説明

粘着型光学フィルムの製造方法、粘着型光学フィルムおよび画像表示装置

【課題】 透明基材フィルムの片面に、ディスコティック液晶化合物が配向されたディスコティック液晶層を有し、さらに当該ディスコティック液晶層には、粘着剤層が積層されている粘着型光学フィルムであって、バックライトの点灯状態における窓枠ムラを抑えることができる、粘着型光学フィルムの製造方法を提供すること。
【解決手段】 透明基材フィルムの片面に、重合性不飽和基を有するディスコティック液晶化合物の配向、硬化により形成されたディスコティック液晶層を有する光学フィルムの当該ディスコティック液晶層に、粘着剤層を設ける工程を有する粘着型光学フィルムの製造方法において、粘着剤層を設ける工程を施す前に、ディスコティック液晶層に、紫外光および/または可視光を照射することを特徴とする粘着型光学フィルムの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着型光学フィルムの製造方法に関する。また本発明は、当該製造方法により得えられた粘着型光学フィルム、さらには当該粘着型光学フィルムを用いた液晶表示装置、有機EL表示装置、CRT、PDP等の画像表示装置に関する。
【0002】
本発明の粘着型光学フィルムは、ディスコティック液晶化合物が配向されたディスコティック液晶層を有しており、表示コントラスト及び表示色の視角特性を改善するための光学補償フィルムとして有用であり、特に、偏光子を積層したものは、光学補償機能付き楕円偏光板として有用である。
【背景技術】
【0003】
時計、携帯電話、PDA、ノートパソコン、パソコン用モニター、DVDプレイヤー、TVなどでは液晶表示装置が急速に市場展開している。液晶表示装置は、液晶のスイッチングによる偏光状態変化を可視化させたものであり、その表示原理から偏光子が用いられている。特に、TV等の用途にはますます高輝度かつ高コントラストな表示が求められ、偏光子にも、より明るく(高透過率)、より高コントラスト(高偏光度)のものが開発され導入されている。
【0004】
現在、一般的な液晶表示装置の主流方式は、TN液晶を用いたTFT−LCDである。この方式では、応答速度が速く、高いコントラストを得ることができるなどの利点がある。しかし、TN液晶を用いたパネルの表示をその法線方向より傾いた角度から見た場合、コントラストが著しく低下し、また階調表示が逆転する階調反転などが起こるため、TN液晶は非常に視野角が狭いという特性を持っている。一方、大型のPCモニターやテレビ等の用途においては、高コントラスト、広視野角、視野角による表示色変化が少ないことなどが要求される。従って、TNモードのTFT−LCDをそのような用途に用いる場合には、視野角を補償するための位相差フィルムが必要不可欠である。
【0005】
この位相差フィルムとしては、延伸複屈折ポリマーフィルムが従来から使用されていた。最近、延伸複屈折フィルムからなる光学補償フィルムに代えて、透明支持体上に液晶性分子から形成された光学異方性層を有する光学補償フィルムを使用することが提案されている。液晶性分子には多様な配向形態があるため、液晶性分子を用いることで、従来の延伸複屈折ポリマーフィルムでは得ることができない光学的性質を実現することが可能になった。
【0006】
上記のような視野角補償用の位相差フィルムとして、例えば、負の屈折率異方性を持つディスコティック液晶を用いた富士写真フイルム社製のワイドビューフィルムが提案されている(特許文献1、特許文献2参照)。この位相差フィルムでは、透明基材フィルムの片面に、光軸が傾斜配向されたディスコティック液晶層を有する。この位相差フィルムでは、主として黒表示の電圧印加状態における視野角特性を改良することが目的とされている。即ち、電圧印加状態においては、液晶セル中の液晶分子はガラス基板から傾斜した光軸を有する正の屈折率異方性を示す。この屈折率異方性による位相差を補償するために、光軸がフィルム法線方向から傾斜し且つ負の屈折率異方性を有する液晶性分子を利用した位相差フィルムとなっている。
【0007】
前記視野角補償用の位相差フィルムにおいて、透明基材フィルムには、偏光子を積層して楕円偏光板として用いられるが、一方、ディスコティック液晶層には粘着剤層が積層される。当該粘着剤層が積層された位相差フィルムまたは楕円偏光板等の粘着型光学フィルムは、当該粘着剤層を介して、液晶セル等に貼り合わされて用いられる。しかし、先述した視野角補償用の位相差フィルムまたは楕円偏光板を、粘着剤層を介して、液晶セル等に貼り合わせた液晶表示装置等を、バックライト(点灯状態)とともに組み合わせると、液晶表示装置の枠近傍においてムラ(以下、これを窓枠ムラという。)が発生し、視認性を低下させる問題があった。特に、温度が高くなったり、液晶表示装置のサイズが大きくなったりする場合に、窓枠ムラは顕著になった。
【0008】
【特許文献1】特開平8−95032号公報
【特許文献2】特許第2767382号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、透明基材フィルムの片面に、ディスコティック液晶化合物が配向されたディスコティック液晶層を有し、さらに当該ディスコティック液晶層には、粘着剤層が積層されている粘着型光学フィルムであって、バックライトの点灯状態における窓枠ムラを抑えることができる、粘着型光学フィルムの製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
また本発明は、前記製造方法により得られた粘着型光学フィルムを提供すること、さらには当該粘着型光学フィルムを用いた画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意研究したところ、下記粘着型光学フィルムの製造方法により上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち本発明は、透明基材フィルムの片面に、重合性不飽和基を有するディスコティック液晶化合物の配向、硬化により形成されたディスコティック液晶層を有する光学フィルムの当該ディスコティック液晶層に、粘着剤層を設ける工程を有する粘着型光学フィルムの製造方法において、
粘着剤層を設ける工程を施す前に、ディスコティック液晶層に、紫外光および/または可視光を照射することを特徴とする粘着型光学フィルムの製造方法、に関する。
【0013】
前記粘着型光学フィルムの製造方法において、紫外光および/または可視光を照射後、粘着剤層を設ける工程を施す前に、下塗り層を設ける工程を有することができる。
【0014】
前記粘着型光学フィルムの製造方法において、照射光が、紫外光を含み、波長350nmにおける積算光量が、10〜10000mJ/cmであることが好ましい。
【0015】
前記粘着型光学フィルムの製造方法において、ディスコティック液晶層が形成される、透明基材フィルムの片面は、ラビング処理されているか、または、配向膜が形成されていることが好ましい。
【0016】
前記粘着型光学フィルムの製造方法において、光学フィルムとしては、ディスコティック液晶層が形成されない側の、透明基材フィルムの片面に偏光子が積層されているものを用いることができる。
【0017】
前記粘着型光学フィルムの製造方法において、粘着剤層を設ける工程を施した後に、ディスコティック液晶層が形成されない側の、透明基材フィルムの片面に偏光子を積層する工程を有することができる。
【0018】
また本発明は、前記製造方法により得られた、粘着型光学フィルム、に関する。
【0019】
また本発明は、前記粘着型光学フィルムを少なくとも1枚用いた画像表示装置、に関する。本発明の粘着型光学フィルムは、液晶表示装置等の画像表示装置の各種の使用態様に応じて、1枚または複数のものを組み合わせて用いられる。
【発明の効果】
【0020】
