説明

細胞死を予防および治療するための手段およびそれらの生物学的適用

細胞死でのカスパーゼ−2活性を予防し、阻止し/沈黙させるための阻害剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞死、特にはニューロンの細胞死を予防または治療するための手段、方法および産物に関する。
【背景技術】
【0002】
ニューロンの細胞死は、胚形成の間に、過剰のニューロンを取り除いて適切な前シナプス結合および後シナプス結合を確実にし、機能的な成人脳の形成を可能にするために起こる。
【0003】
通常の加齢に関連する後分裂(post-mitotic)死の他に、急性の損傷(例えば低酸素症−虚血(hypoxia-ishemia)、脳卒中、脊髄損傷(spinal cord injury)、外傷)または慢性の神経変性疾患の際に、環境上または遺伝子の突然変異の因子が成人のヒトにおいてニューロン死を誘発し得る。
【0004】
これらの疾患に伴う細胞死は、形態学的および生化学的特徴を示す、ネクローシス、オートファジー(autophagy)またはアポトーシスの3つの異なった機構によって発生し得る。生理学的かつ病理学的なニューロン死は、しばしば、欠陥のあるアポトーシス調節と関連し、この活性な細胞自殺機構に通じるシグナリング経路は、哺乳動物細胞において、システイン−アスパラギン酸特異的プロテアーゼ(カスパーゼ)−依存性経路とカスパーゼ非依存性経路とに分けられ得る。
【0005】
ニューロンのアポトーシスは、開始、決定、実行および分解を含む一連の期に分けられ得る活性な細胞自殺機構である。この事象のカスケードは、特定の機構の活性化によって駆動される。この特定の機構は、システイン依存性アスパラギン酸特異的プロテアーゼ(カスパーゼ)の活性化および決定的(または増幅)調節オルガネラとして作用し得るミトコンドリアの両方を含む。実際に、ミトコンドリアの変化は、ミトコンドリア内膜の電気化学的勾配(ΔΨ)の損失およびアポトーシス発生因子、例えばシトクロムc、Smac/Diabloおよびアポトーシス誘導因子(Apoptosis Inducing Factor)の放出を含む。一旦ミトコンドリアから放出されると、これらのエフェクターは、カスパーゼ依存性および/またはカスパーゼ非依存性の細胞質および核の解体の引き金となる。それ故に、カスパーゼに結び付けられるミトコンドリアの因子は、アポトーシスの分解期に関与し、結果として、細胞収縮(cell shrinkage)、核凝縮(nuclear condensation)、アポトーシス体の放出および「eat-me」シグナル、例えば、ホスファチジル−セリンの細胞質膜の外側小葉状部(leaflet)への転座の発生をもたらす。食細胞(phagocyte)の不存在下では、細胞はアポトーシスに束縛され、最終的には、二次的ネクローシスと呼ばれる非特異的な細胞質膜の破壊を経る。
【0006】
ニューロンのアポトーシスの間のミトコンドリア、カスパーゼおよび他の事象のそれぞれの寄与は依然として、特に、所与の死の誘導物質/細胞型の連動に関して解明されていない。
【0007】
最近になるまで、ニューロン細胞のアポトーシスおよびネクローシスは、主として、2タイプのアプローチによって調査されていた。第一群の(生化学的な)技術は、一般的にミトコンドリア・スクシナートデヒドロゲナーゼ活性の比色評価(MTTアッセイ)またはラクターゼデヒドロゲナーゼ活性の細胞外放出(LDHアッセイ)によるニューロンの死の末期の事象を評価する。これらの通常のモノパラメトリックなパラメータ定量技術は、細胞死の機構に関する情報を与えず、他の生化学過程の検出に結び付けられ得ない。
【0008】
より最近になって、いくつかのニューロンに適合型細胞分画プロトコルが、蛍光発生基質を用いる免疫ブロット法およびカスパーゼ活性化によるシトクロムc転座の生化学的評価に関して公表された。このような最近の方法は、ニューロンの個体数についての半定量的情報を与えるが、マルチパラメトリックでかつ実時間の分析を除外する。第二群の技術は、蛍光顕微鏡法(fluorescence microscopy:FM)の読み出しを用いて、オルガネラの改変またはアポトーシスが関連するタンパク質を検出する。これらのFM研究の大部分は、クロマチンの形態の視覚化(ヘキスト(登録商標)染色)を含む末期の核変化および/またはDNA断片化の生化学的検出(TUNELアッセイ)に焦点が当てられている。ニューロンについての最新のFM研究では、シトクロムcの(固定された細胞での)免疫局在化(immuno-localization)が報告されているが、細胞生物学の他の分野とは対照的に、ミトコンドリアの変化およびカスパーゼ活性化の現場(in situ)検出を用いるニューロンについての研究数は限定される。培養された一次ニューロン(primary neuron)に適用される場合、FMをベースとする分析は、時間を消費し、面倒であり、定量化は、細胞体凝集物および重畳する神経突起(neurite)ネットワークによって阻害される。さらに、高感度蛍光プローブのフォトブリーチング(photo-bleaching)は、劇的なミスリーディング解釈につながり得、かつ、早期の死に関連する事象の実時間の追跡調査を除外し得る。このため、キーとなるアポトーシス事象の細胞生物学的特徴は、一次ニューロンにおいて十分に証明されたわけでも秩序立てられたわけでもなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明者らは、特に一次皮質ニューロンまたはニューロン細胞系または非ニューロン細胞系のために有用なアポトーシス現象の動力学を分析するための補完的でかつ定量的なアプローチを開発した。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このようなアプローチにより、本発明者らは、アポトーシスに関連する分子レベルの事象を系統立ておよび分析する新しい方法を開発した。この方法によりアポトーシスに関連する事象の変遷(chronology)および階層性(hierarchy)をニューロン細胞において評価するために、本発明者らは、実験上の急性死モデルを精妙に作り上げて、アポトーシス過程に介入するより基部に近い(proximal)可逆性のチェックポイントを決定し、前記方法をこのモデルに適用した。都合の良いことに、この評価は、ニューロン細胞、ニューロン細胞系並びに非ニューロン細胞および非ニューロン細胞系について行われ得る。
【0011】
そこで、本発明の目的は、細胞死を予防するための細胞内チェックポイントを識別するためのマルチパラメトリックな分析および画像化プレートフォーム(plateform)方法および細胞死を阻止および予防するためのその使用を提供することである。
【0012】
本発明の別の目的は、本発明者らがニューロンまたは細胞系における1以上のアポトーシスのホールマーク(hallmark)の実時間追跡方法を提供することである。
【0013】
本発明の別の目的は、カスパーゼ−2(Nedd-2;Ich-1とも呼ばれる)遺伝子のサイレンシングを誘導するか、または後アポトーシス(post-apoptotic)カスパーゼ−2活性を阻害する(または下流のカスパーゼ−2依存性過程に干渉する)新規化合物を提供することである。
【0014】
本発明の別の目的は、カスパーゼー2に関係する疾患および損傷の医薬組成物および治療方法を提供することである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
1つの局面によると、本発明は、細胞死を予防するための方法であって、所与の誘導方法に応じて、所与の細胞タイプにおいて、アポトーシス関連事象の階層性を決定する工程と、アポトーシス過程に干渉するためにより基部に近い可逆性のチェックポイントを阻止する工程とを包含する方法に関する。
【0016】
この方法は、有利には、迅速な定量フローサイトメトリーおよび定量/定性蛍光顕微鏡法分析をニューロンにおいて併せて行うことによって行われる。この方法はまた、有利には、非ニューロン細胞において行われる。前記方法はまた、ニューロン細胞系について用いられ得る。
【0017】
両技術の使用は、アポトーシスの決定、実行、早期および末期の分解期の同時検出を可能にする。
【0018】
実施例により説明されるように、本発明は、MPTP処理を含む神経毒性障害に応答したΔΨおよび形質膜、核および細胞形態の粒状度および細胞サイズ変化の信頼性のある実時間フローサイトメトリーによるモニタリングを生じさせる手段を提供する。
【0019】
特定の非オーバーラップ(non-overlapping)蛍光プローブおよび/または特定の抗体および/または薬理学的試剤を用いて、本発明は、アポトーシスの細胞生物学を研究し、新しい保護性分子を特徴付けることを可能にする有用な手段を提供する。
【0020】
ニューロン死経路を研究し、かつ上流のチェックポイントを識別するための実験モデルとして、ニューロン培養における血清欠乏(serum deprivation)が本発明者らによって用いられた。ニューロンの発生および病的状態である際、適切なターゲットまたは代謝物(酸素、グルコース、カリウム、神経栄養性または成長因子、栄養素)およびターゲットにより誘導された神経栄養性因子の供給源を見つけ損なったニューロンは、アポトーシスの細胞死を経る(Deckwerthら,1996;Deshmuckら,1996および1998;Liptonら,1999;Plenislaら,2001;Changら,2002)。
【0021】
前記マルチパラメトリックでかつ画像化分析的なプレートフォームを用い、かつ、急性血清欠乏(SD)誘導性のニューロン細胞死の関連でカスパーゼの選択的な役割(薬理学的な阻害;小さい干渉性のRNA遺伝子ノックダウン)を研究することにより、本発明者らは、カスパーゼ−2がBax依存性MMPの上流の制御因子であること見出した。したがって、本発明は、チェックポイントがカスパーゼ−2である方法に特に関する。本明細書および請求の範囲において用いられた用語「カスパーゼ」は、選択的スプライシングによって得られる種々の形態を包含する。
【0022】
本発明者らによって示されるように、早期のカスパーゼ−2の活性化は、ミトコンドリアのBax転座、ミトコンドリア膜電位(ΔΨ)の崩壊(disruption)、カスパーゼ−9/カスパーゼ−3のシトクロムc放出依存性の活性化、核変化(alteration)、ホスファチジルセリンの露出および最終的な形質膜の透過性能(permeabilization of the plasma membrane:PMP)に必要とされる。
【0023】
本発明の別の実施形態によると、前記チェックポイントはカスパーゼである。
【0024】
さらに別の実施形態によると、前記チェックポイントは、関連性のないカスパーゼ活性化である。
【0025】
このため、本発明はまた、カスパーゼ−2発現を沈黙させるためにカスパーゼ−2活性(および/またはカスパーゼ−2/bax相互作用)を予防または防止することが可能な分子、カスパーゼ−2に関係する疾患および損傷を治療するため、特には、(低酸素症−)虚血損傷を治療するために有用な医薬組成物に関する。
【0026】
別の局面では、本発明は、カスパーゼ−2阻害剤およびニューロン細胞死においてカスパーゼ−2を阻害する/沈黙させる方法に関する。
【0027】
本発明の好ましい実施形態では、カスパーゼ−2阻害剤は、カスパーゼ−2発現を低減させるまたは抑制するようにカスパーゼ−2 mRNAを特異的にターゲットにすることが可能な単離された二本鎖RNA分子である。
【0028】
本発明は、特にマウスおよびヒト起源の一次ニューロンまたはニューロン細胞系におけるカスパーゼ−2活性の低減または抑制に特に関する。
【0029】
本発明はまた、前記阻害剤による、腫瘍細胞を含む非ニューロン細胞におけるカスパーゼ−2活性の低減または抑制に関する。
【0030】
カスパーゼ−2発現を沈黙させるために用いられる二本鎖RNA分子は、15〜25ヌクレオチド、好ましくは19〜25ヌクレオチドの相補鎖からなる二本鎖分子(duplex)である。好ましくは、鎖の終端部を小さく干渉している(interfering)と、分解に対して安定化される。
【0031】
カスパーゼ−2のサイレンシングのための有利なsiRNAは、相補的な配列番号1および配列番号2の二本鎖分子からなる。他の有利なsiRNAは、相補的な配列番号6および配列番号7の二本鎖分子からなる。
【0032】
別の好ましい実施形態では、カスパーゼ−2阻害剤はshRNAである。このため、本発明は、細胞内、特にはニューロンおよび細胞系におけるカスパーゼ−2の細胞内(in cellula)サイレンシングにつながる、上記に定義されたsiRNAの配列をベースとするあらゆるshRNA構成体に関する。
【0033】
好ましいshRNA構築物(construct)は、配列番号1および配列番号2の両方または配列番号6および配列番号7の両方、配列番号8および配列番号9の両方、または配列番号10および配列番号11の両方の挿入断片を含む。
【0034】
前記siRNAまたはshRNAは、合成によって得られるかまたは細胞の二本鎖において生成される。
【0035】
実施例によって説明されるように、siRNAまたはshRNA遺伝子のノックダウンは、血清欠乏誘導性皮質ニューロン死を完全に予防する。
【0036】
本発明はまた、各RNA鎖の合成に関し、二重鎖分子を形成するこの鎖の組み合わせは、mRNA カスパーゼ−2を特異的にターゲットにすることが細胞内で可能である二本鎖分子を形成する。
【0037】
合成されたRNA分子は、阻害性のカスパーゼ−2発現の条件下に、ヒトまたは動物またはヒト原細胞(human origin)に導入される。導入工程は、適切な担体を使用することを包含するか、または、注入によって行われる。
【0038】
あるいは、前記RNAの発現についての遺伝情報を含むベクターが用いられる。このようなベクターも本発明の範囲内にある。
【0039】
本発明の阻害剤は、アポトーシスまたはネクローシスまたはオートファジータイプいずれかの細胞死を阻止する。
【0040】
本発明者らはまた、カスパーゼ−2が介在する細胞死をインビトロで減弱させる薬理学的(特定のペプチド(優先的ではあるが排他的ではないペンタペプチド)によるカスパーゼ−2活性の直接阻害)ツールを開発した。前記ツールは、米国仮係属出願に開示されている。
【0041】
Bax切断およびカスパーゼ−2活性は、血清欠乏によって死に誘導される皮質ニューロンにおいてミトコンドリア上流で起こり、カスパーゼ−2活性の阻害はBax切断の阻害を通じて生き残りにつながるので、この調節工程が、細胞を死に対して保護することが可能な新しい分子を開発するために本発明者らによって用いられた。
【0042】
上記のように、本発明者らは、カスパーゼ−2依存性経路がインビトロのニューロン死およびインビボの脳卒中の急性モデルにおいて必要とされることを証明した。本発明者らは、広範なスペクトルのカスパーゼ阻害と比較して、カスパーゼ−2特異的阻害がインビボのニューロンを保護するのにより効果的であることも示した。実施例に示すように、カスパーゼ−2は、定酸素症−虚血(H−I)損傷を含むインビボの病的状況におけるニューロン細胞死(特にアポトーシス)を阻害するための上流の主要なチェックポイントである。
【0043】
したがって、本発明は、配列番号5を有する分子を用いるカスパーゼ−2活性のインビトロ阻害に関する。本発明はまた、配列番号5を有する分子を用いるカスパーゼ−活性のインビボ阻害に関する。
【0044】
特に、本発明は、Baxおよびカスパーゼ−2間の相互作用を妨害するか、または、カスパーゼ−2依存性Bax切断を妨げることが可能な分子に関する。
【0045】
好ましいペプチドは、配列番号(例えば配列番号12〜23)を含む3〜40のアミノ酸の長さを有するBax配列から誘導される。特に好ましい配列は、下記を含む:
配列番号12:KTGAFLLQGFIQDRAGRMAGETP
配列番号13:GAFLLQGFIQDRAGRMAGETP
配列番号14:FLLQGFIQDRAGRMAGETP
配列番号15:LQGFIQDRAGRMAGETP
配列番号16:GFIQDRAGRMAGETP
配列番号17:FIQDRAGRMAGETP
配列番号18:IQDRAGRMAGETP
配列番号19:IQDRAGRMAGE
配列番号20:IQDRAGRMA
配列番号21:IQDRAGR
配列番号22:IQDRA
配列番号23:IQDR
本発明はまた、Baxおよびカスパーゼ−2間の相互作用を妨害するか、または、カスパーゼ−2依存性Bax切断を妨げることが可能であり、N末端またはC末端において、(特異的な認識に続くまたは続かないで)細胞に入りカスパーゼ−2およびBax間の相互作用を妨害することが可能なキメラ分子を生ずるペプチド性または非ペプチド性の分子と結合されたあらゆる分子を含む。
【0046】
本発明はまた、N末端またはC末端において、(特異的な認識に続くまたは続かずに)細胞に入りアポトーシスを予防または治療するか、またはミトコンドリア保護性の細胞保護効果を提供することが可能なキメラ分子を生ずるペプチド性または非ペプチド性の分子と結合された分子を含む。
【0047】
Baxおよびカスパーゼ−2間の相互作用を妨害することまたはカスパーゼ−2依存性Bax切断を妨げることが可能な分子に由来する他のペプチド分子は、前記配列番号を含む3〜10個のアミノ酸の長さを有し、該配列番号は、N末端またはC末端においてマーカー(例えば、蛍光発光性(AMC、AFC、PE...)、比色性(pNA...)または生物発光性基質、放射性同位体...)と結合されている。
【0048】
これは、特異的なカスパーゼ−2阻害剤を含む医薬組成物を提供するための本発明の別の目的である。
【0049】
本発明の医薬組成物は、治療上の有効量の、上記に定義された少なくとも1種のカスパーゼ−2阻害剤を、医薬上受容可能な担体(carrier)と共に含む。
【0050】
本発明は、上記に定義されたsiRNAまたはshRNA分子を含む医薬組成物に特に関する。
【0051】
本発明はまた、有効量の配列番号5を含む医薬組成物に関する。
【0052】
医薬組成物は、有効量の、Baxおよびカスパーゼ−2の相互作用を妨害することまたはカスパーゼ−2依存性Baxの切断を妨げることが可能な少なくとも1種の分子、特には、上記に定義のBax配列から誘導されるペプチド、特には、配列番号12〜配列番号23の配列を有するものおよびそれらから誘導される分子を含む。
【0053】
本発明による医薬組成物は、有利には、細胞死を低減させるために、経口、局所(例えば、大脳室内(intracerebroventicular)、化合物または医薬組成物で含浸されたゲルホーム(登録商標)の大脳内移植、機械的送達用器械の大脳内移植)または全身(例えば、腹膜組織内、静脈内...)投与による投与用に意図される。
【0054】
RNA二本鎖分子を含む阻害剤の投与は、有利には、ターゲット細胞内に核酸を導入するための古典的な方法に従って行われる。
【0055】
カスパーゼ−2特異的阻害剤の腹膜組織内投与は、一時的な低酸素虚血脳損傷に付された子ラットでの梗塞サイズを大幅に低減させる。
【0056】
前記医薬組成物は、低酸素症−虚血(H−I)(低酸素症/低血糖症を伴うまたは伴わない虚血)損傷を含む病的状態および卒中様状態(例えば、大脳、腎臓、心臓の不全)の治療に特に有用である。
【0057】
それらはまた、大脳の低酸素症−虚血(H−I)(低酸素症/低血糖症を伴うまたは伴わない虚血)損傷を含む病的状態および卒中様の状態(例えば、大脳、腎臓、心臓の不全)の治療にとって非常に興味深い。
【0058】
本発明の医薬組成物はまた、ニューロン死、特には全身性または病巣性(focal)H−I(低酸素症/低血糖症を伴うまたは伴わない虚血)損傷および卒中様の状態(例えば、大脳、腎臓、心臓の不全)の治療に有用である。
【0059】
それらはまた、特には成人または新生児のH−I(低酸素症/低血糖症を伴うまたは伴わない虚血)損傷および卒中様の状態(例えば、大脳、腎臓、心臓の不全)におけるニューロン死の治療に特に有利である。
【0060】
それらはまた、特には、一時的または恒常的H−I(低酸素症/低血糖症を伴うまたは伴わない虚血)損傷および卒中様の状態(例えば、大脳、腎臓、心臓の不全)におけるニューロン死の治療に用いられ得る。
【0061】
前記医薬組成物はまた、特に、再灌流(reperfusion)状態を伴うまたは伴わない、H−I(低酸素症/低血糖症を伴うまたは伴わない虚血)損傷および卒中様の状態の脳損傷(例えば、大脳、腎臓、心臓の不全)におけるニューロン死の治療に有用である。
【0062】
それらは、特には中大脳動脈閉塞症(Middle Cerebral Artery Occlusion:MCAO)におけるニューロン死の治療に用いられ得る。
【0063】
上記定義の医薬組成物は、特に、下記病的事象の少なくとも1つが併発される場合のニューロン死の治療にとって非常に興味深い:再灌流を伴うまたは伴わない大脳レベルまたは体全体のレベルでの、全身性または病巣性、一時的または恒常的、成人または新生児のH−I(低酸素症/低血糖症を伴うまたは伴わない虚血)。
【0064】
本発明の医薬組成物の他の適用は、
・慢性変性疾患、例えば、アルツハイマー病、ハンチントン病、パーキンソン病、多発性硬化症(Multiple sclerosis)、筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis)、脊髄延髄萎縮症(spinobulbar atrophy)、プリオン病を含む神経変性疾患の際のアポトーシスを予防および/または治療する、または、
・脊髄損傷の際のアポトーシスを予防および/または治療する、または、外傷性脳損傷(traumatic brain injury)の結果として生じるアポトーシスを予防および/または治療する、または、
・ニューロン保護(neuroprotection)効果を提供する、または、
・脳保護効果を提供する、または、
・自己免疫疾患および移植拒絶反応に伴う、細胞毒性T細胞およびナチュラルキラー細胞が介在するアポトーシスを予防および/または治療する、または、
・心不全(heart failure)、心筋症(cardiomyopathy)、心臓のウイルス感染または細菌感染、心筋虚血、心筋梗塞(myocardial infarct)、および心筋虚血、冠動脈バイパス移植(coronary artery bypass graft)を含む心臓細胞の細胞死を予防する、または、
・例えば化学療法またはHIV治療の結果としてのミトコンドリアの薬物毒性を予防および/または治療する、または、
・ウイルス感染または細菌感染の際の細胞死を予防する、または、
・炎症または炎症性疾患、炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease)、敗血症(sepsis)および敗血症性ショックを予防および/または治療する、または、
・卵胞(follicule)から卵母細胞(ovocyte)への段階、卵母細胞から成熟卵への段階および精子の細胞死を予防する(例えば、卵巣組織、人工授精卵を凍結させおよび移植する方法)、または、
・化学療法後の女性および男性の受精能力を保護する、または、
・雌および雄の動物の受精能力を保護する、または、
・黄斑変性(macular degenerescence)および緑内障(glaucoma)を予防および/または治療する、または、急性肝炎(acute hepatitis)、慢性活動性肝炎(chronic active hepatitis)、B型肝炎およびC型肝炎を予防および/または治療する、または、
・男性型禿頭症(male-pattern baldness)、放射線、化学療法または環境上のストレスに起因する髪の喪失を予防する、または
・(高レベルの放射線への露出、熱、火傷、化学薬品、太陽および自己免疫疾患に起因する)皮膚の損傷を治療または改善する、または、
・脊髄形成異常性症候群(myelodysplastic symdrome:MDS)における骨髄細胞の細胞死を予防する、または、
・膵臓炎(pancreatitis)を治療する、または、
・呼吸器系症候群(respiratory symdrome)を治療する、または、
・骨関節炎(osteoarthitis)、変形関節炎(rheumatoid arthritis)、乾癬(psoriasis)、糸球体腎炎(glomerulonephritis)、アテローム性動脈硬化症(atherosclerosis)移植片対被移植体の疾患(graft versus host disease)を治療する、または、
・網膜周皮細胞(retinal pericyte)のアポトーシス、網膜ニューロンアポトーシス緑内障、虚血の結果として生じる網膜損傷、糖尿病性網膜症を治療する、または、
・アポトーシスの増加と関係する疾病状態を治療する、または、
・植物(例えば、草木、草花、葉状植物(キノコ、海草)...)の細胞死を予防する
