説明

粉体搬送装置

【課題】 粉体塗装ガンから吐出される総エアー量の調整を行っても、粉体塗装ガンから吐出される単位時間当たりの粉体量を一定に保つことができるようする。
【解決手段】 吐出口14から搬送ホース6を介して粉体のエアー搬送を行うインジェクター12を備えた粉体搬送装置において、メインエアーノズル7から供給されるメインエアー量を、吐出口14から搬送ホース6に供給する粉体の設定吐出量が得られる量とし、サブエアーノズル8から供給されるサブエアー量を、搬送ホース6に供給する総エアーの設定量からメインエアー量を差し引いた量に制御し、インジェクター12の吐出口14から吐出される総エアー量を増減させても、インジェクター12の吐出口14から吐出される総エアー量中に含まれる単位時間当たりの粉体量を一定に保つことができるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、粉体塗料タンクから粉体塗料を吸引して、粉体塗装ガンに供給する粉体搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の粉体搬送装置は、粉体タンクから粉体を吸引し、吐出口から搬送ホースを介して粉体のエアー搬送を行うインジェクターを備えている。
【0003】
インジェクターは、圧縮エアー源に流量絞り弁を介して接続されるメインエアーノズルを有し、このメインエアーノズルから供給されるメインエアーによってインジェクター本体内に負圧を生じさせ、この負圧によって粉体タンクから粉体を吸引し、メインエアーと共に、吐出口から粉体を吐出する装置である。
【0004】
ところで、インジェクター本体から吐出された粉体は、メインエアーによって搬送ホース内を搬送されるが、搬送ホース内に安定した搬送エアーを供給するために、インジェクターに、圧縮エアー源に流量絞り弁を介して接続されるサブエアーノズルを設けて、搬送ホース内に、メインエアーと共に、サブエアーを供給するようにしたものが一般的に用いられている(特許文献1、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−273282号公報
【特許文献2】特開2006−102708号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、粉体塗装ガンから吐出される総エアー量は、被塗装物の凹凸形状や作業性などの塗装条件に併せて増減させる必要がある。
【0007】
粉体塗装ガンから吐出される総エアー量は、メインエアー量とサブエアー量を合算した量であり、総エアー量を増減させる場合、従来は、総エアー量の増減量に見合うように、メインエアー量とサブエアー量を調整している。
【0008】
例えば、メインエアー量が60l/min、サブエアー量が40l/min、総エアー量が100l/minで塗装を行っている場合に、被塗装物や搬送ホースの条件により、総エアー量を10%下げる場合には、メインエアー量とサブエアー量をそれぞれ10%下げるように、流量絞り弁の開度をコントローラにより調整する制御が行われている。
【0009】
即ち、メインエアー量は、60l/minからその90%の54l/minに、サブエアー量は、40l/minからその90%の36l/minに調整され、総エアー量が100l/minの90%の90l/minになるようにしている。
【0010】
しかしながら、このような総エアー量の調整を行った場合、総エアー量は目的とする値に最適化することができても、総エアー量を増減させると、その増減量の割合に応じて、メインエアー量が増減することになる。
【0011】
メインエアー量が増減すると、インジェクターの粉体吸引量が変化するため、粉体塗装ガンから吐出される単位時間当たりの粉体量に変化が生じる。
【0012】
粉体塗装ガンから吐出される単位時間当たりの粉体量が一定でないと、正確な塗装作業が行い難く、塗装不良を起こしやすい。
【0013】
そこで、この発明は、総エアー量の調整を行っても、粉体塗装ガンから吐出される単位時間当たりの粉体量を一定に保つことができるようすることを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記の課題を解決するために、この発明は、圧縮エアー源に流量絞り弁を介して接続されるメインエアーノズルを有し、このメインエアーノズルから供給されるメインエアーによって粉体タンクから粉体を吸引し、吐出口から搬送ホースを介して粉体のエアー搬送を行うインジェクターを備え、インジェクターにサブエアーを供給する、圧縮エアー源に流量絞り弁を介して接続されるサブエアーノズルを設け、メインエアーノズルの流量絞り弁と、サブエアーノズルの流量絞り弁を調節するコントローラを備えた粉体搬送装置において、上記コントローラにより、メインエアーノズルから供給されるメインエアー量を、吐出口から搬送ホースに供給する粉体の設定吐出量が得られる量とし、サブエアーノズルから供給されるサブエアー量を、搬送ホースに供給する搬送エアーの総エアー量の設定量からメインエアー量を差し引いた量に制御するようにしたものである。
【0015】
即ち、この発明は、インジェクターの吐出口から吐出される総エアー量を増減させる場合に、メインエアーノズルから供給されるメインエアー量を一定に保ち、総エアー量の増減量を、サブエアーノズルから供給されるサブエアー量によって賄うように、サブエアーノズルの流量絞り弁をコントローラによって調節するものである。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、以上のように、インジェクターの吐出口から吐出される総エアー量を増減させても、メインエアーノズルから供給されるメインエアー量に変化がないので、インジェクターの吐出口から吐出される総エアー量中に含まれる単位時間当たりの粉体量を一定に保つことができる。
