説明

紫外線硬化型導電性組成物およびこれを用いた導電性ロール

【課題】従来より低VOC化を図ることができ、ブルームの発生を抑制しつつ、十分な導電性を付与可能な紫外線硬化型導電性組成物を提供すること。また、この組成物を用いた導電性ロールを提供すること。
【解決手段】分子構造中にエチレンオキシド単位を少なくとも有する光重合性モノマーと、イオン導電剤と、光開始剤とを含有する紫外線硬化型導電性組成物とする。また、導電性シャフトの外周に、1層または2層以上の導電性層が積層されており、上記導電性層の何れかに、上記組成物を紫外線により硬化させてなる導電性層を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線硬化型導電性組成物およびこれを用いた導電性ロールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真方式を採用する複写機、プリンター、ファクシミリなどの画像形成装置が多数使用されている。通常、この種の画像形成装置の内部には、感光ドラムが組み込まれている。この感光ドラムの周囲には、帯電ロール、転写ロール、現像ロール、トナー供給ロールなど、各種の導電性ロールが配設されている。
【0003】
この種の導電性ロールは、通常、芯金の外周に1層または2層以上の導電性層が形成されたもので、この導電性層の材料としては、導電性付与剤を各種樹脂中に配合した導電性樹脂組成物が知られている。
【0004】
例えば、特許文献1には、現像ロールの耐摩耗性を向上させる目的で、フッ素含有オリゴマーと、ポリウレタンアクリレートと、イオン導電剤とを配合した紫外線硬化型樹脂が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開2004−191639号(表1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来知られる導電性樹脂組成物は、一般に、以下のような問題があった。すなわち、従来の導電性樹脂組成物は、組成物の粘度を下げ、塗工性を向上させるなどの目的で、希釈溶剤として揮発性有機化合物(以下、「VOC」ということがある。)を多量に含有させることが多い。例えば、組成物仕込み時点におけるVOCの組成物全体に占める含有量は、通常50重量%よりも多く、ときには約80重量%以上に達することもある。
【0007】
このVOCは、環境への負荷が大きいため、近年では、組成物中のVOCを低減させることが望まれている。例えば、VOCに代えて水を用いたり、無溶剤化を図ったりする取り組みも行われている。
【0008】
しかしながら、水を用いた組成物は、湿度などの環境変動に弱く、また、無溶剤とした組成物は、ポリマー分の増加に起因して粘度が増加するので、組成物の加工性や取扱い性などが著しく悪くなるなどといった問題があった。
【0009】
さらに、ポリマーとイオン導電剤とはそもそも極性が異なることから、両者は相溶性に劣る。そのため、十分に溶解しなかったイオン導電剤が組成物中で白濁し、組成物中における紫外線の透過性が低下して硬化性が悪化するなどといった問題があった。
【0010】
またさらに、導電性を向上させようとして、組成物中にイオン導電剤を多量に添加すると、紫外線硬化させた後の組成物中から、イオン導電剤がしみ出す、いわゆるブルームが発生するといった問題があった。このブルームは、組成物を低粘度化するにつれて発生しやすくなる。ブルームが発生すると、感光ドラムを汚染するため、対策を施す必要があった。
【0011】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、従来より低VOC化を図ることができ、ブルームの発生を抑制しつつ、十分な導電性を付与可能な紫外線硬化型導電性組成物を提供することにある。また、この紫外線硬化型導電性組成物を用いた導電性ロールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明に係る紫外線硬化型導電性組成物は、分子構造中にエチレンオキシド単位を少なくとも有する光重合性モノマーと、イオン導電剤と、光開始剤とを含有することを要旨とする。
【0013】
ここで、上記組成物は、光重合性オリゴマーをさらに含有していても良い。
【0014】
また、上記光重合性モノマーは、上記分子構造中に環状不飽和構造を含む単位をさらに有していても良い。
【0015】
また、上記組成物は、分子構造中に環状不飽和構造を含む単位を少なくとも有する光重合性モノマーをさらに含有していても良い。
【0016】
また、上記組成物は、組成物仕込み時点における揮発性有機化合物の当該組成物全体に占める含有量が、50重量%以下であることが好ましい。
【0017】
一方、本発明に係る導電性ロールは、上記紫外線硬化型導電性組成物を用いたことを要旨とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る紫外線硬化型導電性組成物は、ポリマーに比較して低分子量である光重合性のモノマーを主に含有している。そのため、組成物中にVOCを多量に含有させなくても(無溶剤でも)、粘度を低くすることができる。また、比較的粘度を低くできるので、組成物の加工性や取扱い性などにも優れる。
【0019】
また、光重合性モノマーは、分子構造中にエチレンオキシド単位を少なくとも有しているので、光重合性モノマーとイオン導電剤とは相溶性に優れる。そのため、組成物中でイオン導電剤が溶けきらずに白濁するのを抑制でき、組成物中における紫外線の透過も損なわれないことから、紫外線硬化性が十分に確保され、高速硬化性に優れる。
【0020】
さらに、上記光重合性モノマーとイオン導電剤とは相溶性に優れるので、組成物中にイオン導電剤を比較的多量に添加しても、紫外線硬化させた後の組成物中から、イオン導電剤がしみ出す、いわゆるブルームが発生し難い。したがって、ブルームの発生を効果的に抑制しつつ、十分な導電性を付与することができる。
【0021】
この際、上記組成物が、光重合性オリゴマーをさらに含有している場合には、紫外線による硬化時間を短くすることができるので、生産性の向上などに寄与する。
【0022】
また、上記光重合性モノマーが、上記分子構造中に環状不飽和構造を含む単位をさらに有している場合には、紫外線硬化させた後の組成物が酸化劣化し難くなり、耐久性が向上する。
【0023】
そのため、この組成物を例えば、酸化劣化を受けやすい導電性ロールの導電性層材料に用いれば、耐久性に優れた導電性ロールを得ることができる。とりわけ、感光ドラムとの間で微小放電による酸化劣化を生じやすい帯電ロールの導電性層材料として用いれば、帯電性の低下が抑制され、耐久性に優れた帯電ロールを得ることができる。
【0024】
これ以外にも、上記組成物が、分子構造中に環状不飽和構造を含む単位を少なくとも有する光重合性モノマーをさらに含有している場合も、上記と同様の効果が得られる。
【0025】
