説明

粉粒体輸送装置

【課題】輸送配管からホッパへ逆流する圧縮エアによって粉粒体の輸送効率が低下することを確実に防止できると共に、多くのコストやリスクを要することなく装置全体と粉粒体とを殺菌可能な粉粒体輸送装置を提供する。
【解決手段】粉粒体輸送装置50では、ブロア室16と同じ構成であるホッパ用ブロア室48をブロア室16とは別に設けられている。又、圧力制御手段と供給制御手段とを兼ね備えたコントローラ56は、ホッパ12内の気圧を測定するホッパ用圧力センサ52と、輸送配管14内の気圧を測定する輸送配管用センサ54との各測定値に基づいて、圧力調整バルブ28の開閉を制御する。二酸化塩素発生装置22は、ブロア室16、ホッパ用ブロア室48、及びタンク20に殺菌剤である二酸化塩素を供給する。又、排気返送配管58は、集塵機32で集塵された圧縮エアをホッパ用ブロア室48へ返送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は粉粒体輸送装置に係り、特にホッパに貯留された粉粒体を加圧エアによってホッパから離れた位置にあるサイクロンへ輸送する粉粒体輸送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品や食料品等を取り扱うサニタリープラントにおいて、材料や製品等の粉粒体を貯留するホッパから輸送配管を介してサイクロンへ粉粒体を輸送する場合に、ホッパから輸送配管へ供給された粉粒体をブロアから輸送配管へ供給された加圧エアによってサイクロンへ空気輸送する粉粒体輸送装置が一般的に多く採用されている。
【0003】
従来の粉粒体輸送装置において、安定した粉粒体の輸送を行なうために様々な工夫が成されている。例えば、ホッパの下方と輸送配管との間に、ケーシング内に水平方向を軸に回転する複数枚のフィンを有する回転体を設置して構成されるロータリーフィーダーを設けて、略定量的にホッパ内に貯留された粉粒体を輸送配管内へ供給する方法が多く用いられている。又、特許文献1のように、輸送配管の長手方向に所定の間隔に配置された複数の圧力センサで輸送配管中の目詰まりを監視し、目詰まりが生じた箇所に対してブーストエアを供給することにより粉粒体の停滞を解消する装置が提案されている。
【0004】
ところで、この粉粒体輸送装置において、医薬品や食料品と関連する粉粒体を対象とするときに、衛生面における配慮が必要とされる。このため、構成される各装置や部材等を定期的に清掃する作業を行なったり、各装置及び部材や粉粒体に対して殺菌処理を行なう手段を設けたりする必要がある。
【0005】
特許文献2では、輸送経路中に紫外線照射手段を設けて、輸送中の粉粒体に紫外線照射することにより粉粒体の殺菌処理を行なう装置が提案されている。又、特許文献3では、装置内の清掃作業において、分解洗浄後の輸送配管に対して開口部にフィルタを設置すると共に、外側から加熱することにより、輸送配管を衛生的に乾燥する方法が開示されている。
【特許文献1】特開平6−278869号公報
【特許文献2】特開平9−117494号公報
【特許文献3】特開平11−290061号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した粉粒体輸送装置では、輸送配管内はブロアから供給される加圧エアによって加圧された状態にある一方でホッパ内は常圧の状態にあるため、ホッパ内よりも輸送配管中の方が高圧の状態にある。このホッパと輸送配管との間に圧力差が生じて、輸送配管の加圧エアがロータリーフィーダーのケーシングとフィンとの隙間からホッパ内へ逆流してしまう。この逆流した加圧エアにより、ホッパ内の粉粒体が押し上げられて、ホッパからロータリーフィーダーへの粉粒体の供給が妨げられるだけでなく、ホッパ内の粉粒体に空洞ができる所謂ブリッジ状態が起こる可能性があるため、輸送配管への粉粒体の供給を妨げてしまうという問題があった。特許文献1の装置では、輸送配管の目詰まりに対してブーストエアを吹き付けるだけであるため、上述した問題を解決することができない。
【0007】
