結晶成長方法、結晶成長装置、積層型結晶成長装置およびこれらによって製造された結晶薄膜を有する半導体デバイス。
【課題】転位密度の小さな結晶薄膜を製造することのできる結晶成長方法および結晶成長装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る結晶成長方法は、基板6上に液体原料12cを供給し、基板6上に液体原料12cから結晶を析出させることによって、結晶薄膜を得る結晶成長方法において、基板6上に供給された液体原料12cの一部を、液体原料12cの重力によって、基板6から取り除いた後に、基板6上に残存する残存液体原料12dの結晶成長を開始する製造方法である。
【解決手段】本発明に係る結晶成長方法は、基板6上に液体原料12cを供給し、基板6上に液体原料12cから結晶を析出させることによって、結晶薄膜を得る結晶成長方法において、基板6上に供給された液体原料12cの一部を、液体原料12cの重力によって、基板6から取り除いた後に、基板6上に残存する残存液体原料12dの結晶成長を開始する製造方法である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結晶成長方法、結晶成長装置、積層型結晶成長装置およびこれらによって製造された結晶薄膜を有する半導体デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、レーザダイオードや発光ダイオードの開発が盛んになされており、特に青色のレーザダイオードや発光ダイオードは、近年の劇的な性能の向上に伴って、高密度光ディスク、ディスプレイ、各種照明などへの実用に至り、今後もコストパフォーマンスの向上による用途の広がりが期待されている。
【0003】
青色の発光デバイスの発光材料には一般的に窒化ガリウムなどの半導体材料が用いられるが、窒化ガリウムはバンドギャップが大きく、インジウムやアルミニウムの混合量を変えて、バンドギャップを調整することにより、可視領域の広い波長範囲の発光が可能なため、青色以外の発光デバイスの発光材料としても注目されている。また、窒化ガリウムはバンドギャップが大きいことおよび電子の移動度が大きいことによって、高出力、高周波数のトランジスタ動作が可能なため、電子デバイス材料としても注目されている。
【0004】
ここで、高品質な発光デバイスや電子デバイスを提供するためには、半導体材料の原料を結晶成長させ、高品質な結晶を得ることが重要となる。ここでいう高品質な結晶とは転位密度や結晶軸の揺らぎが小さい結晶のことであり、一般的にはその厚みが厚くなればなるほど高品質な結晶となるが、製造コストの面からはできるだけ薄い結晶であることが望ましい。
【0005】
従来の青色発光ダイオードの発光層は、一般的に、サファイア基板上に窒化ガリウムを主材料とする結晶を気相エピタキシャル成長法によって形成され、この方法で得られる結晶の転位密度は、通常約108cm−2〜109cm−2と大きな値となっている。このように転位密度が大きい主な理由は、サファイアと窒化ガリウムとの格子定数差が大きいからである。
【0006】
結晶の転位密度を低減する製造方法として、例えば、特許文献1に、三次元的なファセット構造を利用して、転位を減少させるラテラルオーバグロース法が開示されている。特許文献1に開示された製造方法によれば、得られる結晶の転位密度を106cm−2以下にすることが可能であるものの、結晶の厚みは数百μm以上必要とされ、さらに、製造工程が複雑であるというデメリットも存在する。
【0007】
また、気相エピタキシャル成長法とは別の製造方法として、液相で結晶成長を行う結晶の製造方法も提案されている。例えば、特許文献2には、窒素含有ガス雰囲気下で、ガリウムおよびナトリウムの混合融解液中で、ガリウムと窒素とを反応させ、窒化ガリウム結晶を生成するナトリウムフラックス法が開示されている。この製造方法によれば、転位密度を104cm−2程度の値にすることができる。
【0008】
図15は、特許文献2の製造方法に用いられる結晶成長装置100を示す全体図である。結晶成長装置100は、原料ガスタンク117に圧力調整器111が連結され、圧力調整器111は、電気炉114内に備えられた耐圧耐熱容器113と連結されている。また、圧力調整器111と耐圧耐熱容器113との間には、リーク用バルブ116が設置されている。
【0009】
原料ガスタンク117にはGaN結晶の原料となる窒素含有ガスが充填されている。また、耐圧耐熱容器113としては、例えば、ステンレス容器を用いることができる。耐圧耐熱容器113は、これを内包する電気炉114によって加熱される。
【0010】
耐圧耐熱容器113内には、坩堝115が設置されており、坩堝115の中には、グローブボックスの中で、所定量が秤量されたガリウムおよびナトリウムが配置されている。この坩堝115において結晶成長がなされることとなる。
【0011】
次に、結晶の製造工程の一例を以下に示す。まず、原料ガスタンク117中の100atm〜150atmである窒素含有ガスが、圧力調整器111によって、100atm以下に調節された後、耐圧耐熱容器113中に供給される。次に、耐圧耐熱容器113は電気炉114によって加熱される。
【0012】
電気炉114による加熱によって、耐圧耐熱容器113内の坩堝115において、ガリウムおよびナトリウムの混合融解液が生じている。この混合融解液に対し、供給された窒素含有ガス中の窒素が溶解し、ガリウムと反応することによって、GaN結晶が成長する。結晶の成長時間は、特に限定されず10時間〜200時間とすることができる。成長終了後、原料ガスタンク117からの窒素含有ガスの供給を停止すると共に、電気炉114での加熱を停止し、坩堝115内の温度を室温まで下げた後にGaN結晶を取り出す。また、坩堝115内に予め、種結晶となるGaN結晶を入れ、GaN結晶の製造を行ってもよい。
【特許文献1】特開2001−102307号公報(平成13年4月13日公開)
【特許文献2】特開2005−306709号公報(平成17年11月4日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
半導体デバイスの性能を向上させるためには、例えば、発光デバイスであれば発光層の下地となる下地表面層との格子定数差が小さく、また、下地層の転位密度や結晶揺らぎが小さい必要があり、その下地層の厚みについてはコストの観点から薄い方が好ましい。
【0014】
しかしながら、上記従来の結晶成長方法では、薄膜であって転位密度が小さい結晶を製造することができないという問題を有している。
【0015】
この点を具体的に説明すると、特許文献1の結晶成長方法では、薄くて欠陥密度が小さい結晶層を得ることは困難であり、また、特許文献2のナトリウムフラックス法では、薄い結晶成長層を得ようとする場合にその厚みを制御することが困難である、という課題がある。
【0016】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであって、本発明の目的は、簡易な結晶成長方法または製造装置によって、転位密度の小さな結晶薄膜を製造することができる結晶成長方法、結晶成長装置および積層型結晶成長装置を提供することである。また、その結晶成長方法または結晶成長装置によって得られた結晶膜を用いることにより、低コストで高性能な半導体デバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の結晶成長方法は、上記課題を解決するために、基板上に液体原料を供給し、上記基板上に液体原料から結晶を析出させることによって、結晶薄膜を得る結晶成長方法において、上記基板上に供給された液体原料の一部を、液体原料の重力によって、上記基板から取り除いた後に、基板上に残存する液体の原料の結晶成長を開始することを特徴としている。
【0018】
上記の発明によれば、基板上に供給された液体原料の一部を、液体原料の重力によって、基板から取り除くため、基板上に液体原料を所望の厚みの薄層にて残存させることができる。このように液体原料の重力を用いて結晶の成長を行うため、簡易な結晶成長装置によって、転位密度の小さな結晶薄膜を成長させることができる。
【0019】
なお、密閉状態で上記製造方法を用いれば、大気暴露がないため結晶薄膜の周囲雰囲気を変えることなく連続的に結晶化を行うことができ、不所望な不純物を取り込むこともなく高品質な結晶薄膜を得ることができる。
