説明

筒状金具の製造方法及び該筒状金具を用いた防振ゴムブッシュの製造方法

【課題】加工設備の複雑化や大型化を伴うことなく筒状金具の軸方向端面に形成される突起の設計自由度を向上させることにより、回転阻止機能を損なうことなく、筒状金具の軸方向端面上を通じての雨水等の侵入が防止される、新規なパターンの突起を筒状金具の軸方向端面に対して形成することが出来る、筒状金具の新たな製造方法を提供する。
【解決手段】一体的なテーパ状外周面である成形面26の母線方向中間部分で環状に延びる周方向成形溝28が形成されていると共に、周方向成形溝28を挟んだ内外周両側で成形面26のテーパ傾斜方向に延びる傾斜方向成形溝30が複数形成された転動成形型22を用いる。転動成形型22の小径側を円筒素管14の内周側に且つ大径側を外周側に向けて成形面26を軸方向端面に押し付けつつ周方向に転動させることにより、軸方向端面に対して塑性加工をして、環状止水突起と滑止め突起とを同時に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸方向端面に滑止め突起が形成された筒状金具の製造方法と、かかる筒状金具を用いた防振ゴムブッシュの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、筒状金具は、単体での構造部材等のほか、防振ブッシュの内筒金具のような部品等としても、広く用いられている。そして、かかる筒状金具には、その軸方向端面に対して、位置決めや他部材への取付面における回転防止等の目的で、径方向に延びる滑止め突起を、全体として放射状に周方向で複数形成したものがある。
【0003】
ところで、この滑止め突起は、一般に、特開平5−237582号公報(特許文献1)や特開2004−230740公報(特許文献2)に示されているように、筒状金具の軸方向端面に対して、先端面に凹凸を付したパンチを打ち当てるプレス加工によって形成されている。
【0004】
ところが、筒状金具の軸方向端面に滑止め突起を形成すると、この筒状金具の軸方向端面を他部材の取付面に押し付けた状態でも、隣り合う滑止め突起の間において、内筒金具の軸方向端面と防振連結される一方の部材との対向面間に隙間が発生し易い。そのために、この隙間を通じて雨水等が内筒金具の内周面に入り込んで錆び付きや腐食等の問題が発生するおそれがあった。
【0005】
しかも、かかる雨水等の侵入問題に対処するために、筒状金具の軸方向端面に形成する滑止め突起を形状を変更設計しようとしても、前述の如き従来のプレス加工では、形成することが出来る突起のパターンが制限されてしまうという問題があった。そのために、従来構造の径方向で全体として放射状に延びる滑止め突起を採用せざるを得ず、かかる突起の形状やパターン変更によって雨水等の侵入問題を解決することが極めて困難だったのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−237582号公報
【特許文献2】特開2004−230740公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の解決課題は、加工設備の複雑化や大型化を伴うことなく筒状金具の軸方向端面に形成される突起のパターン等の設計自由度を向上させることが出来、それによって回転阻止機能を損なうことなく、筒状金具の軸方向端面とそれが押し付けられる他部材の取付面との対向面間を通じての雨水等の侵入も防止される、筒状金具の軸方向端面に対して新規なパターンの突起を形成することが出来る、筒状金具の新たな製造方法を提供することにある。
【0008】
また、本発明は、そのような本発明方法に従って製造された筒状金具を利用した防振ブッシュの製造方法を提供することも、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第一の態様は、軸方向端面に滑止め突起が形成された筒状金具の製造方法であって、一体的なテーパ状外周面を成形面として備えており、該成形面の母線方向中間部分で周方向に連続して環状に延びる周方向成形溝が形成されていると共に、該周方向成形溝を挟んだ小径側と大径側の両方でそれぞれ該成形面のテーパ傾斜方向に延びる傾斜方向成形溝が周方向で複数形成された転動成形型を用い、該転動成形型の小径側を前記筒状金具の内周側に且つ大径側を該筒状金具の外周側に向けて該転動成形型の該成形面を該筒状金具の軸方向端面に押し付けつつ周方向に転動させることにより、該筒状金具の軸方向端面に対して該転動成形型による塑性加工を施して、該筒状金具の軸方向端面において、その径方向中間部分で軸方向外方に突出して周方向に延びる環状止水突起と、該環状止水突起の内周側と外周側の両方でそれぞれ径方向に延びる突状形態とされて全体として放射状をなす周方向で複数の滑止め突起とを、同時に形成する筒状金具の製造方法を特徴とする。
【0010】
要するに、本発明の第一の態様は、「特定の転動成形型を用いて、筒状金具の軸方向端面を塑性加工することで、周方向に延びる環状止水突起と、該環状止水突起の内周側と外周側でそれぞれ径方向に延びる滑止め突起とを、同時に形成する」ことを、大きな特徴とするものであり、それによって、「軸方向端面に滑止め突起を形成することに伴う筒状金具の内孔への雨水等の侵入を防止する環状止水突起を備えた筒状金具を、簡単な加工設備で容易に製造することを可能と為し得た」という、特別の技術的効果を達成したのである。