一方、粉粒体輸送装置の衛生面において、特許文献2のように紫外線照射を行なう場合に、紫外線照射に複雑な装置構成を要するため設備コストが増大するという欠点があった。その上、紫外線照射を行なう箇所では粉粒体の輸送速度を落とさなければならないため、効率のよい粉粒体の輸送を行なうことができないという問題が生じる。
【0008】
又、特許文献3では、輸送配管を分解する作業を要するため、特に高所に設置されている場合などでは、その作業に多くの労力と時間を要してしまうという欠点があった。
【0009】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、輸送配管からホッパへ逆流する加圧エアによって粉粒体の輸送効率が低下するされることを確実に防止できると共に、多くのコストやリスクを要することなく装置全体と粉粒体とを殺菌可能な粉粒体輸送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明は前記目的を達成するために、ホッパからタンクへ粉粒体を輸送する際に、該ホッパ内に貯留された粉粒体をロータリーフィーダーによって輸送配管に供給し、該輸送配管に供給された粉粒体をブロアから供給された加圧エアによってサイクロンへ移動させ、該サイクロンにより加圧エアが分離された粉粒体を前記タンクへ供給する粉粒体輸送装置において、前記ホッパ内の圧力を前記輸送配管内の圧力と略同等以上に調整するホッパ内気圧調整手段が設けられていることを特徴とする。
【0011】
ここで述べる「粉粒体」とは、一種類又は複数種で構成される粉状の物質又は粒状の物質、又はこれら物質が混合した混合物で構成されるものを指す。
【0012】
一般的な粉粒体輸送装置は、ホッパ内の粉粒体がロータリーフィーダーによって輸送配管に供給され、この供給された粉粒体が輸送配管に付属するブロアから供給された加圧エアによって輸送配管内を通過してサイクロンまで移動して、サイクロンにおいて加圧エアが分離された粉粒体がタンクへ供給されることにより、ホッパからタンクへ粉粒体が輸送される構造を有している。このとき、本発明では、ホッパ内の気圧を輸送配管内の気圧と少なくとも同圧以上に調整するようにした。これにより、ブロアから供給された加圧エアによって加圧状態にある輸送配管とホッパとの圧力差を低減できるので、輸送配管から加圧エアがロータリーフィーダーを介してホッパへ逆流することを防止することができる。元々、ロータリーフィーダーは、ホッパ内の粉粒体が重力落下して供給されることによって略定量的に輸送配管へ供給することができるので、この加圧エアの逆流を防止することにより、ホッパからロータリーフィーダーを介して粉粒体の供給を阻害する要因を解消することができる。
【0013】
尚、本発明において、前記ホッパ内気圧調整手段として、前記ブロアからの加圧エアを分岐して供給する分岐経路を設けることが好ましい。これにより、ホッパ内の粉粒体を加圧した状態でロータリーフィーダーへ供給することができるので、効率のよい粉粒体の輸送を行なうことができる。又、前記ホッパ内気圧調整手段として、前記ブロアの加圧エアと同圧以上の加圧エアを前記ホッパの上方から供給する加圧エア供給手段を設けてもよい。これにより、加圧エアの供給源としてブロアの加圧エアを利用することができるので、圧力エアの供給に要する設備スペースやコストを低減できる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の前記ホッパ内の気圧を測定するホッパ用圧力センサと、前記輸送配管内の気圧を測定する輸送配管用圧力センサと、前記ホッパ用圧力センサの測定値が前記輸送配管用圧力センサの測定値よりも同等以上になるように、前記加圧エア供給手段からの加圧エアの圧力量を制御する圧力制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、上述した粉粒体輸送装置では通常ブロアによって一定の圧力で加圧エアの供給が安定して行なわれているが、様々な要因によって輸送配管内の気圧が変動する可能性がある。そこで、本発明では、ホッパ用圧力センサでホッパ内の気圧を測定すると共に、輸送配管用圧力センサで輸送配管内の気圧を測定し、第1及び輸送配管用圧力センサの各測定値に基づいて、圧力制御手段でホッパ内の気圧が輸送配管内の気圧と同等又は上回るように加圧エア供給手段を制御して供給する加圧エアの圧力量を調整するようにした。これにより、ホッパ内の気圧を輸送配管内の気圧と同圧以上に常に安定して保持することができるので、加圧エアの逆流による粉粒体の供給の阻害を防止することができる。