【0020】
また、本発明の結晶成長方法では、上記液体原料に対し、さらに気体原料を反応させ、結晶成長させることが好ましい。
【0021】
これにより、用いることのできる反応の自由度を増すことができ、種々の結晶薄膜を得ることが可能となる。
【0022】
また、本発明の結晶成長方法では、上記基板が浸漬されるよう液体原料を供給し、上記液体原料の一部を、液体原料の重力によって、反応容器外へ排出することにより取り除くことが好ましい。
【0023】
基板が浸漬されるよう液体原料を供給するため、その後、液体原料の重力によって、容易に液体原料の一部を基板上に残存させることができる。このため、より簡易に結晶薄膜を得ることが可能となる。
【0024】
また、本発明に係る結晶成長装置は、上記課題を解決するために、基板上に供給された液体原料から結晶を析出させることによって、結晶薄膜を得る結晶成長装置であって、上記基板を収容するための反応容器を備え、上記反応容器の底部には、液体原料を排出させる排出部が備えられており、上記排出部には開口が形成され、排出部には開口に嵌合されている閉塞部材が備えられており、上記閉塞部材の融点は、液体原料の融点以上、反応容器の融点未満であることを特徴としている。
【0025】
上記結晶成長装置によれば、結晶成長時において、基板上に液体原料の供給を受け、基板上に供給された液体原料の一部を、液体原料の重力によって、基板から取り除くことができ、結晶成長時において、基板上に液体原料の一部を残存させることができる。また、余剰の液体原料は、排出部から排出されるため、基板上に転位密度の小さな結晶薄膜を得ることができる。さらに、上記結晶成長が行われる際に、閉塞部材が融解するため容易に液体原料を開口から排出することが可能となる。
【0026】
また、本発明の結晶成長装置では、上記閉塞部材は、液体原料となる材料によって構成されていることが好ましい。
【0027】
これにより、閉塞部材は液体原料と同じ材料で構成されているため、閉塞部材が融解された液体原料を再度結晶成長に利用することができ、低コストにて結晶成長を行うことができる。
【0028】
また、本発明の積層型結晶成長装置は、上記反応容器が互いに積層されている。
【0029】
これにより、結晶成長を複数の基板上で行うことができ、効率よく結晶成長を行うことが可能である。
【0030】
また、本発明の半導体デバイスは、上記結晶成長方法もしくは上記結晶成長装置によって製造された結晶薄膜を有する。
【0031】
このため、低コストで得られた高品質な結晶薄膜上に半導体デバイスを作製するわけであるから、最終製品である半導体デバイスのコストパフォーマンスを向上することができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明の結晶成長方法は、基板上に供給された液体原料の一部を、液体原料の重力によって、上記基板から取り除いた後に、基板上に残存する液体の原料の結晶成長を開始する製造方法である。
【0033】
それゆえ、基板上に供給された液体原料の一部を、液体原料の重力によって、基板から取り除くため、基板上に液体原料の一部を所望の厚みの薄層にて残存させることができる。また、このように液体原料自身の質量に基づく重力を用いて不要な液体原料を取り除くため、簡易な結晶成長装置によって、転位密度の小さな結晶薄膜を成長させることができるという効果を奏する。
【0034】
本発明の結晶成長装置は、基板上に供給された液体原料から結晶を析出させることによって、結晶薄膜を得る結晶成長装置であって、上記基板を収容するための反応容器を備え、上記反応容器の底部には、液体原料を排出させる排出部が備えられており、上記排出部には開口が形成され、排出部には開口に嵌合されている閉塞部材が備えられており、上記閉塞部材の融点は、液体原料の融点以上、反応容器の融点未満である。
【0035】
それゆえ、結晶成長時において、基板上に液体原料の供給を受け、基板上に供給された液体原料の一部を、液体原料の重力によって、基板から取り除くことができ、結晶成長時において、基板上に液体原料の一部を残存させることができる。また、余剰の液体原料は、排出部から排出されるため、基板上に転位密度の小さな結晶薄膜を得ることができる。さらに、上記結晶成長が行われる際に、閉塞部材が融解するため容易に液体原料を開口から排出するという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
本発明の一実施形態について図1〜図14に基づいて説明すれば、以下の通りである。
【0037】
<結晶成長装置>
図1は、本実施の形態に係る結晶成長装置30を示す断面図である。結晶成長装置30は、反応装置20を備えており、反応装置20は、チャンバ1の中にヒータ2と共に設置された耐圧容器3の中に設置されている。また、チャンバ1および耐圧容器3を貫通して、ガス供給配管9およびガス排気配管10が耐圧容器3内に連結されている。さらに、ガス供給配管9には、圧力調整器11が設置されている。また、図示しないが、ガス供給配管9およびガス排気配管10の反応装置20に対し反対側の端部は、それぞれ窒素ガス供給源および真空ポンプに連結されている。
【0038】
チャンバ1、ヒータ2、耐圧容器3、ガス供給配管9、ガス排気配管10および圧力調整器11は、結晶成長装置に用いられる従来公知の部材を適宜用いることができ、特に限定されるものではない。例えば、耐圧容器3の材料としては、ステンレスやハステロイを用いることができる。また、反応容器4の材料としては、高純度アルミナを用いることができる。
【0039】
チャンバ1は、その内部にヒータ2と耐圧容器3とを備えており、ヒータ2によって耐圧容器3内の反応装置20を加熱することができる構成となっている。また、窒素ガス供給源からガス供給配管9を介し、窒素含有ガスを反応装置20に供給することができる。なお、窒素含有ガスは、圧力調整器11によって所望の圧力に調整される。ガス排気配管10は、図示しない真空ポンプと連結しており、反応装置20内を減圧条件下にすることができる。
【0040】
反応装置20は、結晶成長が行われる反応容器4および結晶成長に用いられない原料が収容される原料受容器5によって構成されている。また、反応容器4には、結晶を成長させる場となる基板6が配置されている。さらに、反応容器4と原料受容器5との間には、開口7が形成されており、開口7と適合されているキャップ(閉塞部材)8が開口7を覆うように設置されている。
【0041】
反応容器4は、結晶成長が行われる部材であり、結晶成長時の高温雰囲気下において、耐圧性および耐熱性を有していればよい。また、原料受容器5は、結晶製造時において、余剰の液体原料を収容する部材である。反応容器4および原料受容器5の材料としては、高純度アルミナなどを用いることができるが、特に限定されるものではない。
【0042】
基板6は、結晶成長が施される下地となる部材である。基板6は、反応容器4の底部には接しておらず、反応容器4の底部から上方に設置されている。このように基板6を設置するためには、例えば、図示しないが、基板6と反応容器4の底部とを連結する支持部材を設ければよい。
【0043】
基板6の材料としては、例えば、サファイアや、炭化ケイ素、シリコンなどを用いることができ、ここではサファイア製の未鏡面研磨面を用いた基板が用いられている。
【0044】
開口7は、後述する結晶薄膜の液体原料12cが反応容器4から排出されるために、液体原料12cが通過することができればよく、特に限定されるものではない。液体原料12cが反応容器4から排出されるため、反応容器4の端部から開口7へかけては、緩やかな傾斜が設けられている。反応装置20においては、反応容器4には開口7が一箇所形成されているが、設置箇所は特に限定されるものではなく、反応容器4の大きさおよび使用する液体原料12cの使用量などの条件によって適宜増加させればよい。また、液体原料12cは液体であるので、開口7の形状は特に限定されるものではない。
【0045】
キャップ8は開口7を閉塞させる部材である。キャップ8は開口7に嵌合されており、その結果、開口7を閉塞させている。キャップ8としては、まず開口7に嵌合されることが必要であり、さらにキャップ8の融点が、ガリウムなどの液体原料およびナトリウムなどの融剤の融点以上、反応容器4の融点以下であることを要する。ここではキャップ8は銅によって構成されている。
