説明

緯度方向等値線スクライビング加工、ステッチング、ならびに簡易化されたレーザ制御およびスキャナ制御

レーザスクライビング加工により工作物中に形成されるセグメントのステッチポイントを、スキャナの速度、ならびにリードイン間隔、リーアウト間隔、および重畳間隔を与えるためなどのレーザの切替え時点といった面を制御することにより、改善することが可能となる。さらに、ステッチポイントの位置を、既存の線と一致するように選択することが可能であり、これにより、既存の線が、オフセットが生じた場合にセグメント同士を接続するように機能する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2009年8月6日に出願され、「LATITUDINAL ISO−LINE SCRIBE,STITCHING,AND SIMPLIFIED LASER AND SCANNER CONTROLS」と題された、米国仮特許出願第61/231,971号の利益を主張するものである。
【0002】
本明細書に記載される多数の実施形態は、概して、材料のスクライビング加工、ならびに材料をスクライビング加工するためのシステムおよび方法に関する。これらのシステムおよび方法は、単接合太陽電池および薄膜多接合太陽電池のスクライビング加工において特に有効となり得る。
【背景技術】
【0003】
薄膜太陽電池を形成するための現行の方法は、1つまたは複数のpn接合を形成するのに適した、例えばガラス基板、金属基板、またはポリマー基板などの基板の上に複数の層を蒸着または他の態様で形成することを伴う。太陽電池の一例は、基板上に蒸着された酸化物層(例えば透明導電性酸化物(TCO))と、続くアモルファスシリコン層およびメタルバック層とを有する。太陽電池を形成するために使用し得る材料、ならびに電池を形成するための方法および装置の例が、例えば、2009年9月1日に発行され、「MULTI−JUNCTION SOLAR CELLS AND METHODS AND APPARATUSES FOR FORMING THE SAME」と題された、米国特許第7,582,515号において説明されている。パネルが、大型の基板から形成されることになる場合には、一連のけがき線を各層中において使用することにより、個々のセルを輪郭描画することが可能となる。これらのけがき線は、少なくとも1つの層を蒸着された基板から構成される工作物から材料をレーザアブレーションすることにより形成される。このレーザスクライビング加工プロセスは、工作物が平面のステージまたはベッドの上に支持されて位置する状態において実施することができる。
【0004】
レーザスクライビング加工パターンは、レーザビームと工作物の間に相対移動を生じさせることにより、工作物上に形成される。先述のアプローチにおいては、この相対移動は、レーザビームを固定し、工作物を移動させることにより達成される。工作物が、ステージまたはベッド上において静止状態に保たれる場合には、この相対移動は、ステージまたはベッドの移動を要する。工作物が、ステージまたはベッド上において移動する自由度を有する場合には、この相対移動は、工作物の移動および/またはステージもしくはベッドの移動のある組合せを要する。さらに、工作物が、固定されたレーザに対して移動する場合には、ベッドは、工作物のサイズの最大で4倍であることが必要となり、または、工作物は、工作物の全エリアにアクセスするために回転されなければならない。さらに、この固定されたレーザビームアプローチの下では、スクライビングレーザから工作物までのビーム経路が長くなる恐れがある。レーザと工作物との間のこの長い固定ビーム経路により、ビーム集中の問題および安定性の問題が生ずる。さらに、ステージまたはベッドは、工作物を静止状態に保ち、工作物と共に移動する、単一の平面ピースから構成される可能性がある。一例においては1平方メートルもの大きさになり得る工作物に対応するために、このステージもまた大きくなければならず、そのため製造業者の場所からユーザの場所までの輸送が困難になる。
【0005】
さらに、パターンをスクライビング加工するために2つ以上のレーザを使用する場合には、複雑化が生ずる。レーザのスキャン領域が制限されることは、ステッチングが必要であることを示唆する。一定速度のスクライビング加工を得るための従来の技術は、リードイン/リードアウトプロセスを利用するが、このプロセスは、スキャナ制御およびレーザ制御の複雑化ならびにスループットの低下を伴う。
【発明の概要】
【0006】
したがって、既存のけがき加工デバイスおよびソーラパネル製造デバイスにおけるこれらのおよび場合によっては他の欠点の少なくともいくつかを解消するシステムおよび方法を開発することが望ましい。
【0007】
以下に、本発明の基礎的な理解をもたらすために、本発明のいくつかの実施形態の簡単な概要を示す。この概要は、本発明の包括的な概説ではない。この概要は、本発明の重要/不可欠な要素を特定することを、または本発明の範囲を定めることを意図しない。この概説の目的はもっぱら、後に示すさらに詳細な説明の前置きとして、簡単な形で本発明のいくつかの実施形態を示すことである。
【0008】
レーザスクライビング加工する際のステッチングを改善するためのシステムおよび方法が提示される。多数の実施形態により、制御の向上、ならびに工作物を回転させることなく複数の方向および/またはパターンでスクライビング加工する能力が実現され得る。多数の実施形態によるシステムおよび方法により、大型の膜蒸着された基板上における汎用的な高スループットの直接パターニングレーザスクライビング加工が可能となる。これらのシステムおよび方法は、単接合太陽電池および多接合太陽電池のスクライビング加工において特に有効となり得る。
【0009】
多数の実施形態において、工作物をスクライビング加工する際のステッチングを改善するためのシステムが提示される。このシステムは、工作物の少なくとも一部分から材料を除去することが可能な出力を生成するように作動可能な少なくとも1つのレーザと、第1のけがきセグメントおよび第2のけがきセグメントを形成するために少なくとも1つのレーザからの出力を配向するように作動可能な少なくとも1つのスキャナとを備え、スキャナの速度、レーザの切替え、およびけがきセグメントのパターニングのうちの少なくとも1つが、第1のけがきが工作物上の第2のけがきと少なくとも部分的に重畳するように選択される。あるいは、第3のけがきセグメントをステッチングプロセスにおいて使用することが可能である。このプロセスは、第3のけがきセグメントの位置と実質的に一致するように第1のけがきセグメントおよび第2のけがきセグメントのステッチポイントを選択することを伴い、これにより、第3のけがきセグメントが、工作物上の第1のけがきセグメントおよび第2のけがきセグメントのオフセットに際して第1のけがきセグメントおよび第2のけがきセグメントを接続するように機能することになる。
