説明

窒化物系半導体発光素子

【課題】半導体層に対するn側電極の密着性を向上させることが可能な窒化物系半導体発光素子を提供する。
【解決手段】この青紫色半導体レーザ素子100(窒化物系半導体発光素子)は、n型GaN基板1と、オーミック電極層30を含むn側電極22とを備える。そして、n側電極22のオーミック電極層30は、n型GaN基板1の下面1aを部分的に覆うように形成された非晶質SiからなるSi層31と、Si層31のn型GaN基板1とは反対側の表面と、Si層31により覆われていないn型GaN基板1の下面1aとに接触するように形成されたTi層32とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒化物系半導体発光素子に関し、特に、n型窒化物系半導体層の表面上に形成されたn側電極を備える窒化物系半導体発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、n型窒化物系半導体層の表面上に形成されたn側電極を備える窒化物系半導体発光素子などが知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、n型GaN基板と、n型GaN基板の下面上に導通性を有する接続層を介して形成されたn側電極とを備えた窒化物系半導体装置が開示されている。この窒化物系半導体装置では、接続層は、Siを含む材料を用いて均一な厚みを有していると記載されていることから連続的な層状(膜状)に形成されていると考えられ、接続層の上面の全面とn型GaN基板の下面とは一様に接触している。また、n側電極においては、Ti層がSiからなる接続層の下面に接触するように構成されている。このように、n型GaN基板とn側電極との間に層状のSiからなる接続層が形成されることにより、電極形成後の加熱プロセスの際に、n側電極を構成する金属多層膜とn型GaN基板との反応が抑制されるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−88008号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に開示された窒化物系半導体装置では、均一な厚みを有して層状に形成されたSiからなる接続層により、n側電極を構成する金属膜とn型GaN基板との反応が抑制される一方、n型GaN基板と、Siからなる接続層を介して形成されたn側電極との密着性について考慮されているか否かは不明である。ここで、Tiがn側電極とn型GaN基板との間のオーミック接触を維持する電極材料である点に加えて、Tiは、PtやAuなどの他の貴金属類からなる電極材料よりもn型GaN基板(半導体層)に対する付着力が優位な性質を有している。Ti層が半導体層に対して付着力が優れる点を鑑みた場合、上記特許文献1に開示された窒化物系半導体装置では、層状に形成されたSiからなる接続層によってn側電極(Ti層)とn型GaN基板とが完全に分断されているため、n型GaN基板に対する接続層の付着力(密着性)が不十分な場合には、Ti層を含めたn側電極全体が、n型GaN基板の下面から剥離しやすいという問題点がある。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、半導体層に対するn側電極の密着性を向上させることが可能な窒化物系半導体発光素子を提供することである。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の一の局面による窒化物系半導体発光素子は、n型窒化物系半導体層と、オーミック電極層を含むn側電極とを備え、n側電極のオーミック電極層は、n型窒化物系半導体層の表面を部分的に覆うように形成されたSiからなる第1金属層と、第1金属層のn型窒化物系半導体層とは反対側の表面と、第1金属層により覆われていないn型窒化物系半導体層の表面とに接触するように形成されたTiからなる第2金属層とを有する。
【0008】
この発明の一の局面による窒化物系半導体発光素子では、上記のように、オーミック電極層は、n型窒化物系半導体層の表面を部分的に覆うように形成されたSiからなる第1金属層と、第1金属層のn型窒化物系半導体層とは反対側の表面と、第1金属層により覆われていないn型窒化物系半導体層の表面とに接触するように形成されたTiからなる第2金属層とを有している。つまり、Tiからなる第2金属層は、Siからなる第1金属層を覆うのみならず、n型窒化物系半導体層の表面に直接接触した状態で形成されている。Tiは、n型窒化物系半導体層に対する付着力が優位な性質を有しているので、第2金属層を含むn側電極を、高い密着性を有した状態でn型窒化物系半導体層の表面上に形成することができる。これにより、n型窒化物系半導体層に対するn側電極の密着性を向上させることができる。また、n型窒化物系半導体層の表面からn側電極が剥れにくくなるので、電極部材の部分的な剥れに起因してn側電極の抵抗値が上昇を来たすことが抑制される。その結果、動作電圧が上昇しにくい窒化物系半導体発光素子を得ることができる。また、n側電極の第1金属層をSiにより形成することによって、n側電極自体の耐熱性を向上させながらn型窒化物系半導体層との良好なオーミック接触を得ることができる。
【0009】