【0046】
また、ガス供給配管9、ガス排気配管10および圧力調整器11としては、従来公知の物を用いればよい。なお、耐圧容器3の内部の温度は、図示しない温度測定器によって測定される。
【0047】
図3は、反応装置20を示すより詳細な断面図である。同図に示す反応装置20aは、反応装置20と同様の構成であるが、結晶成長時には、基板6上に結晶原料であるガリウム12aおよび融剤であるナトリウム12bが配置されている。同図において加熱はなされていないため、これらは固体の状態である。結晶成長に用いられる結晶原料や融剤としては特に限定されるものではなく、適宜選定することができる。
【0048】
さらに、上述した反応装置20は互いに積層され、積層型結晶成長装置を構成することもできる。図7は積層型結晶成長装置が備える反応装置21aを示す断面図である。反応装置21aは反応装置20と同様に、反応容器4、原料受容器5、基板6、開口7およびキャップ(閉塞部材)8bを備えている。反応装置20と異なる点としては、キャップ8bがガリウムとナトリウムの合金で構成されている点および開口7の下部に、さらに基板6、開口7およびキャップ8が備えられ、反応容器4および反応容器4aが積層されている点である。なお、上記積層型結晶成長装置は、反応容器4および反応容器4aが2段に積層された構成となっているが、積層数は特に限定されるものではなく3段以上とすることもできる。
【0049】
<結晶成長方法>
以下、結晶成長装置30の動作および結晶成長方法について図1〜図5を用いて説明する。以下に示す結晶膜成長方法を第1の結晶膜成長方法とする。図2は、耐圧容器3内の温度制御パターンを示している。また、図3〜図5は、結晶成長装置30の内部の態様を示す断面図である。
【0050】
まず、図3に示す反応装置20aのように、モル比率が20:80であるガリウム12aおよびナトリウム12bを基板6上に配置する。ナトリウム12bはガリウム融液への窒素溶解量を増加させるために用いられる。
【0051】
次に、耐圧容器3を密閉した後に、耐圧容器3内のガスの置換を十分に行う。このガスの置換は高純度の窒素ガスを用いて行われ、これを約0.5atm充填する。この状態では、耐圧容器3内の加熱は行われておらず、図2におけるグラフは室温である温度aの状態である。
【0052】
次に、ヒータ2によって、耐圧容器3を1100℃まで加熱する。この時、耐圧容器3内の圧力は温度に応じた圧力となっている。
【0053】
図4は、図2における1100℃までに加熱される途中段階である温度bにおける結晶成長装置30の内部での反応装置20bの態様を示している。反応装置20bが加熱されるに従って、ガリウム12aは約30℃、ナトリウムは約100で液体となり、ガリウム12aおよびナトリウム12bが融解されてなる液体原料12cに基板6が浸漬された状態となる。
【0054】
図5は、図2における1100℃である温度cにおける反応装置20cの内部の態様を示している。温度が1100℃近傍になると、銅製のキャップ8はその形状を保つことができず、変形しながらキャップ8aとなり原料受容器5へと抜け落ちることとなる。キャップ8の抜け落ちに伴って、液体原料12cの一部も液体原料12cの重力によって、反応容器4に設けられた傾斜に沿って、開口7から原料受容器5へと移動することとなる。「液体原料の重力によって」とは、上記のように、液体原料12cに積極的に外部から力を作用させるのではなく、液体原料12c自身の質量に基づく重力を利用することを意味する。このように、本結晶成長装置30では、液体原料の重力を用いて結晶の成長を行うため、簡易な構造の結晶成長装置によって、転位密度の小さな結晶薄膜を成長させることができる。
【0055】
ここで、液体原料12cの一部は原料受容器5へと移動するが、基板6上には液体原料12cの基板6に対する濡れ性に応じた液体原料12cが保持され、液体原料12cの膜が形成されるがこれを残存液体原料12dとする。またこの残存液体原料12dの量を本明細書において保持量と称する。この保持量は、基板6の大きさ、材料、表面の凹凸形状および表面処理、液体原料12cの種類および温度等によって変化するため、これらの条件を変更することによって、適宜調節することが可能である。一例として、鏡面研磨していないサファイア基板を基板6として用いた場合には、保持量を50umとすることができる。
【0056】
次に、図2における温度dである850℃に反応装置20cの温度を低下させ、圧力調整器11を用いて、耐圧容器3内の圧力が10atmとなるように調整する。この環境下において、残存液体原料12dに気体原料である窒素が溶解し、ガリウムと反応することによって、窒化ガリウムが結晶となって析出することとなる。
【0057】
上記の反応に要する時間としては、ガリウムとナトリウムとの残存液体原料12dの厚さにも影響されるため、特定することは困難であるが、通常約2時間にて反応が終了する。
【0058】
その後、図2に示すグラフの温度eが示すように、内部の温度を室温にまで冷却する。冷却の際には、反応容器4内部の圧力を維持しながら冷却を行うことが好ましい。これによって、窒素の再蒸発を防止することができ、高品質の結晶膜を得ることができるからである。具体的には、圧力調整器11を用いて、耐圧容器3内部の圧力を10atmの圧力に維持することが挙げられる。
【0059】
その後、耐圧容器3の内部を室温および常圧に戻した後、耐圧容器3を開封し、基板6を取り出し、基板6の面に残存したナトリウムの除去処理をおこなうことにより、窒化ガリウムの薄膜結晶を得ることができる。
【0060】
また、上記の結晶成長装置30の動作および結晶成長方法においては、耐圧容器3を1100℃に昇温した後に、850℃の温度にてガリウムと窒素との反応を行ったが、他の手法として、耐圧容器3を1100℃に昇温させる前に、液体原料12cに窒素を溶解させることもできる。以下に示す結晶成長方法を第2の結晶成長方法とする。図6は、この場合の耐圧容器3内の温度を示すグラフである。なお、窒素ガスをガス置換するまでは、上記図1〜図5を用いて説明した場合と同様である。
【0061】
図6に示すように、反応容器4の内部を室温fから温度を上昇させ(温度g)、温度hで示す800℃まで昇温させる。ここで、ガリウムとナトリウムを十分に混合し、さらには窒素を液体原料12cに十分溶解させるために、耐圧容器3内の圧力が10atmとなるように調整し、800℃の状態を2時間程度維持する。その後、再度昇温を開始し(温度i)、温度jで示す1100℃近傍になると銅製のキャップ8はその形状を保つことができなくなり、変形しながら原料受容器5に抜け落ちることとなる。
【0062】
反応容器4には開口7に向けて緩やかな傾斜がつけられており、キャップ8の抜け落ちに伴って、液体原料12cは開口7を通り原料受容器5に移動する。ここで、基板6上には、残存液体原料12dが残存することとなる。
【0063】
次に、図6の温度kに示すように、反応容器4の内部の温度を室温へ徐々に冷却させる。この過程において、残存液体原料12dであるナトリウムガリウム溶液中の窒化ガリウムの溶解量が飽和溶解量を上回ると、窒化ガリウム結晶となって析出する。冷却の際には、反応容器4内部の圧力を維持しながら冷却を行うことが好ましいことは上述した結晶膜の製造の手順と同様で、例えば、10atmの圧力を維持しながら、室温まで冷却し、室温に冷却された後、圧力を1atmに戻すことが挙げられる。この手順で冷却することにより、窒素の再蒸発を防止することができる。耐圧容器3内部の状態を室温および常圧に戻した後に、耐圧容器3を開封し、基板6を取り出し、基板6の面に取り残されたナトリウムの除去処理をおこなうことにより、窒化ガリウムの薄膜結晶を得ることができる。
【0064】
また、図7に示す反応装置21aを備える積層型結晶成長装置を用いることによっても、結晶成長装置30と同様に結晶成長を行い、薄膜結晶を得ることができる。反応装置21aは、反応容器4および反応容器4aが積層された構成を有しているが、上段のキャップ8bはガリウムとナトリウムの合金で構成されている。このため、図8の反応装置21bに示すように、キャップ8bは、ガリウム12aおよびナトリウム12bが融解されてなる液体原料12cに融解されることができる。この場合、液体原料12cはさらに中段の反応容器4aに移動し、中段に配置された基板6を浸漬することとなる。その後、図9の反応装置21cに示すように、銅製のキャップ8の溶解温度である1100℃に耐圧容器3の内部の温度を上昇させることによって、銅製のキャップ8の形状が変形し、キャップ8aとなって原料受容器5へと抜け落ちる。それに伴い液体原料12cの重力によって、液体原料12cも原料受容器5へと抜け落ち、2箇所の基板6には残存液体原料12dが残り、その後、結晶薄膜が得られることとなる。