【0010】
多数の実施形態において、工作物をスクライビング加工する際のステッチングを改善するための方法が提示される。この方法は、工作物上に第1のけがきを作製することと、工作物上に第2のけがきを作製することと、第1のけがきおよび第2のけがきを形成するために少なくとも1つのレーザビームを配向するように使用される少なくとも1つのスキャナの速度、第1のけがきおよび第2のけがきを形成するために使用される少なくとも1つのレーザの切替え、ならびに第1のけがきが工作物上の第2のけがきと少なくとも部分的に重畳するようなけがきセグメントのパターニングのうちの少なくとも1つを制御することとを含む。あるいは、第3のけがきセグメントをステッチングプロセスにおいて使用することが可能である。このプロセスは、第3のけがきセグメントの位置と実質的に一致するように第1のけがきセグメントおよび第2のけがきセグメントのステッチポイントを選択することを伴い、これにより、第3のけがきセグメントが、工作物上の第1のけがきセグメントおよび第2のけがきセグメントのオフセットに際して第1のけがきセグメントおよび第2のけがきセグメントを接続するように機能することになる。
【0011】
本明細書の残りの部分および図面を参照とすることにより、本発明の特質および利点のさらなる理解が得られよう。図面では、同様の構成要素を指すために、同様の参照数字が複数の図面にわたって使用される。これらの図は、本発明の詳細な説明の部分に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】薄膜太陽電池アセンブリ中のレーザスクライビング加工された線を示す図である。
【図2】多数の実施形態によるレーザスクライビングシステムの斜視図である。
【図3】多数の実施形態によるレーザスクライビングシステムの側面図である。
【図4】多数の実施形態によるレーザスクライビングシステムの端面図である。
【図5】多数の実施形態によるレーザスクライビングシステムの上面図である。
【図6】多数の実施形態によるレーザアセンブリのセットを示す図である。
【図7】多数の実施形態によるレーザアセンブリの構成要素を示す図である。
【図8A】多数の実施形態による工作物の移動方向に対して平行にスクライビング加工するための方法を示す図である。
【図8B】多数の実施形態による工作物の移動方向に対して平行にスクライビング加工するための別の方法を示す図である。
【図9A】多数の実施形態による工作物の移動方向に対して垂直にスクライビング加工するための方法を示す図である。
【図9B】多数の実施形態による工作物の移動方向に対して垂直にスクライビング加工するための別の方法を示す図である。
【図10A】多数の実施形態に従って利用することが可能な経度方向スキャン技術を示す図である。
【図10B】多数の実施形態に従って利用することが可能な緯度方向スキャン技術を示す図である。
【図11A】多数の実施形態に従って利用することが可能な、工作物上に横線をスクライビング加工するためのアプローチを示す図である。
【図11B】多数の実施形態に従って利用することが可能な、工作物上に横線をスクライビング加工するためのアプローチを示す図である。
【図11C】多数の実施形態に従って利用することが可能な、工作物上に横線をスクライビング加工するためのアプローチを示す図である。
【図12A】2つのベクトルのみによるスクライビング加工プロセスを示す図である。
【図12B】結果的に得られる試料を示す図である。
【図13】リードインおよびリードアウトを伴うスクライビング加工を示す図である。
【図14A】重畳を伴うスクライビング加工を示す図である。
【図14B】結果的に得られる試料を示す図である。
【図15】A〜Cは、様々なけがきパターンのステッチングを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示の多数の実施形態によるシステムおよび方法は、既存のスクライビング加工アプローチにおける前述のおよび他の欠点のうちの1つまたは複数を解消することが可能である。多数の実施形態が、制御の向上、ならびに基板の回転を伴わない複数の方向および/またはパターンでのスクライビング加工能力を実現することが可能である。多数の実施形態によるシステムおよび方法が、大型の膜蒸着された基板上における、汎用的な高スループットの直接パターニングレーザスクライビング加工を可能にする。かかるシステムおよび方法により、工作物を回転させる必要を伴わない、2方向スクライビング加工、パターンスクライビング加工、任意パターンスクライビング加工、および/または調節可能ピッチスクライビング加工が可能となる。
【0014】
多数の実施形態によるシステムおよび方法が、単一の経度方向へのガラス移動および複数のレーザスキャナを用いたレーザスクライビング加工による、例えばいくつかの太陽電池デバイスにおいて使用される膜蒸着された基板などの工作物のスクライビング加工を可能にする。工作物は、スクライビング加工中に移動させることが可能であり、レーザが、並進移動可能なスキャナにビームを送り、このスキャナは、基板を貫通してスクライビング加工される膜(または複数の膜)までこのビームを送る。これらのスキャナは、緯度方向スクライビング加工および経度方向スクライビング加工の両方を可能にし得る。
【0015】
多数の実施形態が、スクライビングレーザから工作物までの比較的ビーム経路(relatively beam path)を実現することが可能であり、この経路により、ビーム集中の問題および安定性の問題を大幅に緩和することができる。多数の実施形態において、スクライビングレーザから工作物までのビーム経路の短縮は、レーザ源を工作物に近づけることによって実現される。多数の実施形態において、このビーム経路は、レーザがスクライビング加工しようとしているパターンに応じてレーザ源を横方向に移動させることによって、さらに短縮される。レーザ源を工作物に近づけることが可能となることにより、レーザビーム経路を最短化することが可能となり、これは、ビーム集中および安定性などの問題を最小限に抑えるのに役立ち得る。多数の実施形態において、工作物は、経度方向に移動し、レーザビームは、スキャニングデバイスにより横方向および経度方向の両方に移動することが可能であるが、レーザアセンブリを工作物に対して横方向に並進移動させることが可能な並進移動機構を使用してレーザ源が移動するため、レーザビーム経路は、依然として最短化された状態にある。