本発明者らは、光学補償層として機能するディスコティック液晶層は、重合性不飽和基を有するディスコティック液晶化合物の配向、硬化により形成されているが、当該ディスコティック液晶層においても、重合性不飽和基が残存していると考え、当該残存重合性不飽和基の影響により、バックライトの点灯状態が長時間になると、窓枠部分において、中心部分よりも正面位相差値が大きくなって、これが窓枠ムラの原因になっているのではないかと考えた。
【0021】
そこで、本発明の粘着型光学フィルムの製造方法では、透明基材フィルムの片面に設けたディスコティック液晶層に、粘着剤層を設ける前に、ディスコティック液晶層に紫外光および/または可視光を照射することで、ディスコティック液晶層に残存する重合性不飽和基を低減させた。これにより、ディスコティック液晶層中に残存する重合性不飽和基による影響を抑えることで、窓枠部分において、正面位相差値が大きくなることによる、窓枠ムラを抑えることができる。また、ディスコティック液晶層に紫外光および/または可視光を照射することにより、ディスコティック液晶層の表面の硬度が高くなり、かかる表面硬度の向上により、窓枠ムラを抑える効果もあるものと考えられる。
【0022】
窓枠ムラは、液晶表示装置が大きい場合に発生しやすいため、本発明の粘着型光学フィルムの製造方法は、サイズの大きな粘着型光学フィルムを製造する場合に特に有効である。また、窓枠ムラは、環境温度が高い場合に発生しやすいため、本発明の粘着型光学フィルムの製造方法は、高温環境下で用いられる粘着型光学フィルムを製造する場合に特に有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下本発明を図面を参照しながら説明する。図1に示すように、本発明の光学フィルムは、透明基材フィルム1の片面に、ディスコティック液晶層3を有する。ディスコティック液晶層3は、重合性不飽和基を有するディスコティック液晶化合物の配向、硬化により形成されたものである。図1では、透明基材フィルム1とディスコティック液晶層3との間に配向膜2を設ける場合を例示しているが、配向膜2の代わりに、透明基材フィルム1の片面を、ラビング処理したものを用いることができる。
【0024】
図1(1)では、ディスコティック液晶層3の表面に、紫外光および/または可視光を照射している。これにより、ディスコティック液晶層3の残存の重合性不飽和基を低減させるとともに、硬度を高める。なお、照射光は、図1(1)では、ディスコティック液晶層3の側から、照射されているが、照射は透明基材フィルム側から行うこともできる。
【0025】
次いで、図1(2)に示すように下塗り層4を設けた後に、図1(3)に示すように粘着剤層5を設けて、本発明の粘着型光学フィルムを作成する。なお、図1(2)に示す下塗り層4を設ける工程は任意であり、下塗り層4を設けることなく、図1(3´)に示すように、ディスコティック液晶層3上に、粘着剤層5を設けることができる。
【0026】
図2は、光学フィルムとして、透明基材フィルム1の片面に、配向膜2を介して、ディスコティック液晶層3を有し、ディスコティック液晶層3が形成されない側の、透明基材フィルム1の片面には偏光子6、次いで、透明保護フィルム7が積層されているものを用いた場合である。図2では、透明基材フィルム1は、偏光子6の透明保護フィルムも兼ねている。図2に示すように、偏光板を有する光学フィルムについても、図1と同様の工程を施すことができ、ディスコティック液晶層3の残存の重合性不飽和基を低減させるとともに、硬度を高めることができる。
【0027】
図3は、図1(3)で得られた、粘着型光学フィルムにおいて、ディスコティック液晶層3が形成されない側の、透明基材フィルム1の片面に、偏光子6、次いで、透明保護フィルム7を積層して偏光板を有する光学フィルムを製造する場合を示している。図3では、透明基材フィルム1は、偏光子6の透明保護フィルムも兼ねている。
【0028】
本発明では、透明基材フィルム1の片面に、ディスコティック液晶層3を有する光学フィルムを用いる。
【0029】
透明基材フィルムとしては、各種の透明材料を用いることができる。例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー、ジアセチルセルロースやトリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー、ポリスチレンやアクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)等のスチレン系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマーなどがあげられる。また、ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロ系ないしはノルボルネン構造を有するポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体の如きポリオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、または前記ポリマーのブレンド物なども前記透明基材フィルムを形成するポリマーの例としてあげられる。
【0030】
また、特開2001−343529号公報(WO01/37007)に記載のポリマーフィルム、たとえば、(A)側鎖に置換および/または非置換イミド基を有する熱可塑性樹脂と、(B)側鎖に置換および/または非置換フェニルならびにニトリル基を有する熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物があげられる。具体例としてはイソブチレンとN−メチルマレイミドからなる交互共重合体とアクリロニトリル・スチレン共重合体とを含有する樹脂組成物のフィルムがあげられる。フィルムは樹脂組成物の混合押出品などからなるフィルムを用いることができる。
【0031】
透明基材フィルムの厚さは、適宜に決定しうるが、一般には強度や取扱性等の作業性、薄膜性などの点より1〜500μm程度である。特に、5〜200μmが好ましい。
【0032】
また、透明基材フィルムは、できるだけ色付きがないことが好ましい。従って、Rth=(nx−nz)・d(ただし、nxはフィルム平面内の遅相軸方向の屈折率、nzはフィルム厚方向の屈折率、dはフィルム厚みである)で表されるフィルム厚み方向の位相差が−90nm〜+75nmである保護フィルムが好ましく用いられる。かかる厚み方向の位相差値(Rth)が−90nm〜+75nmのものを使用することにより、透明基材フィルムに起因する偏光板の着色(光学的な着色)はほぼ解消することができる。厚み方向位相差(Rth)は、さらに好ましくは−80nm〜+60nm、特に−70nm〜+45nmが好ましい。
【0033】
透明基材フィルムとしては、偏光特性や耐久性などの点より、トリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマーやノルボルネン系ポリマーが好ましい。特にトリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマーが好ましい。
【0034】
ディスコティック液晶層は、重合性不飽和基を有するディスコティック液晶化合物の配向、硬化により形成されたものである。ディスコティック液晶層は、光学補償層として有用であり、視野角、コントラスト、明るさ等を向上させうる。ディスコティック液晶化合物は、重合性不飽和基を有しており、当該化合物が配向され、かつ硬化されることによりディスコティック液晶層が形成されている。ディスコティック液晶層は、ディスコティック液晶化合物が傾斜配向しているものが好適である。ディスコティック液晶層の厚さは、通常、0.5〜10μm程度である。
【0035】