上記一の局面による窒化物系半導体発光素子において、好ましくは、第1金属層は、Siがn型窒化物系半導体層の表面上に島状に分布した状態で、n型窒化物系半導体層の表面を部分的に覆うように形成されている。このように構成すれば、Tiからなる第2金属層の一部を、島状となった第1金属層と第1金属層から露出するn型窒化物系半導体層との隙間に入り込ませてn型窒化物系半導体層の表面に容易に接触させることができる。この結果、n型窒化物系半導体層に対するn側電極の密着性を容易に向上させることができる。
【0010】
この場合、好ましくは、島状の第1金属層の厚みは、1nm以上5nm以下である。このように構成すれば、Siからなる第1金属層を、容易に島状の状態でn型窒化物系半導体層の表面上に形成することができる。
【0011】
上記第1金属層におけるSiが島状に分布した状態で形成される構成において、好ましくは、Tiからなる第2金属層の厚みは、島状の第1金属層の厚みよりも大きい。このように構成すれば、第2金属層に関して、金属膜が層状(膜状)を十分に維持した状態で、かつ、金属膜の一部がn型窒化物系半導体層の表面に接触するような第2金属層を容易に形成することができる。
【0012】
上記一の局面による窒化物系半導体発光素子において、好ましくは、n側電極は、オーミック電極層の第2金属層の第1金属層とは反対側に形成されたパッド電極層と、オーミック電極層とパッド電極層との間に形成されたPtからなるバリア層とをさらに含み、Ptからなるバリア層の厚みは、オーミック電極層を構成するSiからなる第1金属層およびTiからなる第2金属層の合計厚みよりも大きい。このように構成すれば、n側電極を融着層を介して基台(サブマウント)に接合する際、加熱プロセスにより溶融した融着層の成分(AuやSnなど)がパッド電極層内に拡散したとしても、オーミック電極層とパッド電極層との間にPtからなるバリア層が形成されているので、溶融した融着層の成分がバリア層を越えてオーミック電極層に拡散することが抑制される。ここで、オーミック電極層の最大厚みよりもバリア層の厚みが大きいので、溶融した融着層の成分がオーミック電極層へ拡散することを確実に抑制することができる。この結果、接合時の加熱プロセスに起因してオーミック電極層が有するオーミック性(電流と電圧とが比例関係を有する特性)が劣化するのを確実に抑制することができる。
【0013】
上記一の局面による窒化物系半導体発光素子において、好ましくは、n側電極は、オーミック電極層の第2金属層の第1金属層とは反対側に形成されたAuからなるパッド電極層と、オーミック電極層とパッド電極層との間に形成されたPtからなるバリア層とをさらに含み、オーミック電極層は、n型窒化物系半導体層の表面に部分的に接触するSiからなる第1金属層と、第1金属層が接触しないn型窒化物系半導体層の表面と、第1金属層のn型窒化物系半導体層とは反対側の表面とに接触するTiからなる第2金属層とによって構成されており、Ptからなるバリア層は、第2金属層の第1金属層とは反対側の表面に接触するように構成されており、Auからなるパッド電極層は、Ptからなるバリア層の第2金属層とは反対側の表面に接触してn側電極の最表面を形成するように構成されている。このように構成すれば、第1金属層と第2金属層とによって、n側電極のn型窒化物系半導体層に対する密着性を向上させることができる。また、n側電極の第1金属層をSiにより形成することによって、n側電極自体の耐熱性を向上させながらn型窒化物系半導体層との良好なオーミック接触を得ることができる。また、オーミック電極層とパッド電極層との間にPtからなるバリア層が形成されているので、接合時の加熱プロセスに起因してオーミック電極層が有するオーミック性が劣化するのを効果的に抑制することができる。さらには、n側電極の最表面にAuからなるパッド電極層が形成されているので、オーミック性を劣化させることなくn側電極を融着層を介して基台に接合することができる。この結果、接合時の加熱プロセスに起因してオーミック性が劣化することが効果的に抑制され、かつ、n型窒化物系半導体層に対する密着性が向上されたn側電極を備えた窒化物系半導体発光素子を確実に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態による青紫色半導体レーザ素子の構造を示した斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態による青紫色半導体レーザ素子のn側電極の詳細な積層構造を示した断面図である。
【図3】本発明の一実施形態による青紫色半導体レーザ素子のn側電極の詳細な構造を示した平面図である。
【図4】本発明の一実施形態による青紫色半導体レーザ素子をサブマウントに接合した場合の構造を示した断面図である。
【図5】本発明の一実施形態による青紫色半導体レーザ素子の製造プロセスを説明するための断面図である。
【図6】本発明の効果を確認するために行った確認実験の結果(実施例)を示した図である。
【図7】本発明の効果を確認するために行った確認実験の結果(比較例1)を示した図である。
【図8】本発明の効果を確認するために行った確認実験の結果(比較例2)を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
まず、図1〜図4を参照して、本発明の一実施形態による青紫色半導体レーザ素子100の構造について説明する。なお、青紫色半導体レーザ素子100は、本発明の「窒化物系半導体発光素子」の一例である。
【0017】
