説明

細菌及び細菌構成成分とのプロアントシアニジンの結合相互作用

【解決手段】 組成物であって、プロアントシアニジンと、このプロアントシアニジンを固定化する高分子、高分子の集合体、半固体或いは固体表面と、を有する組成物。少なくとも約6の平均重合度を持つプロアントシアニジン化合物を有する組成物。免疫抑制された患者、若しくは敗血症或いは敗血症性ショックと診断された患者に、プロアントシアニジンを有する組成物を投与する方法。グラム陰性細菌感染と診断された患者に、少なくとも約6の平均重合度を持つプロトシアニジン化合物を有する組成物を投与する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2006年7月9日付けに出願の米国仮出願番号第60/824,794号に対して優先権を主張した、2007年2月8日付け出願の米国特許第11/832,834号及び第11/832,852号に対して優先権を主張するものである。
【0002】
本発明は、主にプロアントシアニジンに関連するものである。
【背景技術】
【0003】
ポリフェノール化合物は、高等植物に広く分布し、人の食事の一部にも含まれている。ポリフェノール化合物に対する興味は、それらの抗酸化活性に起因するそれらの潜在的な健康効果によって促進されてきた(Croft,Ann.NY Acad.Sci.,854,435(1998);Bravo,Nutri.Rev.,56,317(1998))。フラボノイドの抗酸化活性は、非常に詳細に研究されてきた(Rice−Evans et al.,Free Rad.Biol.Med.,20,933(1996);Cos et al.,Planta Med.,67,515(2001);Cos et al.,J.Nat.Prod.,61,76(1998);Cos et al.,In Studies in Natural Products Chemistry,Atta−ur−Rahrman,Ed.,Elsevier Science B.V.,Amsterdam(2000))。タンニンは、3つの主要なグループ、1)加水分解性、2)複合体、及び3)凝集タンニン或いはプロアントシアニジン(PACs)、に分類されるポリフェノール化合物の重要なグループである。PACsは主に、単量体フラバンサブユニット(+)−カテキン及び(−)−エピカテキン、及びそれぞれが様々なヒドロキシル置換基を有する3つのフェニル環(図1)から成る構造であるそれらの誘導体で構成された、高分子ポリマーである。「タイプB」として分類されるPACsは、単一結合フラバニルユニットによって特徴付けされ、一方「タイプA」PACsは、フラバニルサブユニット間の付加的なエーテル結合を含む。PACsの典型的な植物源は、果実、葉及び樹皮を含む。それらの抗酸化活性に加えて、PACsは、抗癌活性(Zhao et al.,Carcinogenesis,20,1737(1999);Bomser et al.,Chem.−Biol.Interact.,127,45(2000))、抗炎症活性(Yang et al.,J.Nutr.,128,2334(1998);Sen et al.,Mol.Cell.Biochem.,216,1(2001))及び心保護特性(Reed,Crit.Rev.Food Sci.,42S,301(2002))を含む多くの他の有用な健康効果を有することが示されている。近年では、緑茶(Dufresne et al.,J.Nutr.Biochem.,12,404(2001))、ブドウ(ワイン、ジュース、及びブドウ種抽出物)(Bagchi et al.,Mut.Res.,523,87(2000))、及びクランベリージュース(Foo et al.,Phytochemistry,66,2281(2000))からのPACsの健康効果に対して大きな注目が集まっている。特にアメリカンクランベリー(Vaccinium macrocarpon)からのPACsは、尿路疾患性細菌の粘着に対して尿路を保護するそれらの能力がよく記載されており、クランベリージュースを飲むことは様々な尿路感染及び前立腺炎に対して推奨されている治療法である。クランベリーPACsは、尿路の上皮細胞のものと同じα−Gal(1→4)β−Gal受容体配列を有する細胞表面へのP−線毛大腸菌の粘着を阻害することが示された(Foo)。このような効果の大部分は、尿路上皮細胞上の細胞表面受容体と相互作用するための能力を損なう、線毛タンパク質内のAタイプPAC誘導性立体構造変化を介して仲介されるものである(Howell et al.,Phytochemistry,66,2281(2005))。さらに最近では、クランベリージュースは、P−線毛大腸菌及びシリコンニトリドプローブ表面の間の粘着力を有効的に減少することが示された(Liu et al.,Biotech.Bioeng.,93,297(2006))。
【0004】
細菌及び細菌構成成分を濾過及び/若しくは濃縮するための現在の方法では、サイズ除去及び静電気的相互作用などのような非選択的手段を介して溶液からそのような物質を除去することを目的とすることが多い。サイズ除去ベース及び静電気的ベースフィルター装置の例としては、0.22μmの孔サイズを有するCostar Corp.のセルロース酢酸フィルター(サイズベース)であり、これは、サイズカットオフ値より大きな粒子及び正味陰性表面電荷を有する物質(例えば細菌及びウイルス)に非特異的に結合するArgonide Corp.のNANOCERAM(登録商標)陽性ナノメーター酸化アルミニウムファイバー(表面電荷ベース)より大きな粒子を除去する。より特異的な濾過及び濃縮レジメは、細菌物質上及び内に含まれる物質に特異的に結合するための特異的な認識要素(抗体、ペプチド、アプタマーなど)を利用するものである。これらの技術のそれぞれは、それら自身に固有な制限がある。サイズ排除及び電荷ベースフィルターは、高価な製造施設を必要とし、しばしば一度特定の結合能力に達した場合は再利用不可能である。特異的な認識要素に基づいたフィルター及び濃縮器は、適切な結合特性での分子の単離、及びその後のそれらの大規模調合及び精製が必要となる。
【0005】
宿主生物体(例えばヒト及び家畜)からの細菌及び細菌構成成分を中和及び/若しくは除去するための現在の治療法の大部分は、抗生物質の使用に基づいている。1940年代における導入から、抗生物質は多くの細菌関連疾患の治療に対する有効性が示されてきた。しかしながら、それらの頻繁な誤用は、さらに強力な薬剤の開発及び実行を必要とする抗生物質耐性細菌株を生じてきた。さらに、抗生物質が細菌複製を効果的に阻害する一方、それらは有害な細菌毒を中和する際にはしばしば無効である。例えば、グラム陰性細菌の外細胞膜の外葉の主な抗生物質であるリポ多糖(LPS)は、細菌感染の間の合併症の主な原因である。「内毒素(エンドトキシン)」として一般的に言及されるLPSは、感染に対する身体の正常炎症反応を刺激することに関与している。しかしながら、無検査のままのLPS過剰刺激は、全身性炎症反応症候群(敗血症)として知られている、生命を脅かす炎症カスケードの活性化過剰を生じるであろう。
【0006】
LPSは、グラム陰性細菌の外膜の外葉の主要部分を構成する複雑な糖脂質である(Reatz,Ann.Rev.Biochem.,59,129−170(1990))。これは2つの主要なドメイン:1)Toll−様受容体4(TLR−4)とのその相互作用を通じて免疫系を刺激することに関与しているリピドAコア、及び2)伸長分岐ポリ多糖尾部から成る。強力な免疫反応は、サイトカインの産生及び放出、補体の活性化、及び病原体の殺傷及び排除を生じる様々な他の効果を含む、哺乳類細胞によるLPSの認識の後に続く。LPSに対する非制御過剰免疫宿主反応は、敗血症ショック、多臓器不全、及び死などの生命を脅かす合併症を導くであろう。ポリミキシンB(PB)は、LPS−結合及び外側膜−解体能力を示す最も効果的な化合物の1つとなることが示された環状陰イオン性抗菌デカペプチドである(Danner et al.,Antimicrob.Agents Chemoth.,33,1428(1989))。PBは、リピドA部位への高親和性結合を介してLPSの生物学的活性を阻害すると考えられている(Moore et al.,Antimicrob.Agents Chemoth.,29,496(1986))。
【0007】
細菌及び細菌構成成分の濾過及び治療上の中和に対する現在の技術に関連するコスト及び制限の観点から、これらの同じ課題を達成するための安価な代替物は好都合である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、プロアントシアニジン及びプロアントシアニジンを固定化する高分子、高分子の集合体、半固体或いは固体表面を有する組成物を有するものである。
【0009】
本発明はさらに、プロアントシアニジン化合物を有する組成物を有するものであって、前記組成物において全てのプロアントシアニジンの平均重合度は少なくとも約6である。
【0010】
本発明はさらに、免疫抑制された患者、若しくは敗血症或いは敗血症性ショックと診断された患者にプロアントシアニジンを有する組成物を投与する工程を有する方法を有するものである。
【0011】
本発明はさらに、グラム陰性細菌感染と診断された患者へプロアントシアニジン化合物を有する組成物を投与する工程を有する方法であって、前記組成物における全てのプロアントシアニジンの平均重合度は少なくとも約6である、方法を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本発明のより完全な理解は、以下の実施形態及び付随する図面の詳細な説明を参照することによって容易に得られるであろう。
【図1】図1は、更なるプロアントシアニジンの構造を示したものである。PACsはカテキン及びエピカテキンなどのサブユニットから成る。BタイプPACsは、炭素4と8との間若しくは炭素4と6との間に1つの分子間結合を含むものであり、一方AタイプPACsは、炭素4と8との間、及び炭素2と炭素7の酸素との間に2つの分子間結合を含むものである(Foo et al.,J Nat Prod.,63,1225(2000))。
【図2】図2は、非特異的接着におけるクランベリージュースの影響を示したものである。背景強度は、平均蛍光シグナル強度に対する平均背景強度の比として示した。クランベリージュース(▲)及び透析濾過クランベリージュース(○)の細菌サンプルの固定(spiking)は、バックグラウンドシグナルにおいて同様な改善を示した。
【図3】図3は、アガロース−PBビーズプルダウンアッセイの図式的にを示したものである。アガロースビーズに固定化されたPBは、蛍光標識LPSと共にインキュベートした。遠心分離及び洗浄後、ビーズに関連した蛍光量は、PBに結合したLPSの量に比例した。
【図4A】図4は、LPSとのPACsの相互作用を示したものである。(A)データは、クランベリー、お茶及びブドウからのPACSとのLPSの共インキュベーション後の固定化ポリミキシンBへ結合したLPSのパーセンテージを示したものである。全3種類の供給源からのPACsのLPS−結合活性は、濃度依存性であった。AからCにおけるデータは、平均±標準偏差であり、3つ組実験の代表データである。PAC濃度は、タンニン酸等量で報告されている。
【図4B】図4は、LPSとのPACsの相互作用を示したものである。(B)(A)におけるデータをパーセント阻害で示したものである。AからCにおけるデータは、平均±標準偏差であり、3つ組実験の代表データである。PAC濃度は、タンニン酸等量で報告されている。
【図4C】図4は、LPSとのPACsの相互作用を示したものである。(C)クランベリーPACsに対して、ほとんどのLPS−結合活性は、6,000MWCO透析膜(21の平均重合度)によって保持されたポリマーから成る分画内に含まれていた。AからCにおけるデータは、平均±標準偏差であり、3つ組実験の代表データである。PAC濃度は、タンニン酸等量で報告されている。
【図5A】図5は、クランベリーPACsがLPSの膜結合をわずかに減少させ、LPSエンドサイトーシスを有意に阻害することを示したものである。CD14及びTLR4/MD2を安定して発現するHEK 293細胞は、25nM LPS及び0.5μMクランベリーPACと1.5時間インキュベートした。細胞は、固定化する(A)或いは固定化し透過処理し(B)、蛍光と共役させたヤギ抗LPS抗体とインキュベーションし、LPSを可視化させた。インキュベーションにおいて、LPS結合は、リピドA或いは抗TLR4、及び抗CD14抗体との共インキュベーションによって機能的に阻止された。(A)PACsは前記細胞表面へのLPSの結合をわずかに阻害する。
【図5B】図5は、クランベリーPACsがLPSの膜結合をわずかに減少させ、LPSエンドサイトーシスを有意に阻害することを示したものである。CD14及びTLR4/MD2を安定して発現するHEK 293細胞は、25nM LPS及び0.5μMクランベリーPACと1.5時間インキュベートした。細胞は、固定化する(A)或いは固定化し透過処理し(B)、蛍光と共役させたヤギ抗LPS抗体とインキュベーションし、LPSを可視化させた。インキュベーションにおいて、LPS結合は、リピドA或いは抗TLR4、及び抗CD14抗体との共インキュベーションによって機能的に阻止された。(B)PACsはLPSのエンドサイトーシスを有意に抑制する。矢印は、内部移行したLPSの領域を示すものである。核はDAPIで染色した。
【図5C】図5は、クランベリーPACsがLPSの膜結合をわずかに減少させ、LPSエンドサイトーシスを有意に阻害することを示したものである。LPS膜結合及びLPSエンドサイトーシスの定量解析は、それぞれ(C)及び(D)に示した。記号はコントロールに相対的な有意差のレベルに対応したものである(スチューデントt検定によって決定した):(*)p<0.1、(◆)p<0.05、(§)p<0.01、(∞)p<0.001。