【0065】
本実施の形態に係る積層型結晶成長装置によれば、同時に複数の基板上に結晶膜を形成することができる。また、上段で使用された液体原料12cを中段でも再度使用することができるため、効率よく結晶膜を製造することが可能である。
【0066】
<得られた結晶薄膜の評価>
第1の結晶成長方法によって得られた結晶薄膜を、光学顕微鏡、カーソードルミネッセンスによるマッピング、X線回折装置によって評価した。得られた結晶薄膜には結晶粒界が随所に見られるものの、結晶粒界内の転位密度は10^6cm−2以下であり非常に小さな値であった。また、図10は(0004)面のロッキングカーブをとった図で、横縦軸をω角度、縦軸を強度とするグラフである。この図よりロッキングカーブの半値幅は150Arcsecと高品質な結晶薄膜であることが分かる。
【0067】
また、結晶薄膜断面をSEMによって詳細に観察したところ、基板表面と結晶薄膜層は不連続な成長となっており、このことがむしろ不所望な歪を内部に抱えることない結晶成長を可能にしたと思われる。また、酸素などが混入したときに見られる着色は見られなかった。
【0068】
<結晶薄膜を有する半導体デバイス>
次に、本実施の形態に係る結晶成長装置または結晶成長装置によって得られた結晶薄膜を用いた発光ダイオードについて図11〜図14を用いて説明する。
【0069】
図11は、本実施の形態に係る一例であり、同図に示すように、基板6上には、上記第1の結晶成長方法によって得られた結晶薄膜層6aが形成されている。さらに、結晶薄膜層6a上には、従来の製造方法によって窒化物半導体層が形成された様子を示している。すなわち、MOCVD装置を用いて、トリメチルガリウムとアンモニアを原料に、またシランをドーパントとしてn型窒化ガリウム層(n−GaN)6bが、上記原料にトリメチルインジウムを加え成長温度と原料供給量を変えながら、障壁層と井戸層が繰り返される活性層(InGaN)6cが、トリメチルアルミニウム、トリメチルガリウム、アンモニアを原料にビスエチルシクロペンタジエニルマグネシウムをドーパントとしたキャリアブロック層(p−AlGaN)6d及びp型窒化ガリウム層(p−GaN)6eが順次形成されている。
【0070】
次に、図12に示すように、p型窒化ガリウム層6e上に、p電極、光反射層、接着層からなる積層6fを形成し、さらに接着層に金属基板6gをリフローにより接着した後、サファイア製の基板6を剥離する。なお、基板6と結晶薄膜層6aとは密着していないので、界面にせん断力を与えることにより容易に剥離することができる。最後に、結晶薄膜層6aを研磨により除去し、図13に示すように、n電極6hを形成することによって発光ダイオードを構成する。
【0071】
従来方法、すなわちMOCVD装置を用いた窒化ガリウムからなるバッファ層の上に作られた活性層と上記に説明した本発明による活性層のフォトルミネッセンスの強度を、励起光強度を変えて比較した。図14は、横軸に励起光強度を、縦軸に活性層のフォトルミネッセンスの強度を示している。同図に示すように本発明による活性層は励起光強度を増加したときのフォトルミネッセンス強度の低下が少ない結果となった。このことは半導体デバイスとしての高出力化、高効率化が可能であることを示していると考えられる。
【0072】
以上、本実施の形態に係る結晶成長方法および結晶成長装置の一例として、これらを用いた窒化ガリウムの結晶薄膜の製造およびこれを有する発光ダイオードについて説明したが、液体原料を薄層形成した後に、大気等の不所望なガスに暴露することなく結晶成長を行う工程に本発明を適宜用いることが可能であり、レーザダイオードなどの発光デバイスや、高出力IC、高周波ICなどの電子デバイスにも適用することができ、特に上記に限定されるものではない。
【0073】
また、本発明は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明に係る結晶成長方法または結晶成長装置によれば、薄層で高品質な結晶膜を得ることができる。また、この結晶薄膜を用いて作成される半導体デバイスは高品質であり、高性能なデバイスとなり得るから、低コストで高性能な半導体デバイスを製造することが可能となる。このため、結晶薄膜および半導体デバイスに係る分野において利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本実施の形態に係る結晶成長装置の一実施形態を示す断面図である。
【図2】本発明の形態に係る結晶成長装置を用いた第1の結晶成長方法に関わる温度制御パターンである。
【図3】本実施の形態に係る結晶薄膜の製造工程における反応装置の態様を示す断面図である。
【図4】本実施の形態に係る結晶薄膜の製造工程における反応装置の態様を示す断面図である。
【図5】本実施の形態に係る結晶薄膜の製造工程における反応装置の態様を示す断面図である。
【図6】本発明の形態に係る結晶成長装置を用いた第2の結晶成長方法に関わる温度制御パターンである。
【図7】本実施の形態に係る結晶薄膜の製造工程における積層型結晶成長装置が備える反応装置の態様を示す断面図である。
【図8】本実施の形態に係る結晶薄膜の製造工程における積層型結晶成長装置が備える反応装置の態様を示す断面図である。
【図9】本実施の形態に係る結晶薄膜の製造工程における積層型結晶成長装置が備える反応装置の態様を示す断面図である。
【図10】本発明の結晶成長方法によって製造された結晶薄膜のX線のロッキングカーブを示すグラフである。
【図11】本実施の形態に係る結晶薄膜を用いた発光ダイオードの中間部材を示す断面図である。
【図12】本実施の形態に係る結晶薄膜を用いた発光ダイオードの中間部材を示す断面図である。
【図13】本実施の形態に係る結晶薄膜を用いた発光ダイオードを示す断面図である。
【図14】本実施の形態に係る結晶薄膜を用いた発光ダイオードの活性層のフォトルミネッセンスの強度を示すグラフである。
【図15】従来の結晶成長装置を示す断面図である。
【符号の説明】
【0076】
1 チャンバ
2 ヒータ
3 耐圧容器
4・4a 反応容器
5 原料受容器
6 基板
7 開口
8・8a・8b キャップ
9 ガス供給配管
10 ガス排気配管
11 圧力調整器
12a ガリウム(結晶原料)
12b ナトリウム
12c 液体原料
12d 残存液体原料
20・20a・20b・20c・21a・21b・21c 反応装置
30 結晶成長装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、結晶成長方法、結晶成長装置、積層型結晶成長装置およびこれらによって製造された結晶薄膜を有する半導体デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、レーザダイオードや発光ダイオードの開発が盛んになされており、特に青色のレーザダイオードや発光ダイオードは、近年の劇的な性能の向上に伴って、高密度光ディスク、ディスプレイ、各種照明などへの実用に至り、今後もコストパフォーマンスの向上による用途の広がりが期待されている。
【0003】
青色の発光デバイスの発光材料には一般的に窒化ガリウムなどの半導体材料が用いられるが、窒化ガリウムはバンドギャップが大きく、インジウムやアルミニウムの混合量を変えて、バンドギャップを調整することにより、可視領域の広い波長範囲の発光が可能なため、青色以外の発光デバイスの発光材料としても注目されている。また、窒化ガリウムはバンドギャップが大きいことおよび電子の移動度が大きいことによって、高出力、高周波数のトランジスタ動作が可能なため、電子デバイス材料としても注目されている。
【0004】
ここで、高品質な発光デバイスや電子デバイスを提供するためには、半導体材料の原料を結晶成長させ、高品質な結晶を得ることが重要となる。ここでいう高品質な結晶とは転位密度や結晶軸の揺らぎが小さい結晶のことであり、一般的にはその厚みが厚くなればなるほど高品質な結晶となるが、製造コストの面からはできるだけ薄い結晶であることが望ましい。
