説明

細胞接着を抑制するメチマゾール誘導体及び互変異性環状チオン

【課題】細胞接着及び細胞接着に媒介される疾患を抑制及び予防に使用される新規な化合物及び方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る化合物及び医薬組成物は、治療薬又は予防薬として使用することができる。特に、メチマゾール誘導体及び互変異性環状チオンは、VCAM−1接着機構に媒介される白血球の接着(例えば、単球の内皮細胞への接着)及び移動を抑制する能力を有している。抗炎症性を活性化にするのに加えて、メチマゾール誘導体及び互変異性環状チオン並びにそれらの生理学的に許容される塩及び誘導体は、一般的に、VCAM−1とVCAM−1リガンド(例えば、VLA−4又はα4β7)との相互作用に基づいている病気、又は、前記相互作用を阻害することによって改善できる病気の治療(すなわち、治療及び予防)に適している。
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【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞接着及び細胞接着に媒介される疾患を抑制及び予防に使用される新規な化合物及び方法に関するものである。また、本発明は、本発明に係る化合物を含む医薬組成物、及び当該医薬組成物を使用して行う細胞接着及び細胞接着に起因する疾患の抑制及び予防方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
細胞接着は、互いに結合した細胞が特定の標的に向かって移動する又は細胞外マトリクス内に局在するプロセスのことである。つまり、細胞接着は、様々な生物学的現象の基礎を成す基本的機構の1つを構成する。例えば、細胞接着は、造血細胞の内皮細胞への接着、及びその後の前記造血細胞の血管から損傷部位への移動に関与している。細胞接着は、哺乳類における病的炎症及び免疫反応に関与する。
【0003】
VCAM−1及び他の内皮細胞表面受容体に媒介される接着は、多くの炎症反応に関連する。損傷又は他の炎症刺激部位では、活性化した血管内皮細胞が、白血球に対して接着性を有する分子を発現する。白血球が内皮細胞と接着する仕組みは、一つには、白血球上の細胞表面受容体が、対応する内皮細胞上の細胞表面分子を認識して結合することを含む。結合するとすぐに、白血球は血管壁を通り抜けて損傷部位に入り、感染症と闘う化学伝達物質を放出する。
【0004】
内皮細胞と白血球の接着機構によって本来健康な脳組織が破壊される中枢神経系障害の例としては、実験的自己免疫性脳脊髄炎(Experimental Autoimmune Encephalomyelitis:EAE)、多発性硬化症(Multiple Sclerosis:MS)、及び髄膜炎などの炎症性脳障害がある。これらの炎症性疾患の患者では、大量の白血球が血液脳関門(Blood Brain Barrier:BBB)を通り抜けて移動する。白血球は、広範囲の組織損傷を与え、神経伝導障害及び麻痺をもたらす、有毒な媒介物質を放出する。
【0005】
他の器官系では、接着機構によって組織損傷も起こり、白血球の移動及び活性化をもたらす。例えば、心筋虚血後における心臓組織の初期の損傷は、損傷組織に入った白血球によってさらに悪化し、さらなる損傷を引き起こすことが分かっている。接着機構に媒介される他の病気としては、例えば、ぜんそく、アルツハイマー病、アテローム性動脈硬化症、エイズによる認知症、糖尿病、炎症性大腸炎、多発性硬化症、関節リウマチ、組織移植、及び腫瘍転移がある。
【0006】
血液循環の流体力学環境における白血球の内皮細胞への接着は、病的炎症(例えば、アテローム性動脈硬化症(1)、炎症性大腸炎(2))の中心的な役割を果たす。白血球動員に関与することが知られている内皮細胞接着分子(Endothelial Cell Adhesion Molecule:ECAM)(例えば、VCAM−1、E−セレクチン、及びICAM−1)は、これらの白血球接着における役割によって、そのような環境で上方制御されること、及び病気の進行及び/又は組織損傷の一因となることが分かっている(3)。例えば、VCAM−1は、初期の沫細胞損傷の上にある大動脈内皮細胞上に局所的に存在し(1)、内皮細胞において大腸炎モデルで増加する(4)。そのため、病的炎症を治療するための有望な治療方法は、ECAM発現の抑制によって、白血球の内皮細胞への異常な接着を、減少させることである(5)。
【0007】
ECAM発現は、内皮細胞が存在するサイトカイン環境に影響される。実際、培養した内皮細胞を炎症性サイトカインであるTNF−αで4時間処理することによって、E−セレクチン、VCAM−1及びICAM−1の発現を誘導できる(6)。サイトカイン依存性のECAM誘導は、例えば、核因子kB(NF−kB)、活性化タンパク質−1(AP−1)、特異性タンパク質(SP−1)、インターフェロン調節因子−1(IRF−1)、及びGATAなどの転写因子の活動によって、遺伝子レベルで調節される。例えば、E−セレクチン・プロモータはNF−kBとの結合部位を有しており(7)、VCAM−1・プロモータはNF−kB、AP−1、SP−1、IRF−1、及びGATAとの結合部位を有しており(8〜11)、ICAM−1・プロモータはNF−kB及びAP−1との機能的結合部位を有している(12、13)。これらの転写因子(例えば、NF−kB)のいくつかは、刺激されていない内皮細胞内に不活性形態で存在している(14)。内皮細胞のサイトカイン処理は、これらの転写因子の活性を促進する(14)、及び、他の転写因子(例えば、IRF−1)の発現を誘発する(10)。活性化又は誘導された転写因子は、各プロモータの結合部位と結合し、遺伝子転写をもたらす。
【0008】
いくつかの最近の又は有力な病的炎症の治療は、少なくとも部分的には、転写因子の活動を調節することにより行う(15〜19)。実際、転写レベルでサイトカイン誘導性のECAM発現を阻止する化合物は、白血球の内皮細胞への接着を抑制すること(16〜18、20)と、動物モデルにおける炎症を軽減させることが分かっている(15、17)。メチマゾールは、自己免疫性グレーブス病又は原発性甲状腺機能亢進症の治療に、臨床的に広く使用される(21)。また、メチマゾールは、ヒトにおける乾癬と、ネズミの実験モデルにおける全身性狼瘡、自己免疫性眼瞼炎、自己免疫性ブドウ膜炎、甲状腺炎及び糖尿病との両方で、他のいくつかの形態の自己免疫疾患の治療に有効なことが分かっている(23〜26)。メチマゾールが、MHCのクラスI及びクラスII遺伝子発現の異常増加に対する転写阻害物質として作用すること(26〜29)、及び、自己免疫疾患の予防におけるクラス1・ノックアウトの作用を模倣することの証拠が蓄積された(30)。いくつかの観察結果は、メチマゾールはECAMの発現にも影響を及ぼし得、そのため潜在的な抗炎症化合物となり得ることを示唆している。特に、(a)メチマゾールで治療したグレーブス病患者は、血液中の溶解E−セレクチン及び溶解CAM−1のレベルが減少したこと(31)、及び、(b)メチマゾールが実験的大腸炎のラットモデルにおける結腸粘膜障害を軽減させることが報告されている(32)。抗炎症剤又としてより有効な、又はメチマゾールよりも免疫抑制性が高い誘導体化合物を特定しようという試みにより、フェニルメチマゾール(化合物10、C−10)、互変異性環状チオン(tautomeric cyclic thione)は、MHC遺伝子の発現の異常増加を抑制する上で50〜100倍強力であり、狼瘡(ループス)及び糖尿病の実験モデルにおいて、非常に効果的な薬物であるという観察が導かれた(26、28)。これらの観察結果は、メチマゾール、フェニルメチマゾール、又は他の互変異性環状チオンの誘導体が、炎症性サイトカイン(例えば、TNF−α)誘導性のECAM発現、及びその結果として起こる白血球の内皮細胞への接着を減少させることができるという仮説を精査する動機付けとなった。また、VCAM−1依存性細胞接着の阻害物質の必要性も残っている。そのような化合物は、VCAM−1が媒介する細胞接着に関連する様々な病気の治療、予防又は抑制に有用な薬物を提供するであろう。
【0009】
特定の種類のメチマゾール誘導体及び互変異性環状チオンが、非常に様々な原因の炎症性の症状に対して、望ましくない又は有害な一連の炎症を予防、軽減又は抑制する抗炎症薬として有効であるということが新たに見いだされた。それらは、例えば、関節炎、関節リウマチ、多発性関節炎、炎症性大腸炎(クローン病、潰瘍性大腸炎)、全身性エリテマトーデス、中枢神経系の炎症性疾患(例えば、多発性硬化症)、ぜんそく、又はアレルギー(例えば、遅延型であるIV型アレルギー)の治療に使用される。さらに、本発明に係る化合物は、発作防止又は発作続発防止のための心臓保護、並びに、循環器疾患、アテローム性動脈硬化症、心筋梗塞、心筋再梗塞、急性冠症候群、脳梗塞、再狭窄、糖尿病、臓器移植への損傷、免疫疾患、自己免疫疾患、悪性腫瘍の増殖又は天使、マラリア及び他の病気(予防、軽減又は治療のために、VCAM−1発現の異常増加及び/又は白血球の活動による影響を阻害すべきである病気)の治療に適している。好適な使用は、炎症性大腸炎、及び、I型又はII型糖尿病糖尿病の大血管又は微小血管合併症(例えば、心筋梗塞、心筋再梗塞又は腎症)の予防である。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、細胞接触及び細胞接触に媒介される病気を抑制及び予防するための、新規な化合物及び方法に関するものである。また、本発明は、細胞接触及び細胞接触に媒介される病気を抑制及び予防するための、医薬組成物及びその使用に関するものである。本発明に係る化合物及び医薬組成物は、治療薬又は予防薬として使用することができる。特に、メチマゾール誘導体及び互変異性環状チオンは、VCAM−1接着機構に媒介される白血球の接着(例えば、単球の内皮細胞への接着)及び移動を抑制する能力を有している。抗炎症性を活性化にするのに加えて、メチマゾール誘導体及び互変異性環状チオン並びにそれらの生理学的に許容される塩及び誘導体は、一般的に、VCAM−1とVCAM−1リガンド(例えば、VLA−4又はα4β7)との相互作用に基づいている病気、又は、前記相互作用を阻害することによって改善できる病気の治療(すなわち、治療及び予防)に適している。特に、メチマゾール誘導体及び互変異性環状チオンは、少なくとも部分的には、望ましくない量の白血球接着及び/又は白血球移動によって生じた、又はそれらに関連する病気の治療に適している。また、白血球の接着及び/又は移動を減少させた病気の予防、軽減又は治療に適している。
【0011】
また、本発明は、白血球の接着及び/又は移動を抑制するための、又はVCAM−1発現(例えば、TNF−αなどのサイトカインによって誘導されたVCAM−1)の異常増加を抑制するための、メチマゾール誘導体及び互変異性環状チオン、及び/又はその薬学的に許容される塩、及び/又は誘導体に関するものである。さらに、本発明は、白血球接着及び/又は白血球移動が望ましくない程度を示す病気を治療するための、又はVCAM−1依存性接着プロセスが一因となる病気を治療するための医薬品を作成するための、メチマゾール誘導体及び互変異性環状チオン及び/又はその薬学的に許容される塩及び/又は誘導体の使用に関するものである。また、本発明は、上記した種類の病気の治療に、メチマゾール誘導体及び互変異性環状チオン及び/又はその薬学的に許容される塩及び/又は誘導体を使用することに関するものである。
【0012】
ある実施形態では、本発明は、病的炎症中の白血球の内皮細胞への異常な接着を、内皮細胞接着分子(Endothelial Cell Adhesion Molecule:ECAM)の転写レベルでの発現を抑制することによって、減少させる方法を提供する。特に、本発明は、TNF−α誘導性ECAM(例えば、E−セレクチン、ICAM−1、及びVCAM−1)の発現、及びその結果生じる単球細胞(U−937)のヒト大動脈内皮細胞(Human Aorta Endothelial Cell:HAEC)への接着を、メチマゾール誘導体を使用して調節する方法を提供する。
【0013】
本発明のある実施形態では、これらの新規な化合物、組成物及び方法は、炎症性及び免疫性疾患の治療に好適に使用される。また、本発明は、本発明に係る化合物を作成する方法、及びその方法に有用な中間体を提供する。
【0014】
ある実施形態では、本発明は、メチマゾール(1−メチル−2−メルカプトイミダゾール)及びその誘導体の使用を提供する。他の実施形態では、本発明は、カルビマゾール(ネオメルカゾール)及びその誘導体として知られる、プロドラッグ形態のメチマゾールの使用を提供する。
【0015】
他の実施形態では、本発明は、メチマゾール、メトロニダゾール、メルカプトイミダゾール、メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプト−5−ニトロベンズイミジダゾール、2−メルカプト−5−メチルベンズイミジダゾール、s−メチルメチマゾール、n−メチルメチマゾール、5−メチルメチマゾール、5−フェニルメチマゾール、及び1−メチル−2−チオメチル−5(4)ニトロイミダゾールから成る群より選択される、1つ以上の化合物を含んでいる組成物の使用を提供する。好ましくは、5−フェニルメチマゾールが使用される。
【0016】
別の実施形態では、本発明は、フェニルメチマゾール(化合物10;C−10)及びその誘導体の使用を提供する。
【0017】
本発明のある目的は、フェニルメチマゾールを使用してIRF−1依存性のVCAM−1遺伝子発現を抑制することにより、TNF−α誘導性の単核白血球のHAECへの細胞接着を調節する又は減少させる方法を提供することである。
【0018】
本発明に係る化合物は、任意の従来技術を使用して合成することができる。好ましくは、本発明に係る化合物は、容易に入手できる出発物質から化学的に合成される。
【0019】
本発明に係る化合物は、生物学的選択性を高めるための適切な官能基を付加することによって調節される。そのような調節は当該技術分野では公知であり、所定の生物系(例えば、血液、リンパ系、中枢神経系)への生物学的浸透性を高める、経口有効性を高める、注射投与を可能にすべく溶解度を高める、代謝を変化させる、及び、排出速度を変化させることを含む。
【0020】
本明細書中では、「患者」という用語は哺乳類を意味し、ヒトを含んでいる。また、「細胞」という用語は哺乳類細胞を意味し、ヒト細胞を含んでいる。
【0021】
合成されるとすぐに、本発明に係る化合物の活性及びVCAM−1特異性は、インビトロ及びインビボ分析によって測定される。
【0022】
例えば、本発明に係る化合物の細胞接着阻害活性は、VCAM−1発現細胞のVCAM−1リガンド(例えば、VLA−4)発現細胞(例えば、単球、リンパ球)への結合を阻害するのに必要とされる阻害剤の濃度を測定することによって判断される。この分析では、マイクロタイターウエルは、VCAM−1を発現できる細胞(例えば、内皮細胞)でコーティングされている。前記ウエルがコーティングされるとすぐに、試験化合物の濃度を変化させ、VCAM−1の発現を誘導できるサイトカイン(例えば、TNF−α)と共に加えられる。または、最初に試験化合物が加えられ、サイトカインを加える前に、内皮細胞を含んでいる前記コーティングされたウエルと共に培養される。前記細胞は、前記ウエル内で少なくとも2時間培養される。培養後、適切に標識化されたVCAM−1リガンド発現細胞(例えば、単球、リンパ球)が前記ウエルに加えられ、少なくとも30分培養される。培養期間後、前記ウエルは洗浄される。結合の抑制は、試験化合物、及び試験化合物を含んでいない対照の様々な濃度のプレート内における、VCAM−1発現細胞の蛍光及び放射能の定量化によって測定される。
【0023】
この分析に使用できるVCAM−1発現細胞としては、非免疫性の標的組織細胞、内皮細胞、及び上皮細胞が挙げられる。この分析で使用されるVCAM−1リガンド発現細胞(例えば、単球、リンパ球)は、蛍光又は放射標識される。
【0024】
また、直接結合分析は、本発明に係る化合物の阻害活性を定量化するために行われる。
【0025】
VCAM−1特異的阻害剤が特定されるとすぐに、前記阻害剤の特性はインビボ分析によってさらに明らかにされる。そのうちのある分析では、すでに確立された病的炎症のインビボモデルにおける、阻害剤のVCAM−1発現及び白血球接着に対する作用を試験する。前記病的炎症のインビボモデルとしては、例えば、慢性炎症(すなわち、大腸炎)のネズミモデルにおける炎症を起こした腸間膜内皮や、アテローム性動脈硬化症が進行したアポリポタンパク質E欠損(apoE−/−)マウスから摘出した頸動脈がある。
【0026】
本発明に係る化合物は、無機酸、有機酸、無機塩基又は有機塩基から得られる薬学的に許容される塩の形態で使用される。
【0027】
そのような酸性塩としては、次のものがある。酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホナート、重硫酸塩、ブチラート、クエン酸塩、ショウノウ酸塩、ショウノウスルホン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩塩、臭化水素酸塩塩、ヨウ化水素酸塩塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩、ペクチネート、過硫酸塩、3−フェニル−プロピオン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、チオシアン酸塩、トシレート、及び、ウンデカノエート。
【0028】
また、そのような塩基塩としては、次のものがある。アンモニウム塩、アルカリ金属塩(ナトリウム及びカリウム塩など)、アルカリ土類金属塩(カルシウム及びマグネシウム塩など)、有機塩基を有する塩(ナトリウム及びカリウム塩などジシクロヘキシルアミン塩)、N−メチル−グルカミン、及び、アミノ酸を有する塩(アルギニン、リジンなど)。
【0029】
また、塩基性窒素を含んでいる基は、例えば、低アルキル基ハロゲン化合物(メチル、エチル、プロピル、塩化ブチルなど)、臭化物及びヨウ化物、硫酸ジアルキル(ジメチル、ジエチル、ジブチル、及びジアミル硫酸塩など)、長鎖ハロゲン化合物(デシル、ラウリル、ミリスチル、及び塩化ステアリルなど)、ハロゲン化アラルキル(ベンジル及び臭化フェネチル臭化物)などの物質によって四級化することができる。水溶性、油溶性、水分散性又は油分散性の生成物は、そのようにして得られる。
【0030】
本発明に係る化合物は、経口的に、非経口的に、吸入スプレーを用いて、局所的に、経直腸的に、経鼻的に、経口腔的に、経膣的に、又は埋め込み型レザバーによって投与される医薬組成物に配合される。「非経口的」という用語は、皮下、静脈内、腹腔内、筋肉内、関節内、滑液包内、胸骨内、クモ膜下、肝臓内、病巣内、及び頭蓋内への注射又は注入技術を含む。
【0031】
本発明に係る医薬組成物は、任意の本発明に係る化合物又はその薬学的に許容される塩と、薬学的に許容される担体との組み合わせを含む。「担体」という用語は、許容できる補助剤と賦形剤とを含む。本発明に係る医薬組成物に使用できる薬学的に許容される担体としては、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質(ヒト血清アルブミンなど)、緩衝物質(リン酸塩など)、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物脂肪酸におけるグリセリドの部分的混合物、水、塩又は電解質(例えば、硫酸プロタミン)、リン酸水素2ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイダル・シリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニル・ピロリドン、セルロースベースの物質、ポリエチレン・グリコール、カルボキシメチルセルロース・ナトリウム、ポリアクリル酸、ワックス、ポリエチレン−ポリオキシプロピレン−ブロック重合体、ポリエチレン・グリコール、及び、ウール脂肪などがある(ただし、これらに限定されるものではない)。これらは、脂質又はポリマー粒子(生分解性高分子を含む)で作られたリポソーム又は薬物担体を含んでおり、標的化遺伝子導入の用途(例えば、抗体への結合)を含んでいる。それらは、最終的な実用的な濃度に希釈する前に、ジメチルスルホキシドによって可溶化することを含んでいる。
【0032】
本発明によれば、医薬組成物は、例えば注射可能な水溶液又は油性懸濁液などの、無菌性の注射製剤の形態である。この懸濁液は、適切な分散又は湿潤剤と懸濁化剤とを使用して、当該技術分野では公知の技術によって作成される。前記した無菌の注射製剤としては、例えば1,3−ブタンジオール又はジメチルスルホキシド内の水溶液などの、無毒性の薬学的に許容される希釈剤又は溶剤内の無菌の注射可能な水溶液又は懸濁液があり得る。許容可能な担体及び溶液のうちで、使用されるのは水、リンガー溶液、及び生理食塩液である。加えて、殺菌した不揮発性油は、従来、溶剤又は懸濁化剤として使用される。このために、合成モノ又はジグリセリドなどの、任意の無菌性の不揮発性が使用される。脂肪酸(例えば、オレイン酸及びそのグリセリド誘導体)は、薬学的に許容される天然油(オリーブ油又はヒマシ油、特にそれらがポリオキシエチル化されたもの)と同様に、注射製剤の作成に有用である。これらの油又は懸濁液は、直鎖アルコール希釈剤又は分散剤(例えば、Ph. Helv又は同様のアルコール)も含むことができる。
【0033】
本発明に係る医薬組成物は、カプセル、錠剤、水性懸濁液又は溶液などの(ただし、これらに限定されるものではない)、任意の経口投与の形態で経口投与することができる。経口投与用の錠剤の場合は、一般的に使用される担体としては、ラクトースやコーンスターチがある。また、ステアリン酸マグネシウムなどの平滑剤が一般的に加えられる。カプセル形態で経口投与する場合は、ラクトースや乾燥コーンスターチなどの希釈剤が使用できる。経口投与するために水性懸濁液が必要な場合は、活性成分は乳化剤及び懸濁化剤と組み合わされる。必要に応じて、若干の甘味剤、香料添加剤又は着色剤を加えることもできる。
【0034】
また、本発明に係る医薬組成物は、坐薬の形態で直腸投与される。それらは、前記物質を適切な非刺激性の賦形剤(室温では固形であるが直腸温では液体であり、直腸内では薬物を放出すべく融解するような賦形剤)と混合することによって作成される。そのような物質としては、カカオバター、蜜ろう、及びポリエチレン・グリコールなどがある。
【0035】
また、特に、治療の標的が容易に局所適用できる領域又は器官を含んでいる場合は(例えば、目、皮膚又は下部腸管の病気を治療する場合は)、本発明に係る医薬組成物を局所的に投与することもできる。適切な局所製剤は、それらの領域又は器官のために容易に作成される。
【0036】
下部腸管のための局所投与は、肛門坐剤製剤(上記参照)又は適切なかん腸剤によって行うことができる。また、局所的経皮投与パッチを使用して行うこともできる。
【0037】
局所適用に使用するためには、本発明に係る医薬組成物は、1つ以上の担体に懸濁又は溶解した活性成分を含んでいる、適切な軟膏の形態で作成される。本発明に係る化合物を局所投与するのに用いられる担体としては、鉱物油、流動ワセリン、白色ワセリン、プロピレン・グリコール、ポリオキシエチレン、ポリオキシエチレン化合物、乳化ワックス、及び水がある(ただし、これらに限定されるものではない)。また。医薬組成物は、1つ以上の薬学的に許容される担体に懸濁又は溶解した活性成分を含んでいる、適切なローション又はクリームの形態に形成することもできる。適切な担体としては、鉱物油、ソルビタン・モノステアレート、ポリソルベート60、セチル・エステル・ワックス、セテアリル・アルコール、2−オクチルドデカノール、ベンジル・アルコール、及び水などがある(ただし、これらに限定されるものではない)。
【0038】
眼科用に使用するためには、本発明に係る医薬組成物は、等浸透圧のpH調整された無菌食塩水内の微粉化懸濁液の形態に、又は、好ましくは、等浸透圧のpH調整された無菌食塩水内の水溶液の形態に形成される(防腐剤(例えば、塩化ベンジルアルコニウム)を用いて又は用いずに)。或いは、眼科用に使用するためには、本発明に係る医薬組成物は、ワセリンなどの軟膏の形態に形成される。
【0039】
また、本発明に係る医薬組成物は、噴霧器、ドライパウダー吸入器又は定量吸入器を使用して、鼻エアロゾル又は吸入によって投与することができる。そのような組成物は、医薬組成物の分野では公知の技術によって作成され、ベンジル・アルコール又は他の適切な防腐剤、生体利用効率を高めるための吸収促進剤、過フッ化炭化水素、及び/又は他の通常の可溶化剤又は分散剤を使用して、食塩水中の水溶液として作成される。
【0040】
単回投与形態を作成すべく担体物質と組み合わされる活性成分の量は、治療するホスト及び投与形態によって異なる。また、当然のことながら、特定の患者への投与薬及び治療計画は、使用する投与薬(化合物)の活性、年齢、体重、健康状態、性別、食生活、投与期間、排出速度、併用する薬、及び、治療する医師の判断及び治療する病気の重症度などの様々な要因によって決定される。また、活性成分の量は、治療薬か予防薬かによって異なる。
【0041】
本発明に係る化合物の、細胞接着を防止、抑制又は抑止するのに有効な投与量及び投与速度は、抑制剤の性質、患者の体の大きさ、治療目標、治療する病気の性質、使用する医薬組成物、及び、治療する医師の判断などの様々な要因によって決定される。活性成分の投与量レベルが1日当たり約0.001〜100mg/kg(体重1kg当たり)、好ましくは1日当たり約0.1〜10mg/kgである化合物が有用である。
【0042】
本発明の他の実施形態では、本発明に係る化合物を含んでいる組成物は、コルチコステロイド、気管支拡張薬、抗ぜんそく薬(マスト細胞安定剤)、抗炎症薬、抗リウマチ剤、免疫抑制剤、代謝拮抗物質、免疫調節剤、乾癬治療薬、抗生物質、及び抗糖尿病薬から成る群より選択されるさらなる物質をさらに含む。また、前記群には、テオフィリン、スルファサラジン及びアミノサリチル酸(抗炎症薬)、シクロスポリン、FK−506及びラパマイシン(免疫抑制剤)、シクロホスファミド及びメトトレキサート(代謝拮抗物質)、及びインターフェロン(免疫賦活剤)などの化合物も含まれる。
【0043】
他の実施形態では、本発明は、細胞接着に関連する炎症、及び細胞接着に関連する免疫又は自己免疫反応を防止、抑制又は抑止する方法を提供する。VCAM−1に関連する細胞接着は、様々な炎症性、免疫及び自己免疫疾患において中心的役割を果たす。したがって、本発明に係る化合物による細胞接着の抑制は、炎症性、免疫及び自己免疫疾患を治療又は予防する方法に利用することができる。好ましくは、本発明に係る方法によって治療する疾患は、ぜんそく、関節炎、乾癬、移植拒絶、多発性硬化症、糖尿病、炎症性大腸炎、及び、先天性免疫反応の活性化に関連する炎症性/免疫疾患(例えば、内毒素性ショック)から成る群より選択される。
【0044】
これらの方法は、本発明に係る化合物を使用して、単独投与で、又は抗炎症剤或いは免疫抑制剤と組み合わせて行われる。前記組み合わせによる治療は、単回投与又は複数回投与の形態での、同時に又は異なった時間での投与を含む。
【0045】
上記した本発明の概要は、本発明の各実施形態又は全ての実施を説明することを目的としたものではない。本発明の利点及び実現は、本発明のより完全な理解と共に、添付された図面を参照しつつ行われる以下の詳細な説明及び特許請求の範囲によって明らかになるであろう。
【0046】
本明細書中では、温度は全て摂氏で表しており、特に明記しない限りパーセントは重量パーセントである。また、その文献に記載されている本発明に使用可能な組成物及び方法の説明及び開示を目的として言及した本明細書中で記載されている全ての文献は、その参照により本発明に含まれるものとする。前記文献は、単に、本願出願前の従来技術を開示するためのものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
本発明は、VCAM−1の結合を特異的に抑制するメチマゾール誘導体及び互変異性環状チオン化合物の使用を提供する。これらの化合物は、VCAM−1媒介性の細胞接着及びその細胞接着と関連する病気(炎症や免疫反応など)の抑制、防止及び抑止に有用である。本発明に係る化合物は、単独で使用される、或いは、細胞接着を抑制、防止及び抑止するための他の治療又は予防薬と組み合わせて使用される。また、本発明は、前記したVCAM−1媒介性の細胞接着の抑制剤を含んでいる医薬製剤、並びに、本発明に係る化合物及び組成物を使用して細胞接着を抑制する方法を提供する。以下、本明細書中で使用する用語について定義する。
【0048】
「安全で有効な量」とは、細胞接着及び細胞接着媒介性の疾患を抑制及び防止するための、薬学的活性化合物の十分な量を意味する。医薬活性物資又はその活性物質を含んでいる医薬組成物の必要な投与量は、正常な医学的判断の範囲内で、治療する患者の重症度や、治療する期間、補助治療の性質、患者の年齢及び健康状態、使用する活性化合物の種類などによって異なる。ここで説明する化合物は従来のメチマゾール 化合物よりも低い投与量で薬学的活性をもたらすが、特定の化合物における「安全で有効な量」は、これらのリスクを考慮する必要がある。
【0049】
「薬学的に許容される」とは、医薬組成物で使用される薬学的活性化合物及び他の成分、並びに、本明細書中で定義された方法が、不適切な毒性、炎症、アレルギー反応などを有することなく、ヒト及び下等動物の組織と接触させるのに適切であり、相応な利益/リスク比に見合うことを意味する。
【0050】
前記薬学的活性化合物及び本明細書中で定義した医薬組成物の「投与」は、前記化合物及び組成物の局所適用ばかりでなく、前記組成物の注射(特に非経口での注射)、静脈内注射、坐薬、及び経口投与による全身への使用を含む。本発明では、経口投与が特に好ましい。
【0051】
「改善」又は「改良」という用語は、治療を受ける患者における、有害な影響、又は、細胞接着による疾患の重症度の緩和を意味する。反応の程度は、当該技術分野では公知の手段によって測定される。
【0052】
「細胞接着による疾患」とは、非定形の細胞接着により導かれる下記の病気である(ただし、これらに限定されるものではない)。虚血後の再かん流傷害、アテローム性動脈硬化症、炎症性大腸炎(クローン病、潰瘍性大腸炎)、熱傷(やけど)、関節炎、ぜんそく、臓器移植(ホスト対グラフト、グラフト対ホスト)、脳梗塞、マラリア、多発性硬化症、糖尿病、出血性ショック、心筋梗塞、肺梗塞、脳梗塞、腸梗塞、腸梗塞、腎梗塞、敗血症、血栓症、遅延型過敏反応、癌、急性肺損傷、自己免疫性又は非自己免疫性糸球体腎炎、結核症、サルコイドーシス、全身性エリテマトーデス、シェーグレン病、多発性筋炎/皮膚筋炎、高血圧性血管疾患、脈管炎、結節性多発性動脈炎、巨細胞性動脈炎、ヴェーゲナー肉芽腫症、川崎病(粘膜皮膚リンパ節症候群)、閉塞性血栓血管炎(バージャー病)、Behoet病、皮膚血管炎、リケッチア脈管炎、播種性血管内凝固症候群、リンパ球様間質性肺炎、肺好酸球性肉芽腫、胃炎、慢性肝炎、肝硬変、グレーブス病、甲状腺炎、甲状腺機能低下症、乾癬、アルツハイマー病、アレルギー性鼻炎、炎症性皮膚病、皮膚アナフィラキシー反応、及び髄膜炎。
【0053】
「含む」という用語は、定義した薬学的活性化合物及び担体が開示されたように使用される限りは、本発明に係る医薬組成物及び方法で、不活性成分と同様に、様々な他の適合する薬物を併用できることを意味する。したがって、「含む」という用語は、「〜から成る」及び「本質的に〜から成る」というより限定的な用語を包含する。
【0054】
「患者」という用語は、本発明に係る化合物、組成物及び方法による治療を享受する全ての哺乳類(動物又はヒト)を含む。「治療」という用語は、任意の治癒的治療、予防的治療、及び改善的治療を意味する。
【0055】
「適合する」とは、本発明に係る組成物の成分を、通常に使用する状態で薬学的活性化合物の効果を実質的に低下させることなく、相互作用を行わずに混合できることを意味する。
【0056】
本発明に係る医薬組成物は、特別に定義するメチマゾール誘導体及び互変異性環状チオンを、薬学的に許容される担体と共に、安全で有効な量で使用することを含んでいる。
【0057】
本発明に係る組成物で使用されるメチマゾール誘導体は、次の化学構造式で表される活性化合物である。