青紫色半導体レーザ素子100は、図1に示すように、約100μmの厚みを有するn型GaN基板1と、n型GaN基板1の上面(C2側)上に形成された活性層12を含む半導体素子層10とを備えている。半導体素子層10は、発振波長が約405nm帯を有する窒化物系半導体からなる。また、青紫色半導体レーザ素子100では、半導体素子層10の上面(C2側)上にp側パッド電極21が形成されるとともに、n型GaN基板1の下面1a(C1側)上にn側電極22が形成されている。なお、n型GaN基板1は、本発明の「n型窒化物系半導体層」の一例である。また、下面1aは、本発明の「n型窒化物系半導体層の表面」の一例である。
【0018】
半導体素子層10においては、n型GaN基板1の主表面上に、約2μmの厚みを有するn型AlGaNからなるn型クラッド層11が形成されている。n型クラッド層11の上面上には、多重量子井戸(MQW)構造を有する活性層12が形成されている。この活性層12は、各々が約30nmの厚みを有するとともにアンドープGaInNからなる4つの障壁層(図示せず)と、各々が約7nmの厚みを有するとともにアンドープGaInNからなる3つの井戸層(図示せず)とが交互に積層されている。活性層12の上面上には、約0.5μmの厚みを有するMgドープのp型AlGaNからなるp型クラッド層13が形成されている。p型クラッド層13は、共振器の延びる方向(A方向)に沿ってストライプ状(細長状)に延びる約1.5μmの幅を有する凸部13aと、凸部13aの幅方向(B方向)の両側(B1側およびB2側)の約80nmの厚みを有する平坦部13bとを有している。
【0019】
また、p型クラッド層13の凸部13a上には、約3nmの厚みを有するアンドープGaInNからなるp側コンタクト層14が形成されている。このp側コンタクト層14とp型クラッド層13の凸部13aとによって、約1.5μmの幅を有してA方向にストライプ状に延びるリッジ部3が構成されている。また、リッジ部3により、青紫色半導体レーザ素子100の光導波路が構成されている。
【0020】
また、p型クラッド層13の凸部13aの両側面上、平坦部13bの上面上およびp側コンタクト層14の両側面上には、約0.2μmの厚みを有するSiOからなる電流ブロック層20が形成されている。また、電流ブロック層20は、リッジ部3の上面(p側オーミック電極18の上面)を露出するように形成されている。
【0021】
また、p側コンタクト層14の上面上には、p側コンタクト層14に近い側から順に、Pd層、Pt層およびAu層からなるp側オーミック電極18が形成されている。p側オーミック電極18の上面上と電流ブロック層20の上面上とには、p側オーミック電極18に近い側から順に、約0.1μmの厚みを有するTi層と、約0.1μmの厚みを有するPd層と、約3μmの厚みを有するAu層とからなるp側パッド電極21が形成されている。また、n型GaN基板1の下面1a上には、p側パッド電極21と略同じ形状を有するn側電極22が形成されている。
【0022】
n側電極22は、図2に示すように、n型GaN基板1に近い側から順に、オーミック電極層30とバリア層35とパッド電極層40とが積層された構造を有している。以下に、各金属層(電極層)の構成および役割について述べる。
【0023】
オーミック電極層30は、n型GaN基板1の下面1aに近い側から順に、約1nm以上約3nm以下の厚みを有する非晶質(アモルファス)構造を有するSi金属膜からなるSi層31と、約4nmの厚みを有するTiからなるTi層32とが積層されている。なお、Si層31およびTi層32は、それぞれ、本発明の「第1金属層」および「第2金属層」の一例である。
【0024】
Si層31は、n側電極22がn型GaN基板1との良好なオーミック接触を得るために設けられており、Si層31は酸素を含んでいない。また、Si層31は、図4に示すように、n側電極22の下面22aをAu−Sn半田などからなる融着層51を介してサブマウント50の上面50aの所定領域に接合する際の加熱プロセスに伴う熱影響から青紫色半導体レーザ素子100を保護する役割(耐熱性)も有している。
【0025】
ここで、本実施形態では、図3に示すように、約1nm以上約3nm以下の厚みを有するSi層31は、平面的に見て、n型GaN基板1(図2参照)の表面上に島状に分布した状態に形成されており完全な連続膜とはなっていない。また、Siの個々の島は、互いに不規則な形状を有している。なお、Si層31が上記した範囲の厚みを有する場合、Si層31には、複数のSiの島のうちの隣接する島同士が部分的に繋げられて網状となって形成されている部分も存在する。したがって、網状に形成されているSi層31の領域における網目(隙間)の大きさも不規則性を有している。そして、島状または網状の領域に関係なく、Siの島間に形成された不規則な形状の隙間(網目の部分)からn型GaN基板1の下面1aが露出している。なお、図3では、Si層31上(紙面手前側)に積層されているTi層32などについては、説明の都合上、図示を省略している。
【0026】