【0005】
従来の青色発光ダイオードの発光層は、一般的に、サファイア基板上に窒化ガリウムを主材料とする結晶を気相エピタキシャル成長法によって形成され、この方法で得られる結晶の転位密度は、通常約108cm−2〜109cm−2と大きな値となっている。このように転位密度が大きい主な理由は、サファイアと窒化ガリウムとの格子定数差が大きいからである。
【0006】
結晶の転位密度を低減する製造方法として、例えば、特許文献1に、三次元的なファセット構造を利用して、転位を減少させるラテラルオーバグロース法が開示されている。特許文献1に開示された製造方法によれば、得られる結晶の転位密度を106cm−2以下にすることが可能であるものの、結晶の厚みは数百μm以上必要とされ、さらに、製造工程が複雑であるというデメリットも存在する。
【0007】
また、気相エピタキシャル成長法とは別の製造方法として、液相で結晶成長を行う結晶の製造方法も提案されている。例えば、特許文献2には、窒素含有ガス雰囲気下で、ガリウムおよびナトリウムの混合融解液中で、ガリウムと窒素とを反応させ、窒化ガリウム結晶を生成するナトリウムフラックス法が開示されている。この製造方法によれば、転位密度を104cm−2程度の値にすることができる。
【0008】
図15は、特許文献2の製造方法に用いられる結晶成長装置100を示す全体図である。結晶成長装置100は、原料ガスタンク117に圧力調整器111が連結され、圧力調整器111は、電気炉114内に備えられた耐圧耐熱容器113と連結されている。また、圧力調整器111と耐圧耐熱容器113との間には、リーク用バルブ116が設置されている。
【0009】
原料ガスタンク117にはGaN結晶の原料となる窒素含有ガスが充填されている。また、耐圧耐熱容器113としては、例えば、ステンレス容器を用いることができる。耐圧耐熱容器113は、これを内包する電気炉114によって加熱される。
【0010】
耐圧耐熱容器113内には、坩堝115が設置されており、坩堝115の中には、グローブボックスの中で、所定量が秤量されたガリウムおよびナトリウムが配置されている。この坩堝115において結晶成長がなされることとなる。
【0011】
次に、結晶の製造工程の一例を以下に示す。まず、原料ガスタンク117中の100atm〜150atmである窒素含有ガスが、圧力調整器111によって、100atm以下に調節された後、耐圧耐熱容器113中に供給される。次に、耐圧耐熱容器113は電気炉114によって加熱される。
【0012】
電気炉114による加熱によって、耐圧耐熱容器113内の坩堝115において、ガリウムおよびナトリウムの混合融解液が生じている。この混合融解液に対し、供給された窒素含有ガス中の窒素が溶解し、ガリウムと反応することによって、GaN結晶が成長する。結晶の成長時間は、特に限定されず10時間〜200時間とすることができる。成長終了後、原料ガスタンク117からの窒素含有ガスの供給を停止すると共に、電気炉114での加熱を停止し、坩堝115内の温度を室温まで下げた後にGaN結晶を取り出す。また、坩堝115内に予め、種結晶となるGaN結晶を入れ、GaN結晶の製造を行ってもよい。
【特許文献1】特開2001−102307号公報(平成13年4月13日公開)
【特許文献2】特開2005−306709号公報(平成17年11月4日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
半導体デバイスの性能を向上させるためには、例えば、発光デバイスであれば発光層の下地となる下地表面層との格子定数差が小さく、また、下地層の転位密度や結晶揺らぎが小さい必要があり、その下地層の厚みについてはコストの観点から薄い方が好ましい。
【0014】
しかしながら、上記従来の結晶成長方法では、薄膜であって転位密度が小さい結晶を製造することができないという問題を有している。
【0015】
この点を具体的に説明すると、特許文献1の結晶成長方法では、薄くて欠陥密度が小さい結晶層を得ることは困難であり、また、特許文献2のナトリウムフラックス法では、薄い結晶成長層を得ようとする場合にその厚みを制御することが困難である、という課題がある。
【0016】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであって、本発明の目的は、簡易な結晶成長方法または製造装置によって、転位密度の小さな結晶薄膜を製造することができる結晶成長方法、結晶成長装置および積層型結晶成長装置を提供することである。また、その結晶成長方法または結晶成長装置によって得られた結晶膜を用いることにより、低コストで高性能な半導体デバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の結晶成長方法は、上記課題を解決するために、基板上に液体原料を供給し、上記基板上に液体原料から結晶を析出させることによって、結晶薄膜を得る結晶成長方法において、上記基板上に供給された液体原料の一部を、液体原料の重力によって、上記基板から取り除いた後に、基板上に残存する液体の原料の結晶成長を開始することを特徴としている。
【0018】
上記の発明によれば、基板上に供給された液体原料の一部を、液体原料の重力によって、基板から取り除くため、基板上に液体原料を所望の厚みの薄層にて残存させることができる。このように液体原料の重力を用いて結晶の成長を行うため、簡易な結晶成長装置によって、転位密度の小さな結晶薄膜を成長させることができる。
【0019】
なお、密閉状態で上記製造方法を用いれば、大気暴露がないため結晶薄膜の周囲雰囲気を変えることなく連続的に結晶化を行うことができ、不所望な不純物を取り込むこともなく高品質な結晶薄膜を得ることができる。
【0020】
また、本発明の結晶成長方法では、上記液体原料に対し、さらに気体原料を反応させ、結晶成長させることが好ましい。
【0021】
これにより、用いることのできる反応の自由度を増すことができ、種々の結晶薄膜を得ることが可能となる。
【0022】
また、本発明の結晶成長方法では、上記基板が浸漬されるよう液体原料を供給し、上記液体原料の一部を、液体原料の重力によって、反応容器外へ排出することにより取り除くことが好ましい。
【0023】
基板が浸漬されるよう液体原料を供給するため、その後、液体原料の重力によって、容易に液体原料の一部を基板上に残存させることができる。このため、より簡易に結晶薄膜を得ることが可能となる。
【0024】
また、本発明に係る結晶成長装置は、上記課題を解決するために、基板上に供給された液体原料から結晶を析出させることによって、結晶薄膜を得る結晶成長装置であって、上記基板を収容するための反応容器を備え、上記反応容器の底部には、液体原料を排出させる排出部が備えられており、上記排出部には開口が形成され、排出部には開口に嵌合されている閉塞部材が備えられており、上記閉塞部材の融点は、液体原料の融点以上、反応容器の融点未満であることを特徴としている。
【0025】
上記結晶成長装置によれば、結晶成長時において、基板上に液体原料の供給を受け、基板上に供給された液体原料の一部を、液体原料の重力によって、基板から取り除くことができ、結晶成長時において、基板上に液体原料の一部を残存させることができる。また、余剰の液体原料は、排出部から排出されるため、基板上に転位密度の小さな結晶薄膜を得ることができる。さらに、上記結晶成長が行われる際に、閉塞部材が融解するため容易に液体原料を開口から排出することが可能となる。
【0026】
また、本発明の結晶成長装置では、上記閉塞部材は、液体原料となる材料によって構成されていることが好ましい。
【0027】
これにより、閉塞部材は液体原料と同じ材料で構成されているため、閉塞部材が融解された液体原料を再度結晶成長に利用することができ、低コストにて結晶成長を行うことができる。
【0028】
また、本発明の積層型結晶成長装置は、上記反応容器が互いに積層されている。
【0029】
これにより、結晶成長を複数の基板上で行うことができ、効率よく結晶成長を行うことが可能である。
【0030】
また、本発明の半導体デバイスは、上記結晶成長方法もしくは上記結晶成長装置によって製造された結晶薄膜を有する。