【0058】
上記の化学構造式では、Yは、H、C−Cアルキル、C−C置換アルキル、NO、及びフェニル部分

から成る群より選択され、
Yの1つだけは前記フェニル部分であり得、
は、H、OH、C−Cアルキル、及びC−C置換アルキルから成る群より選択され、
は、H、C−Cアルキル、及びC−C置換アルキルから成る群より選択され、
は、H、C−Cアルキル、C−C置換アルキル、及びCHPhから成る群より選択され、
は、H、C−Cアルキル、及びC−C置換アルキルから成る群より選択され、
Xは、S及びOから選択され、
Zは、SR、OR及びC−Cアルキルから選択され、
Yがフェニル部分でない場合は、R及びRの少なくとも2つはC−Cアルキルであり、
Zがアルキルの場合は、少なくとも1つのYはNOである。
【0059】
Yは、好ましくは、H、前記フェニル部分又はNOであり、最も好ましくは、H又は前記フェニル部分

である。
【0060】
上記で定義した化合物では、Y基の1つ以下は前記フェニル部分であり得る。
【0061】
は、H、OH、ハロゲン(F、Cl、Br又はI)、C−Cアルキル、C−C置換アルキル、C−Cエステル、及びC−C置換エステルから選択される。Rは、好ましくは、H、OH、ハロゲン、OOCCHM(ただし、Mは、H又はハロゲンである)であり、最も好ましくは、Hである。
【0062】
は、H、C−Cアルキル、及びC−C置換アルキルから選択される。好ましくは、R基の一方又は両方はメチルである。
【0063】
ここでは、「置換アルキル」又は「置換エステル」という用語は、1つ又はそれ以上の個所が、ヒドロキシル又はアルコキシル基、カルボキシル基、ハロゲン、ニトロ基、アミノ又はアシルアミノ基、及びそれらの部分の混合体によって置換された、アルキル、アリル、又はエステル基を含むことを意図している。好ましくは、「置換アルキル」基は、C−Cヒドロキシル又はアルコキシル基、或いは、ハロゲンで置換された基である。
【0064】
は、H、C−Cアルキル、C−C置換アルキル、及びCHPh(ただし、Phはフェニルである)から選択される。Rは、好ましくは、H又はC−Cアルキルであり、最も好ましくは、C−Cアルキル、とりわけメチルである。
【0065】
は、H、C−Cアルキル、及びC−C置換アルキルから選択される。Rは、好ましくは、Hである。
【0066】
Xは、S又はOであり、好ましくは、Sである。
【0067】
Zは、SR、OR、S(O)R、及びC−Cアルキルから選択される。Zは、好ましくは、SR、OR、及びS(O)Rであり、最も好ましくはSR、ORであり、とりわけSRである。
【0068】
そして、上記の化学構造式では、Yがフェニル部分でない場合は、R及びRの少なくとも2つのはC−Cアルキルである。そして、ZがC−Cアルキルの場合は、Y基の少なくとも1つはNOである。
【0069】
本発明に使用できる化合物としては、文献「Kjellin and Sandstrom, Acta Chemica Scandanavica 23: 2879-2887 (1969)」に開示されている(この参照により本発明に含まれるものとする)、次の化学構造式で表される互変異性環状チオンがある。

ただし、R,R=CH,CH、Ph,H、又はH,Phであり、R=H又はCHであり、R=O、S、NH、又はNCHである。
【0070】
本発明に係る組成物に使用するのに好ましい化合物としては、次の化学構造式で表されるものがある。

【0071】
他の好ましい組成物としては、次の化学構造式で表されるものがある。

ただし、R10は、H、NO、Ph、4−HOPh、及び4−m−Ph(ただし、mは、F、Cl、Br又はIである)から選択される。
【0072】
ここで定義された医薬化合物の特に好ましいサブセットは、Y基の1つが上記に定義したフェニル部分である化合物である。これらの化合物は、次の化学構造式で表される。

【0073】
これらの化合物では、Yは、H、C−Cアルキル、C−C置換アルキル、NO、及びフェニル部分から選択され、好ましくはHである。
【0074】
は、H、OH、ハロゲン(F、Cl、Br又はI)、C−Cアルキル、C−C置換アルキル、C−Cエステル、及びC−C置換エステルから選択され、好ましくは、H、OH、ハロゲン、OOCCHM(ただし、Mは、H又はハロゲンである)である。好ましくはHではない。
【0075】
は、H、C−Cアルキル、及びC−C置換アルキルから選択され、好ましくは、R基の少なくとも1つはメチルである。
【0076】
は、H、C−Cアルキル、C−C置換アルキル、及びCHPh(ただし、Phはフェニルである)から選択され、好ましくは、H及びメチルである。
【0077】
は、H、C−Cアルキル、及びC−C置換アルキルから選択され、好ましくは、Hである。
【0078】
Xは、S及びOから選択され、好ましくは、Sである。
【0079】
Zは、SR及びORから選択され、好ましくは、SRである。
【0080】
特に好ましい化合物は、次の化学構造式で表される化合物である。

【0081】
他の好ましい化合物は、次の化学構造式で表される化合物である。

ただし、Rは、OH、M、及びOOCCHMから成る群より選択され、Mは、F、Cl、Br、及びIから成る群より選択される。
【0082】
最も好ましい化合物は、次の化学構造式で表される化合物である。

5−フェニルメチマゾール
【0083】
また、本明細書中で定義した薬学的活性化合物の混合物も使用できる。上記したメチマゾール誘導体及び互変異性環状チオンは、当該技術分野では公知の技術を用いて合成することができる。例えば、いくつかの互変異性環状チオンの合成については、文献「Kjellin and Sandstrom, Acta Chemica Scandanavica 23: 2879. congruent. 2887 (1969)」に記載されている(この参照により本発明に含まれるものとする)。
【0084】
代表的なメチマゾール誘導体は、次の方法を用いて合成される。適切に置換されたアセトアルデヒドの類似体は、臭素及び紫外線で処理することによって2位置で臭素化される。その後、無水エタノールを使用して対応するジエチルアセタールを作成する。その後、前記臭素は、密閉されたチューブ内で(約120℃、約16時間)、無水メチルアミン又は他の適切なアミンでの処理によって、この化合物から除去される。結果として生じるアミノアセタールを、塩酸の存在下で、チオシアン酸カリウムと反応させると(スチームバス温度、一晩)、メチマゾール類似体が得られる。
【0085】
(表:化合物の構造)