Ti層32(図2参照)は、Si層31と同様に、n型GaN基板1との良好なオーミック接触を得るために設けられている。また、図2に示すように、Ti層32は、微視的に見て、島状(または網状)に形成されたSi層31の隙間(網目の部分)からn型GaN基板1の下面1aに到達することにより、Ti層32の一部がn型GaN基板1と直接接触するように形成されている。したがって、図2に示すように、n型GaN基板1とオーミック電極層30との界面では、島状(または網状)に分布したSi層31に加えてSi層31を覆うTi層32もn型GaN基板1の下面1aに接触しているので、Ti層32は、厚みの薄いSi層31とn型GaN基板1の下面1aとの接合状態を維持する役割を有している。なお、Si層31を覆うTi層32は、約2nm以上約5nm以下の範囲の厚みを有するように形成されるのが好ましい。さらには、オーミック接触を考慮して約10nm以下であるのがより好ましく、この範囲において、成膜可能な程度に薄いのが好ましい。本実施形態では、Si層31を確実に覆いながらその一部がn型GaN基板1の下面1aに接合しているTi層32を形成することにより、n型GaN基板1の下面1aに対するn側電極22の付着力(密着性)が高められている。
【0027】
また、バリア層35はPtからなる金属層であり、約30nmの厚みを有している。バリア層35は、オーミック電極層30とパッド電極層40とを層構造レベルで確実に分離するために設けられている。つまり、青紫色半導体レーザ素子100をサブマウント50(図4参照)の上面50aに接合する加熱プロセス時に、溶融した融着層51(図4参照)に含まれる金属成分(AuやSnなど)が、後述するパッド電極層40を介してオーミック電極層30側に拡散することが防止されるかまたは抑制されるように構成されている。本実施形態では、バリア層35によって、オーミック電極層30のオーミック性が維持されている。また、Ptからなるバリア層35は、オーミック電極層30とパッド電極層40とを接合する役割も有している。なお、バリア層35の厚み(約30nm)は、オーミック電極層30が有する最大厚み(図2におけるSi層31とTi層32とが厚み方向(C方向)に重なった部分の合計厚み)よりも大きい状態で形成されている。
【0028】
また、図2に示すように、バリア層35の下面35a上に、約300nmの厚みを有するAuからなるパッド電極層40が形成されている。なお、パッド電極層40は、サブマウント50への接合時に融着層51(図4参照)に含まれる金属成分との共晶反応を図る目的で形成されており、約300nm以上約1μm以下の範囲の厚みを有していてもよい。なお、下面35aは、本発明の「バリア層の表面」の一例である。なお、図2においてはn側電極22を構成する各金属層の厚みをより忠実に図示しているが、図1および図4においては、図示の都合上、n側電極22の大まかな構成のみが把握できるように各金属電極層を図示している。
【0029】
このように、本実施形態では、n型GaN基板1の下面1aからn側電極22の下面22aに向かって、オーミック電極層30としてのSi層31およびTi層32、Ptからなるバリア層35、および、Auからなるパッド電極層40がこの順に積層されるとともに、各々の金属電極層が互いに接触した状態でn側電極22が構成されている。なお、下面22aは、本発明の「n側電極の最表面」の一例である。
【0030】
また、青紫色半導体レーザ素子100は、図1に示すように、共振器の延びる方向(A方向)の両端部に、n型GaN基板1の主表面(上面)に対して略垂直な一対の共振器端面100aが形成されている。一対の共振器端面100aには、製造プロセスにおける端面コート処理により、AlN膜やAl膜などからなる誘電体多層膜(図示せず)が形成されている。ここで、誘電体多層膜は、GaN,AlN、BN,Al、SiO、ZrO、Ta、Nb、La、SiN、AlONおよびMgFや、これらの混成比の異なる材料であるTiやNbなどからなる多層膜を用いることができる。このようにして、青紫色半導体レーザ素子100が構成されている。
【0031】
次に、図1〜図3および図5を参照して、本発明の一実施形態による青紫色半導体レーザ素子100の製造プロセスについて説明する。
【0032】
まず、図5に示すように、有機金属気相成長(MOCVD)法を用いて、n型GaN基板1の上面上に、n型クラッド層11、活性層12、p型クラッド層13、p側コンタクト層14およびp側オーミック電極18を順次積層する。その後、フォトリソグラフィを用いてp側オーミック電極18の上面上にマスク(図示せず)をパターニングした後、マスクから露出するp側オーミック電極18と下部のp側コンタクト層14およびp型クラッド層13の一部の領域をエッチングすることによりリッジ部3を形成する。その後、リッジ部3上に残されたマスクを除去する。
【0033】
その後、プラズマCVD法または真空蒸着法などを用いて、p型クラッド層13の凸部13a以外の平坦部13bの上面上、p側オーミック電極18の上面上、および、リッジ部3の両側面を連続的に覆うように電流ブロック層20を形成する。その後、真空蒸着法およびリフトオフ法を用いて、電流ブロック層20上および電流ブロック層20が形成されていないp側オーミック電極18上に、p側パッド電極21を形成する。
【0034】
この後、図5に示すように、n型GaN基板1が所定の厚みを有するようにn型GaN基板1の下面1a側を研磨し、研磨によるダメージ層をドライエッチングにより除去した後、真空蒸着法およびリフトオフ法を用いて、n型GaN基板1の下面1a(C1側)上にn型GaN基板1に接触するようにn側電極22を形成する。
【0035】
