説明

給水蛇口、及び、無菌水供給装置

【課題】狭流路からの細菌の浸入を確実に防止しつつメンテナンスの容易化を図ることのできる給水蛇口とその給水蛇口を用いる無菌水供給装置を提供する。
【解決手段】除菌フィルター3を介して水道管1に接続される給水導入口5と、外部に水を給水する給水出口6と、前記給水導入口5と給水出口6の間に介装されて流路を開閉する止水弁7を設ける。止水弁7から給水出口6に至る狭い流路をスリーブ管16によって構成し、スリーブ管16の周囲にヒータ18を設ける。スリーブ管16は脱着可能とし、内部にスケールが溜まったときに新たなものと交換する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、医療施設等において用いられる給水蛇口、及び、その給水蛇口を用いる無菌水供給装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
医療施設等で用いられる無菌水供給装置として、無菌水タンク内の無菌水を殺菌ランプによって殺菌しつつ循環用本管で循環させ、この循環用本管から分岐した取水用枝管に給水蛇口を設けたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
このような無菌水供給装置に用いられる給水蛇口として、蛇口本体の給水導入口と給水出口の間に止水弁を設け、止水弁から給水出口に至る通路を幅の狭い狭流路とするとともに、その狭流路の周囲にヒータを設けたものが開発されている。この給水蛇口は、止水弁の閉弁直後に狭流路をヒータで加熱し、給水出口を常に乾燥状態に維持することによって給水出口からの細菌の浸入を防止する(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開平10−338952号公報
【特許文献2】実公昭60−14837号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、無菌水製造のための大型設備を設置することなく、水道管(上水)に除菌フィルターを介して給水蛇口を接続した簡易的な無菌水供給装置の開発が進められている。
しかし、この無菌水供給装置に上記従来の給水蛇口をそのまま用いた場合、除菌フィルターを通過した水道水中のミネラル分がスケールとして狭流路に付着し、それによって給水出口からの水の出が悪化してしまう。特に、狭流路はもともと内径が小さいうえ、ヒータによって付着水を早期乾燥させるため、スケールによる給水悪化が生じ易い。このため、上記従来の給水蛇口をそのまま用いた場合には、スケールを取り除く煩雑なメンテナンス作業を頻繁に行わなければならない。
【0005】
そこでこの発明は、狭流路からの細菌の浸入を確実に防止しつつメンテナンスの容易化を図ることのできる給水蛇口とその給水蛇口を用いる無菌水供給装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決する請求項1に記載の発明は、給水源に接続される給水導入口と、外部に水を取り出す給水出口と、前記給水導入口と給水出口の間に介装されて流路を開閉する止水弁と、前記止水弁から給水出口に至る流路である狭流路と、この狭流路の近傍に設けられて同狭流路を加熱するヒータと、を備えた給水蛇口において、前記狭流路を脱着自在な管材によって構成したことを特徴とする。
この発明の給水蛇口の場合、止水弁が開かれると、給水導入口に流入した水が狭流路を通って外部に供給される。そして、止水弁が閉じられると、狭流路がヒータによって加熱され、狭流路内に残留している水が早期に加熱乾燥される。経時使用によって狭流路内のスケールの付着量が増加した場合、狭流路を構成する管材自体を給水蛇口から取り外し、新たな管材と交換する。
【0007】
請求項2に記載の発明は、給水蛇口が除菌フィルターを介して水道管に接続され、前記給水蛇口が、前記水道管側に接続される給水導入口と、外部に水を取り出す給水出口と、前記給水導入口と給水出口の間に介装されて流路を開閉する止水弁と、前記止水弁から給水出口に至る流路である狭流路と、この狭流路の近傍に設けられて同狭流路を加熱するヒータと、を備えて成る無菌水供給装置において、前記狭流路を脱着自在な管材によって構成したことを特徴とする。