【0016】
多数の実施形態において、並進移動ステージまたは並進移動ベッドは、実質的に平面のセクションなどの分離されたセクションにより実装される。多数の実施形態において、中央セクションは、横方向に移動可能であり、ベッドの中央セクションを、並進移動機構により横方向に並進移動される際のレーザ源および光学機器と連動して移動させることが可能であり、これにより、工作物上に所望のパターンをスクライビング加工することが可能となる一方で、ベッドの2つの端部セクションは、静止状態に維持される。このように連携された動作により、本明細書の他の箇所において説明されるような様々な他の利点がさらにもたらされる。多数の実施形態において、並進移動ステージまたは並進移動ベッドは、3つ以上のセクションから構成され、これにより、ベッドのベースを別々のパッケージングレベルで3つ以上の部分に分けて輸送し、現地で組み立てることが可能となるため、製造業者の場所からユーザの場所への輸送がさらに容易になる。
【0017】
ソーラパネルが、大型の基板から形成されることになる場合には、例えば、一連のレーザスクライビング加工された線を各層中において使用することにより、個々のセルを輪郭描画することが可能である。図1は、薄膜太陽電池において使用される一例のアセンブリ10中にレーザスクライビングされた線を図示する。アセンブリ10を形成する際には、ガラス基板12は、透明導電性酸化物(TCO)層14が蒸着されている。次いで、TCO層14は、レーザスクライビング加工されたP1線16により複数の離隔された領域へと分離される。次に、アモルファスシリコン(a−Si)層18が、TCO層14の頂部に、およびスクライビング加工されたP1線16内に蒸着される。次いで、第2のセットの線(「P2」線19)が、アモルファスシリコン(a−Si)層18中にレーザスクライビング加工される。次いで、メタルバック層20が、アモルファスシリコン(a−Si)層18の頂部に、およびスクライビング加工されたP2線19内に蒸着される。第3のセットの線22(「P3」線)が、図示するようにレーザスクライビング加工される。結果的に得られるアセンブリの面積の大半が、パネルの太陽電池活性領域から構成されるが、P1 16けがき線とP3 22けがき線との間に位置する種々の領域は、「デッドゾーン」としても知られる不活性太陽電池エリアを構成する。
【0018】
これらの太陽電池パネルの効率を最適化するためには、これらのパネルの不活性太陽電池エリア(すなわち「デッドゾーン」)は、最小限に抑えられるべきである。デッドゾーンを最小限に抑えるためには、各P3線22は、対応するP1線16に対して可能な限り近くに配列されるべきである。以下においてさらに詳細に論じるように、線感知光学機器を使用して、線のスクライビング加工を調節することにより、アセンブリ10におけるデッドゾーン面積を最小限に抑えることが可能となる。
【0019】
図2は、多数の実施形態によるレーザスクライビングシステム100の一例を図示する。このシステムは、本明細書において説明されるような並進移動ステージまたは並進移動ベッド102を備え、この並進移動ステージまたは並進移動ベッド102は、例えば少なくとも1つの層が上に蒸着された基板などの工作物104を受け操作するために、上下動され得る。一例においては、工作物104は、様々な速度(例えば0m/s〜2m/sまたはさらに速い速度)で単一の方向ベクトルに沿って(すなわちYステージに関して)移動することが可能である。多数の実施形態において、工作物は、本明細書の他の箇所において説明される理由により、工作物の長手方向軸がデバイス内での工作物の動作に対して実質的に平行になるような固定配向へと位置合わせされる。この位置合わせは、工作物上の印を取得するカメラまたは撮像デバイスを使用することによって補助され得る。この例においては、レーザおよび光学機器(以降の図面に図示される)は、工作物の下方に、およびスクライビング加工プロセス中に基板から削磨または他の態様で除去される材料を取り除くための排出機構108の一部を保持するブリッジ106の対向側に、位置決めされる。工作物104は、基板側が下を向き(レーザ方向)、層形成された側が上を向く(排出装置方向)ように、ステージ102の第1の端部上にロードすることが可能である。工作物は、初め、一連のローラ110の上に受けられ、次いで、工作物を支持し工作物の並進移動を可能にするために複数の平行なエアベアリング112により支持され得るが、当技術において知られているように、他のベアリングタイプまたは並進移動タイプのものを使用して、工作物を受け並進移動させることも可能である。この例においては、一連のローラは全て、工作物104がレーザアセンブリに対して経度方向に前後に移動され得るように、基板の伝搬方向に沿って単一の方向を向く。
【0020】
システム100は、ステージ102上の工作物104の方向および並進移動速度を制御するための可制御駆動機構を備える。この可制御駆動機構は、工作物104の両側に配設された2つのY方向ステージ、すなわちステージY1 114およびステージY2 116を備える。ステージY1 114は、2つのX方向ステージ(ステージXA1 118およびステージXA2 120)と、Y1ステージ支持体122とを備える。ステージY2 116は、2つのX方向ステージ(ステージXB1 124およびステージXB2 126)と、Y2ステージ支持体128とを備える。4つのX方向ステージ118、120、124、126は、工作物104を保持するための工作物グリッパを備える。Y方向ステージ114、116はそれぞれ、1つまたは複数のエアベアリング、リニアモータ、および位置感知システムを備える。図14および図15を参照として以下においてさらに詳細に説明されるように、X方向ステージ118、120、124、126は、Y方向ステージ支持体122、128に生じる真直度の変化を補正することにより、工作物のより正確な移動を実現する。ステージ102、ブリッジ106、およびYステージ支持体122、128は、例えば花崗岩からなるYステージ支持体122、128など、少なくとも1つの適切な材料から作製することが可能である
【0021】