【0011】
先ず、本発明者は、「軸方向端面に滑止め突起を形成することに伴う筒状金具の内孔への雨水等の侵入」という前述の[背景技術]の欄に記載の問題の解決策として、[図10]に参考例として示す、新規構造の筒状金具2を考案した。この筒状金具2は、軸方向端面において、径方向に放射状に延びる多数の滑止め突起4を形成すると共に、外周縁部を周方向に延びる環状の外周止水壁6を設けて、隣り合う滑止め突起4,4間の隙間を外周止水壁6で塞いだものである。かかる筒状金具2では、他部材への取付面に対して、複数の滑止め突起4と共に外周止水壁6も押し付けてくい込ませることにより、隣り合う滑止め突起4,4間の隙間を外周止水壁6で塞いで、かかる隙間を通じての筒状金具2の外周面側から内周面側への雨水等の侵入を防止することが出来る。
【0012】
ところが、この新規構造の筒状金具2の実用化に向けて、本発明者が更なる研究を継続したところ、二つの問題点が明らかとなった。
【0013】
問題点の一つは製造上及び精度上の問題であり、問題のもう一つは信頼性及び耐損傷性の問題である。具体的には、前者の問題点は、図10に示す筒状金具2を、特許文献1に記載のプレス加工や、同文献1の[図7]に従来方法として示されたローレット駒を用いた転動加工の何れで製造するにしても、筒状金具2の軸方向端面の最外周部分に偏肉させて外周止水壁6を形成することが難しく、外周止水壁6の高さ寸法を充分に且つ安定して得ることが極めて困難であるという問題である。特にローレット駒を用いた転動加工では、周方向に連続した外周止水壁6の外周面に対してローレット駒の滑り量が大きくなるために、ローレット駒の摩擦抵抗が過大となって加工が一層困難であり、ローレット駒の損傷も懸念される。後者の問題点は、筒状金具2を取り扱う際に、筒状金具2の軸方向端面の最外周部分に位置する外周止水壁6に対して他部材が打ち当たる等することで、外周止水壁6に変形や損傷が発生するおそれがあり、かかる変形や損傷によって目的とする止水機能が損なわれ易いという問題である。特に筒状金具2は、軸方向端面に滑止め特記4や外周止水壁6を形成した後、用途に応じて防錆処理や製膜処理、研磨処理等が施されることが多く、それらの処理は一般に多数の内筒金具2をバケット等に投入して同時に行なわれることから、かかる処理に際して筒状金具2の相互に頻繁にぶつかり合うことで、それぞれの外周止水壁6を損傷し合うことも予想されるのである。
【0014】
而して、本発明者による更なる研究検討の結果、完成された前述の本発明の第一の態様では、テーパ状外周面を成形面として備えた転動成形型を用いることとし、且つこの転動成形型の成形面の母線方向中間部分に周方向成形溝を形成すると共に、該周方向成形溝を挟んだ小径側と大径側の両方にそれぞれ傾斜方向成形溝を複数形成したのである。このような転動成形型を用いた本発明方法によれば、筒状金具の軸方向端面において、周方向で隣り合う滑止め突起間の隙間を塞ぐ止水壁としての環状止水突起が、筒状金具の軸方向端面の径方向中間部分に形成されることとなる。即ち、周方向で隣り合う滑止め突起間の隙間を通じての雨水等の侵入を防止する目的からすると、かかる滑止め突起間の隙間の開口部分である、筒状金具の軸方向端面の最外周部分に止水壁を形成するのが良いと考えるのが当然である。しかし、本発明では発想を転換して、かかる止水壁を、筒状金具の軸方向端面の最外周から内周側に所定距離だけ離れた位置に形成したのであり、それによって、滑止め突起間の隙間への雨水等の侵入を、筒状金具の軸方向端面における外周側の開口部分では敢えて許容する代わりに、径方向中間部分においてそれより内周側への侵入を確実に阻止し得るようにしたのである。そして、その結果、前記[図10]に示した参考例としての筒状金具2が内在する二つの問題点を悉く解消し、以て、回転阻止機能と止水機能とが高度に両立して達成される新規な構造の筒状金具を、高精度に安定して且つ容易に製造することを可能と為し得たのである。
【0015】
すなわち、本発明方法に従って製造された筒状金具においては、軸方向端面に突出形成された環状止水突起で、周方向に隣り合う滑止め突起間の隙間が埋められるようにして消失されている。それ故、たとえ筒状金具の軸方向端面における外周縁部から、周方向に隣り合う滑止め突起間の隙間を通じて、筒状金具の軸方向端面と他部材の取付面との対向面間に雨水等が侵入した場合でも、環状止水突起で塞き止められることにより、筒状金具の軸方向端面における内周縁部まで至ることがなく、筒状金具の内周面に入り込むことはない。
【0016】
しかも、環状止水突起は、筒状金具の軸方向端面の径方向中間部分に形成されていることから、例えば筒状金具の軸方向端面の最外周部分等に形成される場合に比して、他部材が環状止水突起に対して打ち当たったり干渉したりすることが防止される。それ故、環状止水突起の予期しない損傷が効果的に防止され得て、目的とする止水効果を高い信頼性のもとに得ることが可能となるのである。
【0017】