【0016】
又、請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の前記ホッパ用圧力センサの測定値と、前記輸送配管用圧力センサの測定値とが所定の値に達したときに、通常より高圧の加圧エアをパルス式に供給するように前記加圧エア供給手段の供給を制御する供給制御手段を備えたことを特徴とする。
【0017】
ホッパにおいて、何らかの原因で充填された粉粒体にブリッジ現象が起こると、ホッパと輸送配管との圧力バランスに変化が生じる。本発明では、供給制御手段によりこの圧力変化を各圧力センサで感知して、ホッパ内に供給される加圧エアを通常よりも高圧の状態でパルス式にホッパ上方から供給(噴射)し、その圧力によってブリッジ現象を起こした粉粒体を叩き落すようにした。これにより、ホッパ内での粉粒体のブリッジ現象を確実に防止することができるので、安定した粉粒体の輸送を行なうことができる。
【0018】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のうち少なくとも一つに記載の前記加圧エアに殺菌剤を添加する殺菌剤添加手段が設けられていることを特徴とする。
【0019】
本発明によれば、粉粒体輸送装置で使用される加圧エアに殺菌剤を混入させるための殺菌剤供給手段が設けられている。これにより、粉粒体と殺菌剤とを効率よく接触させることができると共に、粉粒体輸送装置を構成する輸送配管等の内部に殺菌剤を効率よく散布することができる。従って、特に複雑な装置構成を必要とせずに、装置内及び粉粒体に対する雑菌等の繁殖を効果的に防止することができる。
【0020】
尚、前記殺菌剤添加手段は、前記ブロア、前記ホッパ、又は前記タンクのうち少なくとも一箇所で前記殺菌剤の添加を行なうことが好ましい。これにより、装置全体や粉粒体に対して殺菌剤を効率よく均一に供給して接触させることができる。
【0021】
又、前記サイクロンから排気される加圧エアをコンプレッサで圧力調整した後に前記ブロア又は前記加圧エア供給手段へ返送する返送経路を備えるようにしてもよい。これにより、サイクロンから排気される加圧エアをコンプレッサによる簡易な圧力調整だけで再利用することができるので、使用される殺菌剤量を低減できると共に、加圧エアの圧力調整に要するコストを低減できる。又、排気される加圧エア内に残存する殺菌剤を処理する必要性をなくすことができる。
【0022】
更に、前記殺菌剤は、二酸化塩素を使用することが好ましい。二酸化塩素は、比較的安価な材料である例えば塩素酸、過酸化水素、及び硫酸を用いて簡易に生成可能であり、高い酸化力により殺菌力を有するものの分解し易いガス状の物質である。この二酸化塩素を殺菌剤として使用することにより、殺菌に要する材料コストを低減でき、しかも粉粒体や装置内に残存せずに効率よく殺菌可能であるため、特に医薬品や食料品等の衛生面を配慮する必要がある粉粒体を取り扱う殺菌剤として好適である。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように本発明に係る粉粒体輸送装置によれば、ホッパ内の気圧を輸送配管内の気圧よりも略同等以上にしているので、ホッパと輸送配管の圧力差により輸送配管に供給される加圧エアがホッパ内へ逆流して、輸送効率が低下することを確実に防止できる。又、二酸化塩素を加圧エアに混合させるだけで殺菌処理が行なわれているので、装置全体や粉粒体に対してコストや残存性の問題点を解消した効率のよい殺菌処理を行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下添付図面に従って本発明に係る粉粒体輸送装置の好ましい実施の形態について詳説する。
【0025】
図1は、本発明における第1の実施の形態である粉粒体輸送装置10の全体構成を示した模式図である。
【0026】