ここで、本実施形態の製造プロセスでは、まず、図2に示すように、約30℃に保持された真空中において、真空蒸着法を用いて、n型GaN基板1の下面1a上に約1nm以上約3nm以下の厚みを有するSi層31を蒸着する。Si層31は、真空蒸着法により形成されるので、非晶質(アモルファス)Siとして成膜される。この際、Si層31は、図3に示すように、n型GaN基板1の下面1a上に島状(局所的には網状の場合も含む)に分布した状態で形成される。その後、島状に分布したSi層31を覆うように、約4nmの厚みを有するTi層32(図2参照)を蒸着する。このようにしてオーミック電極層30を形成する。
【0036】
その後、真空蒸着法を用いて、オーミック電極層30の下面上に、約30nmの厚みを有するPtからなるバリア層35を形成する。その後、バリア層35の下面35a上に、約300nmの厚みを有するAu層を蒸着してパッド電極層40を形成する。これにより、オーミック電極層30の下面上に、バリア層35とパッド電極層40とが積層されたn側電極22が形成される。このようにして、図5に示したウェハ状態の青紫色半導体レーザ素子100が形成される。
【0037】
その後、所定の共振器長を有するようにウェハをB方向に沿ってバー状に劈開する。さらに、図5に示すように、二点鎖線195で示した位置で共振器の延びる方向(A方向(図1参照))に沿って素子分割(チップ化)を行う。このようにして、青紫色半導体レーザ素子100のチップ(図1参照)が形成される。
【0038】
本実施形態では、上記のように、オーミック電極層30は、n型GaN基板1の下面1aを部分的に覆うように形成された非晶質SiからなるSi層31と、Si層31のn型GaN基板1とは反対側の表面と、Si層31により覆われていないn型GaN基板1の下面1aとに接触するように形成されたTi層32とを有している。つまり、Ti層32は、Si層31を覆うのみならず、n型GaN基板1の下面1aに直接接触した状態で形成されている。Tiは、n型GaN基板1に対する付着力が優位な性質を有しているので、Ti層32を含むn側電極22を、高い密着性を有した状態でn型GaN基板1の下面1a上に形成することができる。これにより、n型GaN基板1に対するn側電極22の密着性を向上させることができる。また、n型GaN基板1の下面1aからn側電極22が剥れにくくなるので、電極部材の部分的な剥れに起因してn側電極22の抵抗値が上昇を来たすことが抑制される。その結果、動作電圧が上昇しにくい青紫色半導体レーザ素子100を得ることができる。また、n側電極22における本発明の「第1金属層」をSiからなるSi層31により形成することによって、n側電極22自体の耐熱性を向上させながらn型GaN基板1との良好なオーミック接触を得ることができる。
【0039】
また、本実施形態では、Si層31は、Siがn型GaN基板1の下面1a上に島状に分布した状態で、n型GaN基板1の下面1aを部分的に覆うように形成されている。これにより、下層のTi層32の一部を、島状となったSi層31とSi層31から露出するn型GaN基板1との隙間に入り込ませてn型GaN基板1の下面1aに容易に接触させることができる。この結果、n型GaN基板1に対するn側電極22の密着性を容易に向上させることができる。
【0040】
また、本実施形態では、Si層31の厚みを約1nm以上約3nm以下にして島状(または網状)のSi層31を形成している。これにより、非晶質SiからなるSi層31を、容易に島状の状態でn型GaN基板1の下面1a上に形成することができる。
【0041】
また、本実施形態では、Ti層32の厚み(約4nm)は、島状(または網状)のSi層31の厚み(約1nm以上約3nm以下)よりも大きい。これにより、Ti層32に関して、金属膜が層状(膜状)を十分に維持した状態で、かつ、金属膜の一部がn型GaN基板1の下面1aに接触するようなTi層32を容易に形成することができる。
【0042】
また、本実施形態では、n側電極22は、オーミック電極層30のTi層32のSi層31とは反対側に形成されたパッド電極層40と、オーミック電極層30とパッド電極層40との間に形成されたPtからなるバリア層35とを含んでいる。そして、バリア層35の厚み(約30nm)は、オーミック電極層30を構成するSi層31およびTi層32の合計厚み(約5nm以上約7nm以下)よりも大きい。これにより、n側電極22を融着層51を介してサブマウント50に接合する際、加熱プロセスにより溶融した融着層51の成分(AuやSnなど)がAuからなるパッド電極層40内に拡散したとしても、オーミック電極層30とパッド電極層40との間にPtからなるバリア層35が形成されているので、溶融した融着層51の成分がPtからなるバリア層35を越えてオーミック電極層30に拡散することが抑制される。ここで、オーミック電極層30の最大厚み(約7nm)よりもバリア層35の厚み(約30nm)が大きいので、溶融した融着層51の成分がオーミック電極層30へ拡散することを確実に抑制することができる。この結果、サブマウント50への接合時の加熱プロセスに起因して、オーミック電極層30が有するオーミック性が劣化するのを確実に抑制することができる。
【0043】