ためのそれらの使用を含む。
【0065】
さらに別の局面によると、本発明は、インビトロで細胞死を阻止または予防する、または、細胞死、特にアポトーシスに対して治療のために分子をスクリーニングする工程を包含する方法に関する。
【0066】
本発明の他の特徴および利点は、以下のデータにおいて、図面を参照しながら与えられる。
【0067】
実施例1
チェックポイントを識別する方法;固定時間および実時間のサイトフローメトリーによるニューロンのアポトーシスのマルチパラメトリックでかつダイナミックな分析
最近になるまで、ニューロン細胞のアポトーシスおよびネクローシスは、主として、2タイプのアプローチによって調査されていた:第1の群の(生化学的)技術は、一般的には、ミトコンドリアのコハク酸デヒドロゲナーゼ活性の比色評価(MTTアッセイ)または乳酸デヒドロゲナーゼ活性の細胞外放出(LDHアッセイ)(Johnson,1995)によりニューロン死の末期の事象を評価する。これらの型どおりのモノパラメトリックな定量技術は、細胞死の機構に関する情報を与えず、他の生化学過程の検出に結び付けられ得ない。より最近になって、いくつかのニューロンに適合する細胞分画プロトコルが、免疫ブロット法によるシトクロムc転座および蛍光発生基質を用いるカスパーゼ活性化の生化学評価について発表された(EthellおよびGreen,2002)。このような最近の方法は、ニューロン個体群に関する半定量的な情報を与えるが、マルチパラメトリックでかつ実時間の分析を除外する。第2の群の技術は、蛍光顕微鏡法(FM)の読み出しを用いて、オルガネラの改変またはアポトーシスが関連するタンパク質を検出する。これらのFM研究のうちの大部分は、クロマチン形態の視覚化(ヘキスト(登録商標)染色)および/またはDNA断片化の生化学的検出(TUNELアッセイ)を含む末期の核変化に焦点が当てられる。ニューロンに関する最新のFM研究では、(固定された細胞における)シトクロムcの免疫局在性(immunolocalization)が報告されたが、細胞生物学の他の領域とは対照的に、ミトコンドリア変化およびカスパーゼ活性化の現場内検出を用いたニューロンに関する研究数は制限される。培養された一次ニューロンに適用される場合、FMベースの分析は、時間を消費しかつ面倒であり、定量化は、細胞体の凝集物および重畳している神経突起のネットワークによって妨げられる。さらに、高感度の蛍光プローブのフォトブリーチングは、劇的なミスリーディング解釈につながり得、かつ、早期の死が関連する事象の実時間の追跡調査を除外することがあり得る。このため、現在知られるところでは、キーとなるアポトーシス事象の細胞生物学の特徴は、一次ニューロンにおいて十分に証明されたわけでも秩序立てられたわけでもなかった。
【0068】
フローサイトメトリー(FC)は広範囲の用途を提供し、細胞生物学およびアポトーシスのための主要なツールとなった。一次血球(primary blood cell)および癌細胞系に広く適用されているが、この技術は、神経科学においては著しくは活用されないままであり、概して、固定細胞における末期のDNA含有量の損失を証明するために制限されていた(Yanら,1999;FallおよびBennet,1999)。適切なフローサイトメトリーの適用がないのは、おそらく、必要とされる基質からのニューロンの分離が形質膜の完全性を改変し、神経突起を壊し、かつ/または、アノイキス(anoikis)の引き金となり得、このために、アポトーシスの信頼性のある分析を妨げるという仮定に起因する。これらの(ニューロンに)特異的な制限を克服するために、ニューロンの完全性を維持し、かつ、それらの神経突起を高比率で保持する一次ニューロンの非侵襲性分離のための簡単なトリプシン処理法を用いた。そして、定量的FCを詳細なFM分析に結び付け、アポトーシスの決定(decision)、実行(effector)、早期および末期分解期の同時検出を可能にする方法を開発した。選択された蛍光(生命に係わる(vital))プローブを用いると、この二重読み出しによって、トリプシン処理の前(FMによる)および後(FCによる)に、ミトコンドリアの膜電位(transmembrane potential)(ΔΨ)の状態、現場内でのカスパーゼ活性化、ホスファチジルセリン残渣の表面露出および形質膜の完全性の損失を検出することができる。
【0069】
血清欠乏により死に誘導されたマウスの一次皮質ニューロンをシステムモデルとして用いると、FCがFMと単に調和するだけではなく、ニューロンのアポトーシスの事象の年代順を確立するための迅速、高感度かつ定量的な技術でもあることが証明される。さらに、FC分析の領域は、ミトコンドリア活性化合物の添加後数分内の早期のニューロンのΔΨ改変および形質膜透過性(plasma membrane permeabilization:PMP)の革新的な実時間モニタリングに広げられる。固定時間および実時間の両方のFCにより、FMの制限を克服することが可能になり、ニューロンアポトーシスの細胞生物学を証明および開発する助けになるだろう。
【0070】
(生存するまたは死滅した一次ニューロンの細胞蛍光強度分析)
グルコース、ウマ血清およびウシ胎仔血清の混合物を含有するアドホック(ad hoc)培地においてポリエチレンイミンでコーティングされたウェル上で培養された場合、生後14日胎児マウスから単離された一次皮質ニューロンは、10日を超えて生存した状態で維持され得る(KawamotoおよびBarrett,1986)。
【0071】
これらの実験条件において、クロマチン凝縮(ヘキスト(登録商標)33342;青色蛍光)および細胞不透過蛍光DNAインターカレート性の7−アミノ−アクチノマイシンD(7−AAD)を用いる形質膜の完全性(赤色蛍光)の両方の蛍光顕微鏡法(FM)評価は、血清欠乏により、培養されたニューロンの形質膜が徐々に透過性(PMP)に至ることを示す(図1A)。このPMPは、クロマチン凝縮および神経突起の解体を伴う収縮したニューロンにおいてのみ起こるので、後アポトーシス事象である(図1A)。対照的に、一次的なPMP(すなわち、ネクローシス)が低濃度のトリトンによって誘導される場合、細胞収縮もクロマチン凝縮も検出されないが(位相差およびヘキスト(登録商標)蛍光)、7−AADは、ニューロンに迅速に入り、核をラベリングする(図1B)。細胞死の間のあらゆる選択された時間において明白なニューロン収縮およびPMPを定量化するために、7−AADによる染色および非毒性のCellTracker(登録商標)緑色蛍光染料の安定なニューロン保持の両方を欠く場合に匹敵するニューロンの完全性を維持することを可能にするトリプシン処理の条件が確立された(図1B、C)。このため、ニューロンは、最初に、それらの基質上でラベリングされ、かつFMによって観察され、第2に、安全にトリプシン処理され、そして、第3に、直後に、フローサイトメトリー(FC)分析に付され得る(図1D−G)。対照サンプルでの完全な7−AAD陰性(トリプシン処理された)ニューロン(88.4%±7.6)と比べて、24時間の血清欠乏ニューロンの47.1%(±18.1)が、PMP(7−AAD+)を示し、トリプシン処理前の顕微鏡観察および計数と相関している(図1E−G)。
【0072】
(アポトーシスの一次皮質ニューロンにおける分解および実行期の検出)
FMベースのPMP(7−AAD染色)およびアポトーシスが関連するホスファチジル−セリン(PS)露出(FITC結合型アネキシンV;緑色蛍光)の同時検出は、血清欠乏ニューロンでは3の細胞群:7−AADおよびFITC−アネキシンV染色の両方を有するサブセット(サブセット2;図2A)、7−AAD染色(サブセット3)またはFITC−アネキシンV染色(サブセット1)のいずれかを有する2つのサブセットが出現することを示す。同一のサブセットはまた、トリプシン処理後にFCにより検出され、速度論追跡調査は、サブセット1は、サブセット2より先に起こり、このサブセット2は、サブセット3より先に起こることを示し(図2B、C)、この結果、PS露出はPMPの前に起こるという結論に至る。最初の検出可能な核事象は、ニューロンサイズの改変より先に起こるらしい相当連続的な核縮小(境界部(perimeter))である(図2D、E)。このニューロンのFC固定時間分析は、カスパーゼ活性化に広げられ得る(図3)。実際に、緑色蛍光ラベルされたカスパーゼ阻害剤(FLICA、FAM−DEVD−FMK)を用いるカスパーゼ−3様活性およびPMP(7−AAD染色)の現場内の同時検出はFM(トリプシン処理前)およびFC(トリプシン処理後)と同様の結果を与え、カスパーゼ−3様活性がPMP前に検出可能であることを示す(図3A、B)。同様の結果は、FLICAベースのカスパーゼ−3活性の検出が、現場内の抗体ベースの活性化されたカスパーゼ−3の検出によって置き換えられた場合に観察される(不図示)。血清欠乏の開始時にニューロンに加えられた場合、新しい広スペクトルのカスパーゼ阻害剤であるキノリン−Val−Asp(OMe)−CH−O−Ph(Q−VD−OPH)(Melnikovら,2002)およびミトコンドリア・アデニンヌクレオチド・トランスロケータ(ANT)阻害剤であるボンクレキン酸(BA)の両方は、カスパーゼ活性化、PMPおよび核アポトーシスを強く妨げる(図3C、D)。FC定量化は、汎(pan)セリン・プロテアーゼ阻害剤である4−(2−アミノエチル)−ベンゼンスルホニル フルオリド(AEBSF,ペファブロック)とは対照的に、Q−VD−OPHが、血清欠乏によって誘導されるカスパーゼ様活性の95.3±5.6%およびPMP(7−AAD)の93.9±3.8%を阻害することを示す(図3D)。些細でない問題は、所与の細胞死モデルにおいて、カスパーゼ活性化およびPS露出間の階層性を測定することである。スルホロダミン(sulforhodamine)結合型FLICA(赤色蛍光)を用いるカスパーゼ−3様活性およびFITC−アネキシンVを用いるPS露出(緑色蛍光)の現場内FM(トリプシン処理前)およびFC(トリプシン処理後)同時検出は一致し、血清欠乏後、カスパーゼ−3活性は一次ニューロンにおいてPS露出より先に起こることを立証する(図3E、F)。FMによるクロマチン状態(ヘキスト(登録商標);青色蛍光)の同時の分析は、早期のカスパーゼ−3活性が一時的に核凝縮の第1の段階(Susinらの分類による段階I;Susinら,1999)に関係することを示したが、最終の別々のアポトーシス体への核断片化(段階II形態,Susinら,1999)はPS露出の開始後に起こることに留意されるべきである(図3E、4E)。興味深いことに、基準となる汎カスパーゼ阻害剤であるz−VAD−fmkおよびより特定されたカスパーゼ−3様阻害剤であるz−DEVD−fmkの両方は、カスパーゼ−3活性化を強く阻害するが、ニューロンのアポトーシスの分解期(すなわち、PS露出、核凝縮およびPMP)を阻害せず(図3D)、このため、これは、カスパーゼ−3が関連する活性は、これらの実験条件におけるニューロン死にとって必須でないことを示す。これに対して、カスパーゼ−9阻害剤であるz−LEHD−fmkの存在下または不存在下でのクロマチン状態(ヘキスト(登録商標))および緑色蛍光ラベルされたカスパーゼ阻害剤(FLICA,FAM−LEHD−FMK)を用いるカスパーゼ−9様活性の現場内同時検出は、カスパーゼ−9様活性の破壊が核アポトーシスの中間表現型につながり、ここでは、大抵の核が核凝縮の第1工程(段階I;図3G)に抑えられることを示す。さらに、FMおよびFC分析の両方は一致してカスパーゼ−9阻害は、PS露出およびPMPを廃止することを示す(図3G、H)。このため、BAがカスパーゼ−9様活性化を妨げる(図3H)ので、二重の読み出しアプローチは、この実験モデルにおけるカスパーゼ−9の実行ポイントがミトコンドリアの下流かつPS露出および段階IIの核アポトーシスの上流にあることを強く示唆する。
【0073】
(ニューロンのアポトーシスのミトコンドリア/決定期の検出)
FM分析によって続けられる培養された一次ニューロンのΔΨ高感度染料JC−1による染色は、徐々にΔΨが損失することを示す。このため、血清欠乏前には、ニューロンからのミトコンドリアは、高ΔΨ(オレンジ色のJC−1蛍光;図4A)を持つが、これに対して、8〜24時間の血清欠乏がなされたニューロンからのミトコンドリアは、低ΔΨ(緑色のJC−1蛍光;図4A)を有する。ΔΨ損失は、明確な地理的階層性を全く示すことなく不均一に進行し、同一のニューロンにおいて不均一性が検出可能である一過性の中間表現型を生じさせた(図4A;Dec)。これは、少なくともこの実験系では同時の調和されたΔΨはなく、むしろ、崩壊シグナルがミトコンドリアからミトコンドリアへ徐々に伝わったことを示唆する。ヘキスト(登録商標)染色によって観察されるような核アポトーシスのあらゆる徴候の前に完全なΔΨ崩壊が観察される(図4A;青色蛍光)。予想されるように、FMおよびFCベースのΔΨ損失(JC−1)およびPMP(7−AAD染色)の同時定量化は一致して血清欠乏ニューロンではΔΨ損失がBAによって阻害され、PMPより先に起こることを立証する(図4B−E)。(ΔΨ高感度染料CMX−Rosを用いる)ΔΨおよびカスパーゼ−3様活性(FLICA,FAM−DEVD−FMK)の同時検出をベースとする速度論実験は、ΔΨ損失はカスパーゼ−3活性化より先に起こることを示唆する(不図示)。したがって、カスパーゼ活性のz−DEVD−fmkによる阻害は、SD誘導ΔΨ損失に関して効果を持たない(図4E)。
【0074】
(ΔΨの実時間検出)
ニューロンのアポトーシスにおけるミトコンドリアの早期の関与は、薬物曝露に対する迅速なΔΨ応答のモニタリングを必要とする。ΔΨのFMによる実時間検出は分析を歪曲し得る。繰り返しの取得が(JC−1オレンジ色蛍光の降下として検出される)プローブの劇的なフォトブリーチングを引き起こし、これは、アポトーシス関連のΔΨ損失に誤って帰し得るからである(図5A、B)。この機械的な欠点を解決するために、実時間FCアプローチが開発された。この実時間FCアプローチでは、固定時間FCプロトコルとは対照的に、ニューロンは、最初にトリプシン処理され、第2に、経時的にΔΨ(JC−1)およびPMP(7−AAD)を検出するようにラベリングされる(図5C)。これらの条件では、FM観察は、トリプシン処理されたニューロンがPMPを提示せず、3時間に至るまで高ΔΨを維持することを明らかにする(図5C)。トリプシン処理後の最初の5時間の間アノイキスの徴候が検出可能でないことに留意されるべきである。20分間にわたるFC記録は、トリプシン処理されたニューロンが依然として安定な高いΔΨを有し、7−AADに対して不透過である、すなわち、完全な形質膜を維持することを確認する(図5D2−3)。呼吸鎖脱共役剤(respiratory chain uncoupler)であるカルボニルシアニドm−クロロフェニルヒドラゾン(mClCCP)の非トリプシン処理ニューロンへの添加は、ΔΨ崩壊を誘導する(図5D−1)。実時間FCモニタリングは、mClCCPによる処理の2分後でニューロン個体群のΔΨ損失が最大であることを明らかにする(図5D−2,3)。ミトコンドリア毒素である1−メチル−4−フェニル−1,2,3,6−テトラヒドロピリジン(MPTP)により処理された非トリプシン処理ニューロン培養のPMP(7−AAD)およびΔΨ(JC−1)のFM同時検出は、45分後に大抵のニューロンが低ΔΨであるがPMPの徴候が全くないことを示す(図6A−1)。対照的に、一酸化窒素誘発物質SNPにより処理されたまたは処理されない皮質ニューロンは、高いΔΨを維持する(図6)。予想されるように、エタノールは、培養されたニューロンにおける大規模な7−AADの組み込みに匹敵するような迅速なPMPを誘導する(図6A−1)。実時間FCが皮質ニューロンのPMP、ΔΨ、細胞サイズおよび粒状度の同時評価に適用される場合、この技術は、15分後に、MPTP処理ニューロンの49.6%(±8.2;n=4)が低ΔΨであり、これに対して、未処理ニューロンの16.2%(±1.2)および15.0%(±6.2)のSNP処理ニューロンが低ΔΨであることを示す。実時間FCは、MPTPおよびSNPとは対照的に、エタノール処理が一次的なネクローシスを誘導することを明らかにする。実際に、エタノールは、非常に迅速なPMP(5分後に98%)の引き金となり、これは、ΔΨ損失(5分後に75%)より先に起こる(図6)。興味深いことに、MPTP誘導ΔΨ損失は、不均一である。これは、迅速なΔΨ降下を経るニューロンが大きな粒状度増大を示し、これに対して、わずかなΔΨ減少を経るニューロンは、形態学上の改変を示さないからである(図6)。
【0075】
要約すると、これらの結果は、実時間FC分析が、ニューロン単位を基礎とする短期間のPMP事象およびΔΨ改変を定量的に追跡するための簡単なアプローチであることを示す。
【0076】
血清欠乏マウスの一次皮質ニューロンをシステムモデルとして用いると、次のことが示される:1)ニューロンサンプルがアポトーシス関連プローブによりマルチラベリングされ、続いて、FMによって分析され、それらの支持体から安全に分離され、固定化なしでFCによって定量的に研究され得る、2)この二重読み出し方法により得られる速度論および薬理学的情報により、ニューロンアポトーシスの主要な期(決定、実行および分解)を記載し、かつこれを明白に秩序立てることが可能になる、3)ニューロンはまた、最初に、それらの支持体から分離され、次いで、活力のあるプローブによりラベリングされ、そして、実時間FCによって3時間にわたり分析され得、これにより、一次的ネクローシス(すなわち、PMPがΔΨ損失より先に起こる場合)と所与の刺激に対するアポトーシス関連の細胞応答との間の区別を含むニューロン死の短期間の事象を評価する可能性を提供する。
【0077】
FCは、いくつかの特有の利点を提供する(表1)。第1に、培養中のニューロンの凝集の当初レベルがどうであれ、FCは、大多数のニューロン(この研究ではサンプル当たり40,000)に関するアポトーシスおよび関連する事象の典型的な定量化を迅速に得ることを可能にする。第2に、FCは、蛍光が低レベルであり、FMによってほとんど明示され得なかった細胞内プローブを検出し得る。この利点は、電荷結合デバイス(charge coupled device:CCD)カメラ(FM)と比較して、弱い蛍光細胞を識別するためのサイトメータ光電子増倍管(cytometer photomultiplier tube)(FC)のより良好な能力に原因があるとし得る。第3に、FCはまた、プローブフォトブリーチング(JC−1によるΔΨ検出のような場合)、長い過剰蛍光照射(epifluorescence illumination)および/または輻射熱(photothermal)効果によって誘発される細胞損傷を含むFM観察の間の古典的に誘発される問題を解決する。例えば、FM(5ワット,多色波長)に比較して弱いニューロン照射(15ミリワット,単色波長)およびレーザビームを通しての極度に短い(かつ唯一の)細胞通過のため、JC−1フォトブリーチングはFCにより最小限である。第4に、実時間FCは、あらゆる神経活性薬物の添加に続く非常に短い期間の形質膜およびミトコンドリア内膜の改変の数分内の定量分析を是認する。第5に、マルチパラメトリックな分析が、14の別個のパラメータまで調査し得るより強力なサイトメータの使用によって拡大され得る。
【0078】
SDニューロンが、下記のルール(図7)に従うアポトーシス過程を経ることも立証される。第1に、SDニューロンは、ANTが関連する依存性の過程を通じてΔΨ消失の徴候を表す。第2に、ΔΨm消失がカスパーゼ3およびカスパーゼ9の上流で発生する。第3に、PS露出および完全な核凝縮(段階II)がカスパーゼ−9様活性の下流にあるが、カスパーゼ−3様活性に依存しない。逆説的には、Z−VAD−fmk処理された24時間SD−ニューロンは、カスパーゼ−3様活性を示さないが、PS露出、段階IIの核アポトーシスおよび最終的なPMPを経、これに対して、全てのこの事象は、第3世代の汎カスパーゼ阻害剤であるQ−VD−OPHによって完全に阻止される。したがって、上記結果は、血清抜き出しによって誘導されるアポトーシス中に一次皮質ニューロンにおいて活性化される通常でないミトコンドリア依存性カスパーゼ経路を明らかにする。
【0079】
この細胞蛍光強度(cytofluorometric)技術はまた、セラミド、β−アミロイドペプチド、3−ニトロプロピオン酸、グルタミン酸塩およびウイルスタンパク質を含む他の刺激物に応答するニューロンのアポトーシスの動力学を調査するために用いられる。分析はまた、ニューロンのアポトーシスに伴われる他のカスパーゼの活性化を検出するように拡張された。これらの細胞蛍光強度分析はまた、未だ乏しくしか知られていないタイプの死、例えば、サブスタンスPによって処理された皮質、線条体(striatal)および海馬(hippocampal)の一次ニューロンの非アポトーシスの形態のプログラム死のより良好な特色付けを可能にし得、かつ、両方が共存するモデル、例えば虚血傷害においてネクローシス様の死およびアポトーシスを区別することを可能にする。
【0080】
したがって、本発明により開発された技術は、ニューロンアポトーシスの細胞生物学を調査するために強力であり、ニューロン毒およびニューロン保護化合物のスクリーニングおよび特色付けのためのマルチパラメトリックな定量的ツールを提供する。
【0081】
(実験手順)
(皮質ニューロンの単離および培養)
一次皮質ニューロンは、生後14日胎児スイスマウス(Janvier,Le Genest-Sr-Isle,フランス)の新皮質(neocortices)から単離された。ニューロンは、5%のウマ血清(HS,Eurobio)および2.5%のウシ胎仔血清(FCS,Eurobio)により補充された500μlのイーグルの基本培地(EBM,Eurobio,Les Ulis,フランス)中にcm当たり7×10の生細胞の密度で、24ウェルプレート(sarstede,Orsay,フランス)またはポリエチレンイミン(PEI,1mg/mL,Sigma,St Quentin Fallavier,フランス)によりコーティングされたLab-Tek(登録商標)カバーグラスチェンバー(chambered coverglass)(Nalge Nunc International,Naperville,IL,米国)上に塗布された。2日後、培地が、180mg/Lのグルコース、5%のHSおよび1%のFCSおよび3μMのシトシン β−D−アラビノフラノシド(Ara C,Sigma)および1μMの5−メチル−10,11−ジヒドロ−5H−ジベンゾシクロヘプテン−5,10−イミン マレイン酸塩(MK-801,Research Biochemicals International)(Knuselら,1990)を含有するN5培地(KawamotoおよびBarrett,1986)により交換され、毎日変えられた。アポトーシスは、5日齢培養において血清抜き出しによって誘導された(Macleodら,2001)。培養の純度(>95%)は、抗微小管結合タンパク質(anti-Microtubule Associated Protein)2モノクローナル抗体(MAP-2,Sigma)および抗グリア細胞繊維性酸性タンパク質(anti-Glial Fibrillary Acidic Protein)ポリクローナル抗体(GEAP,Dako)により評価された。
【0082】
(皮質ニューロンのトリプシン処理)
血清不含有N5培地での1回の注意深い洗浄および250μlの37℃トリプシン−EDTA(Gibco BRL,英国)による15分にわたる37℃でのインキュベーション後にニューロンの酵素分離が行われた。細胞分離は、1000μlのチップ(tip)(Gilson)を用いる5回の丁寧な洗い流しによって行われた。残りのニューロン凝集体は、200μlチップを通じて10回の500μlのN5培地での注意深い洗い流しによって分離された。トリプシン処理手順の確認のために、付着性のニューロンが10μMのCelltracker Green(登録商標)(Molecular Probes,Eugene,OR)によって15分にわたり37℃で染色され、N5培地で洗浄され、そして、トリプシン処理に付された。ニューロン分析は、フローサイトメトリー(FL−1チャネル)および顕微鏡法(励起のためにBP 480/40および発光のためにBP 527/30)によって行われた。トリトンX−100(Sigma)処理(0.02%)が形質膜崩壊についての陽性対照として用いられた。
【0083】
(器械)