【図5D】図5は、クランベリーPACsがLPSの膜結合をわずかに減少させ、LPSエンドサイトーシスを有意に阻害することを示したものである。LPS膜結合及びLPSエンドサイトーシスの定量解析は、それぞれ(C)及び(D)に示した。記号はコントロールに相対的な有意差のレベルに対応したものである(スチューデントt検定によって決定した):(*)p<0.1、(◆)p<0.05、(§)p<0.01、(∞)p<0.001。
【図6A】図6は、クランベリーPACsがLPSのエンドサイトーシスを阻害するが、全体的なエンドサイトーシスは阻害しないことを示したものである。細胞結合アッセイは、Alexa Fluor 647−標識トランスフェリンを培養液へ添加し、エンドソームコンパートメントを標識することを除いて図2に記載されたように実行した。前記細胞の固定化及び透過処理の後、LPSは蛍光を共役したヤギ抗LPS抗体で検出した。データは、PACの非存在下において(パネルA)、エンドサイトーシスされたLPSは大部分トランスフェリンと共存している(合併された画像において矢印で示した)ことが示された。
【図6B】図6は、クランベリーPACsがLPSのエンドサイトーシスを阻害するが、全体的なエンドサイトーシスは阻害しないことを示したものである。細胞結合アッセイは、Alexa Fluor 647−標識トランスフェリンを培養液へ添加し、エンドソームコンパートメントを標識することを除いて図2に記載されたように実行した。前記細胞の固定化及び透過処理の後、LPSは蛍光を共役したヤギ抗LPS抗体で検出した。しかしながらPACの存在下において(パネルB)、LPSは大部分細胞膜に存在している(PACによるLPSエンドサイトーシスの阻害を示している)。しかしながら、エンドソームコンパートメントのトランスフェリン染色は、PACの非存在下で見られたものと同じであった。従って、PACはLPSエンドサイトーシスを阻害するが、全体的なエンドサイトーシスを阻害するものではない。
【図7A】図7は、クランベリーPACsがCD14及びTLR4/MD2とのLPS相互作用を阻害するが、LBPとの相互作用は阻害しない事を示したものである。(A)PACsは、TLR4/MD2を固定化し大腸菌LPSの結合を完全に阻害し(黒三角形)、CD14を固定化しLPS−FITCの結合を部分的に阻害した(白四角形)。LPS:LBP相互作用の阻害は見られなかった(黒丸)。
【図7B】図7は、クランベリーPACsがCD14及びTLR4/MD2とのLPS相互作用を阻害するが、LBPとの相互作用は阻害しない事を示したものである。(B)PACsは、TLR4/MD2へのLPS−FITCの直接結合及びCD14−仲介性結合の両者を阻害する。25nM CD14の存在下で、TLR4/MD2を固定化するためのLPSの結合は、可溶性CD14非存在の場合(黒三角形)に対して、約4倍(白三角形)増強された。挿入図は、コントロールのパーセントでプロットした両データセットを示したものである。両者の場合において、固定化TLR4/MD2に対する阻害度は同程度である。データは、2つの代表実験の平均±標準偏差である。
【図8A】図8は、LPS−反応性HEK 293細胞におけるPACsの細胞毒性によるNF−κB活性化の阻害を示したものである。(A)クランベリーPACsは、用量依存的にLPS誘導性NF−κB活性化を阻害した。
【図8B】図8は、LPS反応性HEK 293細胞におけるPACsの細胞毒性によるNF−κB活性化の阻害を示したものである。(B)PACsの阻害効果は過剰LPSによって打ち消されなかった。HEK−CD14−TLR4/MD2細胞は、以下の濃度:0nM(黒丸)、0.5nM(黒三角形)或いは10nM(白三角形)でのクランベリーPACの存在下において指示濃度のLPSによって刺激された。
【図8C】図8は、LPS反応性HEK 293細胞におけるPACsの細胞毒性によるNF−κB活性化の阻害を示したものである。(C)PACsは、NF−κB活性を阻害するのと同じ濃度範囲に対してLPS−反応性細胞に対して毒性を有しておらず、PACsはLPSと比べて100分の1未満の毒性であった。
【図9】図9は、固定化プロアントシアニジンによるFITC−LPSの捕獲を示したものである。クランベリー(白四角形)及びお茶(黒丸)からのセファロース固定化PACsは、プルダウンアッセイにおける蛍光強度の増加によって示されたように、溶液中でLPSと結合した。捕獲分子濃度は、お茶からのPACsでは5.5μMで、クランベリーからのPACsでは6.0μMであった。
【図10】図10は、溶液からのLPSの固定化PAC捕獲に対する可溶性PAC存在の影響を示したものである。A.溶液中のPACsの存在は、PAC濃度の増加に対する蛍光強度の減少によって示されたように、セファロースビーズへのLPSの結合を阻害した。FITC−LPS濃度は、71μg/mLであり、捕獲分子濃度はお茶からのPACsでは5.5μM(黒丸)で、クランベリーからのPACsでは6.0μM(白四角形)であった。
【図11】図11は、固定化PACsによるLPSの捕獲に対する可溶性リピドA存在の影響を示したものである。FITC−LPSの存在に対するプルダウンアッセイの完了前のPACビーズへのリピドAの添加は、得られた蛍光強度の減少を生じた。FITC−LPS濃度は71μg/mLで、捕獲分子濃度はお茶からのPACsでは5.5μM(黒丸)で、クランベリーからのPACsでは6.0μM(白四角形)であった。
【図12】図12は、LPSのプロアントシアニジン捕獲のポリミキシンBの捕獲との比較を示したものである。固定化PMB(黒三角形)、及びお茶からのPACs(黒丸)及びクランベリーからのPACs(白四角形)は、サイドバイサイドアッセイで比較した場合、FITC−LPSに対して類似の結合親和性を示した。FITC−LPS濃度は145μg/mLであった。
【発明を実施するための形態】
【0013】
限定するためではなく説明を目的として、本発明全体にわたる理解を提供するために、以下の記載において、具体的に詳細について説明する。しかしながら、本分野の当業者であれば、本発明がこのような具体的な詳細なものとは異なる他の実施形態においても実行されることが理解される。他の例において周知の方法及び装置の詳細な記載は、不必要な詳細説明によって本発明の記載を不明瞭にしない程度に省略される。
【0014】
ブドウの種(Vitis vinifera)及びホワイトパイン(Pinus maritima)は、プロアントシアニジンの供給源であるが、その化合物は2、3例挙げると、お茶、コーヒー、チョコレート、リンゴ、ベリー及びオオムギなどの食品にも見出されている。PACsは、様々な数のモノマーサブユニットから成る不均一混合物に見出されている。カテキン及びエピカテキンは、最も一般的なサブユニットである。サブユニット間の結合は通常、炭素原子間の1つの分子間結合を介しているが、いくつかの種においてサブユニットは2つの分子間結合:1つの炭素−炭素結合及び炭素−酸素結合によって結合されている(図2)(Yoshida et al.,J.Syn.Org.Chem.Jpn.,62,500(2004);Foo et al.,Phytochemistry,54,173(2000))。これらはそれぞれ、Bタイプ及びAタイププロアントシアニジンと称する。Aタイプ及びBタイププロアントシアニジンでは、異なる生物活性、さらには異なるサブユニット組成物及び異なる重合度を有することが示されていた(Kolodziej et al.,Phytother.Res.,9,410(1995);Howell et al.,Phytochemistry,66,2281(2005))。
【0015】
クランベリー、お茶及びブドウからのPACsは、様々な細菌種からLPSへ効率的に結合する。クランベリーに対しては、最も潜在的なLPS結合活性は、21の平均重合度を有するポリマーの混合物から構成されるPAC分画内に含まれることが示された。この分画はLPS受容体(TLR4(Toll−様受容体4)/MD2及びCD14)の完全補体を発現しているHEK 293細胞の表面へのLPSの結合を穏やかに阻害する一方、LPSのエンドサイトーシスを有意に抑制する。このPAC分画はさらに、過剰LPSによって打ち消されない方法によりLPS誘導性核内因子−κB活性化も阻害する。この効果は、TLR4/MD2とのLPS相互作用の阻害、及びCD14とのLPS相互作用の部分的抑制を通じて仲介される。重要なことは、効果的なLPS中和を仲介するPAC濃度は、最小限のインビトロ細胞毒性を誘発する。この結果は、強力なLPS結合及びPACsの中和特性を示すものであり、内毒素除去及び敗血症のインビボ治療における潜在的な有用性を有する新しいクラスのLPSアンタゴニストとしてPACsを同定するものである。
【0016】
血中のLPSは、単核マクロファージ上の膜アンカー型受容体であるCD14へLPSを転移する、LPS結合タンパク質と結合する(Tobias et al.,J.Biol.Chem.264,10867−10871(1989))。次にCD14は、二分(二つの領域に分かれている)受容体複合体であるToll様受容体4/MD2(TLR4/MD2)とのLPSの相互作用を仲介し、その結果細胞間シグナリング及び核内因子−κB(NF−κB)−活性化炎症性サイトカインの産生を生じる(Shimazu et al.,J.Exp.Med.,189,1777−1782(1999))。これらのサイトカインは、腫瘍壊死因子アルファ(TNFα)及びインターロイキン(IL−1α、IL−1β及びIL−6)を含む。従って、敗血症に対する治療戦略は、サイトカインの中和(Abraham et al.,J.A.M.A.273,934−941(1995))或いはそれらの受容体(Fisher et al.,J.A.M.A.271,1836−1843(1994))に向けられていた。付加的なアプローチは、陽イオン性化合物(Andra et al.,J.Endotoxin Res.12,261−277(2006))或いはリピドA様物質(Lien et al.,J.Biol.Chem.276,1873−1880(2001);Visintin et al.,J.Immunol.,175,6465−6472(2005))でのLPSの中和に焦点が当てられていた。不幸にも、これらの戦略手段に対する臨床的結果は、残念なもののままであった。
【0017】
プロアントシアニジン(PACs)は、フラボノイドサブユニットから成る植物由来のポリフェノール化合物であり、それらは最近いくつかの潜在的な優れた健康効果と関連しているとされた。詳細な研究によって、この活性は、1つの炭素−炭素及び1つの炭素−酸素結合(Aタイプ結合として言及されている)(Foo)から成る少なくとも1つの独自のフラバン間サブユニット結合を含む4から5の重合度を有するPACsによるものであると考えられた。より最近では、PACsは上皮細胞表面受容体に対するそれらの接着力を減少させる、細菌P−線毛タンパク質における構造変化を誘導することが示された(Liu)。最近の研究では、タンパク質機能化免疫センサー表面への細菌の非特異的接着を阻害する、クランベリージュースからの高分子量ポリマー(21の平均重合度)間のさらなる相互作用が指摘された(Johnson−White et al.,Anal.Chem.,78,853−857(2006))。この証拠に基づいて、以前記載されていなかった細菌細胞表面とのクランベリージュース構成成分の相互作用に対する潜在性を研究した。
【0018】
クランベリー、お茶及びブドウからのPACsのLPS結合特性は、本明細書で報告する。クランベリーからのPACsにより注目すると、第一にリピドA部位との相互作用を通じた、複数の細菌種からのLPSに結合するそれらの能力が示された。LPS受容体の完全補体を発現している細胞とのLPSの相互作用を阻害するPACsの能力が決定された。PACsは、大部分、LPS誘導性NF−κB活性化の阻害も仲介する活性である、TLR4/MD2とのLPS相互作用の抑制を介して、哺乳類細胞とのLPS相互作用を阻害する。
【0019】
タンパク質への細菌細胞接着の阻止に対する細菌細胞とのPACsの相互作用は、免疫アッセイ技術において使用されるガラス表面上で示された。さらにここでは、記載されていなかった細菌細胞表面構成成分であるリポ多糖(LPS:細菌内毒素としても知られている)とのクランベリーPACsの相互作用も示された。大腸菌のP−タイプ線毛とのクランベリーPACsの相互作用は、哺乳類尿路及び消化管の細胞へのP−線毛を発現している細菌細胞の接着を阻害することが以前記載されていた。リポ多糖とのPACsの相互作用は、以前記載されていなかった。この活性に基づいて、PACsは、細菌内毒素、細菌細胞及び細菌細胞構成成分の濾過、濃縮及び中和において潜在的に使用できる。加えて、PACsは、細菌及び細菌細胞構成成分の中和及び/若しくは除去が保証されなくてはならない治療上の適用において使用できる。
【0020】
PACsは、それらを現在の濾過、濃縮及び中和適用に対する適切な置換物或いは代替物とする多くの優れた新しい特徴を提供する。PACsは高等植物によって産生される天然産物である。従って、理論的には「無制限な」供給が自然によって産出される。それらは、製造された濾過及び濃縮装置と同様に産生するための高価な製造或いは機械施設を必要としない。それらの利益を利用するために必要とされる全てとしては、天然物質の抽出及び精製だけである。
【0021】