ディスコティック液晶化合物とは、負の屈折率異方性(一軸性)を有するものであり、例えば、C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.71巻、111頁(1981年)に記載されている、ベンゼン誘導体や、B.Kohneらの研究報告、Angew.Chem.96巻、70頁(1984年)に記載されたシクロヘキサン誘導体及びJ.M.Lehnらの研究報告、J.Chem.Commun.,1794頁(1985年)、J.Zhangらの研究報告、J.Am.Chem.Soc.116巻、2655頁(1994年)に記載されているアザクラウン系やフェニルアセチレン系マクロサイクルなどが挙げられ、一般的にこれらを分子中心の母核とし、直鎖のアルキル基やアルコキシ基、置換ベンゾイルオキシ基等がその直鎖として放射状に置換された構造であり、液晶性を示し、一般的にディスコティック液晶と呼ばれるものが含まれる。ただし、分子自身が負の一軸性を有し、一定の配向を付与できるものであれば上記記載に限定されるものではない。また、本発明において、ディスコティック液晶化合物は、熱、光等で硬化反応する重合性不飽和基(例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基等があげられる)を有するものである。なお、ディスコティック液晶層は、最終的にできた物が前記化合物である必要はなく、重合性不飽和基の反応により重合または架橋し、高分子量化し液晶性を失ったものも含まれる。
【0036】
またディスコティック液晶化合物は、種々のディスコティック液晶化合物、および他の低分子化合物やポリマーとの反応により、もはや液晶性を示さなくなったディスコティック液晶の反応生成物等のように、分子自身が光学的に負の一軸性を有する化合物全般を意味する。
【0037】
ディスコティック液晶の配向処理には、透明基板フィルム表面をラビング処理したり、または配向膜を用いる。配向膜としては、無機物斜方蒸着膜、或いは特定の有機高分子膜をラビングした配向膜があげられる。アゾベンゼン誘導体からなるLB膜のように光により異性化を起こし、分子が方向性を持って均一に配列する薄膜などもある。有機配向膜としては、ポリイミド膜や、アルキル鎖変性系ポバール、ポリビニルブチラール、ポリメチルメタクリレート、など疎水性表面を形成する有機高分子膜があげられる。その他、無機物斜方蒸着膜として、SiO斜方蒸着膜があげられる。
【0038】
ディスコティック液晶化合物は、傾斜配向させるが、その手段としては、例えば、透明基材フィルムに、配向膜を形成し、次いで、ディスコティック液晶化合物(重合性液晶化合物)を塗布し、傾斜配向状態にし、その後、紫外光等の光照射や熱により固定化する等の方法を用いることができる。また、他の配向基材上にディスコティック液晶を傾斜配向させた後、透明支持体上に光学的に透明な接着剤又は感圧性接着剤を利用して転写することにより形成することも可能である。
【0039】
かかるディスコティック液晶層としては、特許文献1、2に記載のものが好適に用いられる。このようなディスコティック液晶の傾斜配向層をセルロース系高分子フィルム上に形成させたものとして富士写真フィルム社製のワイドビューフィルムがある。
【0040】
本発明では、前記ディスコティック液晶層に、紫外光および/または可視光を照射する。紫外光および/または可視光の照射により、残存の重合性不飽和基が低減される。またディスコティック液晶層の表面硬度が高くなる。前記照射により、ディスコティック液晶層の硬度が、0.02〜0.12GPa程度高くなるように照射を行うのが好ましい。なお、ディスコティック液晶層の硬度は、ディスコティック液晶層の形成に用いる材料により異なるが、前記照射前のディスコティック液晶層の硬度は、通常、0.11〜0.16GPa程度であるのが好ましく、前記照射後のディスコティック液晶層の硬度は、通常、0.17〜0.24GPa程度であるのが好ましい。
【0041】
残存の重合性不飽和基については、IRスぺクトルの1510cm−1(芳香族由来)と811cm−1(炭素−炭素二重結合由来)の吸光度比(811cm−1/1510cm−1)が低減することで確認できる。前記照射により、ディスコティック液晶層の吸光度比が、0.04〜0.18程度低減するように照射を行うのが好ましい。なお、前記照射前のディスコティック液晶層の吸光度比は、通常、0.23〜0.30程度であるのが好ましく、前記照射後のディスコティック液晶層の吸光度比は、通常、0.12〜0.19程度であるのが好ましい。
【0042】
前記照射光は、紫外光および/または可視光が用いられる。照射光の積算光量は、通常、10〜10000mJ/cmであるのが好ましい。かかる範囲の積算光量により、前記ディスコティック液晶層の表面処理を有効に行うことができる。
【0043】
照射光としては、紫外光を含み、波長350nmにおける積算光量が、前記範囲であることが好ましい。紫外光を含む場合は、照射時間を短くして効率化を図れる点から好ましい。
【0044】
前記紫外光および/または可視光を照射されたディスコティック液晶層には、粘着剤層が設けられるが、粘着剤層を設ける工程を施す前に、下塗り層を設けることができる。
【0045】
下塗り層の形成材料としては、例えば、ウレタン(ポリイソシアネート)系、ポリエステル系、アクリル系、ポリアミド系、メラミン系、オレフィン系、ポリスチレン系、エポキシ系、フェノール系、イソシアヌレート系、ポリ酢酸ビニル系、シランカップリング剤等の材料が挙げられる。下塗り層は、粘着剤層との密着性を向上させることができる。前記形成材料には、架橋硬化させる為の架橋剤や、帯電防止剤等の機能性添加剤を添加して、他の機能を付与することもできる。
【0046】
下塗り層の積層方法としては、下塗り層の形成材料の種類に応じて、各種の積層方法を適宜に選択し得る。例えば、押出しラミネートや製膜によるドライラミネート等の方法、コーティング後に乾燥・固化させる方法等が採用できる。下塗り層の厚みは、通常、1μm以下、好ましくは10〜500nmである。
【0047】
粘着剤層を形成する粘着剤は特に制限されず、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤等の各種の粘着剤を使用できるが、無色透明で、液晶セル等との接着性の良好なアクリル系粘着剤が一般的には用いられる。
【0048】
アクリル系粘着剤は、アルキル(メタ)アクリレートのモノマーユニットを主骨格とするアクリル系ポリマーをベースポリマーとする。なお、(メタ)アクリレートはアクリレートおよび/またはメタクリレートをいい、本発明の(メタ)とは同様の意味である。アクリル系ポリマーの主骨格を構成する、アルキル(メタ)アクリレートのアルキル基の平均炭素数は1〜12程度のものであり、アルキル(メタ)アクリレートの具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等を例示でき、これらは単独または組み合わせて使用できる。これらの中でもアルキル基の炭素数1〜9のアルキル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0049】
前記アクリル系ポリマー中には、接着性や耐熱性の改善を目的に、1種類以上の各種モノマーが共重合により導入される。そのような共重合モノマーの具体例としては、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリルや(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)−メチルアクリレートなどのヒドロキシル基含有モノマー;(メタ)アクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、クロトン酸などのカルボキシル基含有モノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸などの酸無水物基含有モノマー;アクリル酸のカプロラクトン付加物;スチレンスルホン酸やアリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸などのスルホン酸基含有モノマー;2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェートなどの燐酸基含有モノマーなどがあげられる。