また、上記組成物において、組成物仕込み時点におけるVOCの当該組成物全体に占める含有量が、50重量%以下である場合には、従来よりも環境への負荷を小さくできる。
【0026】
一方、本発明に係る導電性ロールは、上記紫外線硬化型導電性組成物を用いているので、従来よりも低VOC化を図ることができる。また、ブルームの発生を抑制できるので、感光ドラムを汚染し難い。また、イオン導電剤を用いているので、導電性のバラツキも非常に少ない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
1.本実施形態に係る紫外線硬化型導電性組成物の構成
本実施形態に係る紫外線硬化型導電性組成物(以下、「本組成物」ということがある。)は、特定の光重合性モノマーと、イオン導電剤と、光開始剤とを必須成分として含有している。
【0028】
本組成物において、上記特定の光重合性モノマーは、その分子構造中にエチレンオキシド単位を少なくとも有している。エチレンオキシド単位は、主鎖または側鎖の何れか一方に含まれていても良いし、あるいは、主鎖および側鎖の両方に含まれていても良い。
【0029】
また、上記特定の光重合性モノマーは、エチレンオキシド単位以外に、他の単位を1種または2種以上有していても良い。これら他の単位についても、主鎖または側鎖の何れか一方に含まれていても良いし、あるいは、主鎖および側鎖の両方に含まれていても良い。
【0030】
上記他の単位としては、例えば、炭素数3〜20のアルキレンオキシド単位、トリメチロールプロパン単位、ペンタエリスリトール単位、エチルヘキシルカルビトール単位、グリセリン単位などや、ノニルフェノール単位、パラクミルフェノール単位、ビスフェノールA単位、スチレンオキシド単位、イソシアヌル酸単位、ビスフェノールF単位、フタル酸単位、フェノキシ単位などの環状不飽和構造を含む単位などを例示することができる。これらは1種または2種以上含まれていても良い
【0031】
上記特定の光重合性モノマーは、とりわけ、エチレンオキシド単位以外に、上記環状不飽和構造を含む単位をさらに有していると良い(以下、エチレンオキシド単位を有するが、環状不飽和構造を含む単位を有さないモノマーを「EO含有光重合性モノマー」といい、エチレンオキシド単位と環状不飽和構造を含む単位とを両方有するモノマーを「(EO+環)含有光重合性モノマー」ということがある。)。紫外線硬化させた後の本組成物が酸化劣化し難くなり、耐久性を向上させることができるなどの利点があるからである。
【0032】
上記EO含有光重合性モノマーにおける、エチレンオキシド単位の割合としては、好ましくは5重量%〜90重量%の範囲内、より好ましくは50重量%〜90重量%の範囲内が良好である。
【0033】
また、上記(EO+環)含有光重合性モノマーにおける、エチレンオキシド単位の割合としては、好ましくは5重量%〜90重量%の範囲内、より好ましくは30重量%〜80重量%の範囲内にあると良い。一方、環状不飽和構造を含む単位の割合としては、好ましくは3重量%〜90重量%の範囲内、より好ましくは5重量%〜50重量%の範囲内にあると良い。
【0034】
この際、上記(EO+環)含有光重合性モノマーにおける、(環状不飽和構造を含む単位)/(エチレンオキシド単位)の重量比は、好ましくは0.5〜10の範囲内、より好ましくは1〜5の範囲内にあると良い。
【0035】
なお、上記モノマー中におけるエチレンオキシド単位などの単位の割合は、例えば、NMR(核磁気共鳴装置)などを用いて測定することができる。この点については、後述するモノマー、オリゴマーについても同様である。
【0036】
また、上記特定の光重合性モノマーは、アクリロイル基、メタクリロイル基、アリル基、ビニル基、チオール基、ビニルエーテル基、エポキシ基、グリシジルエーテル基、その他分子内二重結合を有する基などの官能基を1個または2個以上有していると良い。これら官能基は、主鎖または側鎖の何れか一方に含まれていても良いし、あるいは、主鎖および側鎖の両方に含まれていても良い。
【0037】
また、上記特定の光重合性モノマーは、上記官能基を1個有する単官能性モノマーを1種または2種以上含んでいても良いし、上記官能基を2個以上有する多官能性モノマーを1種または2種以上含んでいても良い。あるいは、1種または2種以上の単官能性モノマーと1種または2種以上の多官能性モノマーとが混合されていても良い。
【0038】
上記特定の光重合性モノマーとしては、具体的には、例えば、トリメチロールプロパンエチレンオキシド変性トリアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、2エチルヘキシルカルビトールアクリレート、ポリエチレングリコールモノエチルエーテルメタクリレート、エトキシ化シクロヘキサンジメタクリレート、エトキシ化2−メチル−1,3−プロパンジオールジアクリレート、エトキシ化ポリプロピレングリコールジメタクリレート、エトキシ化グリセリントリアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレートなどのEO含有光重合性モノマーや、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、パラクミルフェノキシエチレングリコールアクリレート、パラクミルフェノールエチレンオキシド変性アクリレート、ビスフェノールAエチレンオキシド変性ジアクリレート、プロポキシエトキシビスフェノールAジアクリレート、9,9−ビス(3−フェニル−4−アクリロイルポリオキシエトキシ)フルオレン、エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコールアクリレートなどの(EO+環)含有光重合性モノマーなどを例示することができる。これらは1種または2種以上混合されていても良い。
【0039】
本組成物において、イオン導電剤は、特に限定されることなく、通常使用され得るものであれば、何れのものでも使用することができる。
【0040】
イオン導電剤としては、具体的には、例えば、化1で表される4級アンモニウム過塩素酸塩(但し、化1中、R、R、R、Rは、炭素数1〜18のアルキル基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、フェニル基、キシリル基などを示す)、化2で表されるホウ酸塩(但し、化2中、R、R、R、Rは、炭素数1〜18のアルキル基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、フェニル基、キシリル基などを示し、MN+は、アルカリ金属イオンもしくはアルカリ土類金属イオンであり、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオンなどを示す)などを例示することができる。これらは1種または2種以上混合されていても良い。
【0041】
(化1)