治療上の適用に対して、PACsは、抗生物質及び現在の毒素−中和化合物の広範囲の使用に対する魅力的な代替物となるであろう。例えば、抗生物質は、尿路感染に対する最も一般的な治療法であり、抗生物質はこれらの感染症を治療するために合計年間16億ドル以上費やされている。抗生物質−耐性細菌種の増加に対する増大する懸念を考慮して、抗生物質への依存を軽減する代替治療測定法が探索されている。ポリミキシンB及びその誘導体などの化合物での細菌毒素のインビボの中和は、細菌感染中の免疫過刺激の発生を軽減するために現在推奨されている治療コースである。しかしながら、そのような化合物の固有の毒性は、それらの使用を制限し、効果は保持している毒性の少ない誘導体の開発を必要とするものであった。本明細書に記載されたポリミキシンBの親和性に匹敵する相対親和性を有するPAC物質は、毒素中和に対する適切な代替物を提供する。
【0022】
細胞表面のP線毛とのPACsの相互作用について、細胞接着の減少に対して開示されている。様々な細胞表面構成成分との他の潜在的なPACsの相互作用は、細菌細胞の中和に対する潜在的なメカニズムを提供する。細胞表面タンパク質抗原及びグルコース転移酵素などのタンパク質は、コロニー形成に関与している。他のタンパク質は、様々なシグナル伝達経路及びクオラムセンシングに関与している。細胞表面上の糖も情報交換及びアンカーに関与しており、受容体として働く。それらはしばしば、ウイルスなどの病原体が細胞に位置し相互作用するための経路となる。他のジュースからのPACsでは観察されなかった、大腸菌及びクランベリーからのPACsの間の相互作用は、様々なPAC種の機能における特異性を示唆するものであり、未だ完全には調査されていなかった細胞表面構成成分との様々な相互作用に対する潜在能力を示唆するものである。
【0023】
PACsは、濾過、検出、除去或いは細菌及び/若しくはLPSと相互作用する他の事象において有用な組成物、装置或いは構成成分に使用される。そのような組成物において、PACは、高分子、高分子の集合体、半固体或いは固体表面へ固定化される。固定化されたPACは、LPS、リピドA、或いはLPS或いはリピドAを産生する細菌を含むと考えられているサンプルへ曝される。高分子の場合において、前記PACは、共有結合、若しくは結合或いは力のあらゆる他の形態によって、前記高分子に固定化されている。前記高分子或いは高分子の集合体は、例えば、前記PACを生物体における目的地へ輸送することを助ける、若しくはセンサーの一部となるであろう。適切な高分子には、限定されるものではないが、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、ヌクレオチド、脂質、或いは糖を有する高分子が含まれる。適切な高分子の集合体には、限定されるものではないが、多タンパク質複合体、ウイルス、デンドリマー、ナノ粒子、ナノ結晶、ナノロッド、ナノ粒子、或いはナノチューブを有するものが含まれる。固体及び半固体表面は、例えばセンサー及びフィルターにおいて有用である。半流動体は、ハイドロゲルなどの物質を含む。適切な固体或いは半固体表面には、限定されるものではないが、複数のビーズ、粒子、ロッド、線維、フィラメント、毛細管、チューブ、平面層、或いは導波管が含まれる。
【0024】
前記PACの重合度は、特定の適用に依存して選択される。組成物における全てのPACの適切な平均重合度は、限定されるものではないが、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39及び40を含む。前記PACは、カテキン及びエピカテキンユニットのみを含む、若しくは他のフラボノイドユニットを含むものである。
【0025】
前記PACsは、濾過装置に使用される。そのような装置は、入口及び出口を持つハウジングを有し、これによって前記ハウジング及び前記固定化PACを通じた液体の流れが可能となるものである。前記固定化PACは、液体が前記ハウジングを通って流れる場合、前記ハウジング内に維持される。これは、血液などの液体から細菌及び/若しくはLPSを除去する際に有用である。感染した患者の血液は、前記フィルターを通り、その患者へ注入して戻される。前記フィルターはさらに、除染及び精製にも有用である。
【0026】
前記PACsは、センサー装置に使用される。そのような装置は、流体装置、固定化PAC、及び前記PACに対するLPS、リピドA或いは細菌の結合を検出するメカニズムを有する。前記メカニズムは、これに限定されるものではないが、光学メカニズム、紫外線吸光度、可視光吸光度、赤外線吸光度、蛍光、発光、化学発光、偏光、表面プラズモン共鳴、屈折率における変化、音響メカニズム、表面音波装置、水晶振動子マイクロバランス装置、電気化学メカニズム、若しくは電流測定法、電位差測定法或いは伝導度測定法を含む、結合事象を検出するためのセンサーにおいて使用されるあらゆるメカニズムである。
【0027】
濾過或いはセンシング装置は、限定されるものではないが、臨床サンプル、血液、血漿、血清、リンパ液、髄液、薬学的調合物(除染が必要である)、若しくは幼児或いは免疫抑制された個人向けの食品或いは飲料を含む、様々なサンプルで使用される。
【0028】
PACsの固定化に対するいくつかの例示的戦略は、本明細書に記載されている。
【0029】
(1)PACヒドロキシルの直接的反応性
PACs内のヒドロキシルは、脱離基と置換する炭素を求核試薬が攻撃する活性化アシル基を含む化合物である、アシル化剤に対してアミノ基と同様に反応する。アシル化剤には、これに限定されるものではないが、酸無水物、イソシアン酸、イソチオシアン酸、イミドエステル、酸ハロゲン化物、N−ヒドロキシサクシニミジル、及び他の活性化エステルを含む。従って、一端におけるこれらアシル化基の1つ(PACヒドロキシルに向けられた)及び別の機能基(標的化表面或いは高分子上の反応基に向けられた)を有するクロスリンク剤は、PACsの固定化に適している。多数のそのようなクロスリンク剤は、商業的に利用可能である(例えば、www.piercenet.comを参照のこと)。直接的反応性の3つの例を以下に記載する。
【0030】
(1A)スルフヒドリルを有する高分子上のポリアントシアニジンの固定化。精製PACsは、N−[p−マレイミドフェニル]イソシアン酸(PMPI、Pierce)の使用を通じて、タンパク質或いは他のスルフヒドリルを有する高分子及び表面へ固定化される。pH8.5で10mM ホウ酸緩衝液におけるモル比1:10でのPMPIとのPACsのインキュベーション(45分室温)によって、PACsのヒドロキシル基とのPMPIのイソシアン酸基の反応を生じ、カルバミン酸結合を生じる。スルフヒドリルを有する化合物及びリン酸ナトリウム緩衝液(pH7、最終濃度50mM)の添加によって、前記タンパク質或いは他の高分子のスルフヒドリル基とのPMPIのマレイミド基の反応を生じる。前記高分子の濃度は、各分子に結合するPACsの数に影響を及ぼすように変えることができる。
【0031】
(1B)アミンを有する高分子上へのプロアントシアニジンの固定化。精製PACsは、4−(クロロスルホニル)フェニルイソシアン酸(CSPI)の使用を通じて、タンパク質或いは他のアミンを有する高分子及び表面上へ固定化され得る。pH8.5でのホウ酸緩衝液における等モル濃度でのCSPIとのPACsのインキュベーション(45℃室温)は、PACsのヒドロキシル基とのCSPIのイソシアン酸基の反応を生じ、カルバミン酸結合を産生した。次に、アミンを有する高分子を添加することによって、表面アミン基とのCSPIの塩化硫酸基の反応が、Hinsbergテストによって使用されたメカニズムを介してスルホンアミンを産生するように進行することが可能となった。
【0032】
(1C)アミン或いはカルボキシルを有する高分子上でのプロアントシアニジンの固定化。アミン或いはカルボキシルを有する高分子は、1−エチル−3−[3−ジメチルアミノプロピル]カルボジイミド塩酸(EDC)の存在下での3−[(2−アミノエチル)ジチオ]プロピオン酸・HCl(AEDP)の使用を通じて修飾され得る。トリス[2−カルボキシエチル]ホスフィン塩酸(TCEP)或いは2−メルカプトエチルアミンなどの還元剤の使用は、スルフヒドリル基を産生するAEDPのS−S結合を切断する。次に、PMPIクロスリンク剤は、上記(1A)で記載したように、このスルフヒドリル基にプロアントシアニジンを結合するために使用され得る。
【0033】
(2)代替機能基へのヒドロキシルの変換
(2A)アルデヒドへのヒドロキシルの変換。PACsの隣接ヒドロキシル基は、過ヨウ素酸、ナトリウム或いはカリウム過ヨウ素酸での酸化の影響を受けやすい。過ヨウ素酸酸化は、近接ヒドロキシルを有するC−C結合を切断し、それらをジアルデヒドへ変換する(Bobbit,Adv.Carbohyd.Chem.,11,1(1956))。過ヨウ素酸処理の後、形成されたジアルデヒドを様々な試薬、特にアミン基と反応させ、シッフ塩基のイミンを形成することができる。
【0034】
(2B)スルフヒドリルへのヒドロキシルの変換。PACヒドロキシルは、スルフヒドリル基へと変換され得る。ヒドロキシル基は、ジオキサン或いはピリジンを含むリン酸緩衝液(pH8から9)における塩化トシル(塩化トルエンスルホニル)で活性化され得る。その後のエステル転移反応は、pH5.5での0.5Mチオ酢酸溶液において達成される。遊離チオールを産生するための前記チオエステルの加水分解は、0.5Nメタン酸で実行された。
【0035】
本明細書で記載された特性によって、PACは、グラム陰性細菌感染或いは敗血症と診断された患者、若しくは免疫抑制された患者を治療するのに有用であることが示される。PACを有する組成物を用いたあらゆる薬学的に許容可能な治療が使用される。その治療は、抗生物質、化学療法、放射線核種、免疫抑制剤、血漿分離交換治療との併用療法を行う場合に、より有効である。前記PACはさらに、抗生物質、化学療法、放射線核種、或いは免疫抑制剤とも共役される。
【0036】
1つの例示的適用は、それらを除去するための、LPS、リピドA、或いは細菌細胞の結合である。様々な高分子、高分子の集合体、或いは表面へのPACsの固定化は、それらの存在が望まれていない溶液からのリポ多糖、リピドA、或いは細菌細胞の1)除去、2)濃縮、及び3)精製のためにPACsを認識要素として使用されることを可能にする。この結合は、2つの形態:直接的或いは間接的、をとることができる。直接的結合実施形態は、PACsが固体及び/若しくは半固体表面(ビーズ、粒子、ロッド、線維、フィラメント、毛細管、チューブ、平面層、或いは導波管を有する)へ固定化される場合に適用される。ここにおいて、ビーズ固定化PACsは、標的リポ多糖、リピドA、或いは細菌細胞を捕獲し、結果生じた複合体は、上清が容易に除去され、その結果、固体支持体−結合LPS、リピドA、或いは細菌細胞を生じるように遠心分離或いは磁気的に濃縮される。或いは、この方法で固定化されたPACsは、カラム型式に使用され、ここにおいてPAC−機能化支持体の充填カラムは、LPS、リピドA或いは細菌細胞を含む溶液に曝される。間接的実施形態は、高分子及び高分子の集合体へのPACsの固定化に関与する。これらは、溶液中のLPS、リピドA或いは細菌細胞を結合するために使用される。結合後、PACsが結合した前記高分子或いは高分子の集合体へ向けられた固体−支持体−固定化認識要素の添加によって、前記複合体の捕獲及び溶液からのそれらの除去が可能となる。この状況において、使用される前記高分子は、以下:アミノ酸、ペプチド、タンパク質、ヌクレオチド、核酸、脂質、或いは糖のいずれかで構成され得る。前記高分子の集合体は、以下:多タンパク質複合体、ウイルス、デンドリマー、或いはナノ粒子のいずれかで構成され得る。前記ナノ粒子は、ナノクラスター、ナノ粒子、ナノロッド、ナノ粒子、或いはナノチューブを有することができる。
【0037】
別の例示的適用は、それらを検出するための、LPS、リピドA、或いは細菌細胞の結合である。LPS、リピドA、或いは細菌細胞へ結合するPACsの能力はさらに、一度結合されたLPS、リピドA、或いは細菌細胞の検出を達成するためにも使用され得る。本来、固定化PACsに基づいたセンサーは、(上述されたような)固定化PACs、流体装置、及び結合されたLPS、リピドA、或いは細菌細胞の検出を達成するためのメカニズムを有する。検出は、以下の方法:光学(UV或いは赤外線吸収、蛍光、発光、化学発光、偏光、表面プラズモン共鳴、屈折率における変化)、音響(表面音波、水晶振動子マイクロバランス)、電気化学(電流測定、電位差測定、伝導度測定)を有することができる。
【0038】
別の例示的適用は、治療上の適用に対するLPS、リピドA、或いは細菌細胞の結合である。PACsの想定される治療上の適用は、インビボ及びエックスビボの両方である。前記インビボ適用は、細菌感染のリスクがある或いは疑われている患者へのPACsの投与(食事を通じて受動的に、或いはボーラス丸剤形態或いは注射を通じて能動的に)を有する。他の従来の抗菌、抗ウイルス、及び抗真菌法との組み合わせでのPACsの使用も想定される。そのような併用療法は、従来の抗菌、抗真菌或いは抗ウイルス薬物療法とのPACsの同時投与を有する。これらのタイプの薬物療法に対するPACsの直接的固定化(上述した方法を介した)。
【0039】
前記エックスビボ適用は、たくさんの型式におけるPACsの使用を有する。これらには、細菌感染が疑われる皮膚領域へのPACsの局所的適用を含む。これらはさらに、血漿分離交換適用におけるPACsの使用も含み、ここにおいて患者の血漿は、除去され、LPS、リピドA及び細菌細胞を除去するためにPACsとインキュベーションされ、次にその血漿は前記患者へ戻される。
【0040】
