説明

窒素酸化物吸蔵触媒の再生法

リーンバーンエンジンは、窒素酸化物をその排ガスから除去するために、窒素酸化物吸蔵触媒を有しており、該触媒はしばしば、エンジンを短時間、リッチバーン運転に切り替えることにより再生しなくてはならない。再生は通常、触媒の後方で窒素酸化物濃度が認容可能な値を越えて上昇した場合に開始される。この場合、再生の間および再生後の触媒の床温度は、窒素酸化物と排ガスの還元性成分との反応の際に放出される熱に基づいて、窒素酸化物の熱による脱着の開始と共に一定の範囲で推移する。これは、すでに再生の間にも、リーンバーン運転への切り替え後にも、窒素酸化物放出量の増加につながりうる。この問題を排除するために、リッチバーン運転を、第一のリッチバーンパルスは、第二のリッチバーンパルスよりも短い時間である2つの時間的に連続するリッチバーンパルスに分割することが提案される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リーンバーンエンジンの排ガスから窒素酸化物を除去するために使用される窒素酸化物吸蔵触媒の再生に関する。
【0002】
ガソリンエンジンの分野では、燃料の消費を低減するために、部分負荷運転においてリーンな空気/燃料混合物で運転される、いわゆるリーンバーンエンジンが開発された。リーンな空気/燃料混合物は、燃料の完全燃焼のために必要とされるよりも高い酸素濃度を有する。その場合、相応する排ガス中には酸化成分である酸素(O2)、窒素酸化物(NOx)が、還元性の排ガス成分である一酸化炭素(CO)、水素(H2)および炭化水素(HC)に対して過剰で存在している。リーンな排ガスは通常、3〜15体積%の酸素を含有している。しかし完全負荷の場合、リーンバーンエンジンは、理論混合比で、または理論混合比を下回って、つまりリッチな空気/燃料混合物でも運転される。
【0003】
これに対してディーゼルエンジンは通常、運転条件下で理論混合比をはるかに上回る空気/燃料混合物で運転される。ここ数年において初めて、短時間であればリッチな空気/燃料混合物でも運転することができるディーゼルエンジンが開発された。ディーゼルエンジン、特にリッチな運転段階の可能性を有するディーゼルエンジンもまた、本発明の範囲ではリーンバーンエンジンとよぶ。
【0004】
空気/燃料混合物を特徴付けるために、いわゆる空気過剰率ラムダ(λ)が使用される。これは、化学量論的な条件へと標準化された空気/燃料比である。化学量論的な組成を有する空気/燃料混合物は、1の空気過剰率を有する。1より大きな空気過剰率は、リーンな空気/燃料混合物を、1より小さい空気過剰率はリッチな空気/燃料混合物を特徴付ける。エンジンから出ていく排ガスは、エンジンが運転される空気/燃料混合物と同じ空気過剰率を有する。
【0005】
リーンバーンエンジンの排ガス中の高い酸素含有率に基づいて、排ガス中に含有されている窒素酸化物は、理論混合比で運転されるオットーエンジンの場合のように、三元触媒で連続的に、炭化水素および一酸化炭素を同時に酸化しながら窒素へと還元することができない。従ってこのエンジンの排ガスから窒素酸化物を除去するために、リーンな排ガス中に含有されている窒素酸化物を硝酸塩の形で吸蔵する、いわゆる窒素酸化物吸蔵触媒が開発された。
【0006】
窒素酸化物吸蔵触媒の運転様式はSAEの刊行物SAE950809に詳細に記載されている。従って窒素酸化物吸蔵触媒は通常、セラミックまたは金属からなる不活性なハニカム体、いわゆる担体上の被覆の形で施与されている触媒材料からなる。該触媒材料は、窒素酸化物吸蔵材料と、触媒活性成分とを含有する。窒素酸化物吸蔵材料は再び、担持材料上に高分散した形で堆積している本来の窒素酸化物吸蔵成分からなる。吸蔵成分として、主としてアルカリ金属、アルカリ土類金属および希土類金属の塩基性酸化物、しかし特に酸化バリウムが使用され、これらが二酸化窒素と反応して相応する硝酸塩が形成される。
【0007】
触媒活性成分として通常、白金族の貴金属が使用され、該金属は通常、吸蔵成分と共に担持材料上に堆積される。担持材料として主に活性な、高い表面積を有する酸化アルミニウムが使用される。しかし触媒活性成分は、別の担持材料、例えば同様に活性酸化アルミニウムからなる担持材料上に施与されていてもよい。