【0042】
(化2)

【0043】
本組成物において、光開始剤は、特に限定されることなく、通常使用され得るものであれば、何れのものでも使用することができる。
【0044】
光開始剤としては、具体的には、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエ−テル、ベンゾインエチルエ−テル、2−メチルベンゾイン、ベンジル、ベンジルジメチルケタ−ル、ジフェニルスルフィド、テトラメチルチウラムモノサルファイド、ジアセチル、エオシン、チオニン、ミヒラ−ケトン、アントラセン、アントラキノン、アセトフェノン、α−ヒドロキシイソブチルフェノン、p−イソプロピルαヒドロキシイソブチルフェノン、α・α´ジクロル−4−フェノキシアセトフェノン、1−ヒドロキシ−1−シクロヘキシルアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、メチルベンゾイルフォルメイト、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]・2・モルフォリノ−プロペン、チオキサントン、ベンゾフェノン、2,2−ジメトキシ−1、2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、ベンゾフェノン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モンフォリノプロパノン1、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン1、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニル−フォスフィンオキサイド、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1オン、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(ピル−イル)チタニウム)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ビスアシルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、(η5 −2,4−シクロペンタジエン−1−イル)[(1,2,3,4,5,6−η)−(1−メチルエチル)ベンゼン]−アイアン(1+)−ヘキサフルオロフォスフェイト(1−)などを例示することができる。これらは1種または2種以上混合されていても良い。
【0045】
本組成物は、上記必須成分以外に、本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じて他の任意成分を含有していても良い。
【0046】
他の任意成分としては、紫外線による硬化時間を短くでき、生産性の向上に寄与するなどの観点から、光重合性オリゴマーを好適なものとして例示することができる。
【0047】
上記光重合性オリゴマーとしては、具体的には、例えば、その分子構造中に、エチレンオキシド単位、炭素数3〜20のアルキレンオキシド単位、スチレンオキシド単位、ビスフェノールA単位、イソシアヌル酸単位、ノニルフェノキシ単位、トリメチロールプロパン単位、パラクミルフェノール単位などの単位を1種または2種以上有するものなどを例示することができる。これら単位は、主鎖または側鎖の何れか一方に含まれていても良いし、あるいは、主鎖および側鎖の両方に含まれていても良い。また、上記光重合性オリゴマーは1種または2種以上混合されていても良い。
【0048】
上記光重合性オリゴマーとしては、その分子構造中にエチレンオキシド単位を少なくとも有するものを好適に用いることができる。エチレンオキシド単位を有しておれば、上記EO含有光重合性モノマー等とイオン導電剤との相溶性を損ない難いからである。
【0049】
この場合、上記光重合性オリゴマーにおける、エチレンオキシド単位の割合としては、好ましくは5重量%〜90重量%の範囲内、より好ましくは50重量%〜90重量%の範囲内にあると良い。
【0050】
また、上記光重合性オリゴマーは、アクリロイル基、メタクリロイル基、アリル基、ビニル基、チオール基、ビニルエーテル基、エポキシ基、グリシジルエーテル基、その他分子内二重結合を有する基などの官能基を1個または2個以上有していると良い。これら官能基は、主鎖または側鎖の何れか一方に含まれていても良いし、あるいは、主鎖および側鎖の両方に含まれていても良い。
【0051】
また、上記光重合性オリゴマーは、上記官能基を1個有する単官能性オリゴマーを1種または2種以上含んでいても良いし、上記官能基を2個以上有する多官能性オリゴマーを1種または2種以上含んでいても良い。あるいは、1種または2種以上の単官能性オリゴマーと1種または2種以上の多官能性オリゴマーとが混合されていても良い。
【0052】
上記光重合性オリゴマーとしては、より具体的には、例えば、ポリエチレンポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレートなどエチレンオキシド単位を有するもの、カーボネートアクリルオリゴマー、ポリテトラメチレングリコールジアクリレート、ポリカプロラクトンジアクリレート、ポリエステルアクリレートなどエチレンオキシド単位を有しないものなどを例示することができる。これらは1種または2種以上混合されていても良い。
【0053】
また、他の任意成分としては、分子構造中に、上述した環状不飽和構造を含む単位を少なくとも有する光重合性モノマー(以下、「環含有光重合性モノマー」という。)を好適なものとして例示することができる。上記(EO+環)含有光重合性モノマーを用いた場合と同様に、紫外線硬化させた後の本組成物が酸化劣化し難くなり、耐久性を向上させることができるなどの利点があるからである。
【0054】
上記環含有光重合性モノマーにおける、環状不飽和構造を含む単位は、主鎖または側鎖の何れか一方に含まれていても良いし、あるいは、主鎖および側鎖の両方に含まれていても良い。
【0055】
また、上記環含有光重合性モノマーは、環状不飽和構造を含む単位以外に、他の単位を1種または2種以上有していても良い。これら他の単位についても、主鎖または側鎖の何れか一方に含まれていても良いし、あるいは、主鎖および側鎖の両方に含まれていても良い。
【0056】
上記他の単位としては、例えば、エチレンオキシド単位、炭素数3〜20のアルキレンオキシド単位、トリメチロールプロパン単位、ペンタエリスリトール単位、エチルヘキシルカルビトール単位、グリセリン単位などを例示することができる。これらは1種または2種以上有していても良い。なお、上記環含有光重合性モノマーが、他の単位としてエチレンオキシド単位を有している場合には、上記(EO+環)含有光重合性モノマーということになる。
【0057】