細菌感染間のLPSの存在は、有効な治療にまだ制限がある、重症な炎症状態である敗血症の第一の原因である。LPSの中和に対するより最近の戦略の間では、天然及び合成陽イオン化合物及びリピドA−様物質が使用される。天然LPS−結合タンパク質の結合ドメインに基づいたペプチド及び抗菌性ペプチドを含む陽イオン化合物は、ナノモル範囲でのLPSへの親和性を示した(Andra et al.,J.Endotoxin Res.,12,261−277(2006))。LPSのリピドA部位へ結合する環状ナノペプチドポリミキシンBは、その強力なLPS中和活性に対してかなりの注目を集めていた(David et al.,Biochim.Biophys.Acta.,1165,147−152(1992))。しかしながら、その臨床有用性は、そのかなりの毒性によって妨害されていた。保存リピドA部位を真似したリピドA−様物質は、その受容体とのLPSの相互作用を妨害することによって機能する。例えば、E5564は、TLR4/MD2受容体とのLPS相互作用を抑制するように設計された第二世代合成リポ二糖である(Lien et al.,J.Biol.Chem.,276,1873−1880(2001);Visintin et al.,J.Immunol.,175,6465−6472(2005))。それらの強力なLPS中和活性にも関わらず、陽イオン化合物及びリピドA−様物質は、それらの毒性或いは高LPS濃度によって打ち消されるそれらの能力によってしばしば制限されていた(Golenbock et al.,J.Biol.Chem.,266,19490−19498(1991))。これらの欠点を克服するLPS結合化合物が必要とされている。
【0041】
天然由来植物PACsの以前報告されていない生物学的活性:細菌LPSの効果的な結合及び中和は、本明細書に記載されている。その結果から、クランベリー、お茶及びブドウからのPACsは、用量依存的にLPSと結合することが示された。さらに、クランベリーPACsの場合において、より大きなポリマー(21の平均重合度を有する)は、最も強力なLPS結合活性を示す。
【0042】
以前の研究では、細菌細胞表面の構成成分とのPAC相互作用の重要な役割が明らかになった。Fooらは、クランベリーからのLH20−精製PACsは、α−Gal(1→4)β−Gal受容体配列を含む表面へのP−線毛大腸菌の接着を阻害したことを示した(Foo et al.,Phytochemistry,54,173−181(2000))。この活性は、4から5の重合度を有し、少なくとも1つのAタイプ結合を有するPACsと関連していた。Howellらは後に、この効果は実はAタイプ結合に特異的なものであり、様々な供給源からのB−タイプ結合PACsはこの効果を仲介しないことを報告した(Howell et al.,Phytochemistry,66,2281−2291(2005))。より最近では、Liu及びその同僚らは、細菌接着のPAC−仲介性減少に対するメカニズムを提案した。原子間力顕微鏡(AFM)研究によって、PACsはP線毛タンパク質の短縮を誘導し、その結果細菌及びAFMプローブチップの間の接着力の減少を生じることが示された(Liu et al.,Biotechnol.Bioeng.,93,297−305(2006))。
【0043】
P線毛タンパク質との天然のPACsの相互作用と比較して、本発明の発見は、LPSの天然のPACsの認識に関していくつかの違いを指摘する。第一に、LPS結合は、Aタイプフラバン間結合に特異的ではない。クランベリーからのPACsは、A及びBタイプフラバン間サブユニット結合を含む一方、お茶及びブドウPACsはもっぱらBタイプフラバン間結合を含む。それでも、3つの供給源全てからのPACsは有効的にLPSに結合する。第二に、クランベリーPACsから得られたデータによって、より大きなポリマー(21の重合度を持つ分画)は、最も高いLPS結合活性を持つことが示された。最終的に、PACsの抗−細菌接着特性に対する他の研究では尿路疾患系大腸菌に対するPACsの効果にほとんど注目していたが、本発明のデータでは明らかに、クランベリーPACsは複数のグラム陰性細菌種からのLPSへ結合することが示された。さらに、結合研究によって、クランベリーPACsは変異LPSを有する短リポ多糖鎖、さらには天然LPSに匹敵する親和性を有するジホスホリルリピドAを認識することが示された。従って、リピドA部位は、LPSのPACsによる認識において有力な役割を果たしている。
【0044】
クランベリーPACsのLPS結合活性は、LPS反応性細胞とのLPSの相互作用に著しい影響を与えることができる。LPSとの細胞内相互作用の現在のモデルにおいて、血清中に存在するLPS結合タンパク質(LBP)は、二分受容体複合体TLR4/MD2へLPSを次々に転移させる膜−常在受容体CD14に結合しLPSを提示する(Shimazu et al.,J.Exp.Med.189,1777−1782(1999))。MD2は、受容体のLPS−結合ユニットである一方、TLR4はシグナル伝達構成成分として働く(Shimazu;Nagai et al.,Nat.Immunol.,3,667−672(2002);Schromm et al.,J.Exp.Med.,194,79−88(2001)。TLR4/MD2−LPS複合体は最終的に、LPS誘導性受容体ダウンレギュレーションの一部としてのカベオラ依存的取り込みメカニズムに関連するエンドサイトーシスを受ける(Shuto et al.,Biochem.Biophys.Res.Commun.,338,1402−1409(2005))。TLR4は物理的にLPSと接触するかという議論が現在存在する一方、TLR4/MD2及びLPSは細胞表面上に安定的複合体を形成し、MD2に結合したLPSは、TLR4シグナル伝達活性化(Visintin et al.,J.Immunol.,175,6465−6472(2005))及びLPSエンドサイトーシス(Husebye et al.,Embo.J.,25,683−692(2006);Shuto et al.,Biochem.Biophys.Res.Commun.,338,1402−1409(2005))に対して必須であるということは明らかである。
【0045】
LPS受容体の完全補体を発現しているHEK 293細胞において、クランベリーPACsは前記細胞表面へのLPSの結合を中程度に減少した一方、それらはLPSエンドサイトーシスを有意に阻害した。膜結合実験において、クランベリーPACsは、MD2受容体アゴニスト及びLPSアンタゴニストとして知られているジホスホリルリピドAと比較して、細胞膜とのLPS相互作用の抑制においてわずかに強力であった(Muroi et al.,J.Biol.Chem.,281,5484−5491(2006))。PACsは、LPS結合の抑制においてCD14機能撹乱抗体よりは効果的ではなかった。これは、LPSに対する膜相互作用の第一ポイント(initial point)として達成されたCD14の役割と一致する。リピドAの阻害効果とほとんど同じであった、LPSのエンドサイトーシスに対するクランベリーPACsの阻害効果は、内部移行アッセイにおいて記載しした。これらの結果及びMD2との効果的なLPS相互作用へのLPSエンドサイトーシスの既知依存性に基づいて(Shuto et al.,Biochem.Biophys.Res.Commun.,338,1402−1409(2005))、クランベリーPACsは、TLR4/MD2受容体複合体とのLPS相互作用を抑制する場合に重要な役割を担っていたということは合理的なことである。実は、受容体結合実験によって、PACsは、CD14とのLPS相互作用の最大40%阻害を達成した一方、それらは同じ濃度範囲で、TLR4/MD2へのLPS結合を完全に阻害したということが示された。さらに、PACsは、PACsに対して6倍モル過剰で存在するような場合などの、高LPS濃度では打ち消されないやり方でNF−κB活性化を阻害した。
【0046】
他の報告では、PACsによる炎症性サイトカインのLPS誘導性産生の阻害が記載されていた。Bodetらは、クランベリージュース濃縮物からのPAC濃縮分画は、歯肉線維芽細胞におけるIL−6、IL−8、プロスタグランジンE2(Bodet et al.,Eur.J.Oral.Sci.,115,64−70(2007))、及びマクロファージにおけるTNFα及びランテス(RANTES:Regulated on Activation Normal T−cell Expressed and Secreted)(Bodet et al.,J.Dent.Res.,85,235−239(2006))のLPS−誘導性産生を阻害したことを示した。この分画は細胞内シグナル伝達タンパク質のリン酸化状態を阻害することが示された一方、シグナル伝達阻害の正確なメカニズムは解明されていなかった。しかしながら、本発明の発見は、PACsが直接的に結合し、TLR4/MD2とのその相互作用を阻止することによってLPSを中和する、LPS阻害のメカニズムに向けられている。さらに、他のLPS結合物質と比較して、LPSとのこの相互作用は、LPSの過剰濃度によって容易に打ち消されることはない。これは、敗血症に対する治療試薬としての他のLPS結合物質の開発における欠点となっていた。従ってその結果より、PACポリマー構造の多価特性は、LPSのポリ多糖鎖との他の安定化相互作用を可能にすることが示唆された。
【0047】
PACsは、ポリミキシンB或いはリピドA−様物質などの他の以前記載されたLPSスカベンジャー或いはLPS受容体アンタゴニストとは構造的に非常に異なる。さらに、それらLPS結合特性は、それらは敗血症のインビボ治療に対する新しい治療法の開発が期待できることを示唆している。最低でも、それらの強力なLPS結合活性、低コスト、及び天然供給源からの幅広い利用可能性によって、それらは、内毒素の除去及び精製を必要とするバイオテクノロジー適用において有用となるであろう。
【0048】
本発明を記載するに当たり、以下の実施例は本発明の特定の適用を説明するために記載されるものである。これらの特定の実施例は、この明細書に記載された本発明の観点を制限することを意図するものではない。
【実施例1】
【0049】
プロアントシアニジンの精製。透析クランベリージュース濃縮物(DCC)は、水(6,000MWCO希釈チューブ)で透析し、0.2μmフィルターを濾過させることによって、Mountain Sun pure無糖クランベリージュース(100%強度、Celestial Group,Inc.)から製造した。PACs(非特異的ポリフェノールは除去されている)は、Sephadex LH20カラム(Hagerman,"The tannin chemistry handbook" http://www.users.muohio.edu/hagermae/tannin.pdf(2002))を用いた疎水性吸着クロマトグラフィーによって精製された、完全クランベリージュース、ウェルチ100%赤ブドウジュース、或いはリプトン紅茶から得た。完全ジュースは、最小容積まで回転蒸発によって減少させ、70%アセトンで元の容積になるように再懸濁し、30分間超音波処理し、Whatman#3フィルター紙で濾過した。不溶性物質の再懸濁、超音波処理、及び濾過は2回以上行い、全ての液体を組み合わせた。この溶液は、回転蒸発によって減少させ、全てのアセトンを除去し、元の容積の2倍になるように75%エタノールに再溶解させた。お茶は、20分間(3回繰り返した)200mLの70%アセトン中に、1つのファミリーサイズのティーバッグの超音波処理によって抽出した。各調合において、前記溶液を組み合わせ、回転蒸発によって減少させ、200mLの75%エタノールに再溶解した。この溶液は、総容積と同等のバッチにおけるSephaex LH20カラムへ適用した。少量のフェノール類は、総容積の5倍と同等のエタノールで溶出することで除去した。PACsは、アセトンで溶出し、最小容積まで回転蒸発によって減少させた。完全クランベリージュースから回収されたPACは次に、さらなる特徴付けのために、25%エタノールを含む水に対して分画透析によって分画させた。分画は、2,000MWCOチューブ(Spectra/Por;Dial<2k)を通った分画;2,000MWCO(Dial2−3k)では保持されたが3,500MWCOチューブ(Spectra/Por CE)を通った分画;3,500MWCOチューブ(Dial3−6k)では保持されたが6,000MWCOチューブ(Spectra/Por Membrane MWCO 6−8000)を通った分画;及び6,000MWCOチューブ(Dial6k)で保持された分画、として回収した。全ての物質は貯蔵用に、窒素気流下で粉末になるまで乾燥させた。精製物質は、結合実験に使用するために33%エタノール/HOに溶解した。各精製化合物の重合度は、酸ブタノールアッセイと組み合わせた修飾バニリンアッセイによって決定した。PAC濃度は、標準としてタンニン酸を用いた放射状拡散アッセイによって決定した(Hagerman,"The tannin chemistry handbook" http://www.users.muohio.edu/hagermae/tannin.pdf(2002);Hagerman,J Chem Ecol.1987,13,437)。チオ開裂及びHPLCによる精製した物質の解析によって、LH20分離後に低分子種は残っていなかったことが示された(Hammerstone et al.J.Nutr.(2000)130:2086S−2092S;Gu et al.,J.Agric.Food Chem.(2002)50:4852−4860;Prieur et al.,Phytochemistry(1994)36:781−784;Sun et al.,J.Agric.Food Chem.(1998)46:1390−1396)。これらの解析に基づいて、PACsは糖、酸及び低分子量混入物がないと考えられた。
【0050】
【表1】