【0008】
触媒活性成分の課題は、リーンな排ガス中で、一酸化炭素と炭化水素とを二酸化炭素と水とに変換することである。さらに、排ガス中に含有されている一酸化窒素は、二酸化窒素へと酸化されるべきであり、これにより塩基性の吸蔵材料と共に硝酸塩が形成される(吸蔵段階またはリーンバーン運転)。すなわちリーンバーンエンジンの排ガス中に含有されている窒素酸化物は、エンジンの運転条件に応じて65〜95体積%までが一酸化窒素からなり、これは吸蔵成分と反応して硝酸塩を形成することができない。
【0009】
吸蔵材料中への窒素酸化物の堆積が増大すると共に該材料の吸蔵能が低下する。従って吸蔵材料を時々再生しなくてはならない。このためにエンジンを、理論混合比の組成を有するか、またはリッチな空気/燃料混合物で短時間運転する(いわゆる再生段階またはリッチバーン運転)。リーンな排ガス中の還元性条件下で、吸蔵された硝酸塩は、窒素酸化物NOxへと分解され、かつ水と二酸化炭素とを形成しながら窒素へと還元される。その際、排ガス中に含有されている一酸化炭素、水素および炭化水素は還元剤として役立つ。還元は発熱性であり、触媒に入る前の排ガス温度に対して触媒床の温度を約30〜50℃高める。
【0010】
吸蔵段階またはリーンバーン運転の間にも、空気過剰率はエンジンの種類に応じて約1.3〜5である。短時間の再生段階の間、またはリッチバーン運転の間にも、空気過剰率は0.7〜0.95の値に低下する。
【0011】
窒素酸化物吸蔵触媒の運転の際に、吸蔵段階と再生段階とが規則的に交代する。吸蔵段階および再生段階の連続を以下では浄化サイクルとよぶ。吸蔵段階の時間は、エンジンの窒素酸化物排出の程度と、触媒の吸蔵能とに依存する。吸蔵段階は、高い吸蔵能を有する触媒の場合、300秒またはそれ以上であってよい。しかしこれは通常、60〜120秒である。これに対して再生段階の時間は明らかにこれより短い。この時間は20秒未満である。
【0012】
吸蔵段階から再生段階への最適な切り替え時点を確認するために、通常は吸蔵触媒の後方に窒素酸化物センサが配置される。このセンサによって測定される、排ガス中の窒素酸化物濃度が、予め確定された閾値を超えると、触媒の再生が開始される。
【0013】
現代の窒素酸化物吸蔵触媒は、触媒の前方の排ガス温度に対して約150〜500℃の運転範囲を有する。この範囲を以下では活性ウインドウともよぶ。活性ウインドウより低いと、吸蔵触媒は排ガス中に含有されている窒素酸化物を硝酸塩の形で吸蔵することができない。というのも、その触媒活性成分はまだ窒素酸化物を二酸化窒素へと酸化することができる状態にないからである。活性ウインドウより高いと、吸蔵された硝酸塩は熱分解され、かつ窒素酸化物として排ガス中に放出される。しかしこの「熱による脱着」は、活性ウインドウより高い場合には急激に開始されず、活性ウインドウの範囲内で早くも吸蔵プロセスと競合して開始される。
【0014】
従って、窒素酸化物吸蔵触媒により達成可能な窒素酸化物変換率は触媒の床温度の上昇と共に連続的に上昇し、活性ウインドウの中心の温度で最大値を通過し、かつ次いで高い床温度で再び低下する。活性ウインドウの状態および特に最大の窒素酸化物変換率に関する床温度は、触媒の組成、特に使用される吸蔵成分の性質に依存する。アルカリ土類金属酸化物、たとえばバリウムおよびストロンチウムの酸化物を吸蔵成分として使用する場合、最大の窒素酸化物変換率に関する床温度は350〜400℃である。
【0015】
吸蔵触媒の再生の際に、触媒の床温度が再生の間および再生後に、窒素酸化物と排ガスの還元性の成分との反応の際に放出される熱に基づいて、開始される熱による脱着が、触媒の吸蔵能を明らかに低減する範囲に到達する危険が存在する。発明者等により、高い温度によって未反応の窒素酸化物の放出が促進されうることが観察された。さらに発明者等によって、エンジンの特定の運転パラメータにおいて、窒素酸化物吸蔵触媒の加熱は、再生によってなおその後のリーンバーン運転段階で十分であることが観察された。この結果として、触媒による窒素酸化物の短時間のスリップが生じ、これはエンジン制御が直ちに再び再生を開始するほど強力な場合がある。