さらに、環状止水突起は、筒状金具の軸方向端面の径方向中間部分に形成されており、環状止水突起の径方向内側と外側の何れにも滑止め突起が形成されている。それ故、各滑止め突起は、少なくとも筒状金具の内周側端部と外周側端部とを有していることから、たとえ環状止水突起の形成部分で滑止め突起が実質的に消失しても、滑止め突起における内周側及び外周側の両端部のエッジが、他部材の取付面に対してくい込むことにより、回転阻止機能が効果的に維持される。特に、筒状金具の外周側端部に位置する滑止め突起の端部エッジは、筒状金具の中心軸からの離隔距離が大きいことから、回転阻止力として作用する大きな回転モーメント(抵抗力)を発揮することとなり、優れた回転阻止機能が効率的に発揮され得るのである。
【0018】
加えて、本発明方法では、塑性加工に使用する転動成形型において、環状止水突起を成形する周方向成形溝が、成形面の母線方向の中間部分に形成されている。これにより、塑性加工に際しての筒状金具の軸方向端面における偏肉が、転動成形型の成形面における母線方向の中間部分に設定される。それ故、筒状金具の軸方向端部における塑性加工に際しての偏肉が軽減され得て、加工寸法精度が向上され得る。その結果、単一の成形面をもった転動成形型による簡単な加工設備によって、筒状金具の軸方向端面に対して、滑止め突起と環状止水突起とを、安定して高精度に同時に形成することを可能と為し得たのである。
【0019】
なお、転動成形型における周方向成形溝は、成形面の母線方向の中間部分、即ち円錐台形の側面によって形成された成形面における母線方向の両端縁部間で且つそれら両端部から離れた部分に形成されていれば良く、成形面の母線方向の中央に限定されるものでない。尤も、筒状金具の軸方向端面の半径方向において、内周縁部を0(原点)とし外周縁部を100として等分目盛を付した直線座標軸上で、20〜90の領域、より好適には50〜80の領域に、環状止水突起における突出先端面の幅方向中心線が位置するように設定されるのが良い。径方向位置に対応した周長を考慮すると、環状止水突起による偏肉位置を、筒状金具の軸方向端面の半径方向中央よりも外周側に設定することによって、成形寸法精度の更なる向上と安定化が期待できるからである。また、転動成形型においてテーパ傾斜方向に延びる傾斜方向成形溝は、成形面の母線と平行に延びている必要はなく、成形面の母線に対して周方向に傾斜していたり湾曲等していても良い。即ち、この傾斜方向成形溝によって形成される滑止め突起は、筒状金具の軸方向端面において径方向線に対して周方向に傾斜して延びる直線や曲線であっても良く、例えば螺旋状等に湾曲していても良い。
【0020】
本発明の第二の態様は、第一の態様に係る筒状金具の製造方法において、前記転動成形型における前記周方向成形溝と前記傾斜方向成形溝の何れもが該転動成形型の外周面に向かって次第に溝幅寸法が大きくなる拡開断面形状とされているものである。
【0021】
本態様の製造方法に示された特定構造の転動成形型を採用すれば、筒状金具の軸方向端面に形成される滑止め突起と環状止水突起とが、何れも、先細断面形状とされる。それ故、それら滑止め突起と環状止水突起とが防振連結される一方の部材に押し付けられることにより、滑止め突起及び環状止水突起の突出先端部分のくい込みによる回転阻止機能及び止水機能が、一層効果的に発揮され得る。また、転動成形型において拡開断面形状の周方向成形溝と傾斜方向成形溝を採用することで、転動成形型の引っ掛かり等が防止されて、転動加工による滑止め突起や環状止水突起の形成がスムーズに実施される。
【0022】
本発明の第三の態様は、第一又は第二の態様に係る筒状金具の製造方法において、前記転動成形型における前記周方向成形溝と前記傾斜方向成形溝が互いに同じ深さ寸法とされているものである。
【0023】
滑止め突起と環状止水突起の何れか一方が特に外方に突出していると、装着前に突出した方の突起に対して他部材等の打ち当りによる損傷等が発生し易いし、装着後にも突出した方の突起だけがくい込んで突出していない方の突起が殆ど機能しないおそれがある。本態様では、筒状金具の軸方向端面に形成される滑止め突起と環状止水突起の各突出先端部が、筒状金具の軸直角方向に広がる同一平面上に位置せしめられることで、突起の局部的な損傷を防止することが出来ると共に、何れの突起にも当接状態やくい込み状態が安定して発現されて、目的とする回転阻止機能や止水機能が一層高い信頼性で発揮され得る。
【0024】
本発明の第四の態様は、防振ゴムブッシュの製造方法であって、第一〜四の何れか一態様に係る筒状金具の製造方法に従って、前記筒状金具の軸方向両側の端面にそれぞれ前記転動成形型による塑性加工を施した後、該筒状金具の外周面に本体ゴム弾性体を加硫接着することを特徴とする。
【0025】
軸方向端面に滑止め突起と環状止水突起とを形成された筒状金具を有する防振ゴムブッシュでは、筒状金具の軸方向端面が防振ゴムブッシュによって防振連結される一方の部材に押し付けられて取り付けられることにより、防振連結される一方の部材に対する防振ゴムブッシュの回転が阻止されると共に、筒状金具と防振連結される一方の部材との間における雨水の浸入が阻止される。本態様の製造方法によれば、このような優れた効果を奏する防振ゴムブッシュが、転動成形型を用いた転動加工で滑止め突起と環状止水突起を同時に形成することによって少ない工程数で容易に形成される。