【0050】
また、窒素含有ビニルモノマーがあげられる。例えば、マレイミド、N−シクロへキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド;N−アクリロイルモルホリン;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−ヘキシル(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミドやN−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メチロールプロパン(メタ)アクリルアミドなどの(N−置換)アミド系モノマー;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸アミノプロピル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t−ブチルアミノエチル、3−(3−ピリニジル)プロピル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸アルキルアミノアルキル系モノマー;(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチルなどの(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル系モノマー;N−(メタ)アクリロイルオキシメチレンスクシンイミドやN−(メタ)アクリロイル−6−オキシヘキサメチレンスクシンイミド、N−(メタ)アクリロイル−8−オキシオクタメチレンスクシンイミド、N−アクリロイルモルホリンなどのスクシンイミド系モノマーなども改質目的のモノマー例としてあげられる。
【0051】
さらに、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、N−ビニルピロリドン、メチルビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルピペリドン、ビニルピリミジン、ビニルピペラジン、ビニルピラジン、ビニルピロール、ビニルイミダゾール、ビニルオキサゾール、ビニルモルホリン、N−ビニルカルボン酸アミド類、スチレン、α−メチルスチレン、N−ビニルカプロラクタムなどのビニル系モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアノアクリレート系モノマー;(メタ)アクリル酸グリシジルなどのエポキシ基含有アクリル系モノマー;(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシエチレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシポリプロピレングリコールなどのグリコール系アクリルエステルモノマー;(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、フッ素(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレートや2−メトキシエチルアクリレートなどのアクリル酸エステル系モノマーなども使用することができる。
【0052】
これらの中でも、液晶セルへの接着性、接着耐久性の点から、アクリル酸などのカルボキシル基含有モノマーが好ましく用いられる。
【0053】
アクリル系ポリマー中の前記共重合モノマーの割合は、特に制限されないが、重量比率において、0.1〜10%程度であるのが好ましい。
【0054】
アクリル系ポリマーの平均分子量は特に制限されないが、重量平均分子量は、30万〜250万程度であるのが好ましい。前記アクリル系ポリマーの製造は、各種公知の手法により製造でき、たとえば、バルク重合法、溶液重合法、懸濁重合法等のラジカル重合法を適宜選択できる。ラジカル重合開始剤としては、アゾ系、過酸化物系の各種公知のものを使用できる。反応温度は通常50〜80℃程度、反応時間は1〜8時間とされる。また、前記製造法の中でも溶液重合法が好ましく、アクリル系ポリマーの溶媒としては一般に酢酸エチル、トルエン等が用いられる。溶液濃度は通常20〜80重量%程度とされる。
【0055】
ゴム系粘着剤のベースポリマーとしては、たとえば、天然ゴム、イソプレン系ゴム、スチレン−ブタジエン系ゴム、再生ゴム、ポリイソブチレン系ゴム、さらにはスチレン−イソプレン−スチレン系ゴム、スチレン−ブタジエン−スチレン系ゴム等があげられる。シリコーン系粘着剤のベースポリマーとしては、たとえば、ジメチルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等があげられ、これらベースポリマーもカルボキシル基等の官能基が導入されたものを使用することができる。
【0056】
また前記粘着剤は、架橋剤を含有する粘着剤組成物とするのが好ましい。粘着剤に配合できる多官能化合物としては、有機系架橋剤や多官能性金属キレートがあげられる。有機系架橋剤としては、エポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、イミン系架橋剤などがあげられる。有機系架橋剤としてはイソシアネート系架橋剤が好ましい。多官能性金属キレートは、多価金属が有機化合物と共有結合または配位結合しているものである。多価金属原子としては、Al、Cr、Zr、Co、Cu、Fe、Ni、V、Zn、In、Ca、Mg、Mn、Y、Ce、Sr、Ba、Mo、La、Sn、Ti等があげられる。共有結合または配位結合する有機化合物中の原子としては酸素原子等があげられ、有機化合物としてはアルキルエステル、アルコール化合物、カルボン酸化合物、エーテル化合物、ケトン化合物等があげられる。
【0057】
アクリル系ポリマー等のベースポリマーと架橋剤の配合割合は特に限定されないが、通常、ベースポリマー(固形分)100重量部に対して、架橋剤(固形分)0.01〜6重量部程度が好ましく、さらには0.1〜3重量部程度が好ましい。
【0058】
さらには、前記粘着剤には、必要に応じて、粘着付与剤、可塑剤、ガラス繊維、ガラスビーズ、金属粉、その他の無機粉末等からなる充填剤、顔料、着色剤、充填剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、シランカップリング剤等を、また本発明の目的を逸脱しない範囲で各種の添加剤を適宜に使用することもできる。また微粒子を含有して光拡散性を示す粘着剤層などとしても良い。
【0059】
粘着剤層の形成は、前記ディスコティック液晶層または下塗り層上に積層することにより行う。形成方法としては、特に制限されず、粘着剤(溶液)を塗布し乾燥する方法、粘着剤層を設けた離型シートにより転写する方法等があげられる。塗布法は、リバースコーティング、グラビアコーティング等のロールコーティング法、スピンコーティング法、スクリーンコーティング法、ファウンテンコーティング法、ディッピング法、スプレー法などを採用できる。粘着剤層(乾燥膜厚)は厚さ、特に限定されないが、10〜40μm程度とするのが好ましい。
【0060】
本発明の粘着型光学フィルムにおいては、粘着剤層が薄い場合に、窓枠ムラが生じやすい。従って、本発明の粘着型光学フィルムは、粘着剤層の厚さが、5〜40μm、さらには5〜25μmのように薄いものである場合において特に好適である。なお、本発明の粘着型光学フィルムにおいては、粘着剤層が硬い場合に、窓枠ムラが生じやすい。
【0061】
離型シートの構成材料としては、紙、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂フィルム、ゴムシート、紙、布、不織布、ネット、発泡シートや金属箔、それらのラミネート体等の適宜な薄葉体等があげられる。離型シート4の表面には、粘着剤層からの剥離性を高めるため、必要に応じてシリコーン処理、長鎖アルキル処理、フッ素処理などの剥離処理が施されていても良い。