【0016】
本発明の課題は、150〜500℃の範囲の排ガス温度での再生の間に、吸蔵触媒の過剰な加熱を回避する再生法を提供することである。
【0017】
この課題は、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法により解決される。本方法は、窒素酸化物吸蔵触媒を有する排ガス浄化システムを備えており、窒素酸化物の吸蔵に関してその活性ウインドウが150〜500℃であるリーンバーンエンジンから出発する。吸蔵触媒は、規則的にエンジンをリーンバーン運転からリッチバーン運転に短時間切り替えることにより再生される。
【0018】
本方法は、窒素酸化物吸蔵触媒を再生するために、リッチバーン運転が時間間隔をあけた連続する2つのリッチバーンパルスから形成され、その際、第一のリッチバーンパルスは常に第二のリッチバーンパルスよりも短く、かつ両方のパルスの間の時間間隔は2〜20秒であることを特徴としている。
【0019】
リッチバーンパルスを両方のパルスの間でリーンバーン段階において1〜20秒を有する2つの異なった長さのリッチバーンパルスへと、このように分割する目的は、脱着された窒素酸化物と、リッチな排ガスの還元性の成分との発熱反応に基づいた触媒の床温度の上昇を弱めることである。このことを達成するために、第一のリッチバーンパルスは、第二のリッチバーンパルスよりも明らかに短くなくてはならない。両方のパルスの間の短時間のリーンバーン段階により、第一のリッチバーンパルスの間の発熱量が部分的に再び排ガスに排出されうる。このことは、触媒における発熱反応に基づいてその床温度が排ガス温度よりも大きいために可能である。
【0020】
吸蔵触媒の再生のためのリッチバーンパルスの使用は、すでに種々の特許文献に記載されている。たとえばEP1386656A1は、排ガス温度が170〜250℃である場合に、2〜10の連続するリッチバーンパルスを用いた吸蔵触媒の再生を開示している。連続するリッチバーンパルスとその間に存在するリーンバーン段階により触媒は加熱されて、その床温度が再生のために有利な範囲に上昇する。
【0021】
DE10026762A1は、交互にリッチおよびリーンの排ガスを用いて窒素酸化物吸蔵触媒を脱硫する方法を記載している。窒素酸化物吸蔵触媒の脱硫は、600℃の床温度よりも高い温度で初めて可能である。この温度は、提案された方法に関連する温度をはるかに上回っている。
【0022】
特許出願DE19801815A1は、リッチとリーンとの間で変動する排ガスを用いた窒素酸化物吸蔵触媒の再生方法を記載しており、その際、排ガスの組成は平均して理論混合比であるか、またはわずかにリーンな組成である。再生の間に触媒中で支配的な温度について、この特許出願は検討していない。
【0023】
より良好な理解のために、本発明を図1〜4に基づいて詳細に説明する。図面は以下のものを示している:
図1:触媒の前方の排ガス温度に依存した、窒素酸化物吸蔵触媒の窒素酸化物吸蔵効率、
図2:従来技術による再生の間の触媒の前方の空気過剰率および触媒の後方の温度の推移、
図3:時間間隔をあけた2つのリッチバーンパルスを用いた本発明による再生の間の触媒の前方の空気過剰率および触媒の後方の温度の推移、
図4:窒素酸化物吸蔵触媒を有する車両におけるNOx変換率およびHC変換率
図1は、定常運転における触媒前方の排ガス温度に依存した窒素酸化物吸蔵触媒の吸蔵効率の典型的な推移を示す。窒素酸化物の吸蔵に関する触媒の活性ウインドウは、150℃の触媒の前方の排ガス温度と、500℃とのほぼ中間にある。この範囲は、触媒の組成および老化状態に応じて、これより狭くても広くてもよく、またはその位置においてシフトしていてもよい。一般に触媒の最適な作業温度は300〜350℃である。吸蔵曲線の高温側面において吸蔵効率は低下する。というのも、硝酸塩の形で吸蔵される窒素酸化物は、これらの温度で次第に熱分解されるからである。
【0024】