蛍光標示式細胞分取(Fluorescence-Activated Cell Sorting)が、15mWの空冷488nmアルゴンレーザを備えた3色FACSCaliburサイトメータ(Becton Dickinson,San Jose,CA)を用いて行われた。各サンプルについて、40,000のニューロンからのデータが登録され、CellQuest Pro(登録商標)ソフトウェア(Becton Dickinson)を用いて分析された。サンプルの流量は、実時間分析のために12μl±3μl/分に、固定時間実験のために60μl±3μl/分に設定された。蛍光顕微鏡法(FM)は、100Wの水銀ショートアークランプおよびa×40 N PLAN L対物レンズまたは水浸 × 100N PLAN対物レンズ(Leica,Wetzlar,ドイツ)を備えたDM IRB挿入型蛍光顕微鏡(Leica,Rueil-Malmaison,フランス)を用いて行われた。写真は、CCDカラーカメラ(Leica DC 300F,Leica,フランス)により1300×1030画素の分解能で取得され、Leica QFluoroソフトウェア(Leica,Microsystem AG,スイス)によって制御された。データは、Leica QFluoroソフトウェアを用いて行われるIM1000ソフトウェア(Leica Microsystem AG)によるオフライン分析のために保存された。
【0084】
(7−アミノアクチノマイシンDの取り込みを通じてのアポトーシスの分解期の検出)
形質膜の完全性の損失は、7−アミノアクチノマイシンD(7-AAD,Sigma)に対する上昇した透過性を通じて検出された(Schmidら,1992;Carpenterら,1997;Lecoeurら,2002)。20μg/mlの7−AADが培養されたニューロンに15分にわたり37℃で加えられた。FM分析がBP 515−560フィルタを用いる100msの励起を通じて行われ、7−AAD蛍光がLP 590ロングパスフィルタを通じて検出された。細胞は、トリプシン処理され、その直後に、フローサイトメータ(F1−3チャネル,λ>650nm,PMT=333)上で分析された。アポトーシス体/残さは、懸濁液での細胞生育について記載されたように分析から廃棄された(Lecoeurら,1997)。
【0085】
(FITCアネキシンVおよび7−AADを用いる早期および末期の分解期の検出)
形質膜の外層へのホスファチジルセリン露出(PS)は、FITC結合型アネキシンV(アポトーシス検出キット,R&D System)の固定を通じて検出された。20μg/mlの7−AADおよび1X アネキシンVが、200μlのCa2+豊富緩衝液(アポトーシス検出キット)に20分にわたり室温で加えられた。FM実験のために、アネキシンV−FITCが、BP 480/40フィルターを通じて励起され、放射光は、BP527/30フィルターを用いて集められた。FITC−アネキシンV蛍光のFC検出は、F1−1チャネル(530±15nm)で行われ、リニアアンプモード(linear amplifier mode)で分析された(PMTボルト=867,増幅ゲイン=9.00)。スペクトルのオーバーラップは、以下のように補償回路網(compensation network)を調整することによって回避された:FL2−22.9% FL1およびFL2−41.7% FL3。
【0086】
(FLICA、アネキシンVおよび7−AADを用いる実行および分解期の組み合わせ検出)
活性化されたカスパーゼ−3およびカスパーゼ9は、FAM−DEVD−FMKおよびFAM−LEHD−FMK(両者とも蛍光ラベリングされたカスパーゼ阻害剤(Fluorochrome Labeled Inhibitors of Caspase:FLICA)である)(CaspaTag(登録商標)フルオレセインカスパーゼ活性キット,Intergen,NY)を用いて検出された(Lecoeurら,2002;Smolewskiら,2002)。ニューロンは、FLICAのDMSO貯蔵液の1/150により1時間にわたり37℃でインキュベートされた。最後の15分の間に7−AADおよびヘキスト(登録商標)が加えられた。その後、ニューロンは、洗浄バッファ(CaspaTag(登録商標)キット)で3回洗浄された。FM画像化のために、FLICAがBP 480/40フィルタを通じて励起され、放射光は、BP 527/30フィルタを通じて集められた。FC分析のために、FLICA蛍光は、F1−1チャネルを通じて集められた(PMTボルト=501、補償回路網:FL1−7.8% FL2,FL2−40.8% FL1およびFL2−45.4% FL3)。切断されたカスパーゼ−3は、フィコエリトリン(phycoerythrin:PE)結合型ポリクローナル抗体(Beckton Dickinson)を用いる免疫検出(immunodetection)によって細胞内(in cellula)明示された。ニューロンは、7−AADによって染色され、トリプシン処理され、そして、1%のPFAおよび20μg/mlのアクチノマイシンD(AD)を含むPBSに20分にわたり固定された。その後、ニューロンは、100μMのPBS、1%のBSA、20μg/mlのAD、0.05%のサポニンキラヤバーク(Quillqja bark)(Sigma)および20μlの抗カスパーゼ−3抗体に30分にわたり室温で再懸濁させられた(Lecoerら,2001)。PBSで洗浄した後、PEが関連する蛍光がサイトメータ(F1−2チャネル)を用いて分析された。Z−val−Ala−Asp(OMe)−FMK(Z−VAD−FMK)、キノリン−Val−Asp(OMe)−CH−O−Ph(Q−VD−OPH)、Z−DEVD−FMK(Z−Leu−Glu(OMe)−His−Asp(OMe)−fmk,ICN)およびZ−LEHD−FMK(Z−Asp(OMe)−Glu(OMe)−Val−Asp(OMe)−FMK)(全てICN(Orsay,フランス)から購入された)および4−(2−アミノエチル)−ベンゼンスルホニル フルオリド(AEBSF,Pefabloc SC,Roche,Meylan,フランス)が100μMで血清欠乏の当初に加えられた。スルホロダミン−DEVD−FMK(CaspaTag(登録商標)Red Activity Kit)により、活性化されたカスパーゼ−3およびFITC−アネキシンVを検出することができた。ニューロンは、FLICAのDMSO貯蔵液の1/900および200μlのアネキシンバッファ中の1X FITC−アネキシンVにより30分にわたり37℃でインキュベートされた。その後、ニューロンは、50%の洗浄バッファおよび50%のアネキシンバッファからなるバッファで3回洗浄された。カスパーゼ−3活性は、F1−2チャネルにおいて検出された(585±21nm)。FMのために、FLICAがBP515−560フィルタを通じて励起され、その蛍光が、LP590ロングパス発光フィルタを通じて集められた。
【0087】
(JC−1および7−AADを用いるアポトーシスの決定期の固定時間検出)
ミトコンドリアの膜電位(ΔΨ)は、5,5’−6,6’−テトラクロロ−1,1,3,3’−テトラエチルベンズイミダゾール カルボシアニド ヨージド(JC-1,Molecular Probes,Eugene,OR)の取り込みによって評価された。ニューロンは、1μMのJC−1および7−AADにより15分にわたり37℃で同時染色された。JC−1モノマーが、FCによってF1−1チャネル(PMTボルト=644)において検出された。J−凝集体は、F1−2チャネルを通じて検出された(PMTボルト=451)(Reersら,1991)。7−AAD検出についてのPMTボルトは326であった。補償回路網:FL1−0.0% FL2、FL2−22.9% FL1、FL2−41.7% FL3およびFL3−0.7% FL2。FM分析のために、緑色およびオレンジ色の蛍光が、1.2sの励起(BP 450−490励起/LP 515ロングパス発光フィルタ)後に同時に記録された。フォトブリーチングは、N20濃度フィルタ(neutral density filter)による当初の入射光の5%までの照射の減衰によって回避された。ボンクレキン酸(BIOMOL,)が25μMで試験された。
【0088】
(ミトコンドリア膜電位ΔΨおよびニューロンの形態の実時間検出)
実時間実験が5日齢の培養ニューロンについてトリプシン処理直後に行われた。ニューロンは、N5培地に再懸濁させられ、0.7×10細胞/mlに調整され、そして、800nMのJC−1により15分にわたり37℃で負荷がかけられた。次いで、サンプルは、N5培地で1/8に希釈され、20μg/mlの7−AADが加えられた。基礎形態およびΔΨおよび膜透過性が5分にわたり記録され、薬物;100μMのカルボニル シアニド m−クロロフェニルヒドラゾン(mClCCP,Sigma)、1μMの1−メチル−4−フェニル−1,2,3,6−テトラヒドロピリジン(MPTP,Sigma)および0.6μMのニトロプルシドナトリウム(SNP,Sigma)が加えられた。MPTPは、ミトコンドリア複合体I毒物であり、インビボでマウスおよび霊長類にパーキソニズムを再現するために用いられるアポトーシス誘発物質である(Speciale,2002)。全パラメータの変動が続く15分にわたり記録された。マイクロソフトのエクセルソフトウェアを用いて曲線が描かれた。
【0089】
(ヘキスト(登録商標)33342による核染色および核の境界の測定)
ニューロンは、15分にわたり1μMのヘキスト(登録商標)33342(ヘキスト(登録商標)342,Sigma)と共にインキュベートされ、FMによって分析された(5ミリ秒の露出(BP340−380励起フィルタ/LP425ロングパスフィルタ))。核の境界が、Leica Q Fluoroソフトウェアを用いて任意のユニットで発現されるように興味のあるプロセシングマスクの個々の領域を形成することによって測定された。
【0090】
(統計分析)
マイクロソフトのエクセルソフトウェアを用いて統計が行われた。線形回帰解析(linear regression analysis)によって相関関係が計算された。各解析について、Rが示された。異なるアポトーシスの段階にある細胞の百分率を比較するために、対応のないt検定(Unpaired Student’s t test)が実行された。p値<0.05は有意であるとみなされた。
【0091】
実施例2
ニューロンのインビトロおよびインビボの細胞死におけるカスパーゼ−2阻害/サイレンシング
汎カスパーゼ阻害は、血清欠乏によって死に誘導された一次皮質ニューロン培養の生き残りを促進する。
【0092】
ニューロンの発生および病的状態の間、適切な栄養性のサポートおよびターゲット由来の栄養性因子の供給源を見出すことができないニューロンは、アポトーシス細胞死を経る。一次皮質ニューロンの血清欠乏(SD)(急性ニューロン損傷のためのインビトロモデル)は、アポトーシス細胞死につながる。SD中のアポトーシスのホールマークの階層性を研究し、かつこれを経時的に順序付けして、固有的経路が記載された。この固有的経路では、ミトコンドリア膜電位(ΔΨ)崩壊が核アポトーシス(NA)(アポトーシス体への凝縮/断片化)、外側の形質膜リーフレットへのホスファチジルセリン(PS)露出および形質膜の終端の透過性(PMP)の上流に起こる。上記結果は、50時間のSDを通してのこのようなアポトーシスのホールマークについての時間−応答を立証する(図8A)。明確化のため、低ΔΨ、NA、PS異所曝露(ecto-exposition)またはPMPによるニューロンの様相の速度論は、徐々に変化する全ての中間の部分集合を反映する。これらの実験条件において、大抵のニューロンは、同時に各過程に係わる。
【0093】
いくつかのアポトーシスの系統(paradigm)でのカスパーゼの重要な役割のため、カスパーゼの必要性が、SD中に皮質ニューロンにおいて評価された。血清抜き出しの初期に加えられる場合、SD−ニューロンは、キノリン−Val−Asp(OMe)−CH−O−Ph(Q−VD−OPH)(新世代の広域スペクトルカスパーゼ阻害剤)による連続的な処理によって大抵の場合救われるが、これは、ΔΨおよび核形態の高い保存、完全な形質膜の並びにPS露出がないことによる結果である(図8B)。対照的に、Z−VAD−FMKおよびBOC−D−FMK(BOC−D)のいずれもSD関連細胞死を遅らせるまたは排除することができない(図1B)。核形態並びに神経突起の完全性および神経突起ネットワークの両方が、24時間でQ−VD−OPHによって救われたニューロンにおいて十分に保護されるようであることが留意されるべきである(図8C)。それにもかかわらず、それらの細胞体は、わずかにより小さい。特異的な蛍光基質を用いて、細胞内カスパーゼ−2様、カスパーゼ−3様、カスパーゼ−8様およびカスパーゼ−9様の活性が24時間SDにおいて検出された(図8D)。SD中の低レベルのカスパーゼ−8様活性化は、このモデルでは外来的経路が優勢でないことを示唆する。全てのこれらのカスパーゼ活性は、Q−VD−OPHによる同時処理によって完全に不活性化される(図8D)。他の無関係なカスパーゼ依存性神経変性刺激:Ca2+イオノフォアであるイオノマイシン(刺激毒性(excitotoxicity))、NOドナーであるニトロプルシドナトリウム(SNP)、β−アミロイド(25−35)ペプチド(βA)およびミトコンドリア毒素(1−メチル−4−フェニル−1,2,3,6−テトラヒドロピリジン(MPTP)または3−ニトロプロピオン酸(3−NPA)等)による試みの間にQ−VD−OPHによって生き残りが向上させられる得るのかどうかを測定するための調査が行われた。これらの薬物は、アポトーシスを誘導する(NAおよびPMPがモニタリングされる)が、Z−VAD−FMKまたはQ−VD−OPHのいずれかによる付随した処理は、以前の報告と一致して、β−アミロイドを除き、保護を提供することができない(図8E)。これらの所見は、SD中の皮質ニューロンにおけるカスパーゼの特異的な関与を強化する。
【0094】
試験された系モデルにおける一次的なカスパーゼ活性化の重要性を保証するために、種々のシグナリングおよび代謝経路の薬理学的な阻害が、以下の化合物ファミリー(表1)を用いて行われた:ミトコンドリア−および透過性遷移孔(permeability transition pore:PTP)−ターゲッティング剤、ミトコンドリアのカルシウム取り込みモジュレーター、細胞質カルシウムキレート化剤、プロテアーゼ阻害剤(カルパイン、セリンプロテアーゼ、プロテオソームまたはリソソームカテプシン)、細胞周期阻害剤、シグナル伝達経路に必要とされるキナーゼおよびホスファターゼ阻害剤、エンドサイトーシスおよびオートファジー過程に干渉する薬剤、抗酸化剤、タンパク質核外輸送の阻害剤。ほとんど全ての試験された化合物は、SDによって引き起こされる細胞死を妨げることができない。また、多面的薬剤であるシクロヘキシミドおよびアクチノマイシンD(形質導入および翻訳を阻害した)は、SDに付された皮質ニューロンの生き残りを促進する(表1)。
【0095】
(前ミトコンドリア・カスパーゼ−2活性は、血清欠乏によって誘導される皮質ニューロンのアポトーシス細胞死に必要とされる)
早期の事象、例えばΔΨ損失がQ−VD−OPHによって妨げられるという事実は、本発明のモデルにおける(前ミトコンドリア)カスパーゼ(単数または複数)の重要性およびQ−VD−OPHの特異性の両方の問題を提議する。SDモデルにおける細胞死の原因となるより基部に近いカスパーゼ活性を識別するために、より選択的なカスパーゼ阻害剤のパネルが用いられ、それらの影響がいくつかの細胞死パラメータに基づいて分析された(図9A):Z−DEVD−FMK、Z−LEHD−FMK、Z−VDVAD−FMKおよびZ−LETD−FMK(これらは、それぞれ、カスパーゼ−3、−9、−2および−8様活性を阻害する)。効果的なカスパーゼ−2様活性阻害剤(図9D)であるZ−VDVAD−FMKのみがΔΨ損失並びにアポトーシスの他のホールマーク(NA、PMP、PS露出)を廃止することおよび死に対してニューロンを保護することの両方が可能であるようである(図9Aおよび9B)。Q−VD−OPHおよびZ−VDVAD−FMKの阻害プロファイルをより良好に特徴付けるために、ニューロン保護のための最良のパターンが決定された。アポトーシスは、濃度依存性の方法ではQ−VD−OPHおよびZ−VDVAD−FMKによって阻害され、これは、SDの間にカスパーゼ・カスケードが皮質ニューロンにおいて活性化されることを強化する(図10)。高密度の培養(7×10/cm)を考慮すると、100μMの各阻害剤(これは、この研究で用いられる濃度である)によってより高い保護効果が提供される。血清抜き出し後2〜6時間に遅らせられる阻害剤による処理があまり効率的でないので、SDの当初におけるこれらの阻害剤(100μM)の添加は、Q−VD−OPHまたはZ−VDVAD−FMK誘導型ニューロン保護のための最良のパターンである(補充物質;図10)。さらに、カスパーゼ−2様活性化は、SDの2時間から検出され、ΔΨ降下の最初の徴候(8時間)およびさらなる核変化の両方より先に起こる(図9C)。要するに、これらの所見は、前ミトコンドリア・カスパーゼ−2様活性が、皮質ニューロンにおけるSD誘導型アポトーシスに必要とされる最も基部に近いカスパーゼ活性であることを示している。カスパーゼ−2様活性は、Z−VDVAD−FMKによって破壊されるが、Z−DEVD−FMK、Z−LEHD−FMKまたはZ−LETD−FMKによって破壊されない(図9D)。対照的に、カスパーゼ−3様およびカスパーゼ−9様活性は、Z−VDVAD−FMKによって阻害され、その結果、これは、カスパーゼ−2様活性がカスパーゼ−3様およびカスパーゼ−9様活性の両方の上流にあることを立証する(図9D)。それぞれカスパーゼ−3様およびカスパーゼ−8様活性を廃止する一方で(図9D)、Z−DEVD−FMKおよびZ−LETD−FMKは、ニューロンをSDから保護することができなかった(図9Aおよび9B)、この結果、これは、カスパーゼ−3が活性に関連し、かつ、カスパーゼ8の増加がニューロン分解に必須でないことを示す。さらに、カスパーゼ−8阻害剤も、カスパーゼ−2、−3または−9の活性化を阻止することができなかった(図9D)。カスパーゼ−9阻害剤であるZ−LEHD−FMKは、ΔΨ降下を減じないが、これに対して、これは、アポトーシス体形成を遅らせかつ妨げたが、段階Iの凝縮(NA)、PS露出およびPMPを遅らせかつ妨げることはなかった(図9Aおよび9B)。
【0096】
これらのデータは、SDの間、カスパーゼ−2がMMPの上流で作用し、カスパーゼ−9がMMPの下流で作用することを示す。
【0097】
この評価を確認するために、SDによって誘導されるカスパーゼー2活性が介在するアポトーシスについての遺伝子の証明が調査された。マウスのカスパーゼ−2の配列分析により、マウスのカスパーゼ−2に対して指令された、特定の小さい干渉RNA(siRNA C2 wt)の設計に至った。この干渉RNAは、RT−PCRおよびウェスタンブロット法によって評価されるように、カスパーゼ−2発現のノックダウンを特異的に誘導する(図11A)。対照として、4の突然変異を有する無関係なsiRNA(siRNA C2 m)が設計された。
【0098】
siRNA C2 wt二本鎖分子は:
配列番号1 5’−caccuccuagagaaggacadTdT−3’
配列番号2 5’−uguccuucucuaggaggugdTdT−3’
である。
【0099】
siRNA C2 m二本鎖分子は:
配列番号3 5’−caucuacucgagacggacadTdT−3’
配列番号4 5’−uguccgucucgaguagaugdTdT−3’
である。
【0100】
全てのニューロンにおいてsiRNA C2 wtがカスパーゼ−2発現を減少させるので、現場内抗体ベースの検出はマウスのカスパーゼ−2の高い遺伝子サイレンシングを確認する(図11B)。死滅は注入後24時間で最大であり、72時間でカスパーゼ−2発現は徐々に回復する(図11B)。驚くべき事に、siRNA C2 wtによるカスパーゼ−2のノックダウンの結果、カスパーゼ−2不活性化(図11Cおよび11D)並びにΔΨ、NA、PS調和、形質膜の完全性および神経突起ネットワークの保護(図11C−E)により細胞内評価されたように、SD後に皮質ニューロンが生き残ることとなった。極めて対照的に、皮質のsiRNA C2 mは、遺伝子/タンパク質発現(図11A)およびこれらのアポトーシスのホールマークの出現のいずれも妨げない(図3Cおよび3D)。さらに、イオノマイシン処理されたニューロンが細胞死に対して保護されないので、細胞の生き残りに関するカスパーゼ−2阻害または消滅の影響はSD特異的である(図11Dおよび11E)。このため、カスパーゼ−2が活性化されず(下記参照)、かつ、Z−VDVAD−FMKまたはsiRNA C2 wtが保護効果を提供しないので、このCa2+イオノフォアによる処理は、siRNA C2 wtの特異性を探るための有用なカスパーゼ2非依存性対照である(図11Dおよび11E)。
【0101】
これらの結果は、このモデルにおいてカスパーゼ−2活性が重大な前ミトコンドリアのチェックポイントであることを立証する。
【0102】
(カスパーゼ−2は、シトクロムc放出およびミトコンドリアへのBax転座の両方を制御する)
MMP依存性の事象、例えばシトクロムc放出がカスパーゼ−2阻害またはノックダウンによって妨げられるかどうかを決定するための調査が行われた。SDはミトコンドリアからの細胞質シトクロムc放出の引き金となり、これは、Q−VD−OPH、Z−VDVAD−FMKおよびsiRNA C2 wtによって効果的に阻止される(図12A)。同様に、Q−VD−OPH、Z−VDVAD−FMKおよびsiRNA C2 wtは、カスパーゼ−2活性化を完全に破壊し、下流のカスパーゼ9およびカスパーゼ−3のシトクロムc放出依存性活性化を妨げる(図12Bおよび12C)。イオノマイシンによって誘導される細胞死は、皮質ニューロンにおけるカスパーゼ−2活性化に依存せず(図12B)、これは、Z−VDVAD−FMKおよびsiRNA C2 wtによる他のアポトーシスのホールマークについての保護効果がないことに一致する(図12Dおよび12E)。(Z−LEHD−FMKによる)カスパーゼ−9およびカスパーゼ−3(Z−DEVD−FMKによる)のようなより末端のカスパーゼの阻害はシトクロムc放出を妨げることができなかった(図12A)のに対して、Z−LEHD−FMKは、核凝縮の予備段階(段階I)でのより高頻度の阻止によって観察されるように末期のアポトーシスの特徴を遅らせ得る(図12A)ことに留意されるべきである。Z−LEHD−FMKがΔΨ降下に損なわないのに対してこれがカスパーゼ−9活性化およびアポトーシスの末端の特徴、すなわち、PS露出、NAおよびPMPを妨げるという事実(図9A、9Bおよび9D)をまとめると、これらの結果は、シトクロムc、カスパーゼ−9およびこれに続くカスパーゼ−3活性化に影響を及ぼす古典的なアポトソーム(apoptosome)の形成を支持する。
【0103】
次いで、カスパーゼ−2に対するBaxの相対的な役割が研究された。このBcl−2ファミリーの後アポトーシスタンパク質がニューロン発生の間に必要とされ、かつ、栄養性因子後にニューロンにおいてミトコンドリアのシトクロムc放出および細胞死を促進するために重大でもあるかもしれないからである。Baxの現場内抗体ベースの検出がSDニューロンにおいて行われ、サイトゾル(拡散パターン)からミトコンドリア様区画(点状)へのBax転座を示し(図12D)、これは、Baxも細胞死の開始に参加している可能性を立証する。重要なことに、カスパーゼ−2活性化対Bax転座を位置付けることは、(i)Bax転座がカスパーゼ−2に依存するかどうか;(ii)カスパーゼ−2活性がBaxに依存するかどうか;(iii)両方がSD誘導型細胞死の前ミトコンドリア制御に無関係に含まれているかどうか、を理解するために重大である。
【0104】
BaxはZ−VDVAD−FMKによって処理されたSDニューロンのサイトゾルに拡散したままであることが観察され、この結果、これは、細胞死を促進するためにカスパーゼ−2がBax転座を制御しているかもしれないことを示唆する(図13A)。逆に、カスパーゼ−9(ミトコンドリアの下流で活性化されるより近いカスパーゼ)に作用するZ−LEHD−FMKは、ミトコンドリアのBax再配置を妨げない。したがって、Z−VDVAD−FMK、Q−VD−OPHまたはsiRNA C2 wtによるカスパーゼ−2ノックダウンによる処理は、ミトコンドリアへのBax転座を損ない(図12D)、これは、カスパーゼ−2は、細胞死を促進するためにBaxの上流の制御を行使するかもしれないことを確認する。Baxおよびカスパーゼ−2間の推定される関係をより良好に特徴付けるため、SDにより死に誘導された一次皮質ニューロンは、塩素チャネル阻害剤であるフロセミドにより処理された。実際に、Bax転座は、pHおよびイオン強度感受性の配座変化を必要とするようであり、フロセミドは、スタウロスポリン(staurosporine)、腫瘍壊死因子(Tumor Necrosis Factor)−αまたはエトポシド(etoposide)により処理された細胞内のBax転座を減少させるために示された。Bax転座に干渉することによって(図13Aおよび13B)、フロセミド(Baxのレベルまたはその上流で作用し得る)は、SDニューロンにおいてアポトーシスのホールマーク(すなわち、ΔΨ損失、シトクロムc放出、NA、PMP)を減少させる(図13C)。さらに、精密な速度論観察は、ミトコンドリアへの部分的なBax再配置が5時間のSDにおいて起こり(カスパーゼ−2活性化にほぼ一致する;図9C)、その後に、8時間にΔΨ損失および15時間にミトコンドリアからのシトクロムc放出がある(データ不図示)ことを明らかにし、これは、SD系統においてBaxがMMPを仲介することを示唆する。重要なことに、フロセミドはBax転座を阻止するものの、それはSDについてのミトコンドリアのBax再配置を部分的に妨げるが、カスパーゼ−2活性を損なわない(図13B)。フロセミドは、Z−VDVAD−FMKまたはsiRNA C2 wtと比較して部分的な保護のみを提供し、このことは、用量制限(3mM超が皮質ニューロンに毒性である)およびフロセミドが直接的なBax干渉剤でないという事実に原因があるとし得るかもしれないことが注意されるべきである。