【0086】
本発明に係る医薬組成物は、安全で有効な量の、1つ以上のメチマゾール誘導体又は互変異性環状チオン(すなわち活性化合物)を含んでいる。好ましい組成物は約0.01%〜25%の活性化合物を含んでおり、より好ましい組成物は約0.01%〜10%の活性化合物を含んでいる。本発明に係る医薬組成物は、例えば腹腔内、経静脈的、筋肉内又は局所的などの任意の公知な方法で投与することができるが、経口投与することが好ましい。好ましい組成物は、例えば丸薬、錠剤又はアンプルなどの、ユーザが毎回の投与量を測定する必要のない、単回投与に適した固定測定済みの形態で利用可能な、単回投与形態、すなわち医薬組成物である。
【0087】
本発明に係る医薬組成物は、上記したメチマゾール誘導体又は互変異性環状チオンに適合する薬学的に許容される担体をさらに含む。前記薬学的に許容される担体に加えて、前記医薬組成物は、例えば、付加的な薬学的な活性剤、賦形剤、製剤化の助剤(例えば錠剤化の助剤)、着色剤、着香剤、防腐剤、可溶化剤、分散剤、及び当該技術分野では公知である他の物質などのさらなる適合する成分を、技術的な許容レベルでさらに含むことができる。
【0088】
本明細書中で使用される「薬学的担体」という用語は、固体又は液体の充填剤、賦形剤又は封入物質を意味する。これらの物質は、薬剤の分野では公知である。薬学的担体として使用できる物質としては、例えば、糖(ラクトース、グルコース、サッカロースなど)、でんぷん(コーンでんぷん、ジャガイモでんぷんなど)、セルロース及びその誘導体(カルボキシルメチル・セルロース・ナトリウム、エチル・セルロース、酢酸セルロースなど)、トラガント粉末、モルト、ゼラチン、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸カルシウム、植物油(ピーナッツ油、綿実油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油、テオブロマ油など)、ポリオール(プロピレン・グリコール、グリセリン、ソルビトール、マンニトール、及びポリエチレン・グリコール)、寒天、アルギン酸、ピロゲンフリー水、等張食塩水、及び、リン酸緩衝液と、医薬組成物に使用される他の無毒性の適合する物質がある。これらは、脂質又はポリマー粒子(生分解性高分子を含む)を作成するリポソーム又は薬物担体を含んでおり、標的化遺伝子導入の用途(例えば、抗体への結合)を含んでいる。また、湿潤剤及び潤滑油(ラウリル硫酸ナトリウムなど)と、着色剤、着香料、錠剤化薬及び防腐剤を含むこともできる。前記成分の医薬組成物への配合は、公知の技術を用いて行う。
【0089】
本発明に係る医薬組成物と共に使用される薬学的担体は、投与可能な粒径にするのに十分な濃度にするのに使用される。好ましくは、前記薬学的担体は、医薬組成物の総重量の約75%〜99.99%、より好ましくは約90%〜99.99%含まれることが望ましい。本発明で定義されたメチマゾール誘導体又は互変異性環状チオンは、驚くべきことに、従来の担体物質内にメチマゾールを溶解させる場合よりも溶解性が高い。このことにより、これらのメチマゾール誘導体を含んでいる医薬組成物の作成により柔軟性が向上するので、大きな利益が得られる。また、活性化合物の使用量は著しく少なく済む。
【0090】
本発明に係るメチマゾール誘導体は、一日当たり、約0.001〜100ミリグラム、好ましくは約0.05〜50ミリグラムの範囲の用量で投与される。本発明に係る医薬組成物は、血流中で薬学的活性が得られるような適切な量で投与される。所定の場合における必要とされる的確な投与量は、例えば、使用するメチマゾール誘導体の種類、治療する病気の性質、及び患者の体格、体重、年齢及び健康状態に応じて決定される。
【0091】
「薬学的に許容される塩」という用語は、薬学的に許容される無毒性塩基又は酸(無機又は有機塩基、及び、無機又は有機酸など)から作成される塩を意味する。無機塩基から作成される塩としては、アルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅、第二鉄、第一鉄、リチウム、マグネシウム、マンガン塩、マンガン、カリウム、ナトリウム、亜鉛などがある。特に、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム塩が好ましい。薬学的に許容される無毒性の無機塩基から作成される塩としては、第1、第2及び第3アミン、置換アミン(自然発生的置換アミンを含む)、環状アミン、及び塩基性イオン交換樹脂(例えば、アルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N´−ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N−エチル−モルホリン、N−エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リジン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミンなど)の塩がある。本発明に係る化合物が塩基性の場合は、塩は薬学的に許容される無毒性の酸(無機酸及び有機酸を含む)から作成される。そのような酸としては、酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンファースルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコン酸、グルタミン酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、粘液酸、硝酸、パモン酸、パントテン酸、リン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、p−トルエンスルホン酸などがある。特に、クエン酸、臭化水素酸、塩酸、マレイン酸、リン酸、硫酸、及び酒石酸が望ましい。当然のことながら、本明細書中では、前記化合物は薬学的に許容される塩を含む。
【0092】
本発明に係る治療用化合物がVCAM−1の活動を抑制する能力は、VCAM−1が様々なリガンド(例えば、VLA−4)と結合することによって生じる症状、疾患又は疾病の予防又は回復に役立つ。したがって、これらの化合物は、細胞シグナリング、活性化、移動、拡散及び分化を含む、ローリング(rolling)及び細胞接着プロセスを抑制することができる。そのため、本発明の態様では、VCAM−1結合、細胞接着及び細胞活性化に媒介される疾患、疾病、病気又は症状の治療方法(予防、緩和、改善又は抑制方法を含む)であって、有効量の本発明に係る化合物を哺乳類に投与するステップを含む方法を提供する。前記疾患、疾病、病気又は症状としては、例えば、(1)多発性硬化症、(2)ぜんそく、(3)アレルギー性鼻炎、(4)アレルギー性結膜炎、(5)炎症性肺病、(6)関節リウマチ、(7)敗血症性関節炎、(8)I型又はII型糖尿病及びその大血管又は微小血管合併症(例えば、腎症、脳梗塞又は心筋梗塞)、(9)臓器移植拒絶、(10)再狭窄、(11)自家骨髄移植、(12)ウイルス感染の炎症性後遺症、(13)心筋炎、(14)炎症性大腸炎(潰瘍性大腸炎、クローン病など)、(15)ある種類の毒性及び免疫による腎炎、(16)接触皮膚過敏症、(17)乾癬、(18)腫瘍転移、(19)甲状腺炎、及び、(20)アテローム性動脈硬化症がある。
【0093】
本発明に係る治療用化合物の予防的又は治療的な投与量は、治療する患者の重症度や、本発明に係る化合物の種類及びその投与経路によって異なる。また、投与量は、患者の年齢、体重、応答性によっても異なる。一般に、1日当たりの投与量(1回又は分割しての投与量)の範囲は、哺乳類の体重1kgあたり約0.001〜100mg、より好ましくは0.01〜50mg、最も好ましくは0.01〜10mgである。しかし、場合によっては、前記した範囲外の投与量を用いる必要がある。
【0094】
静脈内又は腹腔内に投与する場合は、本発明に係る治療用化合物の投与量(体重1kgあたりの1日量)の適切な範囲は約0.001〜25mg(好ましくは、約0.01〜1mg)であり、細胞保護を目的とする場合は、本発明に係る治療用化合物の投与量(体重1kgあたりの1日量)の適切な範囲は約0.1〜100mg(好ましくは、約1〜10mg)である。
【0095】
経口投与する場合は、本発明に係る治療用化合物の投与量(体重1kgあたりの1日量)の適切な範囲は、約0.01〜100mg(好ましくは、約0.1〜10mg)であり、細胞保護を目的とする場合は、本発明に係る治療用化合物の投与量(体重1kgあたりの1日量)の適切な範囲は約0.1〜100mg(好ましくは、約1〜10mgであり、より好ましくは、約10〜100mg)である。
【0096】
目の病気を治療する場合、眼部に許容可能な形態である、0.001〜1重量%の本発明に係る治療用化合物の溶液又は懸濁液を含む眼球投与用の点眼薬を使用することができる。
【0097】
本発明の他の態様は、本発明に係る化合物と薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物を提供する。医薬組成物などにおける「組成物」という用語は、活性成分と、担体を構成する不活性成分(薬学的に許容される賦形剤)とを含む生成物質を包含する。また、任意の2つ以上の成分の結合、錯体化又は凝集から、又は1つ以上の成分の解離から、又は1つ以上の成分の他の種類の反応又は相互作用から直接的又は間接的に生成される他の生成物質を包含する。したがって、本発明に係る医薬組成物は、本発明に係る組成物、付加的な活性成分、及び薬学的に許容される賦形剤を混合して作成した任意の組成物を包含する。
【0098】
有効な量の本発明に係る化合物は、哺乳類(特にヒト)に、任意の適切な投与経路を用いて投与される。投与経路としては、例えば、経口、経直腸、局所的、非経口、経眼、経肺、経鼻などがある。投与形態としては、例えば、錠剤、トローチ、分散剤、懸濁剤、溶液、カプセル、クリーム、軟膏、エアロゾルなどがある。
【0099】
本発明に係る医薬組成物は、活性成分としての本発明に係る化合物又はその薬学的に許容される塩と、薬学的に許容される担体と、随意的に他の治療成分とを含む。「薬学的に許容される塩」という用語は、薬学的に許容される無毒性塩基又は酸(無機塩基、無機酸、有機塩基、有機酸など)から作成される塩を意味する。
【0100】
本発明に係る組成物は、経口、経直腸、局所的、非経口(皮下、筋肉内、及び静脈内など)、経眼(眼球)、経肺(エアロゾル吸入)、又は、経鼻投与などに適した組成物を含む。また、もっとも適した投与経路は、治療する症状の性質や重症度、及び活性成分の性質によって異なる。本発明に係る組成物は、製薬学の分野では公知の方法によって、単回投与形態に形成される。
【0101】
吸入投与する場合は、本発明に係る化合物は、加圧型パック又はネブライザー(nebuliser)のエアゾールスプレーの形態で使用される。また、本発明に係る化合物は、パウダーの形態で使用され、粉末吸入装置を用いて吸入される。吸入のための好ましい送達システムは、高圧ガス(過フッ化炭化水素又は炭化水素)内に本発明に係る化合物の懸濁液又は溶液として作成される、定量噴霧式吸入剤(Metered Dose Inhalation:MDI)エアゾール、及び、さらなる賦形剤を含んで又は含まない本発明に係る化合物の乾燥パウダーとして作成される乾燥粉末吸入剤(Dry Powder Inhalation:DPI)エアゾールである。
【0102】
適切な局所製剤としては、経皮的デバイス、エアゾール、クリーム、軟膏、ローション、粉剤などがある。
【0103】
実際の使用では、本発明に係る化合物は、緊密混合における活性成分として、従来の薬学的結合技術によって、薬学的担体と結合される。前記担体は、投与(例えば、非経口(静脈内)を含む)に望ましい製剤形態に応じて、様々な形態を取ることができる。本発明に係る化合物を経口投与形態に製剤する場合は、経口液体製剤(懸濁液、エリキシル剤、溶液など)としては、水、グリコール、油、アルコール、着香料、防腐剤、着色剤などを、経口固形製剤(粉末、カプセル、タブレットなど)としては、でんぷん、糖、微結晶性セルロース、希釈剤、造粒剤、潤滑剤、結合剤、崩壊剤などの担体などの、任意の薬学的媒体を使用することができる。経口液体製剤よりも、経口固形製剤の方が好ましい。錠剤及びカプセルは投与しやすいため、経口での単回投与形態として好適であり、固形の薬学的担体が明らかに使用される。必要に応じて、錠剤は標準的な水性又は非水性技術によってコーティングされる。上述した標準的な投与形態に加えて、本発明に係る治療用化合物は、例えば、米国特許第3,845,770号、第3,916,899号、第3,536,809号、第3,598,123号、第3,630,200号、及び第4,008,719号に開示されているような、制御放出手段及び/又は送達システムによって投与される。
【0104】
経口投与に適した本発明に係る医薬組成物は、所定の量の活性成分を、パウダー又は顆粒として、或いは溶液又は懸濁液として、水性溶液、非水性溶液、水中油型乳剤、又は油中水乳濁液内に含んでいる、カプセルや錠剤などの個々の単位として得られる。そのような組成物は、任意の薬学的方法によって作成されるが、全ての方法は、活性成分を、1つ以上の必須成分を構成する担体と結合させるステップを含む。一般的に、前記組成物は、活性成分と液体担体又は微粉化担体(又はその両方)とを、均一及び緊密に混合させることにより作成される。その後、必要に応じて、生成物を所望する形状に成形にする。例えば、錠剤は、随意的に、1つ以上の副成分と共に、圧縮又は鋳造によって作成される。圧縮錠は、随意的に結合剤、潤滑剤、不活性希釈剤、表面活性剤又は分散剤と結合させた、例えばパウダー又は顆粒などの飲みやすい形態の活性成分を、適切な機械で圧縮することにより作成される。鋳造された錠剤は、不活性液体賦形剤に浸した、粉末化した化合物の混合物を、適切な機械で鋳造することにより作成される。望ましくは、各錠剤は約1〜500mgの活性成分を含み、各カプセルは約1〜500mgの活性成分を含む。
【0105】
本発明に係る化合物は、本発明に係る化合物が有用な疾患又は疾病の治療、予防、抑制又は改善に用いられる他の薬物と組み合わせて使用される。そのような他の薬物はメチマゾール誘導体及び互変異性環状チオンなどの本発明に係る化合物と同時に又は連続的に、そのために一般的に使用される経路及び量で投与される。本発明に係る化合物を1つ以上の薬物と同時に使用する場合は、本発明に係る化合物に加えて、そのような他の薬物を含んでいる医薬組成物が好ましい。したがって、本発明に係る医薬組成物は、本発明に係る化合物に加えて、1つ以上の他の活性成分を含む医薬組成物を包含する。
本発明に係る化合物Iと別々に投与される又は同一の医薬組成物として一体に投与される他の活性成分の例としては、次のものがある(ただし、これらに限定されるものではない)。
(a)VCAM−1拮抗薬。
(b)ステロイド:例えば、ベクロメタゾン、メチルプレドニゾロン、ベタメタゾン、プレドニゾン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾンなど。
(c)免疫抑制剤:例えば、シクロスポリン、タクロリムス、ラパマイシン、他のFK−506型の免疫抑制剤など)。
(d)抗ヒスタミン剤(H1ヒスタミン拮抗薬):例えば、ブロモフェニラミン、クロルフェニラミン、デキスクロルフェニルアミン、トリプロリジン、クレマスチン、ジフェンヒドラミン、ジフェニルピラリン、トリペレナミン、ヒドロキシジン、メトジラジン、プロメタジン、トリメプラジン、アザタジン、シプロヘプタジン、アンタゾリン、フェニラミン、ピリラミン、アステミゾール、テルフェナジン、ロラタジン、セチリジン、フェキソフェナジン、デスカルボエトキシロラタジン(ロラタジンの活性代謝物)など。
(e)非ステロイド系抗ぜんそく薬:例えば、β2作動薬(テルブタリン、メタプロテレノール、フェノテロール、イソエタリン、アルブテロール、ビトルテロール、サルメテロール、ピルブテロール)、テオフィリン、クロモグリク酸ナトリウム、アトロピン、臭化イプラトロピウム、ロイコトリエン拮抗薬(ザフィルルカスト、モンテルカスト、プランルカスト、イラルカスト、ポビルカスト、SKB−106,203)、ロイコトリエン生合成阻害剤(ジレウトン、BAY−1005)など。
(f)非ステロイド系抗炎症薬(NSAID):例えば、プロピオン酸誘導体(アルミノプロフェン、プロフェンプロフェン、ブクロクス酸、カルプロフェン、フェンブフェン、フェノプロフェン、フルビプロフェン、フルルビプロフェン、イブプロフェン、インドプロフェン、ケトプロフェン、ミロプロフェン、ナプロキセン、オキサプロジン、ピルプロフェン、プラノプロフェン、スプロフェン、チアプロフェン酸、チオキサプロフェン)、酢酸酸誘導体(インドメタシン、アセメタシン、アルクロフェナック、クリダナク、ジクロフェナク、フェンクロフェナク、フェンクロズ酸、フェンチアザク、フロフェナク、イブフェナック、イソキセパク、oxpinac、スリンダク、チオピナク、トルメチン、ジドメタシン、ゾメピラク)、フェナム酸誘導体(フルフェナム酸、メクロフェナム酸、メフェナム酸、ニフルム酸、トルフェナム酸)、ビフェニルカルボン酸(ジフルニサル、フルフェニサル)、オキシカム(イソキシカム、ピロキシカム、スドキシカム、テノキシカム)、サリチル酸塩(アセチル・サリチル酸、スルファサラジン)、及び、ピラゾロン(アパゾン、bezpiperylon、フェプラゾン、モフェブタゾン、オキシフェンブタゾン、フェニルブタゾン)など。
(g)シクロオキシゲナーゼ−2(COX−2)阻害薬:例えば、セレコクシブなど。
(h)IV型ホスホジエステラーゼ阻害薬(PDE−IV)。
(i)ケモカイン受容体拮抗薬:特に、CCR−1、CCR−2及びCCR−3。
(j)コレステロール降下薬:例えば、HMG−CoA還元酵素阻害剤(ロバスタチン、シンバスタチン、プラバスタチン、フルバスタチン、アトルバスタチン、及び他のスタチン)、金属イオン封鎖剤(コレスチラミン、コレスチポール)、ニコチン酸、フェノフィブリック酸誘導体(ゲムフィブロジル、クロフィブレート、フェノフィブラート、ベンザフィブラート)、及び、プロブコールなど。
(k)抗糖尿病薬:例えば、インスリン、スルホニル尿素、ビグアニド(メトホルミン)、a−グルコシダーゼ阻害剤(アカルボース)、グリタゾン(トログリタゾン、ピオグリタゾン、エングリタゾン、MCC−555、BRL49653)など。
(l)インターフェロン・ベータ製剤:例えば、ベータ・インターフェロン、アルファ・インターフェロンなど。
(m)抗コリン剤:例えば、ムスカリン性拮抗薬(臭化イプラトロピウム)など。
(n)他の化合物:例えば、5−アミノサリチル酸及びそのプロドラッグ、代謝拮抗物質(アザチオプリン、6−メルカプトプリン)、細胞毒性癌化学療法薬。
(o)抗生物質。
【0106】
第2の活性成分に対する本発明に係る治療用化合物の重量比は、各成分の有効量によって異なる。一般的に、各成分の有効量が用いられる。したがって、本発明に係る治療用化合物をNSAIDと一緒に用いる場合は、本発明に係る治療用化合物のNSAIDに対する重量比は、約1000:1〜1:1000の範囲、好ましくは約200:1〜1:200の範囲となる。また、治療用成分と他の活性成分との組み合わせも、一般的に、上記した範囲内である。ただし、いずれの場合にも、各活性成分の有効な量が用いられる。
【0107】
以下の実施例は、本発明に係る薬学的に活性な化合物、医薬組成物、及び治療方法を説明するためのものであり、これらを限定するためのものではない。
【実施例】
【0108】
炎症性サイトカイン(例えば、TNF−α)によって誘導される、血管内の内腔表面での内皮細胞接着分子(Endothelial Cell Adhesion Molecule:ECAM)の発現と、その結果生じる白血球接着の増加は、病的炎症の重要な側面である。本発明は、次の(i)〜(iv)の作用を有するメチマゾール誘導体及び互変異性環状チオンの使用を提供する。