【0062】
離型シートの構成材料としては、紙、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂フィルム、ゴムシート、紙、布、不織布、ネット、発泡シートや金属箔、それらのラミネート体等の適宜な薄葉体等があげられる。離型シートの表面には、粘着剤層からの剥離性を高めるため、必要に応じてシリコーン処理、長鎖アルキル処理、フッ素処理などの低接着性の剥離処理が施されていても良い。
【0063】
本発明の光学フィルムは、図2に示すように、ディスコティック液晶層3が形成されない側の、透明基材フィルム1の片面には偏光子6、次いで、透明保護フィルム7が積層されているものを用いることができる。また、図3に示すように、粘着型光学フィルムをディスコティック液晶層3が形成されない側の、透明基材フィルム1の片面に、偏光子6、次いで、透明保護フィルム7を積層して偏光板を有する光学フィルムを製造することができる。
【0064】
偏光子6は、接着剤を用いて、透明基材フィルム1に貼り合せられる。なお、図2、図3では、透明基材フィルム1は、偏光子6の透明保護フィルムを兼ねているが、透明基材フィルム1には、偏光子の片面または両面には透明保護フィルムを有する偏光板を積層することもできる。
【0065】
偏光子は、特に限定されず、各種のものを使用できる。偏光子としては、たとえば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等があげられる。これらの中でも、ポリビニルアルコール系フィルムとヨウ素などの二色性物質からなる偏光子が好適である。これらの偏光子の厚さは特に制限されないが、一般的に5〜80μm程度である。
【0066】
ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素で染色し一軸延伸した偏光子は、たとえば、ポリビニルアルコールをヨウ素の水溶液に浸漬することによって染色し、元長の3〜7倍に延伸することで作成することができる。必要に応じてホウ酸や硫酸亜鉛、塩化亜鉛等を含んでいても良いヨウ化カリウムなどの水溶液に浸漬することもできる。さらに必要に応じて染色前にポリビニルアルコール系フィルムを水に浸漬して水洗してもよい。ポリビニルアルコール系フィルムを水洗することでポリビニルアルコール系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるほかに、ポリビニルアルコール系フィルムを膨潤させることで染色のムラなどの不均一を防止する効果もある。延伸はヨウ素で染色した後に行っても良いし、染色しながら延伸しても良いし、また延伸してからヨウ素で染色しても良い。ホウ酸やヨウ化カリウムなどの水溶液や水浴中でも延伸することができる。
【0067】
前記偏光子の片面または両面に設けられる透明保護フィルムを形成する材料としては、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性、等方性などに優れるものが好ましい。透明保護フィルムは、透明基材フィルムと同様の材料を用いることができる。また厚みについても同様である。
【0068】
なお、透明基材フィルムと透明保護フィルムは、同じポリマー材料を用いても良く、異なるポリマー材料等を用いても良い。
【0069】
前記偏光子と、透明基材フィルムおよび透明保護フィルムとは、通常、水系接着剤等を介して密着している。水系接着剤としては、イソシアネート系接着剤、ポリビニルアルコール系接着剤、ゼラチン系接着剤、ビニル系ラテックス系、水系ポリウレタン、水系ポリエステル等を例示できる。なお、偏光子と、透明基材フィルムおよび透明保護フィルムとの貼り合せにあたり、透明基材フィルムおよび透明保護フィルムには活性化処理を施すことができる。活性化処理は各種方法を採用でき、たとえばケン化処理、コロナ処理、低圧UV処理、プラズマ処理等を採用できる。活性化処理は、透明基材フィルムが、特にトリアセチルセルロース、ノルボルネン系樹脂、ポリカーボネート、ポリオレフィン系樹脂等の場合に有効である。
【0070】
前記透明保護フィルムの偏光子を接着させない面には、ハードコート層や反射防止処理、スティッキング防止や、拡散ないしアンチグレアを目的とした処理を施したものであっても良い。
【0071】
ハードコート処理は偏光板表面の傷付き防止などを目的に施されるものであり、例えばアクリル系、シリコーン系などの適宜な紫外線硬化型樹脂による硬度や滑り特性等に優れる硬化皮膜を透明保護フィルムの表面に付加する方式などにて形成することができる。反射防止処理は偏光板表面での外光の反射防止を目的に施されるものであり、従来に準じた反射防止膜などの形成により達成することができる。また、スティッキング防止処理は他の部材の隣接層との密着防止を目的に施される。
【0072】
また、アンチグレア処理は偏光板の表面で外光が反射して偏光板透過光の視認を阻害することの防止等を目的に施されるものであり、例えばサンドブラスト方式やエンボス加工方式による粗面化方式や透明微粒子の配合方式などの適宜な方式にて透明保護フィルムの表面に微細凹凸構造を付与することにより形成することができる。前記表面微細凹凸構造の形成に含有させる微粒子としては、例えば平均粒径が0.5〜50μmのシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化スズ、酸化インジウム、酸化カドミウム、酸化アンチモン等からなる導電性の場合もある無機系微粒子、架橋又は未架橋のポリマー等からなる有機系微粒子(ビーズを含む)などの透明微粒子が用いられる。表面微細凹凸構造を形成する場合、微粒子の使用量は、表面微細凹凸構造を形成する透明樹脂100重量部に対して一般的に2〜50重量部程度であり、5〜25重量部が好ましい。アンチグレア層は、偏光板透過光を拡散して視覚などを拡大するための拡散層(視覚拡大機能など)を兼ねるものであっても良い。
【0073】
なお、前記反射防止層、スティッキング防止層、拡散層やアンチグレア層等は、透明保護フィルムそのものに設けることができるほか、別途光学層として透明保護フィルムとは別体のものとして設けることもできる。
【0074】
また、前記偏光板を積層した光学フィルムの他に、本発明の粘着型光学フィルムに使用される光学フィルムとしては、液晶表示装置等の画像表示装置の形成に用いられ光学層を積層することができる。例えば反射板や反透過板、位相差板(1/2や1/4等の波長板を含む)、輝度向上フィルムなどの液晶表示装置等の形成に用いられることのある光学層となるものがあげられる。これらは単独で光学フィルムとして用いることができる他、前記偏光板に、実用に際して積層して、1層または2層以上用いることができる。
【0075】
特に、偏光板に更に反射板または半透過反射板が積層されてなる反射型偏光板または半透過型偏光板、偏光板に更に位相差板が積層されてなる楕円偏光板または円偏光板、あるいは偏光板に更に輝度向上フィルムが積層されてなる偏光板が好ましい。
【0076】
反射型偏光板は、偏光板に反射層を設けたもので、視認側(表示側)からの入射光を反射させて表示するタイプの液晶表示装置などを形成するためのものであり、バックライト等の光源の内蔵を省略できて液晶表示装置の薄型化を図りやすいなどの利点を有する。反射型偏光板の形成は、必要に応じ透明保護層等を介して偏光板の片面に金属等からなる反射層を付設する方式などの適宜な方式にて行うことができる。
【0077】
反射型偏光板の具体例としては、必要に応じマット処理した透明保護フィルムの片面に、アルミニウム等の反射性金属からなる箔や蒸着膜を付設して反射層を形成したものなどがあげられる。また、前記透明保護フィルムに微粒子を含有させて表面微細凹凸構造とし、その上に微細凹凸構造の反射層を有するものなどもあげられる。前記した微細凹凸構造の反射層は、入射光を乱反射により拡散させて指向性やギラギラした見栄えを防止し、明暗のムラを抑制しうる利点などを有する。また微粒子含有の保護フィルムは、入射光及びその反射光がそれを透過する際に拡散されて明暗ムラをより抑制しうる利点なども有している。透明保護フィルムの表面微細凹凸構造を反映させた微細凹凸構造の反射層の形成は、例えば真空蒸着方式、イオンプレーティング方式、スパッタリング方式やメッキ方式などの適宜な方式で金属を透明保護層の表面に直接付設する方法などにより行うことができる。