【0105】
カスパーゼ−2活性は、核に対するものではなく、SDニューロンの細胞体および神経突起並びにフロセミドにより処理されたものに拡散したままであり、これは、オルガネラ特異的カスパーゼ−2活性を有さないことを示唆する。Z−VDVAD−FMKまたはsiRNA C2 wtは、Bax転座およびカスパーゼ−2活性の両方を損なわないので、この観察は重大である(図13B)。要するに、これらのデータは、ΔΨ損失、下流のカスパーゼ−9およびカスパーゼ−3のシトクロムc放出依存性活性化、NA、PS露出および最終的なPMPが起こる直線的な事象の配列を順番に開始される、上流のカスパーゼ−2依存性の、サイトゾルからミトコンドリアへのBax再分布を示唆する。しかしながら、ニューロンにおけるミトコンドリア膜上のカスパーゼ−2の推定される直接的または間接的Bax非依存性作用は、細胞を含まない系(cell-free system)において示唆されるように、除外され得ない。
【0106】
(SD誘導型Bax切断は、細胞質カスパーゼ−2に依存するが、カルパイン非依存性である)
Baxおよびカスパーゼ−2間の結び付きを精密に確立するために、SDニューロンにおけるカスパーゼ−2およびBaxの発現がmRNAおよびタンパク質レベルにおいてチェックされ、SDを通しての活性なカスパーゼ−2の精密な細胞局在性に調査は焦点が当てられた。
【0107】
Baxに関して、mRNAのアップ/ダウンレギュレーション(図14A)もp22 Baxタンパク質の含有量増加も24時間のSDに続いて検出されない(図14B)。驚くべきことに、生来の完全な長さのp22 Baxに加えて、24時間のSDを通して、カルボニル末端の21アミノ酸を欠失した全体的なマウスBaxαに対して生じさせられたポリクローナル抗体(Δ21)を用いるウェスタンブロット法によって検出される場合に、18kDaのタンパク質に対応する第2のバンドが徐々に現れるのが観察された(図14Bにおける時間過程を参照のこと)。p22およびp18 Bax関連バンドの比較上の免疫ブロット法が、Δ21抗体およびBaxαのアミノ末端にマッピングするペプチドに対して生じさせられたポリクローナル抗体N20を用いて行われた(図14Bおよび14C)。N20により、p18バンドを検出することはできず(図14C)、これは、p22 BaxがそのN末端部分で切断されて18kDa体になったことを示唆している。この早期の切断(図14B)がカスパーゼ−2活性と同様の速度論により起こることに留意されるべきである(図9C)。驚くべきことに、カスパーゼ−2阻害またはそのsiRNAベースの遺伝子消失がBax切断を廃止するのに対して、siRNA C2 mは効果を全く有さず(図14D)、これは、カスパーゼ−2活性化がSDに続くBax切断に必要とされることを立証する。
【0108】
次いで、SD中のBax誘導型細胞死が、主に、カスパーゼ−2活性化に関連付けられるのかどうかを識別し、皮質ニューロンにおいてBaxがミトコンドリアの膜に集積してΔΨ降下およびシトクロムc放出を促進するのかをチェックするために細胞分画が行われた。Bax含有量は、ウェスタンブロット法によって、Z−VDVAD−FMKまたはsiRNA C2 wtを伴ってまたは伴わずに24時間のSDに付された皮質ニューロンから得られた可溶性のサイトゾル画分およびミトコンドリアに富む重い膜画分の両方において分析された。生来のp22 Baxは、24時間SDにおける可溶性画分およびミトコンドリア豊富な画分の両方において見出されるのに対し、p18 Baxは、もっぱらミトコンドリア豊富な画分に検出される(図14E)。生来のBaxはまた、(外側の)ミトコンドリア膜により小さい範囲で挿入された(図14E)。前記データは、Baxの両方の形態が、SDによって引き起こされる細胞死に参加し得ることを示す。次いで、カスパーゼ−2依存性Bax切断が、他の刺激に応答して皮質ニューロンにおいて起こり得るのかどうかを決定するための調査が行われた。事実上、Bax切断はまた、スタウロスポリンまたはイオノマイシンによる処理の間に起こるが、これらの状況では、p18 Baxは、カスパーゼ−2非依存性の様式で発生し(図14F)、これは、他のプロテアーゼがこれらのモデルにおいてBax切断の原因となり得ることを確認する(Woodら,1998;Choiら,2001)。したがって、スタウロスポリンまたはイオノマイシンによって誘導される細胞死(図3D)は、Q−VD−OPHまたはZ−VDVAD−FMKによって妨げられない。
【0109】
Baxが他のシステインプロテアーゼであるカルパインによってまたはカスパーゼ依存性カルパイン活性化を通じて直接的に切断されるかもしれない(Choiら,2001)ので、Bax切断のプロテアーゼ阻害プロファイルはより精密に問題にされた。カルパインがニューロンにおいてSD中のBax切断の原因であるかどうかチェックするために、カルパイン阻害剤(ALLN、ALLMおよびE64D)のBax切断についての効果がウェスタンブロット法によって調査された。Q−VD−OPHとは対照的に、カルパイン活性の阻害はBax切断を妨げず、これは、Bax切断がSD中カルパインによって直接的または間接的に仲介されないこと立証する(図14G)。興味深いことに、p18 Baxは、ラクタシスチン(Lactacystin)およびエポキソマイシン(Epoxomycin)によりプロテアソーム活性の阻害によって安定化されるようであり(図14H)、これは、p18 Baxの従来のアポトーシスに記録された効果を強化する。
【0110】
全てのこれらのデータは、カスパーゼ−2活性により活性体へのBax切断の結果となるモデルと一致する。
【0111】
前記結果は、カスパーゼ−2が処理されることをBaxが必要とすることを示した。このため、SDを通してのカスパーゼ−2の生化学的状態および細胞分布を決定するための調査が行われた。SDに続くカスパーゼ−2 mRNAの上向き調節はないようである(図14I)。対照的に、前カスパーゼ−2タンパク質の含有量は、未処理のニューロンに比較してSD−ニューロンにおいて減少し、この減少は、Z−VDVAD−FMK処理がこれを妨げるので、カスパーゼ−2の自己切断の結果であるようである(図14J)。実際に、カスパーゼ−2の処理されたp14体は、SDニューロンにおいて免疫検出されるが、Z−VDVAD−FMK処理されたSDニューロンでは免疫検出されない(図14J)。切断の中間生成物も、33kDaに検出され得る。SD中のカスパーゼ−2局在性の速度論分析は、末期段階においてさえもカスパーゼ−2が厳密に細胞質にあることを示し、この結果、SD細胞死におけるカスパーゼ−2の核機能を妨げる(図14K)。対照的に、いくつかのアポトーシス薬物、例えば、Ca2+イオノフォアであるイオノマイシン、キナーゼ阻害剤であるスタウロスポリン、トポイソメラーゼI阻害剤であるカンプトテシンは、カスパーゼ−2の部分的または完全な核局在化の引き金となる(図14L)。
【0112】
このため、ニューロンにおけるカスパーゼ−2の細胞質分布は、刺激依存性であり、これは、SDニューロンの細胞質におけるカスパーゼ−2の特有の機能であることを立証する。
【0113】
(特異的カスパーゼ−2阻害は、新生児の虚血脳損傷の際に強いニューロン保護を提供する)
上記結果は、上流および早期のカスパーゼ−2活性が前記インビトロモデルにおいて重大なチェックポイントであることを立証する。このような経路が急性のニューロンのストレスの間にインビボで効果的にターゲットにされ得るのかどうかを決定するための実験が行われた。処理のために、細胞透過性および阻害ポテンシャルの両方を増大させ得る、アミノ末端のキノリン基およびカルボキシ末端のO−フェニロキシ基と結合されたペンタペプチドVDVADを基礎として、Q−VDVAD−OPHと名付けられた新しい細胞透過性のカスパーゼ−2阻害剤プロトタイプのカスタム合成が行われた。
【0114】
配列番号5、Q−VDVAD−OPH:キノリニルカルボニル−L−バリニル−L−アスパルチル(メチルエステル)−L−バリニル−L−アラニニル−L−アスパルチル(メチルエステル)2,6−ジフルオロフェニルエステル
Q−VDVAD−OPHの特異性が組み換えカスパーゼ−2に対して試験され(図15A)、カスパーゼ−2によるインビトロのVDVAD−AMC切断は、Q−VDVAD−OPHによって阻止される。この効果は、Q−VD−OPHおよび特異的カスパーゼ−2可逆阻害剤(Ac−VDVAD−Cho)または不可逆阻害剤(Z−VDVAD−FMK)と同等である。Z−VAD−FMKによる切断阻害がそれほど重要でない一方で、BOC−D−FMKは、カスパーゼ−2に対して完全に不活性であり、この結果、これは、通常の汎カスパーゼ阻害剤のカスパーゼ−2に対するより低い作用強度を立証する。カスパーゼ−2は、Z−DEVD−FMK(カスパーゼ−3様阻害剤)またはZ−LEHD−FMK、Z−LETD−FMK(カスパーゼ−3/9/8様阻害剤)それぞれによって強くは不活性化されない(図15A)。E64d、ALLN、ALLM、他のシステインプロテアーゼ阻害剤であるカルパインは、切断活性を損なうことができない(図16)。SD系統(しかしイオノマイシン誘導型の死ではない)において試験される場合、Q−VDVAD−OPHは、Q−VD−OPH、Z−VDVAD−FMKまたはsiRNA C2 wtが行った(図8B、9Aおよび11Dおよび11B)ように皮質ニューロンの生き残りを促進し(図15B)、この結果、これは、インビボ実験のための特異的カスパーゼ−2阻害剤を提供する。対照的に、BOC−D−FMKおよびZ−VAD−FMKは、SD誘導型ニューロン細胞死に対して非効率であった(図8A)。次いで、Q−VDVAD−OPHが、細胞死がどちらかと言えばアポトーシスにより発生する発育中の脳内の低酸素症−虚血損傷(hypoxic-ishemic injury)の急性モデルにおいて試験された。この一過性の片側病巣虚血モデル(unilateral focal ischemia model)では、子ラット(rat pups)は、再灌流を伴う左頸動脈の一過性の閉塞と関連して恒常的な左中大脳動脈閉塞を経た。次いで、この周産期(perinatal)虚血モデルに投与される時の汎カスパーゼ(Q−VD−OPH)およびカスパーゼ−2特異的(Q−VDVAD−OPH)阻害剤のニューロン保護効果が検討された。Q−VD−OPHまたはQ−VD−VAD−OPHの1回の用量(100μ
g/動物)または賦形剤が、虚血開始前に腹腔内(i.p.)投与された。次いで、大きな浮腫(oedema)(1.5%以下)なく梗塞が安定化される時間ポイントである48時間後に脳が分析された。虚血は、55.0±3.4mmの梗塞容積を誘導した。これは傷害同側半球(lesioned ipsilateral hemisphere)において22.1±1.4%の損傷を示す。梗塞容積は、通常に分布されるようであった(15〜26%)(図15Cおよび15D)。虚血前に与えられるQ−VD−OPHの単回の用量は、44%まで梗塞容積を大きく低減させ(Newman-Keul’s検定における対照群と比較して12.4±2.6%,p<0.05)、容積は、0〜31に分布された(図15Dおよび15E)。Q−VDVAD−OPHは、同一用量で、梗塞容積において非常に大きい74%の減少を誘導した(Newmann-Keul’検定において対照およびQ−VD−OPH群と比較して5.7±2.3%,p<0.01)(図15Cおよび15D)。12の研究された動物に関して、8が、虚血対照動物と比較してMCA閉塞のレベル(プレート12および13に対応するレベル)で可視の非常に著しくより小さい梗塞(0.5%の中央値)を示したが、脊椎(dorsal)および海馬(dorsal hippocampus)のレベル(プレート21)で示さなかった(図15Cおよび15E)。他の4つは、16.5±1.32%の平均で梗塞を示し、虚血対照動物において得られたものより低い値であった。結論として、我々のデータは、初発因子であるカスパーゼ−2の特異的な阻止が強いニューロン保護を提供し、これは虚血脳障害に対して汎カスパーゼ阻害より効果的であることを立証する。
【0115】
(議論)
(前ミトコンドリア・カスパーゼ−2活性は、ニューロンアポトーシスに必要とされる)
本発明は、上記のように、一次皮質ニューロンのSD誘導型アポトーシスが、上流の初発因子であるカスパーゼ−2の活性化に依存し、Bax誘導型ミトコンドリアの機能不全およびこれに続くカスパーゼ依存性のニューロンの破壊の制御を通して進行する新規な固有経路サブタイプを記載する(図17)。
【0116】
このモデルは、以下に列挙する証拠によって支持される。
【0117】
(i)アポトーシスの階層性および時間順序は、サイトゾルのBaxが転座しかつ外側のミトコンドリア膜に集積してΔΨ降下を誘導し、シトクロムc放出およびカスパーゼ−9/カスパーゼ−3のシトクロムc放出依存性活性化、核凝縮/断片化、PS露出およぶ終端のPMPのような下流の事象を促進する固有的様式を示した。
【0118】
本発明により得られた結果は、シトクロムcおよびカスパーゼ−9を有する古典的なアポトソームの形成を支持し得る。しかしながら、カスパーゼ−3阻害がアポトーシスの終端ホールマークを妨げないので、カスパーゼ−9は、識別されないままにある別の下流の実行カスパーゼの活性化にも含まれ得る。
【0119】
(ii)Z−VDVAD−FMKは、カスパーゼ−3、−8、−9の選択的阻害剤よりも高いSDによって死に誘導されたニューロンの生き残りを促進する。
【0120】
(iii)早期のカスパーゼ−2活性化は、MMPより前でかつ他のカスパーゼと無関係に検出される。前ミトコンドリアカスパーゼ−2活性化は、SD誘導型細胞死に必要とされる。特異的なsiRNAによるカスパーゼ−2のノックダウンまたはカスパーゼ−2活性の薬理学的阻害(Z−VDVAD−FMK、Q−VD−OPH)が、全てのアポトーシスのホールマークを廃止するからである。
【0121】
(iv)カスパーゼ−2活性の阻害は、ニューロン保護を提供するためにSDの当初に行われるべきであり、これは、カスパーゼ−2によって果たされる早期の重大な役割を強化する。
【0122】
(v)SD誘導型アポトーシスはBax依存性でもあるので、カスパーゼ−2活性化は、生来のBaxのp18フラグメントへの切断を可能にすることによって、カルパインとは無関係に上流のBaxの制御を仲介し得る。しかしながら、カスパーゼ−2に依存する様式で生来のBaxおよび切断されたBaxの両方が転座し、かつ外部のミトコンドリア膜に集積して、ΔΨ降下を誘導し、シトクロムc放出および下流の事象を促進する。
【0123】
(vi)カスパーゼ−2は自己切断の結果としてp14体に処理され、SDの間細胞質中に厳密に拡散されたまま残り、この結果、カスパーゼ−2のオルガネラ特有の機能または核機能を禁止する。長いSDを通してのカスパーゼ−2の限定的な細胞質局在性は、SDの間の特有の活性化機構の証拠を示す。
【0124】
(カスパーゼ依存性対カスパーゼ非依存ニューロン細胞死)
試験された3つの広域スペクトルのカスパーゼ阻害剤の中で、Q−VD−OPHのみが、皮質SD−ニューロンにおいて有意なカスパーゼ阻害および生き残りを提供する。この第3世代の汎カスパーゼ阻害剤は、増大した抗アポトーシス特性を示し、ニューロンに限定されない。これは、最良の細胞透過性(アミノ末端のキノリン基)、カルボキシ末端のO−フェニロキシ基の特異性および効率性(古典的なフルオロメチル/クロロメチル ケトンを超える)に起因するようである。このため、Q−VD−OPHが古い世代の阻害剤であるZ−VAD−FMKおよびBOC−D−FMKより多大に神経生物学のために使用されるようである。ニューロン培養モデルにおけるマルチ−カスパーゼ阻害は、一般的に、全てのアポトーシスを保存するわけではなく一過性または部分的な保護を提供した。この理由は、ミトコンドリアチェックポイントの下流に含まれるカスパーゼ(単数または複数)の阻害がシトクロムc放出を妨げず、むしろ死への傾倒を拡張する、部分的なミトコンドリアのカスパーゼ非依存性経路または(上流のカスパーゼ非依存性の)ミトコンドリア経路の活性化に起因するようである。例えば、神経成長因子(nerve growth factor:NGF)由来のBOC−D−FMKが保護する交感神経ニューロンは、タンパク質合成および電気生理学的形質膜特性を回復することなく形態学的保存を示した。逆に、特異的カスパーゼ−2の不活性またはノックダウンが前ミトコンドリアレベルで起こり、この結果、シトクロムc放出および下流の依存性の事象を妨げれば、SDニューロンは、ほぼ保存された形態(細胞体および神経突起ネットワーク)を示すようである。
【0125】
カスパーゼ活性化に対立するものとして、急性および慢性神経変性疾患での細胞死の調節におけるMMPの役割が報告された。それにもかかわらず、表1から参照されるように、ミトコンドリアまたはPTPとの直接的な干渉はどれも、SD−ニューロンにおいて有意な生き残りを提供しない。上記化合物による有意な保護の欠如は、ミトコンドリアがSD系統においてより上流のチェックポイントになる可能性がないことを示す。本発明により得られたデータは、いくつかの急性のニューロン死モデルにおいて、カスパーゼ−2がミトコンドリアの上流で作用し、実行体であるカスパーゼ−3および−9がミトコンドリア下流で作用することを支持する。
【0126】
さらに、他のシグナリングおよび代謝の主要な経路の薬理学的阻害は、SDにより引き起こされる細胞死を妨げることができない(表1を参照のこと)。化合物全体の効果が回避されることおよび精巧な組み合わせが細胞保護を提供し得ることは除外され得ない。最後に、予想されるように、アクチノマイシンDおよびシクロヘキサミドのみが、SDに付された皮質ニューロンの生き残りを促進し、これは、後−転写/翻訳事象がこの死モデルに含まれ得ること示唆する。実際に、巨大分子の新規(de novo)転写および翻訳は、いくつかのニューロンアポトーシスモデルにおける細胞死に不可欠である:シクロヘキサミドは、NGFが欠乏した交感神経におけるΔΨ損失およびシトクロムc放出の両方を妨げ、アクチノマイシンDは、特定の処理を施していない区別された、NGF/血清が欠乏したPC12細胞の細胞死を阻止した。
【0127】
(SD皮質ニューロンにおける前ミトコンドリア・カスパーゼ−2活性化)
本発明は、不活性化される(Z−VDVAD−FMK)またはサイレンシングされる(siRNA C2 wt)場合に高いニューロンの生き残りを促進する前ミトコンドリア・カスパーゼ−2の初期の要求のためのモデルを支持する(図8)。
【0128】
注目すべきことに、カスパーゼ−2 マウスは生存可能であり、(新生児段階での促進的アポトーシスによって引き起こされ、ニューロン形成の減少によって引き起こされない)顔の運動ニューロンの数の減少を除き異常なニューロンの表現型を示さない。驚くべきことに、交感神経ニューロンがNGF抜き出しに応じてアポトーシスを経、アンチセンス・カスパーゼ−2によって保護される一方で、カスパーゼ−2が欠乏した交感神経ニューロンは、野生型ニューロンより効率的にアポトーシスを経る。さらに、これらのマウスからの海馬ニューロンは、μ−アミロイドに対して抵抗性であった。
【0129】
RNA干渉による皮質ニューロンにおける一過性のカスパーゼ−2のノックダウンの誘導は、補償機構を妨げ、これは、ニューロン死におけるカスパーゼ−2の関与を明瞭に立証することを可能にした。
【0130】
カスパーゼ−2の細胞下の局在性が、見通しをその活性化の機構に与え得る一方で、その精密な細胞下の分配は未だに問題が多い(ゴルジ複合体、ミトコンドリア、核および細胞質)。これは、細胞型の相違、死刺激、GFP融合タンパク質の過剰発現およびカスパーゼ−2を検出するために用いられた抗血清(antisera)に起因するようである。驚くべきことに、カスパーゼ−2は、長いSDの間でさえ、皮質ニューロンにおいて、拡散プールおよび細胞質プールの両方として構成性に検出され、この結果、皮質ニューロンにおけるSD細胞死でのカスパーゼ−2の核またはオルガネラ特異的な機能を禁止する。SDの間の核におけるカスパーゼ−2の再分布の欠如および皮質ニューロンにおけるカスパーゼ−2の細胞質分配事実の両方は、刺激依存性であり、これは、SDニューロンの細胞質におけるカスパーゼ−2の活性化の特有の機構を示唆する。興味深いことに、カスパーゼ−2が海馬ニューロンの細胞質および核の両方において検出されるモデルである発作誘導型ニューロン死も、Z−VDVAD−FMKによって低減させられる。カスパーゼ−2染色も、主として、PC12細胞の多くの核において1〜2の病巣を有する細胞質性であった。このパターンは、NGF欠乏型細胞において実質的に変わらない。SD系統について要約すると、これらのデータは、サイトゾルからアポトーシスを誘導するためのカスパーゼ−2によって果たされる役割を支持しており、このことは、核レベルからのカスパーゼ−2介在型細胞死の活性化についての実際のコンセンサスに疑問を呈する。
【0131】
高感度ΔΨ染料を用いて、細胞内カスパーゼ−2活性は、SDニューロンにおいてΔΨm崩壊およびシトクロムc放出より先に起こることが示され、これは、後アポトーシスBcl−2メンバーによって果たされる役割に矛盾しない。前記データは、ニューロンの発生際にBaxが必要とされ、かつ、栄養性因子欠乏後のニューロンにおいてミトコンドリアのシトクロムc放出および細胞死を促進するために重大であり得ることを示す従来の結果に一致する。
【0132】
(インビボ虚血の間のターゲットとしてのカスパーゼ−2)
siRNAを脳内に送達する困難性を考慮して、第1のO−フェニロキシベースおよびキノリンベースの、特異的にカスパーゼ−2を阻害し得るペプチドが、カスパーゼ−2レベルのインビボの治療的な介入についての概念を証明するために設計された。
【0133】
最近導入された(Melnikovら,2002;Casertaら,2003;Lecoeurら;2004)Q−VD−OPHは、唯一のO−フェニロキシおよびキノリンベースの入手可能な阻害剤であるが、選択的ではない。SD系統におけるZ−VAD−FMKによるニューロン保護の欠如は、インビトロでカスパーゼ−2切断活性を阻止したという事実と結び付けられて、アミノ末端のキノリン基によって提供される細胞透過性おける利得を際だたせる。本発明者らによって用いられるテンプレートであるQ−VDVAD−OPHは、カスパーゼ−2活性をインビトロおよび細胞内で良好に阻止し、この結果、SDニューロンの生き残りを促進する。
【0134】
SD、低酸素症またはグルコース欠乏は、インビボの大脳または心筋虚血の構成要素である。低酸素症−虚血(H−I)の新生児モデルにおいて、ネクローシスよりもむしろコアおよび周縁での広範囲のアポトーシスについての証拠がある。新生児大脳虚血は、DNA損傷を伴う後発的細胞死および細胞死のアポトーシス機構に至る。P7 子ラットにおける再灌流を伴う一過性の病巣虚血は、DMAの断片化、アポトーシスの形態学的特特徴およびミトコンドリア経路の活性化に至る。
【0135】