したがって、この発明の粉体搬送装置を粉体塗装に使用した場合、被塗装物の形状や搬送ホースの条件により、塗装ガンから吐出される総エアー量を調整しても、単位時間当たりの粉体量を一定に保つことができるので、被塗装物の膜厚管理が容易となり、作業者の熟練度に関わりなく、安定した塗装作業が行える。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】この発明に係る粉体搬送装置の一実施形態を示す全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、この発明の実施の形態について説明する。
図1は、流動式の粉体塗料タンク1から粉体塗料Aをインジェクター2によって吸引して、塗装ガン3に粉体塗料をエアー搬送して吐出する粉体塗装装置に使用する粉体搬送装置を示している。塗装ガン3としては、ガン先端にコロナ電極を備えたコロナ静電式塗装ガン、ガン本体内に摩擦チューブを備える摩擦帯電式静電塗装ガンがある。
【0019】
粉体塗料タンク1は、下部が多孔質板4によって仕切られ、多孔質板4の下方から除湿除油されたコンプレサーエアー5が導入されている。多孔質板4から吐出される流動エアーにより、粉体塗料タンク1内の粉体塗料Aは、除湿され流動状態になって分散している。
【0020】
粉体塗料タンク1の上部には、粉体塗料タンク1内の粉体塗料Aを吸引して、搬送ホース6を介して、粉体塗料Aを塗装ガン3にエアー搬送するインジェクター2が設置されている。
【0021】
インジェクター2には、メインエアーノズル7とサブエアーノズル8が設けられている。
【0022】
メインエアーノズル7とサブエアーノズル8には、圧縮エアーが供給されるコンプレッサー等の圧縮エアー源9にそれぞれ流量絞り弁10、11を介して接続されている。
【0023】
圧縮エアー源9と流量絞り弁10、11との間には、減圧弁15が設置されている。
【0024】
流量絞り弁10、11は、コントローラ13によって開度が自動調整される。
コントローラ13には、流量絞り弁10、11の開度と、メインエアーノズル7のメインエアー量に対応する粉体吸引量、サブエアーノズル8のサブエアー量の実測値との関係が予め指令値として入力されている。
【0025】
インジェクター2のメインエアーノズル7から供給される圧縮エアーは、メインエアーと呼ばれ、粉体塗料Aをベンチュリーの原理で吸引口12に負圧を与えて吸引管16を経由して粉体塗料Aを吸引して塗装ガン3に搬送を行なう作用を有する。一般に、このメインエアーのエアーの圧、量を多くすると、吸引口12からのベンチュリー効果が増大し、吐出口14からの吐出量が増え、塗装ガン3からの単位時間当たりの粉体量が多くなる。
【0026】
次に、サブエアーノズル8から供給されるサブエアーは、主として、塗料タンク1の設置場所や、ガン配置によって搬送ホース6の長さ及びその抵抗が異なるため、粉体塗料が搬送ホース6内を均一に安定した速度で搬送する役目を担っている。
【0027】
塗装時は、メインエアーノズル7とサブエアーノズル8からメインエアーとサブエアーの2つのエアーがインジェクター2に供給され、塗料タンク1内の粉体塗料Aが、吸引管16、吸引口12、吐出口14、搬送ホース6を経て塗装ガン3から粉体塗料Aが吐出される。
【0028】
この発明におけるメインエアーとサブエアーの調整は、次のように行われる。
メインエアー量(l/min)は、塗装ガン3から吐出する単位時間当たりの粉体塗料の吐出量(g/min)が目的とする吐出量になるように、設定される。
【0029】
サブエアー量(l/min)は、被塗装物の形状等により設定した総エアー量からメインエアー量を差し引いた量に設定される。
【0030】
そして、総エアー量を変更する場合、例えば、総エアー量を100(l/min)で運転していた塗装作業を、総エアー量を90(l/min)に落として行う場合には、メインエアー量は変更させずに、サブエアー量だけを、10(l/min)減少するように、サブエアーノズル8の流量絞り弁11の開度を、コントローラ13により調整する。
【0031】
したがって、この発明によれば、総エアー量を変更しても、メインエアー量は変更されないので、粉体塗料の吐出量(g/min)を一定に保つことができる。
【符号の説明】
【0032】
1 粉体塗料タンク
2 インジェクター
3 塗装ガン
4 多孔質板
5 コンプレサーエアー
6 搬送ホース
7 メインエアーノズル
8 サブエアーノズル
9 圧縮エアー源
10、11 流量絞り弁
12 吸引口
13 コントローラ
14 吐出口
15 減圧弁
16 吸引管
A 粉体塗料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮エアー源に流量絞り弁を介して接続されるメインエアーノズルを有し、このメインエアーノズルから供給されるメインエアーによって粉体タンクから粉体を吸引し、吐出口から搬送ホースを介して粉体のエアー搬送を行うインジェクターを備え、インジェクターにサブエアーを供給する、圧縮エアー源に流量絞り弁を介して接続されるサブエアーノズルを設け、メインエアーノズルの流量絞り弁と、サブエアーノズルの流量絞り弁を調節するコントローラを備えた粉体搬送装置において、上記コントローラにより、メインエアーノズルから供給されるメインエアー量を、吐出口から搬送ホースに供給する粉体の設定吐出量が得られる量とし、サブエアーノズルから供給されるサブエアー量を、搬送ホースに供給する搬送エアーの総エアー量の設定量からメインエアー量を差し引いた量に制御することを特徴とする粉体搬送装置。
【請求項2】
上記粉体が粉体塗料で、搬送ホースに粉体塗装ガンが接続される請求項1記載の粉体搬送装置。
【請求項3】
上記粉体塗装ガンが静電塗装ガンである請求項2記載の粉体搬送装置。

【図1】
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【公開番号】特開2012−16638(P2012−16638A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−153568(P2010−153568)
【出願日】平成22年7月6日(2010.7.6)
【出願人】(000117009)旭サナック株式会社 (194)
【Fターム(参考)】