説明

糊塗布検査装置

【課題】段ボールシートの継ぎ代片に糊の塗布が適正になされているか否かを、正確に検査することができる糊塗布検査装置を提供する。
【解決手段】糊塗布検査装置は、糊が塗布された継ぎ代片41について、糊が塗布されるべき糊塗布対象領域42を撮影するカメラと、糊塗布対象領域内に、糊塗布対象領域より面積が小さく全数で糊塗布対象領域を網羅する複数の小検査領域43を設定し、カメラにより撮影された画像を処理することにより、小検査領域の面積に対する糊塗布領域45の面積の割合を予め定めた基準値と対比して、小検査領域ごとに糊の塗布が適正か否かの判定を行い、小検査領域ごとの判定結果に基づいて、糊塗布対象領域における糊の塗布が適正か否かの判定を行う画像処理判定装置とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、段ボール箱の製造工程において、段ボールシートの継ぎ代片への糊の塗布が適正になされているか否かを検査する糊塗布検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的な段ボール箱の製造工程では、コルゲータにおいて中芯とライナとの貼合による段ボールシートの製造、横罫線(スコア)入れ、及び断裁が行われた後、製箱ラインにおいて、印刷、縦罫線(クリーズ)入れ、不要部の切除による切り込み溝(スロッタ)及び継ぎ代片の形成、継ぎ代片への糊の塗布、折り畳み及び接合による箱形成が連続的に行われる。
【0003】
ここで、継ぎ代片への糊の塗布は、グルーロールやグルーガンによって行われるが、切除された紙片が付着した状態で糊の塗布がなされた場合、グルーロールの段ボールシートへの圧接が不均一となった場合、グルーロールの周面に形成された溝に糊が均一に保持されていない場合、グルーロールの溝やグルーガンのノズルに詰まりが生じた場合、グルーロールやグルーガンへの糊の供給が途切れた場合など、適正に糊が塗布されていない継ぎ代片が発生することにより、接合不良の箱が製造されるおそれがある。
【0004】
そこで、従来、段ボールシートの搬送ライン上に二次元カメラを設置して継ぎ代片を撮影し、撮像を画像処理することによって、継ぎ代片に糊が適正に塗布されているか否かの検査を行う検査装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。これは、検査領域を糊付け必須領域と糊付け不可領域とに分け、糊付け必須領域においては糊付着面積の比を所定の下限値と対比し、糊付け不可領域においては糊付着面積の比を所定の上限値と対比することにより、糊付けの適否の判定を行うものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の従来の検査装置は、未だ実用的なものではなかった。即ち、継ぎ代片において糊が塗布された領域の面積の総和が同一の場合であっても、糊が一部の領域に偏って塗布されている場合と、糊が塗布された領域がまばらに分散している場合とがあり、前者は継ぎ代片による接合に支障をきたすものであるのに対し、後者は継ぎ代片による接合が可能な場合があり得る。
【0006】
ところが、糊を塗布すべき糊塗布対象領域(特許文献1では「糊付け必須領域」)について、糊が塗布された領域の面積の比を所定の基準値と単純に対比する従来の検査装置では、両者を識別することができない。そのため、本来は継ぎ代片による接合が可能でありながら、不良と判定されて排除される段ボールシートが大量に発生してしまうおそれがあった。また、このような事態を回避すべく判定の基準値を甘く設定することにより、実際には継ぎ代片による接合が不十分となる段ボールシートが、検査で見逃されてしまうおそれがあった。
【0007】
そこで、本発明は、上記の実情に鑑み、継ぎ代片に糊の塗布が適正になされているか否かを、正確に検査することができる糊塗布検査装置の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明にかかる糊塗布検査装置は、「製箱ラインを搬送される段ボールシートの継ぎ代片への糊の塗布が適正か否かを検査する糊塗布検査装置であって、糊が塗布された前記継ぎ代片について、糊が塗布されるべき糊塗布対象領域を撮影するカメラと、前記糊塗布対象領域内に、前記糊塗布対象領域より面積が小さく全数で前記糊塗布対象領域を網羅する複数の小検査領域を設定し、前記カメラにより撮影された画像を処理することにより、前記小検査領域の面積に対する糊が塗布された領域の面積の割合を予め定めた基準値と対比して、前記小検査領域ごとに糊の塗布が適正か否かの判定を行い、前記小検査領域ごとの判定結果に基づいて前記糊塗布対象領域における糊の塗布が適正か否かの判定を行う画像処理判定装置とを」具備している。