この発明の無菌水供給装置の場合、給水蛇口の止水弁が開かれると、除菌フィルターを通過して給水蛇口の給水導入口に流入した水が狭流路を通って外部に供給される。給水蛇口の止水弁が閉じられると、狭流路がヒータによって加熱され、狭流路内に残留している水が加熱乾燥される。狭流路内のスケールの付着量が増加した場合、狭流路を構成する管材自体を新たなものと交換する。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の無菌水供給装置において、前記止水弁の開閉を制御する制御手段を設け、この制御手段による止水弁の制御によって止水弁上流側の滞留水を交換するための排水を行うことを特徴とする。
この場合、制御手段による制御により、例えば、設定時間が経過する毎に止水弁を開くことで、除菌フィルターと止水弁の間の滞留水を新たな水と交換する。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、狭流路内のスケールの付着によって供給水の出が悪化した場合に、狭流路を構成する管材だけを新たな管材と交換すれば良いため、狭流路からの細菌の浸入防止機能を損なうことなくメンテナンス作業を容易化することができる。
また、この発明の場合、交換は管材のみで良いため、コストの低減を図ることができる。
さらに、この発明においては、細菌の浸入し易いの狭流路部分を交換することができるため、狭流路をより清潔な状態に保つことができる利点もある。
【0010】
また、請求項3に記載の発明によれば、さらに制御手段による止水弁の制御によって適宜タイミングで滞留水の交換のための排水を行うことができるため、止水弁の上流側の除菌済みの水を常に新鮮な状態に保つことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、この発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、この発明にかかる無菌水供給装置の概略構成を示すものであり、1は、給水源である水道管であり、2は、給水蛇口、3は、水道管1と給水蛇口2の間に介装された除菌フィルターである。除菌フィルター3は、例えば、内部に中空糸膜のモジュールが装填されたものが用いられる。
【0012】
給水蛇口2は、接続管4と除菌フィルター3を介して水道管1に接続される給水導入口5と、外部に水を給水する給水出口6と、給水導入口5と給水出口6を接続する流路の途中にあってその流路を開閉する電磁式の止水弁7と、を備えている。
【0013】
また、給水蛇口2は、給水導入口5を有する蛇口本体8と、給水出口6を有する出口ユニット9を備え、両者が液密状態でねじ止めされている。止水弁7は、蛇口本体8に設置されたソレノイド10と、このソレノイド10によって操作される弁体11と、出口ユニット9のボス部12に設けられた弁座13を備え、ソレノイド10のオン・オフがコントローラ14(制御手段)を通して行われるようになっている。
【0014】
出口ユニット9のボス部12には、給水出口6側に向かって貫通する脱着孔15が設けられ、この脱着孔15にスリーブ管16(管材)が脱着自在に取り付けられている。具体的には、例えば、スリーブ管16はねじ止め等によって出口ユニット9に取り付けられている。スリーブ管16は弁座13の背面まで達し、弁座13の弁孔に導通している。スリーブ管16の内径は止水弁7の上流側の流路に対して小径に形成され、スリーブ管16は止水弁7から給水出口6に至る狭流路を構成している。
【0015】
また、出口ユニット9のボス部12の外周側には、スリーブ管16を加熱するためのヒータ18が配置されている。このヒータ18は、止水弁7の開弁後にスリーブ管16を加熱して内側に付着した水滴を加熱乾燥されるものであり、例えば、タイマー等によって開弁後に所定時間だけ通電されるようになっている。なお、図1中19は、蛇口本体8側にヒータ18の熱が伝達されるのを防止するための断熱材である。
【0016】
ところで、止水弁7のソレノイド10は、ボタン式、ペダル式或いはセンサー式の操作スイッチ20を介してオン・オフ操作し得るようになっている。給水蛇口2から除菌水を使用する場合には、この操作スイッチ20を押す等してソレノイド10をオン作動させる。
【0017】