上記環含有光重合性モノマーにおける、環状不飽和構造を含む単位の割合としては、好ましくは3重量%〜90重量%の範囲内、より好ましくは5重量%〜70重量%の範囲内にあると良い。
【0058】
また、上記環含有光重合性モノマーは、アクリロイル基、メタクリロイル基、アリル基、ビニル基、チオール基、ビニルエーテル基、エポキシ基、グリシジルエーテル基、その他分子内二重結合を有する基などの官能基を1個または2個以上有していると良い。これら官能基は、主鎖または側鎖の何れか一方に含まれていても良いし、あるいは、主鎖および側鎖の両方に含まれていても良い。
【0059】
また、上記環含有光重合性モノマーは、上記官能基を1個有する単官能性モノマーを1種または2種以上含んでいても良いし、上記官能基を2個以上有する多官能性モノマーを1種または2種以上含んでいても良い。あるいは、1種または2種以上の単官能性モノマーと1種または2種以上の多官能性モノマーとが混合されていても良い。
【0060】
上記環含有光重合性モノマーとしては、具体的には、例えば、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、ベンジルメタクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ネオペンチルグリコールアクリル酸安息香酸エステルなどを例示することができる。これらは1種または2種以上混合されていても良い。
【0061】
また、他の任意成分としては、例えば、分子構造中に、炭素数3〜20のアルキレンオキシド単位、スチレンオキシド単位、トリメチロールプロパン単位、ビスフェノールA単位、パラクミルフェノール単位、ノニルフェノキシ単位、イソシアヌル酸単位など、エチレンオキシド単位を除いた単位を少なくとも1種または2種以上有する光重合性モノマー(以下、「EO非含有光重合性モノマー」という。)を例示することができる。
【0062】
上記EO非含有光重合性モノマーにおける、上記単位は、主鎖または側鎖の何れか一方に含まれていても良いし、あるいは、主鎖または側鎖の両方に含まれていても良い。
【0063】
また、上記EO非含有光重合性モノマーは、アクリロイル基、メタクリロイル基、アリル基、ビニル基、チオール基、ビニルエーテル基、エポキシ基、グリシジルエーテル基、その他分子内二重結合を有する基などの官能基を1個または2個以上有していると良い。これら官能基は、主鎖または側鎖の何れか一方に含まれていても良いし、あるいは、主鎖および側鎖の両方に含まれていても良い。
【0064】
また、上記EO非含有光重合性モノマーは、上記官能基を1個有する単官能性モノマーを1種または2種以上含んでいても良いし、上記官能基を2個以上有する多官能性モノマーを1種または2種以上含んでいても良い。あるいは、1種または2種以上の単官能性モノマーと1種または2種以上の多官能性モノマーとが混合されていても良い。
【0065】
EO非含有光重合性モノマーとしては、具体的には、例えば、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリテトラメチレングリコール(PTMG)ジアクリレート、1,6ヘキサンジオールジアクリレート、イソボニル、イソステアリルアクリレート、トリシクロデカン3メタノールジアクリレート、プロポキシ化ビスフェノールAジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、2−メチル−1,8−オクタンジオールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,10−デカンジオールジアクリレート、ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピルメタクリレート、3メチル−1,7−オクタンジオールジアクリレート、カプロラクトン変性1,6ヘキサンジオールジメタクリレート、グリセリンジメタクリレート、ブタンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレートなどを例示することができる。これらは1種または2種以上混合されていても良い。
【0066】
また、本組成物は、他の任意成分として、光安定剤、粘度調整剤、老化防止剤、加工助剤、滑剤、難燃剤、可塑剤、発泡剤、充填剤、架橋剤、架橋助剤、分散剤、消泡剤、顔料などの各種の添加剤を1種または2種以上含有していても良い。
【0067】
ここで、本組成物は、希釈溶剤としてVOCを含有していなくても良いし、特定量含有していても良い。
【0068】
本組成物は、溶剤を使用しなくても、低粘度であり、EO含有光重合性モノマーとイオン導電剤との相溶性に優れ、ブルームの発生を抑制しつつ、十分な導電性を付与できるなどの上述した作用効果を奏することが可能である。
【0069】
溶剤としてVOCを含有させる場合、組成物仕込み時点におけるVOCの当該組成物全体に占める含有量としては、具体的には、例えば、好ましい上限値として、50重量%以下、25重量%以下、10重量%以下などを例示することができる。
【0070】
また、本組成物において、イオン導電剤の割合は、本組成物中に含まれる、モノマー成分100重量部またはモノマーおよびオリゴマー成分100重量部に対し、その好ましい下限値として、具体的には、例えば、0.01重量部、0.1重量部、1重量部などを例示することができる。これら好ましい下限値と組み合わせ可能な好ましい上限値として、具体的には、例えば、100重量部、50重量部、10重量部などを例示することができる。
【0071】
また、光開始剤の割合は、本組成物中に含まれる、モノマー成分100重量部またはモノマーおよびオリゴマー成分100重量部に対し、その好ましい下限値として、具体的には、例えば、0.01重量部、0.1重量部、1重量部などを例示することができる。これら好ましい下限値と組み合わせ可能な好ましい上限値として、具体的には、例えば、100重量部、50重量部、10重量部などを例示することができる。
【0072】
また、任意成分としてオリゴマーを用いる場合、その割合は、本発明の目的を損なわない範囲内で種々調整することができる。一般的には、オリゴマーの割合が過度に多くなり過ぎると、組成物中におけるポリマー分が増加し、これに起因する増粘により、塗工性、加工性などが悪化する傾向が見られる。したがって、これらの点に留意すると良い。
【0073】
オリゴマーの割合としては、本組成物中に含まれる、モノマーおよびオリゴマー成分100重量%中、その好ましい上限値として、具体的には、例えば、90重量%、50重量%、25重量%などを例示できる。
【0074】
また、EO含有光重合性モノマー以外に、任意成分として上記他のモノマーを用いる場合、その割合は、例えば、付与したい耐久性の程度、本組成物を適用するロールの種類などを考慮して種々調整することができる。
【0075】
他のモノマーの割合としては、本組成物中に含まれる、モノマー成分100重量%中、その好ましい上限値として、具体的には、例えば、50重量%、30重量%、10重量%などを例示できる。