【0009】
「カメラ」は二次元カメラ(エリアカメラ)、後述のラインセンサカメラを何れも使用可能である。
【0010】
「小検査領域」が「全数で前記糊塗布対象領域を網羅する」とは、複数の小検査領域の全てを検査することにより、糊塗布対象領域の全体が漏れなく検査されるように小検査領域が設定されることを意味している。このように小検査領域を設定する態様としては、隣接する小検査領域の端線がぴったりと一致するように設定する態様のほか、後述のように、隣接する小検査領域が一部重なり合うように設定する態様がある。
【0011】
カメラにより撮影された画像の処理において「前記小検査領域の面積に対する糊が塗布された領域の面積の割合」は、糊が塗布された部分の画素と糊が塗布されていない部分の画素における輝度値の差を利用して求めることができる。なお、段ボールシートの地色と糊の色が近似している場合は、糊を着色すると良い。
【0012】
「前記小検査領域ごとの判定結果に基づいて、前記糊塗布対象領域における糊の塗布が適正か否かの判定を行う」判定としては、糊の塗布が適正ではないと判定された小検査領域(以下、「NG判定された小検査領域」と称する)が予め定めた数を超えた場合に糊塗布対象領域における糊の塗布が適正ではないと判定する場合、NG判定された小検査領域が複数連続した場合に、糊塗布対象領域における糊の塗布が適正ではないと判定する場合、小検査領域の全数に対するNG判定された小検査領域の数の比が、予め定めた基準値を超えた場合に糊塗布対象領域における糊の塗布が適正ではないと判定する場合、等を例示することができる。なお、「前記糊塗布対象領域における糊の塗布が適正か否かの判定」は、継ぎ代片における糊の塗布が適正か否かの判定、と同意である。
【0013】
「画像処理判定装置」は、中央処理装置(CPU)及び主記憶装置を具備するコンピュータによって構成させることができる。ここで、主記憶装置には、カメラによって撮影された画像を取り込み、小検査領域において糊が塗布された領域と糊が塗布されていない領域とを識別して、小検査領域の面積に対する糊が塗布された領域の面積の割合を算出する手段、及び、算出された面積割合に基づいて小検査領域ごとに糊の塗布が適正か否かの判定を行い、更に、小検査領域ごとの判定結果に基づいて糊塗布対象領域における糊の塗布が適正か否かの判定を行う手段、としてコンピュータを機能させるプログラムを記憶させることができる。
【0014】
上記構成の本発明では、糊塗布対象領域の全体について、糊が塗布された領域の面積の割合を基準値と対比する従来の検査装置とは異なり、糊塗布対象領域を小面積の小検査領域に分け、小検査領域ごとに糊の塗布が適正であるか否かの判定を行い、小検査領域ごとの判定結果を総合して、糊塗布対象領域全体について糊の塗布が適正であるか否かの判定を行う。これにより、糊が塗布された領域の面積の総和が同程度の場合であっても、糊が一部の領域に偏って塗布されており、継ぎ代片による接合が不十分となる場合と、糊が塗布された領域がまばらに分散しており、継ぎ代片による接合が可能である場合とを識別することができる。
【0015】
従って、本発明によれば、継ぎ代片に糊の塗布が適正になされているか否かを、正確に検査することができる。
【0016】
本発明にかかる糊塗布検査装置は、上記構成に加え、「前記小検査領域は、隣接する前記小検査領域が一部重なり合うように設定される」ものとすることができる。
【0017】
上記構成とすることにより、糊の塗布状態が同一であって、小検査領域の面積が同一、且つ、判定の基準値が同一であっても、隣接する小検査領域の端線がぴったりと一致するように設定される場合に比べて、糊の塗布が適正ではないと判定される小検査領域の数が増加する。従って、小検査領域の面積及び判定の基準値を同一の設定として、より精密な検査を行うことができる。また、隣接する小検査領域を一部重ね合わせることにより、糊塗布対象領域において検査漏れの領域が生じるおそれを、極めて簡易に回避することができる。