さらに、工作物104の移動が、図3に図示されるシステム100の側面図においても図示され、ここでは、工作物104は、図面の平面中に位置するベクトルに沿って前後に移動する。参照番号は、単純化および説明のために、幾分か類似する要素については図面間にわたって持ち越して用いられるが、これは、種々の実施形態に対して限定を与えるものとして理解されるべきではない点を理解されたい。工作物が、Y方向ステージによりステージ102上において前後に並進移動される際に、レーザアセンブリのスクライビング加工エリアが、基板のエッジ領域の付近から基板の対向側のエッジ領域の付近まで効果的にスクライビング加工を行う。工作物の並進移動は、部分的には、ステージY2の移動によって(すなわちYステージ支持体128に沿ったX方向ステージ124、126の移動によって)容易にされる。
【0022】
けがき線が適切に形成されるようにするために、追加のデバイスを使用することが可能である。例えば、撮像デバイスにより、スクライビング加工後に線のうちの少なくとも1つを撮像することが可能である。さらに、ビームプロファイリングデバイス130を使用して、基板の加工同士の間に、または他の適切な時点にビームを較正することが可能である。例えば経時的に移動し得るようなスキャナが使用される多数の実施形態においては、ビームプロファイラにより、ビームの較正および/またはビーム位置の調節が可能となる。
【0023】
図4は、一連のレーザアセンブリ132が工作物の層をスクライビング加工するために使用されるのを示す、システム100の端面図を図示する。任意の個数のレーザアセンブリ132を使用することが可能であるが、この特定の例においては、4つのレーザアセンブリ132が存在する。レーザアセンブリ132はそれぞれ、レーザデバイスと、レーザの焦点を合わせるかまたは他の態様でレーザの性質を調節するために必要となる、例えばレンズおよび他の光学素子などの要素とを備えることが可能である。レーザデバイスは、例えばパルス固体レーザなどの、工作物の少なくとも1つの層を削磨または他の態様でスクライビング加工するように作動可能な任意の適切なレーザデバイスであることが可能である。示すように、排出部分108が、工作物に対して各レーザアセンブリの対向側に位置決めされ、これにより、各レーザデバイスによって工作物から削磨されるかまたは他の態様で除去される材料が効果的に排出される。多数の実施形態において、このシステムは、分割軸システムであり、ステージ102は、経度方向軸に沿って(例えば図3においては右から左に)工作物104を並進移動させる。レーザおよび光学機器は、工作物104に対してレーザアセンブリ132を横方向に(例えば図4においては右から左に)並進移動させることが可能な並進移動機構に装着され得る。例えば、レーザアセンブリは、横方向レール136上で、または例えばコントローラおよびサーボモータにより駆動され得る並進移動機構などの別の並進移動機構を用いることで、並進移動することが可能な支持体またはプラットフォーム134の上に取り付けることが可能である。あるシステムにおいては、レーザおよびレーザ光学機器は全て、ベッドの中央部分および排出装置と共に、支持体134上において共に横方向に移動する。これにより、短いビーム経路を維持し、レーザにより削磨されつつある工作物の複数部分の真上に排出装置を留めつつ、スキャンエリアを横方向に移動させることが可能となる。いくつかの実施形態においては、レーザ、光学機器、中央ステージ部分、および排出装置は全て、単一のアーム、プラットフォーム、または他の機構により共に移動される。他の実施形態においては、種々の構成要素が、これらの構成要素のうちの少なくともいくつかを並進移動させ、この移動は、例えば米国特許出願公開第2009/0321397A1号において説明されているようなコントローラにより調整される。
【0024】
図5は、Y方向ステージ114、116の構成要素を示すシステム100の上面図を図示する。Y方向ステージY1 114は、X方向ステージXA1 118およびXA2 120を備え、これらは、Y1ステージ支持体122に沿って並進移動する。Y方向ステージY2 116は、X方向ステージXB1 124およびXB2 126を備え、これらは、Y2ステージ支持体128に沿って並進移動する。Y方向ステージ114、116はそれぞれ、Y方向ステージ支持体122、128の頂部部分内に配設された磁性チャネル138を有するリニアモータを備える。Y方向ステージ114、116はそれぞれ、位置感知システムをさらに備え、このシステムは、Y方向ステージ支持体122、128のそれぞれに上に配設されたエンコーダストリップ140を備える。Y方向ステージ114、116はそれぞれ、各エンコーダストリップ140を読み取ることによりY方向ステージの位置をモニタリングするためのリーダヘッドを備える。
【0025】
図6は、システム100の各レーザデバイスが工作物のスクライビング加工に有用な2つの有効なビーム142を実際に生成するシステム100の拡大図である。他の実施形態においては、各レーザデバイスを使用して、例えば2つ、3つ、またはさらに多くの有効ビームなどの任意の個数の有効ビームを生成することが可能である。これらの対のビームを生成するために、各レーザアセンブリ132は、少なくとも1つのビームスプリッティングデバイスを備える。示すように、排出装置108の各部分が、この例における対のビームのスキャン領域または有効エリアに対応するが、排出装置は、各個別のビームのスキャン領域のための個別の部分を有するように、さらに分割することも可能である。この例における各ビームは、ベッドのエアベアリング間を進み、エアベアリング間のビーム位置は、移動可能な中央セクション、レーザ、および光学機器が横方向に並進移動する際に維持される。
【0026】
基板厚さセンサ144が、基板間のおよび/または単一の基板における変化による基板からの適切な離間を保つために、システムにおいて高さを調節するために使用することが可能なデータを供給する。例えば、各レーザが、例えばzステージ、モータ、およびコントローラなどを使用することにより、高さの調節(例えばz軸に沿って)が可能となり得る。多数の実施形態において、システムは、基板厚さにおける3〜5mmの差異に対処することが可能であるが、多数の他のそのような調節が可能である。さらに、zモータを使用して、レーザ自体の垂直方向位置を調節することにより、基板上における各レーザの焦点を調節することが可能となる。各レーザの所望の垂直方向焦点を使用することにより、所望の垂直方向位置または垂直方向位置範囲にビームを集中させることによって工作物の2つまたは複数の層を選択的に削磨し、所望の削磨をもたらすことが可能である。工作物の局所的変化に対して各レーザの焦点を調節することにより、より一定の線幅およびスポット形状を実現することが可能である。