また、止水弁7のソレノイド10は、操作スイッチ20による操作時以外に、操作スイッチ20がオフの場合にも、コントローラ14による制御によって設定時間の経過毎に滞留水交換のためのオン操作が行われるようになっている。つまり、ソレノイド10は、予めコントロラーラ14に記憶されているインターバル時間とオン時間に応じてオン作動し、それによって除菌フィルター3と止水弁7の間に滞留している古い除菌水を新たな除菌水と交換する。
【0018】
この無菌水供給装置は以上のような構成であるため、給水蛇口2から除菌水を使用する場合に操作スイッチ20をオンにして止水弁7を開くと、水道管1の水が除菌フィルター3を通過して除菌され、その除菌水が給水蛇口2のスリーブ管16を通って給水出口6から吐出される。この後、操作スイッチ20をオフにして止水弁7を閉じると、スリーブ管16からの除菌水の流れが止まり、この直後からヒータ18が所定の時間だけオン作動する。これにより、スリーブ管16が加熱され、スリーブ管16の内部に残留している除菌水がその熱によって乾燥除去される。したがって、スリーブ管16の内部の水分が速やかに除去されるため、このスリーブ管16を通した細菌の浸入が防止される。
【0019】
また、この無菌水供給装置の場合、所定時間以上操作スイッチ20がオンにされないと、コントローラ14による制御によって前述のように止水弁7のソレノイド10がオンとなり、除菌フィルター3と止水弁7の間の滞留水が新たな除菌水と交換される。したがって、これにより装置内部での水質の劣化が未然に防止される。なお、この場合も給水蛇口2から除菌水の吐出が停止するたびに前述と同様にヒータ18の加熱が行われる。
【0020】
そして、このように給水蛇口2が長時間使用されると、狭流路であるスリーブ管16の内部に除菌水中のミネラル分がスケールとして付着し、そのスケールの量が多くなると、給水蛇口2からの水の出が悪化する。このような状況になったときには、給水蛇口2からスリーブ管16だけを取り外し、新たなものと交換する。これにより、除菌水の吐出の悪化は即時に改善される。したがって、この給水蛇口2を用いた場合にはメンテナンスが容易になる。
【0021】
さらに、この無菌水供給装置は、細菌の最も浸入し易い狭流路(スリーブ管16)部分を交換するため、狭流路をより清潔な状態に保つことができる。また、交換がスリーブ管16のみであることから交換部品のコストを削減することができる。
【0022】
なお、この発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】この発明の一実施形態を示す概略構成図。
【符号の説明】
【0024】
1…水道管(給水源)
2…給水蛇口
3…除菌フィルター
5…給水導入口
6…給水出口
7…止水弁
14…コントローラ(制御手段)
16…スリーブ管(狭流路)
18…ヒータ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
給水源に接続される給水導入口と、
外部に水取り出す給水出口と、
前記給水導入口と給水出口の間に介装されて流路を開閉する止水弁と、
前記止水弁から給水出口に至る流路である狭流路と、
この狭流路の近傍に設けられて同狭流路を加熱するヒータと、
を備えた給水蛇口において、
前記狭流路を脱着自在な管材によって構成したことを特徴とする給水蛇口。
【請求項2】
給水蛇口が除菌フィルターを介して水道管に接続され、
前記給水蛇口が、
前記水道管側に接続される給水導入口と、
外部に水を取り出す給水出口と、
前記給水導入口と給水出口の間に介装されて流路を開閉する止水弁と、
前記止水弁から給水出口に至る流路である狭流路と、
この狭流路の近傍に設けられて同狭流路を加熱するヒータと、
を備えて成る無菌水供給装置において、
前記狭流路を脱着自在な管材によって構成したことを特徴とする無菌水供給装置。
【請求項3】
前記止水弁の開閉を制御する制御手段を設け、この制御手段による止水弁の制御によって止水弁上流側の滞留水を交換するための排水を行うことを特徴とする請求項2に記載の無菌水供給装置。


【図1】
image rotate


【公開番号】特開2007−182682(P2007−182682A)
【公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−71(P2006−71)
【出願日】平成18年1月4日(2006.1.4)
【出願人】(000176741)三菱レイヨン・エンジニアリング株式会社 (90)
【Fターム(参考)】