【実施例2】
【0051】
大腸菌の非特異的接着−新規研究ラボアレイバイオセンサー(The Naval Research Laboratory Array Biosensor)は、目的物の解析を検出するためにタンパク質コーティングガラス導波管を用いるものである(Rowe et al.,Anal.Chem.,71,433(1999);Taitt et al.,Microbial.Ecol.,47,175(2004);Golden et al.,Talanta,65,1078(2005))。前記導波管の表面は、前記表面の他の領域をコーティングするために、非特異的不動態化分子での捕獲分子のパターンアレイを有している(Sapsford et al.,Anal.Chem.,74,1061(2002);Ngundi et al.,Anal.Chem.,77,148(2005);Shriver−Lake et al.,Anal.Chem.,67,2431(1995))。標的の蛍光ベース検出は、捕獲分子領域の識別に依存している。前記表面の予想外な領域への標的の非特異的接着は、検出の制限、さらには前記アレイバイオセンサーに対する仮性ポジティブ/ネガティブ比に対して負に影響を及ぼす。
【0052】
非病原性大腸菌種(ATCC35218)及び低親和性抗体(大腸菌に対するウサギポリクローナル抗体;Abcam,Inc;Cambridge,マサチューセッツ州)の組み合わせは、バックグラウンド強度からシグナルを識別することを困難にする非特異的結合度を作ることが見出された(Johnson−White et al.,Anal.Chem.,78,853(2006))。細菌細胞は、表面タンパク質及び/若しくはリポ多糖(LPS)に関連した相互作用を通じて接着する。非特異的結合の減少に対する従来のアプローチ(例えば、導波管表面をブロッキングする、若しくはタンパク質或いは糖でサンプルを追加添加(spiking)する)は成功しなかった。尿路における細菌細胞接着に対するクランベリージュースの影響に基づいて、前記ジュースは前記アレイバイオセンサーにおける接着の潜在的メディエーターとして検討した。図2は、様々な濃度のクランベリージュースでアッセイしたサンプルのシグナル強度に対するバックグラウンド強度の割合に対するデータを示している。Ocean Spray100%クランベリー及び27%クランベリージュースを含むConcordブドウジュースブレンドを使用した。ジュースの非存在下で、バックグラウンド強度は総シグナルの67%であった。50%ジュースブレンド(13.5%クランベリージュースと同程度)の添加は、総シグナルの1%未満まで前記バックグラウンド強度を減少した(Johnson−White)。ブドウジュースでのサンプルの追加添加は、前記バックグラウンドシグナルに対してこのような影響を及ぼすことが見出されなかった(ウェルチのPurple100%ブドウジュース)。アップルジュース、オレンジジュース及び白クランベリージュース(Ocean Spray100%ジュースブレンド)でのサンプルの追加添加も、バックグラウンドシグナルの減少は生じなかった。白クランベリージュースは、赤い色及び酸っぱい味が形成される前に収穫されたクランベリーから製造された。使用された前記白クランベリージュースブレンドは、13.5%クランベリージュースを含む。濃度におけるこの違いは、赤クランベリージュースで使用されたものと同様な濃度が検討されるような、サンプルを追加添加した場合の要因となっていた。
【0053】
いくつかのメカニズムが、クランベリージュースによる細菌細胞接着の阻害に対して記載されていた(Steinberg et al.,J.Antimicrob.Chemoth.,54,86(2004);Brumfelt et al.,Lancet,1,186(1962);Klepser et al.,J.Infect.Dis.Pharmaco.,6,1(2003))。前記ジュースの酸性度、希少D−マンノース化合物を含む糖含有量、及び希少ポリフェノール化合物の存在は、寄与因子として提案された。サンプルに追加添加された前記ジュースのpHを調節することによって、原因となる因子としての酸性度が排除された。前記ジュースの糖含有量は、同濃度でフルコース、グルコース及びマンノースを大腸菌サンプルへ追加添加することによって、因子から排除された。導波管表面不動態化も、前進接触角に対するサンプル追加添加の影響に関する研究を介して、潜在的なメカニズムとして排除された。標準細菌細胞調合が追加添加された場合、前記接触角は汚れていないガラススライドに強く影響を及ぼすが、前記アレイバイオセンサーで使用されたタンパク質コーティングスライドに対しては目立つ影響を与えなかった。
【0054】
尿路におけるヒト上皮細胞との大腸菌の相互作用は、細菌細胞表面上のp−線毛タンパク質の阻害を通じて、クランベリージュースからのAタイププロアントシアニジンによって阻害された(Liu et al.,Biotechnol.Bioeng.,93,297(2006);Howell et al.,Faseb J.,15,A284(2001))。ガラス導波管への接着に対するPACsの潜在的影響を検討するために、糖及び他の小分子は、水に対する透析(Spectra/Por Membrane MWCO 6−8000)を通じてクランベリージュース(Langer’sクランベリー濃縮物)から排除した(Steinberg et al.,J.Antimicrob.Chemoth.,54,86(2004))。コロイド粒子は、0.2μmフィルター(Acrodisc PF;Gelman Sciences,Ann Arbor,ミシガン州)を用いて、前記透析物質の濾過を通じて除去した。前記透析物質は窒素下で、27%クランベリージュース当量になるまで再濃縮し、アレイバイオセンサーアッセイのサンプルに追加添加するために使用した。この透析され濾過されたクランベリージュースは、サンプルにクランベリージュースブレンドを追加添加した場合に観察された結果と同じ結果を示した。
【実施例3】
【0055】
LPS結合アッセイ−PBとのLPSの相互作用を阻害する両PACsの能力は、アガロースビーズベースプルダウンアッセイを用いて評価した(図3、4)。ポリミキシンB(10μM、アガロースビーズへ共役(シグマ))は、最終容積250μLの0.05Mトリス緩衝液(pH8.5)におけるDCC、非透析LH20 PAC、或いはサイズ分画LH20 PACの非存在下或いは存在下で、100nM LPS−FITC(大腸菌セロタイプB5:055、シグマ)とインキュベーションした。反応物は暗所にて1時間25℃でかき混ぜた。非結合LPS−FITCは、3ラウンドの遠心分離及び250μLの0.05Mトリス緩衝液での洗浄によって除去し、その後200μLのヌクレアーゼを含まない水に再懸濁した。各サンプルの一連の希釈は、ヌクレアーゼを含まない水で調合し、蛍光は、Saphire蛍光プレートリーダー(Tecan,Durham,ノースカロライナ州)を用いて、495±2.5nmでの励起、及び535±2.5nmでの発光によって測定した。比較実験は、Salmonella、Shigella及びPseudomonasからのLPS、及びSalmonella Minnesota(Rc変異)及び大腸菌EH100(Ra変異)の変異種からのLPSで実行した。後者2つの種は、野生LPSに対して様々な長さのポリ多糖鎖を含む。結合実験は、ジホスホリルリピドAでも行った。リピドA及びLPSの共役は、製造者の取扱説明書に従ってフルオレセインイソチオシアン酸(シグマ)で行い、物質は非結合色素から分離するためにPBSに対する透析へ供した。全ての場合において、共役度は、標識種のモル当たり約2から3フルオレセインになるように、分光法によって決定した。
【0056】
固体相結合アッセイを用いて、LPSに結合するA及びBタイプPACs両者の能力は、固定化ポリミキシンBとの大腸菌LPSの相互作用を阻害するそれらの能力を決定することによって評価した。お茶及びブドウ(もっぱらBタイプ結合を有する)からのPACsに対してクランベリー(A及びBタイプ結合両者を有する)からのPACsを比較する結合実験によって、両結合を有するPACsは、用量依存的にLPSに効果的に結合したことが示された(図4(A))。これらのデータをパーセント阻害でプロットした場合、高分子量のポリマーを含むように透析を介して濃縮されたクランベリーPACsは、0.7μMのIC50を有する最も強力なLPS結合活性を示した(図4(B))。お茶(非透析)からのPACsは、1.1μMのIC50を有する次に最も有効であった。ブドウ及びクランベリーからの非透析PACsは、LPSに対して同程度の相対親和性を示した(IC50=3.0μM)。透析クランベリー濃縮物(PACsは濃縮されていない)は、LPSに対して最も低い相対親和性を示した(IC50=10.5μM)。分画透析によって産生されたクランベリーPACsのLPS結合活性を比較した場合、LPSに対する相対親和性及びPAC分子量の間に正の相関性が観察された。実は、より大きな分子量ポリマーは、より低い分子量PACsと相対して、より高いLPS結合活性を示した(図4(C))。従って、全てのその後の実験は、21の平均重合度を有するクランベリーからのPAC分画(今後「クランベリーPACs」と言及する)を用いて実行した。
【0057】
クランベリーPACsのLPS結合活性は、Salmonella、Shigella及びPdeudomonasからのLPSに同程度の親和性を有して結合するそれらの能力が証明されたので、大腸菌LPSに限定しなかった。さらに、クランベリーPACsは、野生型LPSに対して3分の1以下の親和性のみを有して、様々な長さの短ポリ多糖鎖を有する2つのLPS変異体(大腸菌からのRa変異体及びSalmonellaからのRc変異体)に結合した。これらの結果は、表2にまとめた。
【0058】
【表2】