【0018】
本発明にかかる糊塗布検査装置は、上記構成に加え、「前記カメラは、前記段ボールシートと平行な面上で、且つ、前記段ボールシートの搬送方向に直交する方向に沿って受光部が一列に配設されたラインセンサカメラであり、前記小検査領域は、前記搬送方向に沿って一列に配設される」ものとすることができる。
【0019】
ラインセンサカメラの走査周期(一ライン分の信号を蓄える時間)は、一般的に、エリアカメラの走査周期に比べて非常に短い。また、一般的な製箱ラインでは、段ボールシートは毎分350枚という高速で搬送される。本発明では、搬送方向に直交する方向に受光部が列設されたラインセンサカメラを用いることにより、段ボールシートの高速移動に伴って一次元画像を連続的に取得し、取得された一次元画像を配列させることにより、継ぎ代片における糊塗布対象領域の二次元画像を、高速で作成することができる。また、小検査領域を搬送方向に沿って一列に配設することにより、段ボールシートの移動に伴って小検査領域一つ分の二次元画像が作成され次第、その小検査領域における糊塗布の適否の判定を行い、順次その処理を進めて行くことができる。従って、上記構成の本発明によれば、継ぎ代片に糊が適正に塗布されているか否かの検査を、効率よく、極めて高速で行うことができる。
【発明の効果】
【0020】
以上のように、本発明の効果として、継ぎ代片に糊の塗布が適正になされているか否かを、正確に検査することができる糊塗布検査装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態の糊塗布検査装置の構成図である。
【図2】本実施形態のカメラの説明図である。
【図3】搬送される段ボールシートを説明する図である。
【図4】糊の塗布状態が理想的な場合の継ぎ代片の平面図である。
【図5】図1の糊塗布検査装置の検査対象の継ぎ代片を例示する平面図である。
【図6】図1の糊塗布検査装置による図5の継ぎ代片の検査を説明する図である。
【図7】小検査領域の設定の仕方が異なる場合を説明する図である。
【図8】小検査領域の設定の仕方が更に異なる場合を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態である糊塗布検査装置について、図1乃至図6に基づいて説明する。本実施形態の糊塗布検査装置1(以下、単に「検査装置1」と称する)は、製箱ラインを搬送される段ボールシート40の継ぎ代片41への糊の塗布が適正か否かを検査する検査装置1であって、図1及び図2に示すように、糊が塗布された継ぎ代片41について、糊が塗布されるべき糊塗布対象領域42を撮影するカメラ11と、画像処理判定装置としてのコンピュータ12とを具備している。
【0023】
ここで、コンピュータ12は、ハード構成として主記憶装置と、主記憶装置に記憶されたプログラムに従って処理を行う中央処理装置(CPU)と、ハードディスク等の補助記憶装置とを具備している。ここで、補助記憶装置には、カメラ11から送信された画像データ、画像処理の結果、或いは、糊塗布の適否の判定結果を記憶させることができる。
【0024】
また、主記憶装置には、糊塗布対象領域42を撮影したカメラ11からデジタル画像データを取り込み、小検査領域43において糊が塗布された領域45(以下、「糊塗布領域45」)と称する)と糊が塗布されていない領域46とを識別して、小検査領域43ごとに、「小検査領域43の面積に対する糊塗布領域45の面積割合」(以下、「面積割合R」と称する)を算出する画像処理手段、及び、算出された面積割合Rに基づいて小検査領域43ごとに糊の塗布が適正か否かの判定を行い、更に、小検査領域43ごとの判定結果に基づいて糊塗布対象領域42における糊の塗布が適正か否かの判定を行う判定手段、としてコンピュータ12を機能させるプログラムが記憶されている。
【0025】
