説明

筒状部材の発泡充填材

【課題】環状発泡材の共通化を可能にしてコストを低減できるとともに、発泡基材の幅寸法を大きくすることなく発泡量を増やすことができる筒状部材の発泡充填材を提供する。
【解決手段】一方向に配列された矩形板状の複数のブロック部2同士を連結部3により連結し、両端のブロック部2に連結部3を介して連結された結合部4同士を結合することにより概ね環形状をなす環状発泡材1とし、前記連結部3は、前記ブロック部2の、前記環形状の軸線a方向寸法の幅寸法wより小さく、かつ径方向b厚みtよりも薄く形成され、前記軸線aを挟んで対向するブロック部2同士を近づける屈曲変形及び前記軸線a回りの捩れ変形を許容し、前記両端の結合部4は、該結合部4同士を結合し、かつ前記環状発泡材1を筒状部材に取付けるための支持部材(クリップ)7が装着可能となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定温度に加熱して発泡固化させることにより筒状部材内に充填される発泡充填材に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車においては、車体側部のドア開口部を構成するピラー,ルーフレール,ロッカパネル等の筒状部材を介して路面ノイズ,エンジン振動等が室内に伝わるのを防止するとともに、筒状部材の断面強度を高める観点から、筒状部材内に発泡充填材を充填する場合がある。
【0003】
例えば、特許文献1には、短冊状の発泡性基材の端部同士を連結することにより環状発泡材とし、この環状発泡材の、筒状部材の断面形状に対応した部位に切り欠きを形成し、該環状発泡材を筒状部材の内面に沿うように変形させることにより、充填むらを防止するようにした充填構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−90542号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記従来構造のように、環状発泡材に切り欠きを形成することにより筒状部材の断面形状に沿うように該環状発泡材を変形させる場合には、筒状部材の断面形状に応じた多数の環状発泡材を準備する必要があり、コスト的に不利である。即ち、1つの断面形状に合うように切り欠きを形成した環状発泡材を、異なる断面形状のものに使用しようとしても、組み付け時の上下規制や筒状部材の取付け孔の位置規制等により組み付けることができない場合がある。このため低コスト化を図る観点から、環状発泡材の共通化を図ることが要請されている。
【0006】
また前記従来のように、環状発泡材を、単に切り欠きを入れて筒状部材の断面形状に沿うように変形させる構造では、該変形を容易にするために発泡材の厚さを薄くせざるを得ず、十分な発泡量が得られない場合が生じる。この場合、発泡基材の幅寸法を大きくすることで発泡量を増やすことが考えられるが、このようにすると断面形状が3次元的に変化している場合には対応困難となる。
【0007】
本発明は、前記従来の実情に鑑みてなされたもので、環状発泡材の共通化を可能にしてコストを低減できるとともに、発泡基材の幅寸法を大きくすることなく発泡量を増やすことができる筒状部材の発泡充填材を提供することを課題している。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、所定温度に加熱して発泡固化させることにより筒状部材内に充填される筒状部材の発泡充填材であって、略矩形板状をなす複数のブロック部を一方向に配列し、該各ブロック部同士を連結部により連結し、両端のブロック部に前記連結部を介して結合部を連結し、両端の結合部同士を結合することにより概ね環形状をなす環状発泡材とし、前記連結部は、前記ブロック部の、前記環形状の軸線方向幅寸法より小さく、かつ径方向厚みよりも薄く形成され、前記軸線を挟んで対向するブロック部同士を近づける屈曲変形及び前記軸線回りの捩れ変形を許容し、前記両端の結合部は、該両端の結合部同士を結合し、かつ前記環状発泡材を前記筒状部材に取付けるための支持部材が装着可能となっていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る発泡充填材によれば、複数のブロック部同士を連結部により連結するとともに、両端のブロック部に連結された結合部同士を結合することにより概ね環形状をなす環状発泡材とし、前記連結部をブロック部の幅寸法より小さく、かつブロック部の厚みよりも薄く形成したので、環状発泡材の軸直角方向への屈曲変形及び軸線回りの捩れ変形が可能となり、異なる断面形状を有する筒状部材に対しても同じ環状発泡材を使用可能であり、発泡充填材の共通化を図ることができ、それだけコストを低減できる。