【0059】
ポリミキシンBはLPSのリピドA部位へ結合することが知られているので(David et al.,Biochim.Biophys.Acta.,1165,147−152(1992)))、リピドA部位との相互作用は、LPSのクランベリーPACs認識において主要な役割を担っていることは道理にかなっていた。実は、クランベリーPACsは、無傷大腸菌LPSに対するその親和性よりも2倍以上もの相対親和性である、見かけ上0.3μMのIC50を有して、ポリミキシンBへの大腸菌リピドAの結合を効果的に阻害した(表2)。この結果は、LPSに対するクランベリーPACs結合におけるリピドA部位の重要性を確認するものである。
【実施例4】
【0060】
LPS膜結合及びエンドサイトーシスの解析。ヒトCD14及びTLR4/MD2(HEK−CD14−TLR4/MD2;Invivogen)を安定的に発現しているヒト胎児由来腎臓細胞(HEK293)は、チャンバーウェルで増殖させ、0.5μM LH20 PAC(Dial>6K)の非存在下或いは存在下で、1.5時間37℃にて25nM LPS(大腸菌セロタイプO55:B55、シグマ)とインキュベーションした。コントロール実験において、TLR4或いはCD14は、抗TLR4或いは抗CD14モノクローナル抗体(結合部位において500nM、Abcam,Inc.)或いはリピドA(シグマ)との共インキュベーションによって機能的にブロクされた。インキュベーション後、前記細胞はPBSで2回洗浄し(10分)、LPS膜結合を評価するために(3.7%パラホルムアルデヒドで)固定した、若しくはLPS内部移行を決定するために(0.1% Triton X−100で)固定し透過処理した。1%正常ヤギ血清でブロッキングした後、膜結合或いは内部移行LPSは、フルオロセインと共役したヤギ抗−LPS抗体(O/Kセロタイプ特異的、Abcam)を用いて検出した。核はDAPIで対比染色した。画像化は、オリンパスIX−71顕微鏡を用いて実行した。膜関連或いは細胞内蛍光の相対量は、Image Jソフトウェア(NIH,V.1.37)を用いて画像解析することによって定量化した。データは、膜関連或いは内部移行LPSからの平均チャネル蛍光として報告し、各サンプルから10から20細胞の解析(各細胞当たり最低10測定)を示した。合併画像はPhotoshop CS2(バージョン9)を用いて作った。
【0061】
PACsはLPSの膜結合をわずかに阻害し、LPSエンドサイトーシスを有意に阻害する。LPSのわずかな結合に対して、LPS−結合化合物の望ましい特性は、LPS−反応性哺乳類細胞とのLPS相互作用を阻害する能力である。それらの強力なLPS−結合活性に基づいて、クランベリーPACsは、LPS受容体の完全補体を発現した細胞とのLPS相互作用を潜在的に阻害することができるというのは道理にかなっている。細胞結合研究は、CD14及びToll−like受容体4/MD2を発現したHEK 293細胞(HEK−CD14−TLR4/MD2)において実行し、最小非特異的結合(図5(A)、フレーム「LPSなし」)を有する膜結合LPS(図5(A)、フレーム「LPS」)に対応する区別できる染色パターンを明らかにした。リピドAとのLPSの共インキュベーションは、LPS膜結合を有意に減少させない一方、クランベリーPACの存在は、膜結合LPSの量において中程度だが有意な減少(15%以下)を生じた(図5(C))。抗−TLR4機能−撹乱抗体も、LPS結合において中程度の減少を引き起こした(23%以下)一方、クランベリーPACとの組み合わせにおけるこの同じ抗体は、さらなるLPS撹乱には影響を及ぼさなかった。抗−CD14機能−撹乱抗体は、最大度のLPS結合阻害を仲介する(84%阻害以下)ことが見出され、これはLPS膜結合におけるCD14の非常に重要な役割を示すものである。LPS内部移行の解析によって、リピドA及びクランベリーPACは、それぞれ84%及び76%の阻害度で(図5(D))、LPSのエンドサイトーシスを有意に阻害した(図5(B))。抗−TLR4抗体は、LPSエンドサイトーシスの50%以下の阻害を仲介した一方、クランベリーPACとの前記抗体の共インキュベーションは、この阻害をさらに62%以下まで増加した。抗−CD14抗体はLPSエンドサイトーシスの約80%阻害を仲介した。コントロール実験において、PACs及びLPSを含む培養液への、エンドサイトーシス経路のマーカーであるAlexa Fluor 647−標識トランスフェリンの添加によって、エンドソームコンパートメントの強い染色がPACsの存在及び非存在下両方で観察されたが、PACsは正常エンドサイトーシスに対して阻害効果を持たなかったことが示された。従って、PACsは、全体的なエンドサイトーシスに対して阻害効果を有さない一方、LPSのエンドサイトーシスを特に阻害した(図6)。
【0062】
LSPとの細胞相互作用の現在のモデルにおいて、血清に存在するLPS−結合タンパク質(LBP)は、LPSと結合し、LPSを二分受容体複合体であるTLR4/MD2へ順に転移させる、膜−常在受容体CD14へLPSを提示する(Shimazu et al.,J.Exp.Med.,1999,189,1777−1782)。MD2は、受容体のLPS−結合ユニットである一方、TLR4はシグナル伝達構成成分として働く(Shimazu;Nagai et al.,Nat.Immunol.,2002,3,667−672;Schromm et al.,J.Exp.Med.,2001,194,79−88)。TLR4/MD2−LPS複合体は、LPS−誘導性受容体ダウンレギュレーションの一部として、カベオラ−依存性取り込みメカニズムに関連したエンドサイトーシスを最終的に受ける(Shuto et al.,Biochem.Bioph.Res.Co.,2005,338,1402−1409)。TLR4が物理的にLPSを接触するか否かなどの議論が現在あるが、TLR4/MD2及びLPSは、細胞表面上で安定複合体を形成し、MD2に結合するLPSはTLR4シグナル伝達活性(Visintin et al.,J.Immunol.,2005,175,6465−6472)及びLPSエンドサイトーシス(Shuto;Husebye et al.,EMBO J.,2006,25,683−692)に必須であるということは明らかである。従って、クランベリーPACsは、TLR4/MD2複合体とのLPS相互作用を阻害することによってLPSエンドサイトーシスを阻害するという仮説が立てられた。
【0063】
LBP、CD14及びTLR4/MDへの2LPS結合のPAC阻害。ヒトCD14(Cell Sciences)は、4℃で一晩、PBSにおいてELISAプレートへ吸収させた。ヒスチジン−タグ化−ヒトTLR4/MD2(R&D Systems)或いはヒトLPS−結合タンパク質(LBP、Biometec)は、抗−ポリヒスチジンモノクローナル抗体(R&D Systems)の受動的吸収によって調合したELISAプレートへ、4℃で一晩捕獲させた。ウェルは30分間37℃にて、PBSにおける1%正常ヤギ血清でブロッキングした。5nM大腸菌LPS−FITCの結合は、30分間37℃にて、LH20 PACの存在下或いは非存在下でのPBSにおける1%ウシ胎児血清において実行した。存在する場合、可溶化CD14は、最終濃度25nMであった。結合LPS−FITCは、ヤギ抗フルオレセイン−セイヨウワサビペルオキシダーゼ共役体(Abcam)及びテトラ−メチルベンジジン基質(Kierkegaard and Perry)を用いて検出した。血清の非存在下で、CD14或いはTLR4/MD2へのLPS−FITCの結合は、検出限度以下であった。
【0064】
PACsは、CD14及びTLR4/MD2とのLPS相互作用を抑制するが、LPS−結合タンパク質(LBP)との相互作用は抑制しない。結合研究は、その同族受容体とのLPS相互作用に対するクランベリーPACsの効果を提案するために実行した。図7(A)は、固定化LBP、CD14或いはTLR4/MD2への大腸菌LPSの結合を阻害するクランベリーPACsの能力を測定するために行った結合実験の結果を示したものである。クランベリーPACsはLBPとのLPS相互作用に対して優位な効果を示さなかったが、テストした最高PAC濃度(500nM)でCD14へのLPS結合の38%の最高阻害を達成したことが明らかとなった。同じ濃度範囲において、クランベリーPACsは、IC50が20nM PAC以下で、TLR4/MD2とのLPS相互作用を完全に阻害した。さらに、可溶化CD14の存在下で、TLR4/MD2によって結合したLPSの量は約4倍に増加し、これはTLR4/MD2へのLPSの転移を仲介する場合におけるCD14の立証された役割と一致するものであることが見出された(Aderem et al.,Nature,2000,406,782−787;Medzhitov,Nat.Rev.Immunol.,2001,1,135−145)。しかしながら、クランベリーPACがTLR4/MD2へのLPS結合を阻害する程度は変わらないままであり、これは固定化TLR4/MD2へのLPSのCD14仲介性転移を阻害するPACsの能力を示すものである(図7(B)、挿入図)。
【0065】
NF−κB活性化の定量化。HEK−CD14−TLR4/MD2細胞は、5xNF−κB−誘導性プロモーターの制御下で分泌型胎児性アルカリホスファターゼ(SEAP)をコード化した、NF−κB−誘導性受容体プラスミドであるpNiFty2−SEAP(Invivogen)で一過性に形質移入した。細胞は、96ウェルプレートのウェルへ播種し(4x10細胞/ウェル)、Effectene試薬(Qiagen)を用いて製造者の取扱説明書に従って形質移入した。48時間後、前記細胞は、クランベリーPACsの存在下或いは非存在下、2nM LPSで16時間刺激した。SEAP活性は、比色定量性SEAPアッセイキット(Invivogen)を用いて製造者のプロトコールに従って、組織培養上清で測定した。
【0066】
PACsは、LPS誘導性NF−κB活性化を阻害する。クランベリーPACsのLPS結合活性、及び細胞表面受容体とのLPS相互作用のそれらの抑制に基づいて、PACsは、転写因子NF−κBのLPS−誘導性活性化も阻害することができるというのは道理にかなっていた。LPSによるNF−κB活性化は、炎症誘発性サイトカインの発現を導き、敗血症を含む病的状態を最終的に導く代謝性及び生理学的変化を生じる(Baeuerle et al.,Ann.Rev.Immunol.,1994,12,141−179)。図8(A)に示したように、クランベリーPACsは、25nM PACのIC50を有して、2nM LPSで刺激されたHEK−CD14−TLR4/MD2細胞において用量依存的にNF−κBの活性化を、阻害した。さらに、図8(B)におけるデータから、この阻害はLPSの過剰量によって容易に超えられなかったことが示された。クランベリーPACの非存在下で、LPSにおける増加は、NF−κB反応において対応する増加を生じた。LPSの濃度が2nM以上に増加した場合、主としてLPS−誘導性細胞毒性が原因で、その反応におけるわずかな減少が見られた(以下を参照)。0.5nMクランベリーPAC存在下で、NF−κB反応における一致した減少は、全てのLPS濃度において観察された。LPSが3nM(PACの6倍モル過剰)で存在した場合でさえ、NF−κB活性化は、コントロールレベルまで戻らなかった。クランベリーPACが10nMで存在した場合、NF−κB反応における一致した減少(全てのLPS濃度において約50%)は、コントロールと相対して観察された。