より詳細には、本実施形態の検査装置1は、コンピュータ12による処理の過程や結果を表示するモニタやプリンタ等の出力装置13、コンピュータ12に対して種々の命令やデータの入力を行うキーボードやポインティングデバイス等の入力装置14を更に具備している。また、検査装置1は、継ぎ代片41に光を投射するカメラ用照明19、搬送ラインを移動してきた継ぎ代片41の先端を検知し、検知信号をコンピュータ12に送出する継ぎ代片先端検知装置15、及び、段ボールシート40の搬送距離を検出し、所定距離ごとに信号をコンピュータ12に送出するエンコーダ16を具備している。加えて、本実施形態の検査装置1は、継ぎ代片41への糊の塗布が適正ではないとの判定に基づいて、異常の発生を報知する警告灯17及び警報音スピーカ18を備えている。
【0026】
そして、本実施形態のコンピュータ12は、製箱機の管理装置21、及び、製箱事業者の事務所コンピュータ22と、有線通信または無線通信可能に接続されている。
【0027】
ここで、製箱ラインは、一般的には、段ボール原紙が供給される給紙部、縦罫線入れと切り込み溝及び継ぎ代片41の形成が行われるクリーザ・スロッタ部、継ぎ代片41への糊の塗布が行われるグルー部、段ボールシート40の折り畳み及び継ぎ代片41による接合が行われるフォールディング部、接合された箱を直角矯正板で加圧するスケアリング部、形成された箱を計数しつつ排出するカウンタエジェクタ部を備える製箱機(フォルダグルア)における製箱ラインである。なお、製箱機は、フレキソ印刷機との複合機であるフレキソフォルダグルアであっても良い。
【0028】
このような製箱ラインにおいて、カメラ11はグルー部とフォールディング部との間において、段ボールシート40の搬送に伴い継ぎ代片41が通過する移動ライン31(詳細は、後述する)の上方に設けられている。また、カメラ用照明19は、段ボールシート40を搬送する搬送コンベア30の近傍に、搬送面を照射するように設けられている。更に、製箱ラインにおいて、カメラ11による撮影位置より上流側では、継ぎ代片41の移動ライン31の真上に、継ぎ代片41の先端の通過を検知する継ぎ代片先端検知装置15が設けられている。また、カメラ11による撮影位置より下流側には、エンコーダ16が設けられている。なお、継ぎ代片先端検知装置15としては、発光ダイオードを投光素子として光を投射し、フォトダイオード等の受光素子で反射光を検出することにより、物体の有無を検知する光電センサを使用することができる。
【0029】
以下、検査装置1による検査処理について説明する。まず、製箱に先立ち、コンピュータ12は、製箱すべき段ボール箱に関する情報、例えば、段ボール箱の形式に関する情報、寸法に関する情報、製箱すべき数量等の情報を取得し、補助記憶装置に記憶する。このような情報の取得は、コンピュータ12が事務所コンピュータ22から直接受信しても良いし、事務所コンピュータ22から管理装置21に送信された情報を、コンピュータ12が管理装置21から取得しても良い。ここで、寸法に関する情報とは、図3(b)に示すように、継ぎ代片41の搬送方向(図示、矢印A方向)における先端から糊塗布対象領域42の先端線までの距離L1や、糊塗布対象領域42の搬送方向の長さL2等である。なお、図3における二点鎖線は、段ボールシート40の搬送に伴って、継ぎ代片41の幅方向における中心線が移動する移動ライン31を示している。
【0030】
また、一つの小検査領域43において糊の塗布が適正になされているか否かの判定を行うための基準値や、小検査領域43ごとの判定結果に基づき、糊塗布対象領域42全体について糊の塗布が適正になされているか否かの判定を行うための条件を、予めコンピュータ12の補助記憶装置に入力しておく。この入力は、事務所コンピュータ22からコンピュータ12に送信することにより行っても良いし、作業者が入力装置14を用いてコンピュータ12に入力することにより行っても良い。
【0031】
製箱工程が開始されると、段ボールシート40は搬送コンベア30上を図示矢印A方向に搬送され、クリーザ・スロッタ部において、図3(a)に示すように、縦罫線48、切込み溝49、及び継ぎ代片41が形成される。なお、図3(a)では汎用的な形式である「0201形式」の段ボールシート40を図示しているが、段ボール箱の形式はこれに限定されるものではない。
【0032】
そして、グルー部において、図示しないグルーローラによって継ぎ代片41に糊が塗布される。ここで、グルーロールの周面には溝が形成されており、ポンプまたは糊バットから供給された糊が溝に保持された状態で、グルーロールが段ボールシート40に圧接されつつ回転することにより、段ボールシート40に糊が塗布される。本実施形態では、グルーロールとして、周面に、周方向に直交する溝が所定間隔で形成されたグルーロールを用いた場合を例示する。このようなグルーロールを用いた場合、理想的に糊が塗布されると、図4に示すように、溝の間隔に応じた間隔で線状の糊塗布領域45が形成される。