【0010】
また環状発泡材を複数のブロック部同士を連結することにより3次元的に変形可能としたので、ブロック部を厚くすることで、幅寸法を大きくすることなく必要な発泡量を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施例1による発泡充填材としての環状発泡材の斜視図である。
【図2】前記環状発泡材の軸方向に見た正面図である。
【図3】前記環状発泡材の発泡基材の図である。
【図4】前記環状発泡を環状に支持する支持部材の図である。
【図5】前記環状発泡材が配設されたルーフレールの断面図(図6のV-V線断面図)である。
【図6】前記環状発泡材が配設された自動車の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施例を添付図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0013】
図1ないし図6は、本発明の実施例1による筒状部材の発泡充填材を説明するための図である。
【0014】
図において、1は、所定温度に加熱して発泡固化させることにより後述する筒状部材内に充填される発泡充填材としての環状発泡材を示している。
【0015】
この環状発泡材1は、自動車の車体側部10に形成されたドア開口部10aを構成する筒状部材としてのルーフレール11,フロントピラー12,センターピラー13及びロッカパネル14内にそれぞれ配設されている。これにより路面ノイズ,エンジン振動等による透過音を遮断するとともに、断面強度を高めている。
【0016】
ここで、前記環状発泡材1は、何れも同一形状,同一構造のものであるので、前記ルーフレール11に配設された環状発泡材1について以下、詳細に説明する。
【0017】
前記ルーフレール11は、前記ドア開口部10aの上縁部を形成しており、ルーフアウタパネル15とルーフインナパネル16との間にルーフリインホース17を配設し、これらの上フランジ部11a同士及び下フランジ部11b同士をスポット溶接により接合することにより車両前後方向に延びる閉断面を形成した構造を有する。前記ルーフレール11の上フランジ部11aにはルーフパネル18の側縁部に段落ち形成されたフランジ部18aが接合されている。
【0018】
前記環状発泡材1は、図3に示すように、略直方体の板形状をなす複数(本実施例では9個)のブロック部2を一方向に配列し、該各ブロック部2同士を連結部3により連結するとともに、配列方向の両端に位置するブロック部2に前記連結部3を介して結合部4,4′を連結し、該結合部4,4′同士を重ね合わせて結合することにより概ね環形状をなしている。
【0019】
前記各ブロック部2,連結部3及び結合部4,4′は、熱可塑性樹脂,無機充填剤,発泡剤等を配合してなる発泡素材を射出成形あるいはプレス成形することにより一体に形成されたものである。
【0020】
前記連結部3は、前記ブロック部2の環状発泡材1の軸線a方向の幅寸法wより小さく設定されている(図1〜図3参照)。詳細には、連結部3の幅寸法w1は、ブロック部2の幅寸法wの概ね1/2〜2/3程度に設定されている。
【0021】
前記連結部3は、前記ブロック部2の環状発泡材1の径方向b厚みtよりも小さく形成されている。詳細には、連結部3の厚さt1は、ブロック部2の厚さtの概ね1/2程度に設定されている。
【0022】
これにより前記環状発泡材1は、前記軸線aを挟んで対向するブロック部2同士を近づけることが可能な屈曲変形及び前記軸線a回りの捩れ変形が可能となっており、従って、前記環状発泡材1は3次元的に変形可能となっている。
【0023】
前記結合部4,4′同士は、樹脂製クリップ(支持部材)7により結合されており、かつ前記環状発泡材1は、前記クリップ7を介して前記ルーフレール11等に取付けられている。
【0024】
前記クリップ7は、クリップ本体7aと、該クリップ本体7aに形成された矩形状の取付け座7bと、該取付け座7bに形成された一対の係合爪部7c,7cと、前記クリップ本体7aの係合爪部7cの反対側に形成された内側リップ7d,7d及び外側リップ7e,7eとを有する(図4参照)。
【0025】
前記各結合部4,4′には、結合孔4a,4aが形成されており、該両結合孔は結合部4,4′同士を重ね合わせたときに一致する。そしてこの重ね合わせた結合部4,4′の結合孔4a,4a′内に前記クリップ7の各係合爪部7cを係止させることにより、結合部4,4′同士は結合されている。
【0026】