【0078】
反射板は前記の偏光板の透明保護フィルムに直接付与する方式に代えて、その透明フィルムに準じた適宜なフィルムに反射層を設けてなる反射シートなどとして用いることもできる。なお反射層は、通常、金属からなるので、その反射面が透明保護フィルムや偏光板等で被覆された状態の使用形態が、酸化による反射率の低下防止、ひいては初期反射率の長期持続の点や、保護層の別途付設の回避の点などより好ましい。
【0079】
なお、半透過型偏光板は、上記において反射層で光を反射し、かつ透過するハーフミラー等の半透過型の反射層とすることにより得ることができる。半透過型偏光板は、通常液晶セルの裏側に設けられ、液晶表示装置などを比較的明るい雰囲気で使用する場合には、視認側(表示側)からの入射光を反射させて画像を表示し、比較的暗い雰囲気においては、半透過型偏光板のバックサイドに内蔵されているバックライト等の内蔵電源を使用して画像を表示するタイプの液晶表示装置などを形成できる。すなわち、半透過型偏光板は、明るい雰囲気下では、バックライト等の光源使用のエネルギーを節約でき、比較的暗い雰囲気下においても内蔵電源を用いて使用できるタイプの液晶表示装置などの形成に有用である。
【0080】
偏光板に更に位相差板が積層されてなる楕円偏光板または円偏光板について説明する。直線偏光を楕円偏光または円偏光に変えたり、楕円偏光または円偏光を直線偏光に変えたり、あるいは直線偏光の偏光方向を変える場合に、位相差板などが用いられる。特に、直線偏光を円偏光に変えたり、円偏光を直線偏光に変える位相差板としては、いわゆる1/4波長板(λ/4板とも言う)が用いられる。1/2波長板(λ/2板とも言う)は、通常、直線偏光の偏光方向を変える場合に用いられる。
【0081】
楕円偏光板はスーパーツイストネマチック(STN)型液晶表示装置の液晶層の複屈折により生じた着色(青又は黄)を補償(防止)して、前記着色のない白黒表示する場合などに有効に用いられる。更に、三次元の屈折率を制御したものは、液晶表示装置の画面を斜め方向から見た際に生じる着色も補償(防止)することができて好ましい。円偏光板は、例えば画像がカラー表示になる反射型液晶表示装置の画像の色調を整える場合などに有効に用いられ、また、反射防止の機能も有する。
【0082】
位相差板としては、高分子素材を一軸または二軸延伸処理してなる複屈折性フィルム、液晶ポリマーの配向フィルム、液晶ポリマーの配向層をフィルムにて支持したものなどがあげられる。位相差板の厚さも特に制限されないが、20〜150μm程度が一般的である。
【0083】
高分子素材としては、たとえば、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリメチルビニルエーテル、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルファイド、ポリフェニレンオキサイド、ポリアリルスルホン、ポリアミド、ポリイミド、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、セルロース系重合体、ノルボルネン系樹脂、またはこれらの二元系、三元系各種共重合体、グラフト共重合体、ブレンド物などがあげられる。これらの高分子素材は延伸等により配向物(延伸フィルム)となる。
【0084】
液晶ポリマーとしては、たとえば、液晶配向性を付与する共役性の直線状原子団(メソゲン)がポリマーの主鎖や側鎖に導入された主鎖型や側鎖型の各種のものなどをあげられる。主鎖型の液晶ポリマーの具体例としては、屈曲性を付与するスペーサー部でメソゲン基を結合した構造の、例えばネマチック配向性のポリエステル系液晶性ポリマー、ディスコティックポリマーやコレステリックポリマーなどがあげられる。側鎖型の液晶ポリマーの具体例としては、ポリシロキサン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート又はポリマロネートを主鎖骨格とし、側鎖として共役性の原子団からなるスペーサー部を介してネマチック配向付与性のパラ置換環状化合物単位からなるメソゲン部を有するものなどがあげられる。これらの液晶ポリマーは、たとえば、ガラス板上に形成したポリイミドやポリビニルアルコール等の薄膜の表面をラビング処理したもの、酸化ケイ素を斜方蒸着したものなどの配向処理面上に液晶性ポリマーの溶液を展開して熱処理することにより行われる。
【0085】
位相差板は、例えば各種波長板や液晶層の複屈折による着色や視覚等の補償を目的としたものなどの使用目的に応じた適宜な位相差を有するものであって良く、2種以上の位相差板を積層して位相差等の光学特性を制御したものなどであっても良い。
【0086】
また、上記の楕円偏光板や反射型楕円偏光板は、偏光板又は反射型偏光板と位相差板を適宜な組合せで積層したものである。かかる楕円偏光板等は、(反射型)偏光板と位相差板の組合せとなるようにそれらを液晶表示装置の製造過程で順次別個に積層することによっても形成しうるが、前記の如く予め楕円偏光板等の光学フィルムとしたものは、品質の安定性や積層作業性等に優れて液晶表示装置などの製造効率を向上させうる利点がある。
【0087】
偏光板と輝度向上フィルムを貼り合せた偏光板は、通常液晶セルの裏側サイドに設けられて使用される。輝度向上フィルムは、液晶表示装置などのバックライトや裏側からの反射などにより自然光が入射すると所定偏光軸の直線偏光または所定方向の円偏光を反射し、他の光は透過する特性を示すもので、輝度向上フィルムを偏光板と積層した偏光板は、バックライト等の光源からの光を入射させて所定偏光状態の透過光を得ると共に、前記所定偏光状態以外の光は透過せずに反射される。この輝度向上フィルム面で反射した光を更にその後ろ側に設けられた反射層等を介し反転させて輝度向上フィルムに再入射させ、その一部又は全部を所定偏光状態の光として透過させて輝度向上フィルムを透過する光の増量を図ると共に、偏光子に吸収させにくい偏光を供給して液晶表示画像表示等に利用しうる光量の増大を図ることにより輝度を向上させうるものである。すなわち、輝度向上フィルムを使用せずに、バックライトなどで液晶セルの裏側から偏光子を通して光を入射した場合には、偏光子の偏光軸に一致していない偏光方向を有する光は、ほとんど偏光子に吸収されてしまい、偏光子を透過してこない。すなわち、用いた偏光子の特性よっても異なるが、およそ50%の光が偏光子に吸収されてしまい、その分、液晶画像表示等に利用しうる光量が減少し、画像が暗くなる。輝度向上フィルムは、偏光子に吸収されるような偏光方向を有する光を偏光子に入射させずに輝度向上フィルムで一反反射させ、更にその後ろ側に設けられた反射層等を介して反転させて輝度向上フィルムに再入射させることを繰り返し、この両者間で反射、反転している光の偏光方向が偏光子を通過し得るような偏光方向になった偏光のみを、輝度向上フィルムは透過させて偏光子に供給するので、バックライトなどの光を効率的に液晶表示装置の画像の表示に使用でき、画面を明るくすることができる。
【0088】
輝度向上フィルムと上記反射層等の間に拡散板を設けることもできる。輝度向上フィルムによって反射した偏光状態の光は上記反射層等に向かうが、設置された拡散板は通過する光を均一に拡散すると同時に偏光状態を解消し、非偏光状態となる。すなわち、自然光状態の光が反射層等に向かい、反射層等を介して反射し、再び拡散板を通過して輝度向上フィルムに再入射することを繰り返す。このように輝度向上フィルムと上記反射層等の間に、偏光を元の自然光にもどす拡散板を設けることにより表示画面の明るさを維持しつつ、同時に表示画面の明るさのむらを少なくし、均一で明るい画面を提供することができる。かかる拡散板を設けることにより、初回の入射光は反射の繰り返し回数が程よく増加し、拡散板の拡散機能と相俟って均一の明るい表示画面を提供することができたものと考えられる。
