガス濃度50体積%)として0.5時間、温度800℃で流したのち、室温に冷却した。
このサファイア基板表面に残留している塩素原子濃度を同様にして測定したところ、0.1atomic%以下(N.D.)であった。
【0043】
(従来例1)
サファイア基板上に成膜した膜厚3.0μmのGaN結晶を反応室内に設置し、窒素42slmを供給しながら昇温した。反応室内温度が900℃に到達した後、導入ガスを水素42slmとして1.0時間の処理を行った。その後、導入ガスを窒素42slmに戻し、反応室内温度が室温となるまで冷却した。
サファイア基板を取り出し、処理後のGaN膜厚をSEMで測定した結果、膜厚は3.0μmであり、GaNの除去はできなかった。
【0044】
(従来例2)
GaN結晶を成膜した直径5cmの石英ガラスを反応室に設置し、窒素42slmを供給しながら昇温した。反応室内温度が1000℃に達した後、導入ガスを水素42slmとして、1.0時間の処理を行った。その後、導入ガスを窒素42slmに戻し、反応炉内温度が室温となるまで冷却した。この処理を30回おこなったのち、石英ガラスの反りを測定した結果、150ミクロンの反りが観察された。
【0045】
上記バッチ処理方式での例1と通気処理方式での例3を比較すると、塩素の使用量が、例1では70リットルであるのに対して、例3では21slm×30分=630リットルとなり、バッチ処理方式では、塩素ガスの使用量を通気処理方式のものの1/9に抑えることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の洗浄装置の一例を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0047】
1・・反応室、2・・第1洗浄ガス導入管、3・・第2洗浄ガス導入管3、4・・排出ガス排出管、5・・ヒータ、9・・容器、10・・容器、11・・流量調節弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒化物半導体製造装置内の汚染された部品を、塩素系ガスを主成分とする第1の洗浄ガスと接触させて汚染物質を除去し、第2の洗浄ガスと接触させて部品に残留している塩素系物質を除去することを特徴とする窒化物半導体製造装置部品の洗浄方法。
【請求項2】
前記第1の洗浄ガスとの接触と第2の洗浄ガスとの接触がバッチ処理方式にて行われることを特徴とする請求項1記載の窒化物半導体製造装置部品の洗浄方法。
【請求項3】
前記第1の洗浄ガスとの接触と第2の洗浄ガスとの接触が通気処理方式にて行われることを特徴とする請求項1記載の窒化物半導体製造装置部品の洗浄方法。
【請求項4】
前記第2の洗浄ガスが、水素ガスであることを特徴とする請求項1に記載の窒化物半導体製造装置部品の洗浄方法。
【請求項5】
前記第2の洗浄ガスと汚染された部品との接触が、500〜1000℃で行われることを特徴とする請求項1に記載の窒化物半導体製造装置部品の洗浄方法。
【請求項6】
第1洗浄ガス導入管と第2洗浄ガス導入管と排出ガス排出管とを有する反応室と、この反応室内に収めた洗浄対象部品を500〜1000℃の温度に保持できる加熱手段と、第1洗浄ガス導入管に第1の洗浄ガスを送り込む第1洗浄ガス供給源と、第2洗浄ガス導入管に第2の洗浄ガスを送り込む第2洗浄ガス供給源を備えたことを特徴とする窒化物半導体製造装置部品の洗浄装置。

【図1】
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【公開番号】特開2007−109928(P2007−109928A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−299884(P2005−299884)
【出願日】平成17年10月14日(2005.10.14)
【出願人】(000231235)大陽日酸株式会社 (642)
【Fターム(参考)】