本発明者らは、Q−VDVAD−OPH(高有効性および細胞透過性のカスパーゼ−2阻害剤)の5mg/kgの腹腔内投与が、上記の実験的な新生児の一過性のH−I傷害に付された子ラットにおいて梗塞サイズを大きく減少させる(74%)ことを立証した。Q−VDVAD−OPHの最大の有効性は、このモデルにおいて得られた、汎−カスパーゼ阻害剤(BOC−D−FMK)が梗塞容積においてこのような有意な減少を誘導しなかったことを示す従来の結果と厳密に対照をなす。このH−Iモデルは、カスパーゼ−2依存性であるようなので、これらの所見は、SD−ニューロンにおけるBOC−D−FMKの相対的な非有効性についておよび組み換えカスパーゼ−2のインビトロVDVADアーゼ活性に対する我々の観察と一致しているかもしれない。さらに、この化合物は、ライス−バヌーチ(Rice-Vannucci)モデルにおいて低酸素症−虚血に続く有意な保護を立証する従来の研究にも係わらずニューロン保護性でない。実際に、BOC−D−FMKは、むしろ、Renolleau’sモデルの動物の60%において悪化を示した。(i)シナプス可塑性に包含されるいくつかのタンパク質(GluR1−4 AMPA−レセプターサブユニット、Camキナーゼ、PKC相互作用タンパク質、MAPおよびチロシンキナーゼ)は、カスパーゼのための基質でもあり、(ii)Z−VAD−FMK処理されたマウスは、損なわれた記憶を示したので、証拠は生理学的および非致死のカスパーゼ活性化が軸索誘導(axon guidance)およびシナプス・リモデリングに寄与することを示唆する。生体系における汎カスパーゼ阻害は、アポトーシスからネクローシス、腫瘍形成または細胞のホメオスタシスの崩壊に切り替えることができ、これは、損傷の悪化、癌または自己免疫疾患の結果として生じ得た。このため、汎カスパーゼ阻害剤の長期投与を起因とする生理学的なカスパーゼ活性化の変化、毒性および副作用はまた、慢性神経変性の治療におけるそれらの使用を制限し得、この結果、これは、急性および慢性の両方の疾患のための(初発因子)カスパーゼの優先的な選択阻害の必要性を強化する。汎カスパーゼ阻害によってH−I病変の部分的な減少が提供され得るのであれば、それが後アポトーシスまたは後炎症カスパーゼまたはその両方の阻害に起因するかどうかは明らかでない。興味深いことに、再灌流を伴う新生児脳卒中のこのモデルは、出生時新生児ヒト低酸素症−虚血脳症(encephalopathy)と特に臨床的に関連するので、小さいペプチド性阻害剤によるカスパーゼ−2阻害は、汎カスパーゼ阻害の際に起こり得る副作用なく新生児脳卒中においてニューロンを保持するためにいくつかの治療的な変更を提供し得る。さらに、IL−1βおよびポリ(ADP−リボース)シンターゼ(PARS)の後炎症カスパーゼ−1介在プロセシングの特異的な阻害は虚血傷害後の細胞死も適度に低減させるので、これは、カスパーゼ−1またはPARS阻害剤をカスパーゼ−2阻害と結び付ける合理性を提供し得る。
【0136】
本発明者らによって得られた結果からみて、前ミトコンドリアカスパーゼ−2との選択的な干渉は、ニューロン細胞死を減らすための関連ツールであるようである。これらの結果は、少なくともニューロン細胞死系統において固有の経路を孤立したカスパーゼ−2活性化と調和させることおよび初発因子カスパーゼと固有のミトコンドリア経路との間の新しい関係を詳細に描写することを可能にする。急性ニューロンアポトーシスは、Bax誘導型ミトコンドリア機能不全の制御を通して進行する上流の初発因子であるカスパーゼ−2活性化およびこれに続くカスパーゼ依存性ニューロン破壊に依存するかもしれない。インビボでのカスパーゼ−2の不活性化により、結果として、一過性の病巣虚血中の梗塞容積の大きな減少を生じるので、カスパーゼ−2が新生児脳卒中において良好なニューロン保護予後を有する関連したターゲットでもあることが証明された。
【0137】
(実験手順)
(一次皮質ニューロンの単離および培養)
一次皮質ニューロンは、E14スイスマウス胎児(embryos)(Janvier)から培養された。マウスは、頚部脱臼によって殺され、胎児は帝王切開によって取り除かれた。大脳皮質が抽出され、組織がL15培地(Gibco BRL)において1000μlチップ(Eppendorf)を用いることによって15回機械的にすり潰され、次いで、残さが取り除かれ、そして、細胞懸濁液は、850rpmで10分にわたり遠心分離された。ニューロンは、2日にわたり、1%グルタミン、5%ウマ血清(HS,Eurobio)および2.5%ウシ胎仔血清(FCS,Eurobio)により補充されたイーグルの基本培地(Eurobio)中に高密度(7×10生細胞/cm)で、1mg/mlのポリエチレンイミン(Polyethyl-enimine)(Sigma)により事前にコーティングされた、6または24ウェル−プレート(Sarstedt)または4−ウェル−Lab-Tek(登録商標)カバーグラスチェンバー(4-well-Lab-Tek chambered coverglass)(Nalge Nunc International)上に塗布された。DIV3で、培地は毎日交換され、ニューロンは、180mg/lのグルコース、5%のHSおよび1%のFCSおよび3μMのシトシン β−D−アラビノフラノシド(Sigma)および1μMの5−メチル−10,11−ジヒドロ−5H−ジベンゾシクロヘプテン−5,10−イミン マレアート(MK-801,Sigma)を含むN5完全培地に維持された。培養の純度(>95%)は、抗微小管結合タンパク質2モノクローナル抗体(MAP−2,Sigma)および抗グリア細胞繊維性酸性タンパク質ポリクローナル抗体(GEAP,Dako)により制御された。ニューロンは、DIV6−DIV9の間で用いられた。
【0138】
(薬理学的試剤によるアポトーシス誘導およびニューロン保護アッセイ)
細胞死は、DIV6において血清欠乏(SD)によって誘導された。簡単には、以下のように血清抜き出しが行われた:N5完全培地において培養されたニューロンが、HSおよびFCSの両方を欠くN5において迅速に3回洗浄され、薬理学的試剤の不存在下または存在下に血清のないN5培地において24時間にわたりインキュベートされた。あるいは、細胞死はまた、24〜48時間にわたるイオノマイシン、スタウロスポリン、カンプトテシン、1−メチル−4−フェニル−1,2,3,6−テトラヒドロピリジン(MPTP)、3−ニトロプロピオン酸(3NPA)、ニトロプルシドナトリウム(SNP)(全てSigmaから購入された)またはβ−アミロイドペプチド(25−35)(Bachem)による処理によって導入された。ニューロン保護アッセイのための試剤がSDまたは薬品処理の当初に(N5完全培地において)加えられた。それらは、それら自体によって細胞毒作用を誘導しない濃度で用いられた。シクロスポリンA、4,4’−ジイソチオシアナスチルベン−2,2’−ジスルホン酸二ナトリウム塩(DIDS)、ルテニウムレッド、デシルユビキノン、1,2−ビス(2−アミノフェノキシ)エタン−N,N,N’,N’−テトラ酢酸のアセトキシメチルエステル(BAPTA−AM)、3−メチルアデニン、バフィロマイシン(bafilomycin)A1、ラパマイシン、レプトマイシン(leptomycin)B、N−ベンジロキシカルボニル−Phe−Phe−フルオロメチルケトン(Z−FF−FMK)、ペプスタチン、オカダ酸、ミクロシスチン(microcystin)LR、H−7、アスピリン、ウォルトマンニン、ゲニステイン(genistein)、ラクタシスチン(lactacystin)、エポキソマイシン、トロロックス(登録商標)(Trolox)、N−アセチル−システイン、グルタチオン、アクチノマイシンD、シクロヘキサミドがSigmaから購入され;N−ベンジロキシカルボニル−Val−Ala−Asp(OMe)−フルオロメチルケトン(Z−VAD−FMK)、BOC−Asp(OMe)−フルオロメチルケトン(BOC−D−FMK)、キノリン−Val−Asp(OMe)−CH−O−Ph(Q−VD−OPH)、N−ベンジロキシカルボニル−Phe−Ala−フルオロメチルケトン(Z−FA−FMK)、
N−ベンジロキシカルボニル−Asp−Glu(OMe)−His−Asp(OMe)−フルオロメチルケトン(Z−DEVD−FMK)、N−ベンジロキシカルボニル−Leu−Glu(OMe)−His−Asp(OMe)−フルオロメチルケトン(Z−LEHD−FMK)、N−ベンジロキシカルボニル−Leu−Glu(OMe)−Thr−Asp(OMe)−フルオロメチルケトン(Z−LETD−FMK)、N−ベンジロキシカルボニル−Val−Asp(OMe)−Val−Ala−Asp(OMe)−フルオロメチルケトン(Z−VDVAD−FMK)はICNから購入され;キノリン−Val−Asp(OMe)−Val−Ala−Asp(OMe)−CH−O−Ph(Q−VDVAD−OPH)のカスタム合成がICNによって行われ;4−(2−アミノエチル)−ベンゼンスルホニルフルオリド(AEBSFまたはペファブロックSC)は、Rocheから購入され;N−アセチル−Leu−Leu−Norleu−al(カルパイン阻害剤IまたはALLN)、N−アセチル−Leu−Leu−Met−al(カルパイン阻害剤IIまたはALLM)、trans−エポキシスクシニル−L−ロイシルアミド−(4−グアニジン)ブタン(E64d)、MDL−28170、SB 202190、PD 98059、SP 600125がMerck/VWRから購入された。
【0139】
(一次皮質ニューロンにおけるアポトーシスの動力学分析のための器械)
マルチプローブ蛍光顕微鏡法(FM)が、事前に染色されたニューロンについて、100Wの水銀ショートアークランプおよびa×40N PLAN L対物レンズまたは水浸(immersion) ×100 N PLAN対物レンズを備えたDM IRB反転(inverted)蛍光顕微鏡(Leica)を用いて行われた。通常、定量研究は、実験当たり5〜10の無作為に選択された領域を計測することによる約200〜600細胞/領域についてのFMおよびより高いサンプルスループットのためのフローサイトメトリー(FC)の両方によって行われた。この後者のために、既に記載されたように(Lecoeurら,2004)染色されたニューロンのトリプシン処理後にアポトーシスおよび関連する事象のマルチパラメトリックな分析が行われた。FCは、15mW空冷488nmアルゴンレーザ(Becton Dickinson)を備えた3色FACSCaliburサイトメータを用いて行われた。
【0140】
(ΔΨ、カスパーゼ活性化、PS露出、PMPおよびNAのマルチプローブ分析)
既に記載されているように(Lecoeurら,2004)、FCおよびFMの両方によって測定が行われた。ミトコンドリアの膜電位(ΔΨ)は、ΔΨ高感度染料である5,5’,6,6’−テトラクロロ−1,1’,3,3’−テトラエチルベンズイミダゾリルカルボシアニン ヨージド(JC-1,Molecular Probes)の取り込みによって評価された(Sileyら,1991)。ニューロンは、1μMのJC−1により30分にわたり37℃で負荷がかけられた。FMについては、緑色(モノマー,低ΔΨ)およびオレンジ色(J−凝集体,高ΔΨ)蛍光が同時に取得された(BP 450−490励起/LP 515ロングパス発光フィルタ)。JC−1モノマーは、F1−1チャネルにおいてFCによって検出された。J−凝集体は、F1−2チャネルを通して検出された(Lecoeurら,2004)。あるいは、ΔΨはまた、60nMのMitoTracker(登録商標)Red(CMXRos;分子プローブ)によって評価され、FM(BP 515−560励起フィルタ/LP 590発光フィルタ)によって検出された。ΔΨ崩壊のための陽性対照は、カルボニルシアニド m−クロロフェニルヒドラゾン(mClCCP,100μM,45分)により行われた。活性化されたカスパーゼ−2、−3、−8および−9は、特異的なFAM結合ペプチド(蛍光色素がラベリングされたカスパーゼ阻害剤(FLICA)と呼ばれる):CaspaTag(登録商標)フルオレセインカスパーゼ活性キット,Q-Biogen,Illkirch,フランス;ApoFluor(登録商標)カスパーゼ検出キット,ICN,Orsay,フランス;FAM−VDVAD−FMK、FMK−DEVD−FMK、FAM−LETD−FMKおよびFAM−LEHD−FMKをそれぞれ用いて検出された。ニューロンは、FLICAと共に(1:150,CaspaTag(登録商標)または1:500,ApoFluor(登録商標))1時間にわたり37℃でインキュベートされ、次いで、3回洗浄バッファで洗浄された。FMのために、FAM結合ペプチドが、BP 480/40フィルタを通して励起され、発光された光は、BP 527/30フィルタを通して集められた。FC分析は、F1−1チャネルにおいて行われた(Lecoeurら,2004)。形質膜の外側のリーフレットへのホスファチジルセリン(PS)露出は、FITC結合型アネキシンV(Immunotech)の固定を通して検出された。形質膜透過性(PMP)は、核DNAへの7−アミノアクチノマイシンD(7−AAD,Sigma)の増加した結合を通して検出された。染色およびFMおよびFCによる分析は、既出(Lecourら,2004)のように行われた。核は、1μMのヘキスト(登録商標)33342により染色され(30分)、FMによって分析された(BP 340−380励起フィルタ/LP 425 ロングパスフィルタ)。核アポトーシス(NA)は、ニューロンにおいて既に規定されたように(Lecourら,2004)評価された。
【0141】
(シトクロムc、Bax、カスパーゼ−2およびカスパーゼ−3の免疫検出)
Lab-tek(登録商標)チャンバスライドでのニューロンの生育は、20分にわたり4%のパラホルムアルデヒド/0.19%のピクリン酸に固定され、PBS中の0.01%のトリトン−X100により5分にわたり透過性化され、次いで、PBS中の10%のFCSにより30〜45分にわたり遮断された。全ての免疫染色は室温で行われた。抗体は、PBS中の1%のウシ血清アルブミン(Sigma)で希釈された。次いで、ニューロンは、マウスのモノクローナルIgG1抗シトクロムc(1時間;1:200;クローン 6H2.B4,BD,Pharmingen)および第2の抗体としてのヤギ抗マウスIgGのAlexa Fluor(登録商標)594 F(ab’)フラグメント(1時間,1:200;Molecular Probes)を用いて染色された。同様に、Bax転座は、カルボニル末端の21アミノ酸を欠失したマウスのBaxαに対して生じさせられたウサギのポリクローナル抗体(1時間,1:100;Δ21,Santa Cruz Biotechnology)を用いて調査され、FITC−ヤギの抗ウサギIgG抗体(1時間,1:100;Molecular Probes)により検出された。拡散した細胞質シトクロムcまたはBax点状ラベリングのいずれかを示す細胞が、FMの下で、条件当たりおよび実験当たり150〜300の無作為に選ばれた細胞に対応する約10の領域についてカウントされた。カスパーゼ−2は、ラットのモノクローナル抗マウスカスパーゼ−2抗体(10C6,Alexis Biochemicals,San Diego,CA,米国;1:100,1時間)および第2の抗体としてのヤギ抗ラットIgGのAlexa Fluor(登録商標)594 F(ab’)フラグメント(1時間,1:100,Molecular Probes)を用いることによって細胞内検出された。活性化されたカスパーゼ−3は、FCによって細胞内評価された(Lecoeurら,2004)。進行のため、ニューロンはトリプシン処理され、1%のPFAおよび20μg/mlのアクチノマイシンD(Sigma)を含むPBSに20分にわたり固定された。次いで、ニューロンは、20μg/mlの7−AADおよび20μlのフィコエリトリン結合型ポリクローナル・ウサギ抗カスパーゼ−3抗体(BD Pharmingen)の両方を含む100μLのPBS/1%のBSA/0.05%のサポニンキラヤバーク(Sigma)に30分にわたり再懸濁させられた。
【0142】
(RNA干渉)
二本鎖siRNAは、マウスカスパーゼ−2遺伝子の配列(AACACCTCCTAG AGAAGGACA;ヌクレオチド185−203;siRNA C2 wt)に対応する。同じ配列の4箇所の突然変異により不活性なsiRNAが設計された(AACACTCTG AGAGGACA;siRNA C2 m)。siRNA C2 wtの配列は、その特異性を保証するためにBLASTに提出された。アニーリングされたsiRNA二本鎖化合物(RP−HPLC精製される)は、Proligoから購入された。DIV6での24ウェル−プレート(7×10/ウェル)またはLab-Tek(登録商標)4−カバーグラスチャンバー(1.33×10/ウェル)におけるニューロンの培養は、6時間にわたりsiRNA(3.8μg)によりリポフェクタミン2000(Invitrogen)を用いてトランスフェクトされた。次いで、ニューロンは、洗浄され、完全N5培地にさらに16時間にわたり戻され、その後に、24時間SDまたはイオノマイシン処理に付されたかまたは付されなかった。
【0143】
(RT−PCR分析)
RNA抽出は、24ウェル(1.33×10ニューロン)または6ウェル(7×10ニューロン)プレートにおいて、製造者の推薦によるRNeasy(登録商標)mini Kit(Qiagen)を用いて直接的に行われた。逆転写は、Supercript(登録商標)II RNアーゼ H逆転写酵素(Invitrogen)を用いて行われた。PCRプライマー:Baxフォワードプライマー 5’−AGAGGCAGCGGCAGTGAT−3’、Baxリバースプライマー 5’−AGACACAGTCCAAGGCAGTGG−3’;カスパーゼ−2フォワードプライマー 5’−GAGCAATGTGCACTTCACTGG−3’、カスパーゼ−2リバースプライマー 5−CCACACCATGTGAGAGGAGTG−3’、カスパーゼ−9フォワードプライマー 5’−AGCTGGAGCCGTCACAGCC−3’、カスパーゼ−9リバースプライマー 5’−CTCCGCCAGAACCAATGTCC−3’;GAPDHフォワードプライマー 5’−GGTCGGAGTCAACGGATTTGGTCG−3’、GADPHリバースプライマー 5’−CCTCCGACGCCTGCTTCACCAC−3’ は、Proligoから購入された。 増幅条件は、94℃1分に続いて:Baxについて、94℃30秒、58℃30秒、72℃1分、次いで、72℃15分を30サイクル;94℃30秒、54℃30秒、72℃1分、次いで72℃15分の1サイクルをカスパーゼ−2およびカスパーゼ−9について35サイクルまたはGADPHについて25サイクルである。PCRの後、20μlが1.5%のアガロースゲルを用いる電気泳動に付され、バンドはエチジウムブロミド(ethidium bromide)染色をUV照射することにより視覚化され、これを写真撮影した。GAPDHは、増幅の内部対照として用いられる。
【0144】
(サイトゾル製造および細胞レベル以下の分画)
ニューロン(6ウェルプレート中7×10)が、4℃で、完全プロテアーゼ阻害剤反応混液(Roche)により補充された50μlのCSFバッファ(220mMのマンニトール、68mMのスクロース、5mMのピルビン酸塩、0.5mMのEGTA、2mMのMgCl、2mMのNaCl、2.5mMのKHPO、1mMのジチオトレイトール、20μMのサイトカラシンBおよび10mMのHepes,pH7.5)において採取され、次いで、5回の液体窒素中の凍結溶解法サイクルで破壊された。サンプルは、核および未破壊の細胞を除くために900Gで5分にわたり4℃で遠心分離され、続いて、ミトコンドリアに富む重い膜画分を得るために10,000Gで30分にわたり4℃で遠心分離された。その後、サンプルは、ミクロソームをペレット状にするために100,000Gで10分にわたり4℃で遠心分離された。物質は、25mMのトリス−HCl(pH7.4)、25mMのNaCl、5mMのEDTA、1%のトリトンX−100に再懸濁させられ、その後に、ブラッドフォードアッセイ法によってタンパク質濃度が測定された。各画分の10μgがウェスタンブロット分析に用いられた。
【0145】
(タンパク質抽出およびウェスタンブロット分析)
ニューロンは、完全プロテアーゼ阻害剤反応混液(Roche)によって補充された25mMのトリス−HCl(pH7.4)、25mMのNaCl、5mMのEDTA、1%のトリトンX−100に室温で溶解させられた。タンパク質濃度は、Bio-Radタンパク質アッセイキットを用いて測定された。タンパク質(カスパーゼ−2については30μg;Baxについては10μg)は、12.5%のポリアクリルアミドゲルを用いて分離され、PVDF膜(Amersham)に移された。免疫染色は、FCL(Amersham Pharmacia Biotech)を用いて示された。モノクローナル抗マウスカスパーゼ−2抗体(11B4,Alexis Biochemicals)は1:1000の希釈度で用いられ;カルボキシ末端の21アミノ酸を欠失したマウスBaxαに対して生じさせられたポリクローナル抗体(Δ21,Santa Cruz Biotechnology)は1:200の希釈度で用いられ、(残渣11〜30を認識する)Baxαのアミノ末端に対して生じさせられたポリクローナル抗体(N20,Santa Cruz Biotechnology)は1:1000の希釈度で用いられた。アクチン(42kDa;Sigma;1:5000)は、等価な負荷対照として用いられた。ヒート−ショックタンパク質60(HSP60)のマウスモノクローナル抗HSP(Sigma;1:400)による免疫ブロット法は、ミトコンドリアに富む重い膜画分の純度をチェックするために用いられた。
【0146】
(組み換えカスパーゼ−2によるインビトロVDVAD−AMC切断)
ヒト組み換えカスパーゼ−2(BIOMOL Quantizyme(登録商標)Assay System)の活性は、100μlのアッセイバッファ(50mMのHEPES(pH7.4)、100mMのNaCl、0.1%のCHAPS、10mMのDTT、1mMのEDTA、10%のグリセロール)において評価された。50μMのVDVAD−AMCの組み換えカスパーゼ−2(125U)による切断は、30分後に37℃で、蛍光マイクロプレートレーダを用い405nmで励起する510nmの蛍光放射をモニタリングすることによって測定された。VDVADアーゼ活性の阻害のために、阻害剤(2μM)は、カスパーゼ−2の存在下に30分にわたり37℃で事前にインキュベートされ、その後に続いて、50μMのVDVAD−AMC(30分,37℃)によりインキュベートされた。VDVAD−AMC単独により顕著な蛍光バックグランドは観察されなかった。
【0147】
(周産期虚血)
新生児ウィスターラット(Wistar rat)(雌親プラスその9匹の仔ラット)が、仔ラットが3〜4日齢である時に、Janvier(Le Genest-St-Isle,フランス)から得られた。仔ラットは、食物および水が自由に利用可能な12:12時間の明暗サイクルの元でそれら雌親と共に収容された。動物実験は、実験動物の注意および使用のためのフランスおよび欧州共同体のガイドラインに従って行われた。虚血は、既に記載される(Renolleauら,1998)ように7日齢のラット(17〜21g)に実施された。仔ラットは、抱水クロラール(350mg/kg)の腹腔内注射により麻酔をかけられた。麻酔をかけられたラットは仰向けに置かれ、首に正中切開がなされて左総頸動脈を露出させた。次いで、ラットは、右側を下にする横向きに置かれ、耳と目との間に斜位(oblique)皮膚切開がなされた。側頭筋(temporal muscle)の切除の後、頭蓋骨(cranial bone)が額縫合線(frontal suture)から頬骨弓(zygomatic arch)より下の高さ位置にかけて除かれた。次いで、鼻の裂け目の上のその出現のすぐ後に露出される左中大脳動脈は、大脳静脈より下方の高さ位置で凝固させられた。この手順の後、左総頸動脈を塞ぐためにクリップが置かれた。次いで、ラットは、低体温を回避するためにインキュベータ内に置かれた。50分後、クリップが取り除かれた。頸動脈血流回復が顕微鏡を用いて検査された。次いで、首および頭蓋の皮膚が閉じられた。外科手順の間、体温は37〜38℃に維持された。仔ラットは、回復するまでインキュベータ(32℃)に移され、次いで、その後にそれらの雌親の元(dam)に移された。
【0148】
カスパーゼ阻害剤が、虚血開始の5分前に(100μl中)10g重量当たり50μgの用量で腹空内投与された(Q−VD−OPHについてはn=15、Q−VDVAD−OPHについてはn=14)。対照動物は、等価容量の10%DMSO含有0.9%食塩水(カスパーゼ阻害剤を可溶化するために必要とされる媒質)を受け入れた(媒質処理群)。虚血の間すなわち殺害前の死亡率は、Q−VD−OPH処理群、Q−VDVAD−OPH処理群および媒質処理群の間で異ならなかった(<4%)。ラットは、再灌流の48時間後に殺害され、脳が取り出された。梗塞病変(薄色ゾーン)は、動物の処理が知らされていない観察者によって視覚的に計測された。明らかな虚血の薄色ゾーンのない脳は、拡大鏡の下で観察された。明らかでないMCA閉塞を示すものは廃棄された(Q−VD−VAD処理群における2匹の動物)。次いで、脳は、4%の緩衝ホルムアルデヒドに2日固定された。50μmの環状脳切片(coronal brain section)が凍結切片作製機(cryostat)を用いて切り取られ、ゼラチン・コーティングされたスライドグラス上に集められた。前方線条体(anterior striatum)から後方海馬(posterior hippocampus)にわたる16の切片(Paxinosのラット脳アトラスにおけるプレート9〜27に対応する)が選ばれ、同じスペースの0.5mm間隔で取られた。病変域は、クレジルバイオレット染色された切片について画像解析装置(NIH画像ソフトウェア)を用いて測定され、各環状切片間の距離は、梗塞容積を計算するために用いられた。
【0149】