(i)TNF−α誘導性の、ヒト大動脈内皮細胞(human aortic endothelial cell:HAEC)におけるVCAM−1・mRNA及びタンパク質の発現を大幅に抑制する。そして、TNF−α誘導性のE−セレクチン発現に対する抑制作用は比較的小さく、ICAM−1発現に対しては影響しない。
(ii)インビボでの場合と同様のインビトロのフロー条件下で、TNF−α誘導性の、単球(U937)のHAECへの細胞接着を著しく減少させる。
(iii)TNF−α誘導性の、インターフェロン制御因子(Interferon Regulatory Factor-1:IRF-1)のVCAM−1・プロモータへの結合を抑制する。
(iv)TNF−α誘導性の、HAEC細胞におけるIRF−1の発現を減少させる。
組み合わせると、この結果は、メチマゾール誘導体及び互変異性環状チオンが、主としてIRF−1依存性のVCAM−1発現を抑制することによって、TNF−α誘導性の単球のHAECへの細胞接着を減少させることを示す。
【0109】
≪材料及び方法≫
【0110】
<材料>
【0111】
培地199(M199)、RPMI−1640(RPMI)、並びに、Ca++及びMg++を含有するハンクス液(Hanks Balanced Salt Solution:HBSS)(HBSS+)は、全てBiowhittaker(Walkersville, MD)から入手した。Ca++及びMg++を含有しないダルベッコ・リン酸緩衝生理食塩水(Delbecco's Phosphate Buffered Saline)(PBS)は、KD Medical(Columbia, MD)から入手した。加熱不活性化した定義済みのウシ胎仔血清(fetal bovine serum:FBS)は、Hyclone Laboratories Inc.(Logan, UT)から入手した。L−グルタミン、トリプシン・バーゼン液、ペニシリン/ストレプトマイシン、及び非必須アミノ酸は、全てBiosource International(Camarillo, CA)から入手した。内皮成長因子は、Calbiochem(San Diego, CA)から入手した。ウシ視床下部抽出物は、Pel-Freeze Biological Inc.(Rogers, AR)から入手した。ゼラチン、ヘパリン、DMSO、BSA、O−フェニレンジアミン・ヒドロクロライド(O-phenylenediamine dihydrochloride:OPD)、及び過ホウ酸ナトリウムを有するクエン酸リン酸塩緩衝錠剤は、Sigma Chemical Co.(St. Louis, MO)から入手した。HBSS+、0.5%のBSAの分析緩衝液を生成すべく、HBSS+にBSAを加える。組み換え型ヒトTNF−αは、Calbiochemから入手した。C−10は、Ricerca(Cleveland, OH)(26)で説明されているようにして合成される。C−10は、DMSO内に200mMの原液として作成される。
【0112】
<抗体>
【0113】
機能阻害マウスmAb HEL3/2(抗ヒトE−セレクチン;IgG)は、Dr. Raymond T. Camphausen(Wyeth Laboratories; Cambridge, MA)から提供された。機能阻害マウスmAb 51−10C9(抗ヒトVCAM−1;IgG)は、BD Phanningen(San Diego, CA)から入手した。マウスmAb R6.5(抗ヒトICAM−1;IgG2a)は、Dr. Robert Rothlein(Boehr.ingerIngelheim; Ridgefield, CT)から提供された。マウスmAb TS1/22(抗ヒトLFA−1;IgG)は、Endogen(Woburn, MA)から入手した。HRP共役ヤギF(ab´)2抗マウスIgGポリクローナル二次抗体(Calbiochem)は、ELISAにおいて最初のmAbを検出するのに使用される。p50(sc−1191)、p65(sc−109)、p52(sc−298)、c−rel(sc−70)、RelB(sc−226)、IRF−1(sc−1041X)に対するポリクローナル抗体は、Santa Cruz Biotechnology(Santa Cruz, CA)から入手した。
【0114】
<HAECの細胞培養及び処理>
【0115】
ヒト大動脈内皮細胞(Human Aortic Endothelial Cell:HAEC; Cambrex Bio Science Walkersville, Inc., Walkersville, MD)は、8%のFBS、100μg/mlのヘパリン、10ng/mlの内皮成長因子、100μg/mlの視床下部抽出物、2mMのL−グルタミン、1%の非必須アミノ酸、100ユニット/mlのペニシリン、及び100μg/mlのストレプトマイシンが追加されたM199上で培養される。HAECは、生死判別試験及びELISAのために、ゼラチンがコートされた96ウエル組織培養プレート(Corning Incorporated ; Corning, NY)上で継代培養される。また、HAECは、ノーザンブロット分析、ウエスタンブロット分析、及びEMSAのために、ゼラチンがコートされた100mmの組織培養皿(BD Falcon; Franklin Lakes, NJ)上で継代培養される。また、HAECは、接着分析のために、ゼラチンがコートされた35mmの組織培養皿(Corning)上で継代培養される。また、HAECは、ルシフェラーゼ・プロモータ・アッセイ(BD Falcon)のために、ゼラチンがコートされた24−ウエルの組織培養皿上で継代培養される。全ての実験は、融合性HAEC単層で行われる。他に明記されない限り、HAECは、C−10又は0.25%のDMSO(C−10に対する担体対照)の存在下又は非存在で、25ng/mlのTNF−αによって2〜24時間処理される。DMSOの濃度は、全てのC−10条件で、0.25%で一定に保たれる(他に明記されない限り)。この実験で使用される濃度でのC−10によるHAECの処理は、HAECの生存率にほとんど又は全く影響がないことが、HAEC単層のMTS分析(20)や目視検査により分かった(データは示さず)。
【0116】
U937細胞(American Type Culture Collection; Manassas, VA)は、8%のFBS、2mMのL−グルタミン、100ユニット/mlのペニシリン、及び00μg/mlのストレプトマイシンが追加されたRPMI上で培養される。接着分析のために、U937細胞は洗浄され、RPMIで再懸濁され、フロー接着分析に使用するまで氷上で保持される(<4時間)。
【0117】
<ELISA>
【0118】
ELISAは、前述した(20)と同様の方法で、HAECにおけるECAMのタンパク質レベルを明らかにするために使用される。HAECは、冷たいHBSS+で洗浄され、1%のホルムアルデヒドで4℃、20分固定され、冷たいHBSS+で洗浄され、8%のFBSを含有している冷たいM199で培養される。他に明記されない限り、以降は、全ての抗体の希釈及び洗浄は、8%のFBSを含有しているM199によって行われる。ECAMに対するマウスmAb(primary mAb)が加えられ(10g/ml)、HAECは4℃で20分培養される。培養後、前記ウエルは洗浄され、マウスIgGに対するペルオキシダーゼ共役ポリクローナル(二次)抗体が加えられる(1:50で希釈された)。4℃、20分での培養後、前記ウエルは洗浄され、過ホウ酸ナトリウムを含有するクエン酸リン酸塩緩衝液に溶解しているOPDで処理される。室温、10分での培養後、マイクロウエルプレート分光光度計(Molecular Devices; Sunnyvale, CA)を使用して、各ウエル内の液体の吸光度を450nmで測定する。全ての実験で、各条件は3つのウエルで実施される。
【0119】
<RNA単離及びノーザンブロット分析>
【0120】
ノーザンブロット分析は、前述(27,29,33)したのと同様の方法で、mRNAレベルを明らかにするために使用される。HAECはPBSで洗浄され、市販のキット(RNeasy Mini Kit; Qiagen Inc.; Valencia, CA)を使用して全てのRNAが抽出される。各レーンの全てのRNA12μgは、0.66Mのホルムアルデヒドを含んでいる1%の変性アガロース・ゲル上で分散される。ゲルは、Nytran膜(Schleicher and Schuell Inc.; Keene, NH)上に毛細血管ブロットされ、UV交差結合され、ハイブリダイゼーションに使用される。IRF−1用のプローブは、前述した(33)。G3PDH cDNAは、Clontech(Palo Alto, CA)から入手した。他のプローブ配列は、次の特異的プライマーを使用して、RT−PCR(33)により合成される。VCAM−1,5´GACTCCGTCTCATTGACTTGCAGCACCACAG3´及び5´ATACTCCCGCATCCTTCAACTGGGCCTTTCG3´(1876bp)、E−セレクチン,5´GTGCAGCCATTCCCCTGCTGGAGAGTTC3´及び5´GGGCCAGAGACCCGAGGAGAGTTATCTG3´(977bp)、並びにICAM−1,5´CTCAGGTATCCATCCATCCCAGAGAAGCCTTCC3´及び5´CCCTTGAGTTTTATGGCCTCCTCCTGAGCCTTC3´(1514bp)。cDNAは、Ladderman Labeling Kit(Takara Biochemical Inc.; Berkeley, CA)(33)を使用して、α−32P−dCTPによって標識される。ノーザンブロット分析は、BAS 1500 Bioimaging Analyzer(Fuji Photo Film Co., Ltd. Medical Systems USA Inc.; Stanford, CA)を使用して行われる。各実験は、少なくとも2回は繰り返される。
【0121】
<核抽出物及びEMSA>
【0122】
核抽出物は、プロテアーゼ阻害剤混合物(PMSF, Leupeptin, Pepstatin-A)の存在下で、NE−PER(R)抽出試薬(Pierce Chemical Co.; Rockford, IL)を使用して、採取したHAECから作成される。オリゴヌクレオチド(Biosynthesis Inc.; Lewisville, TX)はアニーリングされており、T4ポリヌクレオチド・キナーゼ酵素を使用して、γ−32P−ATPで標識化された二本鎖オリゴヌクレオチド端を沈殿させる。結合反応(20分、室温)は、32P標識プローブ(活量100,000cpm)、3〜6μgのHAEC核抽出物、1μgのポリ(dI−dC)、1mMのDTT、10%のグリセロール、及び1Xの結合バッファを含まれる。NF−kB EMSA用の結合バッファ(1OX)は、200mMのHEPES−KOH(pH7.9)、340mMのKCl、50mMのMgCl、5mMのEDTA(pH 8.0)、1%のTriton X−100である。IRF−1 EMSA用の結合バッファ(1OX)は、100mMのTris−HCL(pH 7.5)、500mMのNaCl、50mMのMgCl、10mMのEDTA(pH 8.0)である。対照実験では、核抽出物は、標識化していない二本鎖オリゴヌクレオチドの100倍モル過剰で培養される。スーパーシフト実験では、核抽出物は、2μgの適切な抗体と培養される。培養後、反応混合物は、1XのTBE(50mMのTris、50mMのホウ酸、及び1mMのEDTA)内で、5%グリセロールを含んでいる5%の非変性ポリアクリルアミド・ゲル上で電気泳動される(160V、室温)。ゲルは乾燥させられ、オートラジオグラフされる。各実験は、少なくとも2回は繰り返される。
【0123】
<フロー接着分析>
【0124】
McIntire, Smith and colleagues(34)で説明されているのと類似している平行板型フローチャンバーがこの実験に使用される。我々の特別なセットアップは前述した(20)。融合性のHAEC単層を含んでいる35−mm組織培養皿が、フローチャンバーに装填される。簡単に洗浄した後、U937細胞(分析緩衝液中の5*10細胞/ml)が、1.8ダイン/cmの剪断応力で、HAEC単層上にドローされる。U937細胞の蓄積を測定するために、フローの2.5分後、8つの異なる視野で、HAEC単層に付着した(ローリング又は固着した)U937細胞の数が測定され、特に実施するの結果を得るために、前記視野領域で平均化及び正規化された。前記分析は、少なくとも3回行われる。ある実験では、C−10の非存在下又は存在下で、TNF−αによって活性化されたHAECは、mAb HEL3/2又は51−10C9(10μg/ml)、或いはHEL3/2及び51−10C9の組み合わせで処理される。mAbで処理したHAECは、接着分析で使用する前に、37℃で15分培養される。
【0125】
<デュアル・ルシフェラーゼ分析>
【0126】
異なる長さ−1641/+12、−288/+12、−228/+12、−85/+12bpからなる、4つのヒトVCAM−1・プロモータ欠損構造は、ヒトゲノムDNAからのPCRによって増幅される。各上流側プライマーは、前記プライマーの5´端に位置する制限エンドヌクレアーゼ・Mlu I部位を含んでいる。+12端に対応する下流側のプライマーは、5´端に位置するエンドヌクレアーゼ・Xho Iを含んでいる。PCR生成物は、Mlu I及びXho I(New England Biolabs Inc., Beverly, MA)により消化され、同様に消化されたpGL3ベーシック・ルシフェラーゼ・レポーター・ベクター(Promega, Madison, WI)の中に連結される。細胞は、GeneJuiceトランスフェクション試薬(Novagen Inc., Madison, WI)を使用して、400ngの示される構造又は対照としてのpGL3ベーシック・ルシフェラーゼ・レポーター・ベクターに24時間形質移入される。全ての細胞は、「内部」の形質移入対照として野生型のRenilla luciferase(Rluc)を含んでいる、phRL−TIL(Int−)ベクター(Promega)に形質移入される。ルシフェラーゼ分析は、Dual-Luciferase Reporter Assay System(Promega)を使用してLumat LB 9507チューブ照度計により行われる。全ての実験で、各条件は3つのウエルで行われる。各実験は、少なくとも2回繰り返される。
【0127】
<ウエスタンブロット分析>
【0128】
全細胞溶解液は、溶解緩衝液(150mM NaCl、1% IGEPAL CA−630、50mM Tris−HCL、pH 8.0)内で作成される。20μgの溶解液は、その後、変性状態下で、NuPAGE Bis-Tris System(Invitrogen; Carlsbad, CA)を使用して、4〜12%のBis−Tris PAGEゲル上に分散される。タンパク質は、IRF−1抗体によって試験されるニトロセルロース膜に移送される。その後のHRP共役ヤギ抗ウサギAb(sc-2054, Santa Cruz Biotechnology, Inc.)の結合は、Lumigen PS−3検出試薬(Amersham Pharmacia Biotech.; Piscataway, NJ)を使用して検出される。
【0129】
<統計>
【0130】
単一要素ANOVAは、統計的な差の存在を評価するのに使用される。ANOVAが複数の条件の間に著しい差を示したら、多重対比較のためにボンフェローニ・テスト(Bonferroni test)が使用される。ルシフェラーゼ・プロモータ分析における統計的な差を評価するのに、スチューデントのt検定が使用される。P値が<0.001の場合(ELISA)と、<0.05の場合(接着分析及びルシフェラーゼ・プロモータ分析)は統計的に有意と見なされる。他に明記されない限り、全てのエラーバーは、標準偏差を意味する。
【0131】
<結果>メチマゾール誘導体及び互変異性環状チオンは、TNF−α誘導性のVCAM−1発現を大幅に抑制し、E−セレクチン発現に対しては少しの影響を及ぼし、ICAM−1発現に対しては影響を及ぼさない。
【0132】
メチマゾール誘導体及び互変異性環状チオンのTNF−α誘導性のECAM発現に対する影響を、動脈内皮細胞(例えば、HAEC)を使用して調べた。TNF−α処理を4時間行った内皮細胞と24時間行った内皮細胞とではECAMのプロファイルは大きく異なるので(6)、TNF−α処理を4時間行った内皮細胞と24時間行った内皮細胞とについてのC−10の影響をそれぞれ調べた。最初に、4時間の場合と24時間の場合の、HAECにおけるTNF−α誘導性のECAMのタンパク質発現に対するC−10の影響を調べた。活性化されていないHAECは、E−セレクチン又はVCAM−1を発現するようには見えないが、ICAM−1を発現させた(図1A)。TNF−αによる処理を4時間行ったHAECは、E−セレクチン及びVCAM−1タンパク質発現を引き起こし、ICAM−1のタンパク質発現を大幅に増加させた(図1A)。DMSO(担体対照)によるHAECの処理(4時間)は、TNF−α誘導性のE−セレクチン、ICAM−1、及びVCAM−1のタンパク質発現に対してほとんど又は全く影響がなかった(図1A)。対照的に、C−10によるHAECの処理(4時間)は、TNF−α誘導性のVCAM−1のタンパク質発現を著しく減少させた(図1A)。この作用は、C−10の濃度が0.25mM(図1A)のときに観察された。HAECをメチマゾール誘導体及び互変異性環状チオンで4時間処理した場合は、TNF−α誘導性のE−セレクチン及びICAM−1のタンパク質発現に対して、ほとんど影響を及ぼさなかった(図1A)。タンパク質レベルでの発現は、RNAレベルでの発現と同様である。特に、ノーザンブロット分析によって、C−10は、投与量に依存して、TNF−α誘導性のVCAM−1のmRNA発現を減少させ、E−セレクチンのmRNA発現に対してはほとんど影響を及ぼさず、ICAM−1のmRNA発現に対しては全く影響を及ぼさないことが明らかになった(図1B)。
【0133】
24時間の場合でも、E−セレクチン発現に対する抑制効果も見られることを除いて、同様の結果が観察された。TNF−α処理を24時間行ったHAECにおけるE−セレクチン発現レベルは基礎レベルよりも高いが(図2A)、TNF−α処理を4時間行った場合よりも明らかに低かった(図1A)。24時間の場合は、TNF−αによって活性化させたHAECは、活性化させていないHAECと比べると、ICAM−1及びVCAM−1のレベルの上昇を示した(図2A)。DMSOによるHAEC処理(24時間)は、TNF−α誘導性のE−セレクチン、ICAM−1、及びVCAM−1の発現に対してはほとんど又は全く影響を及ぼさなかった(図2A)。対照的に、C−10によるHAEC処理(24時間)は、TNF−α誘導性のE−セレクチン及びVCAM−1発現を著しく減少させるが、ICAM−1の発現に対しては全く影響を及ぼさなかった(図2A)。この作用は、C−10の濃度が≧0.05mMのときに観察された(図2A)。この場合も、タンパク質レベルでの発現は、RNAレベルでの発現と同様である。特に、ノーザンブロット分析によって、C−10をTNF−αで24時間処理した場合は、投与量に依存して、TNF−α誘導性のVCAM−1及びE−セレクチンのmRNA発現を減少させ、ICAM−1のmRNA発現に対してはほとんど又は全く影響を及ぼさないことが明らかになった(図2B)。
【0134】
この作用はC−10の場合に限定されず、他のメチマゾール誘導体又は互変異性環状チオンによっても実証されている。
【0135】
(表1)大動脈内皮細胞における、TNF−α誘導性のVCAM−1のRNAレベルに対する、異なる濃度のMMI誘導体又は互変異性環状チオンの作用。