また、本実施形態では、n型GaN基板1の下面1aからn側電極22の下面22a(最表面)に向かって、オーミック電極層30としてのSi層31およびTi層32、Ptからなるバリア層35、および、Auからなるパッド電極層40をこの順に積層するとともに、各々の金属層を互いに接触させた状態でn側電極22を構成している。つまり、Si層31とTi層32とによって、n側電極22のn型GaN基板1に対する密着性が向上され、バリア層35により融着層51の成分がパッド電極層40側からオーミック電極層30側に拡散するのが確実に抑制される。また、下面1aに接触するようにSi層31を形成しているので、n側電極22自体の耐熱性を向上させながらn型GaN基板1との良好なオーミック接触が得られる。さらには、Auからなるパッド電極層40によりオーミック性を劣化させることなくn側電極22を融着層51を介してサブマウント50に接合することができる。以上から、接合時の加熱プロセスに起因してオーミック性が劣化することが効果的に抑制され、かつ、n型GaN基板1に対する密着性が向上されたn側電極22を備えた青紫色半導体レーザ素子100を確実に得ることができる。
【0044】
次に、図1、図2、図6〜図8を参照して、上記した実施形態の効果を確認するために行った比較例1および2との対比による確認実験について説明する。この確認実験では、上記した実施形態に対応する実施例としてのn側電極22(図1参照)を作製するとともに、実施例に対する比較例1および2としてのn側電極を作製して、それぞれのn側電極が有するオーミック性を調べた。なお、この確認実験については、n側電極が本発明の「オーミック電極層」と「パッド電極層」との間に「バリア層」が設けられている構成を前提としており、その上で、本発明の「オーミック電極層」を複数の金属層を積層した多層構造(2層構造)で構成した場合に、加熱プロセスにおける熱処理温度が、多層構造を有する「オーミック電極層」のオーミック性にどの程度影響するのかを検証した。そして、得られた実験結果に基づいて、本発明のn側電極の評価を行った。以下に示す実施例、比較例1および2におけるn側電極では、共に「バリア層」を形成した状態で、「オーミック電極層」の層構造を異ならせた試料を作製した。
【0045】
まず、上記した実施形態に対応する実施例としてのn側電極22の形成については、まず、真空蒸着法を用いて、n型GaN基板1の表面上に、アモルファスSiからなる島状のSi層31およびSi層31を覆うTi層32をこの順に積層して2層構造のオーミック電極層30を形成した。各層の厚みは、n型GaN基板の上面に近い側から順に、1nm(Si層31)/4nm(Ti層32)とした。その後、オーミック電極層30の上面上に、約30nmの厚みを有するPdからなるバリア層35を形成した。そして、バリア層35の上面上に、600nmの厚みを有するAuからなるパッド電極層40を形成した(実施例におけるn側電極22の層構造については、図2を参照のこと)。なお、この確認実験のために、合計5サンプルのn側電極22を用意した。
【0046】
また、上記実施例に対する比較例1としてのn側電極の形成については、n型GaN基板の上面上に、Al層のみからなる単層のオーミック電極層、Pd層からなるバリア層およびAu層のみからなる単層のパッド電極層をこの順に積層して3層構造を有するn側電極を形成した。ここで、各層の厚みは、n型GaN基板に近い側から順に、6nm(Al層)/10nm(Pd層)/600nm(Au層)とした。ここで、オーミック電極層をAlの単層としているため、バリア層の厚みを、実施例(30nm)よりも薄い10nmとして構成した。また、比較例1についても、合計5サンプルを用意した。
【0047】
また、上記実施例に対する比較例2としてのn側電極の形成については、上記実施例で用いた酸素を含まないSi層31に代えて、Siおよび酸素を含んだ層をn型GaN基板1の表面上に形成し、この層上に、Ti層32を積層して2層構造のオーミック電極層を形成した。また、バリア層35およびパッド電極層40については上記実施例と同様としており、合計5サンプルを用意した。
【0048】
そして、上記実施例、比較例1および2として作製したn側電極を用いて、電極作製後に加えられた熱処理温度毎の電極の電流−電圧特性(I−V特性)を調べた。なお、電流−電圧特性は、半導体特性測定器の1つである半導体パラメータアナライザ(電気特性評価装置)を用いて測定した。
【0049】
この結果、図7に示すように、比較例1では、電極形成後のn側電極に対して100℃での熱処理(加熱処理)を10分間行ったサンプルでは、オーミック性を有するI−V特性が得られた。一方、200℃および250℃での熱処理を行ったサンプルでは、I−V特性は非オーミック性を有していた。また、300℃および400℃での熱処理を行ったサンプルでは、電圧を印加してもn側電極に電流が若干しか流れないことが確認された(300℃でのI−V特性と400℃でのI−V特性とは、グラフがほぼ重なっている)。この結果から、比較例1によるn側電極では、熱処理温度を上昇させることに伴って、n側電極が有するオーミック性が劣化したり、n側電極の抵抗値が顕著に増大したりすることが確認された。つまり、オーミック電極層を単層(Al層)により構成している場合には、n側電極が加熱プロセスの影響(熱影響)を大きく受けることが判明した。したがって、比較例1におけるn側電極を用いて半導体レーザ素子を構成したとしても、バリア層の厚みを10nmに設定してパッド電極層(Au層)側から融着層の拡散を防止または抑制できる一方、加熱プロセスの熱影響に起因してオーミック電極層が劣化してしまうと考えられる。
【0050】
また、図8に示すように、比較例2では、いずれの温度での熱処理を行ったサンプルについても、電圧を印加してもn側電極には電流は流れなかった(全てのサンプルにおいてI−V特性のグラフがほぼ重なっている)。つまり、順方向電圧の増加のみが計測された。