統計分析は、次のようにして行われた。0.2のベータリスクおよび0.05のアルファリスクを仮定して、各群において15〜16の動物が、2群の間で50%の梗塞容積減少を検出するために必要とされることが推定された。データは以前の研究(Ducroqら,2000)から引き出された。3つの群の動物が実験で比較されるため、これらの値は情報を与えるのみである。6匹の動物のブロックを有する所定のリストが、3群の中の動物を無作為化するために用いられた。処理条件を知らない調査者が全ての測定を行った。平均値間の相違は、クルスカル・ウォーリス(Kruskall-Wallis)のノンパラメトリックな多重比較検定、およびこれに続くノンパラメトリックな値に対するニューマン・クール検定(Newman-Keul’s test)によって評価された。我々は、5%レベルで相違が有意であると考える(p<0.05)。
【0150】
実施例4
ヒトカスパーゼ−2サイレンシングに対して特異的なsiRNAの設計
ヒトカスパーゼ−2遺伝子ノックダウンに特異的なsiRNA(hsiRNA C2 wt)が、ヒト(虚血およびその他)傷害および疾患へのさらなる適用ために設計された。このsiRNA二本鎖化合物は、下記の相補的配列から構成される:
配列番号6 5’−caucuucuggagaaggacadTdT−3’
配列番号7 5’−uguccuucuccagaagaugdTdT−3’
実験アプローチが、Robertsonモデルに基づく前記siRNAを試験するために開発され(Robertsonら,2002)、これは、Z−VDVAD−FMKによるカスパーゼ−2阻害が、ジャーカットT細胞(Jurkat T cell)においてシトクロムc放出およびホスファチジルセリン残渣露出を部分的に減少させたことを示した。
【0151】
次いで、VP−16処理されたジャーカット細胞における薬理学的なカスパーゼ−2阻害(Z−VDVAD−FMK、Q−VD−OPH;全てICNから)またはカスパーゼ−2遺伝子ノックダウン(siRNA)が行われた。
【0152】
(ヒト細胞におけるsiRNAの検証)
汎カスパーゼ阻害剤であるQ−VD−OPH(25〜100μM)または選択的カスパーゼ−2阻害剤であるZ−VDVAD−FMK(25〜100μM)による事前処理は、DNA−損傷およびトポイソメラーゼII阻害剤であるVP−16によって誘導される細胞死を妨げる(図18)。7〜8時間での生き残りがVP16の広範囲の濃度に対して得られた(図18)。Z−VDVAD−FMKがΔΨ損失を阻止したという事実は、この系統においてカスパーゼ−2活性がミトコンドリアの上流で起こることを示唆する。したがって、図19では、データは、
(i)徐々のΔΨ損失は、Z−DEVD−FMK、Z−LEHD−FMK、Z−LETD−FMKによって廃止されず、Z−VDVAD−FMKまたはQ−VD−OPHのみによって廃止される;
(ii)Z−DEVD−FMK、Z−LEHD−FMK、Z−LETD−FMKは、カスパーゼ−2活性を損なわず、これは、カスパーゼ−2は、研究されたより上流のカスパーゼを示唆する;
(iii)カスパーゼ−9阻害はカスパーゼ−3活性化を妨げるが、カスパーゼ−3阻害はカスパーゼ−9活性化を妨げず、これは、カスパーゼ−3がカスパーゼ−9を通じて活性化されることを示す;
(iv)終端の核変化およびPMPは、Z−VDVAD−FMK、Q−VD−OPHによって大部分妨げられ、Z−LEHD−FMKによってより小さい範囲で妨げられる;
(v)ANTブロッカーであるBAは、ΔΨ損失およびPMPを減少させ、これは、活性化されたカスパーゼ−2の後アポトーシス作用を仲介する際のミトコンドリアの役割を確認する;
(vi)CHXおよびActDがΔΨ損失およびPMPのいずれも妨げないので、VP16−カスパーゼ−2依存性細胞死は翻訳および転写に依存しない;
(vii)Z−LETD−FMKがΔΨ損失、カスパーゼ−2および−3の活性化、核変化およびPMPを妨げることができないため、カスパーゼ−8依存性の経路はこのモデルにおいて重要でない
ことを示す。最後に、データ全体は、前ミトコンドリア・カスパーゼ−2活性化がΔΨ降下を誘導し、カスパーゼ−9/カスパーゼ−3の活性化、核凝縮/断片化および終端のPMPのような下流の事象を促進するモデルの証拠となる。
【0153】
この系統は、カスパーゼ−2を指令するヒトsiRNAを試験および検証することを可能とした。最初に、hsiRNA C2 wtは、(図20Aにおけるウェスタンブロット分析に示されるように)HeLaおよびジャーカット細胞それぞれにおいて後カスパーゼ−2タンパク質発現を減少させることが可能である。全細胞は、フローサイトメトリーによるsiRNA−FITCの蛍光検出によって細胞内評価されるようにトランスフェクトされる。一旦これらの細胞がトランスフェクトされると、それらはまた、続くVP16による7時間処理に対して保護され(図21A−B)、これは、hsiRNA C2 wtの有効性を立証する。
【0154】
(実験の部)
(細胞培養)
ジャーカット細胞は、ATCCから購入され(クローンE6−1)、10%のウシ胎仔血清により補充されたRMPI 1640(Glutamax rich)培地中100000〜120000細胞/ウェル(24ウェルプレート)の密度で培養された。ジャーカット E6−1細胞(ATCC番号:TIB−152)は、ジャーカット−FHCRCのクローン((Schneiderら(1977)により14年齢の年老いた雄の末梢血から以前に確立され、オリジナルに設計されたJMである)ジャーカット細胞系の誘導体)である。細胞は、実験のために7〜14の継代で用いられた。
【0155】
(アポトーシス誘導および細胞保護アッセイ)
細胞は、種々の薬理学的試剤により30分〜1時間にわたり予備処理され、その後に続いて、VP16(VP16またはエトポシド;Sigma)処理(10〜20μM)が7〜8時間にわたり行われた。siRNA実験のために、VP16処理の前に、細胞は24時間にわたり3.8μgのsiRNA(Proligo)/2μLのリポフェクタミン 2000(500μL中)により処理された。マウス・カスパーゼ−2(配列番号1−2または配列番号3−4)が陰性対照のために用いられた。トランスフェクトの収率は、siRNA−FITC(配列番号1−2、配列番号3−4または配列番号6−7)の蛍光検出(フローサイトメトリー,FL−1)によって細胞内チェックされた。
【0156】
(フローサイトメトリーおよび蛍光顕微鏡法によるアポトーシスパラメータ研究)
(フローサイトメトリー)
二重のJC−1/7−AAD染色:ミトコンドリア膜電位(ΔΨ)は、DY高感度染料である5,5’,6,6’−テトラクロロ−1,1’,3,3’−テトラエチルベンズイミダゾリル カルボシアニン ヨージド(JC−1,Molecular Probes,1μM)の取り込みによって評価された。緑色(低ΔΨ)およびオレンジ色(高ΔΨ)の蛍光がそれぞれFL−1およびFL−2チャネルにおいてそれぞれ取得された。PMPは、7−アクチノマイシンD(7AAD;0.02mg;Sigma)の取り込みによって検出された(FL−3チャネル)。あるいは、二重のDioC6(0.1μM)/PI(5×10−3mg)染色が行われ、FL−1およびFL−2チャネルにおいてそれぞれ検出された。7000の事象が各条件のために少なくとも取得される。
【0157】
(蛍光顕微鏡法)
活性化されたカスパーゼ−2、−3および−9が、特異的なFAM結合ペプチド(蛍光ラベリングされたカスパーゼ阻害剤(FLICA):CaspTag(登録商標)フルオレセインCaspase Activity Kits,Q-Biogen,Illkirch,フランス;ApoFluor(登録商標)Caspase Detection Kits,ICN,Orsay,フランスと呼ばれる):FAM−VDVAD−FMK、FAM−DEVD−FMK、FAM−LETD−FMKおよびFAM−LEHD−FMKを用いてそれぞれ検出された。細胞は、FLICA(1:150(CaspaTag(登録商標))または1:500(ApoFluor(登録商標)))と共に1時間にわたり37℃でインキュベートされ、次いで、洗浄バッファで3回洗浄された。FMのために、FAM結合ペプチドがBP 480/40フィルタを通じて励起され、放射光がBP 527/30フィルタを通じて集められた。形質膜透過性(PMP)は、7−アミノアクチノマイシンD(0.02mg,7−AAD,Sigma)の核DNAへの増加した結合を通じて検出された(BP515−560フィルタを通じて励起され、蛍光はLP590ロングパス発光フィルタを通じて集められる)。核は、1μMのヘキスト(登録商標)33342により染色され(30分)、分析された(BP 340−380励起フィルタ/LP425ロングパスフィルタ)。ミトコンドリア膜電位は、JC−1(1μM;30分)によって評価された:緑色およびオレンジ色の蛍光が、1.2秒の励起後に同時に記録された(BP450−490励起/LP 515ロングパス発光フィルタ)。
【0158】
実施例5
(shRNA)
(shRNAの構築および検証)
siRNAが血液脳関門を越えることが可能であったとしても、それらは、生物学的流体中で不安定であり、このため、克服することが困難な傷害は、インビボの細胞内送達であるだろう。最近になって、いくつかの進展は、siRNA送達のための優れた伝達手段としてウイルスを強調する。例えば、レトロウイルスまたはアデノウイルス(多くの実験的な遺伝子治療研究のための特段上等の導入遺伝子送達ベクター)が、治療のsiRNAを細胞内に送達しかつ安定的にこれを発現させるためにインビトロおよびインビボの両方において設計された。実際に、siRNAの組み換えバージョン:スモール・ヘアピン(small hairpin:sh)RNA(スモールRNAプロモータの制御の下でのヘアピンループバージョンしての構成性のsiRNA発現)がこの問題を回避するために製造された。shRNAの発現は、例えば、レンチウイルスの主鎖(これは、局所的な脳投与(例えば脳内−脳室(intracerebro-venticular)注射)によってインビボでニューロンを安定にトランスフェクトするために用いられ得る)において誘導され得、これは、恒常的なターゲット遺伝子のサイレンシングに導くはずである。
【0159】
短い配列によって連結されかつポルIIIポリメラーゼの終止シグナル(TTTTT)が続くsiRNAのセンスおよびアンチセンス配列の発現からなる、安定なsiRNA構造を細胞内発生させるためのSInオーダー(スモールヘアピン構造の概念)が創出された。この配列は、H1 RnアーゼPまたはU6核内低分子RNA遺伝子のいずれかからのポルIIIプロモータの制御下にあり、トランスフェクトされた細胞において大量のスモールへアピンsiRNA(shRNA)の発現に導く。間違いなくDICERによるループ部分の迅速なプロセシングは、機能的siRNAの形成につながる。最近、プラスミド(pGE−1)が開発され(Stratagene)、我々は、ターゲット遺伝子の効果的な長期の抑制を提供するためにこのshRNA哺乳類発現ベクターを用いた。shRNAは、ループ配列によって分離されたセンスおよびアンチセンス鎖からなる(U6プロモータによって制御された)RNA転写物から発生させられた。RNA転写物は、それ自体の上に折り重なってヘアピンを形成する。pGE−1発現ベクターは、哺乳類細胞においてターゲット遺伝子の発現を抑制するように最適化された。マウス・カスパーゼ−2に特異的なshRNAを含む発現ベクターを得るために、ループ配列によって分離された2つの逆方向反復およびこれに続く、RNAポリメラーゼIIIの転写ターミネーターとして機能する6ヌクレオチド・ポリ(T)ストリング(string)からなる2つのオリゴヌクレオチドが設計された(図22A)。
【0160】
配列番号8 5’−GATCCCgcacctcctagagaaggacaGAAGCTTGtgtccttctctaggaggtgTTTTTT−3’
配列番号9 5’−CTAGAAAAAAcacctcctagagaaggacaCAAGCTTCtgtccttctctaggaggtgCGG−3’
2つのオリゴヌクレオチドのアニーリングに続いて、我々は、pGE−1ベクターのBamH IおよびXba I部位にクローニングされたsh−挿入断片を得た(図22B)。PCRによる陽性コロニーのスクリーニングの後、我々は、2つのクローンを選択した(shRNA6およびshRNA9)。これらのクローンは、配列決定され、U6プロモータの制御下のsh配列の正しい挿入を示した。
【0161】
カスパーゼ−2のダウンレギュレーションのためのツールとしてのこれらのshRNA構築物(construct)を検証するために、3T3細胞(マウス細胞)が、ベクターshRNA6およびshRNA9によりトランスフェクトされ、トランスフェクションの24および48時間後に3T3細胞の抽出物全体においてカスパーゼ−2のウェスタンブロットにより発現レベルをチェックした(図23)。
【0162】
shRNA6およびshRNA9構築物の両方が、トランスフェクションから48時間後に3T3細胞においてカスパーゼ−2の発現をダウンレギュレートすることが可能であるようである。この結果は、shRNA戦略が、カスパーゼ−2発現のインビボサイレンシングのためのツールとして有用であることを示す。実際に、カスパーゼ−2 mRNAをターゲットにするsh−挿入断片は、いくつかのウイルスの主鎖(レチノウイルス、アデノウイルス、Semlikiウイルスまたは治療上の適用領域を有する任意のウイルス主鎖)に導入され得、この結果、効果的なインビボ送達およびカスパーゼ−2発現の効果的かつ長期のサイレンシングが可能である。
【0163】
さらに、特異的なshRNA構築物がヒトへの適用のために得られた:
配列番号10 5’−GATCCCGcatcttctggagaaggacaGAAGCTTGtgtccttctccagaagatgTTTTTT−3’
配列番号11 5’−CTAGAAAAAAcatcttctggagaaggacaCAAGCTTCtgtccttctccagaagatgCGG−3’
(実験の部)
5’ BamH Iおよび3’ Xba Iオーバーハング(overhang)を有する2つの相補的オリゴヌクレオチドが合成された(Proligo)。アニーリング工程の後、これらのオリゴヌクレオチドは、予備処理された(BamH I/Xba I)pGE−1ベクター(Stratagene)にクローニングされた。挿入断片を含む陽性クローンのPCR選択に続いて、2つのクローンが増幅され、それらの配列が検証された(shRNA6およびshRNA9)。
【0164】
3T3細胞は、6ウェルディッシュに塗布された次の日に、リポフェクタミン(lipofectamine)2000試薬および0.8μgのshRNA6またはshRNA9プラスミドを用いて6時間にわたりトランスフェクトされた。トランスフェクションレベルは、GFPベクターを用いてモニタリングされた。トランスフェクション24および48時間後に、溶解バッファ(25μMのトリス−HCl(pH7.4)、25mMのNaCl、5mMのEDTA、1%のトリトンX−100)において細胞が採取され、タンパク質濃度がBradford Reagent(BioRad)を用いて測定された。タンパク質(サンプル当たり20μg)は、12.5%のポリアクリルアミドゲル(SDS-PAGE)を用いて分離され、PVDF膜(Ameesham)上に移された。カスパーゼ−2に特異的な抗マウスモノクローナル抗体(11B4,Alexis Biochemicals,1:1000の希釈度で用いた)を用いるプローブ探査の後、免疫反応性が化学発光キット(ECL,Amersham)を用いて検出された。
【表1A】

【表1B】

(略語):7−AAD,7−アミノ アクチノマイシンD;フッ化4−(2−アミノエチル)ベンゼンスルホニル,AEBSF,ペファブロック;ANT,アデニンヌクレオチド・トランスロケータ;BA,ボンクレキン酸;mClCCP,カルボニルシアニド m−クロロフェニルヒドラゾン;ΔΨ,ミトコンドリア膜電位(transmembrane potential);FACS(Fluoroscence-Activated Cell sorting),蛍光活性型細胞選別;FLICA(Fluorochrome-Labeled Inhibitor of Caspase),カスパーゼの蛍光色素ラベル阻害剤;FSC,順方向散乱;FC,フローサイトメトリー;FM,蛍光顕微鏡法;JC−1, 5,5’,6,6’−テトラクロロ−1,1’,3,3’−テトラエチルベンズイミダゾールカルボシアニン ヨージド;MFI,平均蛍光強度;PMT,光電子増幅管(photo-multiplicator tube);SD,血清欠乏;SSC(side scatter),側方向散乱;MPTP,1−メチル−4−フェニル−1,2,3,6−テトラヒドロピリジン;PS,ホスファチジル−セリン;PTP(permeability transition pore),透過性遷移孔;Quinoline−Val−Asp (OMe)−CH−O−Ph,Q−VD−OPH;SNP,ニトロプルシドナトリウム;z−DEVD−fmk,N−ベンジロキシカルボニル−Asp−Glu(OMe)−His−Asp(OMe)−His−Asp(OMe)−フルオロメチル ケトン;z−VAD−fmk,N−ベンジロキシカルボニル−Val−Ala−Asp(OMe)−フルオロメチルケトン。
【0165】
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【図面の簡単な説明】
【0166】
【図1】血清欠乏一次ニューロンのアポトーシス中の形質膜透過性能(plasma membrane permeabilization:PMP)の合同型蛍光顕微鏡法およびフローサイトメトリー検出。(A)24時間の血清欠乏(SD)に付されたまたは付されなかった(Co.)培養された皮質ニューロンの位相差および蛍光顕微鏡写真。細胞は、細胞透過性蛍光DNAリガンド・ヘキスト(登録商標)33342(Ho.342,青色蛍光)および細胞不透過性蛍光DNA挿入型7−アミノ−アクチノマイシンD(7−AAD;赤色蛍光)により染色された。優性表現型を示す一次皮質ニューロン(SDに付された細胞の>60%)が示される。SD−ニューロンでは、紫色の蛍光(赤および青の混色)が7−AADおよびヘキスト(登録商標)33342が凝縮核(condensed nuclei)中に共存することを示し(併合における紫色蛍光)、したがって、PMPは、核アポトーシスに関係している。(B)PMPについてのトリトンの効果および培養されたニューロンのクロマチンの状態。培養されたニューロンは、7−AAD、ヘキスト(登録商標)33342および非毒性CellTracker(登録商標)グリーン蛍光染料により染色された。ニューロンの代表的な顕微鏡写真は、不存在下(Co.)または0.02%のトリトン(登録商標)による5分の処理後の、ヘキスト(登録商標)33342および7−AADの両方の併合(上側のパネル)によるかまたはCellTracker(登録商標)グリーンのみによる(下側のパネル)かのいずれかの位相差を示す。(C)ニューロンのトリプシン処理後のPMPの欠如。7−AAD、ヘキスト(登録商標)33342およびCellTracker(登録商標)グリーンにより染色された培養されたニューロンが、注意深い分離トリプシンベース・プロトコルに付された(材料および方法の部に記載される)。(B)におけるようなトリプシン処理されたニューロン分析の代表的な顕微鏡写真が、トリプシン処理後0、1、3および4時間でのニューロンが関連するCellTracker(登録商標)グリーン蛍光のFC定量化と共に示されている。(D)SD後のニューロンのPMPおよび核濃縮のFM分析。24時間のSDに付された培養されたニューロンの代表的な顕微鏡写真は、ヘキスト(登録商標)33342および7−AADの両方による位相差の併合を示す。PMP陽性ニューロン(紫色の核を有する)の百分率が示される。(E)PMPのFC分析。(D)で分析されたニューロンのサンプルは、続いて、トリプシン処理され、直後に、PMPのFC定量化に付される。代表的な点状プロット(FSC/FL3)が示される。PMP陽性ニューロンの百分率が計算されたFCが示される。挿入は、トリプシン処理された皮質ニューロンの代表的な位相差顕微鏡写真を示す。(F)FMを用いたPMPの相対的定量化(n=30)(トリプシン処理前の光学的計数)およびFC(トリプシン処理後の自動計数)。(G)FMおよびFCベースのPMP定量化間の直線相関。
【図2】ニューロンアポトーシス中のPMP、PS露出および核改変の合同検出。(A)24時間のSDに付された培養された皮質ニューロンの蛍光顕微鏡写真。細胞は、7−AAD(赤色蛍光)およびFITC結合型アネキシンV(緑色蛍光)で染色された。一次皮質ニューロンは、3の主要なアポトーシスサブセットに分けられた:早期アポトーシス(アネキシンV,7−AAD,サブセット1)、末期アポトーシス(アネキシンV,7−AAD,サブセット2)、および終了段階のアポトーシス(アネキシンV,7−AAD,サブセット3)。(B)PMPおよびPS露出のFC検出。ニューロンサブセット1、2および3の代表的な点状プロット分析。生きているニューロンは、PS転座を示さず(MFIアネキシンV=81.4±17.9)、7−AADに対して不透過性である(二重陰性のニューロン,サブセットL)。(C)SDを通じてのアポトーシスサブセット出現のFC速度論(n=4;±標準偏差)。(D)アポトーシスサブセット内のニューロンのサイズのFCベース分析(FSC)と合わせて行われた核の境界のFMベースの測定。24時間のSDに付された培養された皮質ニューロンは、ヘキスト(登録商標)33342、7−AADおよびFITC結合型アネキシンVにより染色された。FM観察の間に複数の領域が取得され、次いで、順方向散乱(foward scatter)(FSC)パラメータを用いてサンプルが細胞サイズのFC分析に進められた。核の境界(n=15;±標準偏差)およびFSC(n=7;±標準偏差)の同時評価がサブセット毎を基礎として提示される。(E)生きているニューロン(サブセットL)および死滅ニューロン(サブセット1、2、3)のFSC、SSCおよび核特性の詳細な分析。アステリスクは、非常に有意であること(p<0.0001)を示し、§は、以前のサブセットと比較して有意な(p<0.05)効果を示す。
【図3】活性化されたカスパーゼ−9、カスパーゼ−3、PS露出およびPMPの検出および分子レベルの順序付け。(A)24時間のSDに付された培養された皮質ニューロンの蛍光顕微鏡写真。細胞はFAM−DEVD−fmk(FLICA;緑色蛍光)、7−ADD(赤色蛍光)およびヘキスト(登録商標)(青色蛍光)により染色された。4つの明瞭な表現型が検出される:生きているニューロン(カスパーゼ−3,7−AAD,サブセットL)、早期アポトーシスのニューロン(カスパーゼ−3,7−AAD,サブセット1)、末期アポトーシスのニューロン(カスパーゼ−3,7−AAD,サブセット2)および終了段階のアポトーシスのニューロン(カスパーゼ−3,7−AAD,サブセット3)。(B)PMPおよびカスパーゼ−3様活性のFC同時検出。ニューロンサブセットL(青色)、1(緑色)、2(黄色)および3(赤色)の代表的なFC点状プロット分析。(C)汎(pan)カスパーゼ阻害剤Q−VD−OPHの存在下のニューロン保護。培養された皮質ニューロンの蛍光顕微鏡写真が作成され、「A」として標識付けされた。(D)カスパーゼ−3活性化およびPMPについてのアポトーシス調節化合物の効果。ニューロンは、セリンプロテアーゼ阻害剤ペファブロック、ANT阻害剤BAまたは示されたカスパーゼ阻害剤(z−DEVD−fmk、z−VAD−fmk、Q−VD−OPH)により処理され、24時間の血清欠乏に付された。細胞は、7−AAD(赤色蛍光)により染色され、活性化されたカスパーゼ−3に対して抗体染色され、そして、FC分析に付された。結果は、3の別個の実験の平均値(±標準偏差)である。(EおよびF)血清欠乏を通じてのカスパーゼ−3活性およびPS露出のFMおよびFC速度論分析。細胞は、スルホロダミン結合型FLICA(赤色蛍光)、FITC結合型アネキシンV(緑色蛍光)およびヘキスト(青色蛍光)により染色された。(E)に提示された蛍光顕微鏡写真は、点状プロット(F)に示されたサブセット「a」〜「d」に対応する。(G)カスパーゼ−9阻害剤z−LEHD−fmkの不存在下(SD)または存在下(+LEHD)での24時間の血清抜き出しに付された培養された皮質ニューロンの蛍光顕微鏡写真。細胞は、ヘキスト(登録商標)(青色蛍光)により染色され、および、パネル1ではFAM−LEHD−fmk(FLICA;緑色蛍光)により同時染色され、または、パネル2ではFITC結合型アネキシンV(緑色蛍光)により同時染色された。(H)ANT様チェック・ポイント、カスパーゼ−9様活性およびPMP間の階層性。ニューロンは、ANTブロッカーであるBAまたはz−LEHD−fmkにより処理され、24時間のSDに付された。細胞は、7−AAD(赤色蛍光)により染色され、FAM−LEHD−fmkにより同時染色され、次いで、FM分析に付された。結果は、3の別個の実験の平均値(±標準偏差)である。