数値は、実験を3回繰り返した平均±SDである。
NDは、実施せず(not done)を意味する。
太字の数値は、大幅な抑制(P<0.05又はそれ以上)を示す。
【0136】
<メチマゾール誘導体又は互変異性環状チオン(例えば、C10)は、単球がTNF−αによって活性化されたHAECと細胞接着するのを抑制する>
【0137】
VCAM−1は、単核白血球の血管内皮への接着において重要な役割を果たすことが知られている(35)。この事実は、C−10がVCAM−1のタンパク質発現を大幅に抑制するという我々の発見(図1A及び2A)と相まって、単球(U937)がHAECと細胞接着することにおける、メチマゾール誘導体及び互変異性環状チオンの作用(4時間及び24時間)を調べることを動機付けた。この実験では、インビボでのフロー条件を再現するインビトロ・フローチャンバーを使用した。C−10の濃度は、我々のELISA分析(図1A及び2A)で最大の効果を示した0.5mM(4時間の場合)及び0.1mM(24時間の場合)とした。
【0138】
最初、どのECAMがU937細胞のTNF−α処理(4時間)によって活性化されたHAECへの接着に関与するのかを調べるのに、mAb阻害法を使用した。かなりの数のU937細胞が、TNF−α処理(4時間)によって活性化されたHAECと接着した(カラム2;図3A)。一方、活性化されていないHAECには、U937細胞はほとんど接着しなかった(カラム1;図3A)。VCAM−1に対する機能阻害mAbである51−1OC9による、TNF−α処理(4時間)によって活性化されたHAECの処理は、U937細胞接着に影響を及ぼさなかった(カラム3対カラム2;図3A)。また、E−セレクチンに対する機能阻害mAbであるHEL3/2による、TNF−α処理(4時間)によって活性化されたHAECの処理は、U937細胞接着を部分的に減少させた(カラム4対カラム2;図3A)。51−1OC9とHEL3/2の組み合わせによって、TNF−α処理(4時間)によって活性化されたHAECを処理した場合は、さらなる減少が見られた(カラム5対カラム4;図3A)。これらの結果により、TNF−α処理(4時間)によって活性化されたHAECへのU937の細胞接着は、E−セレクチン及びVCAM−1の両方により媒介されることが示唆される。このことは、他の報告(18)とも一致する。
【0139】
C−10と、E−セレクチンに対するmAb(HEL3/2)との組み合わせは、TNF−α誘導性のU937細胞接着(4時間)を大幅に減少させる(カラム6対カラム2;図3A)。さらに、C−10と、E−セレクチンに対するmAbとの組み合わせは、E−セレクチンに対するmAb単独で処理した場合と比べて、TNF−α誘導性のU937細胞接着(4時間)を大幅に減少させる(カラム6対カラム4;図3A)。C−10単独で処理した場合は、DMSOで処理した場合と比べると、TNF−α誘導性のU937細胞接着(4時間)に対してはほとんど影響を及ぼさない(カラム7対カラム8;図3A)。組み合わせると、これらのデータは、TNF−α誘導性のU937のHAECへの細胞接着(4時間)に対して、C−10が適度な効果を有することを実証する。このことは、mAbのE−セレクチン及びVCAM−1に対する抑制を必要とすることを示す上記のmAbデータ、及び、図1に示す4時間の時点では、C−10は、VCAM−1のmRNA及びタンパク質発現に対して選択的な効果を及ぼすという証拠と一致する。
【0140】
TNF−αを24時間活性化した時点では、より大幅な影響が観測される(図3B)。かなりの数のU937細胞が、TNF−αによって24時間活性化されたHAECに接着する(カラム2;図3B)。一方、活性化されていないHAECに対しては、U937細胞はほとんど接着しない(カラム1;図3B)。TNF−αによって24時間活性化されたHAECに対するU937細胞接着は、E−セレクチン及びVCAM−1の両方に依存する(カラム5対カラム2、3、4;図3B)。C−10と、E−セレクチンに対するmAb(HEL3/2)との組み合わせは、TNF−α誘導性のU937の細胞接着(24時間)を大幅に減少させる(カラム6対カラム2;図3B)。さらに、C−10とE−セレクチンに対するmAbとの組み合わせは、TNF−α誘導性のU937の細胞接着(24時間)を、E−セレクチンに対するmAb単独で処理した場合と比べて、大幅に減少させる(カラム6対カラム4;図3B)。また、C−10単独によるHAECの処理も、TNF−α誘導性のU937の細胞接着(24時間)を、DMSOで処理した場合と比べると大幅に減少させる(カラム7対カラム8;図3B)。したがって、上述した結果は、長期間(24時間)のTNF−α誘導性のU937のHAECへの細胞接着を、C−10が大幅に減少させることを明確に実証する。
【0141】
<メチマゾール誘導体又は互変異性環状チオン(例えばC−10)は、VCAM−1遺伝子転写に影響を及ぼす>
【0142】
上述したことから、実験した両方の条件下で、メチマゾール誘導体が、TNF−α誘導性のVCAM−1発現を抑制することは明白である(図1及び2)。メチマゾール誘導体がTNF−α誘導性を抑制するために転写活性的に作用するかどうかを検査するために、及び、C−10抑制作用の分子機構知るために、VCAM−1・プロモータ・レポーター分析を実施した。TNF−α誘導性のヒトVCAM−1発現に影響を及ぼすことが知られている様々な転写因子であるNF−kB、AP−1、SP−1、IRF−1、及びGATAとの結合部位の位置は、図4に示すように、−1641と+12との間に存在する(8〜11)。それらの活動を大きく分離するために、VCAM−1転写調節要素の4つのトランケーションが作成された(−1641/+12、−288/+12、−228/+12、及び−85/+12bp作成物)(図4)。これらは、その後、ルシフェラーゼ・レポータ・プラスミドに挿入され、HAECに形質移入される。
【0143】
TNF−α処理は、前記4つの作成物におけるプロモータ活性の増加を誘導する(図4)。C−10処理は、4つの作成物全てにおけるTNF−α誘導性活性を抑制する(図4)。TNF−α誘導性のプロモータ活性の増加は、−228/+12と−85/+12 bp作成物との間では減少することに注意されたい(図4)。C−10の抑制作用は、−85/+12 bp作成物で観察される(図4)。これらのデータは、C−10がVCAM−1遺伝子転写に作用することを明確に実証し、メチマゾール誘導体及び互変異性環状チオンがVCAM−1・プロモータの−85/+12 bpで生じる転写調節に作用することを示す。
【0144】
この作用はC−10の場合に限定されず、他のメチマゾール誘導体又は互変異性環状チオンによっても実証されている。
【0145】
(表2)hVCAM−1(−228〜+12)ルシフェラーゼ構成活性を使用した、TNF−α誘導性VCAM−1プロモータ活性に対する、異なる濃度のMMI誘導体又は互変異性環状チオンの作用。