【0051】
これに対して、上記実施例によるn側電極22では、図6に示すように、電極形成後のn側電極に対して100℃、200℃および250℃での熱処理(加熱処理)を各々10分間行ったサンプルでは、I−V特性は、極めて高い直線性(オーミック性)を有する傾向を示した。また、300℃および400℃の温度条件では、100℃、200℃および250℃の場合よりは直線性が劣るものの、オーミック性がある程度は得られていた。つまり、比較例1と比較した場合、オーミック電極層30にSi層31とTi層32を用いて多層構造とした場合には、特に300℃〜400℃の高温度領域において、比較例1によるn側電極よりもオーミック性が劣化しにくい(加熱プロセスの熱影響を受けにくい)特徴を備えていることが判明した。
【0052】
このような特徴を有する背景としては、加熱プロセスを経ても、まず、n型GaN基板1の表面にSi層31が接触することによってオーミック電極層30自体の耐熱性が向上されたことが考えられる。また、Si層31が有する耐熱性に加えて、島状のSi層31のみならずTi層32によっても、n型GaN基板1の表面に接触してオーミック電極層30の密着性が高められたからだと考えられる。密着性が高められることにより、オーミック性を有するSi層31とTi層32とが共にn型GaN基板1の表面から剥れることなく確実に導通されるので、オーミック電極層30のオーミック性が著しく損われなかったと考えられる。さらには、オーミック電極層30の厚み(最大厚み)よりも大きい厚みを有するPtからなるバリア層35を設けたことにより、加熱プロセスに起因してパッド電極層40のAuが、オーミック電極層30側に拡散することが抑制または防止されたことも他の要因として考えられる。したがって、実施例におけるn側電極22を用いて半導体レーザ素子を構成した場合、n側電極22の形成時の温度よりも高い温度条件下で半導体レーザ素子などに所定の製造プロセスを施した場合(たとえば、Au−Sn半田などを用いたダイボンド(熱圧着)や、フォトリソグラフィ技術におけるベーキング工程などの約200℃〜約300℃での加熱処理工程や、パッド電極層40へのワイヤボンディング工程など)であっても、n側電極22のオーミック性がある程度維持された半導体レーザ素子を形成することが可能であると考えられる。
【0053】
また、上記実施例によるn側電極22では、Si層31に酸素が含まれないため、順方向電圧の増加を抑止することができると考えられる。これに対して、比較例2では、Siおよび酸素を含んだ層が有する酸素がTi層32のTiと容易に結び付いて酸化物を形成するため、順方向電圧が増加したものと考えられる。この結果から、オーミック電極層に酸素を含まないSi層を用いることの有効性が確認された。
【0054】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0055】
たとえば、上記実施形態では、本発明の「窒化物系半導体発光素子」を青紫色半導体レーザ素子100に適用した例について示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、本発明の「窒化物系半導体発光素子」をn側電極を備えたLEDなどの半導体発光素子にも適用することが可能である。
【0056】
また、上記実施形態では、Si層31を約1nm以上約3nm以下の厚みに形成した例について示したが、本発明はこれに限られない。成膜プロセスを工夫することにより、最大で約5nmの厚みを有するSi層31をn型GaN基板1の下面1a上に島状に形成することも可能である。Si層31の厚みが増加する分、Si層31による青紫色半導体レーザ素子100の耐熱性がより向上される。また、下面1aに接触しないSi層31の表面積が増加する(下面1a上の島状のSi層31の起伏が大きくなる)ので、Ti層32を、より確実に下面1aおよびSi層31に密着させて形成することができる。
【0057】
また、上記実施形態では、オーミック電極層30としてのSi層31(第1金属層)およびTi層32(第2金属層)、Ptからなるバリア層35、および、Auからなるパッド電極層40をこの順に積層してn側電極22を構成した例について示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、バリア層を構成する金属層として、Pt以外の金属としてたとえばPdなどからなる金属層を用いてバリア層を構成してもよい。バリア層にPdなどを用いてもPt層(バリア層35)と同様のバリア機能が得られる。また、Auに加えてAu以外のたとえばTiなどの金属層を用いて多層金属膜からなるパッド電極層を構成してもよい。
【0058】
また、上記実施形態では、n型GaN基板1の下面1a上にn側電極22を形成した例について示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、n型GaN基板1上に半導体素子層10を形成して窒化物系半導体レーザ素子のウェハを形成した後、ウェハのp側パッド電極21側を接合面としてGeなどからなる支持基板に接合してもよい。そして、ウェハからn型GaN基板1を除去して露出されたn型クラッド層11の下面上に、本発明の「n側電極」を形成して窒化物系半導体レーザ素子を構成してもよい。なお、n型クラッド層11は、本発明の「n型窒化物系半導体層」の一例である。
【0059】