【図4】ニューロンにおけるΔΨおよびPMPの合同検出。(A)指定された期間にわたり、血清の不存在下または存在下(24時間−対照;Co)に培養された一次ニューロンの蛍光顕微鏡写真。細胞は、ヘキスト(登録商標)33342(青色蛍光)およびΔΨ−高感度染料JC−1(オレンジ色蛍光:高ΔΨのミトコンドリア,緑色蛍光:低ΔΨのミトコンドリア)により染色された。優性表現型を示すニューロンが示される(>50%)。Dec,決定期;Eff,実行期;Deg,分解期。(B)ΔΨおよびPMPのFC点状プロット分析。SD−ニューロンは、7−AADおよびJC−1により染色され、トリプシン処理され、直後に、FC分析に付された。FL2(JC−1)/FL3(7−ADD)の点状プロットは、2つの低ΔΨニューロンサブセット:7−AADに対して非透過性のサブセットII’およびII”(7−AAD陽性)を示した。(C)ΔΨ(JC−1)および形質膜透過性能(7−AAD)の同時検出を介するサブセットI、II’、II”のFM視覚化。(D)血清欠乏ニューロンにおけるサブセットII’およびII”のFC経時モニタリング。(E)FCによって評価されたBAによるがz−DEVD−fmkによらないニューロン保護。ヒストグラムは、BAまたはz−DEVD−fmkの不存在下または存在下におけるSDの24時間後の低ΔΨニューロン(サブセットII’+II”,青色ヒストグラム)の百分率または7−AAD陽性ニューロン(サブセットII”,黒色ヒストグラム)の百分率のいずれかを示す。結果は、3の別個の実験の平均である(平均±標準偏差)。
【図5】一次皮質ニューロンにおけるΔΨ変動の実時間検出。(A)FM反復照射により誘発されるJC−1フォトブリーチング(photobleaching)。1、3、5、10および15照射(1.2秒;5ワット)後のJC−1染色ニューロンの蛍光顕微鏡写真。2の照射の間のインターバルは1分であった。オレンジ色の蛍光が徐々に消失することに留意のこと。(B)照射範囲(field)により評価されたJC−1オレンジ色蛍光強度の対数回帰(logarithmic regression)。(C)JC−1および7−AADプローブを用いるΔΨおよびPMPの実時間FCモニタリングのためのプロトコル。挿入された蛍光顕微鏡写真は、トリプシン処理後にヘキスト(登録商標)、JC−1および7−ADDにより同時染色された一次ニューロンの代表的な視覚化を示す。これらの実験条件ではPMPも、ΔΨ損失(神経突起(neurite)および細胞体)も、核凝縮も検出不能であることに留意のこと。(D)一次ニューロンへの適用。(D1)mClCCP(100μM;30分)により処理されたまたはされない(Co.)ニューロンの蛍光顕微鏡写真。(D2)JC−1オレンジ色およびJC−1緑色蛍光の実時間FCモニタリング。白色線は、ニューロンの平均蛍光に対応する。(D3)同一サンプルで得られたミトコンドリア脱分極(JC−1オレンジ色)、PMP(7−AAD)およびサイズ(FSC)/粒状度(SSC)変異の時間過程(対照(波線)およびmClCCP処理(実線))。
【図6】種々のニューロン毒性(neurotoxic)分子によるΔΨ改変およびPMP誘導の実時間FC分析。(A−1)ΔΨおよび形質膜状態の固定時間のFM。ニューロンは、0.6mMのSNPまたは1mMのMPTPまたは20mMのエタノール(etOH)により45分にわたり処理された(または処理されない;Co.)。細胞は、JC−1(オレンジ色蛍光:高ΔΨのミトコンドリア、緑色蛍光:高ΔΨのミトコンドリア)、ヘキスト(登録商標)(青色蛍光)および7−AAD(赤色蛍光)により染色された。(A−2)15分間にわたる培地のみ(Co.)、0.6mMのSNP、1mMのMPTPまたは20mMのetOHによる処理のΔΨの実時間FC分析(JC−1オレンジ色蛍光)。オレンジ色の事象は、高ΔΨニューロンに対応し、緑色事象は、低ΔΨニューロンに対応する。(A−3)PMPの実時間FC分析(7−AAD蛍光)。(B)実時間FCによる定量化。(B−1)MPTP処理ニューロンのFSC/SSC比の分析。赤色線は、高ΔΨニューロンについてのFSC/SSC比の平均値に対応し、緑色破線は、低ΔΨニューロンについてのFSC/SSC比の平均値に対応する(A−2と同義)。黒色実線は、ニューロン個体群全体についてのFSC/SSC比の平均値に対応する。(B−2)MPTP処理ニューロンにおけるJC−1オレンジ色平均蛍光強度(MFI)の分析。赤色実線および緑色波線は、高ΔΨおよび低ΔΨニューロン中のJC−1オレンジ色MFIにそれぞれ対応する。黒色実線は、ニューロン固体群全体についてのJC−1オレンジ色MFIに対応する。(B−3)etOH処理ニューロンにおける7−AAD平均蛍光強度(MFI)の分析。
【図7】SDによって誘導されるニューロン死の間のアポトーシス関連事象の階層性。アポトーシスの主要な期が、それらの対応する細胞下の事象と共に示される。細胞死の間のニューロンの挙動の美的な描写が提示される。生きているニューロンは、青色の核(ヘキスト(登録商標)ラベリング)および赤色のミトコンドリア(JC−1ラベリング;高ΔΨ)により描かれる。決定期の間、緑色のミトコンドリアも現れる(JC−1ラベリング;低ΔΨ)。実行期は、核収縮およびカスパーゼ−3活性の拡散(ピンク色のサイトゾルの拡散)と関連する。分解期は、神経突起の破壊、PS露出(緑色の形質膜)および不連続のサイトゾルの活性化されたカスパーゼ−3と関連する。分解の終了段階は、核の7−AAD混合(赤色の収縮した核)に至る最終的な形質膜透過性能(PMP)と関連する。Bax切断および転座は、ミトコンドリアの上流ではあるが、カスパーゼ−2活性の下流に現れた。特異的阻害剤の作用点が示される。
【図8】汎カスパーゼ阻害は、血清欠乏により死に誘導された一次皮質ニューロンの生き残りを促進する。(A)48時間の血清欠乏(SD)皮質ニューロン培養(DIV6)を通じてのアポトーシスの特徴に対する経時応答。低ΔΨのニューロンの出現の速度論(n=30)、核アポトーシス(NA)(n=30)、形質膜の透過性能(PMP)(n=30)またはホスファチジルセリン残渣(phosphatidylserine residue)の外部の小葉状部(leaflet)露出(PS)(n=7)が、JC−1、ヘキスト(登録商標)33342、7−アクチノマイシンD(7−AAD)またはFITC結合型アネキシンVによりそれぞれラベリングされたニューロンの蛍光顕微鏡法およびサイトメトリー分析の両方によって測定される(Lecoerら(2004)に既に記載されている)。低ΔΨ/NA/7−AAD/FITC−アネキシンVサブセットの終期の低ΔΨ/NA/7−AAD/FITC−アネキシンVサブセットへの移行を示しているので、24時間後のPS陽性ニューロンが徐々に減少していることに留意のこと(Lecoeurら(2004))。(B)ニューロン保護についての種々の汎カスパーゼ阻害剤の比較分析。ニューロンは、広範なスペクトルを有するカスパーゼ阻害剤であるQ−VD−OPH、Z−VAD−FMK(ZVAD)またはBOC−D−FMK(BOC−D)(すべて100μM)に付随してSDに付される。ヒストグラムは、対照(Co.)レベル近くのままで残る、低ΔΨ(n=12)、NA(n=12)、PS露出(n=7)およびPMP(n=12)のニューロンの百分率を示す。(C)Q−VD−OPHは、24時間のSD後の核形態および神経突起の完全性の両方を高度に保護した。対照(Co.)、SDおよびQ−VD−OPH処理ニューロン(100μM)についての代表的な範囲:上側パネル,位相差顕微鏡写真;下側パネル,位相差および青色の核ヘキスト(登録商標)蛍光が併合される。汎カスパーゼ阻害剤の存在下に顕著な神経突起完全性崩壊および核凝縮/断片化の両方がみられないことに留意のこと。(D)24時間のSDの間に4種のカスパーゼが少なくとも活性化される。カスパーゼ−2(n=14)、カスパーゼ−8(n=3)、カスパーゼ−9(n=8)の活性化がFLICA、FAM−VDVAD−FMK、FAM−LETD−FMKおよびFAM−LEHD−FMKを用いることによってそれぞれ検出された。カスパーゼ−3の活性化は、フィコエリトリン(phycoerythrin)結合型抗切断(cleaved)カスパーゼ−3ポリクローナル抗体(n=5)またはFAM−DEVD−FMK(n=12)いずれかにより検出された。2つのアプローチはよく相関する。SDの間のカスパーゼ−8活性化は低レベルであることに留意のこと。これら全てのカスパーゼは、100μMのQ−VD−OPHによって完全に不活性化される。(E)広範なスペクトルのカスパーゼ阻害剤は、皮質ニューロンを、β−アミロイド(25−35)(βA)、1−メチル−4−フェニル−1,2,3,6−テトラヒドロピリジン(MPTP)、3−ニトロプロピオン酸(3−NPA)、ニトロプルシドナトリウム(SNP)またはイオノマイシン(ionomycin:Iono.)によって誘導されるNAおよびPMPから有意に妨げることができない。皮質ニューロンは、100μMのZ−VAD−FMK(ZVAD)またはQ−VD−OPH(QVDOPH)の不存在下または存在下に、24時間にわたりイオノマイシン(6μM)またはβA25−35(60μM)により;48時間にわたりMPTP(2μM)、3−NPA(100μM)またはSNP(500μM)により処理される。(A)のようにNAおよびPMPの両方を示すニューロンがカウントされる。対応のないt検定(Unpaired Student’s test)が行われた:#,p=0.01。
【図9】前ミトコンドリアカスパーゼ−2様活性が、血清欠乏により誘導される皮質ニューロンのアポトーシス細胞死に必要とされる。(A)カスパーゼ−2様活性が、SD誘導細胞死中に検出される最も早期の事象である。カスパーゼ−3、カスパーゼ−9、カスパーゼ−8およびカスパーゼ−2の特異的な阻害剤がSDの初期に、それぞれ100μMで加えられる:Z−DEVD−FMK(DEVD)(n=8)、Z−LEHD−FMK(LEHD)(n=6)、Z−LEHD−FMK(LETD)(n=4)、Z−VDVAD−FMK(VDVAD)(n=10)。ΔΨ降下、NA、PS露出およびPMPがJC−1、ヘキスト(登録商標)33342、7−AADおよびFITC結合型アネキシンVの染色の24時間後にそれぞれ測定される。VDVADは、DEVDおよびLETDとは逆に、これらのアポトーシスのホールマークを完全に破壊した。PS露出、NAおよびPMPを妨げるものの、LEHDは、ΔΨの降下を損なわない。アスタリスクは、図2Bに示されるようなLEHD処理されたニューロンにおける特定の核表現型を表す。結果は、阻害効果の%として表現される。(B)特異的なカスパーゼ阻害剤により処理されたニューロンの核についての代表的な蛍光顕微鏡写真。DEVDおよびLETDとは対照的に、VDVAD処理されたニューロンのヘキスト(登録商標)33342染色核は対照と類似の形態を示す。LEHD処理されたニューロンの核は、段階Iの凝縮(Susinの分類による(Susinら(1999)))に対応する縮小されたサイズを有する。(C)SDニューロンにおいてカスパーゼ−2様活性化はΔΨ降下より先に起こる。カスパーゼ−2活性化およびΔΨ変化の速度論は、FAM−VDVAD−FAM(緑色)およびΔΨ高感度染料CMXRos(赤色)の両方による同時染色後の蛍光顕微鏡法によって評価される。カスパーゼ−2様活性(2時間)は、ΔΨが徐々に降下する(8.5時間)前に検出される。mClCCP(100μM,45分)が完全なミトコンドリア膜の脱分極についての陽性対照として用いられる。(D)カスパーゼ−2、カスパーゼ−3およびカスパーゼ−9間の階層性の評価。それぞれに示されるカスパーゼ阻害剤(100μM)およびセリンプロテアーゼ阻害剤であるペファブロック(Pefabloc)(100μM)がSDの開始時に加えられ、カスパーゼ様活性が24時間後に特異的なFLICAを用いることによって検出される。ヒストグラムは、カスパーゼ−2、カスパーゼ−3およびカスパーゼ−9(n=4)についての阻害の%を示す。
【図10】QVDOPHまたはVDVAD誘導ニューロン保護の最良パターンの測定。ニューロン細胞死は、阻害剤を欠くSD培養への記録されたカスパーゼ阻害剤の存在下での24時間のSD後に低ΔΨ(JC−1緑色)、NA表現型(ヘキスト(登録商標33342))およびPMP(7−AAD赤色蛍光の混合)を同時に示すニューロンに相当する。左側パネルは、SD初期に加えられた各阻害剤についての用量−応答を示し、最適の生き残りには100μMが必要とされることを確認する。さらに、100μMのVDVADまたはQVDOPHのいずれかの保護効果(t=24時間での)は、SDの開始後2、4または6時間経過した時に徐々に低下する(右側のパネル)。ニューロンは、蛍光顕微鏡法によってカウントされる(n=3)。
【図11】血清欠乏によって誘導されるカスパーゼ−2媒介アポトーシスについての遺伝子の証明:RNA干渉アプローチによるカスパーゼ−2のノックダウン。(A)小さい干渉RNAによるマウスカスパーゼ−2の遺伝子サイレンシング。DIV6にあるニューロンは、実験の部において記載されるように6時間にわたりsiRNAによりトランスフェクト(transfect)され、その後にN5媒体においてさらにインキュベーションされる。上側パネル:トランスフェクション後24時間の内因性カスパーゼ−2遺伝子発現がRT−PCR分析によって測定される。siRNA C2 wtは、他の遺伝子(カスパーゼ−9、GAPDH)に対する副作用が全くなくカスパーゼー2発現を減少させることに留意のこと。下側パネル:SiRNA C2 wtによる対照ニューロンにおける後カスパーゼ−2のノックダウンがウェスタンブロット法によって評価された。siRNA C2 mは、遺伝子サイレンシングについての陰性対照である。GADPHが等価な負荷対照として用いられる。(B)抗体染色(10C6)によるカスパーゼ−2ノックダウンの細胞内モニタリング。蛍光強度は、70%においてsiRNA C2 wtによるトランスフェクション後24時間の間に減少し、72時間において徐々に回復する。続いて、FM(条件毎および実施毎に150の無作為に選択された細胞に対応する5つの領域)の下で、Leica Q FluoroソフトウェアのProbemeterオプションを用いることにより蛍光吸光が行われた。ノックダウンは全てのニューロンに起こることに留意のこと。(C)SDニューロンでのRNA干渉後にカスパーゼ−2活性および細胞死のパラメータが完全に破壊される。DIV6において6時間にわたりsiRNAによりトランスフェクトされたニューロンは、血清が豊富な培地において16時間にわたり再培養され、その後、さらに24時間、血清がない培地条件とされる。代表的な蛍光顕微鏡写真:核凝縮/断片化(ヘキスト(登録商標);青色)、カスパーゼ−2活性(FAM−VDVAD−FMK,緑色;サブセット1)およびPMP(7−AAD;赤色;サブセット3);サブセット2は、カスパーゼ−2および7−AADの両方が陽性のニューロンを表す。siRNA C2 mとは異なり、siRNA C2 wtは、カスパーゼ−2活性化を妨げる(n=5)。(D)カスパーゼ−2活性は、SD誘導型ニューロン細胞死にとって重大であるが、イオノマイシン誘導型ニューロン細胞死にとっては重大ではない。RNA干渉は、SD細胞死の他のホールマークを妨げる。示された阻害剤(100μM)またはsiRNAの不存在下または存在下の細胞死パラメータの定量化(n=5)。ニューロンは、RNA干渉のために(C)のように処理される。ΔΨ降下、NA、PS露出およびPMPが、JC−1、ヘキスト(登録商標)33342、7−AADおよびFITC結合型アネキシンV染色によってそれぞれ測定される。24時間にわたる6μMのCa2+イオノフォアによる処理によって誘導される細胞死経路は、カスパーゼ−2とは無関係である:VDVADまたはsiRNA C2 wtによる保護は存在しないことに留意のこと(n=3)。(E)イオノマイシン処理(6μM,24時間)と対比したSD後のPMP(7−AAD混合)、核(ヘキスト(登録商標);青色)および神経突起形態に関するsiRNA C2 wtの保護効果を示す立体写真(anaglyph);ピンク色の蛍光は、ヘキスト(登録商標)および7−AADの併合の結果による。蛍光は、位相差画像と併合された。
【図12】カスパーゼ−2は、24時間の血清欠乏ニューロンにおいて後ミトコンドリア・シトクロムc放出および前ミトコンドリアBax転座の両方に必要とされる。(A)VDVADおよびsiRNA C2 wtは、後ミトコンドリア・シトクロムc放出を減少させる。左側パネル:選択的カスパーゼ阻害剤(100μM)の効果に対応する蛍光顕微鏡写真。24時間の血清抜き出し中に阻害剤によって処理されたまたは処理されないニューロンが、ヘキスト(登録商標)33342(青色)およびシトクロムcを認識するモノクローナル抗体(6H2.B4)(赤色)により染色される。SDは、ミトコンドリア(明確な染色)からの細胞質のシトクロムcの放出(染色の拡散)の引き金となる。右側パネル:FMによるシトクロムc放出についての対応する定量化(n=4)。siRNAアッセイのために、DIV6におけるニューロンは、6時間にわたりsiRNAによりトランスフェクトされ、次いで、N5完全培地において培養され、その後、さらに24時間のSDに付される。ペファブロック(100μM)、カスパーゼ−9阻害剤であるLEHDおよびカスパーゼ−3阻害剤であるDEVDは、シトクロムcの放出を損なうことができないことに留意のこと。(B)RNA干渉は、カスパーゼ−2活性化を完全に破壊し、下流のカスパーゼ−9およびカスパーゼ−3のシトクロムc放出依存性の活性化を妨げる。ニューロンは、Aのように、または100μMのQVDOPHまたはVDVADにより処理され、FAM−VDVAD−FMK、FAM−DEVD−FMKおよびFAM−LEHD−FMKにより染色される(n=4)。24時間にわたるイオノマイシン(6μM)により誘導される細胞死経路は、皮質ニューロンにおけるカスパーゼ−2活性化とは無関係であることに留意のこと(他のカスパーゼ活性化は試験されていない)。(C)siRNA C2 wtによる細胞内カスパーゼ−3不活性化についての代表的な顕微鏡写真:上側パネル、青色の核のヘキスト(登録商標)蛍光およびカスパーゼ−3(細胞質)緑色蛍光が併合される;下側パネル、PMPの結果による赤色の7−AADの核の蛍光および細胞質のカスパーゼ−3の緑色蛍光が併合される。siRNA C2 wtは、カスパーゼ−3活性化、NAおよびPMPを完全に破壊した。(D)VDVADおよびsiRNA C2 wtは、前ミトコンドリアのBax転座を減少させる。選択的カスパーゼ阻害剤(100μM)およびsiRNAの効果の蛍光顕微鏡写真(左側パネル)および対応する定量化(右側パネル)。未処理のニューロンおよびAのように阻害剤またはsiRNAのいずれかにより処理されたニューロンは、24時間の血清抜き出し時にヘキスト(登録商標)33342(青色)およびBaxを認識するポリクローナルΔ21抗体(緑色)により染色され、その後に、FM(条件毎および実施毎に150〜300の無作為に選択された細胞に対応する10領域)の下に得点が付けられる(n=4)。細胞質(拡散染色)からミトコンドリア(明確な染色)へのBaxの再配置は、VDVAD、QVDOPHおよびsiRNA C2 wtによって妨げられる。ペファブロック、LEHDおよびDEVDは、Bax再配置を損なうことができないことに留意のこと。
【図13】Bax転座およびカスパーゼ−2活性の両方についてのVDVAD対フロセミドの保護効果の位置づけ。(A)カスパーゼ活性は、Bax転座の上流である。ニューロンは、24時間のSDの当初において2mMのフロセミド(Furo.)または100μMのVDVADと共にインキュベートされる。ニューロンは、ヘキスト(登録商標)33342(青色)によりラベリングされ、かつ、Baxに対してFAM−VDVAD−FMKによりΔ21抗体により抗体染色される(上側パネル;緑色)か、または、FAM−VDVAD−FMKによりラベリングされる(下側パネル;緑色)。代表的な蛍光顕微鏡写真は、SD上のミトコンドリアBax再配置は、カスパーゼ−2活性を損なうことなくフロセミドによって部分的に妨げられることを示す。対照的に、VDVADは、カスパーゼ−2活性化およびBax再配置の両方を阻止する。(B)(A)のような処理後のBax再配置またはカスパーゼ−2活性を示すニューロンのFMによる定量化(n=4)。ペファブロックは陰性対照である。(C)フロセミドによるBax転座の阻害は、ΔΨ降下、NA、PMPおよびシトクロムc放出を損なった結果として生じる。24時間のSDの当初に2mMのフロセミドまたは100μMのVDVADにより処理されたニューロンは、JC−1、ヘキスト(登録商標)33342、7−AADおよびシトクロムcを認識するモノクローナル抗体(6H2.B4)によりラベリングされる。細胞は、FMにより計測される(n=3〜8)。
【図14】Baxα切断は、SDの間には細胞質カスパーゼ−2依存性およびカルパイン非依存性の両方である。(A)カスパーゼ−2 mRNAは、24時間SDのニューロンにおけるRT−PCRによって分析され、これはRNAレベルの変動を示さない。GAPDH発現が負荷対照(loading control)として用いられる。(B)カスパーゼ−2が介在するBax切断の特徴。ニューロンは、2、5、8、15および24時間にわたりSDに付され、Bax切断の経時過程が、カルボキシ末端の21アミノ酸を欠失をしたマウスのBaxαに対して生じさせられたウサギのポリクローナル抗体(Δ21)を用いるウェスタンブロット法によって分析される。未変性のp22 Baxは、p18 Baxとして早期かつ徐々に切断される。(C)18kDa体へのBax切断がSD中にN末端において起こる。右側パネル:カルボキシ末端21のアミノ酸を欠失したマウスのBaxαに対して生じさせられたウサギのポリクローナル抗体(Δ21)およびBaxαのアミノ末端にマッピングしたペプチドに対して生じさせられたウサギのポリクローナル抗体(N20)を用いることによる同一サンプル(対照およびSDニューロン)のウェスタンブロット分析の比較。両抗体は、未変性Baxを認識するが、切断されたBaxは、Δ21により検出されるのみである。(D)プロテアーゼ阻害剤のBax切断のプロファイルは、100μMのVDVADまたはsiRNA C2 wt(3.8μg)の存在下での24時間にわたるSDで特徴付けられる。VDVADおよびsiRNA C2 wtは、Bax切断を妨げる。Bax切断は、カスパーゼ−2の存在およびカスパーゼ−2の活性の両方に依存する。ウェスタンブロット法は、Δ21抗体を用いることによって行われる。(E)血清欠乏は、切断されたp18 BaxのBax転座をミトコンドリアに誘導するが、これは、p18 Baxがさらなるミトコンドリアの変化を促進するための活性形であることを示唆する。ミトコンドリアのフラクションおよびSDニューロンのサイトゾルが単離され、Baxの転座がΔ21抗Bax抗体を用いることによるウェスタンブロット法によって検出される。マウスの抗HSP60抗体がミトコンドリアのフラクションをチェックするために用いられる。p22 Baxが24時間SDのニューロンのサイトゾル中に存在する。しかしながら、Baxは、24時間のSDにおいて、サイトゾルからミトコンドリアに非局在化するp18の形態で部分的に切断される。siRNA C2 wtまたはVDVADは、p18 Baxのミトコンドリア膜への集積を妨げる。(F)カスパーゼ−2が介在するBax切断は、皮質ニューロンにおいて刺激特異的である。ニューロンは、VDVAD(100μM)の存在下または不存在下に8、15または24時間にわたりスタウロスポリン(STS,10μM)またはイオノマイシンによって処理され、その後に、Δ21抗体を用いる免疫ブロット法分析が行われる。STSおよびイオノマイシンは、皮質ニューロンにおいてカスパーゼ−2非依存性のBax切断を誘導する。(G)Bax切断は、カルパインによって介在されない。特異的(カルパインIについて25μMのALLN;カルパインIIについて25μMのALLM)および広スペクトル(25〜50μMのE64d)のカルパイン阻害剤の24時間SDが誘導するBax切断を阻止する能力は、Bのように検査される。これらの阻害剤は、100μMのQVDOPHとは対照的にBax切断を妨げることが不可能である。ウェスタンブロット法が、Δ21抗体を用いることによって行われる。(H)プロテアソーム活性の阻害によるp18 Baxの安定化。ニューロンは、プロテアソーム阻害剤:ラクタシスチン(Lactacystin)1−10μM(Lact.)およびエポキソマイシン(Epoxomycin)10μM(Epox.)の不存在下または存在下に血清不含有培地において24時間にわたり培養される。ウェスタンブロット法が、Δ21抗体を用いることによって行われる。(I−J)24時間SDニューロンにおけるカスパーゼ−2の状態:ラットのモノクローナル抗マウスカスパーゼ−2抗体(11B4)を用いるRT−PCR(I)およびウェスタンブロット法(J)による分析。VDVAD(100μM)がSDの当初に加えられる。後カスパーゼ−2タンパク質の含有量は、カスパーゼ−2 mRNAレベルを変化させることなくSDの間に減少する。GADPHが、等価な負荷対照として用いられる。後カスパーゼ−2タンパク質は、アップレギュレーションもダウンレギュレーションもされないが、後カスパーゼ−2は、むしろ、VDVADアーゼ依存性の方法でp14体として処理される。(K)SDの間の典型的なカスパーゼ−2局在化:カスパーゼ−2は、SDの間マウスの一次皮質ニューロンの細胞質中に拡散したままである。DIV6におけるニューロンは、血清不含有の培地において8、16および24時間にわたり培養され、その後、ラットのモノクローナル抗マウスカスパーゼ−2抗体(10C6;赤色)により染色される。核は、1μMのヘキスト(登録商標)33342(青色)により対比染色される。(L)損傷中のカスパーゼ−2の細胞質の分布は刺激依存性である。ニューロンは、細胞毒性濃度のCa2+イオノフォアであるイオノマイシン(6μM)、キナーゼ阻害剤であるスタウロスポリン(STS,10μM)、トポイソメラーゼI阻害剤であるカンプトテシン(CPT,10μM)によって処理されるか、血清不含有培地において24時間にわたり培養され、その後に、(J)のように染色される。SDとは異なり、カスパーゼ−2の完全な核の再配置が、イオノマイシンおよびSTSによる処理の間に起こる。核の再配置は、CPTについて部分的である。