【発明の効果】
【0026】
本発明方法に従えば、回転阻止機能を発揮する滑止め突起と、隣り合う滑止め突起間の隙間を塞いで雨水等の侵入を防止する環状止水突起とを、単一の成形面を有する転動成形型による塑性加工によって、筒状金具の軸方向端面に対して同時に成形することが出来る。また、このように滑止め突起と環状止水突起が形成された筒状金具を用いることにより、例えば自動車用のサスペンションブッシュ等に用いられる防振ブッシュを有利に製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施形態としての筒状金具の縦断面図。
【図2】図1の拡大側面図。
【図3】図1に示された筒状金具の要部を拡大して示す斜視図。
【図4】図1に示された筒状金具の一製造工程としての塑性加工を示す説明図。
【図5】図4に示された塑性加工で用いられる転動成形型を示す縦断面図であって、図6におけるV−V断面図。
【図6】図5における右側面図。
【図7】図1に示された筒状金具を用いて本発明方法に従って製造された防振ブッシュの一実施形態を示す縦断面図であって、図8におけるVII−VII断面図。
【図8】図7における左側面図。
【図9】図7に示された防振ブッシュの装着状態を示す説明図。
【図10】参考例としての筒状金具の軸方向端部を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0029】
図1〜3には、本発明方法に従って製造された筒状金具10が示されている。この筒状金具10は、円筒形状を有しており、その軸方向両端面に対して特定形状の突起が形成されている。なお、筒状金具10の軸方向中央部分には、膨らんだ大径部12がバルジ加工等で形成されているが、この大径部12は、後述する防振ブッシュに適用した場合に、目的とするばね特性を実現するためのものであり、本発明において必須のものでない。
【0030】
かかる筒状金具10を本発明方法に従って製造するに際しては、先ず加工素材としての円筒素管14を準備する。なお、この円筒素管14は、図4に示されており、例えば押出加工や引抜加工等の公知の管材製造方法によって得られた円筒金属管を適当な長さで切断することによって、製造することが出来る。なお、円筒素管14の材質は、目的とする筒状金具10に要求される特性に応じてステンレス等の適当な材質が選択される。また、この円筒素管14には、上述の大径部12の形成など、適当な形状加工が施されても良い。
【0031】
次いで、この円筒素管14に対して、その軸方向端面に対して塑性加工を施すことにより、図3に示されているように、放射状に延びる複数本の滑止め突起16と、周方向に延びる環状止水突起18とを、形成する。即ち、これら滑止め突起16と環状止水突起18は、何れも、筒状金具10と一体形成されており、筒状金具10の軸方向端面20から軸方向外方に突出する突起形状を有しているのである。
【0032】
これらの突起16,18を形成するに際しては、図4に示されているように、特定の成形駒としての転動成形型22を用い、円筒素管14の軸方向端面20に対して塑性加工を施す。かかる転動成形型22は、図5〜6に示されているように、全体として略円錐台形状を有する単一工具とされている。なお、転動成形型22の材質は、加工対象である円筒素管14の材質や、形成する突起の形状や大きさ、加工速度等を考慮して、例えばハイス(高速度工具鋼)や炭素工具鋼、超硬合金などが適宜に採用され得る。
【0033】
転動成形型22には、中心軸上に貫通する支持孔24が形成されており、テーパ状に傾斜した側面(外周面)が成形面26とされている。そして、この成形面26に対して、複数の成形溝が設けられている。具体的には、成形面26の母線方向の中間部分には、周方向に連続して環状に延びる周方向成形溝28が形成されている。更に、この周方向成形溝28に直交するように、成形面26のテーパ傾斜方向に向かって母線と平行に延びる傾斜方向成形溝30が、複数形成されている。かかる複数の傾斜方向成形溝30は、成形面26の小径側端部から大径側端部に亘って連続して延びており、且つ周方向成形溝28の周方向で等間隔に位置して周方向成形溝28と交差している。
【0034】
転動成形型22の成形面26に形成された、これらの周方向成形溝28と傾斜方向成形溝30は、目的とする筒状金具10の軸方向端面20に設けられる複数の突起形状に対応した形状を有するものであり、その具体的形状は、目的とする筒状金具10の突起形状に応じて設計される。それ故、転動成形型22における周方向成形溝28及び傾斜方向成形溝30の詳細な形状説明は、後述する筒状金具10の突起形状の説明で代える。
【0035】
かくの如き側面に成形面26を有する転動成形型22は、その支持孔24に対して支軸が挿通されて、該支軸により中心軸回りに回転可能に支持される。そして、図4に示されているように、ワークベース等で中心軸回りに回転可能に支持せしめたワークとしての円筒素管14に対して、該円筒素管14の加工面となる軸方向端面20上に転動成形型22を位置決めする。この転動成形型22は、小径側端面32を円筒素管14の内周側に且つ大径側端面34を円筒素管14の外周側に向けて、その中心軸36を円筒素管14の中心軸38に対して斜交するようにセットする。