【0033】
実際には、クリーザ・スロッタ部において切除された紙片が継ぎ代片に付着した状態で糊が塗布されること、段ボールシート40へのグル−ロールの圧接が不均一となること、或いは、溝における糊の保持が不均一となること等に起因して、線状の糊塗布領域45の“抜け”、或いは、“かすれ”や“途切れ”が発生することがある。ここでは、説明の便宜上、図5(a)〜(c)に示すように、線状の糊塗布領域45に部分的な“抜け”のみが生じており、それぞれの糊塗布領域45には“かすれ”や“途切れ”が生じていない場合を、模式的に図示して説明する。
【0034】
ここで、図5(a)〜(c)は、それぞれの糊塗布対象領域42における糊塗布領域45の面積の総和が、全く同一である例である。図5(a)は、糊塗布領域45間で糊が塗布されていない領域46の面積が小さく、且つ、糊塗布領域45が分散しており、実際に継ぎ代片41による接合が可能な例である。一方、図5(b)は糊が塗布されていない領域46が偏在して大きな面積となっており、継ぎ代片41による接合が不良となる例である。また、図5(c)は、糊が塗布されていない領域46の面積は図5(a)と同程度で小さいが、糊塗布領域45を挟んで糊が塗布されていない領域46が近接しており、継ぎ代片41による接合が不良となる例である。
【0035】
搬送コンベア30による段ボールシート40の搬送に伴い、継ぎ代片41の先端部の通過を継ぎ代片先端検知装置15が検知すると、この検知信号がコンピュータ12に送信される。画像処理手段は、継ぎ代片先端検知装置15からの検知信号、エンコーダ16から所定角度の回転ごとに発信される信号、及び、予め取得した上述の距離L1,L2等の情報に基づいて、カメラ11による撮影のタイミングを制御し、糊塗布対象領域42の画像データを取得する。
【0036】
本実施形態では、カメラ11としてラインセンサカメラ1を用いており、図2に示すように、段ボールシート40の搬送に伴って一次元の画像データが順次取得され、コンピュータ12の記憶装置に記憶されると共に、画像処理手段によって二次元画像が作成される。そして、本実施形態では、小検査領域43を搬送方向に沿って一列に配されるように設定している。そのため、一次元の画像データの配列により、一つ分の小検査領域43を超えて二次元画像が作成されると、その小検査領域43について面積割合Rの算出が行われる。
【0037】
ここで、小検査領域43における面積割合Rの算出は、例えば、小検査領域43の画像データの全ての画素について、隣接する画素間で輝度値が所定値以上大きく相違する箇所を認識することにより、糊塗布領域45と糊が塗布されていない領域46とを識別し、画素の二次元座標を用いてそれぞれの領域の面積を算出することにより行うことができる。或いは、全ての画素の輝度値を、所定の閾値との対比によって二値化することにより、糊塗布領域45と糊が塗布されていない領域46とを識別し、それぞれの領域の面積を算出することにより行うことができる。なお、段ボールシート40の地色と糊の色とが近似している場合は、予め糊を着色しておけば、各画素の色成分を用いることにより、糊塗布領域45と糊が塗布されていない領域46とを識別することができる。
【0038】
小検査領域43において面積割合Rが算出されると、判定手段は面積割合Rに基づき、その小検査領域43における糊塗布の適否を判定する。例えば、面積割合Rが予め記憶された基準値に満たない場合は、糊の塗布は適正ではないと判定(以下、「NG判定」と称する)し、面積割合Rが基準値以上であれば糊の塗布は適正であると判定する。
【0039】
このような判定が、小検査領域43ごとに、糊塗布対象領域42内の全ての小検査領域43について行われた状態を、図6に例示する。ここで、図6(a)〜(c)は、それぞれ図5(a)〜(c)に対応している。また、ここでは、説明の便宜のために単純化し、一つの小検査領域43における糊塗布領域45の面積の総和が、線状の糊塗布領域45三本分の面積以上である場合に、小検査領域43における糊の塗布が適正であると判定することとして説明する。なお、図示における「NG」は、NG判定された小検査領域43を示している。