【0027】
図7は、多数の実施形態に従って使用することが可能な例示的なレーザアセンブリ200の基本的要素を概略的に示すが、追加のまたは他の要素を適宜使用することが可能である点を理解されたい。アセンブリ200においては、単一のレーザデバイス202が、ビームを生成するが、このビームは、ビームエクスパンダ204を用いて拡張され、次いで例えば部分的に透過性のミラー、半透鏡、プリズムアセンブリ等々のビームスプリッタ206に送られて、第1のビーム部分および第2のビーム部分を形成する。ビーム部分のうちの1つまたは複数が、ミラー207により再配向され得る。このアセンブリにおいては、各ビーム部分が、ビーム部分を減衰するために減衰要素208を通過することにより、この部分のパルスの強度または強さが調節され、シャッター210を通過することにより、ビーム部分の各パルスの形状が制御される。次いで、各ビーム部分は、自動フォーカス要素212を通過して、スキャンヘッド214上にビーム部分を焦点合わせする。各スキャンヘッド214は、ビームの位置を調節することが可能な、例えば偏向機構として有効なガルバノメータスキャナなどの少なくとも1つの要素を備える。多数の実施形態において、これは、工作物104の移動ベクトルに対して直交する緯度方向に沿ってビーム位置を調節することが可能な回転可能ミラーである。このミラーは、工作物に対してビームの位置を調節することを可能にし得る。
【0028】
多数の実施形態において、各スキャンヘッド214は、一対の回転自在ミラー216、または2次元(2D)でレーザビームの位置を調節することが可能な少なくとも1つの要素を備える。各スキャンヘッドは、スキャン領域内においておよび工作物に対してビームの「スポット」の位置を調節するための制御信号を受領するように作動可能な少なくとも1つの駆動要素218を備える。様々なスポットサイズおよびスキャン領域サイズを用いることが可能である。例えば、いくつかの実施形態においては、工作物上のスポットサイズは、約60mm×60mmのスキャン領域内において数十ミクロンのオーダであるが、様々な他の次元および/または次元の組合せが可能である。かかるアプローチにより、工作物上におけるビーム位置の補正を向上させることが可能となる一方において、このアプローチは、工作物上におけるパターンまたは他の非線形けがき特徴部の形成をさらに可能にする。さらに、2次元においてビームをスキャニングすることが可能であることにより、工作物を回転させる必要性を伴わずにスクライビング加工によって工作物上に任意のパターンを形成することが可能となる。
【0029】
様々なアプローチを利用することにより、本明細書において開示されるシステムおよび方法の実施形態を用いて様々な方向へ線をレーザスクライビング加工することが可能である。例えば、工作物の移動方向に対して平行な方向を有するレーザけがき線を、複数の様式で形成することが可能である。図8Aは、かかる1つのアプローチを図示しており、工作物がレーザに対して並進移動される間に、レーザ出力のうちの1つまたは複数の位置を固定するために、スキャナのうちの1つまたは複数が使用される。レーザけがき線402が、ガラスがレーザに対して第1の方向に(すなわち図8Aにおいては下部から上部に)移動する際に形成され得る。次いで、工作物が方向を変える際には、ビーム位置(または複数のビーム位置)を調節することが可能である。次いで、レーザけがき線404が、ガラスがレーザに対して逆方向に(すなわち図8Aにおいては上部から下部に)移動する際に形成され得る。多数の実施形態において、ガラスは、様々な速度(例えば0m/秒〜2m/秒またはさらに速い速度)で移動することが可能である。図8Bは、工作物の移動方向に対して平行な方向を有するけがき線を形成するための別のアプローチを図示し、けがき線は、個別のブロック406、408、410、412に分けて形成される。このアプローチにより、工作物をさらに低速で移動させることが可能となり、これにより位置誤差を低減させることができる。けがき線は、共に「ステッチング」されることにより、長いけがき線を形成することが可能となる。1つまたは複数のスキャナを使用することにより、2つのアプローチ間におけるレーザパラメータの変更を要することなく、所望の速度(例えば0m/秒〜2m/秒またはさらに速い速度)で工作物にわたりレーザ出力をスキャニングすることが可能となる。さらに、複数のアプローチを用いることにより、工作物の移動方向に対して垂直な方向を有するけがき線を形成することが可能となる。図9Aに図示される1つのアプローチにおいては、レーザけがき線414は、ガラスが低速で移動されつつある際に、スキャナを使用することによりレーザの出力をスキャニングすることによって形成することが可能である。図9Bに図示される別のアプローチにおいては、光学機器ステージは、工作物が固定された状態に保たれた状態で移動され得るものであり、けがき線は、ブロック416、418に分かれて形成されることが可能となり、これらの線は、共にステッチングされて長い線を形成し得る。両アプローチにおいて、1つまたは複数のスキャナを使用することにより、例えば秒速2mなどなどの所望の速度で、および/または2つのアプローチ間においてレーザパラメータの変更を要さずに、工作物にわたりレーザ出力をスキャニングすることが可能となる。
【0030】
線感知光学機器を使用することにより、1つまたは複数の先に形成された特徴部に関する位置データを判定することが可能となる。かかる位置データを使用することにより、先に形成された特徴部に対する後に形成される特徴部の形成を制御することが可能となる。例えば、先に形成されたP1線上の1つまたは複数の位置を示すデータを使用することにより、P1線に対するP2線の形成を制御することが可能となる。線感知光学機器は、光源と、工作物および/またはけがき線から反射された光を検出するカメラとを備えることが可能である。
【0031】