【0036】
これにより、転動成形型22の成形面26を円筒素管14の軸方向端面20に対向位置せしめる。また、転動成形型22の中心軸と円筒素管14の中心軸との交角を、転動成形型22における母線の傾斜角に応じて設定することにより、転動成形型22の成形面26を円筒素管14の軸方向端面20に対して略平行に正対させる。
【0037】
そして、ワークベース等で軸直角方向に固定支持された円筒素管14を、モータ等の駆動手段で回転させると共に、転動成形型22に向けて軸方向で接近方向に移動させて、円筒素管14の軸方向端面20を転動成形型22の成形面26に押し付けて成形加工を行なう。即ち、円筒素管14の中心軸回りの回転に伴って、支軸によって位置固定に且つ回転可能に支持された転動成形型22は、円筒素管14の軸方向端面20に押し付けられることにより、かかる加工面となる円筒素管14の軸方向端面20を塑性変形させると共に、円筒素管14との接触抵抗により円筒素管14の中心軸回りの回転に伴って円筒素管14もその中心軸回りで回転する。これら円筒素管14と転動成形型22との連れ回りによって、円筒素管14の軸方向端面20に対して、その全周に亘って、転動成形型22の成形面26による塑性加工が施されて、成形面26に形成された周方向成形溝28及び傾斜方向成形溝30に対応した突起16,18が同時に形成される。
【0038】
このような転動成形型22を用いた塑性変形によって滑止め突起16及び環状止水突起18を備えた筒状金具10を形成すれば、単一の転動成形型22によって複数の滑止め突起16と環状止水突起18とを同時に形成することが出来る。それ故、円筒素管14に対して突起16,18を形成するための設備が簡単且つ少なく抑えられると共に、突起16,18を形成する加工工程が少なく済んで、筒状金具10を容易に製造することが出来る。
【0039】
なお、上述の転動成形型22による塑性加工に際しては、それと同時に、或いは前後の別工程で、円筒素管14の軸方向端部における内外周エッジ部へのテーパ加工を行なうことが望ましい。これにより、軸方向端部の加工バリが、円筒素管14の内周側や外周側に突出することを防止できる。かかるテーパ加工は、例えば特許文献1において従来技術を示す[図7]に記載の如き面加工用バイトを用いた切削加工で行なうことが出来るが、転動駒等による塑性加工でテーパ面を成形することも可能である。また、テーパ加工専用の転動駒に代えて、例えば上述の転動成形型22における成形面26の母線方向両端部分において外周面上に突出して周方向に延びるテーパ加工用の環状成形突部を一体形成することにより、転動成形型22にテーパ加工機能を併せ持たせることも出来るが、テーパ面に対する面接触に伴う転動成形型22の転動抵抗や摩擦熱の増大等を考慮すると、転動成形型22とは別にテーパ加工用の転動駒や面加工用バイトを設けることが望ましい。
【0040】
また、上述の円筒素管14の中心軸36回りの回転駆動に代えて、円筒素管14を非回転状態に支持させつつ、転動成形型22をその中心軸38回りでの自転状の回転に加えて円筒素管14の中心軸36回りに公転状に転動変位させることにより、目的とする塑性加工を行なうことも可能である。
【0041】
上述の転動成形型22による塑性加工を円筒素管14に施すことによって得られた、目的とする筒状金具10には、図1〜3に示されているように、その軸方向端面20に対して、転動成形型22の周方向成形溝28と傾斜方向成形溝30とに対応して、放射状に延びる複数本の滑止め突起16と、周方向に延びる環状止水突起18とが、形成されている。即ち、これら滑止め突起16と環状止水突起18は、何れも、筒状金具10と一体形成されており、筒状金具10の軸方向端面20から軸方向外方に突出する突起形状を有している。
【0042】
特に滑止め突起16は、筒状金具10の軸方向端面20において、内周側端縁部近くから外周側端縁部近くまで、周方向に傾斜せずに径方向に直線的に延びている。なお、滑止め突起16の長さ方向(筒状金具10の軸方向端面20の径方向)の両端面は、それぞれ、山裾状に広がる傾斜面とされており、他部材の打当りや干渉に伴う滑止め突起16の長さ方向端部の欠損や変形の防止が図られている。
【0043】
また、滑止め突起16は、台形の断面形状で径方向に延びており、その断面の幅寸法が突出先端側に行くに従って小さくなる先細断面形状とされている。更に、この滑止め突起16は、周方向で相互に近接して複数形成されており、全体として筒状金具10の中心軸を中心として放射線状に延びる多数の滑止め突起16が形成されている。即ち、筒状金具10の周方向断面では、多数の滑止め突起16によって連続した鋸歯様の形状を呈している。
【0044】
更にまた、全ての滑止め突起16の形状及び大きさは同じとされており、全ての滑止め突起16の突出先端面は、筒状金具10の中心軸に直交する一つの平面上に位置せしめられている。これにより、筒状金具10が他部材に装着されて、その軸方向端面20が他部材の平坦な取付面に対して重ね合わされた際、かかる取付面に対して、全ての滑止め突起16の突出先端部が当接するようになっている。尤も、滑止め突起16の突出先端面全体が一つの平面上にあることは必須ではなく、例えば、全ての滑止め突起16の突出先端面が、外周側に向かって軸方向外側に傾斜するテーパ面上に位置せしめられていても良い。これによれば、他部材の取付面に対して滑止め突起16の突出先端部の外周側エッジが内周部分よりも先に当接することから、外周側エッジ部分において滑止め突起16の他部材へのくい込みが有利に生じて、筒状金具10の他部材に対する中心軸回りでの回転が効果的に防止され得る。