同図の如く、粉粒体輸送装置10は、主にホッパ12と、輸送配管14と、ブロアと加圧エア供給手段とを兼ね備えたブロア室16と、サイクロン18と、タンク20と、殺菌剤添加手段である二酸化塩素発生装置22と、から構成される。
【0027】
ホッパ12は、上部が円柱で下部が円錐状の形状を有する箱部材であり、上方から供給される粉粒体2が一時的に貯留される。ホッパ12の天面は、密閉した構造であることが好ましい。又、ホッパ12は、下方に輸送配管14が配置され、ロータリーフィーダー24を介して輸送配管14の上面の一部と接続している。
【0028】
ロータリーフィーダー24は、ホッパ12に貯留された粉粒体2をホッパ12の底部から略定量的に輸送配管14へ供給可能な構造を有するものであり、例えば、略球状を有するケーシング(不図示)に内設され、複数枚のフィンで構成される回転体(不図示)が水平方向を軸に回転することによって、各フィンの間に流入した量の粉粒体2を供給する構造のものが使用される。
【0029】
輸送配管14の一端にはブロア室16が配置され、もう一端にサイクロン18が配置されている。
【0030】
ブロア室16は、内部にブロア26が設置された室であり、付属する圧力調整バルブ28により接続する輸送配管14内に所定の圧力に調整された加圧エアが供給されて、この加圧エアによってロータリーフィーダー24から略定量的に供給された粉粒体をサイクロン18へ輸送される。
【0031】
又、圧力調整バルブ28とホッパ12との間に位置する輸送配管14には、ホッパ12の上部と接続する分岐配管30が分岐して設けられ、これによりブロア26からの加圧エアをホッパ12内に供給する分岐経路(ホッパ内圧力調整手段)が形成される。
【0032】
サイクロン18は、輸送配管14から供給された加圧エアと粉粒体2とを分離して、分離した粉粒体2が下方に設けられたタンク20へ供給される一方、分離した加圧エアは集塵機32で浮遊する微小な粉粒体2の粒子等を集塵した後に排気される。尚、図示したように、サイクロン18において、分離された加圧エアを集塵機32へ供給する量や、分離された粉粒体2をタンク20へ供給する量、又はタンク20から次工程へ粉粒体2を供給する量を調整するためのバルブ34,34…を用途に応じて設置してもよい。
【0033】
又、上述した粉粒体輸送装置10には、ブロア室16へ二酸化塩素を供給する二酸化塩素発生装置22が設けられており、例えば、塩素酸用タンク36、過酸化水素用タンク38、及び硫酸用タンク40から塩素酸、過酸化水素、及び硫酸を調整槽42へ供給して混合することにより、二酸化塩素を発生させてブロア室16及びタンク20の上方へ二酸化塩素供給配管44を介して供給する構成を有する。ブロア室16に供給される二酸化塩素量は、0.1ppm程度に設定され、二酸化塩素供給配管44に付属する二酸化塩素供給バルブ46の開閉によって調整可能であることが好ましい。尚、二酸化塩素発生装置40における二酸化塩素発生方法は、上述した方法に限定されるものではなく、亜塩素酸ナトリウムを原料とした酸分解法、二液法、及び三液法による方法や、次亜塩素酸ナトリウム等を原料とした方法を採用してもよい。
【0034】
次に、上記の如く構成された本発明における第1の実施の形態である粉粒体輸送装置10の作用について、図2を用いて説明する。図2は、本発明の作用を説明するために第1の実施の形態である粉粒体輸送装置10の一部を切断した拡大断面図を示しており、図2(A)は従来において多量の粉粒体2がホッパ12に充填された状態を示し、図2(B)は従来において少量の粉粒体2がホッパ12に充填された状態を示し、図2(C)は本発明における状態を示している。
【0035】