【0076】
2.本組成物の製造方法
上述した本組成物の製造方法としては、例えば、必須成分である特定の光重合性モノマー、イオン導電剤および光開始剤と、必要に応じて含有させる任意成分とを、所望の配合となるように秤量し、これらを攪拌機などの混合手段により混合する方法などを例示することができる。なお、混合時に加熱したり、撹拌後に脱泡したりするなどしても良い。
【0077】
3.本組成物を用いた導電性ロールの構成
本実施形態に係る導電性ロール(以下、「本導電性ロール」という。)は、導電性シャフトの外周に、1層または2層以上の導電性層が積層されてなる。
【0078】
本導電性ロールが1層の導電性層を有する場合、この層が、紫外線により本組成物を硬化させて形成されていることになる。この場合には、導電性ロールを小径化することができるので、これを組み込む画像形成装置を小型化することができるなどの利点がある。
【0079】
一方、本導電性ロールが2層以上の導電性層を有する場合、本組成物による導電性層は、何れの層に配置されていても良い。外層に配置されていても良いし、内層のうちの何れか1層または2層以上に配置されていても良い。
【0080】
本導電性ロールとしては、好ましくは、少なくとも外層の導電性層が、本組成物により形成されていると良い。
【0081】
上記本組成物による導電性層の厚みは、積層構造、本ロールを組み込む画像形成装置内部の設置スペース、要求される導電性の大きさ、ロール製品の硬さ、ロール回転速度などを考慮して適宜設定することができる。
【0082】
本導電性ロールが1層の導電性層を有する場合、本組成物による導電性層の厚みとしては、好ましい下限値として、具体的には、例えば、0.001、0.01、0.1、1μmなどを例示することができる。一方、これら好ましい下限値と組み合わせ可能な好ましい上限値として、具体的には、例えば、0.01、0.1、1、10mmなどを例示することができる。
【0083】
また、本導電性ロールが2層以上の導電性層を有する場合であって、外層の導電性層が本組成物により形成されているときには、本組成物による導電性層の厚みとしては、好ましい下限値として、具体的には、例えば、0.001、0.01、0.1、1μmなどを例示することができる。一方、これら好ましい下限値と組み合わせ可能な好ましい上限値として、具体的には、例えば、0.01、0.1、1、10mmなどを例示することができる。
【0084】
また、本導電性ロールが2層以上の導電性層を有する場合であって、内層の導電性層の何れかが本組成物により形成されているときには、本組成物による導電性層の厚みとしては、好ましい下限値として、具体的には、例えば、0.001、0.01、0.1、1μmなどを例示することができる。一方、これら好ましい下限値と組み合わせ可能な好ましい上限値として、具体的には、例えば、0.01、0.1、1、10mmなどを例示することができる。
【0085】
なお、本組成物による導電性層以外の他の導電性層としては、例えば、ベース層、電気抵抗調整層などの中間層などを例示することができる。他の導電性層を形成する材料としては、具体的には、例えば、エピクロロヒドリンゴム、NBR、シリコーンゴム、EPDM、アミド系樹脂、セルロース系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、フッ素系樹脂などに電子導電剤やイオン導電剤などの導電性付与剤、さらに、必要に応じて、発泡剤、架橋剤、表面調整剤、可塑剤などを1種または2種以上添加した組成物などを例示することができる。これらは1種または2種以上混合されていても良い。
【0086】
また、シャフト材料としては、導電性を有するものであれば、何れのものでも使用し得る。一般には、鉄、ステンレス、アルミニウムなどの金属製の中実体、中空体からなる芯金などを例示することができる。さらには、これらにニッケルメッキなどのメッキ処理が施されていても良い。
【0087】
以上の本導電性ロールは、帯電ロール、転写ロール、現像ロール、トナー供給ロールなどとして適用することができる。
【0088】
4.本導電性ロールの製造方法
本導電性ロールの製造方法は、一般に、導電性シャフトの外周に形成される導電性層の積層数により異なる。例えば、導電性シャフトの外周にベース層を形成し、その外周に本組成物による導電性層を形成する場合には、次のような方法を例示することができる。
【0089】
すなわち、先ず、所望の配合割合に調製したベース層材料を、任意でプライマー処理を施した導電性シャフトが配置されたロール成形用金型に注入する。次いで、注入したベース層材料を加熱・硬化させ、導電性シャフトの外周にベース層を形成する。
【0090】
次いで、このベース層付き導電性シャフトを脱型した後、必要に応じてベース層表面を研磨する。次いで、このベース層の表面上に、所望の配合割合に調製した本組成物をロールコート機などにより塗工する。次いで、このロールを回転させながら、所定光量の紫外線を所定時間照射し、本組成物を硬化させれば、2層構造の導電性ロールを得ることができる。
【0091】
また、例えば、導電性シャフトの外周に本組成物による導電性層を1層形成する場合には、導電性シャフトの表面上に、所望の配合割合に調製した本組成物をロールコート機などにより塗工する。次いで、このロールを回転させながら、所定光量の紫外線を所定時間照射し、本組成物を硬化させれば、1層構造の導電性ロールを得ることができる。
【0092】
なお、上記以外の積層数とする場合には、上記製造方法に準じて、所望の材料からなる導電性層を導電性シャフトの外周に順次積層していけば良い。
【実施例】
【0093】
以下、実施例を用いて本発明を詳細に説明する。
【0094】
1.相溶性試験
初めに、EO含有光重合性モノマーおよびEO非含有光重合性モノマーと、イオン導電剤との相溶性を確認する試験を行った。
【0095】
すなわち、EO含有光重合性モノマーまたはEO非含有光重合性モノマー100gに対し、イオン導電剤として、上記化1に示される4級アンモニウム過塩素酸塩および上記化2に示されるホウ酸塩より1種を5g配合し、60℃で暖めながら5分間溶解させ、24時間後の沈殿物の有無を目視にて確認した。また、合わせて25℃における粘度の測定も行った。なお、粘度の測定には、B型粘度計((株)トキメック製、「VISCOMETER DVL−B2」)を用いた。
【0096】
表1に、用いたEO含有光重合性モノマーまたはEO非含有光重合性モノマーの種類、沈澱物の有無および粘度の測定結果について示す。
【0097】
なお、EO含有光重合性モノマーには、トリメチロールプロパンエチレンオキシド変性トリアクリレート(東亞合成(株)製、「アロニックスM350」)、ポリエチレングリコールジアクリレート(新中村化学工業(株)製、「NKエステルA400」)、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート(東亞合成(株)製、「アロニックスM102」)、メトキシポリエチレングリコールアクリレート(新中村化学工業(株)製、「NKエステルAM90G」)を用いた。