数値は、実験を3回繰り返した平均±SDである。
NDは、実施せず(not done)を意味する。
太字の数値は、大幅な抑制(P<0.05又はそれ以上)を示す。
【0146】
<メチマゾール誘導体又は互変異性環状チオン(例えばC10)は、TNF−α誘導性NF−kBのVCAM−1・プロモータへの結合活性に影響を及ぼさない>
【0147】
VCAM−1プロモータにおけるNF−kBとの結合部位は、−85/+12 bpに位置する(図4)(8、9、11)。TNF−α誘導性VCAM−1発現におけるC−10の抑制作用が、C−10のTNF−α誘導性NF−kB活性による結果かどうかを判断するために、EMSAを行った。EMSAは、32P標識されたNF−kBプローブと、TNF−αによって処理された又は処理されていないHAECから作成された6μgの核抽出物を用いて、C−10の存在下又は非存在下で実施した(結果は示さず)。2時間のTNF−α処理を行うと、複合体は、TNF−α処理を行っていない対照と比べると顕著に誘導された。対照実験では、100倍モル過剰の未標識のNF−kBプロ−ブにより、TNF−α誘導性錯体形成を取り除いた。0.5mMのC−10又はDMSOの追加は、TNF−α依存性の錯体形成に影響を及ぼさなかった(データは示さず)。複合体の成分を特定するために、様々なNF−kBサブユニットに対する抗体を使用して、スーパーシフト実験を行った。NF−kBのp50及びp65サブユニットに対する抗体は、TNF−α誘導性の錯体をスーパーシフトした。一方、p52、c−rel及びrel−Bに対する抗体は、スーパーシフトしなかった(データは示さず)。また、スーパーシフト実験においては、0.5mMのC−10の追加も影響を与えない(データは示さず)。DMSO又はC−10処理だけでは、活性化させていないHAECに対して影響を及ぼさないことに注意されたい。理論に制約されることは決して望むものではないが、このデータは、メチマゾール誘導体及び互変異性環状チオンがECAM発現を抑制する機構は、NF−kB活性及びVCAM−1・プロモータへの結合の阻害によるものではないことを強力に示唆している。
【0148】
<メチマゾール誘導体又は互変異性環状チオン(例えばC10)は、TNF−α誘導性のIRF−IのVCAM−1・プロモータに対する結合活性を抑制する>
【0149】
ルシフェラーゼ・レポーター分析によってメチマゾール誘導体及び互変異性環状チオンがVCAM−1・プロモータの−85/+12 bpで生じる転写調節に影響を及ぼすことが示唆されたため、及び、EMSAによってC−10がTNF−αによって誘導されるNF−kB活性化に影響を及ぼさないことが実証されたため、我々はメチマゾール誘導体及び互変異性環状チオンが異なる下流部位で作用する可能性を考えた。IRF−1に対する結合部位は、VCAM−1・プロモータの−85/+12 bp、−11〜−1bpのNF−KB結合部位の下流に位置する。メチマゾール誘導体及び互変異性環状チオンのTNF−α誘導性VCAM−1発現に対する抑制作用が、メチマゾール誘導体及び互変異性環状チオンによるTNF−α誘導性IRF−1活性化の結果であるかどうかを調べるために、我々はEMSAを行った。EMSAは、32P標識化されたIRF−1プローブ(図5A)と、TNF−αで処理した又は処理していないHAECから作成した3μgの核抽出物を用いて、C−10の存在下又は非存在下(図5B)で行った。TNF−αで2時間処理すると、TNF−α処理を行っていない対照(レーン3対レーン2、図5B)と比較すると非常に顕著である、複合体が生じた(レーン3、図5B)。0.5mM及び1mMのC−10を加えると、TNF−α誘導性の錯体の形成を抑制する(レーン4及び5対レーン3、図5B)。DMSOは、TNF−α依存性の錯体形成に影響を及ぼさないことに留意されたい(レーン6対レーン3、図5B)。対照実験では、100倍モル過剰の未標識のVCAM−1 IRF−1 プローブ(レーン7、図5B)又は一致するIRF−1プローブ(レーン9、図5B)により、TNF−α誘導性錯体形成を取り除いた。しかしながら、100倍モル過剰の未標識のVCAM−1 IRF−1 プローブ(レーン8、図5B)又は一致するIRF−1プローブ(レーン10、図5B)による対照実験は、TNF−α誘導性錯体形成に影響を与えなかった。スーパーシフト実験によって(図5C)、IRF−1に対する抗体はTNF−αによって誘導される錯体をスーパーシフトすることが分かった(レーン4対レーン3、図5C)。組み合わせると、これらのデータは、メチマゾール誘導体及び互変異性環状チオンがVCAM−1・プロモータに対するIRF−1結合活性に作用することを実証し、メチマゾール誘導体及び互変異性環状チオンがIRF−1依存性のVCAM−1の発現を抑制することを強く示唆する。
【0150】
メチマゾール誘導体及び互変異性環状チオンがTNF−α誘導性のIRF−1のVCAM−1・プロモータへの結合(図5B)を抑制する機構をさらに検査及び測定するために、我々はTNF−α誘導性のIRF−1・タンパク質及びmRNAの発現におけるメチマゾール誘導体及び互変異性環状の作用を調べた。活性化させていないHAECは、IRF−1・mRNAを発現するようには見えなかった(図6A)。TNF−αで2時間処理したHAECは、IRF−1・mRNAを誘導する(図6A)。0.5mM又は1mMのC−10の追加は、HAECにおける、TNF−α誘導性のIRF−1のmRNA発現を減少させる(図6A)。RNAレベルでの発現は、タンパク質レベルでの発現と同様である。特に、HAECのC−10処理は、TNF−αによって誘導されるIRF−1のタンパク質発現(図6B)を減少させる。組み合わせると、このセクションのデータは、メチマゾール誘導体及び互変異性環状チオンがTNF−α誘導性のIRF−1のタンパク質及びmRNA発現を減少させることを実証する。
【0151】
これらの作用は、C−10の場合に限定されず、他のメチマゾール誘導体又は互変異性環状チオンによっても実証されている。
【0152】
(表3)TNF−アルファ誘導性のIRF−1のRNAレベルに対する、異なる濃度のMMI誘導体又は互変異性環状チオンの作用。