【0040】
次に、判定手段は、糊塗布対象領域42内の全ての小検査領域43についての判定結果に基づいて、糊塗布対象領域42全体について、糊の塗布が適正か否かの判定を行う。例えば、“一つの糊塗布対象領域42について設定された20個の小検査領域43のうち、NG判定された小検査領域43の数が6個未満であり、且つ、NG判定された小検査領域43が隣接していない場合に、糊塗布対象領域42における糊の塗布が適正であると判定する”という判定条件を設定していたとする。この場合、糊の塗布が図5(a)の状態である場合は、図6(a)に示すように、NG判定された小検査領域43の数が5個であり、NG判定された小検査領域43は何れも隣接していないため、糊塗布対象領域42における糊の塗布は適正であると判定される。
【0041】
一方、糊の塗布が図5(b)の状態である場合は、図6(b)に示すように、NG判定された小検査領域43の数は4個であって6個未満であるものの、NG判定された小検査領域43が何れも隣接しているため、糊塗布対象領域42における糊の塗布は適正ではないと判定される。また、糊の塗布が図5(c)の状態である場合は、図6(c)に示すように、NG判定された小検査領域43の数は6個であり、且つ、NG判定された小検査領域43が隣接している箇所があるため、糊塗布対象領域42における糊の塗布は適正ではないと判定される。
【0042】
このように、糊塗布対象領域42における糊の塗布が適正ではないと判定された場合は、判定手段は警告灯17及び警報音スピーカ18を制御し、警告灯17の点灯や警報音を発することによって、糊の塗布が適正ではない継ぎ代片が発生したことを報知する。また、製箱機が、継ぎ代片41における糊の塗布が適正ではない段ボールシート40を排除する排除装置を備えている場合は、コンピュータ12がエンコーダ16からの信号に基づいて当該段ボールシートが排除装置の位置に達するまでの時間を算出し、排除装置を制御することにより、その段ボールシート40が自動的に製箱ラインから排除される構成とすることもできる。
【0043】
なお、画像処理によって得られた継ぎ代片41の二次元画像、小検査領域43ごとの判定結果、或いは、糊塗布対象領域42についての判定結果は、モニタやプリンタ等の出力装置13に出力することができる。また、小検査領域43ごとの判定結果、糊塗布対象領域42についての判定結果、排除された段ボールシート40の数などの情報は、コンピュータ12から事務所コンピュータ22に送出することができる。
【0044】
上記のように、本実施形態の検査装置1によれば、図5(a)〜図5(c)に例示したように、糊塗布対象領域42における糊塗布領域45の面積の総和が同一の場合であっても、糊塗布領域45がまばらに分散しており継ぎ代片41による接合が可能である場合、糊が塗布されていない領域46が偏在しており継ぎ代片41による接合が不良となる場合、糊塗布領域45がまばらに分散しており、糊が塗布されていない領域46個々の面積は小さくても、糊塗布領域45を挟んで糊が塗布されていない領域46が近接しており継ぎ代片41による接合が不良となる場合など、糊の塗布パターンの微妙な相違を反映して、糊の塗布が適正であるか否かの判定を正確に行うことができる。
【0045】
上記では、糊塗布領域45における小検査領域43の設定に際して、隣接する小検査領域43の端線がぴったりと一致するように設定される場合を示したが、図7(b)に示すように、隣接する小検査領域43が一部重なり合うように設定することもできる。ここで、図7(b)は、糊が塗布された状態が図5(a)と同一である場合について、小検査領域43が一部重なり合うように設定された態様を示す部分拡大図である。なお、図7(a)は、対比のために、糊が塗布された状態が図5(a)と同一で、隣接する小検査領域43の端線がぴったりと一致するように小検査領域43が設定された場合について、図7(b)と同じ部分で拡大した図である(即ち、図6(a)の部分拡大図である)。
【0046】