【0098】
一方、EO非含有光重合性モノマーには、ポリプロピレングリコールジアクリレート(新中村化学工業(株)製、「NKエステルAPG200」)、ポリテトラメチレングリコールジアクリレート(新中村化学工業(株)製、「NKエステルA−PTMG−65」)、1,6ヘキサンジオールジアクリレート(新中村化学工業(株)製、「NKエステルA−HD」)、イソボニル(新中村化学工業(株)製、「NKエステルA−IB」)を用いた。
【0099】
また、表1において「○」は、光重合性モノマーとイオン導電剤とが十分に相溶したことを示している。一方、「×」は、イオン導電剤の沈澱物が確認されたことを示している。
【0100】
【表1】

【0101】
表1によれば、EO非含有光重合性モノマーを用いた場合、両イオン導電剤とも沈澱物が確認され、EO非含有光重合性モノマーとイオン導電剤との相溶性が悪いことが分かる。一方、EO含有光重合性モノマーを用いた場合、両イオン導電剤とも沈澱物が全く確認されず、EO含有光重合性モノマーとイオン導電剤とは相溶性に優れることが分かる。
【0102】
これは、EO含有光重合性モノマーは、その分子構造中にエチレンオキサイド単位を含んでいるので、イオン導電剤を十分に溶解、相溶させることができたためであると推測される。
【0103】
2.実施例および比較例に係る紫外線硬化型導電性組成物の作製および評価
次に、後述する表2、表3に示す配合割合(単位は重量部)となるように、各種材料を秤量し、これらを攪拌機により撹拌、混合した後、室温にて24時間放置することにより、実施例1〜18および比較例1〜6に係る紫外線硬化型導電性組成物を作製した。
【0104】
次に、得られた各組成物の評価を以下のようにして行った。すなわち、得られた各組成物の25℃における粘度を、上記B型粘度計にて測定した。
【0105】
また、得られた各組成物を、バーコート法によりガラス板上にコーティングし、紫外線を照射し、厚さ約100μm、縦100mm、横100mmの成形体を作製した。この際、紫外線照射機(アイグラフィック社製「UB031−2A/BM」)の紫外線ランプ(水銀ランプ形式)とコーティングした各組成物との距離は200mmとし、紫外線は30秒間照射(積算光量120mW/cm)した。
【0106】
その後、得られた各成形体を、湿熱環境下(40℃、相対湿度95%)中に7日間放置し、ブルームの有無を目視にて確認した。
【0107】
また、10mm角の銀ペーストによる電極を、上記各成形体表面に形成し、100V印加時の体積抵抗率を測定した。
【0108】
表2に、実施例1〜8に係る組成物の配合割合および評価結果を、表3に、実施例9〜18に係る組成物の配合割合および評価結果を、表4に、比較例1〜6に係る組成物の配合割合および評価結果を示す。
【0109】
なお、表2〜表4の材料のうち、表1の材料と重複するものは、上記した製造元、商品名のものを用いている。その他の材料については、ポリエチレングリコールジメタクリレート(新中村化学工業(株)製、「NKエステル4G」、)エチレンオキシド/プロピレンオキシド系オリゴマー(新中村化学工業(株)製、「NKオリゴUA−2235PE」)、ポリプロピレングリコール系オリゴマー(新中村化学工業(株)製、「NKオリゴUA4200」)、トリプロピレングリコールジアクリレート(新中村化学工業(株)製、「NKエステルAPG−200」)、ノニルフェノールプロピレンオキシド変性(n≒2.5)アクリレート(東亞合成(株)製、「アロニックスM−117」)、フタル酸モノヒドロキシエチルアクリレート(東亞合成(株)製、「アロニックスM−5400」)、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート(東亞合成(株)製、「アロニックスM−5700」)、パラクミルフェノールエチレンオキシド変性(n≒1)アクリレート(東亞合成(株)製、「アロニックスM−110」)、ビスフェノールA エチレンオキシド変性(m+n≒4)ジアクリレート(新中村化学工業(株)製、「NKエステルA−BPE−4」)、ビスフェノールA エチレンオキシド変性(m+n≒20)ジアクリレート(新中村化学工業(株)製、「NKエステルA−BPE−20」)、光開始剤(チバスペシャリティケミカルズ(株)製、「ダロキュアー1173」)を用いた。
【0110】
【表2】

【0111】
【表3】

【0112】
【表4】

【0113】
表2〜表4によれば、比較例2〜6に係る組成物は、硬化後にブルームが発生し、電気抵抗が高いことが確認された。一方、実施例1〜8に係る組成物は、硬化後にブルームが発生せず、比較例2〜5に係る組成物と比較して、電気抵抗が小さく、導電性に優れていることが確認された。
【0114】
また、実施例1〜4に係る組成物は、組成物中に希釈溶剤としてメチルエチルケトンを全く含有させていないにもかかわらず、比較的粘度が低いことが確認された。これは、光重合性モノマーを用いているためである。
【0115】
また、実施例5および7に係る組成物は、EO含有光重合性モノマー以外に、光重合性オリゴマーを用いている。そのため、実施例1〜4に係る組成物と比較して、比較的粘度が高くなっているが、許容範囲内であることが確認された。
【0116】
また、実施例6および8に係る組成物は、実施例5および7に係る組成物と同様に、EO含有光重合性モノマー以外に、光重合性オリゴマーを用いており、さらに、光重合性オリゴマーを用いたことによる粘度の増加を抑制するために、組成物中に希釈溶剤としてメチルエチルケトンを用いている。
【0117】
しかしながら、組成物仕込み時点におけるメチルエチルケトンの当該組成物全体に占める含有量は、ともに16.1重量%と、従来の紫外線硬化型導電性樹脂組成物に比較して大幅に低い含有量に留まっており、組成物の塗布性や加工性などに支障のない粘度を確保することができていることが確認された。
【0118】
また、EO含有光重合性モノマーを含まず、光重合性オリゴマーを含んでいる比較例1に係る組成物は、メチルエチルケトン、すなわち、揮発性有機化合物の含有量を69wt%と非常に高い割合で配合しなければ、粘度の増加を抑制することができなかった。したがって、この比較例1に係る組成物では、低VOC化し難いことが確認された。
【0119】
また、実施例9および実施例10に係る組成物は、分子構造中にエチレンオキシド単位と環状不飽和構造を含む単位とを少なくとも有する(EO+環)含有光重合性モノマーを用いている。また、実施例11から実施例18に係る組成物は、EO含有光重合性モノマーと、分子構造中に環状不飽和構造を含む単位を少なくとも有する環含有光重合性モノマーとを併用している。これら実施例9〜18に係る組成物についても、粘度、ブルームの有無、体積抵抗率、低VOC化に関して、実施例1〜8に係る組成物と同等の特性が得られた。