再生の際の発熱による温度上昇に基づいた熱による脱着の開始は、本発明による再生によれば、2つの連続するリッチバーンパルスによって弱められるべきである。しかし発熱反応による温度の上昇は、吸蔵触媒の前方の排ガス温度が、再生に基づいて触媒中で予測される温度上昇を含めて、活性ウインドウの中心の温度範囲における最大の吸蔵能のための温度よりも高い場合にのみ問題となる。この温度を下回る全ての排ガス温度に関して、リッチバーンパルスの分割は省略することができる。つまりリッチバーン段階は、吸蔵触媒の前方の排ガス温度が再生に基づいて触媒中で予測される温度上昇を含めて、最大の吸蔵能のための温度よりも高い場合にのみ、2つのパルスに分割される。
【0025】
図2は、吸蔵触媒の再生前、再生中および再生後の空気過剰率および触媒の床温度の推移を示している。リーンバーン運転の間、空気過剰率は1.5である。触媒前方の排ガス温度は350℃である。再生を開始するために、排ガスの空気過剰率は、富化により0.88の値に低下し、かつ約20秒間この値に維持される。リッチバーン運転の間、吸蔵された硝酸塩は再び窒素酸化物へと分解され、かつ排ガス中に含有されている炭化水素および一酸化炭素を窒素、二酸化炭素および水へと反応させる。この反応は発熱性であり、触媒の床温度の著しい上昇につながる。温度上昇は窒素酸化物吸蔵触媒の運転範囲をはるかに超えてもよく、従って該触媒は、再生の直後にその高い温度に基づいて窒素酸化物をそれ以上吸蔵することができない。窒素酸化物の不所望のスリップが生じ、これは更なる再生の必要性を見せかけることができる。
【0026】
これに対して図3は、提案された方法による空気過剰率および触媒の床温度の推移を示している。たとえば図3には、20秒の再生時間が、5秒と15秒との2つのリッチバーンパルスに分割されている。図3における両方のリッチバーンパルスの間隔は、5秒である。この短い時間の間に、エンジンは再びリーンな排ガスで運転される。同様に記載されている触媒後方の温度の推移が示すように、第一のリッチバーンパルスの間に、温度は発熱性の再生により図2に記載されているように著しく上昇する。しかし両方のリッチバーンパルス間の短いリーンバーン運転は、第1のリッチバーンパルス後の触媒の温度を、残りの再生の間の温度上昇を触媒の運転範囲から逸脱しないように低下させるために十分である。従って触媒は、再生の終了後直ちに再び窒素酸化物を吸蔵する準備ができている。
【0027】
本発明によれば、第一のリッチバーンパルスの時間は常に、第二のリッチバーンパルスの時間よりも短く選択されている。有利には第二のリッチバーンパルスの時間に対する第一のリッチバーンパルスの時間の比は0.01〜0.9、有利には0.01〜0.5、および特に0.1〜0.5の範囲であり、その際、両方のリッチバーンパルスの合計時間は5〜30秒である。両方のリッチバーンパルスの間の触媒の十分な冷却を保証するために、両方のリッチバーンパルスの時間間隔は2〜20秒であるべきである。
【0028】
本方法は、車両の底部領域に窒素酸化物吸蔵触媒のみを有する自動車の排ガス浄化装置においても、窒素酸化物吸蔵触媒をプライマリ触媒として、および別の窒素酸化物吸蔵触媒を車両の底部領域に有する排ガス浄化装置においても使用することができる。この場合、第二のリッチバーンパルスの時間に対する第一のリッチバーンパルスの時間の比は、両方の触媒の吸蔵能の比に合わせて調整し、その際、両方のリッチバーンパルスからの合計時間は5〜30秒であり、かつ両方のリッチバーンパルスの時間間隔は5〜30秒である。
【0029】
実施例:
以下の例では、HCおよびNOx変換率をガソリン直噴方式のリーンバーン運転されるオットーエンジンにおいて測定した。試験はエンジン試験状態で行った。排ガス浄化装置は、エンジンに近いプライマリ触媒と、窒素酸化物吸蔵触媒とからなっていた。プライマリ触媒と吸蔵触媒との間の排ガス導管は長さ1mを有していた。吸蔵触媒は、図1に示されている、触媒に入る前の排ガス温度に依存したNOx吸蔵効率の依存性を有していた。
【0030】
測定の開始前に、エンジンおよび排ガス浄化装置を約1時間、コンディショニングした。コンディショニングは、複数の浄化サイクルを含んでおり、これはそのつど330秒の合計時間を有していた。それぞれの浄化サイクルは、300秒のリーンバーン段階(吸蔵段階)と、30秒のリッチバーン段階(再生段階)とからなっていた。リッチバーン段階はそのつど1つの関連するリッチバーンパルスのみから形成されていた。排ガスの空気過剰率λは、プライマリ触媒に入る前にブロードバンドのラムダゾンデにより測定した。空気過剰率は、リーンバーン段階で約2.2であり、リッチバーン段階で0.87であった。吸蔵触媒の前方の排ガス温度は、そのつどのリッチバーン段階の開始前に約305〜310℃であった。