【0031】
このため、低コストで得られた高品質な結晶薄膜上に半導体デバイスを作製するわけであるから、最終製品である半導体デバイスのコストパフォーマンスを向上することができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明の結晶成長方法は、基板上に供給された液体原料の一部を、液体原料の重力によって、上記基板から取り除いた後に、基板上に残存する液体の原料の結晶成長を開始する製造方法である。
【0033】
それゆえ、基板上に供給された液体原料の一部を、液体原料の重力によって、基板から取り除くため、基板上に液体原料の一部を所望の厚みの薄層にて残存させることができる。また、このように液体原料自身の質量に基づく重力を用いて不要な液体原料を取り除くため、簡易な結晶成長装置によって、転位密度の小さな結晶薄膜を成長させることができるという効果を奏する。
【0034】
本発明の結晶成長装置は、基板上に供給された液体原料から結晶を析出させることによって、結晶薄膜を得る結晶成長装置であって、上記基板を収容するための反応容器を備え、上記反応容器の底部には、液体原料を排出させる排出部が備えられており、上記排出部には開口が形成され、排出部には開口に嵌合されている閉塞部材が備えられており、上記閉塞部材の融点は、液体原料の融点以上、反応容器の融点未満である。
【0035】
それゆえ、結晶成長時において、基板上に液体原料の供給を受け、基板上に供給された液体原料の一部を、液体原料の重力によって、基板から取り除くことができ、結晶成長時において、基板上に液体原料の一部を残存させることができる。また、余剰の液体原料は、排出部から排出されるため、基板上に転位密度の小さな結晶薄膜を得ることができる。さらに、上記結晶成長が行われる際に、閉塞部材が融解するため容易に液体原料を開口から排出するという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
本発明の一実施形態について図1〜図14に基づいて説明すれば、以下の通りである。
【0037】
<結晶成長装置>
図1は、本実施の形態に係る結晶成長装置30を示す断面図である。結晶成長装置30は、反応装置20を備えており、反応装置20は、チャンバ1の中にヒータ2と共に設置された耐圧容器3の中に設置されている。また、チャンバ1および耐圧容器3を貫通して、ガス供給配管9およびガス排気配管10が耐圧容器3内に連結されている。さらに、ガス供給配管9には、圧力調整器11が設置されている。また、図示しないが、ガス供給配管9およびガス排気配管10の反応装置20に対し反対側の端部は、それぞれ窒素ガス供給源および真空ポンプに連結されている。
【0038】
チャンバ1、ヒータ2、耐圧容器3、ガス供給配管9、ガス排気配管10および圧力調整器11は、結晶成長装置に用いられる従来公知の部材を適宜用いることができ、特に限定されるものではない。例えば、耐圧容器3の材料としては、ステンレスやハステロイを用いることができる。また、反応容器4の材料としては、高純度アルミナを用いることができる。
【0039】
チャンバ1は、その内部にヒータ2と耐圧容器3とを備えており、ヒータ2によって耐圧容器3内の反応装置20を加熱することができる構成となっている。また、窒素ガス供給源からガス供給配管9を介し、窒素含有ガスを反応装置20に供給することができる。なお、窒素含有ガスは、圧力調整器11によって所望の圧力に調整される。ガス排気配管10は、図示しない真空ポンプと連結しており、反応装置20内を減圧条件下にすることができる。
【0040】
反応装置20は、結晶成長が行われる反応容器4および結晶成長に用いられない原料が収容される原料受容器5によって構成されている。また、反応容器4には、結晶を成長させる場となる基板6が配置されている。さらに、反応容器4と原料受容器5との間には、開口7が形成されており、開口7と適合されているキャップ(閉塞部材)8が開口7を覆うように設置されている。
【0041】
反応容器4は、結晶成長が行われる部材であり、結晶成長時の高温雰囲気下において、耐圧性および耐熱性を有していればよい。また、原料受容器5は、結晶製造時において、余剰の液体原料を収容する部材である。反応容器4および原料受容器5の材料としては、高純度アルミナなどを用いることができるが、特に限定されるものではない。
【0042】
基板6は、結晶成長が施される下地となる部材である。基板6は、反応容器4の底部には接しておらず、反応容器4の底部から上方に設置されている。このように基板6を設置するためには、例えば、図示しないが、基板6と反応容器4の底部とを連結する支持部材を設ければよい。
【0043】
基板6の材料としては、例えば、サファイアや、炭化ケイ素、シリコンなどを用いることができ、ここではサファイア製の未鏡面研磨面を用いた基板が用いられている。
【0044】
開口7は、後述する結晶薄膜の液体原料12cが反応容器4から排出されるために、液体原料12cが通過することができればよく、特に限定されるものではない。液体原料12cが反応容器4から排出されるため、反応容器4の端部から開口7へかけては、緩やかな傾斜が設けられている。反応装置20においては、反応容器4には開口7が一箇所形成されているが、設置箇所は特に限定されるものではなく、反応容器4の大きさおよび使用する液体原料12cの使用量などの条件によって適宜増加させればよい。また、液体原料12cは液体であるので、開口7の形状は特に限定されるものではない。
【0045】
キャップ8は開口7を閉塞させる部材である。キャップ8は開口7に嵌合されており、その結果、開口7を閉塞させている。キャップ8としては、まず開口7に嵌合されることが必要であり、さらにキャップ8の融点が、ガリウムなどの液体原料およびナトリウムなどの融剤の融点以上、反応容器4の融点以下であることを要する。ここではキャップ8は銅によって構成されている。
【0046】
また、ガス供給配管9、ガス排気配管10および圧力調整器11としては、従来公知の物を用いればよい。なお、耐圧容器3の内部の温度は、図示しない温度測定器によって測定される。
【0047】
図3は、反応装置20を示すより詳細な断面図である。同図に示す反応装置20aは、反応装置20と同様の構成であるが、結晶成長時には、基板6上に結晶原料であるガリウム12aおよび融剤であるナトリウム12bが配置されている。同図において加熱はなされていないため、これらは固体の状態である。結晶成長に用いられる結晶原料や融剤としては特に限定されるものではなく、適宜選定することができる。
【0048】
さらに、上述した反応装置20は互いに積層され、積層型結晶成長装置を構成することもできる。図7は積層型結晶成長装置が備える反応装置21aを示す断面図である。反応装置21aは反応装置20と同様に、反応容器4、原料受容器5、基板6、開口7およびキャップ(閉塞部材)8bを備えている。反応装置20と異なる点としては、キャップ8bがガリウムとナトリウムの合金で構成されている点および開口7の下部に、さらに基板6、開口7およびキャップ8が備えられ、反応容器4および反応容器4aが積層されている点である。なお、上記積層型結晶成長装置は、反応容器4および反応容器4aが2段に積層された構成となっているが、積層数は特に限定されるものではなく3段以上とすることもできる。
【0049】
<結晶成長方法>
以下、結晶成長装置30の動作および結晶成長方法について図1〜図5を用いて説明する。以下に示す結晶膜成長方法を第1の結晶膜成長方法とする。図2は、耐圧容器3内の温度制御パターンを示している。また、図3〜図5は、結晶成長装置30の内部の態様を示す断面図である。
【0050】
まず、図3に示す反応装置20aのように、モル比率が20:80であるガリウム12aおよびナトリウム12bを基板6上に配置する。ナトリウム12bはガリウム融液への窒素溶解量を増加させるために用いられる。
【0051】
次に、耐圧容器3を密閉した後に、耐圧容器3内のガスの置換を十分に行う。このガスの置換は高純度の窒素ガスを用いて行われ、これを約0.5atm充填する。この状態では、耐圧容器3内の加熱は行われておらず、図2におけるグラフは室温である温度aの状態である。
【0052】
次に、ヒータ2によって、耐圧容器3を1100℃まで加熱する。この時、耐圧容器3内の圧力は温度に応じた圧力となっている。