図2(A)に示すように、従来の粉粒体輸送装置では、ホッパ12内が定圧下の状態である一方で、輸送配管14内は供給された加圧エアによって加圧した状態である。ホッパ12と輸送配管14とを連結するロータリーフィーダー24は、図に示すように、ケーシング24aと回転体を構成する各フィン24b、24b…との間に隙間が形成されているため、ホッパ12と輸送配管14とで生じる圧力差によって加圧エアが図中の上方向に逆流する。図2(A)で示すように、ホッパ12内に多量の粉粒体2が充填されている場合には、逆流した加圧エアで生じた図中の上方向の力を粉粒体2自体の重量によって抑えることができる。しかしながら、図2(B)で示すように、ホッパ12内に充填されている粉粒体量が少ないと、粉粒体2自体の重量では逆流した加圧エアで生じた図中の上方向の力を抑えることが困難となる。そのため、粉粒体2の重量と加圧エアによる図中の上方向の力とが釣り合うと、図2(B)に示すように、粉粒体2に対して所謂ブロックという現象が生じて、ロータリーフィーダー24に粉粒体2を供給することができなくなるので、粉粒体2の輸送に支障が生じてしまう。又、ホッパ12内の湿度等の変化によって粉粒体2がブリッジを形成し易い状態にある場合では、ある程度の粉粒体2の充填量があったとしても、この逆流した加圧エアにより生じた図中の上方向の力でブリッジ現象が起こる可能性が高くなる。
【0036】
そこで、本発明では、図2(C)に示すように、ホッパ12の上方に分岐配管30を接続させて、ブロア26で発生させた加圧エアをホッパ12内へ供給するようにした。これにより、ホッパ12内の気圧を輸送配管14内の気圧と略同等に維持することができるので、特に複雑な構造を必要とせずに上述した加圧エアの流入を防止することができる。
【0037】
ところで、粉粒体輸送装置では、食料品や医薬品等に関連する粉粒体を輸送対象とするときに衛生面を考慮する必要がある。このため、粉粒体輸送装置を構成する輸送配管等の各装置や部材の内部に対して定期的に清掃する作業を行なうか、粉粒体輸送装置の内部や粉粒体自体に対して殺菌処理を行なう手段を設けるかする必要がある。
【0038】
しかしながら、清掃作業を行なうために輸送配管等の各装置及び部材を分解する必要があると、装置の清掃作業に多くの時間を要してしまい、装置の運転停止時間が増大するという問題があった。
【0039】
又、上述した装置全体の内部や粉粒体2に対する殺菌処理に関しても、従来法であるオゾンや殺菌剤等の薬剤処理による方法や、加熱処理による方法、紫外線照射による方法等が主に検討される。しかしながら、薬剤処理による方法では、薬剤自体の酸化力等によって装置や粉粒体に対して損傷を与えるばかりでなく、多くの薬剤が残留性を有するため衛生面で問題が生じる。又、加熱処理による方法では、熱によって粉粒体2を劣化させて品質低下を招く上に、装置全体を加熱することは困難である。一方、紫外線照射による方法は、残留性もなく短時間で殺菌処理が行なえるため一見有効な方法であると思われるが、装置全体を照射させるには設備コストが莫大となる上に、貯留及び輸送される粉粒体2に対して効果的な殺菌処理が行なえないという欠点があった。
【0040】
そこで、本発明の粉粒体輸送装置10では、装置全体を低コストで効率よく殺菌するために加圧エアに殺菌剤を添加して薬剤処理する方法を採用し、その殺菌剤として二酸化塩素を用いるようにした。
【0041】
この二酸化塩素は、塩素酸、過酸化水素、及び硫酸など比較的安価な材料を用いて簡易に生成可能であり、高い酸化力により殺菌力を有するものの、分解し易いガス状の物質である。従って、二酸化塩素を殺菌剤として用いることにより、殺菌に要する材料コストを低減でき、しかも粉粒体2や装置内に残存せずに効率よく殺菌することができる。このことから、本発明の粉粒体輸送装置10は、特に医薬品や食料品等の衛生面を配慮する必要がある場合に特に最適な方法であると言える。
【0042】
図3は、本発明における第2の実施の形態である粉粒体輸送装置50の全体構成を示した模式図であり、ホッパ用及び輸送配管用圧力センサ52,54を用いて加圧エアの圧力や供給を調整する一例を示している。尚、図2において、図1で示した粉粒体輸送装置10と同一の装置及び部材に関しては、同一符号を付すと共にその説明は省略する。
【0043】
同図に示すように、粉粒体輸送装置50では、加圧エア供給手段としてブロア室16と同じ構成であるホッパ用ブロア室48をブロア室16とは別に設けられている。
【0044】
又、ホッパ12にはホッパ12内の気圧を測定するためのホッパ用圧力センサ52が設置されると共に、輸送配管14には輸送配管14内の気圧を測定するための輸送配管用センサ54が設置されている。