図10Aは、工作物1002上に一連の経度方向けがき線をスキャニングするためのアプローチ1000を図示する。図示のように、基板は、第1の方向に連続的に移動され、各ビーム部分ごとのスキャン領域が、基板を「下方に」移動するけがき線1004を形成する。この例においては、次いで工作物は、基板が逆方向に移動される際に、各スキャン領域が工作物を「上方に」進むけがき線を形成するように(方向は図面の説明のみに使用される)、レーザアセンブリに対して移動され、「下方」けがきと「上方」けがきとの間の間隔が、レーザアセンブリに対して工作物を横方向に移動させることにより制御される。この場合には、スキャンヘッドは、各ビームを全く屈折させなくてもよい。レーザ反復速度は、ステージ並進移動速度に簡単に一致させることが可能であり、エッジ離隔のためにスクライビング加工位置同士の間で重畳領域が必要となる。スクライビング加工経路の終端部にて、ステージは、減速し、停止し、逆方向に再加速される。この場合には、レーザ光学機器は、けがき線がガラス基板上の所要の位置に形成されるように、所要のピッチに応じてステップ移動される。スキャン領域が重畳するか、または連続するけがき線間のピッチ内において少なくとも実質的に合流する場合には、基板は、レーザアセンブリに対して横方向に移動される必要はないが、ビーム位置は、レーザスクライビングデバイスにおける工作物の「上方」移動と「下方」移動との間において横方向に調節することが可能となる。多数の実施形態において、レーザは、工作物の1つだけの完全な経路が必要な状態で複数の経度方向けがき線を同時に形成することが可能となるように、スキャン領域内においてけがき線の各位置にけがきマークを作製しつつ、工作物中をスキャニングすることが可能である。本明細書に含まれる教示および示唆を鑑みることにより、当業者には明らかなように、多数の他のスクライビング加工ストラテジが実現され得る。
【0032】
図10Bは、工作物1052上に一連の緯度方向(または横方向)けがき線をスキャニングするためのアプローチ1050を図示する。上述のように、各スキャンヘッド1054は、工作物の各位置にけがき線の一部分を形成し得るように、各ビームのスキャン領域内において横方向にスキャニングすることが可能である。図示のように、各ビームは、工作物のある位置ではある緯度方向に移動し、次いで工作物の別の位置では別の緯度方向に移動することにより、1056でさらに詳細に示されるような一連の蛇行パターン1054を形成することが可能である。本明細書で後に論じるように、いくつかの実施形態においては、全ての緯度方向スクライビング加工方向が同一である。スキャン領域が十分に合致すると、次いで全緯度方向けがき線が、工作物の各位置に形成され得る。スキャン領域が十分に合致しない場合には、工作物は、図10Bに図示されるように、緯度方向線を形成するために複数回にわたり通過することが必要となる場合がある。
【0033】
いくつかの実施形態においては、工作物の特定の経度方向部分に単一のスキャナにより複数の線からなる部分を形成することが望ましい。図11Aは、工作物のある層中に形成されるべき平行けがき線のパターン1300の一例を示す。この実施形態においては、工作物が、スクライビングデバイスを通過して経度方向に移動するため、スキャナデバイスは、各スキャナデバイスの有効エリア内において緯度方向線の部分またはセグメントを形成するように、各ビームを横方向に配向しなければならない。図11Bの例1320においては、各けがき線が、一連の重畳するけがき「ドット」から実際には形成されることが分かるが、これらのドットはそれぞれ、工作物上の特定の位置に対して向けられたレーザのパルスにより形成される。連続線を形成するために、これらのドットは、面積の約25%など、十分に重畳し合わなければならない。さらに、各有効エリアのうちの複数の部分が、間隙を防ぐためにやはり重畳し合わなければならない。個別の有効エリアにより形成されたドット同士の間のこれらの重畳領域は、図11Bにおいては黒いドットに注目することにより認識することが可能であり、これらの黒いドットは、蛇行アプローチにおいては各スキャン部分の開始位置に相当する。7つの領域が図示されるこの例においては、7つのスキャナデバイスが存在する場合には、各スキャニングデバイスにより7つの重畳部分のうちの1つを形成することが可能であり、したがって連続線が単一経路において形成され得るため、デバイスを通る基板の単一経路によってこのパターンを形成することが可能となる。しかし、この個数の領域を形成するのに必要な数よりもスキャニングデバイスの個数が少ない場合には、または各スキャニングデバイスによりこれらのセグメントのうちの1つをスクライビング加工することができないような有効エリアである場合には、基板は、デバイスを複数回にわたり通過しなければならない場合がある。図11Cは、例1340を示すが、ここでは、各スキャニングデバイスは、工作物の複数の経度方向位置のそれぞれにおけるパターンに応じてスキャニングを行う。これらのパターンは、デバイスを通過する工作物の第1の経度方向経路において各けがき線のセグメントを形成するために、経度方向に沿った緯度方向領域に対して使用される。次いで、各線の第2のセグメントが、工作物の逆の経度方向経路においてこのパターンを用いることにより形成される。この場合に、パターンは、工作物の所要の経度方向位置に対するスキャニングデバイスにより複数の線セグメントを形成することを可能にする蛇行パターンである。一例においては、カラムパターン1342は、工作物が第1の経度方向へとデバイスを通過して移動する際に、第1のスキャナが取り得るものである。この同じスキャナが、工作物が次いで逆の経度方向に送られて戻される際には、カラムパターン1344を用いる、等々と続くことにより、工作物上に連続する線を形成することが可能となる。スクライビング加工は、工作物が逆の経度方向に移動する際にスクライビング加工が実施されない場合などには、同一方向において同一のパターンを使用して実施することが可能である点を理解されたい。さらに、ある実施形態は、経路同士の間で工作物を横方向に移動させ得るが、他の実施形態は、工作物に対してスキャナ、レーザ、光学素子、または他の構成要素を横方向に移動させ得る。かかるパターンは、1つまたは複数のスキャニングデバイスにより使用され得る。
【0034】
多数の実施形態において、緯度方向移動が、線セグメントのセットについて実施され、次いで工作物が、経度方向に移動され、次いで別の緯度方向移動が実施されて、別のセットが形成され、等々となる。多数の実施形態において、工作物は、一定速度で経度方向に移動し、前後への緯度方向移動により、緯度方向経路間において異なるスクライビング加工パターンが必要とされる。これらの実施形態は、図11Cにおいてシフト位置1346により示されるような交互のパターンをもたらし得る。この例においては、1346の上方の全てのパターン部分が、第1の緯度方向への移動の際にスクライビング加工され、1346の真下の部分は、逆の緯度方向に対してスクライビング加工される。エリア1348に対応するパターンは、実質的に連続する緯度方向移動の際に、および実施形態によっては固定的なまたは実質的に連続する経度方向移動の際に、単一のスキャナの有効エリアによりスクライビング加工される。