【0031】
エンジンと排ガス浄化装置とからなるシステムのコンディショニング終了後に、NOx変換率、HC変換率および空気過剰率を、そのつど10分の1秒で測定した。図4は、200〜1900秒の間の測定の一部を示している。この一部は5回の浄化サイクルを含む。図4の第一の完全な浄化サイクルはリーンバーン段階で開始され、その後に通例のリッチバーン段階を有するが、リッチバーンパルスの分割は行わない。その後の4つの浄化サイクルでは、本発明によるリッチバーン段階のリッチバーンパルスをそのつど、短いリッチバーンパルスと長いリッチバーンパルスとに分割したが、その際、リッチバーン段階の合計時間は変更しなかった。従って両方のリッチバーンパルスの時間の合計は、全てのリッチバーン段階において常に30秒であった。両方のリッチバーンパルスの間の時間間隔はそのつど5秒であった。第一のリッチバーンパルスの時間は、1〜5秒の間で変化した。より良好な理解のために、図4に記載されている5つの浄化サイクルの時間的な推移の概略を以下にまとめる:
1.浄化サイクル(関連するリッチバーンパルスによる再生):
再生の開始前のリーンバーン運転時間:300秒
リッチバーンパルスの時間:30秒
2.浄化サイクル(2つのリッチバーンパルスによる本発明による再生):
再生の開始前のリーンバーン運転時間:295秒
第一のリッチバーンパルスの時間:1秒
パルス間のリーンバーン段階の時間:5秒
第二のリッチバーンパルスの時間:29秒
3.浄化サイクル(2つのリッチバーンパルスによる本発明による再生):
再生の開始前のリーンバーン運転時間:295秒
第一のリッチバーンパルスの時間:3秒
パルス間のリーンバーン段階の時間:5秒
第二のリッチバーンパルス間の時間:27秒
4.浄化サイクル(2つのリッチバーンパルスによる本発明による再生):
再生の開始前のリーンバーン運転時間:295秒
第一のリッチバーンパルスの時間:5秒
パルス間のリーンバーン段階の時間:5秒
第二のリッチバーンパルスの時間:25秒
5.浄化サイクル(2つのリッチバーンパルスによる本発明による再生):
再生の開始前のリーンバーン運転時間:295秒
第一のリッチバーンパルスの時間:5秒
パルス間のリーンバーン段階の時間:5秒
第二のリッチバーンパルス間の時間:25秒
第一の浄化サイクルの関連するリッチバーンパルスの間に、リッチバーン段階のほぼ半分の後で、顕著な、インパルス状のNOx放出が出現する。NOx変換率は、ほぼ100%から−150%に低下する。約10秒後に、このインパルス状のNOx放出が再び終了する。NOxインパルスの間のネガティブな変換は終了し、吸蔵触媒からは、排ガスにより吸蔵触媒に流入する窒素酸化物よりも多くが排出される。このための原因はおそらく、再生の間の発熱反応による吸蔵触媒の付加的な加熱にある。このことにより触媒の温度は、窒素酸化物の脱着に加えて、リッチな排ガスにより窒素酸化物の熱による脱着が開始される範囲にシフトする。このことにより放出される大量の窒素酸化物は明らかに触媒によって排ガスの還元性成分と反応することができない。NOxインパルスの終了後、同様にインパルス状のHC変換率の低下が観察される。このための原因は、NOxインパルス後に吸蔵触媒はほぼ完全に再生され、従って窒素酸化物はもはや、リッチバーンパルスの間に排ガスの還元性成分の反応のために利用されないという事実である。
【0032】
本発明による分割されたリッチバーンパルスによるその後の4つの再生サイクルは、インパルス状のNOx放出を分割によって低減することができることを示している。明らかに、両方のリッチバーンパルスの間の5秒の時間のリーンバーン段階は、触媒の温度上昇を限定するために十分である。最適な結果は、この例では5秒の第一のリッチバーンパルスの時間を有する両方の最後の浄化サイクルにおいて達成された。NOxインパルスの間のNOx放出の低下と同時に、図4の排ガスの還元性成分の変換率は、改善されたHC反応率に基づいて認識可能である。