【0045】
更に、粉粒体輸送装置50には、ホッパ用ブロア室48からの加圧エアの圧力量を制御する圧力制御手段と、ホッパ用ブロア室48の供給を制御する供給制御手段とを兼ね備えたコントローラ56が設けられており、ホッパ用圧力センサ52と、輸送配管用センサ54と、ホッパ用ブロア室48に設置された圧力調整バルブ28の開閉を行なう駆動源と、に接続される。
【0046】
二酸化塩素発生装置22は、ブロア室16、ホッパ用ブロア室48、及びタンク20に各々二酸化塩素供給配管44,44…で連結されており、付属する二酸化塩素供給バルブ46,46…の開閉によって所定量の二酸化塩素がブロア室16、ホッパ用ブロア室48、及びタンク20に供給される。
【0047】
又、集塵機32とホッパ用ブロア室48との間には、排気返送配管58が連結されており、集塵機32で集塵された加圧エアがホッパ用ブロア室48へ返送されて、付属するコンプレッサ60により圧力調整された後、再び二酸化塩素が混合された加圧エアとしてホッパ12内へ供給される。これにより、本来であれば系外へ排気される加圧エアを再利用することができるので、ホッパ用ブロア室48における圧力調整を容易にすると同時に、排気される加圧エアに残留した二酸化塩素をそのまま有効利用できるので、使用される二酸化塩素量を削減することができる。
【0048】
上述した図3の粉粒体輸送装置50において、何らかの原因でホッパ12及び輸送配管14の内部が圧力変動する可能性がある。このとき、ホッパ用圧力センサ52及び輸送配管用圧力センサ54の各測定値が変動するため、ホッパ用圧力センサ52の測定値を輸送配管用圧力センサ54と略同等以上になるように、コントローラ56によってホッパ用ブロア室48の圧力調整バルブ28の開閉を制御して、ホッパ用ホッパ12に供給される加圧エアの圧力を調整するようにした。これにより、ホッパ12内の気圧を常に輸送配管14内の気圧と略同等以上に維持することが可能となるため、輸送配管14からの加圧エアの逆流を確実に防止することができる。
【0049】
又、この粉粒体輸送装置50において、湿度等の何らかの原因でホッパ12内の粉粒体2がブリッジ現象を起こす可能性がある。このとき、ホッパ用圧力センサ52の測定値と輸送配管用圧力センサ54の測定値との関係に変化が生じるので、ブリッジ現象が起きたときの各測定値を予め設定値としてコントローラ56で設定し、各測定値が設定値に達したときに、コントローラ56によりホッパ用ブロア室48の圧力調整バルブ28の開閉を制御して、加圧エアを通常より高圧でパルス式にホッパ12内へ噴射(供給)するようにした。この加圧エアのパルス式に噴射することにより、ホッパ12内のブリッジ現象を起こした粉粒体2をロータリーフィーダー24へ落下させることができるので、ブリッジ現象によって粉粒体2の輸送効率が低下することを確実に防止することができる。
【0050】
尚、上述した粉粒体輸送装置10,50において、使用される各装置及び部材の個数、形状、及び材質等は、特に限定されるものではない。
【0051】
本発明のホッパ内気圧調整手段として、図1の粉粒体輸送装置10では分岐配管30(分岐経路)を採用し、図3の粉粒体輸送装置50ではホッパ用ブロア室48(加圧エア供給手段)を採用したが、両者を組み合わせて使用してもよい。
【0052】
又、粉粒体輸送装置10,50では、二酸化塩素発生装置22からブロア室16、タンク、及びホッパ用ブロア室48に二酸化塩素を供給する構成を例に説明したが、特に限定されるものではない。装置全体内と粉粒体2とに対して加圧エアを介して二酸化塩素を効率よく供給できる構成であればよい。
【0053】
更に、本発明では、二酸化塩素供給バルブ46による二酸化塩素の供給量を調整可能な構成で説明したが、それに加えて、ホッパ12や輸送配管14、タンク20等に二酸化塩素濃度を測定する手段を設けて、その測定値から二酸化塩素の供給量を制御する手段を設ければ、常に適切な二酸化塩素濃度で殺菌処理を行なうことができる。
【0054】