数値は、実験を2回繰り返した平均±SDである。
太字の数値は、大幅な抑制(P<0.05又はそれ以上)を示す。
【0153】
(表4)TNF−アルファ誘導性のIRF−1のタンパク質に対する、異なる濃度のMMI誘導体又は互変異性環状チオンの作用。

数値は、実験を2回繰り返した平均±SDである。
太字の数値は、大幅な抑制(P<0.05又はそれ以上)を示す。
【0154】
<考察>
【0155】
この実験により、我々はメチマゾール(自己免疫疾患(グレーブス病)の治療に通常使用される化合物)のフェニル誘導体であるC−10が新規な抗炎症性を有することを見いだした。特に、メチマゾール誘導体及び互変異性環状チオンは、TNF−α誘導性のVCAM−1のmRNA及びタンパク質発現を劇的に抑制し、E−セレクチン発現に対して比較的少なく抑制作用を有し、ICAM−1発現に対しては全く作用しない。また、VCAM−1抑制に対する作用は転写的であり、インビボのフロー状態と同様であるインビトロのフロー状態で、メチマゾール誘導体及び互変異性環状チオンが、TNF−α誘導性の単球のHAECへの細胞接着を著しく減少させることが分かった。
【0156】
いくつかの現在の及び潜在的な抗炎症剤は、サイトカイン誘導性のECAM発現を転写レベルで抑制することにより、白血球接着を減少させる(5)。これらの化合物の全てが、サイトカイン誘導性ECAM発現に対して同じ効果を示すわけではない。例えば、ラクタシスチン(lactacystin)はイトカイン誘導性のE−セレクチン、ICAM−1、及びVCAM−1発現を減少させることができるが(20)、他の化合物は、特定のECAM(例えば、VCAM−1)に対して選択的であるように見える(19,36)。白血球接着カスケードは、受容体−リガンド機能的重複を有することが実証されているので(例えば、E−セレクチンとVCAM−1は両方とも、リンパ球の連結及びローリングを支えることが分かっている(37,38))、いくつかのECAM発現を抑制する化合物は、様々な炎症状況において白血球接着を阻害するのにより効果的である。特に、メチマゾール誘導体及び互変異性環状チオンは、E−セレクチン及びICAM−1に対する作用と比較すると、TNF−α誘導性のVCAM−1の発現に対して大きな抑制作用を示し、フロー状態でも単球の内皮への細胞接着を減少させる。
【0157】
本発明は、NF−kBには依存せずに、かつIRF−1には依存的に、メチマゾール誘導体及び互変異性環状チオンによって、TNF−α誘導性のVCAM−1の発現を抑制することを提供する。さらに、メチマゾール誘導体及び互変異性環状チオンは、遺伝子調節におけるIRF−1の役割を検査するツールとして使用できる。
【0158】
TNF−α誘導性のVCAM−1プロモータ活性の増加は、−1641と−288 bpとの間のAP−1部位の削除によって著しく変化しない(図4)。このことは、前述したプロモータ分析(8)、及びAP−1作用はNF−kB要素に媒介されることを示している報告と一致する。TNF−α誘導性のプロモータ活性の明らかに失うことのない−288〜−228 bpの欠失は(図4)、他の内皮細胞タイプの特筆すべき従来の研究である(8,42)。興味深いことに、−85/+12 bp構造体ではNF−kB要素は無傷だとという事実にもかかわらず(図4)、プロモータ活性におけるTNF−α誘導性の増加は、−228/+12と−85/+12 bp構造体との間では減少する。
【0159】
結論として、本発明により、メチマゾール誘導体及び互変異性環状チオンが抗炎症性を示すことが明らかになった。特に、フェニルメチマゾールが、(i)HAECにおいて、TNF−α誘導性のVCAM−1発現を劇的に抑制し、E−セレクチン発現に対しては少しの作用を有し、ICAM−1発現に対しては全く作用しないこと、(ii)インビボでのフロー条件と同様のインビトロのフロー条件下で、TNF−α誘導性の単球(U937)のHAECへの細胞接着を著しく減少させること、(iii)TNF−α誘導性のIRF−1のVCAM−1プロモータへの結合活性を抑制すること、(iv)HAECにおけるTNF−α誘導性のIRF−1発現を減少させることが明らかになった。したがって、メチマゾール誘導体及び互変異性環状チオンは、病的炎症、特にVCAM−1に関連する病気(例えば、アテローム性動脈硬化、及び炎症性大腸炎)の治療に使用することができる。
【0160】
<本発明に係る医薬組成物>
【0161】
細胞接着及び炎症性疾患を治療するために、単位用量形態の医薬組成物は、1日当たり約0.05〜60ミリグラム(好ましくは、約0.05〜20ミリグラム)の活性化合物を提供する組成物を含んでいる。本発明に係る活性化合物の投与に有用な医薬組成物を以下に示す。これらは、従来の方法を使用して作成される。
【0162】
(カプセル剤)
活性成分:0.05〜20mg
ラクトース:20〜100mg
コーンスターチ,U.S.P.:20〜100mg
エアロゾル化されたシリカ・ゲル:2〜4mg
ステアリン酸マグネシウム:1〜2mg
【0163】
(錠剤)
活性成分:0.05〜20mg
微結晶性セルロース:50mg
コーンスターチ,U.S.P.:80mg
ラクトース,U.S.P.:50mg
ステアリン酸マグネシウム:1〜2mg
この錠剤は、従来技術を使用して、糖で被覆することができる。また、着色することもできる。
【0164】
(チュアブル錠)
活性成分:0.05〜20mg
マンニトール,N.F.:100mg
香料:1mg
ステアリン酸マグネシウム,U.S.P.:2mg
【0165】
(坐剤)
活性成分:0.05〜20mg
坐剤の基剤:1900mg
ジメチルスルホキシド:0.1〜3%
【0166】
(液剤)
活性成分:2.0%
ポリエチレン・グリコール300,N.F.:10.0%
グリセリン:5.0%
亜硫酸水素ナトリウム:0.02%
ソルビトール溶液70%,U.S.P.:50%
メチルパラベン,U.S.P.:0.1%
プロピルパラベン,U.S.P.:0.2%
蒸留水,U.S.P.(q.s.):100.0cc
ジメチルスルホキシド:0.1〜3%
【0167】
(注射剤)
活性成分:0.05〜60mg
ポリエチレン・グリコール600:1.0cc
亜硫酸水素ナトリウム,U.S.P.:0.4mg
注射用蒸留水(q.s.):2.0cc
ジメチルスルホキシド:0.1〜3%
【0168】
以上、本発明の様々な実施形態を説明したが、これらの実施形態は例示的なものであり、本発明を限定するものではない。従って、本発明の範囲は、特許請求の範囲及びその均等範囲によってのみ規定されるものである。
【0169】
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【図面の簡単な説明】
【0170】
【図1】メチマゾール誘導体(C−10)は、TNF−α誘導性のVCAM−1の発現を短期間で著しく抑制するが、TNF−α誘導性のE−セレクチン及びICAM−1の発現に対してはほとんど又は全く影響しない。C−10の存在下又は1つ以上の存在下で、活性化させてない及び4(ELISA)又は24(mRNA)時間、TNF−αで活性化させたHAECにおけるE−セレクチン、ICAM−1、VCAM−1のタンパク質(A)及びmRNA(B)レベルを、それぞれELISA及びノーザンブロット法によって測定した。(A)光学密度(450nm)によって示される吸光レベルは、HAECにおけるECAMタンパク質(例えばE−セレクチン)のレベルと相関する。全ての値は、実験を少なくとも3回繰り返した実験における平均±SDである。TS1/22niに対するmAbは、陰性対照である。(B)HAECから単離したRNAは、E−セレクチン、ICAM−1、VCAM−1に対する適切なプローブを使用してノーザンブロット法により分析された。ローディング対照として、G3PDHプローブが使用された。結果は、3回行った実験の代表例を示している。TNF−α活性化は、TNF−α(+)によるHAECの活性化、又は分析前の非活性化(−)を示す。処理は、TNF−αによる活性化中での、C−10、DMSOによるHAECの処理、又は非処理(−)を示す。*は、p<0.001を示す。
【図2】C−10は、24時間における、TNF−α誘導性のVCAM−1及びE−セレクチンの発現を短期間で著しく抑制するが、ICAM−1の発現に対してはほとんど又は全く影響しない。C−10の存在下又は1つ以上の存在下で、TNF−αで24時間活性化させたHAECにおけるE−セレクチン、ICAM−1、VCAM−1のタンパク質(A)及びmRNA(B)レベルを、それぞれELISA及びノーザンブロット法によって測定した。(A)光学密度(450nm)によって示される吸光レベルは、HAECにおけるECAMタンパク質(例えばE−セレクチン)のレベルと相関する。全ての値は、3つのウエルの標準偏差の平均±である。結果は、3回行った実験の代表例を示している。TS1/22niに対するmAbは、陰性対照であり、図1(A)と同様の結果を示す。(B)HAECから単離したRNAは、E−セレクチン、ICAM−1、VCAM−1に対する適切なプローブを使用してノーザンブロット法により分析された。ローディング対照として、G3PDHプローブが使用された。結果は、3回行った実験の代表例を示している。TNF−α活性化は、分析前での、TNF−α(+)によるHAECの活性化、又は非活性化(−)を示す。処理は、TNF−αによる活性化中での、C−10、DMSOによるHAECの処理、又は非処理(−)を示す。*は、p<0.001を示す。
【図3】C−10は、TNF−αで4時間活性化させたHAECのU937の細胞接着に対しては少しの作用を示し、TNF−αで24時間活性化させたHAECのU937の細胞接着に対しては劇的な作用を示した。HAECは、C−10の存在下又は1つ以上の存在下で、TNF−αで4時間(A)又は24時間(B)処理された。場合によっては、HAECは、接着分析の前に、mAbによって前処理される。その後、U937細胞はHAECにかん流され、流れの最後の2.5分間での、HAECに接着するU937細胞の数を測定した。TNF−α活性化は、接着分析前の、TNF−αによるHAECの活性化(+)、又は非活性化(−)を示す。処理は、TNF−αによる活性化の間の、0.5mM(A)又は0.1mM(B)のC−10、DMSOによるHAECの処理、又は非処理(−)を示す。mAbは、E−セレクチンに対するmAbであるHEL3/2(E)、VCAM−1に対するmAbである51−1OC9(V)、VCAM−1に対するmAbである51−1OC9(V)とE−セレクチンに対するmAbであるHEL3/2(V+E)との組み合わせによるHAECの前処理、又はその他の処理後かつ接着分析前における非処理(−)を示す。剪断応力=1.8ダイン/cm、n≧3、エラーバーはSEMを示す、#はp<0.05を示す。
【図4】C−10は、HAECにおける、TNF−α誘導性のVCAM−1プロモータ活性の増加を抑制する。(左側)様々な、TNF−α誘導性のVCAM−1発現に関与することが知られている転写要素との結合部位の位置は、−1641/+12、−288/+12、−228/+12、及び−85/+12 bp 構造を作成するためのテンプレートとして使用される。(右側)HAECは、左側に示される400ngの構造、又はpGL3ベーシック・ルシフェラーゼ・レポーター・ベクターに24時間形質導入される。全てのHAECは、「内部」の形質移入対照としてRenilla luciferase(Rluc)を含んでいる、phRL−TK(Int−)ベクターに形質導入される。HAECは、0.3mMのC−10の存在下又は非存在下で、10ng/mlのTNF−αにより6時間処理される。全ての処理条件は、0.3%のDMSOを含んでいる。分析は、デュアル・ルシフェラーゼ・レポーター分析システムで行われる。発光量(relative light unit:RLU)で表されるルシフェラーゼ活性は、プロモータ活性のレベルに関連する。全ての値は、3つのウエルの標準偏差の平均±である。示す結果は、3つの個別の実験の典型例である。バー1は、未処理のHAECを示し、バー2は、0.3mMのC−10で処理されたHAECを示し、バー3は、10ng/mlのTNF−αで処理されたHAECを示し、バー4は、0.3mMのC−10の存在下で、10ng/mlのTNF−αで処理されたHAECを示す。
【図5】C−10は、2時間におけるTNF−α誘導性のIRF−1のVCAM−1プロモータに対する結合活性の増加を抑制する。(A)EMSAで使用されるプローブ配列。上の線は、結合部位を示す。小文字は、突然変異塩基を示す。コンセンサスNF−kβプローブ(図示せず)のセンス鎖配列は、5´AGTTGAGGGGACTTTCCCAGGC3´である。(B)EMSA又は(C)スーパシフトESMAは、32P標識化したIRF−1プローブ、及び、C−10の存在下又は非存在下で10ng/mlのTNF−αにより処理されたHAECから作成された3μgの各抽出物により行われる。示す結果は、2つの個別の実験の典型例である。TNF−α活性化は、分析前の、TNF−αによるHAECの活性化(+)、又は非活性化(−)を示す。処理は、TNF−αによる活性化の間の、0.5mMのHAEC、1mMのHAEC、又はDMSOによる処理、或いは、非処理(−)を示す。対照実験は、標識化していないVCAM−1 IRF−1プローブ(VCAM−1 IRF野生型)又はVCAM−1 IRF−1突然変異プローブ(VCAM−1 IRF突然変異)又はコンセンサスIRF−1プローブ(Cons.IRF)又はコンセンサスNF−kβプローブ(Cons.NF−kβ)又は2μgのIRF−1に対する抗体(IRF−1 Ab)の非存在下(−)又は100倍モル過剰の存在下を示す。
【図6】C−10は、TNF−α誘導性のIRF−1発現を減少させる。C−10の存在下又は非存在下での、TNF−αで活性化させた及び活性化させてないIRF−1におけるRNA(A)及びタンパク質(B)のレベルを、それぞれノーザンブロット分析及びウエスタンブロット分析により測定した。(A)HAECから単離したRNAは、IRF−1プローブを用いてノーザンブロット分析した。臭化エチジウム染色されたrRNAは、ローディング・コントロールされた。(B)HAECの全ての細胞溶解物は、IRF−1抗体を用いて、ウエスタンブロット分析した。転写後のブロットのポンソーS染色により、全てのタンパク質のローディングを明らかにした(データは示さず)。TNF−α活性化は、分析前での、10ng/mlのTNF−α(+)によるHAECの活性化、又は非活性化(−)を示す。C−10は、TNF−αによる活性化の間の、0.5mMのHAEC、1mMのC−10、又はDMSO(−)による処理を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳類における細胞接着を抑制する方法であって、
細胞接着を防止、阻害又は抑制するのに有効な量のメチマゾール誘導体又は互変異性環状チオン或いはその混合物を含有する医薬組成物を、前記哺乳類に投与するステップを含む方法。
【請求項2】
哺乳類における、細胞接着に媒介される疾患、疾病、病気又は症状を治療する方法であって、
細胞接着を防止、阻害又は抑制するのに有効な量のメチマゾール誘導体又は互変異性環状チオン或いはその混合物を含有する医薬組成物を、前記哺乳類に投与するステップを含む方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、
前記疾患又は病気は、急性肺損傷、アレルギー性鼻炎、アルツハイマー病、関節炎、ぜんそく、アテローム性動脈硬化症、自己免疫性糸球体腎炎、ベーチェット氏病、癌、脳梗塞、慢性肝炎、肝硬変、皮膚アナフィラキシー反応、皮膚血管炎、遅延型過敏反応、糖尿病、播種性血管内凝固症候群、肺好酸球性肉芽腫、胃炎、巨細胞性動脈炎、グレーブス病、出血性ショック、高血圧性血管疾患、甲状腺機能低下症、炎症性大腸炎(クローン病、潰瘍性大腸炎)、炎症性皮膚病、腸梗塞、川崎病(粘膜皮膚リンパ節症候群)、リンパ球様間質性肺炎、マラリア、髄膜炎、多発性硬化症、心筋梗塞、臓器移植(ホスト対グラフト、グラフト対ホスト)、結節性多発性動脈炎、多発性筋炎/皮膚筋炎、乾癬、肺梗塞、腎梗塞、虚血後の再かん流傷害、リケッチア脈管炎、サルコイドーシス、敗血症、シェーグレン病、脳梗塞、全身性エリテマトーデス、熱傷(やけど)、閉塞性血栓血管炎(バージャー病)、血栓症、甲状腺炎、結核症、脈管炎、及びヴェーゲナー肉芽腫症の内の1つ以上であることを特徴とする方法。
【請求項4】
哺乳類における、細胞接着を防止、阻害又は抑制する方法であって、
VCAM−1に媒介される細胞接着を防止、阻害又は抑制するのに有効な量のメチマゾール誘導体又は互変異性環状チオン或いはその混合物を含有する医薬組成物、及び薬学的に許容される担体を、前記哺乳類に投与するステップを含む方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法であって、
前記細胞接着は、VCAM−1及びE−セレクチンに媒介されることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法であって、
前記細胞接着は、IRF−1依存性のVCAM−1に媒介される細胞接着であることを特徴とする方法。
【請求項7】
哺乳類における、サイトカイン誘導性の細胞接着を防止、阻害又は抑制する方法であって、
VCAM−1に媒介される細胞接着を防止、阻害又は抑制するのに有効な量のメチマゾール誘導体又は互変異性環状チオン或いはその混合物を含有する医薬組成物、及び薬学的に許容される担体を、前記哺乳類に投与するステップを含む方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法であって、
前記細胞接着は、VCAM−1及びE−セレクチンに媒介されることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法であって、
前記細胞接着は、IRF−1依存性のVCAM−1に媒介される細胞接着であることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項7に記載の方法であって、
前記サイトカインは、TNF−アルファであることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項1、4、又は7に記載の方法であって、
細胞接着に関連する炎症を防止、阻害又は抑制するために用いられることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項7に記載の方法であって、
サイトカイン誘導性の細胞接着に関連する炎症を防止、阻害又は抑制するために用いられることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項1、4、又は7に記載の方法であって、
免疫又は自己免疫反応に関連する細胞接着を防止、阻害又は抑制するために用いられる
【請求項14】
請求項4に記載の方法であって、
成人呼吸窮迫症候群、AIDS、アレルギー病、動脈硬化症、関節炎、ぜんそく、アテローム性動脈硬化症、循環器疾患、網膜剥離、有害な血小板凝集、炎症、炎症性大腸炎、多発性硬化症、腫瘍性疾患、眼炎症性疾患、骨関節炎、骨粗しょう症、乾癬、限局性腸炎、移植後の拒絶、血栓溶解後の再閉塞、再かん流傷害、シェーグレン症候群、皮膚炎症性疾患、全身性エリテマトーデス、血栓症、I型型糖尿病、甲状腺炎、及び、創傷から成る群より選択される1つ以上の病気を治療又は予防するために用いられることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項1、4、又は7に記載の方法であって、
前記医薬組成物は、