【0053】
図4は、図2における1100℃までに加熱される途中段階である温度bにおける結晶成長装置30の内部での反応装置20bの態様を示している。反応装置20bが加熱されるに従って、ガリウム12aは約30℃、ナトリウムは約100で液体となり、ガリウム12aおよびナトリウム12bが融解されてなる液体原料12cに基板6が浸漬された状態となる。
【0054】
図5は、図2における1100℃である温度cにおける反応装置20cの内部の態様を示している。温度が1100℃近傍になると、銅製のキャップ8はその形状を保つことができず、変形しながらキャップ8aとなり原料受容器5へと抜け落ちることとなる。キャップ8の抜け落ちに伴って、液体原料12cの一部も液体原料12cの重力によって、反応容器4に設けられた傾斜に沿って、開口7から原料受容器5へと移動することとなる。「液体原料の重力によって」とは、上記のように、液体原料12cに積極的に外部から力を作用させるのではなく、液体原料12c自身の質量に基づく重力を利用することを意味する。このように、本結晶成長装置30では、液体原料の重力を用いて結晶の成長を行うため、簡易な構造の結晶成長装置によって、転位密度の小さな結晶薄膜を成長させることができる。
【0055】
ここで、液体原料12cの一部は原料受容器5へと移動するが、基板6上には液体原料12cの基板6に対する濡れ性に応じた液体原料12cが保持され、液体原料12cの膜が形成されるがこれを残存液体原料12dとする。またこの残存液体原料12dの量を本明細書において保持量と称する。この保持量は、基板6の大きさ、材料、表面の凹凸形状および表面処理、液体原料12cの種類および温度等によって変化するため、これらの条件を変更することによって、適宜調節することが可能である。一例として、鏡面研磨していないサファイア基板を基板6として用いた場合には、保持量を50umとすることができる。
【0056】
次に、図2における温度dである850℃に反応装置20cの温度を低下させ、圧力調整器11を用いて、耐圧容器3内の圧力が10atmとなるように調整する。この環境下において、残存液体原料12dに気体原料である窒素が溶解し、ガリウムと反応することによって、窒化ガリウムが結晶となって析出することとなる。
【0057】
上記の反応に要する時間としては、ガリウムとナトリウムとの残存液体原料12dの厚さにも影響されるため、特定することは困難であるが、通常約2時間にて反応が終了する。
【0058】
その後、図2に示すグラフの温度eが示すように、内部の温度を室温にまで冷却する。冷却の際には、反応容器4内部の圧力を維持しながら冷却を行うことが好ましい。これによって、窒素の再蒸発を防止することができ、高品質の結晶膜を得ることができるからである。具体的には、圧力調整器11を用いて、耐圧容器3内部の圧力を10atmの圧力に維持することが挙げられる。
【0059】
その後、耐圧容器3の内部を室温および常圧に戻した後、耐圧容器3を開封し、基板6を取り出し、基板6の面に残存したナトリウムの除去処理をおこなうことにより、窒化ガリウムの薄膜結晶を得ることができる。
【0060】
また、上記の結晶成長装置30の動作および結晶成長方法においては、耐圧容器3を1100℃に昇温した後に、850℃の温度にてガリウムと窒素との反応を行ったが、他の手法として、耐圧容器3を1100℃に昇温させる前に、液体原料12cに窒素を溶解させることもできる。以下に示す結晶成長方法を第2の結晶成長方法とする。図6は、この場合の耐圧容器3内の温度を示すグラフである。なお、窒素ガスをガス置換するまでは、上記図1〜図5を用いて説明した場合と同様である。
【0061】
図6に示すように、反応容器4の内部を室温fから温度を上昇させ(温度g)、温度hで示す800℃まで昇温させる。ここで、ガリウムとナトリウムを十分に混合し、さらには窒素を液体原料12cに十分溶解させるために、耐圧容器3内の圧力が10atmとなるように調整し、800℃の状態を2時間程度維持する。その後、再度昇温を開始し(温度i)、温度jで示す1100℃近傍になると銅製のキャップ8はその形状を保つことができなくなり、変形しながら原料受容器5に抜け落ちることとなる。
【0062】
反応容器4には開口7に向けて緩やかな傾斜がつけられており、キャップ8の抜け落ちに伴って、液体原料12cは開口7を通り原料受容器5に移動する。ここで、基板6上には、残存液体原料12dが残存することとなる。
【0063】
次に、図6の温度kに示すように、反応容器4の内部の温度を室温へ徐々に冷却させる。この過程において、残存液体原料12dであるナトリウムガリウム溶液中の窒化ガリウムの溶解量が飽和溶解量を上回ると、窒化ガリウム結晶となって析出する。冷却の際には、反応容器4内部の圧力を維持しながら冷却を行うことが好ましいことは上述した結晶膜の製造の手順と同様で、例えば、10atmの圧力を維持しながら、室温まで冷却し、室温に冷却された後、圧力を1atmに戻すことが挙げられる。この手順で冷却することにより、窒素の再蒸発を防止することができる。耐圧容器3内部の状態を室温および常圧に戻した後に、耐圧容器3を開封し、基板6を取り出し、基板6の面に取り残されたナトリウムの除去処理をおこなうことにより、窒化ガリウムの薄膜結晶を得ることができる。
【0064】
また、図7に示す反応装置21aを備える積層型結晶成長装置を用いることによっても、結晶成長装置30と同様に結晶成長を行い、薄膜結晶を得ることができる。反応装置21aは、反応容器4および反応容器4aが積層された構成を有しているが、上段のキャップ8bはガリウムとナトリウムの合金で構成されている。このため、図8の反応装置21bに示すように、キャップ8bは、ガリウム12aおよびナトリウム12bが融解されてなる液体原料12cに融解されることができる。この場合、液体原料12cはさらに中段の反応容器4aに移動し、中段に配置された基板6を浸漬することとなる。その後、図9の反応装置21cに示すように、銅製のキャップ8の溶解温度である1100℃に耐圧容器3の内部の温度を上昇させることによって、銅製のキャップ8の形状が変形し、キャップ8aとなって原料受容器5へと抜け落ちる。それに伴い液体原料12cの重力によって、液体原料12cも原料受容器5へと抜け落ち、2箇所の基板6には残存液体原料12dが残り、その後、結晶薄膜が得られることとなる。
【0065】
本実施の形態に係る積層型結晶成長装置によれば、同時に複数の基板上に結晶膜を形成することができる。また、上段で使用された液体原料12cを中段でも再度使用することができるため、効率よく結晶膜を製造することが可能である。
【0066】
<得られた結晶薄膜の評価>
第1の結晶成長方法によって得られた結晶薄膜を、光学顕微鏡、カーソードルミネッセンスによるマッピング、X線回折装置によって評価した。得られた結晶薄膜には結晶粒界が随所に見られるものの、結晶粒界内の転位密度は10^6cm−2以下であり非常に小さな値であった。また、図10は(0004)面のロッキングカーブをとった図で、横縦軸をω角度、縦軸を強度とするグラフである。この図よりロッキングカーブの半値幅は150Arcsecと高品質な結晶薄膜であることが分かる。
【0067】
また、結晶薄膜断面をSEMによって詳細に観察したところ、基板表面と結晶薄膜層は不連続な成長となっており、このことがむしろ不所望な歪を内部に抱えることない結晶成長を可能にしたと思われる。また、酸素などが混入したときに見られる着色は見られなかった。
【0068】
<結晶薄膜を有する半導体デバイス>
次に、本実施の形態に係る結晶成長装置または結晶成長装置によって得られた結晶薄膜を用いた発光ダイオードについて図11〜図14を用いて説明する。
【0069】
図11は、本実施の形態に係る一例であり、同図に示すように、基板6上には、上記第1の結晶成長方法によって得られた結晶薄膜層6aが形成されている。さらに、結晶薄膜層6a上には、従来の製造方法によって窒化物半導体層が形成された様子を示している。すなわち、MOCVD装置を用いて、トリメチルガリウムとアンモニアを原料に、またシランをドーパントとしてn型窒化ガリウム層(n−GaN)6bが、上記原料にトリメチルインジウムを加え成長温度と原料供給量を変えながら、障壁層と井戸層が繰り返される活性層(InGaN)6cが、トリメチルアルミニウム、トリメチルガリウム、アンモニアを原料にビスエチルシクロペンタジエニルマグネシウムをドーパントとしたキャリアブロック層(p−AlGaN)6d及びp型窒化ガリウム層(p−GaN)6eが順次形成されている。