そして、両図では、各小検査領域43において糊の塗布が適正であるか否かの判定を、上記と同様の基準で判定した結果を示している。図7(b)を図7(a)と対比すると明らかなように、糊の塗布状態が同一であって、小検査領域43の面積が同一、且つ、判定の基準値が同一であっても、隣接する小検査領域43が一部重なり合うように設定された場合は(図7(b))、隣接する小検査領域43の端線がぴったりと一致するように設定される場合(図7(a))に比べて、NG判定された小検査領域43の数が増加している。即ち、隣接する小検査領域43を一部重なり合うように設定することにより、小検査領域43の面積及び判定の基準値を同一の設定として、糊の塗布の適否の判定を、より厳しく精密に行うことができる。
【0047】
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
【0048】
例えば、上記の実施形態では、小検査領域43が段ボールシート40の搬送方向に沿って一列に配設される場合を例示したが、これに限定されない。例えば、図8に示すように、小検査領域53を搬送方向沿って二列となるように設定することもできる。
【0049】
このように設定した場合、ラインセンサカメラによる撮影により、段ボールシート40の搬送に伴って一次元の画像データが順次取得され、搬送方向に一つ分の小検査領域53を超えて二次元画像が作成された際に、搬送方向に直交する方向に隣接する二つの小検査領域53について、共に面積割合Rの算出を行うことができる。そして、このように搬送方向に直交する方向、即ち、グルーロールの溝の伸びる方向に沿って、複数列の小検査領域を設定することにより、糊塗布領域における“かすれ”や“途切れ”が反映された、より正確な判定を行うことができる。
【0050】
また、上記では、グルーロールによって搬送方向に直交する方向に糊塗布領域が形成された継ぎ代片を検査対象とした場合を例示したが、これに限定されない。例えば、グルーガンによって搬送方向と同一方向に糊塗布領域が形成された継ぎ代片、周面に斜め溝や格子状の溝が設けられたグルーロールを用いて糊が塗布された継ぎ代片など、糊塗布領域の方向やパターンの相違によらず、本発明の糊塗布検査装置によって糊塗布の適否の検査を行うことができる。
【符号の説明】
【0051】
1 検査装置(糊塗布検査装置)
11 カメラ
12 コンピュータ(画像処理判定装置)
40 段ボールシート
41 継ぎ代片
42 糊塗布対象領域
43 小検査領域
45 糊塗布領域(糊が塗布された領域)
46 糊が塗布されていない領域
【先行技術文献】
【特許文献】
【0052】
【特許文献1】特許第4030455号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
製箱ラインを搬送される段ボールシートの継ぎ代片への糊の塗布が適正か否かを検査する糊塗布検査装置であって、
糊が塗布された前記継ぎ代片について、糊が塗布されるべき糊塗布対象領域を撮影するカメラと、
前記糊塗布対象領域内に、前記糊塗布対象領域より面積が小さく全数で前記糊塗布対象領域を網羅する複数の小検査領域を設定し、前記カメラにより撮影された画像を処理することにより、前記小検査領域の面積に対する糊が塗布された領域の面積の割合を予め定めた基準値と対比して、前記小検査領域ごとに糊の塗布が適正か否かの判定を行い、前記小検査領域ごとの判定結果に基づいて前記糊塗布対象領域における糊の塗布が適正か否かの判定を行う画像処理判定装置と
を具備することを特徴とする糊塗布検査装置。
【請求項2】
前記小検査領域は、隣接する前記小検査領域が一部重なり合うように設定される
ことを特徴とする請求項1に記載の糊塗布検査装置。
【請求項3】
前記カメラは、前記段ボールシートと平行な面上で、且つ、前記段ボールシートの搬送方向に直交する方向に沿って受光部が一列に配設されたラインセンサカメラであり、
前記小検査領域は、前記搬送方向に沿って一列に配設される
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の糊塗布検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−253878(P2010−253878A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−109129(P2009−109129)
【出願日】平成21年4月28日(2009.4.28)
【出願人】(593155330)株式会社ホニック (8)
【Fターム(参考)】