図3の粉粒体輸送装置50において、加圧エアの排気を返送する返送経路として排気返送配管58によりホッパ用ブロア室48へ返送する例で説明したが、特に限定するものではなく、ブロア室へ返送する経路を形成させてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明における第1の実施の形態である粉粒体輸送装置の全体構成を示した模式図
【図2】本発明の作用を説明するために第1の実施の形態である粉粒体輸送装置の一部を切断した拡大断面図
【図3】本発明における第2の実施の形態である粉粒体輸送装置の全体構成を示した模式図
【符号の説明】
【0056】
2…粉粒体、10,50…粉粒体輸送装置、12…ホッパ、14…輸送配管、16…ブロア室、18…サイクロン、20…タンク、22…二酸化塩素発生装置、24…ロータリーフィーダー、26…ブロア、28…圧力調整バルブ、30…分岐配管、32…集塵機、34…バルブ、36…塩素酸用タンク、38…過酸化水素用タンク、40…硫酸用タンク、42…調整槽、44…二酸化塩素供給配管、46…二酸化塩素供給バルブ、48…ホッパ用ブロア室、52…ホッパ用圧力センサ、54…輸送配管用圧力センサ、56…コントローラ(圧力制御手段及び供給制御手段)、58…排気返送配管、60…コンプレッサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホッパからタンクへ粉粒体を輸送する際に、該ホッパ内に貯留された粉粒体をロータリーフィーダーによって輸送配管に供給し、該輸送配管に供給された粉粒体をブロアから供給された加圧エアによってサイクロンへ移動させ、該サイクロンにより加圧エアが分離された粉粒体を前記タンクへ供給する粉粒体輸送装置において、
前記ホッパ内の圧力を前記輸送配管内の圧力と略同等以上に調整するホッパ内気圧調整手段が設けられていることを特徴とする粉粒体輸送装置。
【請求項2】
前記ホッパ内気圧調整手段として、前記ブロアからの加圧エアを分岐して供給する分岐経路を設けたことを特徴とする請求項1に記載の粉粒体輸送装置。
【請求項3】
前記ホッパ内気圧調整手段として、前記ブロアの加圧エアと同圧以上の加圧エアを前記ホッパの上方から供給する加圧エア供給手段を設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の粉粒体輸送装置。
【請求項4】
前記ホッパ内の気圧を測定するホッパ用圧力センサと、
前記輸送配管内の気圧を測定する輸送配管用圧力センサと、
前記ホッパ用圧力センサの測定値が前記輸送配管用圧力センサの測定値よりも同等以上になるように、前記加圧エア供給手段からの加圧エアの圧力量を制御する圧力制御手段と、を備えたことを特徴とする請求項3に記載の粉粒体輸送装置。
【請求項5】
前記ホッパ用圧力センサの測定値と、前記輸送配管用圧力センサの測定値とが所定の値に達したときに、通常より高圧の加圧エアをパルス式に供給するように前記加圧エア供給手段の供給を制御する供給制御手段を備えたことを特徴とする請求項4に記載の粉粒体輸送装置。
【請求項6】
前記加圧エアに殺菌剤を添加する殺菌剤添加手段が設けられていることを特徴とする請求項1〜5のうち少なくとも一つに記載の粉粒体輸送装置。
【請求項7】
前記殺菌剤添加手段は、前記ブロア、前記ホッパ、又は前記タンクのうち少なくとも一箇所で前記殺菌剤の添加を行なうことを特徴とする請求項6に記載の粉粒体輸送装置。
【請求項8】
前記サイクロンから排気される加圧エアをコンプレッサで圧力調整した後に前記ブロア又は前記加圧エア供給手段へ返送する返送経路を備えたことを特徴とする請求項6又は7に記載の粉粒体輸送装置。
【請求項9】
前記殺菌剤は、二酸化塩素を使用することを特徴とする請求項6〜8のうち少なくとも一つに記載の粉粒体輸送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−96530(P2006−96530A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−285559(P2004−285559)
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(000005452)日立プラント建設株式会社 (1,767)
【Fターム(参考)】