【0035】
しかし、1348などのエリアに対するスクライビング加工が、緯度方向動作の際に実施されるため、この動作に対処するパターンが使用されなければならない。図11Cに図示されるような部分1348をエッチングする際に全てが静止状態にあるならば、図示されるような実質的に矩形のパターンを各位置にて使用することが可能であろう。しかし、いくつかの実施形態においては、物が割と絶えず動いているが、このために停止および始動等々による誤差が最小限に抑えられている。このシステムが、横方向に移動している際には、単純な矩形パターンアプローチにより実質的に均一に離間され重畳した線部分は得られない。
【0036】
図12Bは、2つのレーザにより、または単一のレーザの別個の経路により形成され得る、スクライビング加工パターンを示す。図12Aは、スクライビング加工のプロセスを図示しており、第1のレーザを備えるスキャナが、減速し、次いで、セグメントの終端ポイントにて、または第2のレーザビーム用のスキャナが始動し隣のセグメントを形成する速度を得る位置にて、停止する。レーザの切替わりを伴うこの動作プロファイルにより、過度のまたは不十分なスクライビング加工等々の複数の理由により時として望ましくないものとなり得るステッチポイントが得られる(図12Bを参照)。
【0037】
かかる問題を解消するために、一実施形態によるアプローチは、図13に図示されるように、スクライビング加工されることになる領域に対応するスキャニング部分の最中には比較的一定の速度を用いる。けがき線セグメントの両側の「リードイン」領域および「リードアウト」領域を使用することにより、スキャナは、スクライビング加工プロセスが開始されるまでに所望の速度を達成することが可能となり、スクライビング加工全体を通してその速度を維持することが可能となる。レーザは、ステッチ部分または他のセグメント終点に対応する正確な時点にてオンおよびオフに切り替えられ得る。図13に図示されるリードイン/リードアウトプロセスは、比較的良好なステッチをもたらすことができるが、かかるプロセスは、いくつかの実施形態においては、多量の制御機構を要し、コードを制御する場合がある。さらに、このプロセスは、比較的広いスキャン領域を要する恐れがある。
【0038】
少なくともいくつかの実施形態のための上述のプロセスに対する改良例が、図14Aに図示される。このプロセスにおけるスキャナは、上述のように、スクライビング加工プロセスが開始される前に所望の速度を達成し、スクライビング加工プロセスの間は速度を維持する。さらに、このプロセスのベクトルまたはスクライビングセグメントが、重畳するように選択されて、両レーザが、個別のセグメントについて重畳領域内に留まる。このプロセスは、比較的良好なステッチをもたらすことが示される(図14B)。この作業を実行するためには、個別のリードイン/リードアウト制御は全く必要なく、かなり少量のコード(リードイン/リードアウト制御コードと比べて70%低下)が必要となる。レーザのオンディレイ時間およびオフディレイ時間、ならびにスキャナの速度を使用して、重畳を計算および最適化することが可能である。
重畳=((レーザのオンディレイ)−(レーザのオフディレイ))×(スクライビング加工速度)
【0039】
セグメントの横方向位置決めが、上述のステッチングプロセスにより改善されたステッチポイントを得ることが可能となるようなものである場合であっても、セグメント同士を共に適切にステッチングさせないある経度方向誤差または他のオフセットが存在することがあり得る。例えば、図15Aは、セグメント同士が(図面において)水平方向に配列されるが、垂直方向にずれた状態を図示しており、これにより、けがき線に切れ目が生じ、電気的絶縁などの面の問題が引き起こされる恐れがある。
【0040】
したがって、種々の実施形態によるシステムおよび方法は、けがき線のセグメントを形成するために様々なアプローチのうちの任意のものを利用することが可能である。例えば、直線に沿い得る、もしくはけがきの少なくとも一部分に対して様々な非直線性を含み得るなどの、様々な形状または位置をとるけがき線パターンを使用することが可能である。図15(B〜C)は、様々な実施形態に従って利用することが可能ないくつかの例示的なけがきパターンおよび例示的なステッチングプロセスを示す。共線的けがきは、上述のように、図15Bに図示されるようにステッチングされ得るが、小さなオフセット誤差に対しても影響を被りやすくなる恐れがある。
【0041】
別の実施形態においては、ステッチポイントは、他の離隔線またはけがき線に対応する工作物上の位置に選択され得る。例えば、図15Cは、ステッチポイントが経度方向離隔線の位置に実質的に相当するように選択される一例を図示する。示すように、2つの緯度方向けがきセグメント間にオフセットが存在する場合でも、離隔線(例えば「長線」)がセグメント同士を電気的に接合する役割を果たすため、セグメント間に電気的間隙はない。いくつかの実施形態においては、線セグメントは、実質的に直線であることが可能であるが、論じるように既存の線の付近にて重畳し、他の実施形態においては、セグメントは、適切に形状設定することが可能である。
【0042】
本明細書において説明される例および実施形態は、例示を目的とするものであり、当業者には、これらの例および実施形態を踏まえた様々な修正または変更が示唆され、またこれらの修正または変更は、本明細書および添付の特許請求の範囲の趣旨および範囲内に含まれるべきであることが、理解される。多数の異なる組合せが可能であり、かかる組合せは本発明の一部を構成する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作物をスクライビング加工すると共に改善されたステッチを形成するためのシステムであって、
前記工作物の少なくとも一部分から材料を除去することが可能な出力を生成するように作動可能な少なくとも1つのレーザと、
第1のけがきセグメントおよび第2のけがきセグメントを形成するために、前記少なくとも1つのレーザからの出力を配向するように作動可能な少なくとも1つのスキャナと
を備え、
前記スキャナの速度、前記レーザの切替え、および前記けがきセグメントのパターニングのうちの少なくとも1つが、前記第1のけがきが前記工作物上の前記第2のけがきと少なくとも部分的に重畳するように選択される、システム。
【請求項2】