【0033】
図4は、本発明による方法を吸蔵触媒の再生のために適用することにより、排ガス浄化装置の全浄化効率を改善することができることを示している。第一および第二のリッチバーンパルスならびに両方のリッチバーンパルスの間のリーンバーン段階の時間を適切に調整することにより、排ガス浄化の際に更なる改善が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】触媒の前の排ガス温度に依存した、窒素酸化物吸蔵触媒の窒素酸化物吸蔵度を示す図
【図2】従来技術による再生の間の触媒の前の運転数の推移および触媒の後の温度を示す図
【図3】時間間隔を開けた2つのリッチバーンパルスを用いた本発明による再生の間の触媒の前の運転数の推移および触媒の後の温度を示す図
【図4】窒素酸化物吸蔵触媒を有する車両におけるNOx反応率およびHC反応率を示す図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リーンバーンエンジンを有する車両の排ガス浄化システムにおける窒素酸化物吸蔵触媒を再生する方法であって、その際、該吸蔵触媒は窒素酸化物吸蔵のために150〜500℃の活性ウインドウを有し、かつ該活性ウインドウ内でリーンバーン運転を短時間、リッチバーン運転に切り替えることにより再生される方法において、窒素酸化物吸蔵触媒を再生するために、時間間隔をあけて連続する2つのリッチバーンパルスからなるリッチバーン運転を形成し、その際、第一のリッチバーンパルスは常に、第二のリッチバーンパルスよりも短く、かつ両方のパルスの間の時間間隔は2〜20秒であることを特徴とする、排ガス浄化システムの窒素酸化物吸蔵触媒の再生法。
【請求項2】
吸蔵触媒の窒素酸化物吸蔵能が、活性ウインドウ内の中心の温度で最大値を通過し、かつリッチバーン運転は、吸蔵触媒の前方の排ガス温度が、触媒中で再生に基づいて予測される温度上昇を含めて、最大の吸蔵能に関する温度よりも高い場合に、2つのパルスに分割される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
第二のリッチバーンパルスの時間に対する第一のリッチバーンパルスの時間の比は、0.01〜0.9の範囲であり、その際、両方のリッチバーンパルスからなる全時間は、5〜30秒である、請求項1記載の方法。
【請求項4】
排ガス浄化システムが、車両の底部領域に窒素酸化物吸蔵触媒を有する、請求項1記載の方法。
【請求項5】
排ガス浄化システムが、窒素酸化物吸蔵触媒をプライマリ触媒として有し、かつ別の窒素酸化物吸蔵触媒を車両の底部領域に有し、その際、それぞれの触媒は、固有の最大吸蔵能を有する、請求項4記載の方法。
【請求項6】
第二のリッチバーンパルスの時間に対する第一のリッチバーンパルスの時間の比は、両方の触媒の吸蔵能の比に相応し、その際、両方のリッチバーンパルスからの合計時間は5〜30秒であり、かつ両方のリッチバーンパルスの時間間隔は5〜20秒である、請求項4記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−525694(P2008−525694A)
【公表日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−547392(P2007−547392)
【出願日】平成17年12月24日(2005.12.24)
【国際出願番号】PCT/EP2005/014030
【国際公開番号】WO2006/069768
【国際公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【出願人】(501399500)ユミコア・アクチエンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト (139)
【氏名又は名称原語表記】Umicore AG & Co.KG
【住所又は居所原語表記】Rodenbacher Chaussee 4,D−63457 Hanau,Germany
【Fターム(参考)】