【0120】
以上の結果より、本実施例に係る紫外線硬化型導電性組成物は、従来より低VOC化、さらには、無溶剤化を図ることができる。また、塗工性、加工性などに優れる。また、紫外線硬化後のブルームの発生がなく、長期安定性に優れる。また、十分な導電性を有している。
【0121】
3.導電性ロールの作製および評価<1>
次に、上記作製した実施例1、3、4および比較例2、4、6に係る組成物を用いて、帯電ロール、転写ロール、現像ロールを作製した。
【0122】
(帯電ロールA1)
直径10mmのステンレス製(SUS304)の芯金を組み込んだロール成形用金型に、ベース層材料として、導電性カーボンを分散したシリコーンゴムを注入した後、150℃で45分間オーブンキュアーを行い、芯金の外周にベース層(厚み2mm)を形成した。
【0123】
次いで、このベース層付き芯金を脱型した後、このベース層の表面上に、コロナ放電(0.3kW20秒間)による表面処理を施した後、実施例1に係る組成物をロールコート法により塗工した。次いで、このロールを100rpmで回転させながら、上述した紫外線照射機により紫外線を照射し、実施例1に係る組成物を硬化させて被膜状の導電性層(厚み3μm)を形成することにより、2層構造の帯電ロールA1を得た。
【0124】
この際、紫外線照射機の紫外線ランプ(水銀ランプ形式)とコーティングした実施例1に係る組成物との距離は200mmとし、紫外線は30秒間照射(積算光量120mW/cm)した。
【0125】
(帯電ロールA2)
帯電ロールA1の表面に、シリコンアクリルエマルション100重量部と導電性カーボンブラックを配合した組成物を、さらに塗工した。その後、常温にて30分間乾燥し、100℃で30分間オーブンキュアーを行い、導電性層(厚み10μm)を形成することにより、3層構造の帯電ロールA2を得た。
【0126】
(帯電ロールB1)
帯電ロールA1の作製手順において、実施例1に係る組成物に代えて、比較例2に係る組成物を用いた以外は、同様にして、比較例としての帯電ロールB1を得た。
【0127】
(帯電ロールB2)
帯電ロールA2の作製手順において、帯電ロールA1に代えて、帯電ロールB1を用いた以外は、同様にして、比較例としての帯電ロールB2を得た。
【0128】
(転写ロールA3)
直径10mmのステンレス製(SUS304)の芯金を組み込んだロール成形用金型に、ベース層材料として、導電性カーボンを分散したシリコーンゴムを注入した後、150℃で45分間オーブンキュアーを行い、芯金の外周にベース層(厚み3mm)を形成した。
【0129】
次いで、このベース層付き芯金を脱型した後、このベース層の表面上に、コロナ放電(0.3kW20秒間)表面処理を施した後、実施例4に係る組成物をロールコート法により塗工した。次いで、このロールを100rpmで回転させながら、上述した紫外線照射機により紫外線を照射し、実施例4に係る組成物を硬化させて被膜状の導電性層(厚み5μm)を形成することにより、2層構造の転写ロールA3を得た。
【0130】
この際、紫外線照射機の紫外線ランプ(水銀ランプ形式)とコーティングした実施例4に係る組成物との距離は200mmとし、紫外線は30秒間照射(積算光量120mW/cm)した。
【0131】
(転写ロールA4)
転写ロールA3の表面に、シリコンアクリルエマルション100重量部と導電性カーボンブラックを配合した組成物を、さらに塗工した後、常温にて30分間乾燥し、100℃で30分間オーブンキュアーを行い、導電性層(厚み10μm)を形成することにより、3層構造の転写ロールA4を得た。
【0132】
(転写ロールB3)
転写ロールA3の作製手順において、実施例4に係る組成物に代えて、比較例6に係る組成物を用いた以外は、同様にして、比較例としての転写ロールB3を得た。
【0133】
(転写ロールB4)
転写ロールA4の作製手順において、転写ロールA3に代えて、転写ロールB3を用いた以外は、同様にして、比較例としての帯電ロールB4を得た。
【0134】
(現像ロールA5)
直径10mmのステンレス製(SUS304)の芯金を組み込んだロール成形用金型に、ベース層材料として、導電性カーボンを分散したシリコーンゴムを注入した後、150℃で45分間オーブンキュアーを行い、芯金の外周にベース層(厚み2mm)を形成した。
【0135】
次いで、このベース層付き芯金を脱型した後、このベース層の表面上に、コロナ放電(0.3kW20秒間)による表面処理を施した後、実施例3に係る組成物をロールコート法により塗工した。次いで、このロールを100rpmで回転させながら、上述した紫外線照射機により紫外線を照射し、実施例3に係る組成物を硬化させて被膜状の導電性層(厚み5μm)を形成することにより、2層構造の現像ロールA5を得た。
【0136】
この際、紫外線照射機の紫外線ランプ(水銀ランプ形式)とコーティングした実施例3に係る組成物との距離は200mmとし、紫外線は30秒間照射(積算光量120mW/cm)した。
【0137】
(現像ロールA6)
現像ロールA5の表面に、シリコンアクリルエマルション100重量部と導電性カーボンブラックを配合した組成物を、さらに塗工した後、常温にて30分間乾燥し、100℃で30分間オーブンキュアーを行い、導電性層(厚み10μm)を形成することにより、3層構造の現像ロールA6を得た。
【0138】
(現像ロールB5)
現像ロールA5の作製手順において、実施例3に係る組成物に代えて、比較例4に係る組成物を用いた以外は、同様にして、比較例としての現像ロールB5を得た。
【0139】
(現像ロールB6)
帯電ロールA6の作製手順において、現像ロールA5に代えて、現像ロールB5を用いた以外は、同様にして、比較例としての現像ロールB6を得た。
【0140】
なお、上記帯電ロール、転写ロール、現像ロールの作製で用いた材料の製造元および商品名は、シリコーンゴム(信越化学工業(株)製、「KE1350AB」)、シリコーンアクリルエマルション(東亞合成(株)製、「サイマックUS224E」)、導電性カーボンブラック(デグサジャパン(株)製、「スペシャルブラック4」)である。
【0141】
次に、得られた各ロールを以下のようにして評価した。先ず、湿熱環境下(40℃、相対湿度95%)中に7日間放置した後、ブルームの有無を目視にて確認した。
【0142】
また、実施例および比較例に係る組成物を塗工した際、塗布ムラが生じるか否かを目視にて確認した。
【0143】
また、各ロールの芯金の両端に700gの荷重をかけ、100V(DC)を印加したときのロール抵抗を測定した。
【0144】
表5〜7に、各ロールの評価結果を示す。なお、表5〜7における「○」は、ブルームが発生しなかったこと、あるいは、塗布ムラが発生しなかったことを示している。一方、「×」は、ブルームが発生したこと、あるいは、塗布ムラが発生したことを示している。
【0145】
【表5】