【0070】
次に、図12に示すように、p型窒化ガリウム層6e上に、p電極、光反射層、接着層からなる積層6fを形成し、さらに接着層に金属基板6gをリフローにより接着した後、サファイア製の基板6を剥離する。なお、基板6と結晶薄膜層6aとは密着していないので、界面にせん断力を与えることにより容易に剥離することができる。最後に、結晶薄膜層6aを研磨により除去し、図13に示すように、n電極6hを形成することによって発光ダイオードを構成する。
【0071】
従来方法、すなわちMOCVD装置を用いた窒化ガリウムからなるバッファ層の上に作られた活性層と上記に説明した本発明による活性層のフォトルミネッセンスの強度を、励起光強度を変えて比較した。図14は、横軸に励起光強度を、縦軸に活性層のフォトルミネッセンスの強度を示している。同図に示すように本発明による活性層は励起光強度を増加したときのフォトルミネッセンス強度の低下が少ない結果となった。このことは半導体デバイスとしての高出力化、高効率化が可能であることを示していると考えられる。
【0072】
以上、本実施の形態に係る結晶成長方法および結晶成長装置の一例として、これらを用いた窒化ガリウムの結晶薄膜の製造およびこれを有する発光ダイオードについて説明したが、液体原料を薄層形成した後に、大気等の不所望なガスに暴露することなく結晶成長を行う工程に本発明を適宜用いることが可能であり、レーザダイオードなどの発光デバイスや、高出力IC、高周波ICなどの電子デバイスにも適用することができ、特に上記に限定されるものではない。
【0073】
また、本発明は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明に係る結晶成長方法または結晶成長装置によれば、薄層で高品質な結晶膜を得ることができる。また、この結晶薄膜を用いて作成される半導体デバイスは高品質であり、高性能なデバイスとなり得るから、低コストで高性能な半導体デバイスを製造することが可能となる。このため、結晶薄膜および半導体デバイスに係る分野において利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本実施の形態に係る結晶成長装置の一実施形態を示す断面図である。
【図2】本発明の形態に係る結晶成長装置を用いた第1の結晶成長方法に関わる温度制御パターンである。
【図3】本実施の形態に係る結晶薄膜の製造工程における反応装置の態様を示す断面図である。
【図4】本実施の形態に係る結晶薄膜の製造工程における反応装置の態様を示す断面図である。
【図5】本実施の形態に係る結晶薄膜の製造工程における反応装置の態様を示す断面図である。
【図6】本発明の形態に係る結晶成長装置を用いた第2の結晶成長方法に関わる温度制御パターンである。
【図7】本実施の形態に係る結晶薄膜の製造工程における積層型結晶成長装置が備える反応装置の態様を示す断面図である。
【図8】本実施の形態に係る結晶薄膜の製造工程における積層型結晶成長装置が備える反応装置の態様を示す断面図である。
【図9】本実施の形態に係る結晶薄膜の製造工程における積層型結晶成長装置が備える反応装置の態様を示す断面図である。
【図10】本発明の結晶成長方法によって製造された結晶薄膜のX線のロッキングカーブを示すグラフである。
【図11】本実施の形態に係る結晶薄膜を用いた発光ダイオードの中間部材を示す断面図である。
【図12】本実施の形態に係る結晶薄膜を用いた発光ダイオードの中間部材を示す断面図である。
【図13】本実施の形態に係る結晶薄膜を用いた発光ダイオードを示す断面図である。
【図14】本実施の形態に係る結晶薄膜を用いた発光ダイオードの活性層のフォトルミネッセンスの強度を示すグラフである。
【図15】従来の結晶成長装置を示す断面図である。
【符号の説明】
【0076】
1 チャンバ
2 ヒータ
3 耐圧容器
4・4a 反応容器
5 原料受容器
6 基板
7 開口
8・8a・8b キャップ
9 ガス供給配管
10 ガス排気配管
11 圧力調整器
12a ガリウム(結晶原料)
12b ナトリウム
12c 液体原料
12d 残存液体原料
20・20a・20b・20c・21a・21b・21c 反応装置
30 結晶成長装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に液体原料を供給し、
上記基板上に液体原料から結晶を析出させることによって、結晶薄膜を得る結晶成長方法において、
上記基板上に供給された液体原料の一部を、液体原料の重力によって、上記基板から取り除いた後に、基板上に残存する液体原料の結晶成長を開始することを特徴とする結晶成長方法。
【請求項2】
上記液体原料に対し、さらに気体原料を反応させ、結晶成長させることを特徴とする請求項1に記載の結晶成長方法。
【請求項3】
上記基板が浸漬されるよう液体原料を供給し、
上記液体原料の一部を、液体原料の重力によって、反応容器外へ排出することにより取り除くことを特徴とする請求項1または2に記載の結晶成長方法。
【請求項4】
基板上に供給された液体原料から結晶を析出させることによって、結晶薄膜を得る結晶成長装置であって、
上記基板を収容するための反応容器を備え、
上記反応容器の底部には、液体原料を排出させる排出部が備えられており、
上記排出部には開口が形成され、排出部には開口に嵌合されている閉塞部材が備えられており、
上記閉塞部材の融点は、液体原料の融点以上、反応容器の融点未満であることを特徴とする結晶成長装置。
【請求項5】
上記閉塞部材は、液体原料となる材料によって構成されていることを特徴とする請求項4に記載の結晶成長装置。
【請求項6】
請求項4または5に記載の反応容器が互いに積層されていることを特徴とする積層型結晶成長装置。
【請求項7】
請求項1〜3の何れか1項に記載の結晶成長方法もしくは請求項4〜6の何れか1項に記載の結晶成長装置によって製造された結晶薄膜を有することを特徴とする半導体デバイス。
【請求項1】
基板上に液体原料を供給し、
上記基板上に液体原料から結晶を析出させることによって、結晶薄膜を得る結晶成長方法において、
上記基板上に供給された液体原料の一部を、液体原料の重力によって、上記基板から取り除いた後に、基板上に残存する液体原料の結晶成長を開始することを特徴とする結晶成長方法。
【請求項2】
上記液体原料に対し、さらに気体原料を反応させ、結晶成長させることを特徴とする請求項1に記載の結晶成長方法。
【請求項3】
上記基板が浸漬されるよう液体原料を供給し、
上記液体原料の一部を、液体原料の重力によって、反応容器外へ排出することにより取り除くことを特徴とする請求項1または2に記載の結晶成長方法。
【請求項4】
基板上に供給された液体原料から結晶を析出させることによって、結晶薄膜を得る結晶成長装置であって、
上記基板を収容するための反応容器を備え、
上記反応容器の底部には、液体原料を排出させる排出部が備えられており、
上記排出部には開口が形成され、排出部には開口に嵌合されている閉塞部材が備えられており、
上記閉塞部材の融点は、液体原料の融点以上、反応容器の融点未満であることを特徴とする結晶成長装置。
【請求項5】
上記閉塞部材は、液体原料となる材料によって構成されていることを特徴とする請求項4に記載の結晶成長装置。
【請求項6】
請求項4または5に記載の反応容器が互いに積層されていることを特徴とする積層型結晶成長装置。
【請求項7】
請求項1〜3の何れか1項に記載の結晶成長方法もしくは請求項4〜6の何れか1項に記載の結晶成長装置によって製造された結晶薄膜を有することを特徴とする半導体デバイス。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2009−62231(P2009−62231A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−231992(P2007−231992)
【出願日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
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