前記結合部4,4′は、前記クリップ7を装着するための必要最小限の大きさを有する。即ち、各結合部4,4′の幅寸法w2は、ブロック部2の幅寸法wと同じ長さに設定されている。また各結合部4,4′の長さlは、クリップ7の取付け座7bの当接長さl1より若干大きく設定されている(図3,図4参照)。
【0027】
前記環状発泡材1は、クリップ7をルーフリインホース17に形成された取付け孔17aに装着することにより、該ルーフリインホース17に取付けられている。詳細には、クリップ本体7aを取付け孔17aに差し込むと、内側,外側リップ7d,7eが取付け孔17aの周縁部に係止するようになっている。これにより取付け孔17aから熱発泡した発泡材が外部に漏出するのを防止している。
【0028】
前記ルーフレール11は、以下の方法にて製造されたものである。
【0029】
ルーフリインホース17に予め環状発泡材1をクリップ7により取付け、このルーフリインホース17にルーフアウタパネル15を重ね合わせるとともに、ルーフインナパネル16を重ね合わせる。この状態で上,下フランジ部11a,11bをスポット溶接により接合する。このようにしてルーフレール11を形成する。
【0030】
次に、ルーフレール11の外表面に塗装を施し、該ルーフレール11の塗料の乾燥を行なう。この乾燥を行なう際の加熱により環状発泡材1が厚み方向に熱発泡しつつ固化し、ルーフリインホース17とルーフインナパネル16とで形成された空隙を充填する。このルーフレール11の製造工程は、前記フロントピラー12,センターピラー13,ロッカパネル14についても大略同様である。
【0031】
本実施例によれば、発泡充填材を、複数のブロック部2同士を連結部3により連結するとともに、両端のブロック部2に連結部3を介して結合部4,4′を連結し、該結合部4,4分同士を結合することにより概ね環形状をなす環状発泡材1とする。そして前記連結部3をブロック部2の幅寸法wより小さく、かつブロック部2の厚みtよりも小さくすることにより、環状発泡材1の屈曲変形及び捩れ変形を可能とし、さらに結合部4をクリップ7の取付け座7bが装着可能な必要最小限の大きさのものとしたので、環状発泡材1を3次元的に変形させることが可能となり、組み付け時のパネル合わせの上下規制,取付け孔の位置規制の制約を受けることなく、ルーフレール11以外のフロントピラー12,センターピラー13,ロッカパネル14等の異なる断面形状にも対応できる。これにより環状発泡材1の共通化を図ることができ、それだけコストを低減できる。
【0032】
本実施例では、環状発泡材1を複数のブロック部2同士を連結することにより3次元的に変形可能としたので、ブロック部2の厚さtを大きくすることができ、幅寸法wを大きくすることなく筒状部材の断面形状,断面積に応じた発泡量を確保することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 環状発泡材(発泡充填材)
2 ブロック部
3 連結部
4,4′ 結合部
11 ルーフレール(筒状部材)
12 フロントピラー(筒状部材)
13 センターピラー(筒状部材)
14 ロッカパネル(筒状部材)
a 軸線
b 径方向
w ブロック部の幅寸法
t ブロック部の厚さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定温度に加熱して発泡固化させることにより筒状部材内に充填される筒状部材の発泡充填材であって、
略矩形板状をなす複数のブロック部を一方向に配列し、該各ブロック部同士を連結部により連結し、両端のブロック部に前記連結部を介して結合部を連結し、両端の結合部同士を結合することにより概ね環形状をなす環状発泡材とし、
前記連結部は、前記ブロック部の、前記環形状の軸線方向幅寸法より小さく、かつ径方向厚みよりも薄く形成され、前記軸線を挟んで対向するブロック部同士を近づける屈曲変形及び前記軸線回りの捩れ変形を許容し、
前記両端の結合部は、該両端の結合部同士を結合し、かつ前記環状発泡材を前記筒状部材に取付けるための支持部材が装着可能となっている
ことを特徴とする筒状部材の発泡充填材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−66444(P2012−66444A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−212165(P2010−212165)
【出願日】平成22年9月22日(2010.9.22)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】