【実施例5】
【0067】
細胞毒性アッセイ−細胞毒性は、比色定量細胞増殖アッセイ(CellTiter96(商標)、Promega)を用いて測定した。HEK−CD14−TLR4/MD2細胞は、96ウェルプレートのウェルへ播種し(1x10細胞/ウェル)、製造者の取扱説明書に従って、アッセイ前48時間テスト化合物の用量範囲で培養した。PACsの細胞毒性の検査は、700nMの毒性に対するIC50で明らかになり、100nM以下の濃度では毒性効果は観察されなかった(図8(C))。LPS(6nM以下の毒性に対するIC50)と比較した場合、PACsは100分の1未満の毒性であった。野生LPSとの比較において、リピドAのジホスホリル形態は、3μM以下の濃度で毒性を誘発しなかった。
【実施例6】
【0068】
PACsの固定化及びLPS結合アッセイ−固体支持体に固定化された細菌及び細菌細胞構成成分に効果的に結合するためのPAC物質の能力を決定するために、クランベリー及びブドウジュースからのPACsは、タンパク質固定化に使用された一般的な技術(Rowe et al.,Anal.Chem.,71,3846(1999))の改訂版を用いて、ガラス顕微鏡スライド(導波管)の表面へ共有結合的に接着させた。カテキンモノマー及び緩衝液のみの領域もコントロールとして含めた。簡潔には、前記導波管、ガラス顕微鏡スライド(Daigger,Wheeling、イリノイ州)は、水酸化カリウム/メタノール溶液(Cras et al.,Biosens,Bioelectron.,14,683(1999))への液浸によって洗浄し、次にすすぎ乾燥させた。洗浄された導波管は次に、45分間トルエン中の2%(3−メルカプトプロピル)トリエトキシシラン(Pierce Chemicals,Rockford,イリノイ州)とインキュベーションし、その後すすぎ乾燥させた。前記スライドは、エタノール中の1.8mM N−[p−マレイミドフェニル]イソシアン酸(PMPI)に1時間液浸させた。PMPIのマレイミド基は、イソシアン酸基を遊離させPACsのヒドロキシ基と反応させるシラン反応によって提供されたスルフヒドリル基と反応する。PMPI固定化の後、導波管は脱イオン化水ですすぎ、乾燥させ、以前記載されたPDMSパターン化鋳型に乗せた(Rowe)。クランベリー或いはブドウジュースからの10mg/mL PACsの溶液、10%メタノールを有する10mM PBSにおけるカテキン、及び10%メタノールを有するPBS(ネガティブコントロール)は、4℃で一晩、PDMS鋳型のレーンにおいてインキュベーションさせた。パターン化溶液はPBSを用いてPDMSレーンから流し、前記スライドは脱イオン化水ですすぎ、乾燥させ、使用するまで4℃で保存した。
【0069】
LPSへ結合する固定化PACsの能力は、定常アッセイを用いて検討した。チャネルを有するPDMSフローセルは、各サンプルレーンが各パターン列に曝されるように、パターン化鋳型のフローセルに垂直に取り付けた。サンプルレーンは、PBSですすぎ、PBS中の様々な濃度のLPS−FITC(大腸菌055:B5、Sigma)を注入した。前記LPS−FITCは、1時間レーンにおいてインキュベーションさせ、PBS及び脱イオン化水ですすいだ。スライドは、496nmでの励起、及び515nm以上で回収された発光を、エバネッセント光蛍光分光測定を用いて画像化した。LPS−FITCの濃度範囲での曝露に対して、クランベリー及びブドウジュースからのPACsは、LPS−FITCへ特異的に結合する一方、カテキン及び緩衝液コントロールは、テストした最も高濃度でさえ結合しなかったことが明らかとなった。従って、PACsは、固体支持体へ固定化されたLPSへ結合する能力を保持していた。
【実施例7】
【0070】
PAC及びカテキン固定化−精製PACs及びカテキン(Sigma−Aldrich)は、(N−[p−マレイミドフェニル]イソシアン酸)(PMPI;Pierce)クロスリンク剤を介して、活性化チオール−セファロース(登録商標)4B(Sigma−Aldrich)へ固定化した。セファロース(登録商標)は、脱イオン化水で1時間膨張させた(15mLH2Oにおいて1g乾燥物質)。前記物質は次に、5回の懸濁/遠心分離/デカントサイクルで、新鮮なdI−HOを用いて洗浄した(1グラム乾燥開始物質当たり総50mL)。懸濁はボルテックスを用いて行い、遠心分離工程は5分間3,000gで行った。セファロース(登録商標)物質(1グラム開始物質当たり総容量5mL)は次に、エタノールで3回洗浄した(1グラム開始物質当たり総容量30mL)。前記PMPIクロスリンク剤は、エタノール中の3%ジメチルスルホキシドでの(1グラム開始物質当たり10mL)、チオール基濃度を超えるPMPIの10倍モル過剰を用いた定常撹拌下で、洗浄したセファロース(登録商標)物質と1時間室温でインキュベーションした。インキュベーション後に、遠心分離、デカント及び50%エタノールでのすすぎを3サイクル続けた。セファロース(登録商標)は次に、50%エタノールにおける分析物の10倍モル過剰(1グラム開始物質当たり10mL)を用いて、PAC或いはカテキンと共にエタノール中において4℃で一晩インキュベーションした。最終工程として、前記セファロース(登録商標)は50%エタノール(1グラム開始物質当たり40mL総量)を用いて4サイクルすすぎ、HO中の0.02%アジドナトリウムに再懸濁させた(1グラム開始物質当たり16mL最終容量)。前記物質は、使用するまで4℃暗所で保存した。ビーズセットに対するPAC濃度は、プルシアンブルーアッセイによって決定した。
【実施例8】
【0071】
リポ多糖(LPS)に対する蛍光ベールプルダウンアッセイは、セファロース−固定化PACs及びアガロース−固定化ポリミキシンB(Sigma−Aldrich,St.Louis、ミズーリ州)を用いて、pH8.0での50mM トリスにおいて行った。固定化捕獲分子及びLPSは、室温で1時間、定常撹拌でインキュベーションし、すすぎ、96ウェルプレートへ移した。FITC−標識LPS(大腸菌055:B5;Sigma−Aldrich)の蛍光は、495nm励起及び520nm発光(5nmバンド幅)にて、Tecan XSafireモノクロメータ−ベースミクロプレートリーダーを用いて測定した。
【0072】
プルダウンアッセイで使用するPACビーズは、クランベリー、クランベリージュース、お茶及びブドウジュースからのプロアントシアニジンをセファロースビーズへ固定化することによって産生した。付加的なビーズセットは、分子量6,000以上を有する、クランベリーからのPACsの分画をセファロースビーズへ固定化することによって産生した。これらのビーズを用いて行われたアッセイによって、全ての5ビーズセットは、溶液(50mMトリスpH8)からのFITC−標識LPSを結合するために使用され得ると示された。お茶及びクランベリーからの固定化PACsを有するビーズに対する濃度依存曲線は、図9に示した。カテキンでコーティングしたビーズは、セファロース及びクロスリンク剤へのFITC−LPSの低度の非特異的結合を検証するために使用した。セファロースビーズへのLPSの結合が固定化PACとの特異的相互作用を介していることをさらに検証するために、アッセイ中に可溶化PACを前記サンプル溶液に添加する競合アッセイを用いた。可溶化PACの濃度が増加するにつれて蛍光強度の減少が見られ、これは予想されたようにプルダウンアッセイに起因するものである(図10)。
【0073】
図10において、お茶からの可溶化PACsは、お茶からの固定化PACsで行われたアッセイへ添加された一方、クランベリーからの可溶化PACsはクランベリーからの固定化PACsで行われたアッセイへ添加された。PAC−お茶ビーズによるLPS結合の50%阻害は、6.5μMで生じた一方、クランベリーからのPACsによる結合の50%阻害は、9.8μMで生じた。2つのアッセイタイプにおける捕獲分子濃度は、PAC−お茶ビーズに対しては5.5μMであり、PAC−クランベリービーズに対しては6.0μMであった。捕獲分子濃度及び50%阻害が生じるレベルの間の矛盾は、いくつかの考察が考えられた。捕獲分子濃度は、同じ供給源からの可溶化PACsに行ったプルシアンブルーアッセイと比較して、プルシアンブルーアッセイを用いて推測された。この研究によって、固定化ポリフェノールの全ての構成成分は、溶液中と類似したやり方で利用できると推測された。解析によってさらに、セファロース上で達成された重合度が溶液中で観察されたものと類似しているので、全ての重合度は同等に固定化されたとも推測された。比較的低い可溶化PAC濃度ではFITC−LPSの蛍光をクエンチしないことが見出されたが、固定化PACsは、局所的に高濃度を示していた。この影響は、図9に見ることができる。標的濃度の増加に伴った蛍光強度における増加は、簡単なモデルでは記載できなかった。加えて、目的の波長範囲におけるPAC吸光度が10,000オーダーでのモル吸光計数を有して低いにも関わらず、PACsの局所的な高濃度は、FICT−LPSで利用可能な励起強度を減少する。これら因子の全ては、固定化PACsによるLPS結合の50%阻害を得るために必要な可溶化PACsの予想濃度における、プルシアンブルーアッセイと同様に実際の差異に、若しくはクエンチングと同様に観察された差異に寄与するであろう。
【0074】
PMB−LPS相互作用の阻害(実施例3)によって、PMB結合を阻害するやり方でのLPSとのPACsの相互作用が示唆されたが、これは、LPSのリピドA部位とのPACsの相互作用を保証するものではなかった。この潜在的な相互作用をさらに検討するために、PAC−ビーズを用いたFITC−LPSの存在に対するアッセイを、リピドAの様々な濃度でのPACビーズの平衡後に実行した(図11)。アッセイは、3μg/mL FITC−LPS(約3nM)で行った。リピドAの存在は、お茶及びクランベリーからのPACsに対してそれぞれ100nM及び500nMのIC50値を有して、固定化PACsによるFITC−LPS結合を阻害することが見出された。しかしながら、100μMという高い濃度のリピドAの添加は、FITC−LPS結合の80%以上の阻害を生じることに失敗した。これは、より高い濃度でミセル或いは沈殿を形成するというリピドAの利用不可能性の結果なのか、或いはLPS及び固定化PACsの間の結合相互作用がLPSのリピドA部位に限定されなかったという事実の結果なのか不明である。