【0045】
一方、環状止水突起18は、筒状金具10の軸方向端面20において、径方向中間部分を周方向に連続して延びる円環形状を有している。なお、環状止水突起18も、滑止め突起16と同様に、台形の断面形状で周方向に延びており、その断面の幅寸法が突出先端側に行くに従って小さくなる先細断面形状とされている。
【0046】
また、環状止水突起18は、周方向の全長に亘って一定の断面形状で延びており、環状止水突起18の突出先端面は、全長に亘って、筒状金具10の中心軸に直交する一つの平面上に位置せしめられている。しかも、この環状止水突起18の突出先端面は、上述の滑止め突起16の突出先端面が位置する平面と同じ平面上に位置するようにされている。要するに、複数の滑止め突起16と環状止水突起18は、全ての突出先端面が同一平面上に設定されている。これにより、筒状金具10が他部材に装着されて、その軸方向端面20が他部材の平坦な取付面に対して重ね合わされた際、かかる取付面に対して、全ての滑止め突起16だけでなく環状止水突起18の突出先端部も押し付けられるようになっている。
【0047】
さらに、環状止水突起18は、筒状金具10の軸方向端面20の径方向中間部分(図2に示されているように、本実施形態では、径方向中央よりも少し径方向外方に偏倚した位置)に形成されていることから、全ての滑止め突起16が、この環状止水突起18に交差している。
【0048】
これら各交差点でも、環状止水突起18の突出先端面は周方向に連続しており、これにより、周方向に閉じた円環状面をもって、筒状金具10の軸方向端面20に重ね合わされる他部材の取付面に対して押し付けられるようになっている。また、各滑止め突起16は、何れも、環状止水突起18との交差点から、環状止水突起18の内周側と外周側とにそれぞれ延び出しており、それら内周側と外周側の何れもが、筒状金具10の軸方向端面20に重ね合わされる他部材の取付面に対して押し付けられるようになっている。
【0049】
さらに、筒状金具10の軸方向端面20において周方向に隣り合う滑止め突起16,16間には、それぞれ、径方向に延びる溝状凹部40が存在しているが、この溝状凹部40の長さ方向中間部分(軸方向端面20の径方向中間部分)を周方向に横切って環状止水突起18が形成されている。この環状止水突起18は周方向の全周に亘って連続していることから、全ての溝状凹部40は、長さ方向中間部分において、環状止水突起18で塞き止められるようにして消失されている。
【0050】
従って、上述の如き滑止め突起16と環状止水突起18を併せ備えた軸方向端面20を有する筒状金具10は、他部材への装着に際して軸方向端面20を他部材の取付面に押し付けて装着することにより、筒状金具10の他部材に対する中心軸回りでの相対変位が効果的に防止されると共に、筒状金具10の軸方向端面20と他部材の取付面との隙間を通じての筒状金具10の内周面への雨水等の侵入も効果的に防止されるのである。なお、これらの技術的効果を理解し易くするために、上述の筒状金具10を用いた製品の一例として防振ブッシュを示し、この防振ブッシュについて、本発明の作用効果を具体的に説明する。
【0051】
すなわち、図7〜8には、前述の筒状金具10を用いた製品の一実施形態としての防振ブッシュ42が示されている。この防振ブッシュ42は、自動車のサスペンション機構を構成するサスペンションアームの車両ボデー側又は車輪側への取付部位に装着されて、路面振動の車両ボデー側への伝達軽減等を図るものである。
【0052】
より詳細には、防振ブッシュ42は、前述の筒状金具10によって構成された内筒金具44を備えており、この内筒金具44が防振ブッシュ42の中心軸上で軸方向に貫通して配設されている。また、内筒金具44の外周面には、本体ゴム弾性体46が固着されている。本体ゴム弾性体46は、全体として厚肉の略円筒形状を有しており、その内周面が内筒金具44の外周面に固着されている。更に、本体ゴム弾性体46の外周面には、円筒形状の外筒金具48が固着されている。外筒金具48は、内筒金具44よりも薄肉で軸方向長さが短くされており、内筒金具44の軸方向中央部分で内筒金具44から径方向外方に離隔して内筒金具44と同一中心軸上に配設されている。このような防振ブッシュ42は、例えば内外筒金具44,48の存在下で本体ゴム弾性体46を成形及び加硫することにより一体加硫成形品として製造される。
【0053】
なお、本実施形態では、本体ゴム弾性体46に対して、径方向中間部分を軸方向に貫通して延びる一対のすぐり部50,50が形成されている。これら一対のすぐり部50,50は、径方向一方向で対向位置して、それぞれ、内外筒金具44,48間を周方向に円弧状に1/4周弱の長さで延びており、一対のすぐり部50,50の対向方向とそれに直交する径方向とのばね比の調節等のチューニングがされている。
【0054】