【0146】
【表6】

【0147】
【表7】

【0148】
表5〜7によれば、比較例に係る帯電ロールB1およびB2、転写ロールB3およびB4、現像ロールB5およびB6は、ブルームが発生する、塗布ムラが発生する、ロール抵抗が高いことが確認された。
【0149】
これに対し、実施例に係る帯電ロールA1およびA2、転写ロールA3およびA4、現像ロールA5およびA6は、ブルーム、塗布ムラとも発生せず、ロール抵抗も比較例より小さいことが確認された。
【0150】
4.導電性ロールの作製および評価<2>
次に、上記作製した実施例に係る組成物の耐久性を調べるため、外層の導電性層が、上記実施例1〜18および比較例1〜6に係る組成物により形成されている帯電ロールを作製した。
【0151】
なお、導電性ロールとして帯電ロールを選択したのは、次の理由による。すなわち、帯電ロールの表面は、とりわけ、感光ドラムとの間で生じる微小放電により酸化劣化を受けやすい。そのため、ロール表面で導電性層の酸化劣化が進行し、ロールの耐久性が落ちて帯電性が低下すると、これが画像ムラ、スジに顕著に表れるからである。
【0152】
(帯電ロールa1〜a18)
直径6mmのステンレス製(SUS304)の芯金を組み込んだロール成形用金型に、ベース層材料を注入した後、150℃で45分間オーブンキュアーを行い、芯金の外周にベース層(厚み1.75mm)を形成した。
【0153】
次いで、このベース層付き芯金を脱型した後、このベース層の表面上に、コロナ放電(0.3kW20秒間)による表面処理を施した後、実施例1〜18に係る組成物をロールコート法により塗工した。次いで、このロールを100rpmで回転させながら、上述した紫外線照射機により紫外線を照射し、実施例1〜18に係る組成物を硬化させて被膜状の導電性層(厚み3μm)を形成することにより、2層構造の帯電ロールa1〜a18を得た。
【0154】
この際、ベース層材料は、ヒドリンゴム(ダイソー(株)製、「エピクロマーCG102」)100重量部と、ステアリン酸(花王(株)製、「ルナックS30」)1重量部と、酸化亜鉛2種(三井金属工業(株)製)5重量部と、ハイドロタルサイト(協和化学工業(株)製、「DHT−4A」)3重量部と、粉末イオウ(鶴見化学工業(株)製)1.5重量部と、ジベンゾチアゾールジスルフィド(大内新興化学工業(株)製、「ノクセラーDM」)1.5重量部と、テトラメチルチウラムモノスルフィド(大内新興化学工業(株)製、「ノクセラーTS」)0.5重量部と、トリメチルオクタデシルアンモニウムパークロレート1重量部とを、ニーダーにより混練することにより作製したものである。
【0155】
また、紫外線照射機の紫外線ランプ(水銀ランプ形式)とコーティングした実施例1に係る組成物との距離は200mmとし、紫外線は30秒間照射(積算光量120mW/cm)した。
【0156】
(帯電ロールb1〜b6)
実施例1〜6に係る組成物に代えて、比較例1〜6に係る組成物を用いた以外は同様にして、2層構造の帯電ロールb1〜b6を得た。
【0157】
次に、得られた各帯電ロールを以下のようにして評価した。先ず、初期画像出し評価として、各帯電ロールを、市販のカラーレーザープリンター(リコー(株)製、「CX3000」)に組み込み、15℃×10%RHの低温低湿環境下で、ハーフトーン画像の画像出しを行った。
【0158】
次いで、得られた各画像について、濃度ムラ、スジの有無を目視にて確認した。その結果、濃度ムラ、スジが発生したものを不合格(後述する表8ではバツ印しで示す)とし、濃度ムラ、スジが発生しなかったものを合格とし、合格したもののうち、比較的十分な濃度が出ていたものを合格(後述する表8で二重丸印しで示す)、濃度がやや薄めであったものを合格(後述する表8で一重丸印しで示す)
【0159】
次に、耐久後画像出し評価として、上記低温低湿環境下にて、画像濃度5%のチャートパターンの画像出しを、10000枚(A4サイズ、縦方向)行った後、上記初期画像出しと同様の画像出しを行い、同様に評価した。なお、上記初期画像出し評価で不合格であったものについては、本評価を行っていない。
【0160】
上記初期画像出し評価、耐久後画像出し評価の結果を表8に示す。
【0161】
【表8】

【0162】
表8によれば、実施例1〜18に係る組成物を用いた帯電ロールa1〜a18は、比較例2〜6に係る組成物を用いた帯電ロールb2〜b6に比較して、初期、長期ともに良好な画質が得られることが分かる。
【0163】
また、実施例の中でも、とりわけ、(EO+環)含有光重合性モノマーを含有する実施例9および実施例10に係る組成物を用いた帯電ロールa9、a10、EO含有光重合性モノマーと環含有光重合性モノマーとを併用した実施例11〜18に係る組成物を用いた帯電ロールa11〜a18は、長期使用時でも帯電性に優れ、耐久性に優れていることが分かる。
【0164】
このことから、(EO+環)含有光重合性モノマーを含有する組成物、あるいは、EO含有光重合性モノマーと環含有光重合性モノマーとを含有する組成物は、紫外線硬化させた後に酸化劣化し難く、耐久性に優れることが分かる。
【0165】
以上、本発明の実施形態、実施例について説明したが、本発明は上記実施形態、実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能なものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子構造中にエチレンオキシド単位を少なくとも有する光重合性モノマーと、イオン導電剤と、光開始剤とを含有することを特徴とする紫外線硬化型導電性組成物。
【請求項2】
光重合性オリゴマーをさらに含有することを特徴とする請求項1に記載の紫外線硬化型導電性組成物。
【請求項3】
前記光重合性モノマーは、前記分子構造中に環状不飽和構造を含む単位をさらに有することを特徴とする請求項1または2に記載の紫外線硬化型導電性組成物。
【請求項4】
分子構造中に環状不飽和構造を含む単位を少なくとも有する光重合性モノマーをさらに含有することを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の紫外線硬化型導電性組成物。
【請求項5】
組成物仕込み時点における揮発性有機化合物の当該組成物全体に占める含有量は、50重量%以下であることを特徴とする請求項1から4の何れかに記載の紫外線硬化型導電性組成物。
【請求項6】
請求項1から5の何れかに記載の紫外線硬化型導電性組成物を用いたことを特徴とする導電性ロール。

【公開番号】特開2006−274242(P2006−274242A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−43267(P2006−43267)
【出願日】平成18年2月21日(2006.2.21)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】