【0075】
LPS捕獲に対するセファロース−固定化プロアントシアニジンの有用性を評価するために、商業的に利用可能なアガロース−固定化ポリミキシンBに対してサイドバイサイド比較を行った。図12は、PMB、及びお茶及びクランベリーからのPACsに対する捕獲分子の濃縮物の分画として捕獲されたパーセントLPSを示したものである。固定化PACに結合した場合、FITC−LPS蛍光強度のクエンチングは、前記捕獲物質の直接比較が難しいことが示された。この問題は、前記捕獲物質とのインキュベーション後、溶液中に残存するFITC−LPSの蛍光強度を測定することによって取り組んだ。パーセント捕獲値は、同じように操作した捕獲分子を含まないサンプルに対して、捕獲物質とのインキュベーション後に残存する蛍光を比較することに基づいていた。両タイプのPACビーズは、PMBビーズよりもわずかにより良く実施された。これは、プロアントシアニジンによるLPSのポリミキシンB結合の阻害(実施例3)に基づくものであることが推測された。
【0076】
本発明における様々な変更及び変形例は明らかに上記教示の観点において可能である。従って、請求されている発明は、具体的に記載されていない限りにおいては実施可能であることが理解される。単数形、例えば冠詞「a」、「an」、「the」或いは「said」などにおける請求の構成要素に対するあらゆる参照は、その要素を単数形に制限するものとして解釈されるものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物であって、
プロアントシアニジンと、
前記プロアントシアニジンを固定化する、高分子、高分子集合体、半固体、或いは固体表面と、
を有する、組成物。
【請求項2】
請求項1記載の組成物において、前記高分子は、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、ヌクレオチド、核酸、脂質或いは糖を有するものである。
【請求項3】
請求項1記載の組成物において、前記高分子集合体は、多タンパク質複合体、ウイルス、デンドリマー、或いはナノ粒子を有するものである。
【請求項4】
請求項3記載の組成物において、前記ナノ粒子は、ナノクラスター、ナノ結晶、ナノロッド、ナノ粒子、或いはナノチューブを有するものである。
【請求項5】
請求項1記載の組成物において、前記半固体或いは固体表面は、複数のビーズ、粒子、ロッド、線維、フィラメント、毛細管、チューブ、平面層、或いは導波管を有するものである。
【請求項6】
フィルターであって、
入口及び出口を有するハウジングであって、前記ハウジング通過して液体が流れるものである、ハウジングと、
請求項1記載の組成物と
を有するフィルターであって、
前記ハウジングを通過して液体が流れる場合、前記組成物は前記ハウジング内に維持されるものである、フィルター。
【請求項7】
センサーであって、
請求項1記載の組成物と、
流体装置と、
前記ポリアントシアニジンに対するリポ多糖、リピドA、或いは細菌の結合を検出するメカニズムと
を有する、センサー。
【請求項8】
請求項7記載のセンサーにおいて、検出は、光学メカニズム、紫外線吸光度、可視光吸光度、赤外線吸光度、蛍光、発光、化学発光、偏光、表面プラズモン共鳴、或いは屈折率の変化を介して達成されるものである。
【請求項9】
請求項7記載のセンサーにおいて、検出は、音響メカニズム、表面音波装置、或いは水晶振動子マイクロバランス装置を介して達成されるものである。
【請求項10】
請求項7記載のセンサーにおいて、検出は、電気化学メカニズム、若しくは電流測定法、電位差測定法、或いは伝導度測定法を介して達成されるものである。
【請求項11】
請求項1記載の組成物において、前記組成物における全アントシアニジンの平均重合度は、少なくとも約6である。
【請求項12】
請求項1記載の組成物において、前記組成物における全てのアントシアニジンの平均重合度は、約6から約40である。
【請求項13】
請求項1記載の組成物において、前記組成物における全てのアントシアニジンの平均重合度は、約20から約22である。
【請求項14】
請求項1記載の組成物において、ポリアントシアニジンは、カテキン及びエピカテキンユニットから成るものである。
【請求項15】
方法であって、
請求項1記載の組成物を提供する工程と、
リポ多糖、リピドA、若しくはリポ多糖或いはリピドAを産生する細菌を含むとされるサンプルに前記組成物を曝露する工程と
を有する、方法。
【請求項16】
請求項15記載の方法において、前記組成物は、前記ハウジングを通過する流体に対する入口と出口を有するハウジング内に配置されるものである。
【請求項17】
請求項15記載の方法において、前記組成物は、前記ポリアントシアニジンに対するリポ多糖、リピドA、或いは細菌の結合を検出することが可能である流体装置内に配置されるものである。
【請求項18】
請求項15記載の方法であって、この方法は、さらに、
光学メカニズム、紫外線吸光度、可視光吸光度、赤外線吸光度、蛍光、発光、化学発光、偏光、表面プラズモン共鳴、或いは屈折率の変化を介して、前記リポ多糖、リピドA、或いは細菌への前記プロアントシアニジンの結合を検出する工程を有するものである。
【請求項19】
請求項15記載の方法であって、この方法は、さらに、
音響メカニズム、表面音波装置、或いは水晶振動子マイクロバランス装置を通じて、前記リポ多糖、リピドA、或いは細菌に対する前記ポリアントシアニジンの結合を検出する工程を有するものである。
【請求項20】
請求項15記載の方法であって、この方法は、さらに、
電気化学メカニズム、若しくは電流測定、電位差測定或いは伝導度測定検出器を通じて、前記リポ多糖、リピドA、或いは細菌に対する前記ポリアントシアニジンの結合を検出する工程を有するものである。
【請求項21】
請求項15記載の方法において、全ポリアントシアニジンの平均重合度は、少なくとも約6である。
【請求項22】
請求項15記載の方法において、全ポリアントシアニジンの平均重合度は、約6から約40である。
【請求項23】
請求項15記載の方法において、全ポリアントシアニジンの平均重合度は、約20から約22である。
【請求項24】
請求項15記載の方法において、前記サンプルは、臨床サンプルである。
【請求項25】
請求項24記載の方法において、前記臨床サンプルは、血液、血漿、血清、リンパ液、或いは髄液を含むものである。
【請求項26】
請求項15記載の方法において、前記サンプルは、薬学的調合物である。
【請求項27】
請求項15記載の方法において、前記サンプルは、幼児或いは免疫抑制された個人向けの食品或いは飲料である。
【請求項28】
組成物であって、
プロアントシアニジン化合物を有し、
前記組成物中の全プロアントシアニジンの平均重合度は、少なくとも約6である、組成物。
【請求項29】
請求項28記載の組成物において、前記組成物中の前記全プロアントシアニジンの平均重合度は、約6から約40である。
【請求項30】
請求項28記載の組成物において、前記組成物中の前記全プロアントシアニジンの平均重合度は、約20から約22である。
【請求項31】
請求項28記載の組成物において、プロアントシアニジンは、カテキン及びエピカテキンユニットから成るものである。
【請求項32】
方法であって、
プロアントシアニジンを含む組成物を、免疫抑制された患者、或いは敗血症或いは敗血症性ショックと診断された患者に投与する工程を有する、方法、
【請求項33】
請求項32記載の方法において、前記組成物における全プロアントシアニジンの平均重合度は、少なくとも約6である。
【請求項34】
請求項32記載の方法において、前記組成物における全プロアントシアニジンの平均重合度は、約6から約40である。
【請求項35】
請求項32記載の方法において、前記組成物における全プロアントシアニジンの平均重合度は、約20から約22である。
【請求項36】
請求項32記載の方法において、ポリアントシアニジンは、カテキン及びエピカテキンユニットから成るものである。
【請求項37】
請求項32記載の方法において、前記プロアントシアニジンは、抗生物質、化学療法剤、放射線核種、免疫抑制剤、血漿分離交換治療、或いはそれらの組み合わせとの併用療法において投与されるものである。
【請求項38】
請求項32記載の方法において、前記プロアントシアニジンは、抗生物質、化学療法、放射線核種、或いは免疫抑制剤と結合するものである。
【請求項39】
方法であって、
プロアントシアニジン化合物を含む組成物を、グラム陰性細菌感染と診断された患者に投与する工程を有するものであり、
前記組成物における全プロアントシアニジンの平均重合度は、少なくとも約6である、方法。
【請求項40】
請求項39記載の方法において、前記組成物における全プロアントシアニジンの平均重合度は、約6から約40である。
【請求項41】
請求項39記載の方法において、前記組成物における全プロアントシアニジンの平均重合度は、約20から約22である。
【請求項42】
請求項39記載の方法において、プロアントシアニジンは、カテキン及びエピカテキンユニットから成るものである。
【請求項43】
請求項39記載の方法において、前記プロアントシアニジンは、抗生物質、化学療法剤、放射線核種、免疫抑制剤、血漿分離交換治療、或いはそれらの組み合わせとの併用療法において投与されるものである。
【請求項44】
請求項39記載の方法において、前記プロアントシアニジンは、抗生物質、化学療法、放射線核種、或いは免疫抑制剤と結合するものである

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4A】
image rotate

【図4B】
image rotate

【図4C】
image rotate

【図5A】
image rotate

【図5B】
image rotate

【図5C】
image rotate

【図5D】
image rotate

【図6A】
image rotate

【図6B】
image rotate

【図7A】
image rotate

【図7B】
image rotate

【図8A】
image rotate

【図8B】
image rotate

【図8C】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公表番号】特表2010−505090(P2010−505090A)
【公表日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−527574(P2009−527574)
【出願日】平成19年9月7日(2007.9.7)
【国際出願番号】PCT/US2007/077833
【国際公開番号】WO2008/031004
【国際公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願人】(500238790)アメリカ合衆国 (13)
【Fターム(参考)】