そして、防振ブッシュ42は、図9に示されているように、サスペンションアーム52の車両ボデー側部材54に対する取付部位に装着される。かかる装着に際しては、先ず、サスペンションアーム52の一方の端部に形成された円筒形状のアームアイ56の装着孔58に対して、防振ブッシュ42の外筒金具48を圧入固定する。その後、サスペンションアーム52に装着された防振ブッシュ42を、他部材としての車両ボデー側部材54に形成された一対の取付部60,60の対向面間に嵌め入れる。そして、一対の取付部60,60に形成された挿通孔62,62に対して、内筒金具44の内孔64を位置合わせして、取付ボルト66を一方の取付部60の挿通孔62から挿し入れ、内筒金具44の内孔64に挿通させて、他方の取付部60の挿通孔62から外方に突出させる。この突出させた取付ボルト66の先端ねじ部68に対して締付ナット70を螺着し、締め付けることによって内筒金具44の軸方向両端面を一対の取付部60,60の取付面としての各対向面に押し付けて固定する。
【0055】
このような防振ブッシュ42の車両サスペンション機構への装着状態下では、目的とする防振効果が安定して発揮されるように、本体ゴム弾性体46における一対のすぐり部50,50を車両前後方向等の特定方向に位置決めすることが必要となる。この周方向の位置決めが、内筒金具44の軸方向両端面20,20に突設された前述の滑止め突起16によって実現される。即ち、滑止め突起16が、取付ボルト66への締付ナット70の締付力に基づいて、取付部60に押し付けられることでくい込むことにより、取付部60に対する内筒金具44の周方向での相対回転変位が阻止されるようになっているのである。
【0056】
しかも、内筒金具44の軸方向端面20には、滑止め突起16に加えて環状止水突起18が形成されていることから、滑止め突起16によって発揮される内筒金具44の取付部60に対する回転阻止機能を充分に確保しつつ、内筒金具44と取付部60との間の隙間を通じての雨水等の内筒金具44の内孔64への侵入も効果的に防止され得るのである。
【0057】
すなわち、上述の如き構造とされた防振ブッシュ42では、図9に示されている如き装着状態下において、車両ボデー側部材54の取付部60と内筒金具44の軸方向端面20との間で、周方向に隣り合う滑止め突起16,16間の隙間(溝状凹部40)の外周側開口部から、たとえ雨水等が侵入した場合でも、環状止水突起18で塞き止められる。それ故、雨水等が内筒金具44の軸方向端面20の内周縁部まで至ることがなく、内筒金具44の内孔64にまで入り込むことがない。
【0058】
しかも、環状止水突起18は、内筒金具44の軸方向端面20の径方向中間部分に形成されていることから、搬送時や装着時における他部材の打当りや干渉に起因する環状止水突起18の損傷が効果的に防止されるのであり、上述の如き目的とする止水効果を一層安定して得ることができる。
【0059】
さらに、環状止水突起18の径方向内周側と外周側の何れにも滑止め突起16が径方向に延び出して形成されていることから、これら滑止め突起16が車両ボデー側部材54の取付部60に押し付けられてくい込むことで、内筒金具44の車両ボデー側部材54に対する中心軸回りの回転阻止機能が、環状止水突起18で損なわれることなく有効に発揮され得るのである。
【0060】
特に、滑止め突起16は、車両ボデー側部材54の取付部60に押し付けられた際、その端部のエッジ部分において押し付け力の集中効果で取付部60に対して一層効果的にくい込む。それ故、環状止水突起18から内周側と外周側の両方に突出形成された滑止め突起16の内周側端のエッジ部と外周側端のエッジ部とが、取付部60に対して積極的にくい込むこととなり、それによって、内筒金具44の車両ボデー側部材54に対して中心軸回りの回転阻止機能が効果的に発揮されるのである。なかでも、内筒金具44の外周側端部近くに位置する滑止め突起16のエッジ部は、内筒金具44の中心軸からの離隔距離が大きいことから、回転阻止力として作用する大きな回転モーメント(抵抗力)を発揮し得る。
【0061】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はかかる実施形態の具体的な記載によって限定されるものでない。例えば、転動成形型22による塑性加工は、筒状金具10の軸方向一方の端面だけに施されていても良い。即ち、筒状金具10は、その軸方向を鉛直方向に向けて装着されたり、軸方向の片側にシールゴムが装着されたり、さまざまな装着態様があり、筒状金具10の軸方向端面における止水機能の要求が軸方向一方の側だけにある場合には、筒状金具10における軸方向一方の側だけに環状止水突起18を形成すれば良い。また、滑止め突起16も同様に、筒状金具10の軸方向一方の端面だけが取付部材等に押し当てられて装着される場合や、軸方向一方の端面だけで充分な回転阻止機能が発揮される場合などは、当該軸方向一方の端面だけに形成されていれば良い。
【0062】
また、転動成形型22において傾斜方向成形溝30の内周側と外周側に周方向成形溝28が離れて形成されており、それによって筒状金具10の軸方向端面20に形成される滑止め突起16が、環状止水突起18の内周側と外周側に離れて形成されていても良い。その場合には、環状止水突起18の内周側と外周側に形成された各滑止め突起16が何れも内周側エッジ部と外周側エッジ部を有することから、それらエッジ部のくい込み作用に基づく回転阻止機能の向上が期待できる。