【図15】Q−VDVAD−OPHによる特異的なカスパーゼ−2阻害は、新生児の虚血脳損傷に対して、Q−VD−OPHによる汎カスパーゼ阻害より良好なニューロン保護を提供する。(A)組み換えカスパーゼ−2によるインビトロのVDVAD−AMC切断。組み換えヒト・カスパーゼ−2(125U)による50μMのVDVAD−AMCの切断が、30分後に37℃で測定され、その後に、選択的カスパーゼ阻害剤または汎カスパーゼ阻害剤と共にインキュベートされた(2μM)(n≧2)。カスパーゼ−2切断活性は、原型化合物であるQ−VDVAD−OPHによって阻止され、これは、特異的カスパーゼ−2阻害剤(Ac−VDVAD−Cho、Z−VDVAD−FMK)およびQ−VD−OPHと効果が同等である。Z−VAD−FMKによる切断阻害はそれほど重要ではないが、BOC−D−FMKは、カスパーゼ−2に対して完全に不活性である。カスパーゼ−3様阻害剤(Z−DEVD−FMK)は、カスパーゼ−2活性に大きくは干渉しない。カルパイン阻害剤であるE64dは、陰性対照として用いられる。(B)Q−VDVAD−OPHは、SD−皮質ニューロン培養の生き残りを促進する。Q−VDVAD−OPHは、DIV6におけるニューロンに24時間にわたるSDの当初に投与される。カスパーゼ−2活性、ΔΨ損失、NAおよびPMPは、FLICA、JC−1、ヘキスト(登録商標)33342および7−AAD染色によってそれぞれ測定される(n=2)。(C−E)カスパーゼ−2阻害は、新生児のインビボ虚血脳損傷に対してニューロン保護を提供する:虚血48時間後に測定される梗塞容積についてのQ−VD−OPHおよびQ−VDVAD−OPHの効果。薬物は、虚血開始の5分前に与えられ、阻害剤の単回の腹腔内注射(intrapeprritoneal injection)(100μg/10g(10%DMSO),それぞれn=16および12)からなる。対照の虚血ラット(n=15)も調査された。(C)背側の海馬(dorsal hippocampus)(プレート21)および前交連(anterior commissure)(プレート12)レベルにおける代表的な環状縫合切断(coronal section)が虚血対照およびQ−VDVAD−OPH処理動物から得られ、クレジル−バイオレットによって染色された。処理されたラット(2%の梗塞容積を有する動物)における梗塞が著しく減少したことに留意のこと。矢印は、同一の虚血またはQ−VDVAD処理された動物における梗塞の存在および不存在をそれぞれ示す。棒線は、130μmを示す。(D)種々の群における平均梗塞容積。データは、平均±SEMである。Q−VD−OPHおよびQ−VD−VAD−OPHは、それぞれ、44および74%の減少を誘導した(***=p<0.001,クルスカル・ウォリス(Kruskall-Wallis)検定)。(E)Q−VDVAD−OPHおよびQ−VD−OPH処理が、高い/全体的または低い保護レベルのいずれか示す動物を有する2つの群を提供する。単一の梗塞容積データがプロットされる。太いおよび薄い横棒線は、群の中間および平均をそれぞれ示す。それぞれQ−VD−OPHおよびQ−VDVAD−OPH処理後に4および8の動物は梗塞を示さなかったことに留意のこと。
【図16】ヒト組み換えカスパーゼ−2によるインビトロのVDVAD−AMC切断。組み換えヒト・カスパーゼ−2(125U)による50μMのVDVAD−AMCの切断が、30分後に37℃で測定され、その後に、選択的カスパーゼ阻害剤または汎カスパーゼ阻害剤(2μM)と共にインキュベートされた(n≧2)。カスパーゼ−2切断活性は、原型化合物であるQ−VDVAD−OPHによって阻止され、その効果は特異的カスパーゼ−2阻害剤(Ac−VDVAD−Cho、Z−VDVAD−FMK)および汎カスパーゼ阻害剤であるQ−VD−OPHと同等である。Z−VAD−FMKによる切断阻害はそれほど重要ではないが、BOC−D−FMKは、カスパーゼ−2に対して完全に不活性である。カスパーゼ−3についての(Z−DEVD−FMK)、カスパーゼ−9についての(Z−LEHD−FMK)およびカスパーゼ−8についての(Z−LETD−FMK)他の特異的阻害剤は、カスパーゼ−2活性に大きくは干渉しない。カルパインを阻害するE64d、ALLN、ALLMは、陰性対照として用いられる。
【図17】前ミトコンドリアカスパーゼ−2依存性経路についての仮説モデル。カスパーゼ−2の前ミトコンドリア活性化が皮質ニューロンにおいてアポトーシスを促進するために必要とする新しい固有の経路を記載した。血清抜き出しは、アポトーシス経路の引き金となることが可能であり、この経路では、カスパーゼ−2の活性化が、上流の、bcl−2ファミリーの後アポトーシスメンバーであるBaxの制御を仲介し得る。Baxは転座し、かつ、外側のミトコンドリア膜に集積して、カスパーゼ−2依存性の方法でΔΨ降下を誘導し、シトクロムc放出を促進する。したがって、カスパーゼ−2の不活性化はまた、カスパーゼ−9およびカスパーゼ−3のシトクロムc放出依存性活性化、核形態変化、ホスファチジルセリン露出および末端の形質膜の透過性化のような下流の事象を廃止する。長期の血清欠乏を通じての活性なカスパーゼ−2の排他的な細胞質局在化は、活性化の特有の機構の証拠となる。
【図18】カスパーゼ−2は、DNA損傷が誘導する細胞死の際に必要とされ、ΔΨ損失およびPMPより先に起こる。カスパーゼ阻害剤の不存在下または存在下のVP16の用量−応答:AおよびBは、特異的カスパーゼ−2阻害剤(VDVAD=Z−VDVAD−FMK)によるカスパーゼ−2様阻害の保護効果を示した。汎カスパーゼ阻害剤(OPH=Q−VD−OPH)の効果も調査された。(A)n=3,JC−1/7AAD染色;(B)n=1,DioC6/PI。
【図19】カスパーゼ−2活性化は、ΔΨ損失および続くカスパーゼ活性化より先に起こる。(A)左側パネルは、VP16処理されたジャーカット細胞(Jurkat cell)(10μM,7時間)におけるΔΨ損失(JC−1)および核変化(ヘキスト(登録商標))についての特徴的なアポトーシスの特色を示す。右側パネルは、汎カスパーゼ阻害剤であるQ−VD−OPHまたは特異的カスパーゼ−2様(VDVAD=Z−VDVAD−FMK)、カスパーゼ−3様(DEVD=Z−DEVD−FMK)、カスパーゼ−9様(LEHD=Z−LEHD−FMK)、カスパーゼ−8様(LETD=Z−LETD−FMK)阻害剤のΔΨ損失(JC−1)、カスパーゼ−2およびカスパーゼ−3活性化(FLICAs)、PMPおよび核変化についての効果をそれぞれ示す。全ての阻害剤は、50μMで試験される。(B)ΔΨ損失(JC−1)およびPMP(7AAD)についてのこれらの阻害剤の効果のフローサイトメトリーによる定量化(8時間)。シクロヘキサミド;BA=ボンクレキン酸(bongkrekic acid);DIDS=4,4’−ジイソチオシアナスチルベン−2,2’−ジスルホン酸二ナトリウム塩;ActD=アクチノマイシンD(n=2〜4)。
【図20】特異的siRNAによるカスパーゼ−2遺伝子ノックダウン。(A)左側および右側パネルは、hsiRNA C2 wtが、ヒーラ(HeLa)およびジャーカット細胞における前カスパーゼ−2タンパク質プールを減少させることが可能であることをそれぞれ示す(ウェスタンブロット分析;カスパーゼ−2検出のための11B4クローン)。(B)トランスフェクションの収率は、siRNA−FITCの蛍光検出(フローサイトメトリー,FL−1)によって細胞内(in cellula)チェックされた:ほぼ100%がsiRNAを取り込んだ(24時間)。
【図21】特異的siRNAによるカスパーゼ−2遺伝子ノックダウンにより、VP16処理されたジャーカット細胞が生き残る結果となった。(A)(ヒト)siRNAのVP16処理されたジャーカットについての保護効果(7〜8時間−10μM)(n=3)。Z−VDVAD−FMKおよびsiRNA C2 wtが救った細胞は形態を保持し(順方向散乱)、これらの細胞は、生存可能である(7AAD排除)ことを示すフローサイトメトリープロファイル。Lipo=リポフェクタミン(lipofectamine)2000単独。
【図22】マウスC2 siRNA配列由来のsh−挿入断片の配列および構造。(A)フォワードおよびリバースオリゴヌクレオチドは、互いの間でアニーリングするために設計された。下の場合の配列は、マウスのC2 mRNAに対して指令されたsiRNAのセンスおよびアンチセンス配列を示す。pGE−1ベクターにおけるクローニングを改良するためにBamH IおよびXba I オーバーハング(overhang)が5’および3’末端にそれぞれ加えられる。(B)アニーリングされたshRNAの構造には、shRNA挿入断片の種々の機能領域が明示される。
【図23】shRNA−6およびshRNA−9構成物の注入後の3T3細胞におけるカスパーゼ−2の発現レベル。対照としての空のpGE−1(レーンpGE−1)またはshRNA挿入断片を含むpGE−1ベクター(クローンshRNA−6およびshRNA−9,レーンshRNA6およびshRNA9)の注入して24または48時間後の3T3全抽出物(レーン当たり15μg)のウェスタンブロット分析。リポフェクタミンのみを有する対照が行われた(レーンlipo)。NTレーンは、処理されていない細胞を示す。
【図24】ヒトC2 siRNA配列から誘導されたsh−挿入断片の配列および構造。(A)フォワードおよびリバースオリゴヌクレオチドが、互いの間でアニーリングするために設計された。下部の場合における配列は、ヒトC2 mRNAに対して指令されたsiRNAのセンスおよびアンチセンス配列を示す。pGE−1ベクターにおけるクローニングを向上させるためにBamH IおよびXba Iオーバーハングが5’および3’末端にそれぞれ加えられる。(B)アニーリングされたshRNAの構造には、shRNA挿入断片の種々の機能領域が明示される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞死におけるカスパーゼ−2活性を妨げ、阻止し/沈黙させるための阻害剤。
【請求項2】
前記細胞はニューロンである、請求項1に記載のカスパーゼ−2阻害剤。
【請求項3】
前記細胞はニューロン細胞系である、請求項1に記載のカスパーゼ−2阻害剤。
【請求項4】
前記細胞は非ニューロン細胞系である、請求項1に記載のカスパーゼ−2阻害剤。
【請求項5】
カスパーゼ−2阻害剤は、カスパーゼ−2 mRNAを特異的にターゲットにしてカスパーゼ−2の発現を減少させるかまたは抑制することが可能な単離された二本鎖RNA分子である、請求項1〜4のいずれか1つに記載のカスパーゼ−2阻害剤。
【請求項6】
ニューロンにおいてカスパーゼ−2の発現を沈黙させる、請求項5に記載のカスパーゼ−2阻害剤。
【請求項7】
ニューロン細胞系においてカスパーゼ−2の発現を沈黙させる、請求項5に記載のカスパーゼ−2阻害剤。
【請求項8】
非ニューロン細胞系においてカスパーゼ−2の発現を沈黙させる、請求項5に記載のカスパーゼ−2阻害剤。
【請求項9】
15〜25ヌクレオチド、好ましくは19〜25ヌクレオチドの相補鎖からなる二本鎖体を含む、請求項5〜8のいずれか1つによるRNA分子。
【請求項10】
相補的な配列番号1および配列番号2の二本鎖体または相補的な配列番号6および配列番号7の二本鎖体を含む、請求項5〜9のいずれか1つによるRNA分子。
【請求項11】
請求項5〜10のいずれか1つによるsiRNAの配列をベースとするshRNA構築物を含み、該構築物は、細胞内カスパーゼ−2サイレンシングにつながる、請求項5によるRNA分子。
【請求項12】
配列番号1および配列番号2の両方または配列番号6および配列番号7の両方または配列番号8および配列番号9の両方または配列番号10および配列番号11の両方の挿入断片を含む、請求項11に記載のRNA分子。
【請求項13】
ニューロンまたはニューロン細胞系において細胞内カスパーゼ−2サイレンシングにつながる、請求項11または12に記載のRNA分子。
【請求項14】
非ニューロン細胞系において細胞内カスパーゼ−2サイレンシングにつながる、請求項11または12に記載のRNA分子。
【請求項15】
配列番号5を有する分子によるカスパーゼ−2活性のインビトロ阻害。
【請求項16】
配列番号5を有する分子によるカスパーゼ−2活性のインビボ阻害。
【請求項17】
Baxとカスパーゼ−2との間の相互作用を妨害するかまたはカスパーゼ−2依存性Bax切断を妨げることが可能な分子。
【請求項18】
配列番号(例えば、配列番号12〜23)を含む3〜40のアミノ酸の長さを有するBax配列由来であり、Baxにおけるカスパーゼ−2切断の推定部位と競争し得るペプチド。
配列番号12:KTGAFLLQGFIQDRAGRMAGETP
配列番号13:GAFLLQGFIQDRAGRMAGETP
配列番号14:FLLQGFIQDRAGRMAGETP
配列番号15:LQGFIQDRAGRMAGETP
配列番号16:GFIQDRAGRMAGETP
配列番号17:FIQDRAGRMAGETP
配列番号18:IQDRAGRMAGETP
配列番号19:IQDRAGRMAGE
配列番号20:IQDRAGRMA
配列番号21:IQDRAGR
配列番号22:IQDRA
配列番号23:IQDR
【請求項19】
N末端またはC末端において、(特異的な認識に続いてまたは続かないで)細胞に入りカスパーゼ−2とBaxとの間の相互作用を妨害することが可能なキメラ分子を生ずるペプチド性または非ペプチド性分子と結合された、請求項16による分子。
【請求項20】
N末端またはC末端において、(特異的な認識に続いてまたは続かないで)細胞に入りアポトーシスを予防または治療するかまたはミトコンドリア保護性の細胞保護効果を提供することが可能なキメラ分子を生ずるペプチド性または非ペプチド性分子に結合された、請求項16による分子。
【請求項21】
前記配列番号を含む3〜10のアミノ酸の長さを有し、該配列番号はN末端またはC末端において、マーカー(例えば、蛍光発光性(AMC、AFC、PE...)、比色性(pNA...)または生物発光性基質、放射性同位体...)と結合されている、請求項16による分子。
【請求項22】
治療上の有効量の、請求項1〜21のいずれか1つによる少なくとも1種のカスパーゼ−2阻害剤を医薬的に受け入れ可能な担体と共に含む医薬組成物。
【請求項23】
有効量の、請求項5〜10のいずれか1つによる少なくとも1種の化合物を含む、請求項22に記載の医薬組成物。
【請求項24】
有効量の、請求項11〜14のいずれか1つによる少なくとも1種の化合物を含む、請求項22に記載の医薬組成物。
【請求項25】
有効量の配列番号5を含む、請求項22に記載の医薬組成物。
【請求項26】
有効量の、請求項17〜20のいずれか1つによる少なくとも1種の分子を含む、請求項22に記載の医薬組成物。
【請求項27】
細胞死を低減させるための、経口投与、局所(例えば、大脳室内、化合物または医薬組成物により含浸されたゲルホーム(登録商標)の大脳内移植、機械的送達用器械の大脳内移植)または全身(例えば、腹膜組織内、静脈内...)投与用の請求項22〜26のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【請求項28】
低酸素症−虚血(H−I)(低酸素症/低血糖症を伴うまたは伴わない虚血)損傷および卒中様の状態(例えば、大脳、腎臓、心臓の不全)を含む病的状態の治療用の請求項22〜26のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【請求項29】
大脳の低酸素症−虚血(H−I)(低酸素症/低血糖症を伴うまたは伴わない虚血)損傷および卒中様の状態(例えば、大脳、腎臓、心臓の不全)を含む病的状態の治療用の請求項22〜26のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【請求項30】
特に、全身性または病巣性H−I(低酸素症/低血糖症を伴うまたは伴わない虚血)損傷および卒中用の状態(例えば、大脳、腎臓、心臓の不全)におけるニューロン死の治療用の請求項22〜26のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【請求項31】
特に、成人または新生児H−I(低酸素症/低血糖症を伴うまたは伴わない虚血)損傷および卒中様の状態(例えば、大脳、腎臓、心臓の不全)におけるニューロン死の治療用の請求項22〜26のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【請求項32】
特に、成人または新生児H−I(低酸素症/低血糖症を伴うまたは伴わない虚血)損傷および卒中様の状態(例えば、大脳、腎臓、心臓の不全)におけるニューロン死の治療用の請求項22〜26のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【請求項33】
特に、一時的または恒常的H−I(低酸素症/低血糖症を伴うまたは伴わない虚血)損傷および卒中様の状態(例えば、大脳、腎臓、心臓の不全)におけるニューロン死の治療用の請求項22〜26のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【請求項34】
特に、再灌流状態を伴うまたは伴わない、H−I(低酸素症/低血糖症を伴うまたは伴わない虚血)損傷および卒中様状態の脳損傷(例えば、大脳、腎臓、心臓の不全)におけるニューロン死の治療用の請求項22〜26のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【請求項35】
特に、中大脳動脈閉塞症(MCAO)におけるニューロン死の治療用の請求項22〜26のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【請求項36】
特に、以下の少なくとも1つの病理的事象が併発された場合のニューロン死の治療用の請求項22〜26のいずれか1つに記載の医薬組成物:再灌流を伴うまたは伴わない、大脳レベルまたは体全体のレベルでの、全身性または病巣性、一時的または恒常的、成人または新生児のH−I(低酸素症/低血糖症を伴うまたは伴わない虚血)。
【請求項37】
・慢性変性疾患、例えば、アルツハイマー病、ハンチントン病、パーキンソン病、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、脊髄延髄萎縮症、プリオン病を含む神経変性疾患の際のアポトーシスを予防および/または治療する、または、
・脊髄損傷の際のアポトーシスを予防および/または治療する、または、外傷性脳損傷の結果として生じるアポトーシスを予防および/または治療する、または、
・ニューロン保護効果を提供する、または、
・脳保護効果を提供する、または、
・自己免疫疾患および移植拒絶反応に伴う、細胞毒性T細胞およびナチュラルキラー細胞が介在するアポトーシスを予防および/または治療する、または、
・心不全、心筋症、心臓のウイルス感染または細菌感染、心筋虚血、心筋梗塞および心筋虚血、冠動脈バイパス移植を含む心臓細胞の細胞死を予防する、または、
・例えば化学療法またはHIV治療の結果としてのミトコンドリアの薬物毒性を予防および/または治療する、または、
・ウイルス感染または細菌感染の際の細胞死を予防する、または、
・炎症または炎症性疾患、炎症性腸疾患、敗血症および敗血症性ショックを予防および/または治療する、または、
・卵胞から卵母細胞への段階、卵母細胞から成熟卵への段階および精子の細胞死を予防する(例えば、卵巣組織、人口受精卵を凍結させおよび移植する方法)、または、
・化学療法後の女性および男性の受精能力を保護する、または、
・雌および雄の動物の受精能力を保護する、または、
・黄班変性および緑内障を予防および/または治療する、または、急性肝炎、慢性活動性肝炎、B型肝炎およびC型肝炎を予防および/または治療する、または、
・男性型禿頭、放射線、化学療法または環境上のストレスに起因する髪の喪失を予防する、または、
・(高レベルの放射線への露出、熱、火傷、化学薬品、太陽および自己免疫疾患に起因する)皮膚損傷を治療または改善する、または、
・脊髄形成異常症候群(MDS)における骨髄細胞の細胞死を予防する、または、
・膵臓炎を治療する、または、
・呼吸器系症候群を治療する、または、
・骨関節炎、変形関節炎、乾癬、糸球体腎炎、アテローム性動脈硬化症、移植片対被移植体の疾患を治療する、または、
・網膜周皮細胞のアポトーシス、網膜ニューロンアポトーシス緑内障、虚血の結果として生じる網膜損傷、糖尿病性網膜症を治療する、または、
・アポトーシスの増加と関係する疾病状態を治療する、または、
・植物(例えば、草木、草花、葉状植物(キノコ、海草)...)の細胞死を予防する
ための請求項22〜26のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【請求項38】
細胞死を阻止または予防する、または、細胞死、特にアポトーシスに対して治療のためにインビトロで分子をスクリーニングする工程を包含する方法。
【請求項39】
細胞死を予防する方法であって、
所与の誘導様式に応じて、所与の細胞タイプにおいて、アポトーシスが関連する事象の階層性を決定する工程と、
より基部に近い可逆的なチェックポイントを阻止してアポトーシス過程に干渉する工程と
を包含する方法。
【請求項40】
ニューロンにおいて迅速な定量的フローサイトメトリーおよび定量的/定性的蛍光顕微鏡法分析を組み合わせる工程を包含する、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
非ニューロン細胞において迅速な定量的フローサイトメトリーおよび定量的/定性的蛍光顕微鏡法分析を組み合わせる工程を包含する、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
ニューロン細胞系において迅速な定量的フローサイトメトリーおよび定量的/定性的蛍光顕微鏡法分析を組み合わせる工程を包含する、請求項39に記載の方法。
【請求項43】
前記チェックポイントはカスパーゼ−2である、請求項39または42に記載の方法。
【請求項44】
前記チェックポイントはカスパーゼである、請求項39または42に記載の方法。
【請求項45】
前記チェックポイントは関連のないカスパーゼ活性化である、請求項39または42に記載の方法。
【請求項46】
MPTP処理を含む毒性傷害または保護処理に応答した、ΔΨおよび形質膜の完全性の信頼性のある実時間フローサイトメトリーによるモニタリングを生じさせるための請求項39〜42のいずれか1つの方法の使用。
【請求項47】
MPTP処理を含むニューロン毒性傷害またはニューロン保護処理に応答した、ΔΨおよび形質膜の完全性の信頼性のある実時間フローサイトメトリーによるモニタリングを生じさせるための、請求項39〜42のいずれか1つに記載の方法の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公表番号】特表2007−523626(P2007−523626A)
【公表日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−529955(P2006−529955)
【出願日】平成16年5月24日(2004.5.24)
【国際出願番号】PCT/EP2004/006288
【国際公開番号】WO2004/103389
【国際公開日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【出願人】(505434146)
【Fターム(参考)】