【0089】
前記の輝度向上フィルムとしては、例えば誘電体の多層薄膜や屈折率異方性が相違する薄膜フィルムの多層積層体の如き、所定偏光軸の直線偏光を透過して他の光は反射する特性を示すもの、コレステリック液晶ポリマーの配向フィルムやその配向液晶層をフィルム基材上に支持したものの如き、左回り又は右回りのいずれか一方の円偏光を反射して他の光は透過する特性を示すものなどの適宜なものを用いうる。
【0090】
従って、前記した所定偏光軸の直線偏光を透過させるタイプの輝度向上フィルムでは、その透過光をそのまま偏光板に偏光軸を揃えて入射させることにより、偏光板による吸収ロスを抑制しつつ効率よく透過させることができる。一方、コレステリック液晶層の如く円偏光を透過するタイプの輝度向上フィルムでは、そのまま偏光子に入射させることもできるが、吸収ロスを抑制する点よりその円偏光を、位相差板を介し直線偏光化して偏光板に入射させることが好ましい。なお、その位相差板として1/4波長板を用いることにより、円偏光を直線偏光に変換することができる。
【0091】
可視光域等の広い波長で1/4波長板として機能する位相差板は、例えば波長550nmの淡色光に対して1/4波長板として機能する位相差板と他の位相差特性を示す位相差層、例えば1/2波長板として機能する位相差層とを重畳する方式などにより得ることができる。従って、偏光板と輝度向上フィルムの間に配置する位相差板は、1層または2層以上の位相差層からなるものであってよい。
【0092】
なお、コレステリック液晶層についても、反射波長が相違するものの組合せにして2層又は3層以上重畳した配置構造とすることにより、可視光域等の広い波長範囲で円偏光を反射するものを得ることができ、それに基づいて広い波長範囲の透過円偏光を得ることができる。
【0093】
また、偏光板は、上記の偏光分離型偏光板の如く、偏光板と2層又は3層以上の光学層とを積層したものからなっていても良い。従って、上記の反射型偏光板や半透過型偏光板と位相差板を組み合わせた反射型楕円偏光板や半透過型楕円偏光板などであっても良い。
【0094】
偏光板に前記光学層を積層した光学フィルムは、液晶表示装置等の製造過程で順次別個に積層する方式にても形成することができるが、予め積層して光学フィルムとしたものは、品質の安定性や組立作業等に優れていて液晶表示装置などの製造工程を向上させうる利点がある。積層には粘着層等の適宜な接着手段を用いうる。前記の偏光板と他の光学層の接着に際し、それらの光学軸は目的とする位相差特性などに応じて適宜な配置角度とすることができる。
【0095】
なお、本発明の粘着型光学フィルムの光学フィルムや粘着剤層などの各層には、例えばサリチル酸エステル系化合物やベンゾフェノール系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物やシアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等の紫外線吸収剤で処理する方式などの方式により紫外線吸収能をもたせたものなどであってもよい。
【0096】
本発明の粘着型光学フィルムは液晶表示装置等の各種画像表示装置の形成などに好ましく用いることができる。液晶表示装置の形成は、従来に準じて行いうる。すなわち液晶表示装置は一般に、液晶セルと粘着型光学フィルム、及び必要に応じての照明システム等の構成部品を適宜に組み立てて駆動回路を組み込むことなどにより形成されるが、本発明においては本発明による粘着型光学フィルムを用いる点を除いて特に限定は無く、従来に準じうる。液晶セルについても、例えばTN型やSTN型、π型などの任意なタイプのものを用いうる。
【0097】
液晶セルの片側又は両側に粘着型光学フィルムを配置した液晶表示装置や、照明システムにバックライトあるいは反射板を用いたものなどの適宜な液晶表示装置を形成することができる。その場合、本発明による光学フィルムは液晶セルの片側又は両側に設置することができる。両側に光学フィルムを設ける場合、それらは同じものであっても良いし、異なるものであっても良い。さらに、液晶表示装置の形成に際しては、例えば拡散板、アンチグレア層、反射防止膜、保護板、プリズムアレイ、レンズアレイシート、光拡散板、バックライトなどの適宜な部品を適宜な位置に1層又は2層以上配置することができる。
【0098】
次いで有機エレクトロルミネセンス装置(有機EL表示装置)について説明する。本発明の光学フィルム(偏光板等)は、有機EL表示装置においても適用できる。一般に、有機EL表示装置は、透明基板上に透明電極と有機発光層と金属電極とを順に積層して発光体(有機エレクトロルミネセンス発光体)を形成している。ここで、有機発光層は、種々の有機薄膜の積層体であり、例えばトリフェニルアミン誘導体等からなる正孔注入層と、アントラセン等の蛍光性の有機固体からなる発光層との積層体や、あるいはこのような発光層とペリレン誘導体等からなる電子注入層の積層体や、またあるいはこれらの正孔注入層、発光層、および電子注入層の積層体等、種々の組合せをもった構成が知られている。
【0099】
有機EL表示装置は、透明電極と金属電極とに電圧を印加することによって、有機発光層に正孔と電子とが注入され、これら正孔と電子との再結合によって生じるエネルギーが蛍光物資を励起し、励起された蛍光物質が基底状態に戻るときに光を放射する、という原理で発光する。途中の再結合というメカニズムは、一般のダイオードと同様であり、このことからも予想できるように、電流と発光強度は印加電圧に対して整流性を伴う強い非線形性を示す。
【0100】
有機EL表示装置においては、有機発光層での発光を取り出すために、少なくとも一方の電極が透明でなくてはならず、通常酸化インジウムスズ(ITO)などの透明導電体で形成した透明電極を陽極として用いている。一方、電子注入を容易にして発光効率を上げるには、陰極に仕事関数の小さな物質を用いることが重要で、通常Mg−Ag、Al−Liなどの金属電極を用いている。
【0101】
このような構成の有機EL表示装置において、有機発光層は、厚さ10nm程度ときわめて薄い膜で形成されている。このため、有機発光層も透明電極と同様、光をほぼ完全に透過する。その結果、非発光時に透明基板の表面から入射し、透明電極と有機発光層とを透過して金属電極で反射した光が、再び透明基板の表面側へと出るため、外部から視認したとき、有機EL表示装置の表示面が鏡面のように見える。
【0102】
電圧の印加によって発光する有機発光層の表面側に透明電極を備えるとともに、有機発光層の裏面側に金属電極を備えてなる有機エレクトロルミネセンス発光体を含む有機EL表示装置において、透明電極の表面側に偏光板を設けるとともに、これら透明電極と偏光板との間に位相差板を設けることができる。
【0103】
位相差板および偏光板は、外部から入射して金属電極で反射してきた光を偏光する作用を有するため、その偏光作用によって金属電極の鏡面を外部から視認させないという効果がある。特に、位相差板を1/4波長板で構成し、かつ偏光板と位相差板との偏光方向のなす角をπ/4に調整すれば、金属電極の鏡面を完全に遮蔽することができる。
【0104】
すなわち、この有機EL表示装置に入射する外部光は、偏光板により直線偏光成分のみが透過する。この直線偏光は位相差板により一般に楕円偏光となるが、とくに位相差板が1/4波長板でしかも偏光板と位相差板との偏光方向のなす角がπ/4のときには円偏光となる。
【0105】
この円偏光は、透明基板、透明電極、有機薄膜を透過し、金属電極で反射して、再び有機薄膜、透明電極、透明基板を透過して、位相差板に再び直線偏光となる。そして、この直線偏光は、偏光板の偏光方向と直交しているので、偏光板を透過できない。その結果、金属電極の鏡面を完全に遮蔽することができる。
【実施例】
【0106】