【0063】
さらに、転動成形型22において、周方向成形溝28の径方向両側に形成された傾斜方向成形溝30は、互いに同一径方向線上に形成されている必要はない。例えば、周方向成形溝28の内周側の傾斜方向成形溝30と外周側の傾斜方向成形溝30を、互いに周方向にずれた位置に形成しても良いし、互いに周方向ピッチ(間隔や大きさ等)を異ならせて形成することも可能である。
【0064】
また、傾斜方向成形溝30は、何れも、径方向に直線的に延びている必要はない。例えば径方向線に対して傾斜していたり、傾斜且つ湾曲して延びるらせん状等の態様でも良い。傾斜方向成形溝30を周方向一方に向かってらせん状に湾曲させれば、それによって形成される滑止め突起16において特定の回転方向への回転阻止力の向上効果も期待できる。
【0065】
また、複数の周方向成形溝28が形成されることにより、要求される止水能力や押し付けられる相手側部材の性状等に応じて、環状止水突起18が径方向に離隔して複数形成されていても良い。また、径方向に離隔して複数の周方向成形溝28を設ける場合には、それらの径方向間に、傾斜方向成形溝30を形成しても良いし、形成しなくても良い。
【0066】
更にまた、周方向成形溝28と傾斜方向成形溝30の深さ寸法は必ずしも同じでなくても良く、それら溝28,30を利用して形成される滑止め突起16と環状止水突起18の各突出先端面が筒状金具10の軸直角方向に広がる同一平面上に位置していなくても良い。例えば、滑止め突起16よりも環状止水突起18の突出先端面を筒状金具10の軸方向外方に大きく突出させることにより、他部材へのくい込み量を滑止め突起16よりも環状止水突起18において大きくして、より高度な止水効果を一層安定して得ることが可能となる。一方、環状止水突起18よりも滑止め突起16の突出先端面を筒状金具10の軸方向外方に大きく突出させることにより、他部材へのくい込み量を環状止水突起18よりも滑止め突起16において大きくして、より大きな回転阻止力を設定することが可能となる。なお、要求される回転阻止力や他部材の性状等を考慮して、滑止め突起16の幾つかにおいて突出高さや形状を異ならせたり、一つの滑止め突起16の突出高さや形状を長さ方向で変化させたりして調節することも可能である。
【符号の説明】
【0067】
10:筒状金具、16:滑止め突起、18:環状止水突起、20:軸方向端面、22:転動成形型、26:成形面、28:周方向成形溝、30:傾斜方向成形溝、42:防振ブッシュ(防振ゴムブッシュ)、44:内筒金具、46:本体ゴム弾性体、54:車両ボデー側部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向端面に滑止め突起が形成された筒状金具の製造方法であって、
一体的なテーパ状外周面を成形面として備えており、該成形面の母線方向中間部分で周方向に連続して環状に延びる周方向成形溝が形成されていると共に、該周方向成形溝を挟んだ小径側と大径側の両方でそれぞれ該成形面のテーパ傾斜方向に延びる傾斜方向成形溝が周方向で複数形成された転動成形型を用い、
該転動成形型の小径側を前記筒状金具の内周側に且つ大径側を該筒状金具の外周側に向けて該転動成形型の該成形面を該筒状金具の軸方向端面に押し付けつつ周方向に転動させることにより、該筒状金具の軸方向端面に対して該転動成形型による塑性加工を施して、
該筒状金具の軸方向端面において、その径方向中間部分で軸方向外方に突出して周方向に延びる環状止水突起と、該環状止水突起の内周側と外周側の両方でそれぞれ径方向に延びる突状形態とされて全体として放射状をなす周方向で複数の滑止め突起とを、同時に形成する
ことを特徴とする筒状金具の製造方法。
【請求項2】
前記転動成形型における前記周方向成形溝と前記傾斜方向成形溝の何れもが該転動成形型の外周面に向かって次第に溝幅寸法が大きくなる拡開断面形状とされている請求項1に記載の筒状金具の製造方法。
【請求項3】
前記転動成形型における前記周方向成形溝と前記傾斜方向成形溝が互いに同じ深さ寸法とされている請求項1又は2に記載の筒状金具の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項に記載された筒状金具の製造方法に従って、前記筒状金具の軸方向両側の端面にそれぞれ前記転動成形型による塑性加工を施した後、該筒状金具の外周面に本体ゴム弾性体を加硫接着することを特徴とする防振ゴムブッシュの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−5539(P2011−5539A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−154036(P2009−154036)
【出願日】平成21年6月29日(2009.6.29)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【出願人】(501073943)関戸機鋼株式会社 (4)
【Fターム(参考)】