前記第1のけがきセグメントおよび前記第2のけがきセグメントが別個のレーザおよびスキャナにより形成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記工作物を支持して、前記スキャニングデバイスに対して前記工作物を経度方向並進ベクトルに沿って移動させるように作動可能であり、少なくとも1つの固定セクションおよび横方向並進移動セクションを備える並進移動ステージと、
前記スキャニングデバイスを横方向に並進移動させるように作動可能な横方向並進移動機構と
をさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記レーザからの前記出力の位置または属性を測定するためのビームプロファイリングデバイスをさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記工作物の厚さを判定するための基板厚さセンサをさらに備え、前記レーザの焦点が、前記判定された厚さに応じて調節され得る、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記スクライビング加工プロセスの間に前記工作物から削磨または他の態様で除去された材料を取り除くための排出機構をさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記工作物上に入射するレーザ出力を測定するためのパワーメータをさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
工作物をスクライビング加工すると共に改善されたステッチを形成するための方法であって、
前記工作物上に第1のけがきを作製することと、
前記工作物上に第2のけがきを作製することと、
前記第1のけがきおよび前記第2のけがきを形成するための少なくとも1つのレーザビームを配向するために使用される少なくとも1つのスキャナの速度、前記第1のけがきおよび前記第2のけがきを形成するために使用される少なくとも1つのレーザの切替え、ならびに前記第1のけがきが前記工作物上の前記第2のけがきと少なくとも部分的に重畳するような前記けがきセグメントのパターニングのうちの少なくとも1つを制御することと
を含む方法。
【請求項9】
第1のレーザからの出力の位置を2次元において制御するように作動可能なスキャニングデバイスにより、前記第1のレーザからの出力の位置を制御することをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
追加のレーザからの出力の位置を制御するように作動可能な追加のスキャニングデバイスにより、前記追加のレーザからの前記出力の位置を制御することをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記工作物上の前記第1のけがきが前記第2のけがきと共線的である、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記工作物上の前記第1のけがきおよび前記第2のけがきの少なくとも一方の少なくとも一部分が非直線性を有する、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記スクライビング加工を一定速度で実施する、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
工作物をスクライビング加工すると共に改善されたステッチを形成するためのシステムであって、
前記工作物の少なくとも一部分から材料を除去することが可能な出力を生成するように作動可能な少なくとも1つのレーザと、
第1のけがきセグメントおよび第2のけがきセグメントを形成するために、前記少なくとも1つのレーザからの出力を配向するように作動可能な少なくとも1つのスキャナと
を備え、
前記第1のけがきセグメントおよび前記第2のけがきセグメントのステッチポイントが、第3のけがきセグメントの位置と実質的に一致するように選択されることにより、前記第3のけがきセグメントが、前記工作物上の前記第1のけがきセグメントおよび前記第2のけがきセグメントのオフセットに際して前記第1のけがきセグメントおよび前記第2のけがきセグメントを接続するように機能する、システム。
【請求項15】
工作物をスクライビング加工すると共に改善されたステッチを形成するための方法であって、
前記工作物上に第1のけがきを作製することと、
前記工作物上に第2のけがきを作製することと、
第3のけがきセグメントの位置と実質的に一致するように前記第1のけがきセグメントおよび前記第2のけがきセグメントのステッチポイントを選択することにより、前記第3のけがきセグメントが、前記工作物上の前記第1のけがきセグメントおよび前記第2のけがきセグメントのオフセットに際して前記第1のけがきセグメントおよび前記第2のけがきセグメントを接続するように機能することと
を含む、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13】
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【図14A】
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【図14B】
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【図15】
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【公表番号】特表2013−500867(P2013−500867A)
【公表日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−523965(P2012−523965)
【出願日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際出願番号】PCT/US2010/044619
【国際公開番号】WO2011/017571
【国際公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(390040660)アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド (1,346)
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
【Fターム(参考)】