以下に、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、各例中の部および%はいずれも重量基準である。
【0107】
<光学フィルム>
富士写真フイルム社製のワイドビュー(WV)フィルムを用いた。WVフィルムは、透明基材フィルムであるセルロース系高分子フィルム上に、ディスコティック液晶分子が傾斜配向しているディスコティック液晶層を有していた。
【0108】
なお、WVフィルムを、ディスコティック液晶分子の傾斜配向層に分離し、王子計測機器社製のKOBRA−21ADHにて、λ=590nmにおける特性を測定した。面内の最大屈折率をnx、面内の最大屈折率を有する方向に直交する方向の屈折率をny、厚み方向の屈折率をnzとした。厚みをdとした。透明支持体は、Δnd=(nx−ny)×d=12nm、Rth=(nx−nz)×d=100nmであった。一方、傾斜配向層は、光軸が傾斜している方向に−50°〜50°まで入射角を変えて位相差を測定した結果、Δnd=30nm、Rth=150nm、平均傾斜角θ=17°であった。
【0109】
前記WVフィルムの透明基材フィルム側を、ケン化処理した後、そのケン化処理面とポリビニルアルコール系偏光子(日東電工(株)製,SEG−5424WL)とをポリビニルアルコール系接着剤により、貼り合わせた。一方、偏光子の他面には、前記同様のポリビニルアルコール系接着剤により、透明保護フィルム(トリアセチルセルロースフィルム,厚さ80μm)を貼り合せて、偏光板を有する光学フィルム(視野角拡大フィルム付き偏光板)を作成した。
【0110】
<下塗り層>
アクリル酸エステル((株)日本触媒製,ポリメントNK380)をトルエンに固形分が2%になるように調整した下塗り剤を用いた。
【0111】
<粘着剤層>
ベースポリマーとして、ブチルアクリレート:アクリル酸:2−ヒドロキシエチルアクリレート=100:5:0.1(重量比)の共重合体からなる重量平均分子量200万のアクリル系ポリマーを含有する溶液(固形分30%)を用いた。上記アクリル系ポリマー溶液にイソシアネート系多官能性化合物である日本ポリウレタン社製コロネートLをポリマー固形分100部に対して4部、および添加剤(信越シリコーン製,KBM403)を0.5部、粘度調整のための溶剤(酢酸エチル)を加え、粘着剤溶液(固形分12%)を調製した。当該粘着剤溶液を、乾燥後の厚みが25μmとなるように、離型シート(ポリエチレンテレフタレート基材:ダイヤホイルMRF38,三菱化学ポリエステル製)上に塗布した後、熱風循環式オーブンで乾燥して、粘着剤層を形成した。
【0112】
実施例1
(照射処理)
前記偏光板を有する光学フィルムのディスコティック液晶層に、紫外線照射装置(CSUN製,UVC−321AM)を用いて、紫外線を照射した(照度40mW/cm,積算光量300mJ/cm)。この紫外線照射を10回行った(積算光量3000mJ/cm)。積算光量は、波長350nmにおける積算光量である。
【0113】
(粘着型光学フィルムの作製)
上記照射処理が施された、ディスコティック液晶層の表面に、ワイヤーバーにて下塗り剤を塗布して、下塗り層(厚さ20nm)を形成した後に、粘着剤層を形成した離型シートを貼り合せ、粘着型光学フィルムを作製した。
【0114】
比較例1
実施例1において、照射処理を施さなかったこと以外は実施例1と同様にして、粘着型光学フィルムを作製した。
【0115】
上記照射処理される前後のディスコティック液晶層について、また得られた粘着型光学フィルムについて、以下の評価を行った。結果を表1に示す。
【0116】
<硬度>
ディスコティック液晶層の表面硬度を下記装置により測定した。
分析装置:ナノインデンター(MTS社製,SA2)
圧子:三角錘型のダイヤモンド圧子
ダイヤモンド圧子をディスコティック液晶層の側から押し込み、その時に圧子にかかる応力から硬度を測定している。押し込み深さ100nm時の硬度を測定している。測定は10回行い、それらの平均値を記載している。
【0117】
<残存する重合性不飽和基:吸光度比>
ディスコティック液晶層に残存する、重合性不飽和基を下記装置により測定した。
分析装置:FT−IR(Thermo Nicolet社製,Magna750)
測定方法:ATR法
IR結晶:ZnSe
入射角:45°
測定波長:4000〜650cm−1
積算回数:128回
検出器:DTGS
得られたIRスぺクトルの1510cm−1(芳香族由来)と811cm−1(炭素−炭素二重結合由来)の吸光度比(811cm−1/1510cm−1)を算出した。
【0118】
<ムラ>
得られた粘着型光学フィルム(サイズ:300mm×220mm)の粘着剤層の側が、上側になるように、バックライト上に配置した。80℃の雰囲気中で、バックライトを点灯し、光学フィルムに周辺部(縁から10mm以内)に窓枠ムラが発生しているか否かを、下記の基準により、目視で評価した。点灯時間は、100時間、170時間、340時間について、確認した。
○:周辺部にムラなし。
×:周辺部にムラあり。
【0119】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】本発明の粘着型光学フィルムの製造方法のフローを示す一例である。
【図2】本発明の粘着型光学フィルムの製造方法のフローを示す一例である。
【図3】本発明の粘着型光学フィルムの製造方法のフローを示す一例である。
【符号の説明】
【0121】
1 透明基材フィルム
2 配向膜
3 ディスコティック液晶層
4 下塗り層
5 粘着剤層
6 偏光子
7 透明保護フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材フィルムの片面に、重合性不飽和基を有するディスコティック液晶化合物の配向、硬化により形成されたディスコティック液晶層を有する光学フィルムの当該ディスコティック液晶層に、粘着剤層を設ける工程を有する粘着型光学フィルムの製造方法において、
粘着剤層を設ける工程を施す前に、ディスコティック液晶層に、紫外光および/または可視光を照射することを特徴とする粘着型光学フィルムの製造方法。
【請求項2】
紫外光および/または可視光を照射後、粘着剤層を設ける工程を施す前に、下塗り層を設ける工程を有することを特徴とする請求項1記載の粘着型光学フィルムの製造方法。
【請求項3】
照射光が、紫外光を含み、波長350nmにおける積算光量が、10〜10000mJ/cmであることを特徴とする請求項1または2記載の粘着型光学フィルムの製造方法。
【請求項4】
ディスコティック液晶層が形成される、透明基材フィルムの片面は、ラビング処理されているか、または、配向膜が形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の粘着型光学フィルムの製造方法。
【請求項5】
光学フィルムは、ディスコティック液晶層が形成されない側の、透明基材フィルムの片面には偏光子が積層されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の粘着型光学フィルムの製造方法。
【請求項6】
粘着剤層を設ける工程を施した後に、ディスコティック液晶層が形成されない側の、透明基材フィルムの片面に、偏光子を積層する工程を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の粘着型光学フィルムの製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法により得られた、粘着型光学フィルム。
【請求項8】
請求項7記載の粘着型光学フィルムを少なくとも1枚用いた画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−9156(P2008−9156A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−180011(P2006−180011)
【出願日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】