また、上記実施形態では、n型GaN基板1の下面1a上にp側パッド電極21と略同じ形状を有するn側電極22を形成した例について示したが、本発明はこれに限られない。下面1a上の一部の領域または略全面を覆うようにn側電極22をパターニング形成してもよい。
【0060】
また、上記実施形態では、半導体素子層10に上方に突出するリッジ部3を形成して青紫色半導体レーザ素子100を形成した例について示したが、本発明はこれに限られない。リッジ部をSiOまたはAlGaNなどからなる電流ブロック層で埋め込んだ屈折率分布導波型のリッジ導波構造を有する窒化物系半導体レーザ素子を形成してもよい。あるいは、平坦な上部クラッド層上にストライプ状の開口部を有する電流ブロック層を形成して電流通路部を設けた利得導波型の窒化物系半導体レーザ素子を形成してもよい。
【0061】
また、上記実施形態では、半導体素子層10を、AlGaNやInGaNなどの窒化物系半導体層により形成した例について示したが、本発明はこれに限らず、半導体素子層10を、AlN、InN、BN、TlNおよびこれらの混晶からなるウルツ鉱構造の窒化物系半導体層により形成してもよい。
【0062】
また、上記実施形態では、SiOを用いて電流ブロック層20を形成した例について示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、SiNなどの他の絶縁性材料や、AlInPやAlGaNなどの半導体材料を用いて電流ブロック層を形成してもよい。
【0063】
また、上記実施形態では、本発明の「窒化物系半導体発光素子」を青紫色半導体レーザ素子100に適用した例について示したが、本発明はこれに限られない。n型GaN基板1上に、青紫色半導体レーザ素子以外の、たとえば、青色半導体レーザ素子や緑色半導体レーザ素子を形成してもよい。
【符号の説明】
【0064】
1 n型GaN基板(n型窒化物系半導体層)
1a 下面(n型窒化物系半導体層の表面)
11 n型クラッド層(n型窒化物系半導体層)
22 n側電極
22a 下面(n側電極の最表面)
30 オーミック電極層
31 Si層(第1金属層)
32 Ti層(第2金属層)
35 バリア層
35a 下面(バリア層の表面)
40 パッド電極層
100 青紫色半導体レーザ素子(窒化物系半導体発光素子)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
n型窒化物系半導体層と、
オーミック電極層を含むn側電極とを備え、
前記n側電極の前記オーミック電極層は、
前記n型窒化物系半導体層の表面を部分的に覆うように形成されたSiからなる第1金属層と、
前記第1金属層の前記n型窒化物系半導体層とは反対側の表面と、前記第1金属層により覆われていない前記n型窒化物系半導体層の表面とに接触するように形成されたTiからなる第2金属層とを有する、窒化物系半導体発光素子。
【請求項2】
前記第1金属層は、Siが前記n型窒化物系半導体層の表面上に島状に分布した状態で、前記n型窒化物系半導体層の表面を部分的に覆うように形成されている、請求項1に記載の窒化物系半導体発光素子。
【請求項3】
前記島状の前記第1金属層の厚みは、1nm以上5nm以下である、請求項2に記載の窒化物系半導体発光素子。
【請求項4】
前記Tiからなる第2金属層の厚みは、前記島状の前記第1金属層の厚みよりも大きい、請求項2または3に記載の窒化物系半導体発光素子。
【請求項5】
前記n側電極は、前記オーミック電極層の前記第2金属層の前記第1金属層とは反対側に形成されたパッド電極層と、前記オーミック電極層と前記パッド電極層との間に形成されたPtからなるバリア層とをさらに含み、
前記Ptからなる前記バリア層の厚みは、前記オーミック電極層を構成する前記Siからなる第1金属層および前記Tiからなる第2金属層の合計厚みよりも大きい、請求項1〜4のいずれか1項に記載の窒化物系半導体発光素子。
【請求項6】
前記n側電極は、前記オーミック電極層の前記第2金属層の前記第1金属層とは反対側に形成されたAuからなるパッド電極層と、前記オーミック電極層と前記パッド電極層との間に形成されたPtからなるバリア層とをさらに含み、
前記オーミック電極層は、前記n型窒化物系半導体層の表面に部分的に接触する前記Siからなる第1金属層と、前記第1金属層が接触しない前記n型窒化物系半導体層の表面と、前記第1金属層の前記n型窒化物系半導体層とは反対側の表面とに接触する前記Tiからなる第2金属層とによって構成されており、
前記Ptからなるバリア層は、前記第2金属層の前記第1金属層とは反対側の表面に接触するように構成されており、
前記Auからなるパッド電極層は、前記Ptからなるバリア層の前記第2金属層とは反対側の表面に接触して前記n側電極の最表面を形成するように構成されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載の窒化物系半導体発光素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−169368(P2012−169368A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−27666(P2011−27666)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(504464070)三洋オプテックデザイン株式会社 (315)
【Fターム(参考)】