から選択される安全で有効な量の活性化合物、及び薬学的に許容される担体を含むことを特徴とする方法。
ただし、
Yは、H、C−Cアルキル、C−C置換アルキル、NO、及びフェニル部分

から成る群より選択され、
Yの1つだけは前記フェニル部分であり得、
は、H、OH、C−Cアルキル、及びC−C置換アルキルから成る群より選択され、
は、H、C−Cアルキル、及びC−C置換アルキルから成る群より選択され、
は、H、C−Cアルキル、C−C置換アルキル、及びCHPhから成る群より選択され、
は、H、C−Cアルキル、及びC−C置換アルキルから成る群より選択され、
Xは、S及びOから選択され、
Zは、SR、OR及びC−Cアルキルから選択され、
Yがフェニル部分でない場合は、R及びRの少なくとも2つはC−Cアルキルであり、
Zがアルキルの場合は、Yの少なくとも1つはNOである。
【請求項16】
請求項15に記載の方法であって、
Zは、SR及びORから選択されることを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法であって、
ZがSRであり、XがSであることを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法であって、
YがHであることを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項18に記載の方法であって、
がC−Cアルキルであることを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項19に記載の方法であって、
がメチルであることを特徴とする方法。
【請求項21】
請求項19に記載の方法であって、
の少なくとも1つは、メチルであることを特徴とする方法。
【請求項22】
請求項20に記載の方法であって、
両方のRがメチルであることを特徴とする方法。
【請求項23】
請求項15に記載の方法であって、
前記活性化合物は、次の化学構造式で表されることを特徴とする方法。

【請求項24】
請求項15に記載の方法であって、
前記活性化合物は、次の化学構造式で表されることを特徴とする方法。

【請求項25】
請求項15に記載の方法であって、
前記活性化合物は、次の化学構造式で表されることを特徴とする方法。

【請求項26】
請求項15に記載の方法であって、
前記活性化合物は、次の化学構造式で表されることを特徴とする方法。

【請求項27】
請求項15に記載の方法であって、
前記活性化合物は、次の化学構造式で表されることを特徴とする方法。

【請求項28】
請求項17に記載の方法であって、
Yの1つは、フェニル部分であることを特徴とする方法。
【請求項29】
請求項26に記載の方法であって、
及びRがHであることを特徴とする方法。
【請求項30】
請求項27に記載の方法であって、
がメチルであり、Rの少なくとも1つがメチルであることを特徴とする方法。
【請求項31】
請求項28に記載の方法であって、
がHであることを特徴とする方法。
【請求項32】
請求項29に記載の方法であって、
両方のRは両方ともメチルであることを特徴とする方法。
【請求項33】
請求項15に記載の方法であって、
前記活性化合物は、

から成る群より選択されることを特徴とする方法。
【請求項34】
請求項15に記載の方法であって、
前記医薬組成物は、プロドラッグの形態であることを特徴とする方法。
【請求項35】
請求項15に記載の方法であって、
前記医薬組成物は、
約0.01%〜25%の活性化合物と、
約75%〜99.9%の薬学的に許容される担体とを含むことを特徴とする方法。
【請求項36】
請求項1、4、又は7に記載の方法であって、
前記医薬組成物は、
安全で有効な量の、次の化学構造式で表される活性化合物を含むことを特徴とする方法。

ただし、Rは、H、C−Cアルキル及びC−C置換アルキルから成る群より選択される。
【請求項37】
請求項34に記載の方法であって、
は、C−Cアルキル及びC−C置換アルキルから成る群より選択されることを特徴とする方法。
【請求項38】
請求項35に記載の方法であって、
がメチルであることを特徴とする方法。
【請求項39】
請求項1、4、又は7に記載の方法であって、
前記医薬組成物は、安全で有効な量の、

から選択される化合物、及び薬学的に許容される担体を含むことを特徴とする方法。
ただし、Yは、H、C−Cアルキル、C−C置換アルキル、NO、及びフェニル部分

から成る群より選択され、
Yの1つだけは前記フェニル部分であり得、
は、H、OH、ハロゲン、C−Cアルキル、C−C置換アルキル、C−Cエステル、及びC−C置換エステルから成る群より選択され、
は、H、C−Cアルキル、及びC−C置換アルキルから成る群より選択され、
は、H、C−Cアルキル、C−C置換アルキル、及びCHPhから成る群より選択され、
は、H、C−Cアルキル、及びC−C置換アルキルから成る群より選択され、
Xは、S及びOから選択され、
Zは、SR、OR、S(O)R、及びC−Cアルキルから選択され、
Yがフェニル部分ではない場合は、R及びRの少なくとも2つはC−Cアルキルであり、
Zがアルキルの場合は、Yの少なくとも1つはNOである。
【請求項40】
請求項37に記載の方法であって、
前記活性化合物は、

から成る群より選択される
ただし、Rは、OH、M、及びOOCCHMから成る群より選択され、
Mは、F、Cl、Br、及びIから成る群より選択される。
【請求項41】
請求項38に記載の方法であって、
前記活性化合物は、

から成る群より選択される
ただし、R10は、H、NO、Ph、4−HOPh、及び4−MPから成る群より選択され、
Mは、F、Cl、Br、及びIから成る群より選択される。
【請求項42】
白血球の血管接着に関連する病気の治療方法であって、
(a)白血球の血管内への異常な接着に関連する病気の疑いのある患者を特定するステップと、
(b)内皮細胞におけるVCAM−1及びE−セレクチンの少なくとも1つの細胞表面発現を減少させるのに十分な量のメチマゾール誘導体又は互変異性環状チオン或いはその混合物を含有する医薬組成物を、前記患者に投与するステップとを含み、
それによって白血球細胞の血管内への接着を減少させる方法。
【請求項43】
請求項40に記載の方法であって、
1つ以上のさらなる活性成分が本発明に係る化合物と併用され、
(a)VCAM−1拮抗薬、
(b)ステロイド、
(c)免疫抑制剤、
(d)抗ヒスタミン剤、
(e)非ステロイド系抗ぜんそく薬、
(f)非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)、
(g)シクロオキシゲナーゼ−2(COX−2)阻害薬、
(h)IV型ホスホジエステラーゼ阻害薬(PDE−IV)、
(i)ケモカイン受容体拮抗薬、
(j)コレステロール降下薬、
(k)抗糖尿病薬、
(l)インターフェロン・ベータ製剤、
(m)抗コリン剤、及び
(n)抗生物質
から選択される医薬組成物と別々に又は一体に投与されることを特徴とする方法。
【請求項44】
哺乳類における、VCAM−1に媒介される細胞接着を防止、阻害又は抑制する、又は細胞接着に関連する炎症を防止、阻害又は抑制する能力がある化合物のスクリーニング方法であって、
(a)前記哺乳類に試験化合物を接触させるステップと、
(b)白血球の接着又は移動或いはその両方における、前記試験化合物の作用を測定するステップと、
(c)前記試験化合物が、前記接着又は移動或いはその両方に対する抑制剤であるかどうかを判断するステップとを含む方法。
【請求項45】
請求項42に記載の方法であって、
前記試験化合物の作用の測定は、
IRF−1・RNA発現レベルの測定、
IRF−1・タンパク質発現レベルの測定、
IRF−1依存性のVCAM−1プロモータ活性化の測定、
サイトカイン誘導性のIRF−1RNA発現レベルの測定、
サイトカイン誘導性のIRF−1タンパク質発現レベルの測定、
サイトカイン誘導性のIRF−1依存性VCAM−1プロモータ活性化の測定、
TNF−アルファによって増加したIRF−1・RNA発現レベルの測定、
TNF−アルファによって増加したIRF−1タンパク質発現レベルの測定、及び
TNF−アルファによって増加したIRF−1依存性VCAM−1プロモータ活性化の測定、
の1つ以上を含んでいることを特徴とする方法
【請求項46】
請求項42に記載の方法であって、
前記試験試験化合物の作用の測定は、
VCAM−1・RNAの発現レベルの測定、
サイトカイン誘導性のVCAM−1タンパク質発現レベルの測定、
サイトカイン誘導性のVCAM−1プロモータ活性化の測定、
TNF−アルファによって増加したVCAM−1・RNA発現レベルの測定、
TNF−アルファによって増加したVCAM−1タンパク質発現レベルの測定、及び
TNF−アルファによって増加したVCAM−1プロモータ活性化の測定、
の1つ以上を含んでいることを特徴とする方法。
【請求項47】
VCAM−1発現細胞における細胞接着阻害作用を有する化合物のスクリーニング方法であって、
(a)前記VCAM−1発現細胞に試験化合物を接触させるステップと、
(b)前記VCAM−1発現細胞を、VCAM−1リガンド発現細胞に接触させるステップと、
(c)前記VCAM−1発現細胞の前記VCAM−1リガンド発現細胞への結合における、前記試験化合物の作用を測定するステップと、
(d)前記試験化合物が、前記VCAM−1発現細胞のVCAM−1リガンド発現細胞への結合作用における抑制剤であるかどうかを判断するステップとを含む方法。
【請求項48】
請求項45に記載の方法であって、
前記試験化合物の追加前に、追加と同時に、又は追加後に、
VCAM−1発現細胞に、VCAM−1の発現を抑制する能力のあるサイトカインを接触させるステップをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項49】
請求項46に記載の方法であって、
前記サイトカインは、TNF−アルファであることを特徴とする方法。
【請求項50】
請求項47に記載の方法であって、
前記VCAM−1発現細胞は、
非免疫性標的組織細胞、内皮細胞、及び上皮細胞から成る群より選択されることを特徴とする方法。
【請求項51】
請求項47に記載の方法であって、
前記VCAM−1発現細胞は、ヒト大動脈内皮細胞(HAEC)であることを特徴とする方法。
【請求項52】
請求項47に記載の方法であって、
前記VCAM−1リガンド発現細胞は、白血球であることを特徴とする方法。
【請求項53】
請求項47に記載の方法であって、
前記細胞は、少なくとも30分間接触を保たれることを特徴とする方法。

【公表番号】特表2007−529510(P2007−529510A)
【公表日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−503869(P2007−503869)
【出願日】平成16年3月16日(2004.3.16)
【国際出願番号】PCT/US2004/007888
【国際公開番号】WO2005/094819
【国際公開日】平成17年10月13日(2005.10.13)
【出願人】(506313350)インターシア・コーポレイション (1)
【氏名又は名称原語表記】INTERTHYR CORPORATION
【住所又は居所原語表記】216 Longview HeightsRoad, Athens, OH 45701, U.S.A.
【Fターム(参考)】